奈良教育大学学術リポジトリNEAR
色から見る幼児の自然認識
著者 中西 いつ子, 松村 佳子
雑誌名 教育実践総合センター研究紀要
巻 11
ページ 161‑167
発行年 2002‑03‑31
その他のタイトル A Study on Infant's Understanding of Nature Concerning the Colors
URL http://hdl.handle.net/10105/4119
中 西 いっ子・松 村 佳 子 (奈良教育大学理科教育研究室)
A Study on Infant's Understanding of Nature Concerning the Colors
Itsuko NAKANISHI and Keiko MATSUMURA
(Department of Science Education, Nara University of Education)
要旨:幼児が色から連想するものを調査して、自然界にある事象とどのような関連がみられるかを考察した。調査対 象として、周辺の環境が似ている2つの幼稚園(奈良教育大学附属幼稚園と大和郡山市立北幼稚園)の3歳児、 4歳 児、 5歳児を無作為抽出により選んだ。対面調査を行って、幼児たちに口頭で答えてもらった。
色と自然体験とに注目しながら考察をすすめると、両幼稚園間で、幼児が答える内容に差がみられた。また、年齢 別の比較では、 3歳児から4歳児にかけて、幼児の外界からの情報を吸収する能力が大きく成長することがわかった。
キーワード1.色color、幼児infant、自然体験natural experience
1.はじめに
現在、私たちは多種多様の色の中で生活している。
また色から多くの情報を得ることにより、多様な生活 を営んでいる。
では、幼児にとってはどうであろうか。幼児は積極 的に色から情報を得ようとしてはいないと思うが、一 緒に暮らす大人が色を使って表現し、様々な色を時と 場合に合わせて使用していると、自然とその影響を受 けていると恩われる。そのため、幼児も多種多様な色 に触れ、それらの色から様々な情報を受けていると思 われる。
しかし、幼児が見ている色は、これらの用意された 色だけではない。家の外に出て上を見れば空の青が見 え、公園などに行けば木や草の縁がある。これらの自 然の色も幼児の感性に影響を与えているはずである。
自然が身の回りから減ってきている今日ではあるが、
このことを懸念して子どもに自然の中で活動し、 「生 の自然に触れる」体験をさせようという動きも多く出 てきている。 「生物やその他の自然物、あるいはそれ らにより醸成される自然現象を触覚・嘆覚・味覚をは じめとする五感を用いて知覚したもので、その後の事 物・事象の認識に影響を及ぼす体験」 1)と定義されて
いる原体験をすることが自然認識を深めるのに役立っ ことは、様々な実験から実証されている2)。
色は、幼児の身近に存在するものである。幼児は、
色を見て何を恩い浮かべるのだろうか。具体的な自然 の事物を思い浮かべるのだろうか。第1番目に自然の 事物を恩い浮かべることのできる子どもは、自然と触 れ合う原体験をたくさんしているのであろうと考えら れる。
そこで、幼児の自然認識の発達を知る1つのきっか けとして調査を行い、幼児をとりまく環境との関わり などから考察する。
2.色と幼児の自然認識調査 2. 1.方法
1人1人の幼児に対して対面調査を行った。
幼児に色紙を見せて、何を恩い浮かべるかをたずね、
口頭で答えてもらった。色紙は、日本色研配色体系 (P.C.C.S)に基づいた、ト‑ナルカラ‑ (監修;
財団法人日本色彩研究所、発行;日本色研事業株式会 礼)を使用した。
調査に使用した色は、通常、絵の具やクレヨンなど で12色1セットとなっていることが多いので、幼児が 見慣れていると思われる、黒・自・赤・桃・樟・黄・
黄緑・縁・青・紫・茶・灰(計12色)とした。 1っの 色で複数回答をしてくれた幼児もいたが、考察には直 感的に答えたと恩われる1つ目の回答のみを扱った。
調査は、室内の直射日光があたらない場所で自然光
の下で行った。色紙は、縦182mm 榛128mm、下には白
中西 いっ子・松村 佳子
い紙を敷いた。色紙の大きさは、アメリカなどで、色 見本として望ましい寸法がASTM規格というもので 決められている。そのうち、一般的な判定の際は、 100
×120 (mm) ‑90×160 (m道) 3)とあったOト‑ナルカ ラーの大きさは、先述の通りであり、調査に適当な大 きさであると判断し、そのまま使用した。子どもたち には、このようにした色紙を真上から見てもらった。
2. 2.対象
調査は、 2001年9月上旬から10月下旬にかけて、奈 良教育大学附属幼稚園・大和郡山市立北幼稚園に協力 を頂き、行った。
この2園は、どちらも住宅地の中にあり、マンショ ンなどの高層住宅に住んでいる子どもが多いため家の 周辺には畑や花壇が少なく、家庭ではプランターでの 花栽培や観葉植物を植えている程度であるなど周辺環 境が似ていることから、調査対象として選んだ。
幼児の内訳は、次の通りである。
奈良教育大学附属幼稚園
3歳児 22名(男児11名 女児11名) 4歳児 22名(男児12名 女児10名) 5歳児 22名(男児9名 女児13名) 計 66名(男児32名 女児34名) 大和郡山市立北幼稚園
3歳児 19名(男児10名 女児9名) 4歳児 24名(男児15名 女児9名) 5歳児 20名(男児10名 女児10名) 計 63名(男児35名 女児28名) 合計
3歳児 41名(男児21名 女児20名) 4歳児 46名(男児27名 女児19名) 5歳児 42名(男児19名 女児23名) 計 129名(男児67名 女児62名)
対象とした幼児は、無作為に抽出した。調査は、幼 児が自由に遊んでいる自由保育の時間に一人ひとりに 対面調査を行い、口頭で答えてもらった。ただし、幼 稚園等で色彩検査を実施しているところはあまりない ので、色覚が正常な幼児ばかりであるかどうかは、わ からない。
3.結果と考察
全12色において調査結果をまとめるにあたり、まず、
第1番目に答えたことばを自然物とその他に分けた。
自然物がどれだけ思い浮かべられるかによって、自然 体験を多くしてきていると考えられるためである。自
然物とは、人工のものではなく、動物や植物などの自 然界にあるものとした。その他とは、人工のものと自 然界には存在し得ないものとした。また、髪の毛や皮 膚の色などは、最近はわざと自然の色とは変えている 人も多いので全てその他とした。
子どもたちが答えたことばの中から、自然物とその 他のものの例を表1に示す。
表1 思い浮かべることばの分類
自 然 物 そ の 他
黒 海 苔 カ ラ ス 夜 髪 の毛 折 り紙 お 化 け
白 う さ ぎ 雲 雪 紙 ご飯 壁
* リン ゴ 火 イ チ ゴ いす 信 号 風 船 桃 み か ん 柿 夕 焼 け 顔 ク レ ヨ ン 電 車 檀 み か ん 柿 カニ 服 か さ ダ ンボ ール
ォ蝣 レモ ン バ ナ ナ キ リ ン / 蝣LI .T^1f""蝣 黄 緑 葉 っぱ 草 メ ロ ン 車 黒 板 積 み 木
縁 葉 っぱ 草 木 ボール 抹茶のアイス 鉛筆立て I.‑.
m 水 海 空 ズボ ン サイダー ゴミ袋
栄 ぶ ど う 花 す み れ 月艮 ク レヨ ン シ ール 茶 土 木 どん ぐ り 髪の毛 チョコレート コーヒI 灰 ね ず み うさ ぎ ね こ クレヨン 窓のサッシ おもちゃ
3. 1.幼稚園間の比較
3. 1. 1.色から連想することば 各色を順に見ていく。
奈良教育大学附属幼稚園(以下附属幼稚園)と大 表2 共通に挙げられた項目と自然物の種類数
色 共 通 項 目 自然 物 の種 類 数 (個 ) 附属 幼 稚 園 北 幼稚 園
黒
海 苔 カ ラ ス 髪 の 毛 夜 折 り紙 烏 昆 布 コ ウ モ
リ 財 布
13 17
白 う さ ぎ 紙 雲 雪 ご飯
シ ロ ク マ 机 8 l l
蝣k
リンゴ イチゴ 太 陽 トマ ト 火 血 信 号 ク レヨン ケチ ャ ップ ブロ ック 風 船
13 10
桃 み か ん 顔 手 折 り紙
電 車 花 肌 本 3 8
檀 みかん オ レンジジュー ス 服
タオル 柿 電 気 レモ ン 9 8
ft レモ ン バナナ キ リン 色 鉛
筆 信号 雷 たんばぽ 服 1 0 1 0
黄 緑 葉 っぱ 草 メ ロ ン 電 車
紙 抹 茶 マ ス カ ッ ト 6 1 0
^
葉 っぱ 草 木 木 の葉 っぱ スイカ 抹茶 のアイス キ ャベ ツ 野菜 ジュース バ ッタ
1 0 1 3
三【ま 海 水 ぶ ど う ク レ ヨ ン
9 9
日 い す 信 号 空
栄 ぶ ど う 服 花 ク レ ヨ ン 5 6
茶 土 木 どん ぐり 砂 コー
ヒー ね こ 髪 の毛 机 泥 8 9
灰 ね ず み ク レ ヨ ン う さ ぎ
お もち ゃ ね こ 6 5
和郡山市立北幼稚園(以下北幼稚園)の幼児が挙げ てくれた項目のうち共通していたものおよび、答えた 自然物の種類数を表2に示す。
黒は、附属幼稚園が「髪の毛」で17%を占めている のに対し、北幼稚園は「髪の毛」が5%で他は動物の 種類数が多かった。
白では、回答数が多かったもののうち自然物を見て いくと、附属幼稚園、「雲・ウサギ・シロクマ」で18
%、北幼稚園、 「ウサギ・雲・雪」で27%であった。
赤は、種類数は附属幼稚園の方が多かったが、自然 物が占める割合は北幼稚園の方が20%強多かった。回 答数が多かった項目を上から順に3個見てみると、附 属幼稚園「いす・りんご・火」で自然物の割合は11%
なのに対し、北幼稚園「りんご・カニ・いちご」と3 つとも自然物で、割合も35%を占めている。
桃は、両園とも最も多く挙がった回答は「みかん」
で同じであり、割合を見ると附属幼稚園は18%、北幼 稚園は9 %と倍の差があるが、北幼稚園の方が自然物 の種類数が多かったという点で、自然物が占める割合 は高くなった。また、桃色なのに「みかん」という回 答が最も多かった理由は、ト‑ナルカラーの桃色は、
普段幼児たちが目にしている桃色よりオレンジがかっ ており、色の名前を尋ねてみても、肌色やオレンジ色 と答える幼児がほとんどであったため、オレンジ色の ものを連想し、 「みかん」と答えたのだと考えられる。
桂については、回答数が最も多かった項目は両園と も「みかん」で同じであったが、割合が附属幼稚園15
%、北幼稚園28%であった。また、 「みかん」や「オ レンジ」という果物そのものがあるにもかかわらず、
「オレンジジュース」と答えた子どもが両園合わせて 3人いた。本物の果物より、ジュースのように加工し
て口にすることが多くなった結果、本物よりインパク トが強くなってしまっているのであろう。
黄は、回答数の多かった項目を順に3個見ると、附 属幼稚園「レモン・バナナ・ビニールテ‑プ」で自然 物の割合は22%であるのに対し、北幼稚園「レモン・
キリン・バナナ」とすべて自然物で割合は40%を占め ていた。
黄緑は、回答数の多かった項目の上位3個は両国と も全く同じで、「葉っぱ・草・メロン」であり、割合 は、附属幼稚園37%、北幼稚園38%と差はなっかたが、
自然物の種類数で、北幼稚園の方が果物(梅・スイカ など)を多く挙げていた。
縁は、回答数の多かった上位3個の項目を見ると両 園とも「葉っぱ・草・木の葉っぱ」が挙がっており、
割合は附属幼稚園14%、北幼稚園19%となった。また、
黄緑ではなかったが、 「葉っぱ」とだけ答えるのでは なく、 「木の葉っぱ」と限定して答える子どもがいた。
確かに、落葉樹の葉っぱに比べ常緑樹の葉っぱは濃い 緑色をしている。落葉樹の葉も元々は木に付いている が葉っぱだけで見ることも多い。しかし、常緑樹の葉 は常に緑色で、木に付いている。そのため、子どもは 区別し、 「木の葉っぱ」と答えたのだと考えられる。
青は、共通項目が7個、自然物の種類数は、両国と も9個で同じであった。自然物の割合は、附属幼稚園 32%、北幼稚園40%であった。 「空」という回答が両 固合わせて6人いた。
紫は、自然物の種類数は、ほとんど差がなかったが、
自然物の割合は、附属幼稚園23%、北幼稚園40%と倍 近い差が出た。両園とも最も多くの幼児が挙げた項目 は「ぶどう」であったが、割合が附属幼稚園12%、北 幼稚園29%と大きな差が出た。その他、附属幼稚園で
黒 白 赤 桃 樺 黄 黄緑 緑 青 図1全回答における自然物の回答数の割合
紫 茶 灰
中西 いっ子・松村 佳子 は夜になってくる色、北幼稚園ではもうすぐ夜になる
色と言葉は違うが、よく空を見ているんだなと私たち が感心させられる回答もあった。
茶は、両園間で自然物の種類数、自然物の割合が、
全12色の中で最も差のない色であった。
灰については、回答数が最も多かった項目を見てみ ると、両園とも「ねずみ」であるが、割合が附属幼稚 園18%、北幼稚園32%であった。なお、この「ねずみ」
は、幼児たちが実際に見ることはほとんどないと思わ れる。しかし、ねずみの人形やぬいぐるみがおかれて いる保育室もあり、絵本またはテレビや写真などから も連想したものと考える。
全回答における自然物の回答数の割合を幼稚園別に 比較して図1に示す。横軸に色、縦軸に割合をとった
ものである。
今回、奈良教育大学附属幼稚園と大和郡山市立北幼 稚園の周辺環境の似かよっている2園で調査を行った ため、調査結果に違いが出ないだろうと予測をしてい たが、図1に示すように予想に反し、大きな違いが出 m
3. 1. 2.幼稚園間(年齢別)の比較 年齢別に分けて比べてみることにする。
3歳児では、自然物の割合を見ると、附属幼稚園の 方が多い色は桃・黄緑・緑・青・茶・灰、北幼稚園の 方が多い色が残りの半数であった。その差を見ると、
北幼稚園の方が自然物の割合が多い色は、附属幼稚園 との差が倍以上あるのに対し、附属幼稚園の方が自然 物の割合が多い色は、差が5%程度しかなかった。自 然物の種類数は、どちらの幼稚園もどの色も5個以内 と少なく、大差もなかった。挙げられた全項目数は、
ほとんどの色で、北幼稚園の方が多かった。
4歳児では、自然物の割合を見ると、緑を除いた全 ての色で北幼稚園の方が多かった。その中でも特に自・
赤・青・紫・灰は倍近い差がみられた。自然物の種類 数は赤・緑を除き、北幼稚園の方が多かった。白は、
回答数の多かった項目の上位5個を見たときに、自然 物が附属幼稚園では3個(23%)であるのに対し、北 幼稚園は5個全て(50%)であった。赤はどちらの園 も最も多かった回答は「リンゴ」であるが、割合は附 属幼稚園9%、北幼稚園37%であった。回答の多かっ
た項目を順に見ると、北幼稚園は「カニ・イチゴ」と 自然物が続くが、附属幼稚園は「赤1組・いす」と自 然物以外のものが挙げられた。また、北幼稚園のある 子どもは、黒・白・赤を除いた全ての色で、 「もうす ぐ夜になる色」と答えた。最初の3色ぐらいは、なる ほどと聞いていたが、どの色を見せても言うので、不 思議に恩い、理由を尋ねると、 「だって、全部の色が 混ざってるもん。」と答えた。確かに、夕方の空を見 ると、多数の色が混ざったような色をしているときが
ある。よく見ているんだなと感じた。
5歳児では、自然物の割合を見ると、自・樫・黄を 除き、北幼稚園の方が多かった。自・檀・黄の3色に ついては、ほぼ同じ割合であった。自然物の種類数は 黄で附属幼稚園8個、北幼稚園3個の開きがあるほか は、大差がなかった。全項目数を見ると黒・桃を除き、
附属幼稚園の方が多かった。自然物の割合において、
特に差があったのが黒・桃・緑で、黒は、附属幼稚園 では最も回答数の多かった項目が「髪の毛」で32%も 自然物以外のものが占めていたのに対して、北幼稚園 は「カラス・夜」で20%であった。桃は、附属幼稚園 は自然物が「みかん」 (18%)のみであったのに対し、
北幼稚園では「みかん・夕焼け・魚・花」と45%も占 めていた。緑は、附属幼稚園も自然物の種類数は数多 く挙がっているものの、 1つ1つの割合は多くなかっ たが、北幼稚園では回答数が最も多かった「葉っぱ」
が30%も占めていた。
3. 1. 3.保育の背景
全12色を比べたが、すべての色で全回答における自 然物の割合は、北幼稚園の方が多かった。すべての色 について最も回答数の多かった項目を比べていくと附 属幼稚園は、自・桃・橿・黄・黄緑・緑・紫・茶・灰 の9色では自然物であったが、黒・赤・青の3色がそ の他のものであったのに対し、北幼稚園は、すべての 色で自然物の回答が最も多かった。
調査した2園の周辺環境が似ているのに、こんなに も差が出た。その理由として、附属幼稚園のクラスの 名前が、年長:黄組、年中:赤組、年少:桃組色の名 前であるのに対し、北幼稚園は、年長:空組・月組・
星組、年中:すみれ組・たんばぼ組・れんげ組、年少:
うさぎ組と自然物がクラス名になっていることなどを 考えたが、もっと他に大きな要因があるのではないか と考え、両園の園長先生に普段の園生活などについて お話を伺った。
一打「'・It川1'J
附属幼稚園は、 「アヒル・ウサギ・インコ・カメ」
が飼育小屋にいて、その他は各保育室に幼児たちや先 生が捕まえた「季節の虫」がいる。北幼稚園は、飼育 小屋に「ウサギ・ニワトリ」がいて、各保育室には幼 児や先生が捕まえた「季節の虫」がいる。
トー 蝣i・;.'
附属幼稚園では年に2回花壇の植え替えをする。秋 から春には、「パンジ‑・ノースポール」など、春か ら秋には、 「インバーチェイス・ベゴニア・マリーゴー ルド」などを植えている。とくに、マリーゴールドは、
たくさん植えられてあり、草木染めをしたり、色水遊
びをしている。その他、 「季節の花」を保育室に飾っ
たり、秋にはどんぐりなどの「木の実」で遊んだりす
る。さらに、プランターが各保育室の横にあり、そこ
には担任の先生方が考えた植物を、子ども(お母さん や先生と)が植え、自分の立て札を立てる。特に、冬 には「チュ‑リップ」の球根を植え、 「来年になった
ら咲くよ。」と、継続的な言葉がけをしている。また、
「ヒヤシンス」の水生栽培は、成長も早く、変化が見 えやすいので保育室で行っている。その他、幼稚園か
ら10分ほど離れたところに奈良教育大学附属実習園が あり、そこに「じゃがいもやサツマイモ」が植えられ ているので、芋掘りに行く。 「じゃがいも」は、年長 児がホットプレートで焼き、全園児にごちそうするポ テトレストランをし、 「サツマイモ」は幼稚園の中に 子どもの森という木のたくさん植えられている空間が あるのでそこの落ち葉で、焼き芋をしたり、お母さん と一緒にスイートポテトを作るという取り組みをする など、幼稚園で作ったものは、幼稚園でお母さん方と 一緒に調理して食べるようにしている。その際、自分 のお母さんとではなく、違う子のお母さんと一緒にと いう特別の場が設定されているようである。
北幼稚園では、春には「チューリップ」が咲き、咲 き終わると花びらが大きなまま落ちるので、それを器 にして遊んだりしている。夏には、 「トマト・きゅう り・なすび」などを植え、食べたり、 「サルビア」の 花が咲くと、ミツを吸ったりする。秋には、 「ブロッ コリー」を植えたり、稲刈りをしたりする。また、幼 稚園にある「ざくろ」の実を食べたり、じゅずだまや くっっきむし、どんぐりなどの「章・木の実」で遊ぶ こともする。そして、 「大根」の種をまき、収穫し、
食べたり、 「ビオラ・パンジー・スノーポール」を植 える。冬には「チューリップ」を「来年咲くよ。」と 継続的な声かけをしながら植える。その他、幼稚園の 近くに欄を借り、 「サツマイモ」を植え、夏に何度か ペットボトルに水を入れ、水やりや草引きに行き、秋 に芋掘りをし、落ち葉で焼き芋をする。など、なるべ く見るだけで終わる植物ではなく、遊んだり、食べた りできるものを植え、育て、食べて土に返したりして、
幼児に自然の営みを知ってほしいと願っておられる。
この2園の自然環境としては、附属幼稚園の方が園 内に子どもの森があるなど恵まれているように見える。
そのため、附属幼稚園は、その恵まれた自然を存分に 活用しようとされている。北幼稚園は、森などの空間 がないため、なるべく地域の自然に触れさせようとさ れている。北幼稚園の方が、花壇などの植え替えは数 多くされているようだが、どちらの園も植物について は、一遊ぶことができる、食べることができるというこ とを工夫し、実践されているようである。その他、北 幼稚園は通園区ともいえる校区が限られているため、
虫などの何か興味深いものを見つけたとき、友達に教 え合いをしているが、附属幼稚園は校区がなく、通園 範囲が広いため、子どもたち同士で遊ぶことが少ない。
ただ、お話を聞いていて、違いがあったところは、両
園とも冬にはチューリップを植える、花が咲くときに 花の色により、咲く時期に多少のズレがあるのだがそ の際、幼児が「なぜ、僕のはまだなのに、 ○○ちゃん のはもう咲いているの?」と疑問を持ったとき、附属 幼稚園では「後からちゃんと咲くよ。」などと声をか けられる。北幼稚園では「黄色さんは早起きやね。次 は何色さんかな?」というように声をかけられる。こ の2つの言葉がけであるが、前者だと、 「後で咲くな らいいや。待っていよう。」と、後者だと、 「じゃあ、
赤かな?紫かな?」と考え、自分たちで決まりを見つ けようとするのではないかと考えられる。
この言葉がけだけが原因だとは言い切れないが、 1 つの要因だと考えられる。原体験は五感を用いて行う 体験であるから、視覚、聴覚も含まれるのである。体 験して感じることだけが大切なのではなく、聞いたこ と、例えば、大人の立場から言えば、幼児に対する言 葉がけが重要な要因の1つであると考える。
3. 2.年齢差の比較
年齢が上がるにつれて、子どもの考え方、感じ方が どのように変わるのか、全12色について年齢別にも比 較してみた。すると、表3および、図2に示すような 結果が出た。
3歳児、 4歳児、 5歳児が挙げてくれた項目のうち 共通していたものおよび、答えた自然物の種類数を表 3に、全回答における自然物の回答数の割合を年齢別 に比較して図2に示す。
表3 共通に挙げられた項目と自然物の種類数
色 共 通 項 目 自然 物 の 種 類 数 (個 ) 3 歳 児 4 歳 児 5 歳 児 黒 髪 の毛 夜 カ ラ ス 海 苔 7 12 13 白 雲 うさ ぎ 紙 ご 飯 幼
稚 園 の 服 壁 5 7 10
赤 リ ン ゴ い す イ チ ゴ 6 9 10
桃 み か ん オ レ ン ジ ジユ 】 ス 3 6 4
檀 み か ん 4 7 8
黄 レモ ン バ ナ ナ 信 号 3 7 10
黄 緑 葉 っぱ メ ロ ン 電 車 3 10 6
緑 葉 っぱ 折 り紙 4 ll ll
(蝣‑.
目
い す 海 ク レ ヨ ン ズ ボ
ン 4 6 8
紫 ぶ ど う 服 ク レ ヨ ン 1 6 5
茶 木 3 9 5
灰 ねず み ク レ ヨ ン 色 鉛 筆 .) 5 3
黒は、自然物の種類数、割合とも年齢が上がるにつ れて増える結果となった。
白は、自然物の種類数は、年齢が上がるごとに増え た。自然物の割合は、 4 ・ 5歳児は同じであったが、
3歳と4歳では10%以上差が出た。どの年齢も回答数
の多かった項目の上位3個以内に「雲」という自然物
中西 いっ子・松村 佳子
黒 白 赤 桃 樟 黄 黄緑 緑 図2 全回答における自然物の回答数の割合 が入っていた。
赤は、自然物の種類数、割合とも年齢が上がるにつ れて増えた。
桃は、自然物の種類数は、 4歳児が最も多かった。
自然物の割合は、年齢が上がるにつれて高くなった。
樫は、自然物の種類数は、年齢ごとに多くなった。
自然物の割合は、 5歳児より4歳児の方が高かった。
最も回答数の多かった項目はどの年齢も「みかん」で あったが、その割合は、 3歳児12%、 4歳児28%、 5 歳児19%と、ここでも4歳児が最も高かった。
黄は、自然物の種類数は、年齢が高くなるにつれて 多くなった。自然物の割合は、 4歳児が最も高かった。
回答数が最も多かった項目をみると、どの年齢も「レ モン」であり、割合は3歳児17%、 4歳児26%、 5歳 児21%とやはり4歳児が最も高かった。
黄緑は、自然物の種類数は、 4歳児が最も多かった。
自然物の割合は、年齢が上がるほど高かった。年齢を 問わず、共通項目に「電車」が入っていた。
縁は、自然物の種類数は、 4 ・ 5歳児は同じであっ た。自然物の割合は、年齢ごとに高くなった。
青は、自然物の種類数、割合は、年齢が上がるにつ れて増加した。共通項目に「ズボン」が入っているな ど、毎日の生活が子どもに与える影響の大きさが見ら IBS
紫は、自然物の種類数、割合とも、 4歳児が一番多 かった。回答数の最も多かった項目を見るとどの年齢 も「ぶどう」であり、割合はそれぞれ、 19%、 22%、
17%と5歳児が最も低かったが、種類数が多かったの で割合では5歳児が3歳児より高くなった。
茶は、自然物の種類数、割合とも4歳児が最も多かっ た。
灰は、自然物の種類数は、 4歳児が最も多かった。
自然物の割合は、年齢が高くなるにつれて高くなった。
最も回答数の多かった項目を見ると全ての年齢で「ね ずみ」であり、割合はそれぞれ、 5%、 26%、 43%と
ここでも年齢順となった。
どの色も3歳児から4歳児へは自然物の種類数、割 合とも年齢に伴って上がったが、 4歳児から5歳児で は、およそ半数の色で4歳児の方が多かった。これは、
附属幼稚園・北幼稚園と分けたときも、同じような結 果が見られた。
この結果から、 3歳から4歳の間に最も変化が現れ ているようである。この3歳、 4歳という時期は、語 嚢や文章の発達から見ると、語乗数は3歳までで1000 語、 4歳までに1500語、 3歳で全ての種類の品詞が現 れるようになる。文章の発達は、文章の数、長さ、構 造も3つの面からみて、 3歳のころにその頂点をむか え、 4歳のころに一応の完成をみる4)といわれている。
このことから、 3歳は最も言葉を覚える時期であると いえる。また、 3歳は「3歳児神話」と呼ばれるなど 大事な時期であることはよくいわれている。今回の調 査でも3歳から4歳にかけてが自然物を答えた幼児の 割合がとても高くなるという結果が出た。幼児教育は 何歳が大事というのではなく全ての時間、一瞬一瞬が 貴重なのだけれども、その中でも特に3歳児は外界の 情報を最も吸収し、自分の身につけていく時期である と考えられる。
4.おわりに
今回、色と自然体験に注目しながら調査を行った。
色については、知っている色を見せるとうれしそうな
顔をするなどやはり幼児にとって身近なものであるこ とがわかった。周辺環境の似ている幼稚園2園を調査 対象としたが、予想に反し、回答にかなりの差がみら れ、比較をした。原因を探していくうちに、 1つは通 園区が決められているかいないかがあり、また大人か らの「言葉がけ」の違いもあることが考えられる。ふ だん何気なくしている言葉がけであるが、幼児にとっ ては自然認識を深めるにあたり、一緒に感じ、考えら れるような「言葉がけ」が必要なことがわかった。
年齢別の比較では、 3歳児から4歳児にかけての幼 児の外界からの情報を吸収する能力が大きく成長する
ことがわかった。
幼児は身の回りに起こっていることを素直に受けと め、反応する。自然認識のできる素地を持つ子どもを 育てるためには、様々な自然体験をさせることが大切 である。その後、幼児が自ら考えることのできるよう、
適切な「言葉がけ」が大切であることがこの調査を通 してわかった。
最後に、調査に協力して下さった、奈良教育大学附 属幼稚園および、大和郡山市立北幼稚園と両園の子ど
もたちに感謝申し上げます。
引用文献
1)山田卓三原体験教材開発研究グループ 「ふるさ とを感じる遊び事典‑したい・させたい原体験300 集‑」 農山漁村文化協会(1990年)
2)稲垣良介 「体と心に刻まれた『体験』から、
『調査』、 『活動』が広がる」食農教育 第九号(夏 号) 農山漁村文化協会(2000年) 62‑69貢、湊秋 作「生き物から田んぼの自然度をはかる」 食農教 育 臨時増刊号 農山漁村文化協会(2001年) 50‑
581'上 他
3)千々岩英彰 「色彩学概説」 東京大学出版会 (2001年)
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ジ
参考文献
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ウ‑ソワ他 坂本市朗訳 「幼児期の感覚教育」 新 読書社 (1973年)
「ぱすてる」 http://www.nbj.co.jp/pastel/
「原体験教育研究会」 http:〝homepage2.nifty.com
/koku/gentaikenhome.htm
「色彩入門」 http://shibuya.cool.ne.jp/zucchi/
「色彩研究室」 http:〟www.color‑web.co.jp/ kiso.
Iffl朋1