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都市型水害におけるハザードマップ効果の考察

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政策研究大学院大学 まちづくりプログラム MJU09060 篠村進

1.はじめに

我が国では、近い将来「東海地震」や「首都直下地震」

などの大地震発生が予想されることや局所的な短期集中 豪雨の発生頻度が増加傾向にあるなど、大規模な自然災害 リスクが高まる中、災害対策として、従来の政府による「公 助」に加え、自分の身は自分で守る「自助」と地域や身近 にいる人同士が助け合う「共助」の必要性が指摘されてい る。

近年増加傾向にある都市型水害では、堤防や下水道など 現在のインフラ整備水準を大幅に超える降雨量を記録し ており、政府は「防災」から「減災」にその対策方針をシ フトさせている。また、国土交通省大規模降雨災害対策検 討会(2005年12月26日提言)では、①ハザードマップ等 の浸水危険度が実感できる情報提供の充実、②浸水に強い 建築構造等への誘導、③ハザードマップ等の内容を都市計 画区域の整備、開発及び保全の方針に反映、④災害危険区 域、市街化調整区域、土砂災害特別警戒区域の指定等の土 地利用規制により無対策で居住しないことへの誘導、⑤半 地下構造のマンションの抑制等の「氾濫時等も被害にあい にくい住まい方等へ転換する」との提言がなされている。

また、自治体レベルにおいても、水災害常襲地域でのなん らかの土地利用規制の検討が行われている。

しかし、ここで重要なのは、市場に正しい浸水リスク情 報が十分にあれば、売り手買い手が価格受容者として浸水 リスクを含んだ地価で取引を行うため、民間の経済活動に 任せておいても、水害対策の面において効率的な土地利用 がなされるという考え方である。この場合は、情報提供と いう政府の関与は正当化されない。

人々の水災害へのリスク認識が高まる一方で、自宅や周 辺地域の浸水リスクについて十分把握していないとのア ンケート結果もある。そこで本研究では、浸水リスクが地 価に及ぼす影響を人々の危険回避的な立地選択行動と捉 え、①浸水リスクに基づいた立地選択行動が行われている か、②政府が公表する浸水リスク情報が人々の立地選択行 動に影響を及ぼしているかについて実証分析を行う。

2.都市型水害の実態分析

従来、水災害は台風による高潮や大雨、比較的規模の大 きい河川からの外水氾濫(河川そのものの水位が上昇する ことにより、堤防の決壊や溢水により引き起こされる水害)

が主な原因であった。こうした治水対策の遅れによる災害 脆弱性は、河川改修などの治水対策の進捗により、一定程 度軽減されてきたと考えられている。

しかし、近年では都市部における局地的な短時間強雨が 多発しており、大河川と比べて比較的整備が進んでいない 都道府県管理の中小河川からの外水氾濫や下水道の排水 能力の不足などによる内水氾濫(降った雨が下水道の雨水 管やポンプ施設によってスムーズに河川に排水できない ことによって引き起こされる水害)が大きな問題となって いる。最も都市化の進んだ東京都では、水災害の発生原因 のほとんどが内水氾濫となっている。内水氾濫の原因とな る局地的な短時間強雨は、地球規模での温暖化や都市化の 進展がその主な原因と考えられている。我が国では、20 世紀を通じて人口はほぼ3倍に増加し、それらの人口の多 くは都市部において増加した。その結果、国土の1割を占 める洪水氾濫域(洪水時の河川水位より地盤の低い区域)

に、人口の半分、資産の4分の3が集中している。治水 対策の進捗により、水災害による浸水面積は大幅に減尐し てきているものの、人口集中化により浸水面積当たりの一 般資産被害額(水害密度)が急増している。また、都市部 での地下建物の浸水被害により死者が発生するなど、新た な問題も発生している。

2.1 1976年以降の1時間降水量50mm以上の発生回数

(出所:『平成21年版防災白書』

政府は頻発する都市型水害に対して、河川改修などの治 水対策に加え、水災害常襲地域での建築許可制度や貯留浸 透施設設置の義務づけなどの一種の土地利用規制、ハザー ドマップによる防災情報の公開などの政策を行っている。

3.ハザードマップによる浸水リスク情報公開 3-1.水防法の改正

都市型水害の増加に伴い、河川や下水道整備などの治水 対策と併せて、平時から住民に浸水の危険性を周知するこ とが重要視されるようになってきた。2000年9月に発生 した東海豪雨を受けて、2001 年に水防法(昭和 24 年6 月4日法律第193号)が改正され、都道府県において洪 水予報河川の指定を行い、その洪水予報河川について「浸 水想定区域」を公表することとなった。さらに、その後の 全国的な集中豪雨の多発を受け、2004年に水防法が改正 され、国・都道府県が作成する「浸水想定区域図」に基づ き、浸水危険度や避難場所、避難時危険個所などが記され た「洪水ハザードマップ」の作成・公表が市町村に義務付 けられた。

現在、洪水ハザードマップを公表すべき浸水想定区域の 対象である 1,296 市町村のうち公表済み市町村が 1,043 市町村であり、約8割の達成率となっている(2009年9 月 30 日現在)。東京区部においても全区が洪水ハザード マップを作成、公表している。

しかし、都市型水害のほとんどを占める内水被害の想定 浸水深については、水防法の公表義務付けの対象となって いないため、国土交通省の下水道担当部局が「内水ハザー ドマップ作成の手引き」として技術情報を自治体に提供す るにとどまっている。東京区部では、20 区が公表済みで ある(2010年2月現在)。

0 50 100 150 200 250 300 350 400

1976 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008

回数/1,000地点

1976~1986平均 160回

1987~1997平均 177回

1998~2008平均 239回

都市型水害におけるハザードマップ効果の考察

(2)

2

3.1 ハザードマップの公表状況(東京区部)

3-2.ハザードマップによる浸水リスク情報の公表効果の 理論的分析および仮説

合理的な土地需要者が浸水リスクについて十分な情報 を持っているという前提条件があれば、浸水リスクを「土 地の特性」として捉え、①浸水リスクに対して危険回避的 な立地行動を行い、②各土地の選択・移動が自由にできる とすれば、完全競争市場において社会経済厚生水準が最大 化され、水害対策面においても効率的な土地利用になる

(図3.1)。

3.1 土地の特性を「浸水リスク」とした場合の

効率的な土地市場

買い手の付け値関数Rは所得yの消費者が、浸水から の危険回避度αをもち、効用水準 u が与えられた時に浸 水リスクzhの土地に支払いうる最高の価格で市場価格関 数と接しており、買い手の危険回避度によって付け値関数 が異なってくる。

また、売り手のオファー価格関数Oは、ある技術条件 βを持つ売り手が与えられた利潤πを得なければならな いとした時に、浸水リスクzhの住宅地に提示できる最低 の価格で市場価格関数と接している。売り手の技術条件に よってオファー価格関数が異なってくるが、付け値関数と オファー価格関数が接している点で市場価格が形成され ている。

それぞれのタイプの技術条件をもつ売り手が、異なる危 険回避度を持つそれぞれのタイプの買い手に対して最適 な浸水リスクをもつ土地を供給していれば、社会経済厚生 水準が最大化され、水害対策面においても効率的な土地利

用となる。

つまり、売り手買い手双方が正しい浸水リスクに関する 情報を持っていて、その浸水リスクを承知の上で、リスク に見合った価格で購入するのは効率的であるといえる。

また、正しい浸水リスクを知っている合理的な居住者は、

住居の建築においてもリスクに応じた浸水対策を考慮し た設計手法を採用し、また日常的にも危険回避的な行動を とることができる。

ハザードマップで公表されている浸水リスクが客観 的・科学的に正しいという仮定が必要であるが、その浸水 リスク情報が十分に売り手買い手に伝わっていれば、浸水 リスクに基づいた付け値で地価が評価されていることに なる。しかし、浸水リスク情報が十分に周知されていなか ったり、売り手は情報を持っているが、買い手にその情報 がないという「情報の非対称性」が存在すると、水害対策 面において非効率な状態をもたらす可能性がある。また、

「リスク認識バイアス」による非効率の問題も生じる。

4.ハザードマップ公表が地価に与える影響に関する実証 分析

4-1.推計方法

本章では、杉並区のハザードマップの公表(2002年3 月)が地価に与える影響について、杉並区・世田谷区の 2002~2005 年 地 価公 示 デ ータ ( 住 宅地 ) を用 い て、

Difference-in-difference(以下 「DID」という)の手法 により分析を行う。分析対象自治体のハザードマップ公表 時期は表4.1となっており、公表時期のずれを利用して、

分析を行う。DID を用いることにより、ハザードマップ 公表と同時期に、ハザードマップ公表とは無関係の要因が 地価に影響した可能性(例えば景気悪化による地価下落)

やハザードマップ公開自治体と未公開自治体にそれぞれ 存在する固有の特質(例えばハザードマップ公開自治体は 未公開自治体に比べてもともと平均地価が低い)といった 地価への影響を取り除いて分析することができる。公示地 価の基準日は1月1日であるため、年ダミーは2002年な ら0、2003年以降なら1としている。

なお、地点ごとに洪水ハザードマップと内水ハザードマ ップの2つの想定浸水深があり、自治体によっては河川ご とに複数の洪水ハザードマップが存在するが、最も危険度 の高い浸水深を想定するのが合理的な居住者の危険回避 行動であると仮定し、複数あるハザードマップのうちで最 も危険度の高い浸水深を採用して分析を行っている。

また、河川の近くなど水災害常襲地域の住民は元々所得 が低いといった社会性を考慮し、所得の代理指標として、

町丁目ごとの「非オフィスワーカー世帯数比率i」を投入 している。

4.1 ハザードマップ公開時期

公表時期 対象河川等 想定降雨 公表時期 対象河川 想定降雨

千代田区 2002.6 2008.6 荒川

中央区 2004.9

港区 2005.4 2006.7 荒川

新宿区 2002.6

文京区 2002.6

台東区 2008.11 2008.11 荒川

江東区 2005.8

品川区 2006.3

目黒区 2005.3

大田区 2008.6 2008.6 多摩川

世田谷区 2006.3 2005.10 多摩川

渋谷区 2008.9

中野区 2002.9

杉並区 2002.3

豊島区 2004.10

北区 2008.5 2002.4 荒川

板橋区 2003.8 2005.8 荒川

練馬区 2004.6

①荒川

②中川・綾瀬川、

 芝川・新川(※)

③利根川

④江戸川

江戸川区 2008.7 2008.7 江戸川、利根川、荒川

墨田区 2008.6 荒川

荒川区 2007.3 荒川

葛飾区 2008.7 荒川

中小河川

中小河川の溢水 および 内水氾濫

東海豪雨

・総雨量589mm

・時間最大雨量114mm

※中野区 東海豪雨と 1995年9月4日集中豪

・総雨量264mm

・時間最大雨量112mm

内水氾濫のみ

2007.10

大河川

200年確 率による 河川堤防 の破堤を 想定

※100年 確率を想

足立区 2007.10

P(市場価格)、0(オファー価格)、R(付け値)

Zh(浸水リスク)

0(zh;π1, β1)

0(zh;π2, β2)

P (zh) R(zh;y, α1, u1)

R(zh;y, α2, u2)

0

自治体 ハザードマップ公開時期 グループ 杉並区 2002年3月 トリートメントグループ 世田谷区 2005年10月 コントロールグループ

【仮説】

地価に影響を与える他の条件を同一とした場合、浸水リス クがそのリスクに応じて地価に有意な負の影響を与えて いれば、効率的な土地利用がなされているといえる。

しかし、都市型水害が発生するような人口集中地域では、

情報の非対称性などにより、浸水リスクを知らないまま立 地選択が行われており、浸水リスクが地価に有意な負の影 響を与えていないのではないか。

ハザードマップの公表が危険回避的な立地選択行動につ ながっていないのではないか

(3)

3 4-2.推計結果(表 4.2)

①2002年と2003~2005年、②2002年と2003年、③ 2002年と2004年、④2002年と2005年の地価公示デー タをDID分析したところ、全ての推計において、ハザー ドマップの公表によって「杉並区の各想定浸水深が地価に 及ぼす影響」がどのように変化したかという公表効果に、

統計的に有意な影響が示されなかった。具体的には、想定 浸水深 L~Hii ダミーが地価に及ぼす有意な影響は示され なかった(説明変数X6~X8)。

各コントロール変数については、予想通りの符号を示し ている。自由度修正済み決定係数が 0.740~0.761 と一定 程度の高い説明力を持つことから、コントロール変数とし て妥当と思われる。

表 4.2 実証結果

注)***、**は、それぞれ1%、5%水準で統計的に有意であるこ とを示す。

5.ハザードマップの想定浸水深および浸水履歴が地価に 与える影響に関する実証分析

5-1. 推計方法

本章では、ハザードマップ「想定浸水深」と東京都が公 表している過去の「浸水履歴」が地価に与える影響の分析 を行う。1998~2008年の東京23区の地価公示データ(住 宅地)を用いて、ダブルログモデル(①)と線形モデル(②)

によりOLS分析を行う。

5-2.推計結果(表 5.1)

想定浸水深について、地価に有意な負の影響が示された のは浸水深Hのみであった。一方、過去の浸水履歴(過去 5年間の浸水回数)については、若干頑健性に欠けるもの の、浸水回数が増えるほど地価に及ぼす負の影響が大きく

なることが統計的に有意に示された。また、係数比較によ り、浸水履歴回数が地価に及ぼす影響は、想定浸水深より も大きいことが観察された。

各コントロール変数については、予想通りの符号を示し ている。自由度修正済み決定係数が0.925(推計OLS①)

と高い説明力を持つことから、コントロール変数として妥 当と思われる。

5.1 実証結果

注)***、**は、それぞれ1%、5%水準で統計的に有意であるこ とを示す。

6.浸水被害が地価に与える影響に関する実証分析 6-1.推計方法

第5章において過去の浸水履歴が地価に及ぼす影響に ついて大まかな実証分析を行ったが、本章では、2005年 9月4日、杉並区を中心に大きな被害が発生した集中豪雨

(総雨量263mm、時間最大雨量112mm、浸水被害5,827 棟)について、浸水被害の地価への影響をDIDの手法に より分析を行う。

標準誤差 標準誤差

X1(d_年) -0.029 *** 0.006 -0.013 * 0.007

X2(d_自治体) -0.067 *** 0.009 -0.061 *** 0.013 X3(d_想定浸水深L) -0.015 * 0.008 -0.009 0.011

X4(d_想定浸水深M) 0.008 0.012 0.014 0.016

X5(d_想定浸水深H) -0.047 *** 0.012 -0.044 ** 0.017

X6(X1*X2*X3) 0.020 0.014 0.011 0.023

X7(X1*X2*X4) 0.026 0.027 0.020 0.047

X8(X1*X2*X5) 0.050 0.032 0.045 0.055

ln(敷地面積) 0.083 *** 0.007 0.080 *** 0.010 ln(前面道路幅員) 0.140 *** 0.011 0.128 *** 0.015

容積率(%) 0.065 *** 0.011 0.057 *** 0.016

ln(東京駅からの時間距離) -0.209 *** 0.018 -0.213 *** 0.026 ln(最寄駅からの距離) -0.110 *** 0.005 -0.114 *** 0.008 非オフィスワーカー世帯数比率(%) -0.115 *** 0.026 -0.054 0.048 d_用途地域

d_路線

定数項 13.799 *** 0.081 13.850 *** 0.118

修正済R2値 F値 サンプル数

標準誤差 標準誤差

X1(d_年) -0.048 *** 0.010 -0.052 *** 0.010 X2(d_自治体) -0.064 *** 0.013 -0.063 *** 0.013 X3(d_想定浸水深L) -0.011 0.011 -0.014 0.011

X4(d_想定浸水深M) 0.012 0.016 0.009 0.017

X5(d_想定浸水深H) -0.042 ** 0.017 -0.043 ** 0.017

X6(X1*X2*X3) 0.014 0.023 0.018 0.022

X7(X1*X2*X4) 0.021 0.046 0.022 0.046

X8(X1*X2*X5) 0.045 0.054 0.046 0.055

ln(敷地面積) 0.078 *** 0.010 0.078 *** 0.010 ln(前面道路幅員) 0.138 *** 0.016 0.142 *** 0.016

容積率(%) 0.062 *** 0.016 0.065 *** 0.016

ln(東京駅からの時間距離) -0.203 *** 0.026 -0.208 *** 0.026 ln(最寄駅からの距離) -0.107 *** 0.008 -0.108 *** 0.008 非オフィスワーカー世帯数比率(%) -0.193 *** 0.051 -0.211 *** 0.051 d_用途地域

d_路線

定数項 13.835 *** 0.117 13.852 *** 0.117

修正済R2値 F値 サンプル数

0.761 0.740

0.000 0.000

ln(地価) 住宅地 ①2002~2005 ②2002,2003

係数 係数

yes yes

yes yes

904 456

yes yes

係数 係数

③2002,2004 ④2002,2005

454 450

ln(地価) 住宅地

0.000 0.000

0.752 0.755

yes yes

標準誤差

ln_敷地面積 0.072 *** 0.003

ln_前面道路幅員 0.165 *** 0.004

容積率(%) 0.016 *** 0.003

ln_東京駅からの時間距離 -0.227 *** 0.007 ln_最寄駅からの距離 -0.118 *** 0.002 非オフィスワーカー世帯数比率(%) -0.327 *** 0.008

d_想定浸水深L 0.008 *** 0.003

d_想定浸水深M -0.007 0.004

d_想定浸水深H -0.010 ** 0.004

d_過去5年間に1回浸水 -0.006 ** 0.003 d_過去5年間に2~4回浸水 -0.003 0.004 d_過去5年間に5回以上浸水 -0.044 *** 0.012 d_年

d_自治体 d_用途地域 d_路線

定数項 14.825 *** 0.033

修正済R2値 F値 サンプル数

標準誤差

敷地面積(㎡) 0.209 *** 0.007

前面道路幅員(m) 11.677 *** 0.441

容積率(%) -0.003 0.027

東京駅からの時間距離(分) -5.244 *** 0.279 最寄駅からの距離(m) -0.046 *** 0.002 非オフィスワーカー世帯数比率(%) -1.619 *** 0.073

d_想定浸水深L 11.611 *** 2.646

d_想定浸水深M 5.026 3.469

d_想定浸水深H -10.189 *** 3.592 d_過去5年間に1回浸水 -9.348 *** 2.343 d_過去5年間に2~4回浸水 -18.236 *** 3.152 d_過去5年間に5回以上浸水 -65.824 *** 10.510 d_年

d_自治体 d_用途地域 d_路線

定数項 1454.2 *** 16.063

修正済R2値 F値 サンプル数

yes yes 0.844 0.000 10724

地価(千円/㎡)住宅地 OLS②

係数

yes yes yes yes 0.925 0.000 10724

ln地価 住宅地 OLS①

係数

yes yes

(4)

4 DID を用いることにより、集中豪雨と同時期に、集中 豪雨とは無関係の要因が浸水地域と未浸水地域の地価に 影響した可能性(例えば景気悪化による地価下落)や浸水 地域と未浸水地域にそれぞれ存在する固有の特質(例えば 浸水地域は未浸水地域に比べてもともと地価が低い)とい った地価への影響を取り除いて分析することができる。

杉並区・中野区・世田谷区の2005~2009年地価公示デ ータ(住宅地)を対象に分析を行う。集中豪雨発生日が9 月4日であるため、年ダミーは2005年なら0とし、2006 年以降なら1とする。

6-2.推計結果(表 6.1)

①2005年と2006年、②2005年と2007年、③2005年 と2008年、④2005年と2009年の4つの地価公示データ についてDID分析したところ、①については、浸水箇所 の地価への有意な負の影響は見られなかったが、②~④に ついては、5%および10%で統計的に有意な負の影響が示 されたiii。各コントロール変数については、予想通りの符 号を示している。自由度修正済み決定係数が0.811~0.861 と一定程度の高い説明力を持つことから、コントロール変 数として妥当と思われる。

6.1実証結果

注)***、**および*は、それぞれ 1%、5%、10%水準で統計的 に有意であることを示す。

7.実証結果の考察

第4~6章の実証分析より以下のことが考察された。

① ハザードマップの公表は地価に有意な影響を与えてい なかった。つまりハザードマップにより公表された浸 水リスク情報にもとづき危険回避的な立地行動は行わ れておらず、現時点では、ハザードマップによる浸水 リスク情報の公表が「情報の非対称性」などの解消に 効果的とはいえない。(第4章)

② ①から、ハザードマップの「想定浸水深」に対応した ヘドニック価格は、人々がハザードマップの浸水リス ク情報に反応して修正した付け値ではなく、ハザード

マップ公開前から存在する現地の地形や周辺情報など ハザードマップ以外の情報に基づく付け値と考えられ る。(第4章) 想定浸水深「なし」に比べて、浸水危 険度「1.0m 未満」では、有意な負の影響は示されな かったが、浸水危険度「1.0m 以上」では、地価に有 意な負の影響が示された。(第5章)

③ しかし、②の地価に及ぼす負の影響よりも、浸水履歴 の回数が地価に及ぼす負の影響の方が大きいことが有 意に示された。これは、平時のリスク認識よりも、実 際に浸水被害を受けた場合の方が人々のリスク認識が 強まり、危険回避的な立地選択行動をとることを意味 すると考えられる。(第5章)

④ また、都市型水害が発生するような人口集中地域にお いては、浸水リスクを考慮せずに立地選択が行われて いることも予想されるが、そのような地域でも浸水被 害という外生的なショックによって危険回避的な立地 選択行動が行われることが観察された。(第6章)

8.まとめ

分析結果から、以下の提言を行う。

① ハザードマップにより公表された浸水リスク情報は、

危険回避的な立地選択行動につながっておらず、現時 点では、情報の非対称性やリスク認識バイアスの解決 策として有効とはいえない。

② 人々の立地選択行動は、ハザードマップの浸水リスク 情報よりも過去の浸水履歴に反応している。現時点で は、浸水履歴情報を効果的に周知することが、平時か らの浸水対策として有効であるが、東京都以外で浸水 履歴情報(浸水箇所、被害状況など)を詳細に公開し ている自治体はごく尐数に限られるため、積極的な情 報公開が効果的と考える。ただし、現在の技術水準に 基づき今後の浸水確率を予測しているハザードマップ と過去の浸水履歴とでは情報の意味が異なるため、両 者の違いを明示したうえで効果的に情報提供すること には意味があると考えられる。

他に人々の浸水リスク認識を高める方策として、実際 の不動産売買の際に、宅地建物取引主任者が行う重要 事項説明に浸水リスク情報を盛り込むことが考えられ る。

【参考文献】

 国土交通省河川局(2007) 「河川事業概要2007」

 国土交通省大規模降雨災害対策検討会(2005)「平成17年神田 川流域豪雨調査速報」

 国立国会図書館(2006)「最近の水害の状況と対策」、『調査と情 報』第544

 清水千弘(2002)「地価情報の歪み:取引事例と鑑定価格の誤差」、

西村清彦編『不動産市場の経済分析』pp.19-66. 日本経済新聞

 東京都HP「過去の浸水記録」

 内閣府(2001)『平成13年版防災白書』

 内閣府(2009)『平成21年版防災白書』

 内閣府政府広報室(2005)「水害・土砂災害等に関する世論調査 の要旨」

 中川雅之(2003)『都市住宅政策の経済分析』日本評論社

i 非オフィスワーカー世帯数比率=(販売従事者+サービス職業 従事者+保安職業従事者+農林漁業従事者+運輸・通信従事者+

生産工程・労務作業者)/世帯数 (出所:国勢調査)

ii 本稿では、以下の区分により分析を行っている。

 想定浸水深「L」=20cm 以上 50cm 未満

 想定浸水深「M」=50cm 以上 100cm 未満

 想定浸水深「H」=100cm 以上

 (基準)想定浸水深「なし」

iii 清水(2002) は、公示地価にはラグがあることを指摘している。

標準誤差 標準誤差

X1(d_年) 0.0152 ** 0.0065 0.1155 ** 0.0071 X2(d_H17集中豪雨浸水箇所) -0.0114 0.0093 -0.0032 0.0101 X3(x1*x2) -0.0031 0.0124 -0.0233 * 0.0137 ln(敷地面積) 0.0717 *** 0.0082 0.0766 *** 0.0090 ln(前面道路幅員) 0.1478 *** 0.0128 0.1582 *** 0.0140

容積率(%) 0.0087 0.0090 0.0045 0.0099

ln(東京駅からの時間距離) -0.2164 *** 0.0195 -0.2423 *** 0.0217 ln(最寄駅からの距離) -0.0652 *** 0.0074 -0.0749 *** 0.0082 非オフィスワーカー世帯数比率(%) -0.7495 *** 0.0561 -0.7830 *** 0.0622 d_自治体

d_用途地域 d_路線

定数項 13.7760 *** 0.0924 13.8913 *** 0.1016 修正済R2値

F値 サンプル数

標準誤差 標準誤差

X1(d_年) 0.2207 ** 0.0076 0.1152 *** 0.0076 X2(d_H17集中豪雨浸水箇所) -0.0003 0.0108 -0.0041 0.0106 X3(x1*x2) -0.0316 ** 0.0148 -0.0293 * 0.0149 ln(敷地面積) 0.0819 *** 0.0097 0.0824 *** 0.0098 ln(前面道路幅員) 0.1624 *** 0.0150 0.1584 *** 0.0151

容積率(%) 0.0028 0.0106 0.0016 0.0104

d_構造 0.0263 *** 0.0110 0.0241 ** 0.0110

ln(東京駅からの時間距離) -0.2584 *** 0.0232 -0.2539 *** 0.0231 ln(最寄駅からの距離) -0.0784 *** 0.0088 -0.0742 *** 0.0088 非オフィスワーカー世帯数比率(%) -0.8109 *** 0.0668 -0.7935 *** 0.0665 d_自治体

d_用途地域 d_路線

定数項 13.9423 *** 0.1090 13.9007 *** 0.1089 修正済R2値

F値 サンプル数

係数

係数 係数

ln(地価) 住宅地 ①2005,2006 ②2005,2007

③2005,2008 ln(地価) 住宅地

yes yes

係数

yes yes

yes yes

④2005,2009

531 518

512 490

yes yes

yes yes

0.811 0.832

0.861 0.823

yes yes

0.000 0.000

0.000 0.000

参照

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・また、熱波や干ばつ、降雨量の増加といった地球規模の気候変動の影響が極めて深刻なものであること を明確にし、今後 20 年から

詳しくは東京都環境局のホームページまで 東京都地球温暖化対策総合サイト

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年度 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008. 件数 35 40 45 48 37

1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006

2002 2003 2004 2005 2006 年度 (ppm).