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[講演要旨] 津波は陸上遡上時にどのような痕跡を残すのか?-堆積学的手法に基づく北海道沿岸域の検討例-

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歴史地震

第 19 号(2003) 174 頁

[講演要旨] 津波は陸上遡上時にどのような痕跡を残すのか?

−堆積学的手法に基づく北海道沿岸域の検討例−

独立行政法人産業技術総合研究所 海洋資源環境研究部門 七山 太

Research significances of run-up tsunami deposits by Sedimentary method, examples from coastal areas around Hokkaido NANAYAMA, Futoshi

Institute for Marine Resources and Environment, Geological Survey of Japan, AIST

津波堆積物とは,長周期の波動である津波またはそれ から派生した水流によって運ばれ,あるいはそれらの作 用を強く受けて形成されたイベント(非定常)堆積物の総 称である.その構成物質の粒径は砂サイズから数m オー ダーの巨礫まで,その堆積構造も多様であることが報告 されている(重野・七山,2002).また,これに関連する分 野も多様であり,近年,海岸工学,地形学,古地震学およ び地質学の各分野からのアプローチが盛んに行われて いるが,学際的な議論は余り活発には行われていないの が実情である.ところで海岸工学や地形学の世界におい ては,津波来襲時に遡上流(up flow)によって陸上や沿 岸湖沼に運搬されたものを“津波堆積物”と呼ぶ傾向が あるが,逆に陸上の堆積物が戻り流れ(return flow)によっ て海底に引き込まれて再堆積したものも,もちろんこの範 疇に含まれるはずである.

津波堆積物の 堆積過程は , Minoura and Nakaya (1991)等によって既に指摘されているとおり一様ではな く,その層相も最終的に定置する場所によって大きく異な る.例えば,遡上流により海岸域の湖沼系に流入した場 合,その下位は乱泥流堆積物のような級化層が存在し, 振動流により生じた掃流堆積物や懸濁粒子がその上位 を覆う(Bondevik et al., 1997).遡上流によって陸上に堆 積した場合,水流の影響を強く受けた堆積物が生じる. 一方,戻り流れによって浅海底に粗粒堆積物が再堆積 した場合,テンペスタイトに良く似た振動流の影響を受け た層相を示すことが報告されている(Fujiwara et al., 2000). さらに,戻り流れによって深海底に細粒物質が懸濁粒子 として運ばれ単純沈降した場合,ホモジェナイトと呼ばれ る厚層均一の堆積物が生じることが知られている(Cita et al., 1996)し,運搬される砕屑物が粗粒な場合,乱泥流が 生ずることも示唆されている. 古地震学の世界における津波堆積物研究意義は,古 文書に記されている史実の検証を行い,歴史地震の発 生間隔や遡上規模を客観的に評価することにあると言え る.さらに,古文書の存在しない地域や先史時代におい ては,この種のイベント堆積物を用いた古津波履歴の復 元のみが有効な指標となる場合すらある(Atwater, 1987.) 我々の研究グループでは,過去に 1993 年北海道南西 沖津波,1640 年北海道駒ヶ岳噴火津波や 1741 年渡島大 島噴火津波によって生じた津波堆積物の堆積学的検討 を行ってきた.さらにこれら津波遡上によって生じたイベ ント堆積物の堆積学的特徴に基づいて,北海道東部太 平洋沿岸域(根室∼釧路∼十勝海岸)の現世および歴史 ∼先史時代における古津波履歴研究を実施し,本研究 を今後津波被害軽減に如何に役立てるかについて現在 検討を行っている(佐竹ほか,本講演要旨). 現時点においても,これら陸上に残された津波堆積 物を用いることによって,古地震の再来間隔や古津波 の遡上規模の評価はある程度の精度で行なうことが出 来る.ただし,これらイベント堆積物の陸上側での分 布限界は必ずしも津波の遡上限界とは一致しないこと や,その後,風雨にさらされるため堆積物として保存 され難いことから,これらの分布状況からに基づく評 価はミニマムなものとなることは否めない.このよう な問題があるにしても,これらイベント堆積物の分布 状況を津波数値シミュレーションに反映させることに よって,過去の地震津波の震源の推定と津波の挙動の 復元がある程度可能であることが分かってきており, 現在,津波災害予測への応用を検討している(佐竹ほか, 本講演要旨). 引用文献: Atwater, B.F. (1987) Science, 236, 942-944. Benson, B.E. et al. (1997) Quant Res., 48, 192-204 Bondevik, S. et al. (1997) Sedimentology, 44, 1115-1131. Cita, M.B. et al. (1996) Sediment Geol., 135, 181-203. Fujiwara, O. et al. (2000) Sediment Geol., 135, 219-230. Minoura, K. and Nakaya S (1991) Jour.. Geol., 99, 265-287. Nanayama, F. et al. (2000) Sediment Geol., 135, 255-264. 重野・七山 (2002)地球科学,56,209-211.

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