微分積分学A理学部数学科(原;http://www.math.kyushu-u.ac.jp/˜hara/lectures/lectures-j.html) 33
6月29日:今日は(主に)偏微分に入ります.
第6回レポート問題(主に偏微分) :
問14: (偏微分の計算問題)次の関数f, g, r, Xの偏導関数を計算せよ.独立変数は括弧の中に示してある.多 変数関数だから,それぞれの独立変数について微分した結果を全部書くこと.たとえばfが3変数(x, y, z)の関数 なら∂f∂x,∂f∂y,∂f∂z の3つがでてくるはずだ.
f =x3+ 2xy+y2, g= 2xy
x2+ 1 (独立変数はx, y)
r=p
x2+y2+z2, (独立変数はx, y, z) X =rsinθ cosφ, (独立変数はr, θ, φ)
問15: (1変数関数の連続性に関するチャレンジ問題)x >0で,関数f(x)を
f(x) =
0 (xが無理数のとき)
1/p (xが有理数で,x=q/pと書けるとき.ただし,pとqは互いに素な正の整数) と定義する.このとき,f(x)の連続性を論ぜよ.(つまり,いろいろなxでf(x)が連続かどうか,論ぜよ.)
レポート提出について:
上の問に解答し,7月4日(月)午後5時までに,原の部屋(六本松3号館3-312)の前の箱に
入れてください.整理の都合上,用紙はできるだけA4を使ってください.また,2枚以上にわたる場合は何らか の方法で綴じてくだされ.「番外問題」と「重要な注意」(友達に感謝する)はいつも通り.
—————————————————以下,レジュメの続き—————————————
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多変数関数の微分
1変数関数の微(積)分はひとまずおいて,これから(後期の最初の頃まで)偏微分(多変数関数の微分)を扱 う.この題材を今ここで扱うのが良いかどうかには自信がないが,教科書の順序からあまり離れないのが良いだろ うし,²-δだけでは息が詰まるという人もいるだろうから,やってみることにした.ただし,前期は今日を入れて3 回しかないので,そんなには進めない.いくら行ったとしても教科書の2.2節の中程どまりだろう.
なお,教科書に倣って,たいていの場合は2変数の関数を扱う.ただし,ほとんどの場合,3変数以上への拡張 は容易かつ自明である.
3.1 偏微分
まず,多変数の関数とは何か,をええかげんに定義しよう.関数f(x, y)が2変数x, yの関数とは,(その関数の 定義域中の)(x, y)のそれぞれに対してf(x, y)という値が定まるもののことをいう.これは「(x, y)という2次元 平面内の点」から「f(x, y)という実数値」への写像,だととらえられる.1変数の関数f(x)とは,各実数xに対 してf(x)という実数値が決まるものであったことを思い出すと,2変数の関数は1次元から2次元への拡張と見え るだろう.より一般には,n変数の関数とは,n次元空間の点に実数値を対応させる写像,つまり,n次元空間から 1次元空間への写像である.
このような見方に応じて,点同士の距離などを以下のように書くことにする.
• まず,平面内の点(n変数の関数を考えているときはn次元空間の点)を,xのように太字で書くことがあ る.(例)3次元の場合なら,x= (x1, x2, x3)というわけ.
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• この書き方に応じて,n変数関数のx= (x1, x2, . . . , xn)での値はf(x)と書くことがある.
• 点x= (x1, x2, . . . , xn)とy= (y1, y2, . . . , yn)の間の 距離 を
ρ(x,y) =kx−yk= nXn
j=1
(xj−yj)2 o1/2
(3.1.1)
により定義する.nが3の時には,これは普通の3次元空間での距離である.
ただし,いつでも上のようにx1, x2, x3 としているとかえって書きにくいこともあるので,その際にはx= (x, y),
z= (u, v)などと書くことも多い.(だいたい,「空間内の点」のような幾何学的視点を強調するときにはf(x)と書 く.それに比べて,xの個々の成分の関数であることを強調したいときにはf(x, y)などと書く.)
定義3.1.1 (多変数関数の極限) n変数関数f(x)にて lim
x→af(x) =αとは,以下が成り立つことをいう.
任意の(小さい)² >0に対し,(十分小さな)実数δ(²)>0がとれて,
0<kx−ak< δ ならば ¯¯f(x)−α¯¯< ² とできる (3.1.2)
1変数の時の|x−a|< δ(²)の条件が,kx−ak< δ(²)に変わっただけである.ただし,kx−akというのは2点 aとxの距離であるから,これが小さいというだけではxはaにどのようにでも近づけるということだ.1変数の ときには,x→aとはxがaの大きい方から近づくか,小さい方から近づくかの2通りしかなかったけども,それ が一度に大きな自由度を持ってしまったことには注意しておこう.(つまり,aへのどのような近づき方をしても同 じαという値に近づくときのみ,極限が存在するという訳だ.)
この極限の定義を使うと,n変数関数の連続性は以下のように定義される.
定義3.1.2 (多変数関数の連続性の定義) n変数関数f(x)がx=aで連続 とは,lim
x→af(x) = f(a)となるこ とである.²-δで書けば,
任意の(小さい)² >0に対し,(十分小さな)実数δ(²)>0がとれて,
kx−ak< δ ならば ¯¯f(x)−f(a)¯¯< ² とできる (3.1.3)
(x,aのような書き方をされるとかえってわかりにくい,という人も多いと思う.しかし,このような題材を扱うに は,このように幾何的な見方を強調した方がわかりやすいので,敢えて書いてみた.)
さて,いよいよ偏微分を考えよう.
xが点aにおける極限は以下のように定義する.これからはn変数のそれぞれをあらわに書いた方が楽なので,
f(x, y)のような書き方に戻る.また,一般のn変数のときには式がいたずらに複雑になるので,主に2変数の場合
を考える.
定義3.1.3 (偏微分係数) 2変数関数f(x, y)の点(a, b)における 第1変数に関する偏微分係数 とは極限 lim
h→0
f(a+h, b)−f(a, b)
h = lim
x→a
f(x, b)−f(a, b)
h (3.1.4)
のことである(もちろん,この極限が存在する場合).これは記号で ∂f
∂x(a, b),fx(a, b),D1f(a, b)などと書 く.同様に,第2変数に関する偏微分係数とは
lim
h→0
f(a, b+h)−f(a, b)
h = lim
y→b
f(a, y)−f(a, b)
h (3.1.5)
のことであって,∂f
∂y(a, b),fy(a, b),D2f(a, b)などと書く.
また,上のように各点で偏微分係数を計算すると,(x, y)の関数として∂f∂x(x, y),∂f∂y(x, y)が定まる.これをf の
(x,yに関する)偏導関数と呼ぶ.