• 検索結果がありません。

津波堆積物の認定とその地震学・火山学的意義 学位論文内容の要旨

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "津波堆積物の認定とその地震学・火山学的意義 学位論文内容の要旨"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博 士 ( 理 学 ) 西 村 裕 一

学 位 論 文 題 名

津波堆積物の認定とその地震学・火山学的意義 学位論文内容の要旨

津波 堆 積 物 につ い て の 調査 研 究 は ,最 近にな って盛 んに行 われる ように なって きた分野 で ある, 特に近 年,世 界各地で 新しい 津波堆 積物を 調査す る機会 もあり ,一般 的性質にまで言 及できるようになってきた.しかしながら,調査方法もまだ試行錯誤的な段階にあり,個々の事 例につ いて詳 細な記 載を残す といった地道な作業を続けるべきであることに変わりはない.ま た,津 波堆積 物の調 査研究に は,地 震学・ 地質学 ・考古 学とい った異 なる分 野の知識や経験 も必要になってくる.これらの専門家間の交流も重要になってくるであろう,本論文では,1990 年代 は じ め から 筆 者 が 実施 し て き た現 世およ び歴史 時代の 津波堆 積物に 関する 調査研究 を 紹介し ,津波 堆積物 の分布形 態に基 づく津 波堆積 物の認 定手順 と示し ,さら に,津波堆積物 がもたらす新しい地震学・火山学的知見について述べる.

現世 の 津 波 堆積 物 に つ いて は ,1993年 北 海道 南 西 沖 地震 津 波 と2004年イ ン ド 洋 地震 津 波 に伴う 堆積物 につい て,分布 形態, すなわ ち砂層 の層厚 と粒度 の分布 を調べ た,いずれも,

津波発 生直後 に被災 地を訪れ ,ほば 同じ手 法で堆 積物を 記載し ,サン プリン グ試料を分析し た,い ずれの 調査で も,堆積 物に加 え,津 波の波 高や浸 入経路 につい ても情 報を集め,陸上 におけ る津波 の挙動 と堆積物 の関係 を考察 した. その結 果,海 砂を主 な構成 物とする堆積物 には,いずれも以下の特徴が見られることを確認した,(1)薄くシート状に分布する,(2)層厚 は海 岸 か ら 内陸 へ連続的 に減少 する. (3)平 均粒径 は海岸 から内 陸へ連 続的に 減少し, 遡 上限界付近では2.0ー2.5¢(fine sand)となる,

上で 示 し た 津波 堆 積 物 の分 布 形 態 は一 般的な ものと 考え, これら を基に ,古砂 丘や泥炭 の 中に埋 まって いる歴 史地震津 波の堆 積物を 識別し ,歴史 津波の 遡上高 ,浸水 域を検討した.

この際 ,類似 した堆 積物を形 成する 可能性 がある 高波堆 積物に ついて も現地 調査を実施し,

分布形 態に明 らかな 違いがあ ること を確認 した. 津波堆 積物の 認定は 砂丘中 の堆積物でも可 能であ るが, 低地や 谷地形に 広く発達した泥炭地は,津波堆積物の保存条件,調査の容易さ,

引き出 される 情報の 質と量, いずれにも適している,ここでは,北海道太平洋岸を襲った巨大 津波に 関して ,北海 道十勝地 方の泥 炭地を 詳しく 調査し ,津波 堆積物 の分布 と粒度特性の変 化に着目することにより以下の2点を明らかにした.

まず , 豊 頃 町十 勝 太 の 泥炭 地 で 複 数の 津 波 堆 積物 の 分 布 形態 を 追 跡 した 結 果 , 例え ば17 世紀 の 津 波 堆積 物(TSl)と12世 紀の 津 波(TS2)で 比較す ると, いずれも 内陸に 向かい 細粒化 するも のの, どの地 点で比較 しても ,TS1の 方がTS2よ りも粗いことがわかった.TS1の平均粒 径は, 海岸か ら700m付近 で1.0¢であり,1400m付近では2.2¢まで細粒化する,一方,TS2は,

700m付近で すでに1.8¢であ り,l100m地点で2.5¢まで 細かくなり,その先は消滅する,現世 の津波 堆積物 では, 遡上限界 付近の 粒径が2.0―2.5¢ であっ たこと を考える と,上の900m, 600m地点はTS1,TS2の それぞ れの遡 上限界 に近いと 言えそ うであ る.こ のよう に,同一地点

125

(2)

に堆 積し た 複数 の津 波堆 積物 に つい て粒 度の 変 化パ ター ンを 丹念 に 追跡 して比較す れぱ,

歴 史 津 波 の 相 対 的 な 大 き さ や 強 さ ( 波 高 や 流 速 ) を 検 討 す る こ と が で き る の で あ る . ま た , 大 樹 町 生 花 で は , 谷 か ら 丘 陵 斜 面 に 発 達 し た 泥 炭 地 に おい て系 統的 にTS1の 分布 を 調 べ た , 粒 径 の 変 化 に 着 目 す れ ぱ , 海岸 近く の 谷に 沿っ て海 岸か ら 約400m, 高度 約6m 浸入 する過程で,津波堆積は 徐々に層厚を減じ,平均粒径 は1.0¢まで減少する,さら に,側 斜面 を海抜12ー14mまで駆け上 がる過程で,2.0―2.5¢程 度まで減少する.これらの粒 度特性 は,この津波が谷底に 沿ってまだ先まで入り込ん だこと,および,側斜面をこの高度まで遡上 したこと,を示唆する .津波堆積物を基に,津波 の地形に沿って遡上していった過程をイメー ジできることがわかっ たのである.

さら に, 火 山性 津波 堆積 物に ついても,同様に砂層の分 布形態に着目して調査を実施 した.

ソー スと な る火 山の 近傍 では ,火山性津波堆積物は,様 カな形で新鮮な火砕物を取り 込んで 砂と一緒に堆積させる ことで,地震による通常の 津波堆積物とは異なる分布形態を示すことが ある.また,テフラと 津波堆積物の層序を詳しく調べることで,噴火過程における津波発生のタ イミングも知ることが できる.ここでは,1994年のラバウル噴火津波,1640年の北海道駒ケ岳噴 火津 波による堆積物の時空間 分布を調べ,以下の点を明ら かにした.(1)1994年ラバ ウル噴 火津波はブルカン火山 の噴火最贐期に発生し,遡 上高はマチュピット島周辺で3ー4mであった.

(2) 1640年駒 ケ岳 噴火 津波 は噴火活動のまさに開始時 に発生し,波高は噴火湾対岸 の伊達 市で約7.5m,室蘭丶一 丶登別でも3―4m以上あった .

126

(3)

学位論文審査の要旨 主査   助教授   谷岡勇市郎 副査   教授   笠原   稔 副査   教授   小山順二

副査   教授   平川一臣(北海道大学大学院      地球環境科学研究院)

学 位 論 文 題 名

津 波堆 積物の認定とその地 震学・火山学的意義

  津波堆積物の研究は1980年代後半に古地震研究の1っ として日本で芽生えた。当時から 歴史資料の無い時代の大津 波を知る唯一の研究手法であろうと大いに期待されてい た。

1990年代に入り、日本及び 米国の学者を中心に津波堆積物調査が盛んに行われるようにな った。最近では多くの研究 成果が発表され、新しい重要研究分野と認識されつっある。し かし、その多くの研究は、 個々の津波に対する津波堆積物調査研究にとどまり、最近の津 波堆積物から歴史記録のな い古津波による津波堆積物まで系統的に扱い、その一般的な特 徴を議論する研究に欠けて いる状況にある。特に津波堆積物の研究から津波遡上限界を知 り、津波波高分布を得るこ とは津波の規模を推定できるだけでなく、地震学的にも重要な 情報を与えてくれると期待 されている。さらに火山噴火にともなう津波にっては、もとも と希少な現象であることも あり、津波堆積物を調査し解析した例は過去に数例しかなく、

個々の津波の調査研究が待 ち望まれている。本論文は、このような現状にある津波堆積物 研究において、著者が1991年から様々な津波堆積物の調査研究に取り組んできた成果とし て、地震津波の堆積物研究 に対してはそれらを系統的扱い津波堆積物の一般的な認定基準 を得た上でその基準を古津 波に適用し新たな知見を得ることを目的とし、火山性津波堆積 物 研 究 に 対 し て は 噴 火 と津 波の 関連 を明 らか に する こと を目 的と した もの であ る。

  まず実際の津波の挙動が 明確な1993年北海道南西沖地震津波や2004年スマトラ地 震津 波の津波堆積物の分布と堆 積構造を詳しく記載して津波堆積物の特徴を論じ、さらに1994 年台風24号の高波堆積物も 記載し津波堆積物との違いを明確に示した。特に津波堆積物の 粒径が海岸から内陸ヘ連続 的に減少し、遡上限界付近では2.0―2,5¢(中央値)まで細粒 化する系統的な変化を発見 したことは本論文の優れた点であり、今後のさらなる研究展開

(流体力学的検証等)が期 待される。これらの基礎的知見に基づき、歴史記録のない時代 に発生した北海道太平洋沿 岸巨大津波による津波堆積物にっいて遡上距離や地形条件と津 波堆積物の粒度組成変化の 関係にっいて詳細に調査し、約500年に一回発生していると考

‑ 127

(4)

えられている巨大津波にも大きなぱらっきがあることを発見したことは本論文の優れた点 であり、今後の巨大地震の発生様式の研究に新たな展開を生む可能性がある。また以上の ように、実際の挙動が明確な最近の津波による津波堆積物と歴史資料もない古津波のよる 津波堆積物を系統的に扱った研究は従来の津波堆積物研究には無く、今後、津波堆積物を 扱う際にーつの突破口となると考えられる.とともに標準的解析手法としてさらに発展して く可能性がある。

  次に 、火山に ともな う津波っ いて、1994年ラバウル火山噴火にともなった津波と1640 年北 海道駒0岳にともなった津波を例に、火山近傍の火山性津波堆積物の記載から津波の 規模及ぴ、噴火から津波発生にいたる時系列にっいてそれぞれ重要な知見をもたらした。

1994年ラ パウル 噴火津波 について はブルカン火山の噴火最盛期に発生し、波高は3‑4mに 達し たことが分かった。1640年北海道駒0岳噴火津波は噴火活動の開始時に発生し、波高 は噴 火湾の対 岸で約7.5m、室蘭― 登別で3‑4m以上に達したことが分かった。従来、火山 噴火とそれにより発生した津波の関係について具体的な記載に基づく知見は乏しく、本研 究の成果は類例のない貴重な研究である。

  これを要するに、著者は、津波堆積物を研究する上で基礎的かっ重要な新しい知見を得 たものであり、津波堆積物を利用した古地震研究及び火山性津波の研究に対して貢献する ところ大なるものがある。

よっ て著者は 、北海 道大学博 士(理 学)の学 位を授与 される 資格ある ものと 認める。

‑ 128

参照

関連したドキュメント

(2012)による東北日本太平洋

From NASDA 近年の地震・津波の特徴とその被害 災害時における通信の役割 1) 近年の地震・津波の特徴とその被害 •

相模湾内における歴史地震津波による被害の 比較検討

歴史地震の津波による震源モデル推定には波高分布を

大正と元禄の関東地震については、これまで種々の調査研究が行われているが、これら以前の歴史時

歴史地震 第 19 号(2003) 173 頁 [講演要旨] 津波堆積物の特徴からみた 北海道東部太平洋岸の歴史津波の特性 北海道大学理学研究科 西村裕一

津波堆積物の 堆積過程は , Minoura and

1 1 大津波の痕跡からは,津波