奈良教育大学学術リポジトリNEAR
小学生の対人魅力に及ぼす人格・能力の類似性の効 果
著者 上田 敏見, 谷口 勝英
雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学
巻 34
号 1
ページ 179‑187
発行年 1985‑11‑25
その他のタイトル Effect of Personality and Ability Similarity on Interpersonal Attraction among Elementary School Children
URL http://hdl.handle.net/10105/2220
小学生の対人魅力に及ぼす人格・能力の類似性の効果
上 田 敏 見・谷 口 勝 英
(奈良教育大学心理学教室) (柏原市立相原小学校) (昭和60年4月23日受理)
対人魅力に関する一連の研究において、我々は、人格の類似性や社会的望ましさ(上田・谷口, 1975)、あるいは、能力の類似性や優越性(上田・谷口, 1980)が、対人魅力の源となっている
ことを示してきた。これらの結果は、人格の類似性については、 Izard (1960)、 Byrne, Gri氏tt and Stefaniak (1967)、 Seyfried and Hendrick (1973)等の研究と、人格の社会的望ましさに ついては、 Ajzen (1974)、 Hewitt (1972)等の研究結果と符合している。また、能力の類似性や 優越性については、出井(1966)、 Senn (1971)等の結果に符合している。これらのことから、
少なくとも成人(主として大学生)において、人格の類似性、社会的望ましさ、能力の類似性、
優越性が、対人魅力の源となっていることは明らかだと言えるだろう0 (もちろん、これらの研 究の多くで示されてきたように、どのような場面での対人魅力を扱うかによって、何が源になる かが変化することは言うまでもない。)
ところで、上田・谷口(1983)は、成人において見られたこのような関係が、より低い年齢層 においても見られるか否かを検討した。この研究では、小学校5年生を被験者として、人格の類 似性および社会的望ましさが、 「好き」 「遊び友達」 「学級委員」という3規準において、魅力の 源となるか否かを調べている。結果は、 「好き」 「遊び友達」という規準では、類似した他人、非 類似だが社会的に望ましい他人、社会的望ましさが同等で非類似の他人の順で好まれ、 「学級委 員」では、社会的に望ましい他人が好まれ、類似した他人、非類似の他人の問には差がないとい
うものであった。この結果は、 「好き」 「遊び友達」の規準では、類似一魅力、社会的望ましさ一 魅力の関係がともに存在し、特に前者の関係がより強力であること、 「学級委員」の規準では、
社会的望ましさ一魅力の関係のみが存在していることを示すものであるO そしてこれは、上田・
谷口(1975)の短大生においての結果と極めてよく一致しており、小学校5年生においても、成 人とはぼ同様の関係がすでに成立していることを示すと解釈できる。
それでは、果たして、能力の類似性や優越性に関してはどうだろうか。人格の場合と同様に、
小学生においても、成人と同様の関係が成立しているのであろうか。この点に関して、比較的低 い年齢を対象とした研究に、出井(1966)がある。彼女は、中学校1年生を被験者として、課題 指向的なパートナーとしては、課題達成に成功した他人を好み、一般的、情緒的な面では、むし ろ類似した他人を好むことを示している。これは、小学生においても、場面によって、類似一魅 力、優越一魅力の関係が分化して成立している可能性を示唆するものと言えるだろう。本研究で
は、人格の類似一魅力の関係を再度検討するとともに、この点についての検討を試みる。
ところで、対人魅力研究における残された分野の1つに、 2つ以上の要因が組み合わさったと きの対人魅力のあり方がある。この点に関して、 Singh (1973)は、態度と人格という2つの類 似性を同時に操作し、態度類似一人格類似、態度類似一人格非類似、態度非類似一人格類似、態 度非類似一人格非類似という4群を作り、それぞれの刺激人物に対する魅力を測定している。そ の結果、態度の類似も人格の類似も、ともに魅力の源になるが、態度の類似性の効果のより強い
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ことが示された。しかしながら、交互作用は全く見られず、これは、態度の類似性と人格の類似 性の効果の相互の影響は、加法的なもの以外にはないことを示しているように思われる。これに
対して、この研究に準じて行った、上田・谷口(1984)では、態度、人格の類似がともに魅力を 生じること、態度の類似性の効果がより強いことでは一致したものの、ほとんどの規準において 交互作用が見られ、態度あるいは人格の類似性の効果は、他方が類似している場合に顕著に見ら れ、他方が非類似な場合には、全く見られないか、態度の類似性の効果がわずかに見られるのみ であった。これは、態度、人格の類似性の効果が相互に相乗的に影響を与え合っていることを示 すものと言えるだろう。本研究では、 2つの要因の相互の影響の仕方について、さらに検討する ために、能力の類似、優劣に加えて、人格の類似性をも同時に操作し、能力と人格がどのような 強度で、どのような影響の与え方をしながら、対人魅力を生じていくのかを調べることとする。
方 法
実験計画 第1の要因は、人格の類似、非類似、第2の要因は、能力の類似、優劣である。こ のうち、いずれか一方を被験者内要因に、もう一方を被験者間要因とした。したがって、次の2 つの組み合わせが作られたo lつば、能力を被験者間要因、人格を被験者内要因とした3 × 2の 要因計画(これをプランaとする。)もう1つは、人格を被験者間要因、能力を被験者内要因と
した2×3の要因計画(プランbとする。)である。
材料(1)人格調査用紙 鈴木(1974)の児童用Self‑Diぽerential Scaleから選び出した10の修 飾語(しっかりした、人気のある、活発な、やさしい、親切な、おもしろい、明るい、元気な、
すなおな、まじめな)を人格尺度として用いた。この10の修飾語は、上田・谷口(1983)で用い たものに若干の修正を加えたものである。これらの修飾語は、それぞれについて、よくあてはま る〜ぜんぜんあてはまらないの5段階で評定するようになっている。
(2)遂行課題 田研式・新制田中B式知能検査より、検査1 (迷路)、検査4 (置換)、枚査7 (異同弁別)の3種類の検査を選び遂行課題とした。
(3)魅力調査用紙 どのぐらい好きか、遊び友達としてどうか、席がえのときとなりの席になり たいか、学級委員としてどうかの4個の魅力尺度からなっている。被験者は、これらの項目ごと に、好き(よい、なりたい)〜きらい(よくない、なりたくない)の5段階で答えるようになっ ている。また、類似性操作のチェックのために、どの程度似ているかという質問が、人格、能力 のそれぞれについて含まれている。これについても、似ている〜似ていないの5段階で答えるよ
うになっている。
手続き 実験は、 8日間の間隔をおいて、 2セッションに分けて、いずれも学級単位の集団で 実施した。
〔セッション1〕 人格調査用紙に自分自身がどんな人間であるか評定するように求めた。その 後、遂行課題を行わせた。遂行課題1 (検査4、置換)は、練習問題15秒、テスト3分、課題2
(検査1、迷路)、課題3 (検査7、異同弁別)は、練習問題10秒、テスト2分で行わせた。な お、課題を行わせる前に、 「この3種類のテストであなたのいろいろな能力が測れる。」との教示 を与えた。
〔セッション2〕 実験の目的を「他人の行いや考えをどの程度正確にわかることができるか」
を調べることであるとした。被験者にA、 B、 C3人(ブランa)または、 A、 B、 C、 D4人
(プランb)の人物の人格調査用紙の回答および遂行課題の成績が記入された冊子を配布し、 A のB、 CまたはB、 C、 Dに対する魅力を推測させ、魅力調査用紙の4つの尺度‑の記入を求め た。類似性操作チェックの質問については、人格調査用紙の回答が呈示された段階で人格につい て、遂行課題の成績が呈示された段階で能力について、それぞれ記入させた。また、与えられた 刺激人物についての情報は次のとおりである。なお、刺激人物はすべて、同性の級友だとした。
A一一人格については、被験者全員の人格調査用紙への回答の平均に基づいてプロフィールを 作成した。能力については、 3種の検査の平均を100点満点の50点とするとした。
くプランa)能力については、 B、 Cとも高(H)群は70点、類似(S)群は50点、低(L) 群は30点であるとした。人格については、 Bは80%一致、 Cは20%一致とした。
くプランb)人格については、 B、 C、 Dともに類似(S)群では80%一致、非類似(D)群 では20%一致としたo能力については、 Bは70点、 Cは50点、 Dは30点であるとした。
なお、プランa、 bのいずれについても、人格の類似性操作にあたっては、社会的望ましさが 介入しないように、ずれの方向を考慮した。また、呈示順序は常に人格、能力の順であった。
被験者 小学校5年生男子114人、女子103人、計217人が実験に参加した.うち、セッション 2で欠席した、男子3人、女子4人、回答に不備のあった、男子4人、女子1人は除外した。ま た、統計処理の都合上、男子3人、女子12人を無作為に除外し、最終的には、男子105人、女子 85人、計190人(プランa114人; H、 L、 S各群38人、プランb76人; S、 D各群38人)のデー タを分析した。
m m
類似性の知発 くプランa)各刺激人物がAにどの程度類似していると知覚されたかは、表1 に示した。似ているには5点、どちらかというと似ているには4点、ふつうには3点、どちらか
というと似ていないには2点、似ていないには1点が与えられた。この結果にもとづいて、分散 分析を行ったところ、人格の類似性の知覚に関しては、人格の主効果(F‑263.86, df‑1,111, P<.01)のみが有意であった。これは、人格の類似性の操作が成功したことを示している。能力
の類似性の知覚に関しては、能力の主効果(F‑47.66, df‑2,111, /><.01)、人格の主効果(F
‑16.13, df‑1,111, /><.Ol)、交互作用(F‑8.58, df‑2,111, /サ<.Ol)のすべてが有意であ ったO能力の主効果についての単純主効果の検定の結果、 HとS (*‑6.76, df‑111, /><.001)、
SとL (*‑10.71, df‑111, p<.001)、 HとL (*‑4.73, #"‑111, /サ<.001)の問にすべて有
表1類似性の知覚(ブランa)
人格の類似性 能力の類似性
釈 S D S D
H 3.8 0 Z l l 2 .8 9 3. 0 3 S 4 0 5 2 18 4 .4 2 3. 6 3 L 3. 8 2 1.8 2 2 6 1 2 .1 6
表2 類似性の知覚(プランb)
人格の類似性 能力の類似性
釈 S D S D
H 4 .0 5 2. 68 2 . 9 5 2. 3 9 S 3 .9 7 2. 7 1 4 .4 2 4. 0 5 L 3. 7 1 2 9 5 2.7 1 2. 5 5
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意差が見られた。この結果はS‑H‑Lの順で類似していると知覚されたことを示している。 L よりHの方が類似していると知覚されたことには若干の問題を残すが、能力の類似性の操作も一 応成功したと考えてよいだろう。なお、ここでは、人格の主効果や交互作用も有意になっている が、これは、人格の情報が先に呈示されたことによる影響が表れたものと考えられる。
くプランb)各刺激人物がAにどの程度類似していると知覚されたかは、表2に示した。プラ ンaと同様に5点‑1点が与えられた。分散分析を行ったところ、人格の類似性の知覚に関して は、人格の主効果CF‑56.15, df‑l, 74, /><.01)、交互作用(F‑3.37, df‑2, 148, /><.05) が有意であった。人格の類似性の操作はやはり成功した。能力の類似性の知覚に関しては、能力 の主効果CF‑111.40, df‑2, 148, /><.01)、人格の主効果(F‑8.02, df‑l, 74, p<.OV) が有意であった。能力の主効果についての単純主効果の検定の結果、 HとS 0‑ll.24, df‑U8, p<.001)、 SとL (t‑ll.52, <//‑148, /<.OOl)の間に有意な差が見られた。これは、 Sが最
も類似していると知覚されたことを示し、能力の類似性の操作も成功した。なお、ここで人格の 主効果が見られたのは、プランaと同様の理由によるものであろう。
魅力 くプランa)各規準の魅力の程度は、例えば「好き」の場合、好きに5点、どちらかと いうと好きに4点、どちらともいえないに3点、どちらかというときらいに2点、きらいに1点
というように、 5‑1点を与えて算出した。その結果は図1に示した。また、この結果にもとづ いた分散分析の結果は表3に示した。まず、 「好き」では、人格の主効果と交互作用が有意であ った。交互作用について、単純効果の検定を行ったところ、能力Sの場合に、人格SとD (′‑
6.23, df‑111, /K.001)の問に有意差が見られた。この結果は、人格が類似した他人は非類似 の他人より好まれること、能力が類似している場合には、この関係がはっきり見られるが、能力 が非類似の場合には見られないことを示すものである。 「遊び友達」でも、人格の主効果と交互 作用が有意であった。単純効果の検定の結果も「好き」と同様に、能力Sの場合に、人格SとD (」‑6.41, rf/‑lll, /<.OOl)の間に有意差が見られた. 「席」についても全く同様に、人格の 主効果と交互作用が見られ、単純効果の検定の結果は、能力Sの場合に、人格SとD (∫‑6.19, df‑111, /><.OOl)の問に有意差が見られた。 「学級委員」では、能力の主効果、人格の主効果、
交互作用がすべて有意であった。能力の主効果に関しての単純主効果の検定の結果、 HとL (*‑
5
4
3
2
1
好き
JiiEヽ S人格D
ヽ
ヽ■ 3
2
席
ゝやヽl
S人格D S 人格D
図1 規準別対人魅力(ブランa)
S人格 D
と「 i.3tf胤
●‑‑一一●能力S
° 一〇 能力L
2.97, rf/‑lll, p<.OV)の 問に有意な差が見られた。ま た、交互作用についての単純 効果の検定の結果は、能力が Hのとき、人格SとD (′‑
2.20, df‑111, /><.05)の 問に、能力Sの場合に、人格
SとD (*‑4.91, df‑ll¥, p<.001)の問にそれぞれ有
意差が見られた。 「学級委員」
の場合には、他の3規準と異 なり、人格の類似性の効果の
表3 図1にもとづく分散分析表(要約)
変 動 因 df F
好 き 遊 び 席 学級委員
B etw een Ss
1.能 力
e汀or ( b ) 113
2 111
0.71 1.32 0.03 3.68事
W ithin Ss 2.A fe
114
1 29.53軸 31.14棚 35.98** 24 31*
1 ×2 e汀or ( w )
2 111
4 74* 9.83** 6.56** 5.79**
**P<.01, * P<.05 他に、能力の優越性の効果も
見られた。また、人格の類似性の効果が、能力が優れている場合にも見られた。
くプランb)各規準の魅力の程度の算出方法は、プランaと同様である。結果は図2に、また
;串‑庫率
能 力分散分析の結果は表4に示した。
まず、 「好き」では、人格の主 効果、能力の主効果が有意であ った。能力の主効果について単 純主効果の検定を行ったところ、
SとL it‑4.02, <sT/‑148, /サ<
.001)、 HとL it‑2.51, df‑
148, /><.05)の間に有意な差 が見られた。これは、人格の類 似した他人は非類似な他人より 好まれること、能力の優れた他 人や類似した他人は、劣った他
能 力 能 力
5
4
3
2
1
学級委員
i ‑. .
倒 fc^B I 能 力 [^^^=H」!更
C 3人格D 図2 規準別対人魅力(プランh)
表4 図2にもとづく分散分析表(要約)
変 動 因 d f F
好 き 遊 び 席 学 級 委 員
B e tw e e n S s
1.人 格
e 汀 o r ( b ) 7 5
1 7 4
3. 4 0 * 6. 3 6 * * 7.8 5榊 0 .6 3
W it h in S s 2 .能 力
1 5 2
2 1 0. 6 8 * * 6. 8 3 * 4 . 3 1" 2 .3 0 1 × 2
e r r o r ( w ) 2 1 4 8
1. 4 2 0 .6 4 0 . 97 0 .8 8
**P<.01, *P<.05
184 上田 敏見・谷口 勝英
人よりも好まれることを示している。 「遊び友達」 「席」についても、人格の主効果、能力の主効 果が見られ、 「好き」とほぼ一致した結果となっている。能力の主効果に関しての単純主効果の 結果だけがやや異なり、 「遊び友達」では、 SとL (f‑3.10, df‑148, /><.01)、 「席」では、
HとL (*‑2.49, df‑U8, /><.05)の間に有意差が見られた。いずれにしても、能力の劣った 他人が最も好まれないという点では一致している。 「学級委員」については、どこにも有意差は 見られなかった。
考 察 本研究の主な結果は次のとおりであった。
(1)ほとんどの規準において、人格の類似一魅力の関係が見られた。また、能力については、類 似一魅力の関係が、プランbの「好き」 「席」で、優越一魅力の関係が、プランaの「学級委員」
と、プランbの「好き」 「遊び友達」で見られた。
(2)プランaでは、 「学級委員」を除くすべての規準で、人格の類似性の効果が、能力が類似し た場合にのみ見られた。 「学級委員」では、人格の類似性の効果は、能力が優れた場合にも見ら れた。プランbでは、人格の類似、非類似によって、能力の優越や類似と魅力との関係に、明ら かな違いは見られなかった。
まず、人格の類似性は、明らかに対人魅力の源となっていた。これについては、上田・谷口 (1983)と完全に一致している。次に、能力の類似性や優越性もまた、魅力の源になっていた。
しかしながら、能力の類似性や優越性と魅力との関係については、これらの関係が、どの規準に おいても、プランa、 bのいずれか一方でしか見出されていないなど、人格のそれとくらべて不 明確なものであった。また、類似性が優先する規準と、優越性が優先する規準が分化しているだ ろうという予想についても、必ずしも明確な結果は得られていない。成人においては、能力の類 似一魅力、優越一魅力の関係は、かなりはっきりしたものであり、規準による分化も明確になさ れている(上田・谷口, 1980)が、小学生ではまだ、能力と魅力の結びつきが弱く、規準による 分化も十分なされていないのかも知れない。この点については、能力だけを扱った研究で、さら に検討されなくてはならないだろうが、少なくとも、小学生の場合は、人格の類似性は、能力の 類似性や優越性よりも強力な、魅力の源であるとは言えるだろう。
能力と人格の相互の影響については、プランaとプランbで、全く違った結果となった。プラ ンaでは、明らかに、能力の類似、優劣が、人格の類似性と魅力の結びつきに影響を与えている。
プランaでは、能力の優、類似、劣を被験者問要因とした実験計画である。したがって、被験者 は、能力の優、類似、劣を前提として、人格の類似した、あるいは非類似な他人に対する魅力を 評定するわけである。このことから、能力の類似は、人格の類似が魅力を生じるための前提条件 であると言えるだろう。これは、上田・谷口(1984)の結果とよく似ている。態度と人格におい て見られたのと同様の関係が、能力と人格においても、しかも小学生において見られたのである。
対人魅力の源になる種々の要因が、相互に影響しながら魅力を形成している様が、いよいよ明ら かになってきた。一方、プランbでは、このような関係はどこにも見出せない。人格の類似性と 能力の類似性、優適性は、個々に独立して魅力を形成しているようにも見える。これは一体何を 意味するのであろうか.考えられる可能性の一つは、人格は能力の類似や優越と魅力の結びつ普 に影響を与えない、逆に言えば、能力の類似や優越と魅力の結びつきは、人格の類似、非類似に
影響を与えられない性質のものだということである。とすれば、能力と人格の相互の影響の仕方 は、能力‑人格という一方的なものだと言うことになる。しかしながら、他の可能性も残されて いる。それは、被験者が、能力の違いほど、人格の類似性の違いを意識しなかったのではないか ということである。人格の類似、非類似という前提をよりはっきりと意識化させて、再度検討す るのも興味深い。
要 約
本研究は、小学生において、人格の類似性や、能力の類似性、優越性が、対人魅力の源となる かどうか、その関係が、親準の違いによって、どう異なっているかを検討すること、人格の類似 性と能力の類似性、優越性が、対人魅力の成立要因として、どのように互いに影響し合っている かを検討することを目的として行われた。
小学校5年生217人(男子114人、女子103人)の被験者が、能力が優れている、類似している、
劣っているのいずれかの前提のもとで、人格の類似、非類似の刺激人物に対する魅力を評定する 条件(プラン乱)、人格が類似している,非類似であるのいずれかの前提のもとで、能力の優れ た、類似した、劣った刺激人物に対する魅力を評定する条件(プランh)のいずれかに割り当て
られて、実験に参加した。主な結果は次のとおりであった。
(1)ほとんどの規準において、人格の類似一願力の関係が見られた。また、能力については、規 準によって、類似一魅力、優越一魅力の関係のいずれかまたは両方が見られたが、そのような関 係の見られない場合もあった。
(2)プランaにおいては、人格の類似性の効果は、 「学級委員」を除くすべての規準では、能力 の類似した場合のみにおいて、 「学級委員」では、能力の類似した場合と優越した場合にみられ た。プランbでは、人格の類似、非類似によって、能力の類似や優越と魅力との関係に明らかな 違いは見られなかった。
なお、これらの結果に関して、若干の考察と、今後の研究への示唆が提出された。
引用文献
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186 上田 敏見・谷口 勝英
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上田敏見・谷口勝英1975 対人的誘引関係における類似性と社会的望ましさ 姦艮教育大学紀要, 24,123‑133.
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〔付記〕 本研究の資料収集や分析にど協力頂いた谷川弥生さんに厚く感謝します。
Effect of Personality and Ability Similarity on Interpersonal Attraction among Elementary School Children
Toshimi Ueda
{Department of Psychology, Nara University of Education, Nara 630, Japan) Katsuhide Taniguchi
(Kashixvai・a Elementary School, Osaka 582, Japan) (Received April 23, 1985)
The purpose of the present study is to examine, among elementary school children, whether personality similarity and, superiority and similarity of ability can be the source of interpersonal attraction, how the relationships differ among criteria, and how these fac‑
tors influence each other as determinants of interpersonal attraction.
217 5‑th graders (114 boys and 103 girls) served as subjects. They were assigned to either one of the two experimental conditions‑one was to rate attraction toward the stimu‑
lus person of personality similarity or dissimilarity on the premise of superior ability, sim‑
ilar ability, and inferior ability (Plan A); the other was to rate attraction toward the stim‑
ulus person of superior ability, similar ability, and inferior ability on the premise of per‑
sonality similarity and personality dissimilarity (Plan B).
Main findings were as follows:
( 1 ) Personality similarity‑attraction relationships were observed in almost all criteria.
As to ability, either one or both of similarity‑attraction relationship and superiority‑attrac‑
tion relationship was observed in some criteria, but not in other criteria.
(2) In Plan A, personality similarity effect was observed in all the criteria except class committee only when ability was similar, and observed in class committee criterion
both when ability was similar and when ability was superior.
In Plan B, the relationship between ability similarity or superiority on the one hand, and interpersonal attraction on the other, was not signi丘cantly influenced by personality similarity or dissimilarity.
The obtained results were compared with those reported in earlier studies and some discussion was made in regard to the agreements and discrepancies together with a few suggestions for further study.