博 士 ( 工 学 ) 関 口 信 一 郎
学 位 論 文 題 名
ケーソン構築工法に関する研究 学位論文内容の要旨
本研究 の目的は、防波堤を整備する上で課題となっている、ケーソン製作の省力化およぴ 大 水 深 高 波 浪 の 海 域 に 適 用 す る 新 形 式 ケ ー ソ ン 防 波 堤 の 開 発 に あ る 。 現在我 が国では 湾構造 物にRCケー ソンが 最も多く 採用さ れているが、その製作方法は配 筋をは じめ多くの工程を必要としており、基本的には初めて港湾用ケーソンが実用化され た100年前と変わっていない。
近年、 ケーソン製作の省力化や将来の熟練工不足などに対応するため、種々の構築工法が 開発されているが、.その多くは構造、施工、経済性などに問題があった。大水深高波浪の 海 域 に 適 用 す る た め に 開 発 さ れ た 新 形 式 防 波 堤 に つ い て も同 様 な 問題 が あ った 。 そこで 、本研究では、最初に港湾用ケーソンおよび新形式ケーソン防波堤に要求される性 能 を整理 し、性能 照査型 設計法に 沿って 鉄骨コン クリート 複合(SC)構造 を用い た新工 法(PFC工法 と称す )による ブレキャ ストフ オームケ ーソン および斜面スリットケーソン の研究項目を明らかにした。
プレキ ャストフ オーム ケーソン は高耐 久性埋設型枠、鉛直鉄筋に代えて突起付きH形鋼、
水平鉄 筋および分離低減型流動コンクリートから構成される。省力化および建設期間の短 縮を図り、建設コスト低減を実現するものである。
プレキ ャストフ オーム ケーソン の設計 上の課題 は、@ケ ーソン の外壁を構成するSC構造 板状部 材の曲げ耐カおよび最大ひび割れ幅の評価方法を明らかにすることおよび◎埋設型 枠 間 に 充 填 す る 分 離 低 減 型 流 動 コ ン ク リ ー ト を 開 発 す る こ と で あ る 。 前者に ついては 曲げ載 荷試験に よってSC構造板状 部材の 曲げ耐カおよびひび割れ性状を 把握し た。次い でSC構造 板状部材 に平面 保持が成 立する ことを確認し、それをRC構造に 置き換 えて算定した最大耐カと終局変位によって評価できることを明らかにした。さらに SC構造板 状部材に おけるH形鋼 の突起 の有無と高耐久性埋設型枠の有無と有限要素解析結 果から、突起付きH形鋼の付着応カと高耐久性埋設型枠のひび割れ幅抑制効果を定量化し、
SC構造板 状部材の ひび割 れ幅算定 式を構 築した。 提案し た曲げ耐力算定方法と最大ひび 割れ幅 算定式の 妥当性 は、突起 付きH形鋼の配置間隔をバラメータとしたSC構造板状部材 の曲げ載荷実験により評価した。
後者は 、高流動コンクリートと比較し製造管理が容易で経済性に優れ、ごく簡単な締固め によって狭隘な形状の空間や過密配筋の箇所に充填できる流動コンクリートの開発である。
増粘作 用を有する特殊分離低減型高性能減水剤を用いたコンクリートであり、実験によっ て締固め特性や充填性能を明らかにした。
PFC工 法は従来 構築が 難しいと 言われ る斜面板 を形成で きる。PFC工法によって製作され
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る斜面スリットケーソンは斜面によって水平波カを減少させ鉛直分カを滑動抵抗カに寄与 さ せ て 所要 提 体 幅 を減 少 し 、ス リ ッ トに よ っ て反 射 波 低減 を 図 るケ ーソン である。
斜面スリットケーソンの設計課題は、水理特性の解明および波力算定方法の確立である。
水理実験によって水理特性を明らかにした上で、直立消波堤と上部斜面堤の波力算定式を 用いて斜面スリット堤の波カが評価できることを明らかにした。
これらの研究に基づき、プレキャストフオームケーソンおよぴ斜面スリットケーソンの構 築について実証試験を行い、成果を確認した。
プ レ キ ャス ト フオー ムケーソ ンの製 作におい ては、 従来のRCケ ーソン と比較し50%の 工 期短縮 と75%の省 力化・ 省人化を 実現し た。建設コストの面では、工費に大きな割合 を 占める 高耐久性 埋設型 枠が特注 品となっ ているため、RCケーソンと比較しわずかに経 済 的 で あっ た 。 一 方、 斜 面 スリ ッ ト ケー ソ ン の場 合 は 、消 波 ブ ロッ ク被覆 堤と比較 し、約17.4%の工費縮減ができた。
今後の課題は以下の通りである。
プレキャストフオームケーソンに関しては、設計法および施工法についてほぼ確立できた。
製 作コス トで大き な部分を占める高耐久性埋設型枠の2次製品化によってコストダウンを 図 り、制 約条件無 しに従 来のRCケー ソンよ り経済的であることが普及の条件となる。設 計 面にお いては、 本研究 において 提案したSC構造板状部材の最大ひび割れ幅算定式をよ り一般化するため、追加実験を行う必要がある。
斜面スリットケーソンの設計に関しては体系的な水理実験によって独自の波力算定式を確 立することが望ましい。その場合、直立消波ケーソンに適用される、拡張した合田式を修 正して定式化を図る方法が考えられるが、遊水室後壁に波面が作用する瞬間(押上げ時II a)に 生ずる衝 撃砕波に関して後壁斜面の角度との関係から検討する必要がある。また、
斜面板の角度、直立部と斜面部の高さの比などによる水理特性の変化等、斜面スリットケ ー ソ ン の 水 理 特 性 を 体 系 的 に 解 明 し 、 設 計 に い か し て ゆ く こ と が 重 要 で あ る 。 さらに、他の防波堤形式と比較し所要天端が高くなることから上部工の形状を変えて天端 高を抑える研究や、高波浪時の斜面の戻り波等によるマウンドの洗掘を防止する根固めエ についての研究も必要である。それらの成果をふまえ、幅広い周期の波に対して消波機能 を 向 上 さ せ る2重 斜 面 ス リ ッ ト ケ ー ソ ン や 斜 面 透 過 ケ ー ソ ン の 開 発 に っ な げる 。 斜面スリットケーソンの構築に関しては、斜面板を安全かつ効率的に施工するため突起付 き H形 鋼 お よ び 高 耐 久 性 埋 設 型 枠 の 据 付 け 方 法 の 改 良 を 図 る 必 要 が あ る 。 斜面スリットケーソンの普及には、プレキャストフオームケーソンの場合と同様に、高耐 久 性埋設 型枠を2次製品化するか、波圧の厳しい箇所に限定して使用するとともに、施工 性 を あ げ る 研 究 に よ っ て さ ら に 経 済 性 を 追 求 す る こ と が 重 要 で あ る 。 我が国社会が成熟期に入り、社会基盤施設も維持管理を合めたライフサイクルを考慮に入 れ て整備 する時代 に入った。PFC工法は、従来工法と比較し極めて耐久性の高い高品質な プレキャストフオームケーソンおよび斜面スリットケーソンを経済的に効率よく構築でき る こ と が 実 証 さ れ 、 将 来 に わ た っ て 有 用 で あ る こ と が 明 ら か に な っ た 。
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学位論文審査の要旨 主 査 教授 佐伯 浩 副査 教授 角田與史雄 副 査 教授 藤田睦博 副 査 教授 三上 隆
学 位 論 文 題 名
ケーソン構築工法に関する研究
本研究の目的は、防波堤を整備する上で課題となっている、ケーソン製作の省力化お よ ぴ 大 水 深 高 波 浪 の 海 域 に 適 用 す る 新 形 式 ケ ー ソ ン 防 波 堤 の 開 発 に あ る 。 現在 我が国では港湾構造物にRCケーソンがもっとも多く採用されているが、その制 作方法は配筋をはじめ多くの工程を必要としており、基本的に初めて港湾用ケーソンが 実用化された100年前と変わっていない。
近年、ケーソン製作の省力化や将来の熟練工不足などに対応するため、種々の構築工 法が開発されているが、その多くは構造、施工、経済性などに問題があった。大水深高 波浪の海域に適用するために開発された新形式防波堤についても同様な問題があった。
そこで、本研究では、最初に港湾用ケーソンおよび新形式ケーソン防波堤に要求され る性 能を整理 し、性能 照査型 設計法に 沿って鉄骨コンクリート複合(SC)構造を用い た新 工法(PFC工法 と称す )による プレキ ャストフ オームケ ーソンおよび斜面スリッ トケーソンの研究項目を明らかにした。
プレキャストフオームケーソンは高耐久性埋設型枠、鉛直鉄筋に代えて突起付きH形 鋼、水平鉄筋およぴ分離低減型流動コンクリートから構成される。省力化およぴ建設期 間の短縮を図り、建設コスト低減を実現したものである。
プレ キャストフオームケーソンの設計上の課題は、@ケーソンの外壁を構成するSC 構造 板状部材 の曲げ耐カおよび最大ひび割れ幅の評価方法を明らかにすることおよび
◎ 埋 設 型 枠 間 に充 填 す る分 離 低 減 型流 動 コ ンク リ ー トを 開 発 する こ と であ る 。 前者 について は曲げ載荷試験によってSC構造版状部材に平面保持が成立することを確 認し 、それをRC構造に置き換えて算定した最大耐カと終局変異によって評価できるこ とから明らかにした。さら.にSG構造版状部材におけるH型鋼の突起の有無と高耐久性 埋設型枠の有無と有限要素解析結果から、突起付きH型鋼の付着応カと高耐久性埋設型 枠のひぴ割れ幅抑制効果を定量化し、SC構造板状部材のひび割れ幅算定式を構築した。
提案した曲げ耐カ算定方法と最大ひび割れ幅算定式の妥当性は、突起付きH形鋼の配置 間 隔 を バ ラ メ ー タ ー と し たSC構 造 板 状 部 材 の 曲 げ 載 荷 実 験 に よ り 評価 し た 。 後者は、高流動コンクリートと比較し製造管理が容易で経済性に優れ、ごく簡単な締 固めによって狭隘な形状の空間や過密配筋の箇所に充填できる流動コンクリートの開発 である。増粘作用を有する特殊分離低減型高性能減水剤を用いたコンクリートであり、
実験によって締固め特性や充填性能を明らかにした。
PFC工 法は 従 来 構築 が 難 しい と 言 われる斜 面板を 形成でき る。PFC工法に よって
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製作される斜面スリットケーソンは斜面によって水平波カを減少させ鉛直分カを滑動抵 抗に寄与させて所要提体幅を減少し、スリットによって反射波低減を図るケーソンであ る。
斜面スリットケーソンの設計課題は、水理特性の解明およぴ波力算定方法の確立であ る。水理実験によって水理特性を明らかにした上で、直立消波堤と上部斜面堤の波力算 定 式 を 用 い て 斜 面 ス リ ッ ト 堤 の 波 カ が 評 価 で き る こ と を 明 ら か に し た 。 これらの研究に基づき、ブレキャストフオームケーソンおよび斜面スリットケーソン の構築について実証試験を行ない、成果を 確認した。
プレキャストフオームケーソンの製作に おいては、従来のRCケーソンと比較し50% の工期短縮と75%の省力化・省人化を実現 した。建設コストの面では、工費に大きな 割合を占める高耐久性埋設型枠が特注品と なっているため、RCケーソンと比較しわず かに経済的であった。一方、斜面スリットケーソンの場合は、消波ブロック被覆堤と比 較し、約17.4%の工費縮減ができた。
以上、結論として、ブレキャストフオームケーソンに関しては、設計法およぴ施工法 ともに確立できた。製作コストで大きな部分を占める高耐久性埋設型枠の2次製品化に よってコストダウンを図り、制約条件無し に従来のRCケーソンより経済的であること が普及の条件となる。設計面においては、 本研究において提案したSC構造板状部材の 最大ひぴ割れ幅算定式をより一般化する必要はあるものの、斜面スリットケーソンの普 及には、プレキャストフオームケーソンの場合と同様に、高耐久性埋設型枠を2次製品 化するか、波圧の厳しい箇所に限定して使用するとともに、施工性をあげる研究によっ てさらに経済性を追求することが可能であることを示唆している。我が国社会が成熟期 に入り、社会基盤施設も維持管理を合めたライフサイクルを考慮に入れて整備する時代 に入った。PFC工法は、従来工法と比較し極めて耐久性の高い高品質な プレキャスト フオームケーソンおよぴ斜面スリットケーソンを経済的に効率よく構築出来ることが実 証され、将来にわたって有効であることを 明らかにした。
これを要するに、著者は新しい港湾構造物を開発したもので、港湾工学、海洋工学に 寄与するところ大なるものである。よって著者は北海道大学博士(工学)の学位を授与 される資格あるものと認める。
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