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I 中国における行政組織と行政制度

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The Fundamental Point of Modern Administrative Law Research in China

江   利  紅

   目   次   は じ め に

Ⅰ 中国における行政組織と行政制度

  1  中国における行政組織と行政制度の基本原則──民主集中制   2  中国における行政組織

  3  中国における行政制度

Ⅱ 中国における「依法行政(法による行政)」の原理の導入およびその特色   1  「依法行政」の原理の導入

  2  「依法行政」の意味──法による行政

  3  中国における「依法行政」の特色──比較法的視点から

Ⅲ 中国における「法治政府づくり」の課題   1  「法治政府づくり」のスローガンの提唱   2  「法治政府づくり」の要求

  3  「法治政府づくり」の課題──行政権の法的統制   お わ り に

 は じ め に 

中国の行政制度は,「民主集中制」を基本原則とし,中央集権制や指揮

 江西財経大学法学院副教授・嘱託研究所員

(2)

命令制をとっている。中央人民政府である国務院は,国家最高権力機関の 執行機関・国の最高行政機関として,全国の地方各級国家行政機関の活動 を統一的に指揮・命令・指導・監督する。そして,行政機関の内部的管理 体制からみれば,「首長責任制」をとっている。例えば,国務院は「総理 責任制」をとっている。国務院総理は内に対しては,国務院の運営を主宰 し,外に対しては国務院を代表し,指揮命令権,最終決定権,人事任免権,

署名権などの権限をもっている。また,上級行政機関あるいは行政指導者 は下級行政機関およびその行政人員に対し監督を行う権限をもっている。

行政監察機関や国家審計機関(会計検査機関)は国家行政機関とその行政 人員に対して監督を行う。

中国の行政は法的には,「依法行政(法による行政)」の原理を採用して いる。しかし,中国の「依法行政」における「法」とは広義の「法」を意 味し,全国人民代表大会およびその常務委員会が定める法律以外の行政立 法をも含んでいる。この意味で,中国の「依法行政(法による行政)」は,

国会が制定する法律によって行政活動を法的に統制するというドイツや日 本の法治主義の理念に適合しないところがある。日本やドイツの「法律に よる行政」の原理には「法律の法規創造力」の原則,「法律の優位」の原則,

「法律の留保」の原則が含まれている。しかし,中国の「依法行政(法に よる行政)」の場合には,ドイツや日本のような「法律の法規創造力」の 原則が含まれていない。中国の場合には,国務院などの行政機関の定めた 法令は,特別な法律の委任がなくとも,国民の権利を制限し,義務を課し,

罰則を設けることができる。このことから,中国では現実には,「法律の 優位」の原則が成立せず,また,行政機関が「法律の留保」の原則によら ずに行政活動を行うことがある。

法治主義を実現するために,中国では,「法治政府づくり」というスロー ガンを打ち出している。具体的には,合法行政,合理行政,適正手続,公 開・高効率・国民便宜,誠実信用,権利と責任の一体化などの目標を目指 し,公務員の「依法行政」の意識と能力の向上,制度建設の強化と更新,

科学的かつ民主的な政策決定,規範的かつ公正的な法律実施,政府の情報

(3)

公開,行政監督と責任追及の強化,法による社会紛争の解決などが要求さ れている1)

これらの目標を達するために,今後,人民代表大会の機能を改革し,そ の地位を向上するとともに,行政管理体制の改革を推進し,行政権に対す る法的統制を強化しなければならない。

そのため,本論文では,中国における現代行政法研究の基本的視点につ いて,まず,中国における行政機関と「民主集中制」に基づく行政制度(Ⅰ)

を概観し,次に,中国における「依法行政」の意味を分析し,ドイツや日 本の「法律による行政」の原理と比較した上で中国における「依法行政」

の特色を明らかにし(Ⅱ),さらに現段階の中国における「法治政府づくり」

の実状を実証的に分析し,その課題と問題点をとりまとめ(Ⅲ),最後に,

今後の中国における「依法行政」と「法治政府づくり」の進むべき道を検 討し,将来の展望を行うことにする(おわりに)。各部分においては,そ の特色を明らかにする意味において基礎的な日本の制度との比較を行うこ ととする。

I 中国における行政組織と行政制度

社会主義国である中国には,人民代表大会制度が国の「根本的な政治制 度」2)として確立されている。人民代表大会制度は,「すべての国家権力は 人民に属する」という「人民主権」の原則をその基本原則とし,「民主集 中制」をその組織原則としている。

1 中国における行政組織と行政制度の基本原則──民主集中制 中国では,行政組織のシステムや行政制度は,「民主集中制」の原則に 基づいて構成されている。民主集中制は民主を基礎とする集中と,集中的 指導のもとでの民主が結びついたものである3)。1949年の「共同綱領」は,

1) 「国務院関于加強法治政府建設的意見」(2010年10月10日 国発[2010]33号)。

2) 蔡定剣『中国人大制度』,社会科学文献出版社,1992年,27頁。蔡定剣『中国人大制度』,社会科学文献出版社,1992年,27頁。,社会科学文献出版社,1992年,27頁。社会科学文献出版社,1992年,27頁。,1992年,27頁。年,27頁。,27頁。頁。

3) 中国共産党章程(総則)参照。

(4)

国家統治原理として三権分立主義を排除し,「各級の政権機関は一律民主 集中制を実施する」と規定している。1954年憲法は,人民代表大会制度お よびその「民主集中制」の原則を定めている。1982年の現行憲法もその原 則をとっている。憲法 3 条 1 項では,「中華人民共和国の国家機構は,民 主集中制の原則を実行する。」と明文で定めている。民主集中制は,具体 的には,①「全国人民代表大会および地方各級人民代表大会は,すべて民 主的選挙によって選出され,人民に対して責任を負い,人民の監督を受け る」(憲法 3 条 2 項),②「国家の行政機関,裁判機関および検察機関は,

いずれも人民代表大会によって選出され,人民代表大会に対して責任を負 い,その監督を受ける」(憲法 3 条 3 項),③「中央と地方の国家機構の職 権区分は,中央の統一的指導のもとに,地方の自主性と積極性を十分に発 揮させる原則にしたがう」(憲法 3 条 4 項)ことによって行われる。

図 1  民主集中制に基づく中国の行政制度

図 1 のように,民主集中制は中国の国家政権組織の根本的原則であり,

行政制度の基本原則でもある。この民主集中制のもとで,①すべての行政 機関は同級の人民代表大会から選出され,同級の人民代表大会およびその 常務委員会に責任を負い,②中央行政機関と地方行政機関との関係につい て,中央集権制を実施し,③上下級行政機関間の関係について,下級行政

注:      指揮命令関係        監督関係  人民代表大会・常務委員会

行政機関 行政機関首長 

選出・監督制 

行政機関構成員・組織 

中央集権制 中央行政機関

地方行政機関

制  上級行政機関

行政監察機関 会計検査機関 行政監督制  下級行政機関

指揮命令制

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機関に上級行政機関の指揮命令を服従しなければならないと強調され,④ 行政機関の内部関係について,首長責任制を実施し,⑤行政機関の重要事 項の決定について,常務会議または全体会議を経なければならないと要求 され,⑥行政機関の内部的監督関係について,監察機関や国家審計機関(会 計検査機関)という専門的監督機関による監督,上級行政機関による監督 が設置されている。

2 中国における行政組織

中国では,民主集中制のもとで中央集権制を採用し,行政組織のシステ ムを構築した(憲法 3 条)。民主集中制と中央集権制のもとで,中国の行 政組織のシステムは,中央行政機関と地方行政機関から構成されている。

中央行政機関は,国の最高の行政機関としての国務院およびその所属機関 である(憲法85条)。地方行政機関は,各級の地方人民政府およびその所 属機関である。日本の国家行政機関は,日本の国家行政機関は,内閣の下 におかれる府省庁委員会および法律に基づいて設置される府省庁委員会の 地方支分部局である(国家行政組織法 1 条, 9 条)が,地方公共団体の自 治行政の事務を担当する機関は国家行政機関ではない。これに対して,中 国の国家行政機関は中央政府としての国務院およびその所属の各部・委員 会と各級地方政府およびその所属の行政機関を含んでいる。

⑴ 中央行政機関──国務院

中国の国務院は,日本の場合の国の最高行政機関である内閣に相当し,

中央人民政府であり,国家の最高の行政機関である。同時に,国務院は,

最高の国家権力機関(全国人民代表大会およびその常務委員会)の執行機 関として(憲法85条),全国人民代表大会によって選出され(憲法62条 5 号),

全国人民代表大会およびその常務委員会に対して責任を負い,その活動を 報告する(憲法92条)。

A 国務院の構成員

国務院は,総理,副総理若干名,国務委員若干名,各部の部長,各委員 会の主任,審計(会計検査)長と秘書長により構成される(憲法86条 1 項,

国務院組織法 2 条 1 項)。総理は国務院の首長として,国務院を主宰し,

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国務院および全国の行政機関の活動を指揮する。副総理は,国務院の活動 の一部を担当し,総理を補佐する。国務委員は,副総理に相当し,国務院 の活動の一部を担当する。秘書長は,国務院弁公庁(事務局)の首長とし て国務院の日常的な事務を担当する。通常,秘書長は,副総理,あるいは 国務委員が兼任する。

国務院総理は国家主席が指名し,全国人民代表大会で決定し,国家主席 が任免する。国務院副総理,国務委員,各部部長,各委員会主任,審計長,

秘書長は,国務院総理が指名し,全国人民代表大会で決定し,国家主席が 任免する(憲法62条 5 号)。国務院の構成員の毎期の任期は,全国人民代 表大会の毎期の任期と同一とする(普通は 5 年とする)。総理,副総理,

国務委員は 3 期以上の連続就任は禁止されている(憲法87条)。

B 国務院の職権

国務院は行政法規の制定権,議案提出権,行政の統一指導権,行政管理 権,監督権および全国人民代表大会およびその常務委員会から授与された その他の職権を有する。憲法89条は,国務院に18の職権を授与する。具体 的には,国務院は,以下の権限をもっている。

a 行政立法権

国務院は憲法および法律に基づき,行政上の措置を定め,行政法規を制 定し,決定および命令を発布することができる(憲法89条 1 号)。法律の 規定を執行するために行政法規を制定する必要がある事項,および憲法89 条に規定された行政管理職権の事項について,国務院は行政法規を制定す ることができる(立法法56条 2 項)。全国人民代表大会およびその常務委 員会の授権決定に基づいて,国務院は委任的行政法規を定立することがで きる(立法法 9 条)。この行政法規は,日本内閣の制定する「政令」にあ たる。

b 議案提出権

全国人民代表大会およびその常務委員会に議案を提出することができる

(憲法89条 2 号)。

c 行政の統一指導権

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国務院は,中央と地方行政機関の活動の統一指導権をもち,各部および 各委員会の任務および職責を定め,各部および各委員会の活動を統一的に 指導し,かつ,各部および各委員会に属しない全国的行政事務を指導する

(憲法89条 3 号),全国の地方各級国家行政機関の活動を統一的指導し,中 央並びに省,自治区および直轄市の国家行政機関の職権の具体的区分を定 めることができる(憲法89条 4 号)。

d 行政管理権

国務院は,経済・教育・科学・文化・衛生・体育・民政,公安・司法行 政・監察・対外事務・国防建設・民族事務の指導・管理権をもっている。

具体的には,①経済活動および都市・農村建設,②教育,科学,文化,衛 生,体育および計画出産の各活動,③民政,公安,司法行政および監察な どの各活動,④国防建設事業,⑤民族事業,⑥を指導し,管理し,国民経 済・社会発展計画および国家予算を編成・執行し,対外事務を管理し,外 国と条約および協定を締結し,少数民族の平等の権利および民族自治地域 の自治権を保障し,華僑の正当な権利および利益を保護し,帰国華僑およ び国内に居住する華僑の家族の適法な権利および利益を保護する(憲法89 条 5 ~12号)。また,国務院は,国家の最高行政機関として,省,自治区 および直轄市の行政区画を承認し,また,自治州,県,自治県および市の 設置並びにその行政区画を承認し,省,自治区および直轄市の範囲内での 一部地区の戒厳を決定することができる(憲法89条15,16号)。

e 行政の内部的管理権と監督権

国務院は,行政機構の編成・行政職員の任免などの内部的管理権をもち,

行政機構の編成を審議決定し,法律の定めるところにより,行政職員の任 免,研修,考課および賞罰を行うことができる(憲法89条17号)。また,

国務院は,行政機関の内部的監督権をもち,部および委員会の発布した不 適当な命令,指示および規則,地方各級国家行政機関の不適当な決定およ び命令を改め,またはこれを取り消すことができる(憲法89条13,14号)。

f その他の職権

上述の権限以外,国務院は,全国人民代表大会またはその常務委員会の

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授与するその他の職権を行使する(憲法89条18号)。

C 国務院の組織

図 2 のように,国務院には,国務院弁公庁,国務院の部・委員会,国務 院の直属特別機構(国有資産監督管理委員会),国務院の直属機構,国務 院の執務機構および国務院の直属事業単位がある。

図 2  国務院の組織 国務院

部・委員会

外交部 国防部 

国家発展・改革委員会  教育部 科学技術部  工業・情報化部  国家民族事務委員会  公安部 国家安全部  監察部 民政部  司法部 財政部 

人力資源・社会保障部  国土資源部  環境保護部  住宅・都市農村建設部  交通運輸部  鉄道部 水利部  農業部 商務部  文化部 衛生部 

国家人口・計画出産委 員会 中国人民銀行  会計検査署 

国務院華僑 事務弁公室  国 務 院 香 港・マカオ 事務弁公室  国務院法制 弁公室 国務院研究 直属機構  執務機構 

中国税関総署 国家税務総局 国家商工行政 管理総局  国家品質監督 検査検疫総局 国家放送・映 画・テレビ総 局 国家新聞出版 総署(国家版 権局) 国家体育総局 国家安全生産 監督管理局  国家統計局  国家林業局  国家知的財産 権局 国家観光局  国家宗教事務 局 国務院参事室 国務院機関事 務管理局  国家腐敗予防

直属事業単位 新華通信社  中国科学院  中国社会科学 院 中国工程院  国務院発展研 究センター  国家行政学院  中国地震局  中国気象局  中国銀行業監 督管理委員会  中国証券監督 管理委員会  中国保険監督 管理委員会  国家電力監督 委員会 全国社会保障 基金理事会  国家自然科学 基金委員会 

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a 国務院弁公庁

国務院弁公庁は国務院の指導者を補佐し,日常的な事務を処理する内部 的機関である。日本の内閣官房に相当する。国務院弁公庁は秘書長により 指揮される。秘書長は,総理の指導のもとで,国務院の日常的な事務を管 理する。秘書長以外に,国務院は,副秘書長若干名を置く。副秘書長は,

秘書長の活動を補佐する(国務院組織法 7 条)。

b 国務院の部・委員会

部,委員会(中国人民銀行,審計署を含む)は国務院の最も重要な構成 部門として,国務院の統一的指導のもとで関連の行政事務に関する指導と 管理を行い,特定の国家行政権限を行使する。各部および各委員会は,法 律並びに国務院の行政法規,決定および命令に基づき,その部門の権限内 で命令,指示および規程を発布することができる(憲法90条 2 項)。各日 本の省庁に相当する。部には,部長 1 名,副部長 2 ~ 4 名を置く。各委員 会には,主任 1 名,副主任 2 ~ 4 名,委員 5 ~10名を置く(国務院組織法

9 条 1 項)。

すべての部,委員会の長は国務院の構成成員である。各部・委員会の設 立,合併,廃止に関しては,国務院総理により提出され,全国人民代表大 会により決定される。全国人民代表大会の閉会の場合には,全国人民代表 大会常務委員会により決定される(国務院組織法 8 条)。

c 国務院の直属機構

国務院は,国務委員の活動の需要に応じて,各専門的な事業を管理する 直属機構を設立することができる(国務院組織法11条)。国務院の直属機 構は,国務院の統一的指導のもとで特定の行政業務を担当する機構である。

国務院直属機構はその行政的地位が部,委員会より低く,その設立,廃止,

変更は国務院の会議で討議して決定する。国務院直属機構の長は,国務院 常務会議で討議して決定し,国務院総理がその任免を行うが,国務院の構 成人員ではない。

d 国務院の直属特別機構

国務院の直属特別機構は国有資産監督管理委員会を指す。中国では社会

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主義公有制を基本的所有制としている。社会主義公有制には,全人民所有 制つまり国家所有制と集団所有制がある。そのうちの全人民(国家)所有 制は全人民または国家を所有権主体とするが,国有資産監督管理委員会を 設置して,国家を代表して国有企業の資産価値の維持,増加を監督し,国 有資産を管理する。

e 国務院の執務機構

国務院執務機構は国務院内部に設置された,総理を助けて特定事項を処 理する専門的機構である。国務院執務機構の設立,合併,廃止に関しては,

国務院が決定し,その責任者は国務院総理が任免する。

f 国務院の直属事業単位

国務院の直属事業単位は,国務院に属している事業単位である。日本の 独立行政法人に相当する。

⑵ 地方行政機関──地方人民政府

中国では,中央集権制を実施するため,地方の行政機関は,日本のよう な地方公共団体の機関ではなく,地方にある国家行政機関であり,「地方 人民政府」(地方の行政機関のみを指す)といわれる。地方の国家行政機関 は,省級(省,自治区,直轄市),地区級(市),県級(県,県級市,区),

郷級(郷,民族郷,鎮)という各級毎に組織されている。地方各級人民政 府は,地方の各級国家権力機関の執行機関であり,地方の国家行政機関で ある(憲法105条 1 項)。地方各級人民政府の毎期の任期は,同級の人民代 表大会の毎期の任期と同一とする(憲法106条)。

A 地方政府の構成員 a 省級地方政府の構成員

省級地方政府は,省長,副省長,自治区主席,副主席,市長,副市長,

秘書長,庁長,局長,委員会主任などによって構成される。

b 地区級地方政府の構成員

地区級地方政府は,市長,副市長,秘書長,局長,委員会主任などによっ て構成される。

c 県級地方政府の構成員

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県級地方の県,県級市,区政府は,それぞれ県長,副県長,市長,副市 長,区長,副区長と科長,副科長などによって構成される。

d 郷級地方政府の構成員

郷,民族郷,鎮政府は郷長・鎮長 1 人,副郷長・副鎮長若干名を置く。

B 地方政府の職権

県以上の地方各級政府は,地方各級人民代表大会と地方各級人民政府組 織法などの法律で規定するところにより,その行政区域内の経済,教育,

科学,文化,医療・衛生,スポーツ事業,都市部・農村建設事業および財 政,民政,公安,民族事務,司法行政,監察,計画出産などの行政事務を 管理し,決定と命令を公布し,行政人員の任免・育成訓練・業績評価・奨 励懲罰を行う。省・直轄市政府は郷,民族郷,鎮の設置と区域区画を決定 する。郷,民族郷,鎮政府は,郷,民族郷,鎮人民代表大会の決議および 上級国家行政機関の決定と命令を履行し,その行政区域内の行政の仕事を 管理する(憲法107条)。

C 地方政府と地方人民代表大会との関係

地方各級政府は,その地方の人民代表大会に責任を負い,活動を報告す る。県以上の地方各級政府は,その地方の人民代表大会の閉会期間におい て,その地方の人民代表大会常務委員会に責任を負い,活動を報告する。

D 地方政府と上級政府との関係

中央集権制および指揮命令制に基づき,地方各級政府はその上級国家行 政機関に責任を負い,活動を報告する。全国の地方各級政府は国務院の統 一的指導のもとで仕事をする国家行政機関で,いずれも国務院の指示,決 定にしたがうものである。

E 地方政府内部的組織間の相互関係

県以上の地方各級政府は,その直属部門およびその下級の政府の活動を 指導し,その直属部門および下級の政府の不適切な決定を変更・廃止させ る権限がある。県以上の地方各級政府には,会計検査機関が設置される。

地方の各級機関は法律に基づいて独自に会計検査監督権を行使し,その地 方の政府と上級会計検査機関に責任を負う。

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3 中国における行政制度

上述のように,民主集中制は,中国国家統治構造の基本原則であり,中 国行政制度もこの原則にそって制度化される。民主集中制と関連して,中 国の行政制度は次のように構成される。

⑴ 人民代表大会制度──行政機関と人民代表大会の関係

社会主義国である中国には,人民代表大会制度は国の「根本的な政治制 度」4)として確立されている。この人民代表大会制度は人民代表大会に関 する制度のみならず,「すべての国家権力は人民に属する」という「人民 主権」の原則をその基本原則とし,「民主集中制」をその組織原則とし,

人民の民主的権利の実現のための制度,選挙制度,国家機関の選出制度お よび地方制度などの具体的な制度から構成される5)。この意味からみれば,

中国の行政制度は人民代表大会制度の一部であるといえる。

国家の行政機関の主要な構成員は,人民代表大会で選出され,その行政 運営は,人民代表大会に責任を負い,その監督を受けることが要求されて いる(憲法 3 条 3 項)。各級人民政府は,同級人民代表大会に対して責任 を負い,かつ,活動を報告する。また,人民代表大会閉会中の期間におい ては,各級人民政府は,同級人民代表大会常務委員会に対して責任を負い,

かつ,活動を報告する(憲法92条・110条 1 項)。

人民代表大会による人民政府に対する具体的な監督の方式は,各級人民 代表大会常務委員会監督法(以下は「監督法」略称する)によって定めら れている。人民代表大会およびその常務委員会は,次の形式で行政機関を 監督する。例えば,特定活動報告の聴取と審議(監督法 8 条),予算の審

4) 蔡定剣『中国人大制度』,社会科学文献出版社,1992年,27頁。蔡定剣『中国人大制度』,社会科学文献出版社,1992年,27頁。,社会科学文献出版社,1992年,27頁。社会科学文献出版社,1992年,27頁。,1992年,27頁。年,27頁。,27頁。頁。

5) 俞子清編『憲法学(第三版)』,中国政法大学出版社,2007年,106頁,邱之 岫編『憲法学』,中国政法大学出版社,2007年,249頁,魏定仁,傅思明編『憲 法学』,知識産権出版社,2006年,95頁,『実用憲法学新詞典』,吉林人民出版社,

2004年,136頁,胡錦光,任端平編『憲法学』,中国人民大学出版社,2003年,

204頁以下,肖蔚云等『憲法学概論』,北京大学出版社,2002年,139頁,魏定 仁等『憲法学』,北京大学出版社,2001年,191頁,蒋碧昆編『憲法学』,中国 政法大学出版社,1994年,146頁など参照。

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査と承認(監督法15条),予算報告の聴取と審議(地方各級人民代表大会 と地方各級人民政府組織法39条 5 号),計画の聴取と審議(監督法16・17 条),会計検査報告の聴取と審議(監督法19条),政府構成員の罷免(憲法 63・101条)などがこれである。

中国では,全国人民代表大会は国務院総理,副総理,国務委員,各部部 長,各委員会主任,会計検査長および秘書長の国務院構成員の一部を罷免 する権限をもっているが(憲法63条 2 号),国務院の構成員全員の罷免や 国務院の総辞職を認めていない。この意味で,中国における行政機関の責 任は個別的責任であるといえる。

これに対し,日本では,「内閣は,行政権の行使について,全国民を代 表する議員からなる国会に対し連帯して責任を負う」(内閣法 1 条 2 項),

「内閣は,衆議院で不信任の決議案を可決し,または信任の決議案を否決 したときは,10日以内に衆議院が解散されない限り,総辞職をしなければ ならない」と定め(日本国憲法69条),連帯責任制をとっている。

⑵ 中央集権制──中央と地方との関係

中国では,一般的に,地方自治ではなく,中央集権制を実施している。

中国憲法 3 条 4 項は,「中央と地方の国家機構の職権の区分は,中央の統 一的指導のもとに,地方の自主性および積極性を十分に発揮させるという 原則にしたがう」と規定している。つまり,中央政府は各級地方政府を統 一的に指導することができる(憲法89条 4 号)。例えば,中央政府として の国務院は,省級政府の定める地方的規章の取消権や省の境界変更または 地区級市・県の廃置分合の承認権をもっている(憲法89条14号・15号)。

他方,地方政府は国務院の決定および命令を執行する義務がある。全国の 地方各級人民政府は,いずれも国務院の統一的指導のもとにある国家行政 機関であり,すべて国務院の命令に服従する(憲法110条 2 項・地方各級 人民代表大会と地方各級人民政府組織法55条 2 項)。しかし,現実には,

地方行政機関が中央行政機関の指導,命令に違反したことが多い。中国に は「政令は中南海を出ず」(中央政府の作った政策,法令は,指導部のある 中南海以外には伝わらない)という言葉がある。

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これに対して,日本では地方自治制をとっている。地方の機関は「地方 国家機関」ではなく,「地方公共団体」といわれる。地方公共団体の組織 および運営に関する事項は,地方自治の本旨に基づき,法律でこれを定め る(日本国憲法92条)。地方公共団体は,住民の福祉の増進を図ることを 基本として,地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く 担うものとする(地方自治法 2 条 1 項)。

⑶ 指揮命令制──上下級行政機関間の関係

中国では,中央集権制のもとで,「国務院→省級政府→地区級市政府→

県級政府→郷級政府」というピラミッド型の行政体系が形成されている。

まず,国務院は,国家の最高行政機関として(憲法85条),全国の行政機 関の活動を統一的に指揮し,地方各級国家行政機関の発布した不適当な命 令,決定,指示,規章を改め,またはこれを取り消すことができる(憲法 89条 4 号・14号)。そして,県級以上の地方各級人民政府は,所属各部門 および下級人民政府の活動を指導し,所属各部門および下級人民政府の不 適当な決定を改め,またはこれを取り消す権限を有する(憲法108条)。他 方,地方政府は上級の国家行政機関の決定および命令を執行する義務があ る(憲法107条 2 項)。地方各級人民政府は,一級上の国家行政機関に対し て責任を負い,活動を報告する(憲法110条 2 項・地方各級人民代表大会 と地方各級人民政府組織法55条 1 項)。

上級機関が財源や決定権をもち,下級機関になるほど機能が細分化され たり,財源や決定権が小さく制限され,上下方向の統制がより強化された りする傾向をもっている。そのうち,中央人民政府である国務院は,国家 最高権力機関の執行機関・国の最高行政機関として,全国の行政機関に対 する指導権をもっている。すなわち,国務院は全国の地方各級国家行政機 関の活動を統一的に指揮・命令・指導・監督することができる。そして,

各レベルの地方政府は当該管轄地域における行政機関の活動を指揮・命 令・指導・監督することができる。さらに,上級行政機関は下級行政機関 の活動を統一的に指揮・命令・指導・監督することができる。例えば,国 務院の公安部は省政府の公安庁,市政府の公安局,県政府の公安局の活動

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を統一的に指揮・命令・指導・監督することができる。社会治安や警察を 主管する公安機関を例として,「国務院の公安部→省級政府の公安庁→地 区級政府の公安局→県級政府の公安局」という四段階に分けられる。

⑷首長責任制──行政機関の内部的指導関係

中国では,行政機関の上下関係(相互関係)については中央集権制や指 揮命令制がとられているが,行政機関の内部的管理体制については,首長 責任制がとられている。例えば,国務院は,総理責任制を実施するが,各 部・委員会は,部長責任制・主任責任制を実施する(憲法86条 2 項)。

A 総理責任制

国務院は総理責任制をとっている。総理は国務院の活動を指揮し,副総 理,国務委員は総理の活動を補佐する(憲法88条 1 項,国務院組織法 2 条 2 項)。国務院総理は内に対しては,国務院の運営を主宰し,外に対して は国務院を代表する。具体的には,総理は国務院の活動の「指導権」,重 大問題の「決定権」,副総理・国務委員・各部部長・各委員会主任,審計(会 計検査)長・秘書長の任免の「指名権」,国務院の公布した決定・命令の「署 名権」などの職権を有する(国務院組織法 5 条)。副総理,国務委員,秘 書長,各部の部長,各委員会の主任,審計(会計検査)長は総理に責任を 負う。この総理責任制は,具体的には,次のようなものである。

a 指揮命令権

総理は国務院の活動を全面的に指導し,行政全般を指揮監督する一方,

国務院を代表して全国人民代表大会およびその常務委員会に責任を負う。

副総理,国務委員は総理に協力して仕事をし,秘書長,各部の部長,各委 員会の主任,審計(会計検査)長とともに総理に責任を負う。

b 最終決定権

国務院の活動の重大問題について,総理は最終的な決定権をもつ。この 点については,日本内閣の連帯責任制,「閣議一体」の原則や「閣内の全 員一致」の原則と異なる。中国では,国務院全体会議や常務会議の審議の 上で,各副総理,各部の部長,各委員会の主任の反対にもかかわらず,総 理一人で最終的に決定することができる。

(16)

c 人事任免権

総理は,全国人民代表大会およびその常務委員会に対し,副総理,国務 委員,各部の部長,委員会の主任,審計長,秘書長の任免を提出する権限 をもつ(憲法62条 5 号・67条 9 号)。日本の総理大臣は,国務大臣の任免 権をもっている(日本国憲法68条 1 項・国家行政組織法 5 条 2 項)。

d 署 名 権

国務院が公布した決定,命令,行政法規,全国人民代表大会およびその 常務委員会に提出する提案,行政人員の任免は,総理の署名があってはじ めて法律的効力をもつ(国務院組織法 5 条)。日本では,法律および政令 には,すべて主任の国務大臣が署名し,内閣総理大臣が連署することを必 要とする(日本国憲法74条)。中国では,法律は国務院の総理や各部の部 長や各委員会の主任の署名の必要がなく,国家主席が主席令に署名して公 布する(立法法23条)。また,国務院の採択した行政法規は,国務院の各 部の部長や各委員会の主任の署名の必要がなく,国務院総理の署名により 法律効力が生じる(憲法61条)。

中国国務院総理の地位・職権は,日本の内閣総理大臣と共通する部分が ある。例えば,両者とも行政の指揮命令権,構成員の任免権,代表権など の権利をもっている。しかし,違いもある。日本国憲法には,日本の内閣 総理大臣は内閣運営の主宰者,代表者であると認められるが,内閣は合議 制の行政機関として,内閣として方針を決定した場合には,一致協力して これにしたがい,内閣の統一性を保持しなければならないと要求されてい る。内閣総理大臣は国務大臣の任免権をもっているから,他の国務大臣に 対して主導的な役割をもっているが,行政権は内閣に属し,内閣は閣議(内 閣総理大臣および国務大臣の合議体)によって職務を行うから,内閣総理 大臣も法的には閣議の決定に拘束されることになる。これに対して,首長 責任制は複数の人の合議を経るが,首長が最終的に決定する。例えば,中 国では,重大事項について,国務院全体会議や常務会議の審議を経なけれ ばならないが,最終の決定権が総理にある。これに対して,日本では,「内 閣がその職権を行うのは,閣議によるものとする」(内閣法 4 条 1 項)。内

(17)

閣総理大臣は,閣議にかけて決定した方針に基づいて,行政各部を指揮監 督する(内閣法 6 条)。主任の大臣の間における権限についての疑義は,

内閣総理大臣が,閣議にかけて,これを裁定する(内閣法 7 条)。内閣総 理大臣は,行政各部の処分または命令を中止せしめ,内閣の処置を待つこ とができる(内閣法 8 条)。日本の内閣総理大臣は国務大臣の任免権をもっ ている(日本国憲法68条)。その意味では,中国の「総理」より強い立場 をもっているが,内閣自体は「合議制」の閣議によることになっており,

指揮監督権も閣議での協議が前提になっていて,その点では,中国の総理 よりも権限に制約があるとみられる。

B 部長,委員会主任責任制

首長責任制として,国務院の各部,各委員会は部長,委員会主任責任制 がとられている。国務院の各部部長・各委員会主任は,その部門の活動に ついて責任を負い,かつ,部務会議または委員会会議もしくは委務会議を 招集し,および主宰し,その部門の活動上の重要事項を討議に付して決定 する(憲法90条 1 項,国務院組織法 9 条 2 項)。各部長,各委員会主任は,

国務院の総理と同じく,本機関の管轄領域において,指揮命令権,最終決 定権,人事任免権や署名権をもっている。

日本では,各大臣は,別に法律の定めるところにより,主任の大臣とし て,行政事務を分担管理する(内閣法 3 条 1 項)。各省大臣,各委員会の 委員長および各庁の長官は,その機関の事務を統括し,職員の服務につい て,これを統督する(国家行政組織法10条)。

C 省長,自治区主席,市長,州長,県長,区長,郷長,鎮長責任制 地方人民政府は,それぞれ省長,自治区主席,市長,州長,県長,区長,

郷長,鎮長責任制を実行する(憲法105条 2 項)。各地方人民政府の長は,

指揮命令権,最終決定権,人事任免権や署名権をもっている。

⑸ 重要事項の決定制度──常務会議と全体会議

上述のように,中国では,行政機関の首長責任制が実施されている。し かし,民主主義を実現するために,行政機関の首長は,本政府の活動にお ける重要事項や重要政策を決定する際,常務会議か全体会議による討論を

(18)

経て決定することになっている。例えば,国務院には,国務院常務会議と 国務院全体会議の制度が実施されている。国務院の活動における重要事項 や重要政策については,国務院常務会議と国務院全体会議の検討を経なけ ればならない(国務院組織法 4 条,国務院工作規則38条)。ここでの「重 要事項や重要政策」は,国民経済・社会発展計画および国家予算の編成,

法律議案の提出や行政法規の制定,経済活動や改革開放に関する重要な政 策などを指す(国務院工作規則17条)。また,国務院常務会議と国務院全 体会議は,いずれも国務院総理が招集し,主宰する(憲法88条 3 項)。

A 国務院常務会議

国務院常務会議は,国務院の総理,副総理,国務委員および秘書長から 構成される(憲法88条 2 項,国務院組織法 4 条)。国務院常務会議は,一 般的には週 1 回開かれ,国務院の活動における重要問題について討論し決 定するほか,法律案の討論や行政法規の草案の審議を行う(国務院工作規 則40条)。日本の閣議に相当する。

B 国務院全体会議

国務院全体会議は,国務院の全構成員(総理,副総理若干名,国務委員 若干名,各部の部長,各委員会の主任,審計(会計検査)長と秘書長)が 参加する。半年に 1 回開かれ,国務院全体の活動における重要問題につい て討論・決定するほか,国務院各部署の重要問題の討論と決定を行う(国 務院工作規則39条)。

⑹ 行政監督体制──行政機関の内部的監督関係

行政機関に対する監督については,立法機関や司法機関からの外部的監 督を除き,行政機関の内部的監督がある。この内部的監督は上級行政機関 による監督,専門監督機関による監督を含んでいる。

A 上級行政機関による監督

上級行政機関あるいは行政指導者は下級行政機関およびその行政人員に 対し監督を実行する権限がある。上級行政機関の下級に対する監督は,一 般に,下級の不適切な決定,命令の取り消し,下級の人員に対する考査,

奨励,懲罰,下級の活動に対する検査,督促などによって行われる。

(19)

B 専門監督機関による監督

専門監督機関による監督とは,行政監察機関や国家審計機関(会計検査 機関)という専門的監督機関による監督である。

a 行政監察機関による監督

行政監察機関は,検査,調査と処理などの方法によって国家行政機関と その行政人員に対し監督を行う。

b 国家審計機関(会計検査機関)による監督

国家審計機関(会計検査機関)は,行政機関の財政,財務,経済活動に 対し全面的監督と評価を行うという方式を通じ,国の予算の配分と使用を 監督し,国の財政経済活動の違法行為を防止,是正する。国務院は,会計 検査機関を設置して,国務院各部門および地方各級政府の財政収支並びに 国家の財政金融機構および企業・事業組織の財務収支に対し,会計検査に よる監督を行う。会計検査機関は,国務院総理の指導のもとに,法律の定 めるところにより,独立して会計検査監督権を行使し,他の行政機関,社 会団体および個人による干渉を受けない(憲法91条)。県級以上の地方各 級人民政府に,会計検査機関を置く。地方の各級会計検査機関は,法律の 定めるところにより,独立して会計検査監督権を行使し,同級の人民政府 および 1 級上の会計検査機関に対して責任を負う(憲法109条)。

日本には,日本国憲法90条の規定により,会計検査院が設置されている。

会計検査院は,正確性,合規性,経済性,効率性および有効性の観点その 他会計検査上必要な観点から検査を行い,常時会計検査を行い,会計経理 を監督し,その適正を期し,かつ,是正を図る(会計検査院法20条 2 項・

3 項)。上述の会計検査の目的や内容などからみれば,日本の会計検査院 は国家審計機関に相当する。しかし,中国の会計検査機関の組織は異なっ ている。日本の会計検査院は全国 1 ヵ所しかないが,中国には,中央およ び各級の地方において国家審計機関(会計検査機関)が設置されている。

(20)

II 中国における「依法行政(法による行政)」の  原理の導入およびその特色        

日本やドイツの行政法における「法律による行政」の原理は法治主義の

「基幹的法理」6)として,行政活動がその担当者の恣意によってではなく,

法律にしたがって行われなければならないという規範的要請を意味し,「法 治行政」の原理ともいわれる7)。中国でもこのような理念が重要であるこ とは認められており,この原理を「依法行政」と呼んでいる。中国の「依 法行政」における「法」は広義の「法」を採用し,法律以外の行政立法を も含むが,ドイツや日本では「法律による行政」の原理を採用し,「法律」

すなわち狭義の「法」を意味する。そして,ドイツや日本の「法律による 行政」の原理は,「法律の法規創造力」の原則,「法律の優位」の原則,「法 律の留保」の原則という三原則が内包されている。そのため,以下では,

この 3 つの原則の視点から,日本の「法律による行政」の原理と比較しな がら,中国の「依法行政」の特色を分析する。

1 「依法行政」の原理の導入

1993年11月,中国共産党第14期中央委員会第 3 回全体会議が開催され,

中国共産党中央委員会は「社会主義市場経済体制の確立に関する若干問題 の決定」を公布した。この「決定」は,20世紀末までに「社会主義市場経 済の法律体系の確立」という目標を提唱し,各行政機関に「依法行政(法 による行政)」,「依法弁事(法による活動)」を要求した8)。1997年 9 月の 中国共産党第15回全国代表大会において,一歩進んで,「依法治国(法によっ て国を治める)」を執政の根本的理念に高め,経済体制改革の深化と社会 主義の近代化のためには,「政治体制改革を継続して,社会主義法制を健 全化し,法に依って国を治め,社会主義法治国家を建設する」ことが必要

6) 宇賀克也『行政法概説Ⅰ 行政法総論』,有斐閣2004年,24頁。『行政法概説Ⅰ 行政法総論』,有斐閣2004年,24頁。概説Ⅰ 行政法総論』,有斐閣2004年,24頁。』,有斐閣2004年,24頁。,有斐閣2004年,24頁。有斐閣2004年,24頁。2004年,24頁。年,24頁。,24頁。頁。

7) 芝池義一『行政法総論講義(第芝池義一『行政法総論講義(第 3 版増補)』,有斐閣1999年,40頁参照。

8) 中国共産党中央委員会「関于確立社会主義市場経済体制若干問題的決定」「関于確立社会主義市場経済体制若干問題的決定」(中(中 国共産党第14期中央委員会第 3 回全体会議,1993年11月14日)。

(21)

であると宣言した9)。中国共産党第15回全国代表大会の報告を受けて,1999 年 3 月の第 9 期全国人民代表大会第 2 回会議では,憲法が一部改正され,

「中華人民共和国は依法治国を実行し,社会主義法治国家を建設する」(憲 法 5 条 1 項)ことが追加規定された。

「依法行政(法による行政)」を推進するため,1999年の憲法改正に基づ き,1999年11月,国務院は「依法行政の全面的推進に関する決定」を公布 し,「法治政府」を目指して各級行政機関に「法的手段を用いて国家事務,

経済・文化事業および社会事務を管理する」ことを要求し,「依法行政(法 による行政)」の原理を明文で提唱した10)。そして,2004年 3 月に,国務院 は「依法行政(法による行政)の全面的推進の実施綱要」を制定し,約10 年の時間を使って「法治政府」の建設という目標を基本的に実現させるこ とを打ち出している11)。また,2008年 3 月に,国務院は「国務院活動規則」

を発布し,「依法行政(法による行政)」を国務院の活動基準の 1 つとして 定めている( 3 条)12)。さらに,2008年 5 月に,国務院は「市県政府の法に よる行政を強化することに関する決定」を発布し,各市級・県級政府13)の 法による行政を強調した14)。一方,各類型の行政活動に対して1996年に「行 政処罰(秩序罰)法」,2000年に「立法法」15),2003年に「行政許可法」,

2011年に「行政強制法」など16),行政救済に対して1989年に「行政訴訟法」,

9) 江沢民「高挙鄧小平理論偉大旗幟,把建設有中国特色社会主義事業全面推向江沢民「高挙鄧小平理論偉大旗幟,把建設有中国特色社会主義事業全面推向,把建設有中国特色社会主義事業全面推向把建設有中国特色社会主義事業全面推向 二十一世紀」(中国共産党第15期全国代表大会報告,1997年 9 月12日)。

10) 「国務院関于全面推進依法行政的決定」「国務院関于全面推進依法行政的決定」(1999年11月(1999年11月1999年11月年11月11月月 8 日 国発[1999]23号)。

11) 「国務院全面推進依法行政実施綱要」「国務院全面推進依法行政実施綱要」(2004年(2004年2004年年 3 月22日 国発[2004]10号)。

12) 「国務院工作規則」「国務院工作規則」(2008年(2008年2008年年 2 月23日 国発[2008]14号)。

13) 中国地方の行政区画は,憲法上,省級,県級,郷級の 3 級制をとるとされて いるが,実際には,省級と県級の間にもう 1 つ地区市級という級が増設され,

省級,地区市級,県級,郷級という 4 級制がとられている。

14) 「国務院関于加強市県依法行政的決定」「国務院関于加強市県依法行政的決定」(2008年(2008年2008年年 5 月20日 国発[2008]17号)。

15) 「立法法」は各立法主体の立法活動に関する法律であり,総則,法律,行政 法規,地方法規,自治条例と単独条例,規章,適用と登録,付則など 6 章94条 からなり,2000年 7 月 1 日から施行される。

16) これ以外,「行政収費(費用徴収)法」,「行政手続法」などの法律草案が起

(22)

1994年に「国家賠償法」,1999年に「行政復議(不服審査)法」などの法 律がそれぞれに制定された。これらの法律の制定,施行により,中国は,「依 法行政」の実現を目指して進んでいる。

2 「依法行政」の意味──法による行政

⑴「依法行政」における「法」の範囲──広義の「法」

「依法行政」における「法」の意味については,広義説と狭義説がある。

狭義の「法」は,国会が制定する「法律」であるが,広義の「法」は,国 会以外の他の国家機関が定める法規範をも含んでいる。日本では,一般的 に狭義説が採用され,国会が制定する法律を指すものと理解されている。

日本国憲法41条は,国会は「国権の最高機関」であり,「国の唯一の立法 機関」であると規定している。この「唯一の立法機関」である国会が制定 する規範は「法律」であるが(日本国憲法59条),その他の機関が制定す る規範は「法律」にはならない。国会が定める法律を普通「○○法」と呼 んでいるが17),国の行政機関が制定する規範は「令」または「規則」と呼 ばれる18)。例えば,内閣が制定する政令(日本国憲法73条 6 号),内閣府が 制定する府令(内閣府設置法 7 条 3 項),各省が制定する省令(国家行政 組織法12条),各委員会・庁が制定する規則(国家行政組織法13条)である。

これに対して,中国の現行憲法は,全国人民代表大会は「最高国家権力 機関」(57条)として,国家の立法権を行使する(58条)と規定するが,「国 の唯一の立法機関」とは明文化されていない19)。そして,2000年に制定さ れた「立法法」は,法律(全国人民代表大会およびその常務委員会)20),行

草された。

17) ただ,学説上,広義説を採用する場合もある。例えば,行政法学には,「行 政立法」(行政機関が「法」を制定する)という概念がある。ここの「法」は広 義的な「法」概念を採用し,法律以外の法規範を指す。

18) 理論上は,「命令」という。

19) 1954年憲法は「全国人民代表大会は,国家の立法権を行使する唯一の機関で ある。」(22条)と規定し,国家の立法権を全国人民代表大会に限定していた。

20) 法律のうち,基本的法律と一般的法律がある。基本的法律は,全国人民代表 大会により制定される法律であるが,一般的法律は,全国人民代表大会の常務

(23)

政法規(国務院),地方的法規(地方人民代表大会またはその常務委員会),

部門的規章(国務院の各部・委員会),地方的規章(地方人民政府)など の立法権限,手続などを規定し,行政法規,行政規章の制定は法律の制定 と同じように,「立法」と呼ばれている。さらに,中国では,各レベルの 実定的な規範の名称は統一的な基準がない。例えば,「条例」,「決定」,「規 定」という名称の「法」は全国人民代表大会常務委員会でも国務院でも制 定されている。こうした呼称の不統一が中国法の体系性を大きく損なう原 因の一つになっている21)

つまり,比較法的にみれば,ドイツや日本の「法律による行政」の原理 における「法律」とは国民代表としての議会が制定するものと考えられて いるが,中国の「依法行政」にいう「法」はドイツや日本よりも広い意味 におけるの「法」概念を採用している。

⑵「依法行政」の意味──法による行政

2004年 3 月国務院の「依法行政(法による行政)の全面的推進の実施綱 要」では,法による行政の基本的要求として,行政機関は法律,法規,規 章にしたがって行政管理を実施すべきであると要請する。また,「行政処 罰法」は,「法律,法規,規章にしたがって,行政処罰(秩序罰)を行わ れなければならない」と規定している( 3 条)。すなわち,多くの行政活 動は法律を根拠とせず,行政法規,行政規章などの行政立法に基づいて行 われる。日本でも行政活動が各行政機関の定める行政立法にしたがって行 われていることに違いはないが,日本の「法律による行政」の原理は,国 民の代表としての議会が法律の制定を通して行政権を統制することを目的 としていることに対して,中国の「法による行政」の原理は,全国人民代 表大会およびその常務委員会の法律による統制よりも,上級行政機関によ る(広義的)法的統制を重視する。

委員会により制定される法律である。

21) 小口彦太「中国における『法治』の現状」『法律時報』62巻12号,日本評論社,

1999年11月,66頁参照。

(24)

3 中国における「依法行政」の特色──比較法的視点から

ドイツ行政法の父とも称せられるオットー・マイヤーによれば,「法律 による行政」の原理の内容には,「法律の法規創造力」の原則,「法律の優 位」の原則,「法律の留保」の原則という三原則が内包されているとされ ている22)。しかし,中国における「依法行政」の原理は,ドイツや日本の「法 律による行政」の原理とは,著しく異なる性質を有している。

⑴「法律の法規創造力」の原則の未導入と行政の「法規創造力」

ドイツや日本の「法律の(専権的)法規創造力」の原則とは,「法規創 造力」をもっているのは「法律」のみに限り,法律のみが法規(Rechtssatz)

を創造することができるという原則である。ここの「法規」とは,国民の 権利を制限し,義務を課す法規範を指し,「実質的意味の法律」ともいわ れる。

「法律の法規創造力」の原則に基づき,国民の権利を制限し,義務を課 す法規を創造しうるのは法律のみであるとされることから,法律の授権が なければ,行政機関が国民の権利を制限し,義務を課する法規23)を定立で きない。日本国憲法は,明治憲法における天皇の勅令によって法規を制定 する緊急勅令や,独立命令(明治憲法 9 条)を廃止し,「国会が国の唯一 の立法機関である」と定め(日本国憲法41条),「法律の法規創造力」の原 則を明示的に承認している。そして,内閣が制定する政令には,「とくに その法律の委任がある場合を除いては,罰則を設けることができない」(日

22) 田中二郎『法律による行政の原理』酒井書房,1954年参照。

23) 日本の行政法上,国民の権利を制限し,国民に義務を課することを内容とす る行政立法は,必ず法律の委任に基づかなければならない。法律の規定により,

法的規律を委任された行政立法を「委任命令」という。法律の委任を受けて制 定される行政立法を「委任命令」という。委任命令の以外に,法規命令には執 行命令がある。執行命令は,国民を拘束する効力を有するが,法律の規定の具 体化として,国民の権利義務の内容ではなく,その内容を実現する手続を定め ることができる。委任命令の定立には,執行命令の場合と異なり,一般的授権 ではなく,個別的な授権が必要であるとされる。(宇賀克也『行政法概説Ⅰ  行政法総論』有斐閣2004年,223頁以下参照。)

(25)

本国憲法73条 6 項但書),「法律の委任がなければ,義務を課し,または権 利を制限する規定を設けることができない」(内閣法11条)としている。さ らに,内閣府の府令(内閣府設置法 7 条 4 項),各省の省令(国家行政組 織法12条 3 項)および各委員会・各庁の規則(国家行政組織法13条 2 項・

内閣府設置法58条 5 項)には,「法律の委任がなければ,罰則を設け,ま たは義務を課し,もしくは国民の権利を制限する規定を設けることができ ない。」と制限している。

中国では,ドイツや日本のような「法律の法規創造力」の原則が導入さ れていない。「法規創造力」は法律のみに限定されていない。例えば,国 務院が制定する行政法規,省・自治区・直轄市・比較的大きな市の人民代 表大会およびその常務委員会が制定する地方的法規,国務院の各部委員 会・直属機構が制定する部門的規章,省・自治区・直轄市・比較的大きな 市が制定する地方的規章には,特別な法律の委任がなくとも,国民の権利 を制限し,義務を課し,罰則を設けることができる。その理由は以下の 3 つがある。

①現行憲法は,国務院は「憲法および法律に基づいて,行政上の措置を 定め,行政法規を制定し,並びに決定および命令を発布する」「職権を行使 する」と規定しているが(憲法89条 1 号),日本国憲法73条 6 号やこれを 受けた内閣法等のように,罰則を設け,義務を課し,権利を制限する規定 を設ける場合には「法律の委任」が必要であるという制限を設けていない。

部門的規章(憲法90条 2 項)や地方的規章(憲法107条 1 項・地方各級人 民代表大会と地方各級人民政府組織法60条 1 項)についても同じである。

行政機関の権限を定める憲法および組織法の特性,とくに憲法上の「職権 を行使する」(89条)の用語を根拠として,憲法および組織法によって定め られた国務院やその各部委員会・直属機構や省・自治区・直轄市・比較的 大きな市などの立法権は行政機関の固有の職権であるとされる。この職権 行使としての行政立法は「職権立法」といわれている24)。行政機関の「職 24) 応松年,朱維究編『行政法与行政訴訟法教程』中国政法大学出版社,1989年,

131頁,姜明安編『行政法与行政訴訟法』北京大学出版社・高等教育出版社,

(26)

権立法」は,憲法や行政組織法から賦与された「固有権力」として,立法 機関からの特別的な授権(法律の特別的な委任)が不要であるとされてい る25)。特別な授権が必要でないという点は,日本行政法上の「執行命令」

と同じである26)。しかし,日本の「執行命令」は法律を執行するための細 目を規定するものであり,法律の授権を受けることなく国民の権利を制限 し,義務を課し,罰則を設けることができないが,中国の「職権立法」は,

国民の権利を制限したり,義務を課す規定を設けることができることに なっている。

②2000年の「立法法」 8 条は,国家主権の事項,国家機関の設立・組織 および職権,民族地域自治制度,犯罪および刑罰などの事項については,「法 律によって制定しなければならない」と規定している。そして,これらの 事項について,法律が制定されていない場合は,全国人民代表大会および その常務委員会の授権27)がある場合にのみ,国務院が行政法規を制定する

1999年,165頁参照。

25) 中国のでは,憲法89条 1 号,90条 2 項や地方各級人民代表大会と地方各級人 民政府組織法60条 1 項の規定は,立法機関からの一般的授権ではなく,行政機 関の固有の職権に関する規定であるとされる。立法機関からの授権は授権の方 式から一般的授権と特別的授権に分類される。一般的授権は憲法,行政組織法 以外の法律における一つの条文による授権である。例えば,立法法は「国務院 の部門的規章および地方的規章の制定手続については,第三章の規定を参照し,

国務院が規定する」(74条)と規定し,部門的規章と地方的規章の制定手続に関 する立法権を国務院に授与した。特別的授権は立法機関の特別な決議や決定に よる授権である。例えば,1994年 3 月22日,全国人民代表大会は「関于授権廈 門市人民代表大会及其常委会和廈門市人民政府分別制定法規和規章在廈門経済 特区実施的決定」を発布し,廈門市人民政府に地方的規章の立法権を特別的に 授与した。(胡建淼,江利紅『行政法学(21世紀行政法学系列教材)』中国人民 大学出版社2010年,178-179頁参照。)

26) 日本でも,国家行政組織法(12条)などによる一般的授権に基づく執行命令 を「職権命令」といわれることもある程度。(村上武則編『基本行政法(第二版)』,

有信堂高文社2001年,129頁参照。)

27) 全国人民代表大会およびその常務委員会の授権および被授権機関に対して,

立法法は,「授権規定は,授権の目的および範囲を明確にしなければならない。

(27)

ことができることになっている(立法法 9 条)28)。しかし,他面,上記以外 のすべての事項について,すでに定められた法律に違反しない(「法律の 優位」の原則)限り,国務院は職権によって,行政法規を制定し,国民の 権利を制限し,義務を課し,罰則を設けることができる。

③日本の場合,行政処罰行政許可は,国民の権利を制限し,罰則を設け る典型的行政行為として,「法律の法規創造力」の原則に基づいて,法律 によって規定するか,法律の委任に基づく行政立法で定めなければならな い。しかし,中国の「行政処罰(秩序罰)法」では,「①警告,②過料,

③違法所得の没収および不法財物の没収,④生産停止または業務停止の命 令,⑤許可証の暫定的差押えもしくは取り消しまたは営業許可証の暫定的 差押えもしくは取り消し,⑥行政拘留,⑦法律または行政法規に定めるそ の他の行政処罰」の 7 種類の秩序罰を類型化し( 8 条),「行政法規は,人 身の自由の制限(すなわち行政拘留)を除く行政処罰を設けることができ る」(10条 1 項)と規定している。この場合の「行政処罰」とは国民に義務 を課することを意味する。また,行政処罰法では,部門的規章(12条 2 項),

地方的規章(13条 2 項)は警告または過料の 2 種類の「行政処罰を設ける ことができる」と認めている。そして,「行政許可法」は,「法律が制定さ れていない場合,行政法規は行政許可を設けることができる」(14条),「省・

自治区・直轄市政府の地方的規章は臨時的行政許可を設けることができ る」(15条)と定めている。

以上のことからみれば,中国の行政立法は,全国人民代表大会およびそ の常務委員会が制定する法律と比べると,「法規創造力」の範囲が異なっ ているが,国民の権利利益に関する規律を設けることについて全国人民代 表大会やその常務委員会の定める法律と本質的や根本的な区別がなく,「法

被授権機関は,授権の目的および範囲に厳格に従い当該権限を行使しなければ ならない。被授権機関は,当該権限をその他の機関に再授権してはならない。」

と規定し,(10条)「空白授権(白紙委任)」や「再授権(再委任)」を禁止する。

28) ただし,犯罪および刑罰,公民の政治的権利の剝奪および人身の自由の制限 に対する強制措置,刑罰および司法制度等の事項を除く(立法法 9 条但書)。

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