STZ誘発糖尿病ラットにおけるインスリン徐放デバ
イスの網膜機能への影響
著者
星 絢子
学位授与機関
Tohoku University
学位授与番号
11301甲第19134号
URL
http://hdl.handle.net/10097/00129229
博士論文
STZ 誘発糖尿病ラットにおける
インスリン徐放デバイスの網膜機能への影響
東北大学大学院医学系研究科医科学専攻 附属創生応用医学研究センター細胞治療分野 星 絢子1 目次 第 1 章 はじめに ... 3 第 2 章 研究背景と目的 ... 5 2.2. 研究背景 ... 5 2.2. 眼球および眼底組織の構造 ... 5 2.3. 糖尿病網膜症 ... 6 2.3.1. 概要 ... 7 2.3.2. 治療方法 ... 8 2.4. 糖尿病と治療法 ... 8 2.4.1. ペン型注入デバイス ... 9 2.4.2. ポンプ式注入デバイス ... 11 2.4.3. ドラックデリバリーシステム ... 11 2.5. 光硬化性樹脂を使用した薬物徐放デバイスの開発 ... 12 2.6. 本研究の目的 ... 14 第 3 章 研究方法 ... 15 3.1. デバイスの概要 ... 15 3.1.1. デバイスの作製 ... 16 3.1.2. デバイスのインスリン徐放性評価 ... 17 3.2. ラットへのデバイス埋植と網膜機能の評価 ... 18 3.2.1. ラットへのデバイス埋植 ... 18 3.2.2. 血糖、体重 ... 19 3.2. 3. 網膜電図 ... 19 3.2.4. RT-PCR ... 20 3.2. 5. 組織学的評価 ... 21 3.2. 6. 免疫染色 ... 21 第 4 章 結果 ... 20 4.1. デバイスのin vitro 徐放性 ... 20 4.2. 動物実験 ... 20 4.2.1. ラット皮下へのデバイス埋植 ... 20 4.2.2. ラットの体重・血糖値の推移 ... 20 4.2.3. ERG ... 21 4.2.4. RT-PCR ... 21 4.2.5. ラット眼球摘出と網膜評価 ... 22 第 5 章 考察 ... 23 第 6 章 結論 ... 27 第 7 章 参考文献 ... 29 第 8 章 図・表の説明 ... 33 第 9 章 謝辞 ... 47
2
(略語)
VEGF Vascular endothelial cell growth factor 血管内皮細胞増殖因子
MDI Multiple Daily Injection 頻回注射療法
CSII Continuous Subcutaneous Insulin Infusion 持続皮下インスリン注入療法
QOL Quality of life
DDS Drug Delivery System ドラッグデリバリーシステム
PBS Phosphate-buffered saline リン酸緩衝液
PBST PBS with 0.3% Triton-X100
STZ Streptozotocin ストレプトゾトシン
ERG Electroretinogram 網膜電図
RT-PCR Reverse Transcription Polymerase Chain Reaction 逆転写ポリメラーゼ連鎖反応
3 第 1 章 はじめに 日本人の糖尿病患者は 2012 年時点で 950 万人1)と考えられ、そのうち 35.4%に網 膜症を合併するとされている2)。糖尿病網膜症は代表的な失明疾患の1つで、これを コントロールすることは生活の質の維持にも重要になってくる。糖尿病網膜症は高血 糖により網膜の血管内皮細胞が傷害され、血管透過性の亢進、血管の閉塞、それに伴 う虚血、新生血管の出現といった順に病態を生じる。視力に問題が出るのは新生血管 が出現する増殖期に多いがそれまでは自覚症状が少ないことも多く、定期的な眼科検 査等がない場合は網膜症の進行に気が付きにくい。良好な視覚機能を維持するために は網膜症の発症・進行をできるだけ抑制することが必要であると考えられている。基 本的に血糖のコントロールが網膜症の進行を予防すると考えられているので、早期か らインスリンによる血糖値のコントロールを行い、網膜機能を維持することが重要と なる3-5)。 健常者の場合、インスリンは血液中に常に分泌(基礎分泌)されており、食後は大 量のインスリンを追加分泌することで血糖値が一定に保たれるように調整が行われ ている。インスリン分泌ができない場合、外部からインスリンを注入する方法がとら れている。インスリン注射製剤による頻回投与法や、インスリンポンプの装着による インスリンの持続皮下注入が挙げられる。頻回投与法では 1 日に数度皮下へのインス リン注射が必要であり、インスリンポンプはおよそ 3 日に 1 度、インスリン皮下投与 の為のチューブと針の交換が必要になる。 私は、持続的に一定のインスリンを分泌するシステムを作製することで患者は定期 的なインスリン投与の負担が軽減でき、うまく作用すれば網膜症の進行も抑制できる と考えた。このシステムで網膜機能に影響を与える可能性を確認できた場合、失明疾 患の1つである糖尿病網膜症の治療法の1つになる可能性も考えられる。この目的を 達成するために、患者負担が少ないようなインスリン徐放デバイス(以下デバイス) を作製することをまず試みた。インスリンの投与回数をできるだけ減らすために、長
4 期間の基礎分泌を補うデバイスを作製することを検討した。このために、細胞治療分 野でこれまで開発されてきた薬剤徐放システムの一部を応用することで検討した。ま ず光硬化性樹脂を用いてデバイスを作製し、高速液体クロマトグラフィーでインスリ ン放出量を評価した。このデバイスが一定量持続的にインスリンを徐放することを確 認した後に、ストレプトゾトシン(STZ)を腹腔内投与し 300 mg/dL 以上の高血糖状 態としたラットの腹部にデバイスを皮下埋植し、血糖値のコントロールができている か確認した。血糖コントロールを確認しながら、同時に網膜機能を評価するために網 膜電図(ERG)、遺伝子発現、網膜組織の免疫染色を行った。インスリンはデバイスか ら 1 日当たり 14.7 単位ずつ徐放されており、これは健常者の 1 日のインスリン基礎 分泌(18-32 単位/日)に近い値を示した。デバイスの埋植によりおよそ 1 カ月間、高 血糖状態のラットの血糖上昇を抑制した。また ERG を用いた眼科的検査では、非デバ イス処置群に比較して有意に網膜機能が維持されていた。 以上から、私が開発したデバイスはおよそ 1 カ月以上血糖上昇を抑制し、かつ網膜 機能を維持することが可能であるといえる。
5 第 2 章 研究背景と目的 2.1 研究背景 眼は生活の質の維持にとても重要な器官で、外界から 8 割の情報を受け取ると言わ れている。しかし、日本は特に超高齢化社会を迎えて眼疾患も増加しており視覚情報 を妨げる問題、特に失明疾患対策は1つの社会問題としても考えられている。失明疾 患は網膜や視神経にかかわるものが常に上位を独占してきており、これらへの対策は 喫緊の課題とも言える。糖尿病網膜症は代表的な失明疾患の1つで、世界中でさまざ まな対策が行われている。最近は網膜症の進行や黄斑浮腫に血管内皮細胞増殖因子 (VEGF)が重要な役割を担っていることが判明し 6)、抗 VEGF 抗体の硝子体内投与が 広く行われるようになった。しかし、この治療は硝子体注射を継続する必要があり、 患者負担や合併症のことなど問題もある。また、網膜症は一度進行すると非可逆的な 変化を取ることが多く、網膜内の神経細胞は傷害を受けやすい。一方、糖尿病の初期 から血糖コントロールが良好であると網膜症の進行もある程度抑制されることも報 告されており7)、眼科的観察や治療以外に内科的な血糖のコントロールの必要性も注 目されている。そこで私は、患者に負担の少ない方法で血糖をコントロールすること で網膜症の制御をすることができないかどうか、高血糖動物モデルを作製し検討した。 2.2. 眼球および眼底組織の構造 眼球は感覚器の一端を担う臓器で、光刺激を電気信号に変換し視覚情報として脳に 伝達する重要な機能を持つ。また、眼球の中は直接観察可能で、網膜にある血管は人 間の体で唯一外部から直視可能な血管であり眼疾患に限らず糖尿病、動脈硬化、高血 圧など様々な全身疾患に伴った変化を血管から評価できる重要な器官でもある8)。 眼球は眼球外膜・眼球中膜・眼球内膜の三層より構成される外壁と、水晶体・硝子 体・房水等の内容物により成っている。外膜に当たる角膜・強膜、中膜に当たる虹彩・ 毛様体・脈絡膜、内膜にあたる網膜は神経性網膜と色素上皮から成り、視覚情報形成
6 に重要な場所である(図 1)。 眼はカメラに例えられることが多く、外部からの光を屈折させ眼内に集光するレン ズの機能を担う角膜と水晶体、光量を調節する絞りの機能を担う虹彩、眼内で屈折し た光を網膜へ伝達する硝子体、光を電気信号に変換する網膜などからなり、電気信号 は視神経を介して脳へ伝えられる。 網膜は光刺激を受け取り電気信号に変えて視神経から脳へ伝達する機能を有する。 網膜は硝子体と脈絡膜の間に位置し発生学的に異なる内部(硝子体側)の神経網膜と 外部(強膜側)の網膜色素上皮で構成され、組織学的には 10 層に分類される(図 2)。 この 10 層は、内側から内境界膜、神経線維層、神経節細胞層、内網状層、内顆粒 層、外網状層、外顆粒層、外境界層、視細胞層の 9 層の神経網膜と最外層の網膜色素 上皮からなる。まず、網膜は光刺激を視細胞で受容し電気信号へ変換した後、双極細 胞と水平細胞に情報を伝達する。伝達した情報はさらに神経節細胞に伝達され、神経 節細胞の軸索は視神経を形成して大脳視覚中枢へ視覚情報を伝達する。 2.3. 糖尿病網膜症 糖尿病網膜症は高血糖により網膜の血管内皮細胞が傷害され、典型的な場合、①血 管透過性亢進、②血管閉塞・虚血、③新生血管形成の順に病態を進行させるのが一般 的である。これは臨床病期の①単純期、②前増殖期、③増殖期におおむね相当する。 糖尿病網膜症は常に失明疾患の上位に位置し、失明対策が模索されている代表的疾患 であるが、視力に問題が出るのは③増殖期に多く、視力障害が出るまで網膜症の進行 に気が付かない場合もある。網膜疾患は基本的に進行性で不可逆的な疾患であるため、 早期発見・早期治療が必要とされている9)。 2.3.1. 概要 糖尿病網膜症には 3 段階あり、以下で説明する。 (1) 単純糖尿病網膜症
7 初期の糖尿病網膜症で、視力に影響は見られないことが多く自覚症状も少ないこと が多い。高血糖により毛細血管の傷害から血管瘤(毛細血管瘤)が出現し点状・斑状 出血がみられる。蛋白質や脂肪が血管から漏れ出て網膜に硬性白斑を形成することも ある。これらは血糖値のコントロールで改善することもある。詳しい網膜の状態を調 べて治療方針を決定するため眼底の血管造影(蛍光眼底造影検査)を行うこともある。 (2) 前増殖糖尿病網膜症 単純網膜症より進行した状態で、この時期になるとかすみなど視力障害を自覚する ことも出てくるが、全く自覚症状がない場合もある。血管傷害が進行して網膜血管が 広い範囲で閉塞すると、網膜に十分な酸素が行き渡らなくなる領域が出現し、足りな くなった酸素を供給するために新しい血管(新生血管)を作り出す準備を始める。前 増殖糖尿病網膜症でこのような病態が確認された場合は、網膜症の進行を抑制するた めに網膜光凝固術を行う必要がある。 (3) 増殖糖尿病網膜症 糖尿病網膜症が進行し重症化すると、酸素の供給が途絶えるなどで光感受性が低下 する領域が出現し、また新生血管からの出血などで視野の欠損や視力低下が見られる。 新生血管は網膜内や硝子体に向かって伸びるが、脆弱な新生血管の壁はさまざまな 刺激で破綻しやすく網膜内や硝子体へ出血する。硝子体は眼球内の大部分を占める透 明な組織で、ここに出血が起こると視野に黒い影やゴミの様なものが見え飛蚊症と呼 ばれる症状を自覚したり、出血量が多いと急な視力低下を自覚したりする。また、増 殖組織といわれる線維性の膜が出現し、これが網膜を引っ張ることによって網膜剥離 (牽引性網膜剥離)を起こすことがある。この段階の治療には手術を必要とすること が多くなるが、手術が成功しても日常生活に必要な視力の回復が得られないこともあ る。
8 2.3.2. 治療方法 失明疾患の上位は網膜疾患で占められ、さまざまな治療法が世界中で検討されてい るが、糖尿病網膜症はその代表的な疾患である。現在は早期発見・早期治療で進行を 抑制することが基本的な治療法になっている。血糖コントロールが大前提であるが、 現在の代表的な眼科的治療をまとめた。 (1) 網膜光凝固術 網膜光凝固術にはレーザーが用いられ、通常は通院で行う。主に網膜の血液無還流 領域を中心に光凝固を行うが、新生血管の発生を予防したり、すでに出現してしまっ た新生血管を減らしたりすることを目的としている。光凝固は正常な網膜の一部を犠 牲にするが、新生血管を抑制し網膜の剥離予防にはやむを得ないとされている。この 治療方法は、今以上の網膜症の悪化を防ぐための治療であって、基本的に視力を改善 することを目的にはしない。まれに網膜浮腫が改善したりして視力が改善することも あるが、多くの場合、治療後の視力は不変、もしくは低下する。網膜症の程度によっ て、レーザーの照射数や照射範囲は異なる。適切な時期に施行されれば有効とされ、 失明予防のために大切な治療となる。 (2) 硝子体手術 レーザー治療で網膜症の進行を予防できなかった場合や、すでに網膜症が進行して 網膜剥離や硝子体出血が起こった場合に対して行われる治療になる。3 ポートシステ ムが基本で、眼内灌流液、照明器具、カッターから構成されるこのシステムは、顕微 鏡直視下で硝子体を除去しながら眼球内の出血や増殖組織の除去、剥離した網膜を復 元する方法である。出血の出現や増殖組織の形成には進行した網膜傷害が背景にある ために、手術で解剖学的な網膜の復位が得られても視力の大きい改善がみられないこ ともある。 糖尿病網膜症は不可逆的なことが多く、早期発見・早期治療が良いとされ、定期的 な眼科受診が推奨されている。また、糖尿病と診断された場合、早期から血糖コント ロールを行うことが網膜機能を維持するのに有効とされている。
9 (3) 薬物療法 眼科で利用される点眼や内服で第一選択にされるものはなく、硝子体出血などに対 して止血剤などが使用されることもあるが基本的に有効とされるものはない。一方、 眼内新生血管の研究が進み、増殖膜や黄斑浮腫の主要要因に血管内皮細胞増殖因子 (VEGF)が関わることが明らかになり10)、VEGF 阻害薬の開発が進んでいる。すでに複 数の抗 VEGF 薬が眼科領域でも使用されており、糖尿病網膜症と並び重要な失明疾患 である加齢黄斑変性に最初に使用された11,12)。加齢黄斑変性もその主病態である新生 血管の発生に VEGF が関わるが、抗 VEGF 薬は硝子体内に直接注射することで多くの患 者に有効であることが明らかになった。これで、これまで難治性とされてきた網膜失 明疾患も薬物治療の対象に考えられるようになり、特に糖尿病網膜症は病態の進行や 黄斑浮腫に VEGF が重要であるために、糖尿病網膜症に対しても盛んに使用されてい る13,14)。この方法はすべての患者に有効であるわけではないが、第一選択治療になり つつある。一方、この方法は眼内注射の継続が必要であり、合併症の問題などもある ことから、新しい治療法あるいは投与方法の改善が望まれている。 2.4. 糖尿病と治療法 糖尿病は慢性の高血糖状態を主徴とする代謝性疾患群で、その発生機序により、1 型、2 型、その他特定疾患や機序によるもの、妊娠糖尿病の 4 つに分類される。血糖 上昇を抑制する因子としてインスリンがあげられる。 インスリンは膵臓のランゲルハンス島β細胞から分泌されるペプチドホルモンの 1 種で、血糖の上昇を抑制する作用がある。β細胞の細胞膜にはグルコーストランスポ ーター(GLUT2)が存在し、血中のグルコースを取り込んでいる。食事などにより血中 のグルコース濃度が上がると、GLUT2 を介しβ細胞内に取り込まれたグルコースは TCA 回路などで代謝され、この際にエネルギー(adenosine triphosphate:ATP)が生成さ れる。ATP はカリウムチャネル(K+チャネル)を閉鎖し、K+が細胞内に蓄積することで 細胞内が正に帯電する。その結果、細胞膜の脱分極が起こり、カルシウムチャネル(Ca2+
10 チャネル)が開口する。開口した Ca2+チャネルを介して細胞内に Ca2+が流入し、その 刺激によって分泌顆粒内に存在するインスリンが血中へ放出され血糖上昇の抑制に 働く。この一連のインスリン分泌機序によって、体内の血糖濃度は常に一定に保たれ ている15)。 この膵臓β細胞からのインスリン分泌の低下、または肝臓や筋肉、脂肪組織といっ たインスリン標的臓器でのインスリン抵抗の増大によって相対的なインスリン不足 が起こり、慢性的な高血糖状態につながり糖尿病の原因となっている。 糖尿病治療の目的は、血糖値をコントロールし健康寿命16)を保つことで、基礎的な 治療は食事・運動療法となる。患者自身が自らの生活を把握し、適切な食事や運動を することで日々の血糖値を良好にコントロールすることが重要になる。
インスリンの投与療法として、頻回インスリン療法(Multiple Daily Injections: MDI)と持続皮下インスリン注入療法(Continuous Subcutaneous Insulin Infusion: CSII)が挙げられる。そしてこの投与方法にさまざまな工夫が行われてきた。一つは インスリンを投与するための注入器(デバイス)の作製である。MDI ではインスリン 注入デバイス(ペン型注入デバイス)が、CSII ではポンプ式注入デバイスが用いられ る。これらのデバイスは治療上の安全性・有用性のほかに、患者の使用感・利便性に 配慮し QOL の向上を目指し開発された。 2.4.1. ペン型注入デバイス ヒトインスリン製剤には、追加分泌を補うもの、基礎分泌を補うもの、両方を補う ことができるものがある。食後急激に上がる血糖には追加分泌として速効型のインス リン製剤を、常時分泌されている基礎分泌を補うには持続型のインスリン製剤を必要 とする。 ペン型の注入デバイスにより患者自身が自らにインスリンを投与し、血糖を管理す ることが可能となった。初期は、インスリンバイアル製剤と専用シリンジが使用され ていたが、医療従事者と専門としない者の間で効果に差が出る17)など問題も多かった。
11 これを改良したものが『ペン型』のインスリン注入デバイスである。投与毎にイン スリンをバイアルからシリンジで吸引する必要もなくなり、利便性の向上から患者の 食事等、個々人の生活により柔軟に対応できるようになったという報告もある 18,19)。 このデバイスは機械的に投与量を設定することが可能であり、医療従事者とそうでな い者の間で投与量に差は見られなかった17)。このことから、インスリン投与精度にお ける信頼性の確保ができたといえる。『ペン型』はその後、操作性の向上や、患者の年 齢や状態に合わせて投与が容易になったものなど、患者個人の QOL を高めるにはどう したらよいかを元に様々な開発が行われた。患者自身がそれぞれの生活に合うインス リン製剤の選択が可能になったことで、インスリンによる血糖値の管理が行いやすく なった(図 3)。 このペン型デバイスを用いて、時効型、超速効型のインスリンを併用して 1 日数回 皮下注射を行うインスリン療法を頻回インスリン療法(MDI)という。 2.4.2. ポンプ式注入デバイス MDI が 1 日に数度皮下注を必要とするのに対し、持続皮下インスリン注入療法 (CSII)はインスリンが注入されたリザーバーをあらかじめポンプ本体にセットする ことで、機械的に決められた一定の基礎インスリン量を体内に注入することができる (図 4)。それでは補えない追加分泌分のインスリンは、ボタン操作で注入すること が可能である。 ポンプ本体は電子機器であり、患者個人に合わせたインスリンの最少・最大注入量、 注入速度の設定、また追加分泌分などの設定ができる。患者個人の生活環境での耐久 性や防水性、携帯性などが重要となり、インスリンの注入はポンプ本体から皮下へ伸 びるチューブと穿刺針から行われる。 MDI、CSII による血糖コントロールは従来のインスリン療法と比較して HbA1c(グ リコヘモグロビン:糖尿病の指標)の改善や合併症リスクの抑制に有効であることが 1993 年に大規模臨床試験である DCCT(The Diabetes Control and Complications
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Trial)から証明されており、その後の追跡調査からも CSII による血糖コントロール
が有効であるとされている20)。
日本では、持続血糖モニター(CGM:Continuous Glucose Monitoring)を使用し、 皮下間質液の糖濃度を随時測定、インスリンポンプにデータを送信することで随時血 糖を常に知ることが可能な SAP(Sensor Augmented Pump)療法(図 5)が 2015 年か ら開始されている。ポンプには間質グルコース値の 5 分間の平均が表示され、予期せ ぬ高血糖や低血糖の際はアラートで教えてくれる。これに伴い血糖の自己管理が従来 よりも簡単になったほか、MDI よりインスリン投与回数が減ること、生理的なインス リン分泌の再現が可能になったため、上昇重症低血糖のリスクも軽減した。 しかし、腹部に常にポンプを装着した状態になる為、患者個人の生活によってはス トレスに感じ、QOL の低下も考えられる。また、インスリン注入経路であるチューブ などによる皮膚トラブルも考えられる。 2.4.3. ドラッグデリバリーシステム 上述のように現状の治療法はインスリンの皮下注射を毎日数回行う必要があるこ とから、患者への身体的負担が大きいため、インスリンの徐放化を目的にした DDS の 開発が行われている。DDS の作製では、薬物を担持し放出制御するために基材を用い ることが一般的である。生分解型の基材としては、合成高分子のポリ乳酸、ポリグリ コール酸、ポリ乳酸―ポリグリコール酸共重合体や、天然高分子のコラーゲン、ゼラ チン、フィブリン等が使用される。基材の分解とともに担持されていた薬物が放出さ れる機構のため、初期に基材表面から一度に薬物が大量放出する初期バーストがある。 投与後は生分解するため、微粒子に加工して注射剤として用いれば繰り返しの投与が 簡便であることが特徴だが、分解生成物による炎症反応や副作用時に DDS の摘出が難 しく投与中止が困難であることが課題である。非分解型の基材としては、ポリビニル アルコール、エチレンビニルアセテート、ポリメチルメタクリレート、等が使用され ている。薬物を非分解性の膜でカプセル化したリザーバー型 DDS は、膜の透過性によ
13 って薬物放出速度を調節できるため、初期バーストを抑制した一定放出に適している。 先行研究として、インスリンの徐放化ではナノ粒子、マイクロ粒子、ヒドロゲル、 Scaffold(細胞の足場)を含む注射剤が報告されている。いずれも生分解性の高分子 を利用しており、インスリンの放出持続期間は数日から数週間と短いものが多い。本 研究では、当研究室で使用してきた非分解性のポリエチレングリコールジメタクリレ ートを用いたリザーバー型の DDS を開発し、インスリン放出持続性の長期化を試みた。 2.5. 光硬化性樹脂を使用した薬物徐放デバイスの開発 細胞治療分野では、低侵襲で持続的な眼内薬物投与法として、光硬化性樹脂を用い た薬物徐放デバイスを検討してきた。光硬化性樹脂は、ポリエチレングリコール鎖の 両端に光反応性のメタクリレート基を有するポリエチレングリコールジメタクリレ ートを使用している。ポリエチレングリコール鎖の長さが 14 の PEGDM(Polyethylene glycol dimethacrylate)と長さが 3 の TEGDM(Triethyleneglycol dimethacrylate) の混合比を変えることで、PEGDM/TEGDM ポリマーの低分子化合物(分子量 1000 以下) の透過性を制御できることがわかった22)。長鎖の PEGDM 組成が多いほど、PEGDM/TEGDM ポリマーネットワークの網目が広がり、その結果低分子の拡散(放出速度)が促進さ れるメカニズムが示唆されている。TEGDM は、歯科治療において支台形成として用い られてきた、生体安全性の確認されているバイオマテリアルである23)。本研究ではイ ンスリンを徐放するために、この PEGDM/TEGDM を応用した。インスリンは分子量が約 5800 のペプチドホルモンであり、分子量 1000 以下に対応した PEGDM/TEGDM 組成では 対応が難しいと考えられたため、中分子に対応した新規の PEGDM ポリマー組成の検討 が必要である。本研究では、PEGDM ポリマーネットワークの中分子拡散を促進するた めに、PEGDM を水で希釈して PEGDM 濃度を下げた PEGDM/Water ペレットを検討した。 PEGDM/Water でペレット化したインスリンを底面に多孔を有する TEGDM カプセルに内 包することによって、インスリンのバースト放出を抑制する検討を行った。
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2.6. 本研究の目的
PEGDM/TEGDM ポリマーを用いてインスリンが一定に徐放されるデバイスを作製し、 STZ 誘発糖尿病モデルラットにおいて血糖値コントロールが網膜機能に与える影響を 検討する。
15 第 3 章 研究方法 この章ではデバイスの作成方法と徐放性の評価、および STZ で誘発した高血糖状態 ラットにおけるデバイスの埋植と有効性の評価について実験方法を記す。 3.1. デバイスの概要 カプセルの基材は、1%の 2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン(開始剤)を含 有するポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDM、分子量 736、新中村化学工 業、14G)及び、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDM、分子量 286、新 中村化学工業、3G)を使用した。 デバイスはインスリン徐放ペレット(PEGDM/water)と、そのペレットを収容するリ ザーバー(TEGDM)とカバー(TEGDM)からなるカプセルから出来ている。インスリン徐放 ペレットは、水で希釈した PEGDM ポリマーにインスリンを 100 mg/mL で混合して紫外 線照射で硬化したペレットである。インスリンの放出性とペレットの硬化性を両立す る条件として 20% PEGDM/80% water(以下 P20 と略す)の組成を用いた。リザーバー は底面に孔(直径 0.5 ㎜)を有しており、孔密度に応じてインスリン放出速度が制御 できる。本研究ではラットの血糖値コントロールに必要なインスリン放出(2.75 Unit/per day)が可能な孔数として 21 を選択した。デバイスの寸法は、直径 14 mm ×厚さ 3.14 mm(外径)および直径 13 mm×厚さ 2.64 mm(内径)である(図 6)。 プラセボデバイスは、ネガティブコントロール薬物製剤としてリン酸緩衝食塩水(PBS) を用いて調製した。 カプセルの基材は、1%の 2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノンを含有するポ リエチレングリコールジメタクリレート(PEGDM、分子量 736、新中村化学工業、14G) 及び、トリエチレングリコールジメタクリレート(TEGDM、分子量 286、新中村化学工 業、3G)を使用した。
16 3.1.1. デバイスの作製(図 7, 図 8) 1. CAD-CAM 微細加工機(MicroMC2、PMT)を用いてカプセルの形状(図 7、凹、凸、 平面)をアクリル板(10 センチ四方)に切削した。 2. アクリル板をアルミ箔で囲み、そこにポリジメチルシロキサン(PDMS、東レダ ウコーニング、SILPOT184)を流してデシケーター内で減圧し 30 分脱気した。 その後 80 ℃のオーブンで 3 時間かけ熱硬化させ、カプセルの形状を転写した。 この転写物を鋳型とする。 3. 手順 2 で得た鋳型をプラズマクリーナー(ヤマト科学、Plasma Modifier PM100) を用いてプラズマ処理した。プラズマは酸素ガス流量 100 mg/min で 5 分間行 った。 4. プラズマ処理をした鋳型を素早くシランコーティングした。シランは 1H, 1H,2H,2H-Perfluorooctyltrichlorosilane, 97% (Alfa Aesar)を用いた。 プラズマ処理後の鋳型を 300 mL 体積の容器へ移し互いに触れないようにして 並べた。その後鋳型に付着しない様にしてシランを 10 µL 滴下し、容器はパラ フィンフィルムで覆い 3 時間以上静置した。 5. PEGDM,TEGDM の 5 mL に対し、硬化開始材である HMP(2-Hydroxy-2-methylpropiophenone)を 100 µL 溶解する。 6. ペレット作製の為、HMP を溶解した PEGDM 2 mL に対し MilliQ 水を 8 mL(1:4 の割合)で混合しこれを P20 溶液とする。デシケーター内で TEGDM,P20 溶液を 減圧し 30 分間脱気後、P20 溶液 1 mL に対しヒト組換えインスリン 100 mg を混 合したインスリン徐放性ペレット作成用調製液を作った。 7. 作製した鋳型凹に TEGDM 400µL をキャストし、押し型凸を重ねて 40 秒間紫外 線(365 nm, 強度 11.6 mW/cm2)照射して硬化した(図 8)。 8. 平面鋳型に手順 6 で作成したリザーバーのマイクロポア(徐放)面を押し付け た後、リザーバー内に手順 5 で作製したペレット調製液 350 µL をキャストし 40 秒間紫外線照射した(365 nm, 強度 11.6 mW/cm2)。
17 9. 平面鋳型の中心に TEGDM 150 µL をキャストし、手順 7 で得たペレットを含有 するリザーバーの非徐放(ペレット)面を TEGDM 上に押し付けて、240 秒間紫 外線照射(365 nm, 強度 11.6 mW/cm2)で硬化した。 10. 余分なバリをトリミングしてデバイスを得た。 3.1.2. デバイスのインスリン徐放性評価 デバイスを、クレモフォール 4%を含有する PBS 10 mL 中に、37 ℃、湿度 90%で インキュベートした。インスリンの濃度が飽和しないように定期的に内容液を新しい PBS と交換した。回収した PBS 中のインスリン量を測定するために、高速液体クロマ トグラフィー(Prominence; Shimadzu)を用いて測定した。逆相分析カラムとして、 YMC-pack ODS-AQ カラム(YMC)を使用した。移動相は、95.1%アセトニトリル/4.8%水 /0.1%トリフルオロ酢酸、および 99.9%水/0.1%トリフルオロ酢酸の 80:20(v/v)混 合液でセットし、15 分かけて 20:80(v/v)になるように 1 mL/分の流速で流した。 サンプルは 10 µL を注入し、検出波長は 220 nm とした。標準曲線を用いてサンプル 中のインスリン濃度を決定した。
18
3.2. ラットへのデバイス埋植と網膜機能の評価
本研究におけるすべての動物実験は、研究機関内の承認手続き(承認番号:2017 医 動-297-1)を経てから,国立大学法人東北大学における動物実験等に関する規定、ARVO (The Association for Research in Vision and Ophthalmology) の動物取扱マニュ アル、ならびに動物の愛護及び管理に関する法律を遵守して厳格に実施した。 3.2.1. ラットへのデバイス埋植 8 週齢、体重 200〜250 g のオスの Sprague Dawley ラット(SLC)を使用した。試験 の概要を表 1 に示す。 高血糖状態のモデルラットを作製するため、0.05 M クエン酸ナトリウム緩衝液 (pH4.25)にストレプトゾトシン(STZ;和光純薬)を溶解した STZ 溶液 3 ㎎/mL を 60 mg/kg で空腹時ラットの腹腔内に注射した。 Streptozotocin(STZ)は投与することで、膵臓ランゲルハンス島β細胞において、
活性酸素種(reactive oxygenspecies, ROS)産生を惹起し細胞死を誘導する24,25)。
これに伴いインスリン分泌が阻害されることで、高血糖がもたらす影響を検討するこ とに有用なモデルである。
STZ 投与から 1 週間後、血糖モニタリングシステム(Glucose Pilot、Avantor Biotech、
Radnor)を使用し尾静脈から血液を採取し、血糖値を測定した。血糖値が 300 mg/dL 以上のラットを高血糖状態とみなし、実験に使用した26)。 ラットを塩酸ケタミン(90 mg/kg)および塩酸キシラジン(10 mg/kg)で全身麻酔 した後、腹側を約 2 cm 切開し皮下ポケットを作り、デバイスのインスリン徐放面が 皮下に付くようにしてポケットに入れ、切開部を縫合した。 デバイス埋植日を 0 日とし、血糖値、体重、および網膜電図(ERG)を 12 週間測定 した。また、デバイス埋植から 4 週で眼球を摘出し免疫染色と、4, 8 週目の網膜使用 し RT-PCR を行った。
19 3.2.2. 血糖、体重 デバイス埋植からそれぞれ 1 週間毎に、Glucose Pilot を使用し尾静脈から血糖 を測定した。エサを 3 時間抜いて、空腹時血糖を測定した。同時に体重を測定した。 3.2. 3. 網膜電図 デバイス埋植からそれぞれ 4, 8, 12 週間後に、網膜電図を測定した。網膜電図は、 光を感じた際に網膜が発生する電位の変化を記録し、網膜が正常に働いているかどう かを判断する検査である。網膜電図に使用する主要な機器は以下の通りである。 ・誘発反応記録装置(PuREC):視覚刺激等から誘発された網膜電位を電極から検出 し生体信号増幅器で増幅する装置。増幅された信号はデジタル信号に変換され、変換 されたデジタル信号はコンピュータによって計測処理される。コンピュータでは、デ ジタルフィルタ処理、波形の加算処理を行い計測・表示に必要な波形の抽出が行われ る。 ・LED 発光装置:本機器に接続された PuREC から出力される同期信号を受け、誘発 される生体電位を導出するための光刺激を行う装置。また、誘発反応測定装置等と連 動し、ERG の記録を行う。 ・角膜電極:刺激用の白色 LED とコンタクトレンズ電極が一体になっており、角膜 上に装着しその上から刺激光を眼球内の網膜へ照射することができる。 3 時間以上暗闇で暗所に慣らしたラットを、測定の 30 分前に塩酸ケタミン(90 mg/kg) と塩酸キシラジン(10 mg/kg)の混合物で麻酔し、網膜の測定がしやすいよう瞳孔散 瞳薬であるミドリン P(1%トロピカミド、2.5%フェニレフリン、参天製薬)を眼球 に滴下した。 刺激は発光ダイオード刺激装置を用いて、−1.523、−0.523、0.477、および 1.477 log [cd*秒/m2]の単一ホワイトフラッシュ刺激を行った。測定中はラットを加温パッド (FHC-HPS RM25906;室町機械)を用いて 37 ℃で保温した。a 波の振幅はベースライ ンから最大 a 波ピークまでを測定し、b 波は最大a波ピークから最大 b 波ピークまで
20
を測定した。振動電位の 3 番目のピークの潜時を調べた。
3.2.4. RT-PCR
RNA の抽出には RNeasy Plus Micro Kit(Qiagen,)を使用した。
デバイス埋植から 4 および 8 週目の眼球を摘出後、網膜を丁寧に剥がした。これを Kit 付随の Buffer RLT:メルカプトエタノール=100:1 溶液中に入れ、バイオラプタ ーで充分に破砕した。Kit を使用し RNA を抽出後、SuperScript® Ⅲ First-Strand Synthesis SuperMix(Invitrogen,Tokyo,Japan)を使用し逆転写反応を行い、cDNA を 作製した。
作製されたラット網膜の cDNA を用いて、RT-PCR を行った。LightCycler FastStart DNA Master SYBR Green I 試薬(Roche)と、プライマーは PKC-β,γ,Caspase-3,VEGF の 4 種を使った。選んだ理由は後述する。
PCR 反応の条件は熱変性(95 ℃,10 秒)、アニーリング(60 ℃,10 秒)、伸長反応
(72 ℃,10 秒)を 45 サイクル繰り返した。LightCycler 装置(Roche, Meylan, France)
で計測されたデータは全て内在性対照のの GAPDH 発現レベルに合わせて比較し、比較 Ct 法によって相対的発現レベルを得た。 図 9 は高血糖に影響を受ける網膜内遺伝子発現を示している27)。これらの遺伝子発 現を先んじて評価した結果、プロテインキナーゼ C(protein kinase C:PKC)-β,γ, Caspase-3, VEGF において発現の上昇が確認できたので、この 4 つに絞って評価を行 った。 糖尿病網膜症に関与する代表的な糖代謝異常として、ポリオール代謝経路の亢進、 後期終末糖化産物(advanced glycation end products : AGEs)の蓄積、内因性ジア シルグリセロール(diacyl-glycerol : DG)の産生増加に伴う PKC の活性化、および
活性酸素による酸化ストレスなどが挙げられる28)。PKC の中でも PKC-β2 は網膜血管
に関与していて、活性化された PKC-β2 は網膜血管内皮細胞の増殖の促進や血管バリ
21 発現を誘導する役割も担っている。 VEGF は代謝異常の下流で細胞増殖因子やサイトカインの発現亢進に関与し、網膜 症の進行に影響を及ぼす。Caspase-3 は高血糖に伴う細胞死の評価に使用することが できる。PKC-γは作用が詳しくわかっていないが、予備実験の際に発現を示したので 糖尿病網膜症に関与する可能性のある因子として、以上 4 つのプライマーを使用して RT-PCR を行った。 3.2. 5. 組織学的評価 デバイス埋植後、デバイス周囲の皮膚組織を採取し 4%パラホルムアルデヒド(和 光純薬)に 4 ℃で 24 時間浸した。その後、組織をパラフィンワックス中に包埋し、 切片(厚さ 5 µm)を作製、ヘマトキシリンおよびエオシン(HE)で染色した。撮影は光 学顕微鏡(BZ9000; Keyence)で行った。面積の定量は Keyence の BZ-Ⅱ画像解析ア プリケーションを用いた。 3.2. 6. 免疫染色 網膜組織を免疫蛍光法によって調べた。網膜組織を準備するため、デバイス埋植か ら 4 週間後、デバイス埋植ラットを 4% paraformaldehyde-PB(pH7.4)固定液で灌流固 定し、眼球を摘出し同固定液で 4 ℃で 2 時間程度固定した。実体顕微鏡下で慎重に角 膜を除去した後、同固定液内(4 ℃)で一晩固定した。網膜を傷つけないよう水晶体 を取り除いた後、10%,20%,30%のスクロースを含む 0.1M PB(pH7.4)でそれぞれ 2 ~4 時間程度段階的に置換し、OCT compound(Sakura,Zoeterwoude)と 30% スクロ ース in 0.1 M PB(pH7.4)を 1:2 の割合で混合した溶液内で、さらに 4 ℃で一晩置換 した。その間、バイオスピンを使用してゆっくりと撹拌を行った。1:2 diluted OCT compound に包埋してエタノール-ドライアイス中で凍結し、8 µm の厚さで組織切片を 作製した。 切片を作成後、切片を 10 分ずつ 3 回に分けて PBST で洗い、ブロッキング血清(PBS
22
中 0.5%ウシ血清アルブミン[BSA],0.1%トリトン X-100)中で 2 時間室温で固定した。 それを洗浄後、PBS に一次抗体を添加し 4℃で一晩静置した。免疫染色には GFAP(1:400、 マウスモノクローナル;SIGMA)を使用した。翌日、一次抗体を PBST で洗い、そして 1:200 に希釈した対応する二次抗体を添加し室温で 4 時間静置した。二次抗体には Alexa Fluor 488 goat anti-mouse IgG (Moleculor Probes, Oregon, USA)を使用し た。切片を PBST 中ですすぎ洗いし、ガラススライド上に DAPI をマウントしてカバー ガラスで密封した。スライドをレーザー走査型共焦点顕微鏡(BIOREVO ; KEYENCE)で 観察した。
23 第 4 章 結果 4.1. デバイスのin vitro 徐放性 デバイスのin vitro 徐放結果を図 10 に示す。カプセルで覆われていないペレット のみでは、2 週間以内に放出のバーストを示したが、カプセル化されたデバイスは 4 週間にわたって一定の徐放速度を示した。回帰直線の傾きから推定される放出速度は、 ペレットのみでは 58.7 単位/日(0〜7 日)、カプセル化されたデバイスでは 14.7 単位 /日(0〜28 日)であった。 4.2. 動物実験 4.2.1. ラット皮下へのデバイス埋植 デバイス埋植部位の周囲に腫れは見られず、デバイスは移植部位から移動すること はなかった。図 11 は、デバイス埋植 4 週間後と 12 週間後のデバイス周辺の皮下組 織の HE 染色像を示している。筋肉とデバイスの間の被膜組織は、デバイス治療群お よびプラセボ群の両方で観察された。デバイス埋植部位の膜組織の拡大画像から、線 維組織が密であり、放出側と非放出側で組織にほとんど差がないことを示した。また、 図 12 は STZ 投与から 4 及び 12 週後の膵臓の HE 染色画像である。面積を定量したと ころ、図 13 から STZ を投与していない健常無処置群(STZ-)の膵臓に対し、STZ を投 与した 3 群[Insulin(STZ+), Placebo(STZ+), Non-treated(STZ+)]ではランゲルハン ス島に有意な萎縮が見られた。 4.2.2. ラットの体重・血糖値の推移 図 14 は、血糖値の変化を示している。ラットは STZ 投与で高血糖状態にした上で、 デバイス処置群[Insulin(STZ+)]、プラセボ処置群[Placebo(STZ+)]、デバイスを埋植 していない無処置群[Non-treated(STZ+)]、および STZ を投与しなかった健常な無処 置群[Non-treated(STZ-)]の合計 4 群での結果である。 血糖値の有意な減少は、デバイス処置群とプラセボ処置群との間で 72 日間、無処
24 置群との間で 35 日間見られた。この期間はデバイス処置群と健常無処置群の間に有 意な差はなく、効果的に血糖の上昇を抑制できたと考えられる。しかし、デバイス埋 植から 42 日目以降、デバイス処置群と健常無処置群の間に有意な差が観察され、こ れ以降はデバイスからのインスリン徐放が有効ではなく、血糖上昇が抑制できなかっ たことを示している。 図 15 は、体重の変化を示している。デバイス処置群は、デバイス埋植から 4 週間 は健常無処置群と同じく体重増加が見られた。その後、デバイス処置群の体重が減少 し始め、デバイス埋植から 64 日後にデバイス処置群と健常無処置群の間に有意な差 が観察された。また、デバイス処置群とプラセボ処置群、または無処置群ではそれぞ れ 79 日間、72 日間にわたって体重に有意差があった。デバイスで血糖の上昇を抑え ることで、健常無処置群と同等の健康を維持できることが示唆された。図 16 は、8 時 から 17 時にかけて 10 時間連続して測定した血糖値を示している。ST デバイス処置 群は、埋植から 3 日目は STZ を投与していない健常無処置群より血糖値が有意に低い 時間があった(投与 1 時間目、10 時間目)。しかしデバイス埋植から 1 週間経過する と、健常無処置群と有意差はなかった。 4.2.3. ERG 図 17-A1,2,3 は、それぞれデバイス埋植から 4、8、12 週間後の代表的な暗順応 ERG 波形を示している。ERG は光刺激開始時を 0 とし、約 30 msec 後に現れる負の極点を a 波、その後に続く小さな 3~4 個の振動を律動様小波といい、その後に現れる正の極 点を b 波と呼ぶ。0 から極点までの時間を潜時、振幅を感度とし、a 波、b 波の光感度 (図 17-B)と潜時(図 17-C)を光刺激の強度毎にグラフで表した。 光刺激は図 17-B1,5,C1,5 が-1.523 log(cd×seconds / m2)、図 17-B2,6,C2,6 が-0.523 log(cd×seconds / m2)、図 17-B3,7,C3,7 が 0.477 log(cd×seconds / m2)、 図 17-B4,8,C4,8 が 1.477 log(cd×seconds / m2)となっている。 どの群においても 4 週の間振幅は低下し、4 週目以降 Rod-b 波において、健常無処
25 置群の振幅があまり変化しないのに対し、STZ を投与したプラセボ処置群、無処置群 では週を追うごとに振幅値の減少と潜時の延長が見られた(図 17-B5~8, 図 17-C5~7)。 デバイス処置群は、デバイス埋植から 8 週目までは健常無処置群と似た光感度を記 録しており、プラセボ処置群、無処置群との間にも有意に差が見られた(図 17-B5~8)。 しかしデバイス埋植 12 週目になると、振幅、潜時共に低下し、健常無処置群との間 に差が見られるようになった(図 17-B5~8、図 17-C1~3)。 4.2.4. RT-PCR デバイス埋植から 4 週間後のラットの眼球を摘出し評価した。実験に使用したサン プル数は表 1 に示す。 図 18 は、GAPDH 遺伝子発現を内部標準化に利用した各遺伝子の相対的 mRNA レベル を示した。高血糖状態の無処置群は、健常無処置群よりも有意に高いレベルの PKC-γ、 PKC-β1、VEGF を示した。デバイス処置群では、PKC-β1 および VEGF 発現に高血糖状 態の無処置群との間に有意な差は認められなかったが、PKC-γおよびカスパーゼ-3 の 発現は無処置群またはプラセボ処置群よりも有意に低かった。 4.2.5. ラット眼球摘出と網膜評価 図 19 は、デバイス埋植から 4 週間後の網膜におけるグリア線維酸性蛋白(GFAP)発 現を示した。GFAP を指標として、STZ 投与による高血糖下での眼内環境の変化による ミュラー細胞の活性化状態を観察した。高血糖状態の無処置群の網膜は、健常無処置 群の網膜と比較して GFAP 陽性染色(赤破線内)を示した。プラセボ処置群の網膜も、 無処置群と同様の GFAP 陽性染色(赤破線内)を示した。対照的に、デバイス処置群 の網膜は、無処置群・プラセボ処置群の網膜のものよりも GFAP 陽性染色を示さなか った。
26
第 5 章 考察
本研究は、デバイスを作成し、高血糖ラットに対するデバイスの評価と網膜機能 への影響を検討した。インスリンの徐放化方法として、これまで当研究室が検討し てきた PEGDM/TEGDM システムを用いた。これは PEGDM と TEGDM の組成比によって低 分子(分子量 1000 以下)の放出速度を制御する方法だが、予備検討の結果、中分子 のインスリン(分子量 5800)は PEGDM/TEGDM ポリマーを通過しないことがわかっ た。 そこで、本研究では PEGDM と水の混合比によってインスリンの放出制御を試み た。図 10 に示したように、20%(v/v)PEGDM/water ペレットは初期バーストを伴いな がら約 2 週間インスリンの放出が持続した。初期バーストを抑制するために、TEGDM のリザーバーでカプセル化し、皮下へ一方向に徐放するためにリザーバー底面に多 孔を形成して放出速度と放出方向を同時に制御する検討を行った。その結果、図 10 からカプセル化したデバイスでは初期バーストが抑制され、30 日以上にわたり一定 放出することがわかった。また、図 15 に示すようにデバイス埋殖3、7日後に 1 時 間間隔で 10 時間連続の血糖測定では埋殖 3 日で正常ラットよりも低血糖傾向が見ら れたが、7 日目の測定では安定していると考えられた。極端な低血糖による振戦等の 変化も見られなかった。 これは、PEGDM/water ペレットとリザーバーの多孔からの 2 段階制御によって放出 が一定になったと考えられる。デバイスからの 1 日当たりの放出量は約 14.7 単位で あったが、血糖値が正常な人間のインスリン基礎分泌が 18-32 単位/日とされている ことから、デバイスは基礎インスリン分泌量に近い放出を示していた。インスリン ポンプを使用している 1 型糖尿病患者の基礎インスリン必要量は 1 日の総インスリ ン量の 30%程度であるという報告がある27)ことから、本デバイスを人に応用した場 合に基礎インスリンを補助することが期待できる。 デバイスのin vivo における有効性を検討するために、ストレプトゾトシン (STZ)誘発の高血糖ラットを作成し、腹部横面の皮下にデバイスを埋植後、血糖値
27 と体重を 12 週間評価した。まず、STZ の投与によってインスリンを分泌する膵臓ラ ンゲルハンス島の萎縮と変形が起きたこと、インスリンによる治療でランゲルハン ス島の回復がみられなかったこと(図 12,13)から、STZ 処置ラットはインスリン分 泌機能が低下した高血糖状態にあることを確認した。図 14 から、デバイスは 30 日 にわたって高血糖ラットの血糖値上昇を抑制した。その後は、血糖値が徐々に上昇 し、プラセボ処置および無処置群と同等レベルまで上昇した。これはデバイスから のインスリン放出が 30 日で終わったことを示している。またin vitro 放出の期間 と一致していたことから、生体内でも問題なくデバイスが機能していたことが示唆 された。また、PEGDM / TEGDM 基質の特徴として、デバイス周囲に被膜組織が形成さ れるものの、デバイスは組織に癒着せずピンセットで簡単に取り外すことができる ため、副作用や炎症などが起きた際には、デバイスを取り外すことで投薬を中止す ることが可能である。また、組織学的評価(図 12,13)で示したように、デバイスの 皮下埋植による侵襲性はデバイス埋植後 12 週目でもデバイス周囲の線維化以外には 異常な所見は見当たらず、長期的な埋植の安全性を示唆している。 一方、将来ヒトに応用するデバイスにするためには課題としてまずインスリン徐 放の精密な制御があげられる。今回のデバイスを埋植してからラットの生存に問題 はなかったものの 3 日目、4 日目で血糖値は、健常無処置群のラットよりも低い傾向 にあった[デバイス処置群(STZ +):63~110 mg/dL(7~28 日目)、健常無処置群 (STZ-):74~153 mg/dL(7~14 日目)]。このような低血糖は全身への影響だけで なく視覚機能に影響を及ぼすことが知られている28)ため、埋植初期の放出制御をよ り精密に行うことが必要と考えられる。また、現在頻用されている遅効型インスリ ンであるトレシーバやレベミル投与群との比較など市場調査を行った比較を行い評 価したい。この点については現在検討が進行中である。 インスリンの長期持続投与で血糖を制御することが慢性の高血糖刺激による網膜 機能に与える影響を評価するために、ERG を 12 週間評価した。STZ 誘発高血糖ラッ トでは網膜肥厚や ERG における振幅値の低下や潜時の延長が見られ、糖尿病網膜症
28 の初期症状を示すことが知られている29-31)。本検討においては、先行研究26)と同様 に高血糖ラットの ERG では ERG 振幅値の低下や潜時の延長が見られた。一方でデバ イス処置によって、埋植 4 週目で ERG の振幅値低下や潜時の延長が抑制された。ま た、インスリン放出が終わった 4 週目以降は、プラセボ処置群や無処置群と同等レ ベルにまで振幅値の低下や潜時の延長が見られた。これはインスリンによる血糖値 コントロールは網膜症初期症状を抑えることに重要であることを示唆している。今 回の STZ 誘発糖尿病モデルは急性期モデルで慢性に血管障害が進行する 2 型糖尿病 モデルよりも網膜症の出現が難しいと言われているが32)、網膜症が出現すると血糖 の制御による評価が難しくなる可能性や、デバイスから徐放されるインスリンの比 較的短期間で評価できる可能性を考えて STZ モデルを用いた。糖代謝異常がもたら す網膜の初期の変化を確認できると考えられる。臨床的に糖尿病患者に対して早期 の血糖値コントロールが網膜症発症の抑制に有効であることは知られており32,33)、 本研究においてはインスリン持続徐放によって網膜症抑制効果があることが動物実 験で示唆された。 インスリン持続投与の影響評価として網膜の遺伝子発現を評価した。STZ 投与後 4 週間でジアシルグリセロール-PKC 経路を活性化することが知られており32)、本研究 では網膜における PKC-γ、PKC-β1、VEGF、およびカスパーゼ-3 の mRNA レベルを評 価した結果、STZ 誘発した高血糖ラット(無処置群)では健常無処置群よりも有意に 高く、先行検討と同様に網膜変性に PKC が関連する可能性が示唆された。また、デ バイス処置により PKC-γおよびカスパーゼ-3 の発現は減少することが判明した。こ れはデバイスによる血糖コントロールが、網膜のアポトーシスシグナル伝達を抑制 したのではないかと考えられる。ただし PKC-β1 および VEGF の発現の抑制には至ら なかった。より詳細な網膜の遺伝子発現を評価し、インスリンの長期持続投与の影 響を評価する必要がある。 次に網膜薄切標本の GFAP 免疫染色を行った。GFAP は網膜ストレスを示唆する指標 として知られている35)。すなわち糖尿病網膜症の初期にミュラー細胞は GFAP の発現
29 を著しく上昇させる。図 19 から、網膜における GFAP 発現はデバイス処置により抑 制されることがわかった。GFAP の発現は網膜肥厚に関与することが知られている 36)。網膜肥厚などに伴い、網膜神経細胞間の伝達が阻害され、その結果、ERG の振幅 値の低下や潜時の延長に影響すると考えられる。したがって、デバイス処置による GFAP 発現の抑制は、ERG の低下と関連していることが推定される。今後は網膜の組 織評価や GFAP 発現の定量的な評価などを ERG 変化や遺伝子発現変化とともに評価す る必要があると考えられる。 MDI 療法に比べ毎日のインスリンの皮下注射が不要になった CSII 療法でも、2-3 日 に 1 度はポンプに付属したカニューレの取り換えが必要となり、これは生涯に渡り糖 尿病治療を続ける上で大きな負担になると考えられる。臨床的に利用可能な時効型イ ンスリン製剤 37)は数日しかもたない。開発したデバイスは 30 日以上の薬物徐放を可 能とするため、今後ヒト用に改善させたデバイスを開発することで患者の負担を軽減 することが可能と期待できる。また埋植に伴う外科手術は患者への負担である。今回 の成果をもとに、今後は本デバイスを発展させる方法として過去に当研究室で開発し た穿刺可能なシリコンリザーバーを本検討のデバイスに応用することによって、イン スリンの再注入が可能なデバイスへと発展させることなどを計画している。
30 第 6 章 結論 STZ 誘発糖尿病ラットにインスリン持続放出デバイスを埋植し、血糖値の長期コン トロールを実証した。このデバイスは、持続性高血糖刺激による網膜内の PKC シグ ナル伝達の PKC-γや Caspase3 などの変化などに関連し、STZ 誘発糖尿病状態におけ る網膜機能の低下を少なくても 4 週間抑制している可能性を示した。今回の結果 は、将来ヒトに応用できるようなデバイス作製の基礎的な研究の1つになったと考 えられる。
31 第 7 章 参考文献 1. “第 1 部 糖尿病に関する状況”,平成 24 年版:国民健康・栄養調査報告 厚生労働省,2012,p.32-34. https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/eiyou/dl/h24-houkoku.pdf(参照 2019-09-17).
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第 8 章 図・表とその説明
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40 図 6 デバイスの概要 デバイスの概要を示す。リザーバーは底面に 21 個の孔を有し、ここからインスリ ンが放出される。デバイスの寸法は図の通りである。カプセルの基材は、1%の 2−ヒ ドロキシ−2−メチルプロピオフェノンを含有するポリエチレングリコールジメタクリ レート及び、トリエチレングリコールジメタクリレートを使用した。
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図 10 デバイスのin vitro 徐放性
カプセルで覆われていないペレットは、2 週間以内に放出のバーストを示し(58.7 単
位/日)、カプセル化されたデバイスは 4 週間にわたって一定の徐放速度を示した(14.7
45 図 11 皮膚組織 1:x2 全体, 2:x20 非徐放面, 3:x20 徐放面, バー:400μm デバイス処置群(A、C), プラセボ処置群(B、D), デバイス埋植から 4 週間後のラ ット皮膚組織の組織学的評価(A、B), 同条件 12 週間後(C、D), *はデバイス埋植 箇所を示す。デバイスの上側(非徐放側)の拡大画像(A2、B2、C2、D2), デバイス の底面(薬物徐放側)の拡大図(A3、B3、C3、D3)。
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図 12 膵臓の HE 染色
各処置群の膵臓を組織学的に観察した。STZ 投与群(STZ+)では非投与群(STZ-)に比 較してインスリンを分泌するランゲルハンス島の萎縮が起きていた。一方、デバイス 処置群(Insulin)や Placebo デバイス群処置群(Placebo)でもランゲルハンス島が 委縮していた。STZ 処置ラットはインスリン分泌機能が低下した状態にあることを組 織学的に確認した。
47 図 13 膵臓の面積定量 デバイス処置群[インスリン-DDS(STZ +)]、プラセボ処置群[プラセボ-DDS(STZ +)]、無処置群[STZ +]による STZ 誘発高血糖ラットの膵臓ランゲルハンス島の面積 定量。無処置の健常群[非処理(STZ-)]をコントロールとして使用した。 * P <0.05: デバイス処置群、プラセボ処置群、無処置群(STZ+)と無処置健常群 (STZ-)で比較した。 Tukey の検定による一元配置分散分析を使用した。
48 図 14 血糖値の変化 デバイス処置群[インスリン-DDS(STZ +)]、プラセボ処置群[プラセボ-DDS(STZ +)]、無処置群[STZ +]による STZ 誘発高血糖ラットの血糖値。無処置の健常群[非 処理(STZ-)]をコントロールとして使用した。 * P <0.05, ** P <0.01:インスリン-DDS(STZ +)対プラセボ-DDS(STZ +), †P <0.05, ††P <0.01:インスリン-DDS(STZ +)対非治療(STZ +), ‡P <0.05, ‡ ‡P <0.01:インスリン-DDS(STZ +)対非治療(STZ-) Tukey の検定による一元配置分散分析、サンプル数を表 1 に示す
49 図 15 体重の変化 デバイス処置群[インスリン-DDS(STZ +)]、プラセボ処置群[プラセボ-DDS(STZ +)]、無処置群[STZ +]による STZ 誘発高血糖ラットの体重。無処置の健常群[非処 理(STZ-)]をコントロールとして使用した。 * P <0.05, ** P <0.01:インスリン-DDS(STZ +)対プラセボ-DDS(STZ +), †P <0.05, ††P <0.01:インスリン-DDS(STZ +)対非治療(STZ +), ‡P <0.05, ‡ ‡P <0.01:インスリン-DDS(STZ +)対非治療(STZ-) Tukey の検定による一元配置分散分析、サンプル数を表 1 に示す。
50 図 16 連続して測定した血糖の変化 デバイス処置群[インスリン-DDS(STZ +)]、無処置群[STZ +]による STZ 誘発高血 糖ラット、無処置の健常群[非処理(STZ-)]をの連続した血糖値の変化。無処置の 健常群[非処理(STZ-)]をコントロールとして使用した。 * P <0.05:インスリン-DDS(STZ +)対無処置(STZ -) Tukey の検定による一元配置分散分析を行った。
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図 17 ERG 結果
(A)STZ 誘発高血糖ラットにおける、刺激強度 0.477 log(cd×seconds / m2)での
暗所網膜電図(ERG)波形。デバイス埋植から 4 週目(A1)、8 週目(A2)、12 週目
(A3)の波形。デバイス処置(Insulin)、プラセボ処置(Placebo)、および無処置 (STZ +)。無処置の健常ラット(STZ-)を対照として使用した。 (B)STZ 誘発糖尿病ラットの a-波(B1)および b-波(B2)の平均振幅。デバイス処 置群(青い丸、[insulin-DDS(STZ +)])、プラセボ処置群(オレンジ色の丸、 [placebo-DDS(STZ +)])、無処置群(灰色の円、[非治療(STZ +)])とし、無処 置の健常ラット群(黄色の丸、[無処置(STZ-)])を対照として使用した。