奈良教育大学学術リポジトリNEAR
小学生の対人魅力関係における人格の類似性と社会 的望ましさ
著者 上田 敏見, 谷口 勝英
雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学
巻 32
号 1
ページ 217‑226
発行年 1983‑11‑25
その他のタイトル Personality Similarity and Social Desirability in Interpersonal Attraction among Elementary School Children
URL http://hdl.handle.net/10105/2305
奈良教育大学紀要 第32巻 第1号(人文・社会)昭細年 Bull. Nara Univ. Educ, Vol.32, No.1 (cult. &soc). 1983
小学生の対人魅力関係における人格の 類似性と社会的望ましさ
上 田 敏 見・谷 口 勝 英
(奈艮教育大学心理学教室) (柏原市立柏原小学校) (昭和58年4月8日受理)
人格の類似性が、対人魅力の源の一つであることが、多くの研究(Izard, 1960; Griffitt.
1966; Byrne, Griffitt and Stefaniak, 1967; Seyfried and Hendrick, 1973; Singh, 1973,et al.,)
で立証されてきた。そして同時に、人格の持つ感情的価値(Ajzen, 1974)であるとか、社会的 望ましさ(Hewitt, 1972;上田・谷口, 1975;蘭・小窪, 1978)のようなものも、対人魅力の源に なることが示されてきた。しかしながら、これらの研究は、そのほとんどが大学生かそれに相当する年令の者を対象とし て行われている。態度に関しては、 Byrne and Griffitt (1966)が、小学生を対象として、類似 性と魅力の間に、成人と同様の正の直線的関係があることを見出しているが、人格に関しては、
そのような発達的な検討は行われていないo
Izard (1963)の研究は、この点で非常に興味深い問題を含んでいる。彼は、大学の1年生と 2年生の交友関係を調べ、 1年生では友人どうしの人格は、ランダムな対のそれよりも類似して おり、類似一魅力の関係が見られたが、 2年生ではそのような傾向は見られなかったと報告して いる。そしてその理由について、より成熟した人の場合は、自分の人格特性を友人に反映させて 見る必要がないためであろうと述べているo
このことは、人格の類似性と魅力との関係に発達差があることを示唆している。より低い発達 段階において、態度で見られたような、類似一一魅力の関係が見られるかどうかの検討が必要であ ろう。また、同様に、社会的望ましさ一魅力の関係についても、発達差の検討が必要であろう。
上田(1969)は、小学校2年生から中学校2年生までを対象に、友人選択理由の発達的変化を 調べている。この研究では、好きな友人をあげさせ、その理由をあらかじめ用意したリストから 選ばせるという方法をとっているが、結果は、近接性、功利性、優越性の要因は学年が高くなる につれて減少し、類同性の要因は増加するというものであった。本研究の対象に近い小学校6年 生の場合、類同性が25.88%あり、これだけで見れば、類似一魅力の関係が見られそうである.
また、社会的望ましさについても、優越性、情意特性、全体印象性が関係しており、これらを合 わせると50.92%となり、やはり魅力との関係が見られそうであるO
しかしながら、小学生の対人魅力関係には類似性はあまり関係ないのではないかとする研究も ある。高田、潮田(1976)は、社会的比較過程の理論(Festinger, 19&4)の発達的考察との係 わりにおいて、小学生の学級集団の対人関係の構造を調査している。それによると、資源の大き さ(学力がすぐれているか否か)の類似性は低いが、配慮性の認知(リーダーシップ研究におけ る集団維持機能として位置づけられる要因。具体的には、勉強がわからなくて困っている人の相 談をしてあげたり、みんなが楽しく遊べるように気を配ること)の伴う二者関係において、資源
217
218 上田 敏見・谷口 勝英
の大きさが類似し、配慮性の認知が伴わない二者関係や、資源の大きさの類似性が低く、配慮性 の認知も伴わない二者関係においてよりも、高い情緒的魅力に基く関係が多かった。彼らは、こ れらの結果から、小学生における対人関係は、社会的比較過程の理論に従うよりも、むしろ未分 化的、無差別的なものである可能性が強いと考察している。この研究は、直接人格の類似性を扱 ったものではないが、それでも、人格の類似‑魅力の関係の存在に否定的な結果であると言わざ るを得ないであろう。
はたして、人格の類似性は魅力を生ずるのであろうか。これらの研究の結果から、明確な結論 を得ることはできない。そこで本研究では、小学生の対人魅力関係について、人格の類似一魅力
の関係が存在するか否かについて、再度検討することにする。また、社会的望ましさ一魅力の関 係についても、上田(1969)からの推察の当否について検討する。
研 究 I
目的 上田、谷口(1975、 1976)は、人格の類似性や社会的望ましさが魅力を生ずるか否かほ どのような規準での対人魅力を扱うか、どのような人格の側面での類似性や社会的望ましさを扱 うかに依存していることを示した。研究Iでは、児童の日常生活におけるいくつかの場面を規準 として設定し、すでに成立している交友関係の中に、類似一魅力、社会的望ましさ一魅力の関係 が見られるかどうかを検討する。また、人格の側面による差異についても、どのような意味での 社会的望ましさかという点から分類して検討する。
方法1.予備調査 予備調査は、社会的に望ましい人格を表す修飾語を決定するために行っ た。調査の対象は、小学校5年生227人(男子129人、女子98人)であった。鈴木(1974)の児童 用Self‑Differential Scale から選んだ、社会的に望ましいと思われる修飾語17語と、同 Scale の暫定尺度から選んだ修飾語に、日常よく使われる修飾語1語(根気強い)を加えた22語を示し、
自分はこんな人でありたい、友人から見て大切、両親から見て大切、先生から見て大切の4基準 で、それぞれ5個選ばせた。その結果は表1に示したが、各基準間の選択数の順位相関係数と、
選択数の多い修飾語の一致程度をもとにして、自己、友人から見て望ましい修飾語6語(以下白 友と記す;おもしろい、やさしい、元気な、親切な、明るい、健康な)、親、先生から見て望まし い修飾語6語(以下親教と記す;まじめな、すなおな、しっかりした、頭のよい、明るい、健康 な)を選び出した。なお、明るい、健康なは両方に重なっているが、これは、これらの修飾語が いずれの基準においても、高い頻度で選ばれていたからである。
2.本調査の手続き 予備調査で選び出した10の修飾語について、まず、自分自身にどの程度 あてはまるかを評定させ、続いて、学級内の同性という制限で、 ㊦好きな人、 ⑦いっしょに遊ぶ 人、 ⑳いっしょに勉強する人、 ㊤学級委員として最もよいと思う人を記入させ、その人がどんな 人かについても、自分自身にと同様に評定させた。評定は、修飾語それぞれについて、よくあて
はまる、だいたいあてはまる、どちらとも言えない、あまりあてはまらない、全くあてはまらな いの5段階で行った。
なお、 ㊦〜㊤の規準は、上田、谷口(1975)の規準に対応するように選んだ。 ⑳は片腕、 ㊤は ))‑ダーに対応するように選んだものである。調査は各学級担任に依頼し、学級ごとに集団的に 実施した。
3.調査の対象 本調査の対象は、小学校6年男子61人、女子45人、計106人(3学級)であっ
小学生の対人魅力関係における人格の類似性と社会的望ましさ 表1修飾語の社会的望ま しさ
女
219
数値は選択された回数を表す。また、 ①〜㊥はその順位を表す。
た。うち記入もれ等、回答に不備のあった者を除いて、最終的には、男子54人、女子39人、計93 人のデータを分析した。なお調査時期は56年4月で、 3学級とも学級編成後1年以上経過してお り、 5年次から担任の交代もない。
結果 <類似性>選択者と被選択者の類似性は、選択者と被選択者の自己評定について、修飾 語ごとの差の合計を求め、これをランダムに選んだ他者との差の合計と比較することによって測 定した。結果は表2に示されるが、 t検定の結果は、女子で親教、勉強で有意に近い傾向(仁 1.99, df‑38, p<.10)が見出されただけで、有意差はどこにも見出せず、規準、修飾語のいず れにかかわらず、類似性と魅力の問に何らの関係も見出せなかった。
表2 被 選 択 者 と の 類 似 性
男 子
WA
埠置二二
修女 子
好き t 遊びI 勉強l 委員 R* 好きl 遊び E 勉強[委員
5.26 4.93 5.22 5.72 5.35 6.46 6.10 i 6.05 6.15 6.15
親・教 5.41 5.46 5.63 5.67 6.26 5.64 5.59 】 6.10
* ランダムに選んだ他者との差の合計
220 上田 敏見・谷口 勝英 表3 社 会 的 望 ま し さ
男 子 女 子
修 飾 語 、\ 規 ij 自 己 * 好 き ‑ 遊 び ‑ 勉 強 ‑ 委 員
自 己 好 き 8 J V i 'i i 五 首
̲i
2 1 . 7 8
2 2 . 3 0 2 1 . 8 5 2 1. 3 3 2 1 . 6 7 2 2 .4 6
2 3 . 3 6 2 3 . 3 8 2 2 . 2 6 24 . 2 1 2 6 . l l 2 5 . 57 2 5 .5 4 2 5 . 7 8 2 6 .8 5 2 6 . 2 6 2 6 . 33 2 7 .1 3
親 . 敬
還 納
18 . 8 7
1 9 . 7 2 1 9 . 28 1 9 . 0 9 1 9 . 5 6 1 8 . 8 7
19 .8 5 1 9 . 9 2 1 9 .2 8 2 0. 9 5 選 評 榊 2 4 . 3 1 2 4 .3 9 2 5. 3 9 2 5 . 6 9 2 6 .1 3 2 5 . 6 4 2 6 .4 9 2 7 . 7 2
* 自己評定 串* 被選択者の自己評定 *** 被選択者に対する評定
<社会的望ましさ>社会的望ましさについては、各修飾語ごとに、よくあてはまるを5点、だ いたいあてはまるを4点、どちらとも言えないを3点、あまりあてはまらないを2点、全くあて はまらないを1点として、社会的望ましさ得点を算出した。自友、親教ともに、社会的望ましさ 得点は30点から6点の間に分布することになる。 (得点の高いほど社会的に望ましいとみなされ る。)社会的望ましさ得点は、自己評定、被選択者の自己評定、被選択者に対する評定のそれぞ れについて求めた。その結果は表3に示される。
まず、自己評定と被選択者の自己評定の社会的望ましさ得点には、おおむね差がみられなかっ た。自友に関しては、男女とも、すべての規準において、有意差はみられなかったO また、親教 では、男子の学級委員で、被選択者の方が社会的に望ましいという傾向(*‑1.80, df‑53, p
<.10)がみられ、女子の学級委員で、被選択者の方が有意に社会的に望ましい(*‑2.73, df‑
38, ♪<‑01)ことが示されたが、他の規準では有意差はみられなかった。
次に、自己評定と被選択者に対する評定の社会的望ましさ得点を比較したところ、男女とも、
両修飾語、すべての規準において0.¥%水準で、被選択者に対する評定の社会的望ましさ得点の 方が高いことが示された。 (男子 自友;好きf‑7.09,遊び∫‑6.79,勉強f‑6.17,委員t‑
7.52,親教;好き」‑8.76,遊びf‑8.79.勉強*‑ll.23.委員/‑10.03,以上J/‑53, iK.OOl, 女子 白友;好きf‑6.29,遊びf‑4.81,勉強f‑5.29,委員*‑6.21,親教;好き*‑9.29,近 び*‑8.61,勉強f‑9.79,委員*‑13.32,以上df‑i8, p<.OOl)児童は、自分の選択した相 手を、自分よりも社会的に望ましいと知覚していた。
被選択者に対する評定を、被選択者の自己評定と比較した場合も、男女、修飾語、規準のいず れにもかかわりなく、すべてO.i%一水準で、被選択者に対する評定の社会的望ましさ得点の方が 高く(男子 自友;好きf‑6.71,遊びf‑6.38,勉強f‑7.40,委員*‑8.53,親教;好きt‑
8.02,遊び*‑8.83,勉強f‑ll.27,委員*‑10.51,似上d/‑53, ♪<.OOl,女子 自友;好き
*‑4.49,遊び*‑4.17,勉強*‑5.55,委員f‑4.36,親教;好きf‑7.74,遊びf‑6.16,勉強 {‑9.46,委員f‑10.96,以上<f/‑38, p<.001)、児童は、自分の選択した相手を、現実以上に 社会的に望ましいと知覚していた。
考察 本研究の結果で見る限りにおいて、人格の類似性は、小学生の対人魅力との関係がない ように思われる。少なくとも、その関係はそれほど強いものではないと、言わざるを得ないよう である。
また、人格の社会的望ましさも、対人魅力との関係はそれほど強力なものではなさそうである。
現実の社会的望ましさは、それが要求されるような特別な場合(本研究では、親教、学級委員)
小学生の対人魅力関係における人格の類似性と社会的望ましさ 221 にのみ、魅力の源として機能するものかもしれない。ただ、小学生が、自分が魅力を感ずる相手 を極めて望ましいと知覚しているのは明らかである。社会的望ましさの知覚は、魅力の源となる のかもしれないO しかしながら、本研究の結果からは、望ましさの知覚ゆえに魅力を感じたのか、
魅力を感じているがゆえに望ましさを知覚したのかは全く明らかでない。
このように、本研究の結果は、類似一一魅力、社会的望ましさ‑魅力の関係の存在に否定的なも のであったが、本研究の(調査法であるという)方法上の制約から、これらの関係の存在を否定 するには不十分なものであろう。したがって、これらの関係の成否について、違った側面から、
さらに検討を加えることとする。
研 究 I
目的 研究∬の目的は、類似一魅力、社会的望ましさ‑魅力の関係の成否について、さらに検 討を加えることである。研究Iでは、すでに成立している交友関係の中に、これらの関係がみら れるか否かを調査したが、研究Ⅱでは、実験的に検討することにする。なお、規準、人格側面に よる差異の問題については、規準のみについて、検討し、人格側面については割愛する。実験手 続きの煩雑さをさけることがその理由である。
方法1.手続き 実験は、被験者に人物Aの人物B、 C、 Dに対する魅力を推測させるとい う方法をとった。被験者に「他人の行いや考えをどの程度正確にわかることができるかを調べ る」のが本研究の目的であると伝えたのち、研究Iで用いたのと同じ自己評定尺度への記入を求 め、その後、あらかじめ作成された人物A、 B、 C、 Dについての情報を与えた。
これらの情報は、同じ自己評定尺度への回答の形で与えられた。人物Aは、研究Iの自己評定 の平均値に基いて作成されたものである。また、人物Bは、 Aより全修飾語1点(合計10点)社 会的に望ましい方向にずれて評定されたもの、人物Cは、 Aより全修飾語1点ずつ社会的に望ま しい方向へ、残りの5つの修飾語で1点ずつ社会的に望ましくない方向へずれて評定されたもの、
人物Dは、 8つの修飾語はAと同じに、 1つが社会的に望ましい方向へ1点、もう1つが社会的 に望ましくない方向へ1点ずれて評定されたものであった。したがって、 BはAと非類似でより 社会的に望ましい人物、 CはAと非類似で社会的望ましさは同じ人物、 DはAと類似していて社 会的望ましさも同じ人物ということになる。なお、人物A、 B、 C、 Dは、被験者と同学年、同 性であるとした。
被験者が、 A、 B、 C、 Dの人物像を描き終えたのち、 AがB、 C、 Dをどのくらい好きか、
遊び友達としてどう思っているか、学級委員として選ぶとすればどう思っているかについて、好 き、どちらかというと好き、ふつう、どちらかというと嫌い、嫌い、および、よい、どちらかと いうとよい、ふつう、どちらかというとよくない、よくないの5段階で評定させた。また、類似 性の操作の有効性を検討するために、どの程度似ているかについても、似ている、どちらかとい
うと似ている、ふつう、どちらかというと似ていない、似ていないの5段階で評定させた。
なお、実験の初めに求めた自己評定尺度への記入は、被験者に尺度の意味を理解させるための ものであった,,また、実験は、学級ごとに集団的に行ったo実験実施は、 58年1月であった。
2・被験者 被験者は、小学校5年生男子57人、女子55人、計112人(3学級)であった。うち、
回答に不備のあった3人(男子1人、女子2人)は、結果の整理から除外した。また、統計処理の 都合上、男子3人を無作為に除外し、最終的には、男女各53人、計106人のデータを分析した。
222 上田 敏見・谷口 勝共 裏4 類 似 性 の 知 覚
\ 仝竺 B C D
女
合 計 2.49 2.77 4.20
結果 <類似性の知覚>B、 C、 DがAにどの程度類似していると知覚されたかは、表4に示 した。似ているに5点、どちらかというと似ているに4点、ふつうに3点、どちらかというと似 ていない2点、似ていないには1点を与えた。この結果に基いて、分散分析を行った。その結果、
人物の主効果のみが有意になった(F‑86.19, df‑2/261, /><.Ol),そこで、これをさらに詳細 に検討するために、単純主効果の検定を行った。その結果、人物B〜C、 B〜D、 C〜D問にそ れぞれ有意な差が見出され(B‑‑C f‑2.04, df‑261, 」<.05; B‑D f‑12.28, #‑261, p<
・001; C‑D *‑ll.19, #‑261, /サ<.001)、被験者がD、 C、 Bの順でAに類似していると知 覚したことが示された。 CがBより類似していると知覚されたが、その差はDとの差とくらべて わずかであり、類似性の操作は一応成功した。
<魅力>各規準における魅力の程度は、表5に示した。類似性の知覚と同様に、好き(よい) に5点、どちらかというと好き(どちらかというとよい)に4点、ふつうに3点、どちらかとい
うと嫌い(どちらかというとよくない)に2点、嫌い(よくない)には1点を与えた。この結果 に基いて、各規準ごとに分散分析を行った。その結果は表6に示した。すべての規準で、人物の
蓑5 規 準 別 の 対 人 魅 力
4.12 3. 68 3.26 4. 07
表6 分 散 分 析 表(要約)
3. 93 2. 83 2. 91
小学生の対人魅力関係における人格の類似性と社会的望ましさ 223
主効果が有意になったが、性の主効果、交互作用はすべて有意でなかった。そこで、各規準で単 純主効果を検定したところ、好きでは、 B〜C、 B〜D、 C〜D間に(B‑C f‑3.28, df/‑261, p<.OU B‑D *‑3.87, df‑251, /><.OOl; C‑D *‑7.14, df‑261, /><.001)、遊びでも同様
に、 B〜C、 B〜D、 C〜D間に(B‑C t‑3.U, df‑261, p<.Ol; B‑D f‑2.94, df‑261, PK.OU C‑D f‑6.ll, #‑261, ♪<.001)、学級委員では、 B〜C、 B〜D間に(B‑C f‑8.79,
df‑261, ♪<.OOl; B‑D *‑8.15, df‑261, ♪<.001)、それぞれ有意な差が見出された。好き、
遊びでは、 D>B>Cの順で、学級委員ではB>C≒Dの順で好まれていた。
考察 本研究の結果は、好き、遊びという規準では、類似した他人が最も好まれ、社会的に望 ましい他人も、単に非類似なだけの他人よりは好まれるが、類似した他人ほどは好まれないこと、
学級委員では、社会的に望ましい他人が好まれ、類似した他人と非類似な他人との間には、魅力 に差がないというものであった。これは、好き、遊びの規準では、類似‑魅力、社会的望ましさ
‑魅力の関係がともに存在すること、類似一魅力の関係が、社会的望ましさ一魅力の関係とくら べてより強力なものであることを示している。また、学級委員では、社会的望ましさ‑魅力の関 係のみが存在し、類似性は魅力と結びつかないものであることを示している。
この結果は、短大生に関しての、上田、谷口(1975)の結果と極めてよく一致しており、小学 校5年生においても、すでに、短大生と同じ、類似一魅力、社会的望ましさ‑魅力の関係が存在
し、場面による分化もなされていることを示すものである。
総 合 考 察
本研究の第一の目的は、小学生において、大学生と同じように、人格の類似性や社会的望まし さが、魅力の源となるかどうかを検討することであったが、これに関する、研究Iと研究Ⅱの結 果は対立的なものであった。研究Iでは、類似性と魅力の問に何らの関係を見出せなかったのに 対し、研究Ⅱは、明らかに、類似性が魅力の源になることを示している。また、社会的望ましさ についても、研究1で魅力の対象が実腹に社会的に望ましかったのは、親教で学級委員という、
ごく限られた場合であったのに、研究Ⅱでは、すべての規準で、社会的望ましさが魅力の源にな ることが示されている。
この一見矛盾した結果は、どのように解釈されるだろうか。それは、おそらく、研究I、 Ⅱの 方法の違いに帰すべきものであろう。研究Iは、すでに成立している交友関係の中に、これらの 関係が存在しているかどうかを調査したものであるのに対し、研究Ⅱは、類似性や社会的望まし さを実験的に操作して検討したものである。おそらく、研究Iでは、人格の類似性や社会的望ま
しさ以外の、魅力の源となる種々の要因が介入し、それゆえに明白な結果を得られなかったので あろう。したがって、研究Ⅱで示されたように、人格の類似性や社会的望ましさは、小学生にお いても、魅力の源となっていると考えて間違いないと思われる。ただ、研究Iの結果を併せて考 えれば、この2つの要因とも、他の要因をしのぐほど強力なものではないとも言わざるを得ない であろうD
このように、本研究の結果は、高田、潮田(1976)よりも、上田(1969)に近いものであった。
高田、潮田(1976)の場合も、やはり調査法であり、資源の大きさ、配慮性の認知以外の要因が 結果に介入したのかも知れない。
ところで、研究Iでは、児童は、自分の選択した相手を、極めて社会的に望ましいと知覚して
224 上田 敏見・谷口 勝英
いることが示されている。これが、望ましさの知覚ゆえに魅力を生じたことを示しているのか、
魅力を感じているがゆえに望ましいと知覚したことを示しているのかが問題であるが、研究Ⅱは、
この2通りの機制がともに存在していることを示している。社会的望ましさが魅力の源となって いるという結果は前者を、その関係が類似一魅力の関係より弱いという結果は後者を、それぞれ 支持するものである。この面では、本研究の結果は、高田、潮田(1976)の、小学生においては、
配慮性の認知の存在する関係に、高い情緒的魅力が伴うのみならず、情緒的魅力の高い関係に、
高い配慮性の認知が伴うこともあるという結果に符合したものと言えるだろう。
また、本研究では、規準、修飾語の違いによる、類似‑魅力、社会的望ましさ一魅力の関係の 差異についても扱った。まず、規準についての結果は、上田、谷口(1975)の結果と全く同様の ものであった。小学生においても、類似性が重要な規準と、社会的望ましさが重要な規準は明ら かに分化している。次に、修飾語に関しては、研究Ⅱで扱われなかったこともあって、明確な結 果が得られなかった。ただ、研究Iにおいて、選択者と被選択者の類似性がランダムな対の類似 性よりも大きい傾向や、被選択者が選択者よりも社会的に望ましい傾向が、親教修飾語において のみ見られたことは非常に興味深い。この点については、今後より詳細な検討を加えてみたい。
また、この傾向が見られたのが、主に女子においてであったということは、性差の存在を示唆す るものであろう。この点についても、今後検討したいo
ところで、先に研究Iでは、人格の類似性、社会的望ましさ以外の要因が介入したために、明 白な結果が得られなかっただろうと考察したが、それでは、他のどのような要因が、対人魅力の 源になるのであろうか Byrneand Griffitt (1966)の示した、態度の類似性はもちろんとして 能力の類似性や優越性、近接など、さまざまに考えられる,,これらがどのように機能しているか 今後充分検討しなくてはならないだろう。
要 約
本研究は、小学生において、人格の類似性、社会的望ましさが、対人魅力の源となるかどうか、
また、その関係が、規準、人格側面の違いによって、どう異っているかを調べるために行った。
研究Iでは、小学校6年生106人(男子61人、女子45人)を対象として、すでに成立している交 友関係の中に、類似一魅力、社会的望ましさ‑魅力の関係が見られるかどうかを、予備調査で分 けた、自己・友人から見た場合に望ましい人格、親・教師から見た場合に望ましい人格を表す2 通りの修飾語を開いて、好き、遊び、勉強、学級委員の4つの規準で調査した。結果は次のとお りであった。
(彰 選択者と被選択者の類似性は、女子の親教、勉強で有意に近い傾向が見られた以外は、規 準、修飾語のいずれにかかわらずみられなかった。
② 親教、学級委員において、男子で有意に近い傾向、女子で有意差が見られた他は、被選択 者が、選択者より現実に社会的に望ましいという証拠はどこにも見出せなかった。
⑨ すべての規準、修飾語において、選択者は、被選択者を、自分自身より、また、被選択者 の評定よりも、社会的に望ましいと知覚していた0
‑方、研究Ⅱでは、類似性、社会的望ましさを実験的に操作することによって、類似‑魅力、
社会的望ましさ一魅力の関係の成否を、好き、遊び、学級委員の3つの規準で検討した。被験者 は、小学校5年生112人(男子57人、女子55人)であった。結果は次のとおりであった。
小学生の対人魅力関係における人格の類似性と社会的望ましさ 225
① 好き、遊びでは、類似した他人、社会的に望ましい他人、非類似な他人の順で好まれた。
㊤ 学級委員では、社会的に望ましい他人が好まれ、類似した他人、非類似な他人の問には魅 力に差がなかった。
これらの結果は、小学生におても、人格の類似性、社会的望ましさが魅力の源となっているこ と、しかしながら、そのいずれも、他の要因をしのぐほど強力なものではないこと、類似性が重 要な規準と、社会的望ましさが重要な規準とがすでに分化していることなどを示すものと解釈さ れた。
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Personality Similarity and Social Desirability in Interpersonal Attraction among Elementary School Children
Toshimi Ueda
Department of Psychology, Nara University of Education, Nara, Japan and
Katsuhide Taniguchi
Kashiwara Elementary School, Osaka, Japan (Received April 8, 1983)
The present study is an attempt, first, to demonstrate an evidence that personality similarity and social desirability give rise to interpersonal attraction, and, secondly, to examine the differential relationships among criteria used.
In Study 1,106 6‑th graders (61 boys and 45 girls) served as subjects. Whether there is similarity‑attraction relationship, and social desirability‑attraction relationship in the already established friendliness or not is explored, employing four criteria‑liking, play, schoolwork, and class chairman.
Main丘ndings were as follows:
(1) Personality similarity betl\'een the chooser and those lvho were chosen was not found.
(2) Those who were chosen were not socially more desirable than tlle chooser, except in class chairman criterion where girls chose significantly more desirable girls.
(3) In all criteria, the chooser perceived the chosen as socially more desirable than the chooser himself and, than the ratings of the chosen.
In Study 2, an experimental analysis was made to examine similarity‑attraction and social desirability‑attraction relationship in such criteria as liking, play and class chairman.
Subjects were 112 5‑th graders (57 boys and 55 girls).
Main findings were as follows:
(1) In the criteria of liking and play, similar others were liked most, socially desirable others liked next, and dissimilar others liked least.
(2) In the criterion of class chairman, socially desirable others were liked most, and there was no difference in the amount of attraction between similar others and dissimilar others.
These results may safely be interpreted to show that, even in elementary school children, personality similarity and social desirability give rise to interpersonal attraction, but they are not exceedingly strong factors; and, that in some criteria similarity plays the most
important role, and in others socia一 desirability does the same important role.
The obtained results lvere compared with those reported in earlier studies and some discussion was made in regard to the agreements and discrepancies together with a few suggestions for further analysis.