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論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

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論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

報 告 番 号

博(生)甲第208号

氏 名 高木 信夫

学 位 審 査 委 員

主査 中田 英昭 副査 合田 政次 副査 夛田 彰秀 副査 山口 敦子

論文審査の結果の要旨

高木信夫氏は、 2006 年 4 月に長崎大学生産科学研究科博士後期課程に社会人学生とし て入学し、現在に至っている。同氏は、生産科学研究科に入学以降、システム科学を専 攻して所定の単位を修得するとともに、橘湾など長崎県沿岸のカタクチイワシの漁況と それに関係する可能性がある天草灘・五島灘陸棚縁辺域の流れの変動に関する研究に従 事し、その成果を 2009 年 12 月に主論文「天草灘・五島灘陸棚縁辺部における残差流の構 造と変動およびそのカタクチイワシ漁況との関連」として完成させ、参考論文として、

学位論文の印刷公表論文2編(うち審査付き論文2編、1編は受理・印刷中)、印刷公 表予定論文1編(審査付き論文、投稿審査中)、学位の基礎となる論文1編(審査なし

)、その他の論文3編(うち審査付き論文2編)を付して、博士(水産学)の学位の申 請をした。長崎大学生産科学研究科教授会は、 2009年12月16日の定例教授会において論 文内容を検討し、本論文を受理しても差し支えないものと認め、上記の審査委員を選定 した。委員は主査を中心に論文内容について慎重に審議し、公開論文発表会を実施する とともに、最終試験を行い、論文審査および最終試験の結果を 2010 年2月 17 日の生産科 学研究科教授会に報告した。

提出した学位申請論文は、五島灘沿岸や天草灘の北東に位置する橘湾で漁獲されるカ タクチイワシ卵・仔稚の輸送にかかわる天草灘・五島灘の流況と漁況との関連を調べる ため、船舶に搭載された超音波流速計(ADCP)等による現場観測を継続し、そのデ ータにもとづいて残差流の構造と変動、さらにはそのカタクチイワシ漁況との関連性に 関する解析を進めたものである。

まず、 2004 年~ 2007 年の 1 ~5月に天草灘で 6 回、五島灘と甑島北部海域で各1回、

(2)

ADCPによる 24 時間 50 分の往復観測を行い、それぞれについて潮流の影響を除去し た残差流を算出した。その結果をもとに、天草灘から五島灘東部にかけて全体に北上流 が卓越していること、この北上流は甑島海峡もしくは甑島西方海域から連続した暖水の 分布とよく対応しており、おそらくは黒潮から分派した暖水の北上を示すものであるこ とを明らかにした(第2章)。

また、橘湾と西彼地区で漁獲されたカタクチイワシの安定同位体比(δ

13

C ,δ

15

N ) の分析結果にもとづいて、春季に両地区で漁獲されるカタクチイワシは外海域に起源を 持つことを明らかにした(第 3 章)。

しかしながら、両地区における春季発生群の漁況と五島灘における卵・稚仔分布密度 の経年変動には関連性がほとんど認められないこと、両地区の春季発生群の漁況は天草 灘南方に位置する鹿児島県西薩海域のカタクチイワシシラス漁況と有意な正の相関を 示すことから、両地区のカタクチイワシ漁況が南方海域からの加入に大きく依存してい ることが分かった(第4章)。

そこでさらに、天草灘南方の甑島海峡を横断する「フェリー甑」に装備したADCP

で 2003~2008 年に継続的に測定された流れのデータをもとに、各年 3-5 月の潮汐残差

流を算出し、天草灘において北上流が頻繁に発生していることを定量的に明らかにし た。甑島海峡における北~東向きの残差流の流速累積値は、橘湾と西彼地区のカタクチ イワシ春季発生群の漁獲量と有意な正の相関を示すことから、この流れが橘湾へのカタ クチイワシ卵・仔稚の輸送に大きく寄与していることが分かった(第4章)。

以上、本研究では継続的な船舶調査の結果や人工衛星画像等を総合的に解析すること によって、これまで知見がきわめて少なかった冬季~春季の天草灘・五島灘陸棚縁辺部 における残差流の構造と変動実態を明らかにし、天草灘で観測された北-東向きの残差 流の変動が、卵・稚仔の輸送を通して橘湾および西彼地区におけるカタクチイワシ春季 発生群の漁況に大きな影響を及ぼしていることを指摘した。これらの知見は、九州西方 海域における流況・海況変動に関する基盤的な情報となるとともに、カタクチイワシ等 の漁況予測の精度向上を図る上できわめて有用と考えられる。

学位審査委員会は、本論文の成果が水産学の分野において有益であるとともに、その

進歩発展に多大の貢献をなすものであることを認め、博士(水産学)の学位に値するも

のとして合格と判定した。

参照

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