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子どもとかかわる体験的学習による子ども理解

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(1)

熊 大 教 育 実 践 研 究 第

24

号 ,

‑25

, 

2007 

子どもとかかわる体験的学習による子ども理解

中 山 玄 三 *

nderstanding of Children through 

the Experiential Learning to Interact with Children  Genzo NAKAYAMA 

Abstract 

Conceptual understanding bf chi1dren's behavior and characteristics was one of  the basic competences required in professional teaching.  To acquire knowledge  and understanding of chi1dren, the firsthands experience in interacting with chi1.  dren  was considered  most important.  Thus, such  conceptual  skills, fostered  through the  Friendship Program" as a practicebased experientiallearning in pre 

service teacher training curriculum, were continuously assessed during the fiscal  years from 2002 to 2005.  Three criteria, which were originally developed by the  author and consisted  of learning stages"developmental  levels  in  observing  chi1dren", and  levels of understanding of chi1dren

wereused for this assessment.  The results indicated that a certain effect of experientiallearning could be given on  college students in constructing conceptual knowledge and understanding of chi1.  dren. 

Key W ords: experiential learning, understanding of chi1dren, competences in pro

fessional teaching, preservice teacher training 

はじめに

教員に求められる資質・能力は,本来,教員養 成カリキュラム全体の教育目標として具体化され るべき性格のものである.これからの時代に新た に求められる資質・能力を持った教員の養成につ いて,大学の養成段階において可能な限りの対応 を行う方向で,教員養成カリキュラムのより一層 の充実を図ることが今日強く求められている.教 員養成の質の維持・向上を図るために,どのよう な改善・充実策が適切でありかつ可能であるかを 検討するには,大学での養成段階で,教員として 最小限必要な資質・能力を学生が身に付けている かどうかを明らかにする必要がある.

そこで,まずーっ目の研究として,筆者(藤 中・中山, 2004)は,教員養成カリキュラムの基 幹科目の一つである教育実習に着目し,教育実習

*附属教育実践総合センター

‑9

を終えた教育学部 4年次生を対象に, r実習目標

の達成度j(教育実習に取り組む姿勢・態度,学習 指導面,生徒指導面,学級経営面)と「教職に対 する意識・使命感

J

に関する調査を行なった.さ らに,この調査結果を踏まえて,筆者(中山・藤 2005)は,教育実習の目標達成度に関わる要 因が,互いにどのように影響を及ぽしあっている のかという,要因聞の因果関係の構造をより高度 な多変量解析を用いることで明らかにした.これ らの研究は,教育実習が大学での教員養成教育と して目指す目標を達成できているかどうかに主眼 を置くものであった.

次に,二つ目の研究として,筆者(中山,

2006)は,教育実習を終えた教育学部4年次生を 対象に, r教員に求められる資質・能力の重要度j,

「現在あるいは今後身につけたいと希望する知 識・能力jr教職を目指す学生時代に身につげて おいてほしい知識・能力や経験Jに関する意識調

査を実施した.教員養成段階での課題は, (1)社会

(2)

人としての良識,マナーや礼儀をはじめ,対人関 係・コミュニケーション能力などの人格的資質を 高めていくことと, (2)子ども理解や学級経営・生 徒指導について,子どもと触れ合う体験を通して これらの資質・能力を高めていくことであった.

教育実習をすべて終えた4年次の学生が,現在 あるいは今後身につけたいと考えているととが,

対人関係・コミュニケーション能力,子ども理解 や学級経営・生徒指導に関するものであるという 調査結果は,筆者(藤中・中山, 2004;中山・藤 2005)による一つ目の研究結果と同じく首尾 一貫して見られる傾向であった;子ども理解や学 級経営・生徒指導という観点から,事前・事後指 導を含めた教育笑習全体のあり方,ならびに教育 学部での教職専門科目等の授業のあり方を見直し 改善・充実する必要性が示唆された.

さらに,三つ目の研究として,筆者(中山,

2005 ;近森他, 2005)は,教育学部のフレンド シップ事業に着目して,子どもと触れ合う体験的 な学習が,子ども理解に有効であることを検証し たところである.本報告では,平成9 (1997) 度より数えて10年目を迎えるフレンドシップ事業 を総括するために,主として平成14 (2002)年度 から平成17 (2005)年度までの後半4年間の成果 と課題について,子どもとかかわる体験的学習を 通した子ども理解という観点から,学生の目標達 成状況を明らかにする.

なお,文部科学省が全国の教員養成系大学・学 部においてスタートしたフレンドシップ事業のね らいは,教育職員養成審議会答申『教員の資質能 力の向上方策等について

J

(1987)および同審議 会答申『新たな時代に向けた教員養成の改善方策 について

J

(1997)を踏まえて, r教員の養成段階

において,学生が,種々の体験的活動等を通して,

次の活動で活かせたこと

〔加の活用・応用』はf

.人の行動が変容する J

子どもたちと触れ合い,子どもの気持ちゃ行動を 理解し,教員としての実践的指導力の基礎を身に つげることができるような機会を提供する」こと にある.熊本大学教育学部フレンドシップ事業で は,平成12年度以降現在まで,学生主体の自主的 な課外活動「メイクフレンズ

J

を通して,子ども とかかわる体験と体験に基づく省察を行っている.

また,その活動を基本的なベースにして,教育学 部の単位取得(教科もしくは教職に関する科目の 2単位)を希望する学生を対象に 2年次後期に 自由選択科目の「教育実践研究指導法演習j を開 講している.

子 ど も と か か わ る 体 験 的 学 習 で の 大 学 生 の 具 体 目 標

フレンドシップ事業の趣旨に即して,メイクフ レンズ活動ならびに「教育実践研究指導法演習

J

のねらいは,主として教育学部14年次生が学 生ボランティアとして,熊本市内の公民館,熊本 市教育委員会生涯学習課,熊本県生涯学習推進セ ンタ一等と連携・協力しながら,子どもとかかわ る種々の体験的活動等を自主的・主体的に企画・

実施し,体験的活動等を通して,主として公立 小・中学校の子どもたちと触れ合い,子どもの気 持ちゃ行動を理解できるようになることである.

さらに,そこでの活動を通して体得した実践的な 知識や技術を,教育実習等で生かしたり,教育に 関する専門的知識や技術と統合したりして,教員 としての実践的指導力の基礎を身につ砂ることが 学生一人一人に期待される.

この目標分析から, r子どもとかかわる活動・行 Jr体験の内面化Jr子ども理解Jという 3 のねらいの関係を,体験と省察の往還サイクルと

臨床の「知Jと週輸の統合

子どもから学んだこと [ ~舗の開成』によって 1

・人の『知』が静岡Eされる J

具体的なエピソード 仁 『 世 健 見 掛 』 錨 し た 「

zピソードが毘憶に強るー』

1 体験と省察の往還サイクルに基づく学習モデル

(3)

中 山 玄 三

して捉えたものが,図1に示した学習モデルであ る(中山, 2003の一部修正).

乙の学習モデルに基づき,体験的学習での大学 生の具体目標として,表1に示したような「学び のステージ

J

I子どもを見る眼の発達レベル

J

I ども理解度」の3つを設定することにしたもので ある(中山, 2003の一部修正:中山, 2005). 

学びのステージ

1つ自の具体目標である「学びのステージ」は,

どの段階で学習が生起しているかという観点から 4段階のステージを設定したものである.ステー 1は子どもとかかわる体験の段階,ステージ2 は自己の体験を内面化し具体的事実をエピソード

として想起する段階である.続くステージ3は経 験の再構成仁よって子ども理解に関する個人知が 形成される段階で,その個人が体得した知と学問 的に体系化された客観的な知識や技術との統合が 期待される段階である.ステージ4はそのような 体験や学問に裏づけられた知を,子どもとかかわ る活動に活用・応用するととによって,個人の行 動を修正し,新たな行動を創造し対処できるよう

になる段階である.これらのステージ 1からス テージ4へと質的に高まる学習過程は一過性のも のではなく,ステージ4から再びステージ2へと 連鎖的・連続的に発展・深化していく過程と考え

られる.

1 子どもとかかわる体験的学習の具体目標 具体目標(1): 学びのステージ

体験したことをもとに、子どもとかかわる活動を見直し修正できるような「学び」に高める。

ステージ 1: 子どもとかかわる体験をほとんどもっていないということはなし冶

ステージ2: 子どもとかかわる活動を通して体験したことが、具体的なエピソードとして自分の記 憶の中に残る。

ステ←ジ3: 子どもとかかわる活動で新たに体験したことがこれまでの自分の経験と結びついて、

子どもの気持ち併預力を理解できるようになる。

ステージ4: 子どもとかかわる活動を企画したり、実施したり、振り返ったりするとき、これまで の自分の体験に裏づけられた子ども瑚手をもとに、自分の千識を修正して対処できる ようになる。

具体目標 (2): 子どもを見る眼の発達レベル

子どもとかかわる活動において、子どもをどう見るかという「子ども見る限jを高める。

レベル1:  子どものどこをどう見ていいのかわからず、子どもが見えていないということはな11

' 0

レベル2: 子どもの実態や事実に目を向けることができるようになる。

レベル3: 子どもの行動を予め予想した目で子どもを見ることができるようになり、自分の予想 に反する子どもの実態や事実にも目を向けることができるようになる。

レベル4: 自分が子どもに期待する到達基準をもとに子どもを見ることができるようになり、子 どもの側からもこれまでの進歩キ変化を見ることができるようになる。

レベル5: 活動の目標など子ども集団に依らない外的基準をもとに子どもを見ることができるよ うになり、子どもの側からもこれまでの進歩や変化を見ることができるようになる。

具体目標 (3): 子 ど も 瑚 破

子どもに対する見方・考え方、経験則などの「子ども理解Jにかかわる中身・内容を質的に高める。

理角破1' : 瑚 破

2:

理解度3:

瑚 破4:

子どもについてほとんど何も知らないしわからないということはない。

子どもとのかかわり方やコミュニケーションの仕方のノー・ハウをもてるようになる。

子どもの気持ち射す動を、体験しt~A体的事実をもとに、概念的に瑚卒できるように

なる。

子ども一人一人の特性に応じて、子どもとのかかわり方やコミュニケーションの仕方 を工夫できるようになる。

‑11‑

(4)

子どもを見る限の発達レベル

2つ自の具体目標である「子どもを見る眼の発 達レベルjは,体験の場である子どもとかかわる 活動で子どもをどう見るかという見方を5段階の 質的レベルとして設定したものである.レベル1 からレベル3までは,子どもに対する見方が個人

レベルでの学生中心のもので,子どもは学生の観 察もしくは予測の対象でしかなく,子どもの事実 のみに対する見方に留まるレベルである.それに 対して,レベル4とレベル 5ではともに,到達目 標や方向目標を学生が予めもっていて,その基準 をもとに子どもを見ることができたり,また,子 どもの側から子ども一人一人の個人内基準をもと に子どもの進歩・変容を時系列上で見ることがで きたりするようになる.レベル4が観察者自身も しくは対象となる子ども集団内に基準を設定する のに対して,レベル5は活動の目標などのような 対象となる子ども集団に依拠しない外的基準を設 .定する点で区別され,上位のレベルに位置づくも

のと考えられる.

子ども理解度

3つ目の具体目標である「子ども理解度」は,

子どもとかかわる体験を通して個人が体得した子 ども理解の質的程度として4段階の理解度を設定 したものである.理解度2は技術面,理解度 3は 概念理解面,理解度3は概念理解と技術の両面,

つまり理解度2と理解度 3が統合されたものが理 解度4である.理解度1から理解度4の順序・階 層で,より深い子ども理解ができていくと同時に,

対象である子ども一人一人の特性に理解内容がよ り焦点化されていく過程と考えられる.

子どもとかかわる体験的学習での 大学生の目標達成状況

平成14年度の成果と課題

(1 ) 体験的学習の重点目標

平成14年度は,体験することの目的・目標を明 確にするとともに,子どもを見る眼をもつこと,

子どもの気持ちゃ行動を理解することという学習 成果に重きをおいた時代への準備段階・移行期と して位置づけられる.体験を知的な学びに高める ことを主眼に,体験的学習の重点目標を,子ども を見る眼をもって子どもとかかわる活動を企画す ることとした.体験活動に期待する共通の目的意 識として, 1)体験を通して子どもを見る限をも

つこと, 2)子どもを見る眼をもって活動を企画

すること, 3)活動を通してそこでの体験を振り 返り見直すことによって,子どもを見る眼のレベ ルを向上させることの3つを掲げた.この目標に 迫るため,実施形態は,これまでと同様,学生主 体の活動の企画・運営と大学外での体験活動を踏 襲しつつ,特に,学生の学びを促すために,次の 3つのステップを組み込んだ新たな形態に移行し た.とりわけ,月に l回のペースで活動の報告・

反省会が自主的に行われ,学生が活動を振り返り 見直すことによって,何を学んだかという成果と これからもっと何をすべきかという課題を,学生 自身が明確にもてるように支援を行った.

①  ステップ 1:学生が主体的に企画・実行し,

実体験する.

②  ステップ 2:学生が実体験を通して何に気 づいたかを自覚できるような再構成の場を支 援する.

③  ステップ3:学生が次の行動化へ向げた問 題意識をもっ.

( 2 )  

学生の目標達成状況

平成14年度後期に「教育実践研究指導法演習」

を履修した2年次生11名が提出した「体験を通し て学んだこと」についての自由記述形式のレポー トを分析したところ,体験的学習モデルが適用で きて具体目標の評価基準に相当する記述が, 5 の体験報告の中から 8事例認められた.その分析 結果をまとめたものを表2に示す.学生の目標達 成状況は,次のとおりであった.

(i)  8事例のいずれの事例においても,学びの ステージという点から,子ども理解の知は形 成されていると解せるとともに,子ども理解 をもとに,子どもとかかわる活動・行動を自 ら修正できる段階まで達している事例が,相 対的に多かった.

(ii)  子どもとかかわる体験をもとに子ども理解 ができる段階(学びのステージ3)までで留 まっていると考えられる 2件の事例では,子 どもを見る眼の発達レベルは,いずれもレベ 3までで留まっていた.また,子ども理解 度では,いずれも理解度3までで留まってい た.子ども理解にかかわる内容としては,

「子どもの感情を引き出すことの難しさJr どもが熱中することJであった.

(ili)  子ども理解をもとに,子どもとかかわる活 動・行動を自ら修正できる段階(学びのス テージ 4)まで達していると考えられる 6件 の事例では,子どもを見る眼の発達レベルは レベル2から 4までの範囲で,また,子ども

(5)

中 山 玄 三

2 体験的学習の目標達成度

(平成

14

年度後期「教育実践研究指導法演習

j

レポート)

事例

1

ステージ

1

ステージ

2

学びのステージ

ステージ

3

ステ}ジ

4

レ~,レ 1

r

ミ ノ レ

2

子どもを見る眼の発遺レベル

レ~,レ 3 レ~,レ 4 レ ~lレ 5

理解度

1

理解度

2

子ども理解度

理解度

3

理解度

4

理解度は理解度2から 4までの範囲で,散見 された.子ども理解にかかわる実感した内容 は,子ども理解にかかわる内容としては,

「子どもをほめることの有効性Jr子どもと共

通の話題づくりの有効性Jr子どもが話した

くなる問いかけの必要性

J

r子どもの行動に

は意味や理由がある乙とJr男の子の特性に

応じた共通の話題づくり

J

r子ども一人一人

の個性に応じたかかわり方

J

であった.

ω総じて,学びのステージという点では,子 ども理解の知が形成されているステージもし くはその上位のステージに位置づくが,子ど もを見る限の発達レベルという点では,子ど もとかかわる活動の目標をもとに子どもを見 たり,子どもの側からその到達度をみたりで きるというレベルまではまだ達していなかっ た.また,子ども理解度という点では,子ど

もとのかかわり方・コミュニケーションの仕 方のノー・ハウに関する内容が多く (4 50%),子どもの気持ちゃ行動の概念的な理 解に関する内容と子どもの特性に応じた子ど もとのかかわり方の工夫に関する内容はとも

『子ども理解

j

に関する記述内容

(5

名・

8

事例) 事例

2

• •

事例

3

事例

4

事例

5

事例 6 事例

7

事例

8

• • • • • •

• • • • • •

• • • • • •

にと少なかった(それぞれ2 25%). 

このような目標達成状況から,学生が,まず自 己の行動の変容を自覚できること,その上で,子 どもをより客観的な眼で見ることができ,より深 い子ども理解ができるようになる乙とが,課題と

して明らかになった.

平成15年度の成果と課題

( 1  

)体験的学習の重点目標

平成15年度は, r教育実践研究指導法演習」の オリエンテーションに先立ち,学生の体験的学習 の目標達成状況に見られる全体的傾向を捉えると

ともに,体験的学習の目標の重点化と学生に対す る支援の重点化を図った.事前の学生の全体的な 傾向としては,次のとおりであった.

)学びのステージという点では,子どもとか かわる体験を学生は確かに積んできているが,

学生一人一人が,各々の個人的な経験的事実 を最も印象に残るエピソードとして断片的に 表現・表出できるという段階に留まる傾向が 見られた.また,子どもとかかわる活動にお いて,過去の自分と現在の自分を比較して,

‑13‑

(6)

自己の行動の変容を自覚するところまでは,

必ずしも至っていなかった.つまり,体験だ けに留まり,知的な学びにまでは必ずしも高 まってはいないというのが実情であった.

とどうかかわればいいのかがわかるというス テップが必要とされるのだ、が,なかなか相手 意識が芽生えてこないというのが実情であっ た.

2)子どもを見る限という点では,学生は,子 どもとかかわる体験を積んでいくにしたがっ て,子どものどこをどう見ていいいのかわか らない状況から,子どもの行動の実態や事実 に目を向けることができるようになってきて いることは確かであった.しかし,子どもの 行動を予め予想した目で見たり,その予想に 反するような子どもの事実に目を向けたりで きるところまでは,必ずしも至っていなかっ た.つまり,ある時のある場面で起きた,そ の一時点での事実を受けとめることに終始し,

過去に起きた経験的事実をもとに現時点での 子どもの行動を推測できるまでの精神的な余 裕がないというのが実情であった.

そ乙で,特に,次の2つの支援を学生に対して 重点的に行うことにした.

3)子ども理解という点では,多くの学生が,

子どもとどうかかわればいいのか,どのよう にコミュニケーションをとればいいのかとい う悩みをもっところからスタートする傾向が 見られた.そして,かかわる相手・コミュニ ケーションの相手である子どもに,学生の意 識が向けられることが稀で,多くの場合,学 生である自分がどうすればいいのかという技 術面に話題が集中しがちであった.まず相手 の子どもを知って,相手を知ることではじめ て,その子どもの特性に応じて,自分が相手

①  学生が自らの体験を知的な学びに高めてい くプロセスおよび視点や方法を自分自身で自 覚できるように,体験的学習モデルを,学生 が体験した具体的事例を交えつつ必要に応じ て適時示した.この支援では,学ぶことの意 味の理解や学びのメタ認知を促すことをねら いとした.

②  学生が子どもとかかわる活動を通して,一 人一人が記憶している個人的な経験的事実を 自分の言葉で表現・表出し,記録として残す ように助言を与えた.この支援では,学生が 過去のエピソード記憶の記録をもとに,自分 自身の経験を見直し振り返ることで,自己の 学びのステージを自覚できるようになったり,

子どもを見る眼のレベルを向上させたり,子 ども理解度を深めることができるようになっ たりするための手助け・手段を提供すること をねらいとした.

(2)  学生の目標達成状況

平成15年度後期に「教育実践研究指導法演習

J

を履修した2年次生25名のレポートを,体験的学 習の3つの具体目標に基づいて分析した結果を表 3に示す.なお,体験報告レポートは,前年度と

3

体験的学習の目標達成度

(平成15年度後期「教育実践研究指導法演習Jレポート)

「子ども理解Jに関する 記述件数(のベ人数の%) ステージ1 (4%)  学びのステージ ステージ2 25  (100%)  ステ}ジ3 22  (88%)  ステージ4 18  (72%)  レベル1 (12%)  レベル2 25  (100%)  子どもを見る眼の発達レベル レベル3 17  (68%)  r

く ノ レ

4 5  (20%)  レベル5 (12%)  理解度1 (12%)  子ども理解度 理解度2 21  (84%)  理解度3 22  (88%)  理解度4 18  (72%) 

(7)

中 山 玄 一

同様に, r体験を通して学んだ乙と」についての 自由記述である.学生の目標達成状況は,次のと おりであった.

(i)  学びのステージという点では,すべての学 (25 100%)が,体験した個人の具体 的事実をエピソードとして想起していた(ス テージ 2). 90%近 く の 学 生 (22 88%)  が,そのエピソードを見直し振り返ることで,

子どもに対する見方・考え方や経験則などの 概念化を伴った子ども理解ができていた(ス テージ3). さらに, 70%以上の学生(18 72%)が,そのような子ども理解にかかわる 個人の知を活かして,子どもとかかわる活動 や行動を自ら修正できていた(ステージ4).

このことから,ほとんどの学生が,子どもと かかわる活動において,過去の自分と現在の 自分を比較して,自己の行動の変容を自覚す ることができており,各自が体験を学びに確 かに高めていることが明らかになった.

( i i )  

子どもを見る眼の発達レベルという点では,

すべての学生 (25 100%)が,一人一人 の子どもの行動の実態や事実に目を向げるこ とができていた(レベル2). また, 70% くの学生 (17 68%)が,子どもの行動を 予め予想した目で見たり,その予想に反する ような子どもの事実に目を向けたりできてい た(レベル 3).このことから,学生は,あ る時のある場面で起きた,その一時点での事 実を受けとめることだけに終始せずに,過去 に起きた経験的事実をもとに現時点での子ど もの行動を推測できるようになってきている ことが明らかになった.他方,自分が期待す る 集 団 内 の 到 達 基 準 ( レ ベ ル 4 ; 5名 20%)や活動の目標などの集団外基準(レベ 5 ; 3 12%)をもとに,子どもの変容 の様子を見ることができるまでには至ってい なかった.

ω 

子ども理解度という点では, 80%以上の学 生が,学生である自分が子どもとどうかかわ ればいいのか,どのようにコミュニケーショ ンをとればいいのかという技術面(理解度

2 ; 21 84%),並びに,かかわる相手・コ ミュニケーションの相手である子どもに意識 を向げて,まず相手の子どもの行動や気持ち を知るという概念的理解面(理解度3; 22 88%)に気づいていた.さらに, 70%以上の 学生が,相手である子どもを知るととではじ めて,その子どもの特性に応じて,自分が相

手とどうかかわればいいのかがわかるという 概念的理解と技術の両面(理解度4; 18 72%)に気づいていた.このことから,ほと んどの学生が,自分自身の子どもとのかかわ り方を考える上で,かかわる相手である子ど もの行動や気持ちをまず知ることが大事であ るという対人関係スキルとしての相手意識を 確かにもてるようになってきていることが明

らかになった.

このような学生の学びの実態から,学生は,子 どもとかかわる種々の体験を遇して,子どもの気 持ちゃ行動を理解できるようになってきた.つま り,体験が確かな学びにつながるようになった.

子ども理解という点では確かな学びが成立してい ると言えた反面,子どもを見る眼という点では必 ずしも十分な学習成果が得られたとは言い難かっ た.

平成16年度の成果と課題

( 1  ) 

体験的学習の重点目標

平成16年度は, r学びのステージJr子どもを見 る眼の発達レベルJr子ども理解度J3つの具 体目標に基づく体験的学習の目標達成状況を事前 に把握するために,アンケート調査を実施した.

なお,このとき,平成1415年度で採用した評価 基準を説明する記述内容の語句に一部修正・改善 を加えて,前節IIで示した体験的学習の具体目標 (lX2)(3)に作り替えた.

アンケート調査の質問紙では,それぞれの具体 目標ごとに設定した評価基準を質問項目として,

=とてもそう思うJ=まあまあそう思うJ

=どちらとも言えないJ=あまりそうは 思わないJ=ぜんぜんそうは思わない」の5 段階評定尺度により,学生に自己評価を求めた.

アンケート調査は平成16年10月に実施し 1年次 生15 2年次生17 3年次生12 4年次生 5名の合計49名(欠損値を除く)から回答を得た.

数量的評価結果を表4に示す.

事前の学生の全体的な傾向は,次のとおりで あった.

)学びのステージという点で, 3. 4年次生 については,子どもとかかわる体験が子ども の気持ちゃ行動の理解まで高まり,そのよう な子ども理解をもとに自らの行動を修正して 対処できる段階(ステージ4)まで到達して いて,経験による認知や行動の変容,即ち学 習が確かに成立していた. 1. 2年次生にお いては,特に,子どもとかかわる活動で新た

‑15‑

(8)

4 体験的学習の目標達成度 (平成16年10月アンケート調査)

2年次生 34年 次 生

T検 定 (N=32)  (N=17) 

学びのステージ 3.85  (0.75)  4.44  (0.29)  *** 

ステージ1 4. 16 (1. 22)  4. 71  (0. 77)  NS  ステージ2 4.  19 (1. 03)  4.65  (0.49) 

ステージ3 3.56 (1. 01)  4.24  (0.44)  ** 

ステージ4 3.50  (0.88)  4.  18  (0.53)  ** 

子どもを見る眼の発達レベル 3.54  (0.46)  3.87  (0.31)  ** 

J1 3.38  (0. 79)  3.59  (0.80)  NS 

レ~ノレ 2 3.84  (0.81)  4.41  (0.62)  ** 

J3 3.47  (0.88)  4.29  (0.59)  *** 

レベル4 3.50  (0. 72)  3.59  (0.62)  NS  J5 3.50  (0.67)  3.47  (0.51)  NS  子ども理解度 3.72  (0.55)  4.09  (0.48) 

理 解 度1 4.22  (0. 71)  4.24  (0.66)  NS  理 解 度2 3.63  (0.87)  4.00  (0. 71)  NS  理 解 度3 3.44  (0.80)  3.94  (0.56) 

理 解 度4 3.59  (0.87)  4.  18  (0. 73) 

註1)表中の数値は、

r  5 

=とてもそう思う

r4 

=まあまあそう思う J

r  3 

=どちらとも言えないj

r2=

あまりそうは恩わないJ

r  1 

=ぜんぜんそうは恩わないj

5

段階評定尺度を尺度得点に 換算することによって算出した尺度得点の平均値(標準偏差)を示す。

2)  1

2

年次生と

3

4

年次生の

2

つの集団の平均値の差の検定を

T

検定により行った結果を示す 記号の意味は、次のとおりである。

NS: p0.05(有意差なし, *:  p0.05,紳 p<O.OI,料率 p<0.001

に体験したことがこれまでの自分の経験と結 びついて,子どもの気持ちゃ行動を理解でき るようになること(ステージ 3) と,子ども とかかわる活動を企画したり,実施したり,

振り返ったりするとき,これまでの自分の体 験に裏づけられた子ども理解をもとに,自分 の行動を修正して対処できるようになること

(ステージ4) を向上目標とする必要があっ た.

2)子どもを見る眼の発達レベルという点では,

4年次生については,子どもの実態や事 実に目を向けること(レベル2)と,子ども

の行動を予め予想した目で子どもを見たり,

自分の予想、に反する子どもの実態や事実にも 目を向けたりすること(レベル3)ができる 段階までは到達していた.しかしながら,自 分が子どもに期待する到達基準をもとに子ど もを見ること(レベル4)や,活動の目標な ど子ども集団に依らない外的基準をもとに子 どもを見ること(レベル5)ができる段階ま で十分に高まっているとは言い難かった.し たがって,子どもを見る眼の発達レベルとい う点については,学年集団にかかわらず一層

重点を置く必要があった.特に, 1. 2年次 生においては子どもの実態や事実に目を向け ることができるようになること(レベル2) と,子どもの行動を予め予想した目で子ども を見ることができるようになり,自分の予想、

に反する子どもの実態や事実にも目を向ける 乙とができるようになるとと(レベル3) 向上目標とする必要があった.

)子ども理解度という点では, 3. 4年次生 については,概念的理解面と技術面が統合さ れ,子ども一人一人の特性に応じて子どもと のかかわり方やコミュニケーションの仕方を 工夫できる段階(理解度4)まで到達してい た. 1. 2年次生においては,特に,子ども の気持ちゃ行動を体験した具体的事実をもと に概念的に理解できるようになること(理解 3) と,子ども一人一人の特性に応じて子 どもとのかかわり方やコミュニケーションの 仕方を工夫できるようになること(理解度

)を向上目標とする必要があった.

そこで,平成16年度後期に「教育実践研究指導 法演習

J

を履修した2年次生に対して,予め上記 3つの向上目標を実際に示すことで,体験的学

表 4 体験的学習の目標達成度 (平成1 6 年1 0 月アンケート調査) 1  •  2 年次生 3 ・ 4 年 次 生 T 検 定 ( N = 3 2 )  ( N = 1 7 )  学びのステージ 3
表 6 体験的学習の目標達成度 (平成 1 7 年 1 0 月アンケート調査) 学年(人数) 学びのステージ 子どもを見る眼の発達レベル 子ども理解度 1 年 ( N = 1 9 ) 3.89  3

参照

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1  ミャンマー(ビルマ)  570  2  スリランカ  233  3  トルコ(クルド)  94  4  パキスタン  91 . 5 

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