奈良教育大学学術リポジトリNEAR
学習活動における精緻化尺度の作成
著者 豊田 弘司, 江口 幸恵
雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学
巻 41
号 1
ページ 153‑160
発行年 1992‑11‑25
その他のタイトル Development of a Scale for Assessing Elaboration in Learning Activities URL http://hdl.handle.net/10105/1754
学習活動における精微化尺度の作成
豊 田 弘 司 ・江 口 幸 恵
(奈良教育大学心理学教室) (いずみ女子学園) (平成4年4月1日受理)
学習過程における個人差の問題を検討した研究は多いが、そのほとんどが実験室的な研究で あった(Schmeck, Ribich & Ramanaiah, 1977)。このような状況をふまえて、 Schmeckら (1977)は、学習過程の個人差を査定するためのインベントリーを開発した.彼らは、従来の研 究において情報処理過程として認識されているいくつかの概念を参考にして、様々な学習活動を 記述している文を因子分析を用いて整理し、 4つの因子に分かれる62項目文からなる学習過程 インベントリー(Inventory of Learning Processes,略してILP)を完成させたのである。そ の4つの因子とは、統合一分析(Synthesis‑Analysis)、学習法(Study Methods)、事実の保 持(Fact Retention)及び精微的処理(Elaborative Processing)であるO 統合‑分析因子に は、評価、体制化、弁別及び外挿法による推定といった学習活動に対応する項目文が含まれ、学 習法因子には、学習法の組織的、伝統的な利用を表す項目文が含まれている。また、事実の保持 因子では、情報の保持に対する偏好性及び情報の詳細な部分に関する保持に関する項目文が含ま れている。さらに、精微的処理因子は、情報の視覚化、要約、関連づけ、符号化及び応用を表す 項目文から構成されていた。
豊田(1991)は、 Schmeckら(1977)が作成したILPを邦訳し、大学生を調査対象とした結 果、精微化、学習法及び記憶効率という3つの因子を抽出した。精微化因子は、 Schmeckらの 研究で抽出された統合一分析因子と精微的処理の因子を併せた因子であり、学習法因子も Schmeckらの研究のそれに完全に対応するものであり、記憶効率も事実の保持にほぼ対応する ものであった。それ故、これらの3つの因子を構成する29項目を日本版ILPとした。また、日 本版ILPの児童版(18項目)を作成し、小学6年生において弁別性の高い3つの因子を抽出し た。すなわち、精微化、検索及び思考の各因子である。さらに、これらの因子をそれぞれ対応す る尺度として、その尺度に含まれる項目の得点を各尺度得点として算出し、これらと学業成績の 関係を重回帰分析により検討した。その結果、精微化及び検索の尺度得点が学業成績と関係のあ
ることが示されたのである。
大学生及び小学生において精微化の因子が抽出され、小学生では学業成績との関係が示唆され たことは、精微化が学習活動において重要な意味を持っものであることがうかがえる。しかし、
上述の2つの研究では、精微化の重要性は示されたが、その内容に関する詳細な分析はなされな かった。従来の精微化研究を展望した、豊田(1987)によると、精轍化には付加される情報の違 いによって、項目間精微化、項目内精微化(Ritchey, 1980; Ritchey & Beal, 1980)及び自伝的 精微化(Warren, Chattin, Thompson, & Tomsky, 1983 ; Warren, Hughes, & Tobias, 1985)
に分類されることが示されている。また、太田・原(1980)では、連想、上位概念による群化、
体制化、文章化など、既存の認知構造との関連において符号化が豊富になされることを精練化と とらえ、その内容にかなりの多様性のあることが指摘されている。
153
154
豊 田 弘 司・江 口 幸 恵そこで、本研究では、上述した2つの研究で明らかになった精徹化因子に注目し、この因子に 含まれる質問項目を増やして、短大生の調査結果から精微化尺度(大人用)を作成し、その因子 構造から精微化の内容を詳細に検討する。また、精微化の下位尺度ごとの得点と試験成績の関係 についても検討する(研究1)。さらに、研究1で開発された精微化尺度の児童版を作成し、精 微化の発達的変化について検討する(研究2)。
研 究1
日 的
精微化尺度(成人版)を作成し、その因子構造について検討するとともに、試験成績との関係 も検討する。
方 法
被調査者 短大生148名(女)であり、平均年齢は20歳2か月(年齢範囲は、 18歳10か月
〜22歳10か月)であった。
質問項目 本研究では、豊田(1991)の精微化因子に含まれる項目13項目に、従来の精微化 研究において実験的に検討されてきた項目間精轍化、項目内精轍化及び自伝的精微化に関する項
目15項目をっけ加えて28項目を適切な項目として採用した。回答形式は、 Schmeckら (1977)と同様に2件法を採用した。各項目に関して、学習活動として望ましい反応を1点とし て得点化した。
手続き 上述した調査項目28項目を集団実施した。調査者が1項目ずつ朗読し、それに被調 査者が「はい」もしくは「いいえ」で回答する方式がとられた。
結果と考察
因子構造 各項目文の平均と標準偏差に、特に逸脱するようなものがなかったので、全28項 目について主因子法による因子分析を行い、その後、バリマックス回転を行った。その結果、複 数の因子に渡って因子負荷量の高い項目が10項目認められたので、これらの項目は削除した。
このようにして、精微化尺度(成人版)を構成する18項目が決定された。これら18項目に関す る因子分析(バリマックス回転後)の結果が、 Table lに示されている。
第1因子は、学習内容に関する復習や回想に関わる項目に因子負荷量が多い。すなわち、記憶 に保持された情報を回想(検索)して、その情報を新しい学習内容に付加するという精微化であ ると考えることができるので、回想による精練化因子と命名した。太田・原(1980)が指摘した 既存の認知構造と関連づけた精微化ということができよう。第2因子は、辞書、本、テレビなど の精微化のための手段を自発的に利用し、教授場面を離れて、日常生活においてどの程度学習内 容を精微化しているかということに関わる項目によって構成されている。したがって、日常生活 での精微化と命名した。豊田(1987)は、 Tulving (1972)の指摘したエピソード記憶からの情 報を付加するのが、自伝的精轍化であると述べている。すなわち、学習内容に関わる過去の出来 事を付加するのが自伝的精微化ということになる。したがって、 「授業で習ったことを自分でも
う一度やってみようと思いますか」という項目に代表されるように、自分の生活の中で学習内容 に関わる出来事をっくろうという意味からすれば、自伝的精微化に対応するものであるといえよ う。最後に、第3因子は、 Table lに示された項目の内容から明らかなように、学習内容を要約 することに関わる項目から構成されている。ただし、 (17) 「似たような内容のものでもその違い
Table l 精微化尺度(成人版)に含まれる18項目の因子構造
因子負荷量 項目番号/質問項目 1 2 3 1.回想による精微化
(24)復習する時、授業中の様子を思い出すことがありますか。
(5)本を読んだ後、その本の内容について考えることがありますか。
(15)新しく何かを習った時に、今まで自分がしたことを思い出すことがありますか。
(9)授業で勉強したばかりのことについてあれこれと考えてみますかO (ll)新しいことを習ったとき、今まで習ったことを思い出してみますか。
(25)復習する時、先生の言った言葉を思い出しますか。
(4)問題を解く時、どの様に答えを見つけようかと考えてみますか。
2.日常生活での精微化
(30)教育に関するテレビ番組をよくみますか。
(8)授業で習ったことを自分でもう一度やってみようと思いますかo (20)わからない用語は、辞書で調べますか。
(22)宿題やレポートがなければ自分で勉強することはないですか。 * (18)わからないことを、いろんな本で調べますか。
(13)普段の生活で知っているこのが、大学での勉強に役立つことはないですか。 辛 3.項E]問・項目内精轍化
(26)授業で習ったことをわかりやすくまとめることができますか。
(7)講師の先生の言ったことを、わかりやすくまとめることができますか0 (17)似たような内容のものでもその違いを見つけることができますか。
(16)お互いに関係のある内容をまとめて勉強していますか。
(29)読んだ本の内容をまとめようとはしませんか。*
e n i n c o e n r サ c o
*
‑
<
o C D ォ o i n i x
>
t a i n O H H
<
‑
>
C D C O i
‑ i C D
O i
‑ I O O .
‑ I ご U 5 9
1o lo ^ ^r ^tI 3 2
・
<
*
i n
C
O
l
0
‑‑1 CM rH rH O ‑H ‑H
︑二 も 二︑
r
‑
i
蝣
>
*
c
o
m
n
m
^
i‑I‑‑I CM t‑H CO i‑I i‑I O^ O^ *‑H ^D COO
O
・
‑ i t
‑ t e g t
‑ i t l 一 l 一 r
>
s a
* n a c ノ l t o i f l i n i n i f T t
C O O O 蝣
‑
° U 7
N t D ( D V V
+ ] . I . ‑ l i
CO O CO Tf
H H O C O H
一一 IO CO CO 00 CM O3 IN O) O <D
蝣
*
C
o
n
<
M
C
O
I
M
C
D
^
f
W
C
O
N
寄与率(%)
15.31 12.44 12.20 39.95
*は、逆転項目を示す。
を見つけることができますか」だけが、要約という命名には適合しない。豊田(1987)によると、
学習項目間に共通する情報を付加することによって、項目間のまとまりを形成する精微化を項目 間精微化(between‑item elaboration)と呼び、反対に項目間の違いに関する情報を付加する ことによって項目間の差異性を強調する精微化を項目内精練化(within‑item elaboration)と 呼んでいる。この区別に従えば、要約は項目間精微化に対応し、上述した(17)は、項目内精微 化に対応するものである。したがって、この第3の因子は、項目間及び項目内精微化の因子と命 名した。なお、因子(下位尺度)ごとに含まれる項目数が少なかったが、試みに信頼性を下位尺 度ごとに検討した。内部一貫性を検討するためにKuder‑Richardsonの公式20によるa係数を 算出した。その結果、回想による精練化尺度が.80、日常生活での精微化尺度が.76、項目間及
び項目内精微化尺度が.56であり、比較的高い値を示した。
試験成績との関係 上述した因子をそれぞれ対応する尺度として、その尺度に含まれる項目の 得点を各尺度得点として算出した。そして、この各尺度得点を説明変数とし、従属変数に試験成 績(満点100点)をとって、重回帰分析を行った。ここでの被調査者の試験成績としては、彼ら の受験した保育原理の試験得点(素点)を用いた。この試験は、幼児教育に関わる重要項目につ いて説明を求める問題であり、各問につき3‑4個のキイ・ワードを設定し、それが記入され、
それについての適切な説明がある場合には、部分得点としてカウントしていくものであった。そ して、この部分得点をそのまま合計して、各被調査者の素点が算出された(平均74.46、 SD:
9.28)。 3つの尺度得点の平均は、回想による精微化尺度が5.41 (SD: 1.78)、日常生活での精微 化因子が3.19 (SD: 1.50)、項目間及び項目内精微化尺度が2.37 (SD: 1.20)であった。これら の得点を予測変数とする回帰分析を行ったところ、どの尺度の標準化偏回帰係数も有意にはなら
156
豊 田 弘 司・江 口 幸 恵なかった。そこで、試みに回想による精微化尺度得点を予測変数とする回帰分析を行った。その 結果、標準化偏回帰係数は.18であり、この回帰式の説明率はR'‑.033で有意であった
CF(i,i47)‑ 4.98, p<.05)c
このように、説明率は極めて低く、精微化尺度が試験成績を予言するものではなかった。しか し、先の研究(豊田、 1991)においても、精微化尺度は大学生の試験成績を予言できず、記憶効 率尺度のみが予言できることが示されている。本研究では、精練化尺度に含まれる項目を増やし て検討したが、やはり試験成績と精轍化尺度の関係は兄いださなかった。
そこで、試験成績の上位群34名、下位群31名を抽出し、各質問項目に対する反応に両群問の 違いが認められるか否かを検討した。その結果、 (5) 「本を読んだ後、その本の内容について考 えることがありますか」 (「はい」と答えた人数:上位群が31名、下位群が22名) α:‑4.40,♪
<.05)及び(17) 「似たような内容のものでもその違いを見つけることができますか」 (「はい」
と答えた人数:上位群が27名、下位群が16名)玩‑5.60, p<.05)の両項目において、両群 問に有意な差が認められた。
研 究 2
日 的
精撤化尺度(児童版)を作成し、その因子構造について検討するとともに、精微化の発達的変 化について検討する。
方 法
被調査者 小学4年生29名(男13、女16)、 5年生39名(男20、女19)及び6年生35名 (男17、女18)である。
質問項目 研究lの精微化尺度(成人版)の18項目に整理する前の28項E]に、学習実態に適 合する項目を2項目を付け加えた30項目を、児童に理解しやすい表現に修正し、これを児童版 として採用した(うち、 4項目は、逆転項目である。)。なお、回答形式は成人版と同じく「は い」 「いいえ」による2件法を用いた。
手続き 研究1と同様に、上述の調査項目30項目を集団実施した。あらかじめ質問の項目番 号及び回答(はい、いいえ)が印刷された回答用紙を配布し、調査者(担任教師)が読み上げる 質問項目に対し、あてはまれば「はい」、あてはまらなければ「いいえ」のいずれかに丸を付け させた。
結果と考察
因子構造 各学年の人数が少ないので、 3学年を込みにして全30項目について主因子法によ る因子分析を行い、その後、バリマックス回転を施した。ただし、複数の因子に因子負荷量の高 い項目が9項目認められ、これらの項目は研究1と同様に削除され、 21項目を精微化尺度(児 童版)として採用した。これらの項目に対する因子分析(バリマックス回転後)の結果が、
Table 2に示されている。
第1因子は、精微化尺度(成人版)の3因子(回想による精微化、日常生活での精微化及び項 目間・項目内精練化)に含まれている項目が混在した因子になっている。項目の内容を検討する と、いずれの項目に記述された精撤化もそれをするためにはかなりの意欲が必要とされる項目と 考えられたので、精微化のための意欲と命名した0第2因子は、項目の内容を検討すると、授業
Table 2 精微化尺度(児童版)に含まれる21項目の因子構造
因子負荷量 項目番号/質問項B 1 2 3 1.精轍化のための意欲
(5)本を読んだ後、その本の内容について考えることがありますか。
(17)似たような内容のものでもその違いを見つけることができますか。
(26)授業で習ったことをわかりやすくまとめることができますか。
(7)先生の言ったことを、わかりやすくまとめることができますか。
(12)新しく知った言葉と今までに知っている言葉とを比べてみることがありますか。
(6)新しく習ったことを頑の中で絵のように思い浮かべることがありますかO (2)新しいことを勉強した時にそれとよく似たことを思い出しますか。
(15)新しく何かを習った時に、今まで自分がしたことを思い出すことがありますか。
(ll)新しいことを習ったとき、今まで習ったことを思い出してみますか。
(22)宿題でなければ練習問題をしないですか。 * 2.授業の回想による精微化
(24)復習する時、授業中の様子を思い出すことがありますか。
(25)復習する時、先生の言った言葉を思い出しますか。
(23)ノートを見直すことがありますか。
(14)授業で習ったことが普段の生活に役立つことがありますか。
(3)授業中にわからないことがあれば、それを友達や先生に聞きますか。
3.書物による精微化
(19)動物や植物などの名前を図鑑で調べることがありますか。
(29)読んだ本の内容をまとめようとはしませんか。 辛 (18)わからないことを、いろんな本で調べますか。
(28)昆虫採集や植物採集をしたことがありますか。
(20)わからない用語は、辞書で調べますか。
(27)漢字を覚える時、何度t)書いて覚えますかO
1 C N ] C O C T i
‑
* t f
* G O
"
* J
"
e D O 蝣
* ( N
・
‑ サ ー O S ォ サ ハ ノ
‑ 2 蝣
‑ ' C
^ C M t
‑ I O r
‑ 1 O O
^ H ,
‑ , ,
‑ , O t
‑
>
t o t o u ) i n i n i n 一
一 7 ハ 蝣 c j
* C O C M t O a i
﹂ 3
^
"
O C 4 0 i c O O J C O C O i U C O
O O r
‑ 1 H N H
一
t
I
L 5
' J O N i a o r サ . i r 3 C N i C M c o
*
‑ i
‑ t C D I O O O O C D t
‑ t
*
*
*
‑ h (
D
C
D
(
O
I
I
D
t
n
i
n
i
n
i
n
t
ォ
t
c
M
.
‑
I
.
‑
<
ハ
U
ハ
U
0
t‑ rH LD tfi t‑‑N IN t‑‑^D CCTf Tj'‑^ Tj'CO‑^ CO IM fO IM
O
蝣
*
O
C
N
I
C
T
>
1
I
O
C
O
C
M
蝣
^
f
C
O
M
"
C
O
C
O
C
寄与率 16.40 11.60 10.77 38.77O
*は逆転項目を示す
Table 3 小学生と短大生問の発達的変化(「はい」と答えた人数、 ( )内は%) 項目番号 記験項E]
小学生 短大生 x 2 (4)問題を解く時、どのように答えを見つけるようかと考えてみますか。
( 5 )本を読んだ後、先生にいわれなくてもその本の話について考えることがありますか。
(本を読んだ後、その本の内容について考えることかありますか。) (6)新しく習ったことを頑の中で絵のように思い浮かべることがありますか。
(新しく習ったことを頑の中でイメージして思い浮かべることがありますか。) (8)授業で習ったことを自分でもう一度やってみようと患いますか。
(9)授業で勉せしたばかりのことについて考えてみますかo (10)勉強した時は、それを忘れないように工夫していますか。
(ll)新しいことを習った時、今まで習ったことを思い出してみますか。
(12)新しく知った言葉と今までに知っている言葉とを比べてみることがありますか。
(15)新しく何かを習った時に、今まで自分がしたことを思い出すことがありますか。
(16)よく似たことをまとめて勉強していますか。
(お互いに関係のある内容をまとめて勉強していますか。) (18)わからないことを、いろんな本で調べてみますか。
(22)宿題でなければ練習問題をしないですか。 * (25)復習する時、先生の言った言葉を思い出しますか。
(29)読んだ本の内容をまとめようとはしませんか。 *
(30) 12チャンネルの教育テレビで、自分の学年の学習番組をよくみますか。
97(37.17) 128(86.49) 3.87"
66(64.08) 118(79.73) 7.60‥
77(74.76) 94(63.51) 3.54‑
63(61.17) 71 (68.93) 59(57.28) 74(71.84) 54(52.43) 76(73.79) 59(57.28)
78(75.73) 69(66.99) 73(70.87) 43(41.75) 59(57.28)
63(42.57) 8.40‥
83(56.08) 4.23*
68(45.95) 3.12+
88(59.46) 4.07*
100(67.57) 5.87' 123(83.ll) 3.2r 62(41.89) 5.76'
92(62.16) 5.ll"
131(88.51) 17.38‥
123(83.10) 5.31̀
44(29.73) 3.87"
42(28.38) 21.10‥
( )内の質問項目は成人版の対応項目を示し、 *は逆転項E]を示すO +‑p<.10 *‑p<.05 **‑p<.01
158
豊 田 弘 司・江 口 幸 恵の内容を思いだすことに関わる項目であり、授業の回想による精微化と命名した。第3の因子は、
明らかに書物(本、辞典、図鑑等)が関わる精微化を示す項目から構成されているので、書物に よる精微化と命名した。各因子(下位尺度)に含まれる項目数は少なかったが、試みに信頼性を 下位尺度ごとに検討した。内部一貫性を検討するためにKuder‑Richardsonの公式20によるα 係数を算出した。その結果、精微化への意欲尺度がα '‑.75、授業の回想による精微化尺度が α '‑.70、書物による精微化尺度がα20‑.66であった。
発達的変化 研究2の目的の一つは、精微化の発達的変化を検討することであった。小学生の 各学年における人数が少なかったので、上記の発達的変化が不安定なものである可能性が考えら
れる。そこで、小学校の3学年を込みにした103名と研究1の短期大学生148名のデータを比較 して、各項目における発達的変化を検討した。その結果、 Table 3に示すような項目に、両群問 の差が認められた。興味深いことに、小学生よりも短大生において肯定反応をした人数の多い項 冒(但し、 (22)は逆転項目なので該当しない)は、 (5)、 (12)、 (15)及び(25)であった。こ れらの項Ejの内容を見ると、いずれも学習内容もしくはそれに関連する内容の回想を含んでおり、
上述した回想による精微化因子に対応する項目である。したがって、回想による精微化において 発達的変化が生じやすいといえよう。しかし、その他の項目については、むしろ短大生が小学生 よりも肯定反応が少なくなっている。現時点ではこれらの項目において何故発達的に逆行する結 果が兄いだされたのかは明らかではない。
要 約
学習における精微化尺度の作成に関する2つの研究がなされた。まず、研究1では、豊田 (1991)のE]本版ILP (学習過程インベントリー)の精微化尺度に含まれる項目にさらにいくつ かの項目を追加し、精微化の詳細な分析を検討するための精微化尺度(成人版)を作成した。披 調査者は、短大生148名であった。因子分析(バリマックス回転)の結果、学習活動における精 微化尺度の項目は、回想による精練化、日常生活での精練化及び項目間・項目内精微化という3
つの因子によって構成された。これらの因子を下位尺度として、これらの3つの下位尺度得点と 試験成績の関係を検討した。その結果、回想による精微化尺度得点のみが試験成績と関係のある ことが示されたが、その関係は弱かった。研究2では、精微化尺度(児童版)を作成し、精微化 における発達的変化を検討した。小学4、 5、 6年生を調査対象にした因子分析の結果、 21項目が 精微化尺度(児童版)として選択された。この3つの学年を込みにして、因子分析(バリマック
ス回転)の結果、弁別性の高い3つの因子(精微化のための意欲、授業の回想による精微化、書 物による精微化)が抽出された。さらに、小学生と短大生の比較を行ったところ、主に回想によ
る精微化において発達的変化が認められた。
引 用 文 献
太田信夫・原 聡1980 処理水準の検討 筑波心理学研究 2,99‑109.
Ritchey, G. H. 1980 Picture speriority in free recall : The effects of organization elaboration. Journal of Experimental Child Psychology, 29 , 460 ‑ 474.
Ritchey, G. H., & Beal, C. R. 1980 Image detail and recall : Evidence for within‑item elaboration.
Journal of Experimental Psychology : Human Learning & Memory, 6 , 66 ‑ 76.
Schmeck, R. R., Ribich, F., & Ramanaiah, N. 1977 Development of a self‑report inventory for assess‑
ing individual differences in learning processes. Applied Psychological Measurement, 1 , 413 ‑
431.
Tulving, E. 1972 Episodic and semantic memory. In E. Tulving, & W. Donaldson (Eds.) Organiza‑
tion of memory. New York : Academic Press, Pp. 381 ‑ 403.
豊田弘司1987 記憶における精轍化(elaboration)研究の展望 心理学評論 30, 402‑422.
豊田弘司1991学習過程における個人差インベントリー(日本版)の作成 奈良教育大学紀要 40, 189‑
198.
Warren, M. W., Chattin, D., Thompson, D. D., & Tomsky, M. T. 1983 The effects of autobiographical elaboration on noun recall. Memorッ& Cognition, ll , 445 ‑ 455.
Warren, M.W., Hughes, A. T., & Tobias, S. B. 1985 Autobiographical elaboration and memory for adjectives. Perceptual & Motor Skills, 60, 55 ‑ 58.
く付記)本研究のデータの分析については、奈良教育大学4回生の川上 隆君、高橋敦子さんの協力を得 た。記して感謝の意を表します。
160
Development of a Scale for Assessing Elaboration in Learning Activities
Hiroshi Toyota
{Department of Psychology, Nara University of Education, Nara 630 ,励on)
and Yukie Eguchi
(Jzumi Junior College, Kaizuka 597 ,励on)
(Recieved April 1, 1992)
The first study was carried out to develop the adult scale for assessing individual differences of elaboration in learning activities. The subjects were 148 undergraduate students at a junior college. They were asked to respond a list of 28 statements repre‑
senting elaborative learning behaviors which might be utilized in academic settings.
Factor analysis yielded three factors which comprised 18 0f the original 28 statements.
Each factor consisted of the items with loadings exceeding .40 and having minimal overlap with the other factors. Factor I was marked by 7 items which stressed rehearsal, retrieval and recall of information and was refferred to as the Elaboration by recall factor. Factor n, which was called the Elaboration in daily life comprised 6 items which represented the use of systematic study techniques and autobiographical lnforma‑
tion. Factor IE comprised 5 items which indicated summarizing and discrimination for memorizing information and it was called the Between‑item and Within‑item Elabora‑
tion factor. Multiple regression indicated that the Elaboration by recall scale explained 3 % of test performances, but the Elaboration in daily life and the Between‑item and Within‑item Elaboration scales did not.
'The second study developed the children's scales and investigated the develop‑
mental change in elaborative learning behaviors. The subjects were 29 fourth, 39 fifth and 35 sixth graders. They were asked to respond the 30 statements. Factor analysis yielded three factors which comprised 21 0f the original 30 statements. Each factor con‑
sisted of the items with loadings exceeding .40 and having minimal overlap with the other factors. Factor I comprised 10 items which stressed motivation for elaboration of to‑be‑learned information and was refferred to as the Motivation for elaboration factor.
Factor n, which was called the Elaboration by recall of classroom comprised 5 items which indicated the use of episode in the classroom for recalling for to‑be‑learned information. Factor III was consisited of 6 items which indicated the use of books for learning to‑be‑learned information and it was called the Elaboration by reading factor.
Developmental changes were obtained in some statements.