Title
犬の正常皮膚およびアトピー性皮膚炎に対するnarrow band
UVB 照射の影響に関する研究( 内容と審査の要旨(Summary)
)
Author(s)
望月, 貴子
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(獣医学) 甲第387号
Issue Date
2013-03-13
Type
博士論文
Version
none
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/48013
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏名(本(国)籍) 主 指 導 教 員 名 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の要件 研究科及び専攻 研究指導を受けた大学 学 位 論 文 題 目 審 査 委 貞 望 月 氏 子(埼玉県) 東京農工大学 教授 岩 崎 利 郎 博士(獣医) 獣医博甲第387号 平成25年3月13日 学位規則第3条第1項該当 連合獣医学研究科 獣医学専攻 東京農工大学 犬の正常皮膚およびアトピー性皮席炎に対するnarrow band UVB照射の膨轡に関する研究 主査 岐阜大学 教 授 副査 帯広畜産大学 教 授 副査 岩手大学 教 授 副査 東京農工大学 教 授 副査 岐阜大学 教 授 夫 寿 準 郎 也 恒 利 克 田 熊 田 暗 頭 深 猪 安 岩 鬼 論 文 の 内 容 の 要 旨 太陽光線に含まれる紫外線は波長の長さにより,長い順にUVA,UVB,UVCの三種に分 けられる。紫外線を用いる光線療法は,副作用が少ない,侵輿性が低い,副腎皮質卒ル モン剤のような感染リスクがないなどの利点からヒトの乾癖,アトピー性皮膚炎,尋常 性白斑,菌状息肉腫などに対して広く応用されてきた。その紫外線療法の一つである
narrow band UVB(NB-UVB)は311nmをピークとする非常に狭い波長(311±2nm)の光源
を用いる治療法で,その作用機序は炎症のみられる皮膚における浸潤丁細胞および肥満 細胞の選択的アポトーシス誘導であり,波長の広い他のUVBを用いるよりも安全である。 一方,大の皮膚に対する紫外線の影轡は未だ明らかにされていない。 犬のアトピー性皮膚炎(CAD)は皮膚疾患の中で最も発生頻度の高い疾患のひとつであ り,拝みとそれに起因する症状のために犬と飼い主の"生活の質''は低下するため, 本疾患は小動物の臨床上重要な問題である。一方,CADの治療法には根本的な治療法は 現在存在しないため,ヒトと同様に対症療法として様々な方法が提案され評価されてい る。そこで本研究では,大の正常皮膚とアトピー性皮膚炎の皮膚に対する潤一UVB照射 の影響について検討した。第1章ではこれまでの紫外線療法ならびに大のアトピー性皮 膚炎について概説した。
ー175-第2章では大の皮膚におけるNB-UVBの影響を明らかにするため,健常大の皮膚に対 してヒトで安全な照射量の基準量とされている最少紅斑量(MED)を測定し,さらに健 常犬11頭の腹部皮膚に対する影轡を病理組織学的に検討した。その結果,大のMEDの 平均値はヒトと同様であり,また,大のMEDには種差,犬種差,年齢差は認められなか った。MEDを照射した大の皮牌では病理組織学的に表皮ならびに頁皮の異常は認められ なかった。その結果,MED量でのNB-UVB照射は犬の皮膚に対しても安全性が高いと推 測された。 第3章ではNB-UVBが大の炎症時に浸潤する細胞にどのような影響を与えるかを,免 疫組織学的に調べた。DNCBで誘発された皮膚の炎症では主に真皮に浸潤細胞が著しく 増加し,それらの細胞にはCD3,CD4,CD8などが発現していた。浸潤細胞が誘導された 皮膚にNB-UVBを照射し,これらの細胞をNB-UVB照射前後でその数を算出したところ, CD3,CD4,CD8などの陽性細胞数はNB-UVBを照射しなかった部位と比較し有意に減少 していた。これらのことからTリンパ球ならびにラングルハンス細胞はNB-UVB照射に より減少するものと考えられた。TUNEL法にて真皮に浸潤した細胞のアポトーシスの有 無を検討した。その結果NB-UVB照射部位のTUNEL陽性細胞数が有意に増加しており, 非照射部位でTUNEL陽性細胞はほとんど観察できなかった。これらのことからNB-UVB を炎症皮膚に照射すると,表皮あるいは浸潤細胞以外には傷害を与えることなしに,T リンパ球あるいはランゲルハンス細胞をアポトーシスに導くことが推定された。 第4章ではCADの犬3頭に対してNB-UVB療法を行い,その効果を評価した。その結 果,評価を行った3頭中3頭において治療終了時までに発赤の程度,厚みのスコア,症 状のスコアが減少した。皮膚バリア機能も照射回数の増加と共に改善した。またNB-UVB 治療中にみられる照射部位の紅斑や水痘形成などの副作用は認められなかった。 以上の一連の研究により,▲NB-UVBの照射はヒトにおけると同様に大の皮膚に対して も安全性が高く,CADの治療に応用可能なものと考えられた。また,NB-UVBのCADなど の炎症に対する影響はTリンパ球などの選択的アポトーシスによってもたらされる可 能性が示唆された。 審 査 結 果 の 要 旨 本論文は,今まで不明であった紫外線の大の皮膚に対する影響を探索し,さ らに犬のアトピー性皮膚炎に対する新規の治療法としてnarrow band ultraviolet B(以下NB-UVB)を評価した。この研究は,大の皮膚に対する紫外 線の作用ならびに潤一UVBを用いた皮膚疾患に対する光線療法について多くの 知見を与えるものである。 ヒトの医療分野では,光線療法のひとつであるNB-UVB療法が難治性のアトピ ー性皮膚炎に対する治療法として有効性が報告されている。光線療法は保健と
-176-治病の目的をもって赤外線,紫外線,可視光線を同時,または単独に応用して 施術をなすものと定義されており,■副作用が少ない,侵襲性が低いなどの利点 から尋常性乾療をはじめアトピー性皮膚炎や菌状息肉腫など様々な皮膚疾患の 治療に用いられている。 最初に大の皮膚におけるNB一肌Bの影響を明らかにするため,健常大の皮膚に 対して,ヒトで安全な照射の基準量とされている最少紅斑量(MED)を測定し, さらにNB-UVBの皮膚への影響を病理組織学的に検討した。大のMEDに種差,犬 種差,年齢差はなかった。病理組織学的にもMED量の照射では皮膚の傷害は認め られなかった。 次にNB-UVBが犬の炎症時に浸潤する細胞にどのような影響を与えるかを,免 疫組織化学的に調べた占DNCBで誘発された皮膚の炎症では主に真皮にCD3,CD4 あるいはCD8陽性の浸潤細胞が著しく増加していたが,それらの細胞はNB-UVB 照射後に著しく減少した。また照射後の真皮にはアポトーシス陽性細胞が有意 に増加していた。このことから大の炎症皮膚に潤一UVBを照射すると,浸潤した Tリンパ球がアポトーシスにより減少することがわかった。 アトピー性皮膚炎の犬3頭にNB-UVBを照射し,その効果を評価した。その結 果,評価を行った3頭中3頭において治療終了時までに発赤の程度,拝みのス コア,症状のスコアが減少した。皮膚バリア機能も照射回数の増加と共に改善 した。またNB-UVB治療中にみられる照射部位の紅斑や水癌形成などの副作用は 認められなかった。 以上の一連の研究により,NB-WBは犬の皮膚に対して安全性が高く,アトピ ー性皮膚炎の治療に応用可能なものと考えられた。また,NB-UVBのアトピー性 皮膚炎などの炎症に対する効果はTリンパ球の選択的アポトーシスによっても たらされる可能性が示唆された。 以上について,審査委員全員一敦で本論文が岐阜大学大学院連合獣医学研究 科の学位論文として十分価値があると認めた。 基礎となる学術論文 1)題 目:Minima、1erythemadose(MED)innormalcanine skin by irradiation of narrow-band ultraviolet B
(NB-UVB)
著 者 名:Mochizuki,T.andIwasaki,T.
学術雑誌名:TheJournalof Veterinary MedicalScience
巻・号・頁・発行年:in press