泌蛋白質 MFG-E8による皮膚 傷治癒の制御
内山 明彦
1 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院医学系研究科皮膚科学
はじめに
泌蛋白質 MFG-E8は, N 末端に 2つの上皮成長因子 様ドメイン (E1, E2) を持ち, E2ドメインにはインテグリ ンとの結合に重要な RGD 配列を含む. MFG-E8は, この RGD 配列を介して, インテグリン αvβ3/5と結合する. 一 方, C 末端には第 5, 8凝固因子と相同性をもつドメイン (C1,C2) を有する.MFG-E8は,アポトーシス細胞貪食能, 腫瘍免疫制御能やコラーゲン代謝能の制御など様々な機能 の制御に関わっている. 我々は, マウス悪性黒色腫内において, 血管周皮細胞 (ペ リサイト) が MFG-E8の主要な産生細胞であること, そし て MFG-E8が血管周囲に局在し, PDGFRβシグナルの制 御を介して腫瘍血管新生を促進させることを明らかにし た. これらの結果より,皮膚 傷治癒における血管新生の 制御に MFG-E8が関与する可能性が示唆された. そこで, 今回我々は皮膚 傷治癒における MFG-E8の役割につい て検討を行った. 方法 C57B/6 MFG-E8野生型 (WT) および MFG-E8欠損マ ウス (KO) を用いた.背部を剃毛した後に WT,KOマウス の背部に 5 mmトレパンを用いて皮膚全層欠損の潰瘍を 2 か所作成した. 傷はパーミロールで保護し, 2日毎に潰瘍 の大きさを写真撮影し, Image Jで面積を比較した. マウス の皮膚欠損を作製してから 0∼14日目の 部皮膚を採取 して 傷部位での MFG-E8の発現を比較検討した. また NG2, CD31に対する抗体を用いて血管量を計測した. 結果 マウスに皮膚欠損を作製してから 0, 4, 7, 14日目の 部 皮膚を採取し, 免疫染色を行い, MFG-E8の局在を解析し た. MFG-E8は皮膚欠損を作製後 4日目より肉芽組織内で 発現が増加し, 特に 7日目で多く発現がみられた. 次に WT, KOマウスを用いて皮膚 傷治癒を比較検討した. KOマウスの 傷治癒は WT と比較して遷 した. さらに, KOマウスに連日 MFG-E8を局注したところ, WT と同レ ベルまで 傷治癒が促進した (図 1).次に,皮膚欠損を作製 してから 7日目の 部皮膚を採取し, 免疫染色を行ったと ころ, KOマウスの肉芽部位の血管量 (CD31陽性血管内皮 細胞, NG2陽性ペリサイト) が低下していた (図 2). 結語 MFG-E8は 傷治癒過程において肉芽組織内における 血管新生を促進し, 傷治癒を促進する可能性が示唆され た. ―119― 文献情報 投稿履歴: 受付 平成26年10月28日 採択 平成26年12月4日 論文別刷請求先: 内山明彦 〒371-8511 群馬県前橋市昭和町3-39-22 群馬大学大学院医学系研究科皮膚科学 電話:027-220-8284 E-mail:akihiko1016@gunma-u.ac.jp
北関東医学会奨励賞
2015;65:119∼120謝辞 平成 27年度北関東医学会奨励賞を頂くにあたり, ご推 薦及びご指導頂きました群馬大学大学院医学系研究科皮膚 科学 石川治教授, 茂木精一郎講師をはじめ, 教室員の 方々に深く感謝いたします. 文献
1. Motegi S, Leitner WW, Lu M, Tada Y, Sardy M, Wu C,
Chavakis T,Udey MC. Pericyte-derived MFG-E8 regulates pathologic angiogenesis. Arterioscler Thromb Vasc Biol 2011;31:2024-2034.
2. Motegi S, Garfield S, Feng X, Sardy M, Udey MC. Potentiation of platelet-derived growth factor receptor-β signaling mediated by integrin-associated MFG-E8. Arter-ioscler Thromb Vasc Biol 2011;31:2653-2664.
3. Uchiyama A,Yamada K,Ogino S,Yokoyama Y,Takeuchi Y, Udey MC, Ishikawa O, Motegi S. MFG-E8 regulates angiogenesis in cutaneous wound healing. Am J Pathol 2014;184:1981-1990. 泌蛋白質 MFG-E8による皮膚 傷治癒の制御 図1 WT, KOマウスでの 傷治癒の比較. KOマウスでは WT マウスと比較して 2∼10日目 にかけて 傷治癒が遷 した. また, MFG-E8蛋白を KOマウスに投与した群では WT と同様の 傷治癒が見られた. 図2 WT, KOマウスでの肉芽部位での血管量の比較. KOマウスでは WT マウスと比較して 血管量が低下していた. ―120―