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東経150度南極前線における生物活性微量金属の分布

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Academic year: 2021

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TransactionsofTheResearch Instituteof OceanochemistryVol.19,No.1,Apr.,2006

海洋中に微量に存在する元素は,分析技術の 発達と共に広く研究されるようになってきた.

中でも生物に必須のFe,Co,Ni,Cu,Znや 毒性の高いCd,Pbなどは生物活性微量金属と 呼ばれ,その動態は海洋循環のみならず,生態 系との関わりの点からも興味深い.南極海は大 西洋北部と並び海洋深層水が形成される海域で あり,太平洋,大西洋,インド洋をつなぐ世界 で唯一の海洋である.また,南極大陸を周回す る海流(南極周極流)や,水温や塩分がその南 北で大きく変化する南極前線が存在するなどの 点で特異である.しかしながら,他の海洋に比 べ南極海における生物活性微量金属の調査は少 なく,特に表層から深層までの分布はこれまで ほとんど報告されていない.本研究では,2004 年 か ら2005年 に か け て 行 わ れ た 白 鳳 丸 KH-04-5次航海(図1)で採取した海水試料を 分析し,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Cd,Pbの分 布を解析した.

微量元素を分析するには,採水,前処理,測 定を通して分析対象元素の汚染を抑える必要が ある.本研究では,金属不純物の少ないキレー ト吸着剤8-ヒドロキシキノリン固定化含フッ 素メタルアルコキシドガラス(MAF-8HQ)を 合成し,これを担体とした閉鎖系のカラム濃縮 法を用いた.濃縮後の試料の測定には,誘導結 合プラズマ質量分析法(ICP-MS)を用いた.

海水はCTDカローセルサンプラーに取り付 けたニスキン-X採水器により各層採水した.

甲板で海水を採水器から低密度ポリエチレン

(LDPE)瓶に分取した.これを船内のクリー ンルームに持ち込み,約250mlを孔径0.2mの フィルターでろ過し,分析対象元素の吸着や粒 子化を防ぐために塩酸を添加してpH2.2に調整 した(溶存態海水試料).また,未ろ過海水約 250mlにも塩酸を添加してpH2.2に調整した

(酸可溶態海水試料).試料は室温で一年間保存 した後,分析した.

東経150度南緯55度の観測点SX05と南緯60 度の観測点SX06における溶存態微量金属の分 布について述べる.ここでは南緯55度から60度

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東経150 度南極前線における生物活性微量金属の分布

松成 恭博,宗林 由樹*

報 告

*京都大学化学研究所.本研究の一部は,海洋化学研究所の研究委託「太平洋,南極海におけ る微量元素の断面観測」により行われた.

図1 KH-04-5次航海の航跡と観測点

(2)

海洋化学研究 第19巻第1号 平成18年4月

の 間 に 南 極 前 線 が 存 在 し , 南 極 中 層 水

(AAIW)が北向きに沈み込んでいる.それ以 深には周極深層水(CDW)が広がっている.

AAIWはSX06には存在しなかったが,SX05 では深度500mに存在しており,両観測点の水 塊構造は中層以浅で大きく異なっていた.一方,

深層には共通してCDWが存在していた.水塊 は同じポテンシャル水温と塩分で特徴付けられ る海水であり,これら二つのパラメータから決 定されるポテンシャル密度によってその運動が 制限される.すなわち,水塊の水平方向への移 流と混合は等密度面上で起こりやすい.従って 溶存態生物活性微量金属の濃度をポテンシャル 密度に対してプロットすることで,その分布に 対する水塊移流の寄与が明確になる.

微量元素の分布は, Co,Pb, Ni,Cu, Zn,Cd, Feの三つに分類できた.それぞ れの代表としてCo,Zn,Feの分布を図2に 示す. ここで, CDWはSigma->27.8kg m-3の部分である. Co濃度は,表層から中 層には差が見られるが,CDWではよい一致を 示した.この傾向はPbでも同様であった.こ れは水塊の違いを反映していると考えられる.

Zn濃度は,中層以浅の等密度水ではよく一 致したが,CDWでは南の測点で高かった.こ の分布は,主要栄養塩のひとつであるケイ酸と 似ていた.このように栄養塩類と相関の高い Ni,Cu,Zn,Cdの分布は,水塊移流に加え て,深層や海底における生物起源粒子からの再 生に強く影響されると考えられる. Feの分 布は二つの観測点間で大きく異なり,北の測点 SX05においてより高濃度であった.その分布 には,海嶺など局地的な起源からの供給が大き く寄与していると考えられる.本研究によって,

南極前線の南北での生物活性微量金属の分布と その支配要因に関して新たな知見が得られた.

今後残りの試料の分析を進め,溶存態および酸 可溶態生物活性微量金属の断面分布を明らかに する.

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図2 溶存態Co,Zn,Feのポテンシャル密度 に対する分布.□:SX05,○:SX06

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