金 沢大 学 十全医 学 会 雑誌 第8 8巻 第6 号 76
1
‑7 69 (1
9 7 9)小 児 甲 状腺機 能 先進 症 の予後
〔Ⅰ〕 甲 状 腺 機 能 克 進 症 の組 織 像と予 後
金沢大 学 医学 部小 児科 学教 室 ( 主任
:
谷口
昂教 授)高 田 伊 久 郎
( 昭和
5 4
年1 0
月2 9
日受付)な お, 本 論 其
の
要旨の
一部は, 第5 0
回日
本内 分 泌 学会総 会に て
発表し
た。甲状腺 機 能 冗遷症
の
組織 像に
慢 性甲状 脾 炎の
像 を 伴 うこ
と は よ く 知 ら れて い
る. また
持続 的な機 能 冗進 症 状が あ り, 組 織像で
上 皮の
増 殖 冗 進 像と慢 性甲状 腺炎の
像と が共 存する
よ う な状態の
あ るこ
と が Do n
ia c
hら
に
よ り報 告さ れて
き た卜 4)
. De
Gr o o t
ら は便 宜 的に
こ の
よ う な組 織学的に
両者の
区別が し難い
症 例 を Ha s
h it o x
ic o s
is
と名 付け た5)
. し か し な が らこ
れ らの
報告 はい
ず れ も 治療 後あ るい は
長 期 間経過 して の
もの で
あ り, 治療 前の
し か も小 児の
甲状 腺 機能 冗 逓症の
組 織 像に つ い て の
詳 細はほ
と ん ど知ら れて い
ない
. 他方鍵甲状 腺剤
に よ
る本症の
寛 解率はほ
ぼ 40 〜 6 0 % とい
わ れ る
6
・7)
・ 小児に
おい て
も は ぼ同 様の
成績が報 告さ れて い
る8
〜‖
. し か し致カ
月で
寛解す る もの
か ら 1 0 年以 上の
長年 月に
わ た り継 続治療を 必要と す る もの
まで
,そ の
経 過は
様々 で
あ る. 先に
. 臨 床的に
は 全 くバ セ ド ゥ
病と 思 わ れ たが そ の
組 織 像が慢性 甲状 腺 炎に
類似 し た 症例を経 験し,/ト児 d ̀H
a s
h it o x i c o s
is の
4 例 ,一 と して
報告 し た1 Z)
が,こ
れ らの
症 例 がい
ず れ も抗甲状腺 荊治療に て
短期 間に
寛 解し た.そ こ で
甲状 腺機 能 冗 進 症の
組 織 像の
実態 を把 達し. 慢 性甲状 腺 炎との
関連 性に つ い て
検討す る 目的で ノ
jヽ児の
甲状 腺 機 能冗 進 症 3 0 例に
治療 前あ るい
は治療 開始 後ま も な く 甲状腺 針 生 検 を行った. 得 ら れ た組織 所見 か ら慢 性甲状 腺炎の
病 変 を伴 う 程度に よ
って
分 類し, 慢 性 甲 状 腺炎様像を伴う 症 例 が 高頻度に
存 在す るこ
と を明ら かに
す る と と もに
, さらに
1‑ 6 年 間の
経過観察に
よ る 予後との
関連 性に つ い て
も対比 し検 討し た.7
61
対 象 と 方 法
対象は 4 ‑ 1 7 歳(平均1 1歳)
の
男子4. 女子 2 6の
3 0人で
.全 例持続す る 明 ら か な 甲状 腺機 能 冗逓 症状を 有し た. ま た全 員七 条法13) に
て2
.5
‑4
度の
甲 状線 接が
認 め ら れ. 生 検は Fr a n
k lin
‑S ilv e r m a n n
針に
よ り原 則 と して
甲状 腺 両 葉よ り採 取し た.針生 検は 2 0 例 が治 療 前に
施行し. 中 毒症状の
強か っ た 2 例 ( 治 療 後 1 0. 1 1カ
月目に
施 行) を除き ∴残りの
症例も治 療 開 始 後1カ
月以内の
可 能な 限 り 早期に
行っ た. 得 ら れ た組 織 所 見か ら主 と して
伴う細 胞浸潤の
程度に
よって
以下の
3 群に
分類し た.Ⅰ群
:
実 質の
hy p e r p
la s t
ic
な病 変が 主体で
.ほ
と ん ど 細 胞 浸 潤の
伴わ ない
もの
.‡ 群
;
hy p e r p
la s t
ic
な病 変に
1 / 3 程度の
範囲で
散 在 性 甲状 腺炎 を 伴 う もの
.Ⅲ群
;
hy p e r p
la s ti c
な変化 と細胞 浸潤, 上皮の
変 性,濾胞
の
萎縮な どの
甲状腺炎の
病 変と がは
ぼ半々 に
共 存 する
. あ るい
は 甲状 腺炎の
像が 優性な もの
ここ
れ らの
3 群に つ い て
. 初診時に
お け る臨床 症 状. T4, T3 値, 2 4 時 間Ⅰ ‑ 1 3 1 摂 取 率. T3 抑 制試 験, 抗甲状 腺 抗 体 (サ イ
ロイ ド
,マ イ ク
ロ ゾーム
。テ ス ト
).人 甲状 腺 刺 激因子お よ びこ
れ らの
治療 経過 を 比 較 検 討し た. な お初診 時に
一過性の
機 能 冗進症状が あ り, Tト T3 も高 値を示し た がt I ‑ 13 1 摂取 率が 低 く1 生検像 がい
ず れ も び慢 性甲状 腺炎で
あっ た 症 例川
は 除
い
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同
⊂: :IT。 は T4Ⅰ (
カ ラ ム
T4 法), T3
は T3
R I A k it
I (D in a
bo t t
). T S H は T S H k it
「第1 」( 第1ラ
ジ オア イ ソ ト
ー プ)に
よ るr a
d io
im m u n o a s s a y に て
測 定 し た. 抗甲状 腺 抗体はサ
イロ
イド
,マ
イ クロ
ゾーム
○テ ス ト
( 富 士 臓 器) を使用 し た. T3
抑 制 試験は‑ヨ
ード
制 限食 後. 体 重に
関係な く,チ
ロナ ミ ン
7 5〃g
/ 日, 7 日間 投与し, 抑 制前 摂 取 率の
50 % 以上に
抑制さ れ た もの
を 陽 性と し た. T R H 負 荷 試験は,T R H l OF L g
/ kg
静注 後.T S H 最高 値が 1 0〟
U /m
£以上に
上 昇す る もの
を 正常 反 応と し た15)
・ 人 甲状 腺 刺 激因子は,L
a u r
be r g
らの
方 法16)
をm o
d i fy
し た T3r e
le a s e a s s a y
,及 び女屋 らに
よ るc y c
lic
A M Pa s s a y m に
よ り検討し た( 第 〔Ⅱ〕 編で
詳 述).治 療 は
メ ル カ
ゾ ール に
よ る 2 例 を 除 き, P T U:
10 0 ‑ 3 0 0m g
/ 日で
開 始し, 血 中T J , T3
値を参 考
に
症状に
応じて
.1 EI 50帽
まで
漸 減して い
き,機 能正常な状 態が 1 年 間続き, T R E 負荷 試 験に て
正常以上に
反応 する もの
を原則 と して
治 療 中 止し た・メ ル カ
ゾール の
場 合は アT Uの
1 / 1 0 量 を投 与し た・一 応 治療 中 止後 少な く とも1年以上 機能 正常な状 態が 維 持
で
きて い
る もの
を寛解の
目 安に
して い
る・成 績
組織 所 見
に
よ る 各群の
頻 度は, Ⅰ群 9 (30 %) . Ⅱ 群 11 ( 3 7 %), Ⅲ 群1 0 ( 33 %) と慢 性甲状 腺 炎の
組 織 像を伴う もの
が高 率に
認 め ら れ た( 表1) . 特に
Ⅱ群 は. 細胞 浸 潤が著 明
で
芽 中心を形 成し,」ニ
皮の
変 性 や濾胞の
萎縮を伴い
, む し ろ全 体か ら みて
慢性 甲状 腺 炎の
組 織 優に
近い
もの
が多く.い
わ ゆ る Ha s
bi‑t o x
ic o s
is に
相 当す る と考え ら れ る(写真1 ‑ 6, 10 0倍). 治 療
1 0
及び1 1
カ 月経過 し て生 検し た 2 症例はい
ず れ もⅠ 群で
あっ た. 各群の
臨 床症 状で
は, 年 令差な く, 甲状腺腫の
大き さに
は著 明な 差 は 認 め ら れ な かった が, そ
の
硬度に つ い て
は全 体に
軟ら か く触 知す る もの
がⅠ 群に
3 例 あっ た. 眼実の
頻 度は. そ れ ぞ れ 6, 8, 5 例 認 め, 大き な差異 は感じ ら れ ず. 予後との
問に
も直 接の
関連を 認 め な かっ た. 心悸 冗 進, 振乱 発汗お よ び体 重 減 少な ど は各 群で
平均 的に
み ら れ た ( 表2 ). 初診 時に
お け る血 中T▲Ⅰ, T3
値は, 全 例異 常 高 値を呈し,各群の
平 均 値に
も有 意な差は な かった(図 1). T3 抑 制 試験で
は, Ⅱ 群とⅢ群に
そ れ ぞ れ 1 例ずっ
抑 制さ れ る 症 例 が み ら れ た( 図2). 図3の
よ うに
,サ イ
ロイ ド
及 びマ イ ク
ロ ゾーム
。テ ス ト で
は. Ⅰ群に
両 法 共陰性
の
もの
が 4 例 あ り, 全 般 的に
Ⅰか らⅢ群と 甲状腺炎の
程 度が強く な るに つ
れて
, 高い
抗体 価を 示 す もの
が多い
. 特に マ
イク
ロゾーム
・テ ス ト で
は各群の
差は 著 明で
あ り (Ⅰ 対Ⅰ Ⅰ
Ⅰ群;
P<
0.0 0 1, Ⅰ対 Ⅲ 群;
P < 0.0 0 5).陰 性の
もの
はⅠ 群の
4例に
対し, ‡ 群で
は 1 例の
み, Ⅲ 群で
は 1 例も 認 め な かっ た・初 期
の
人 甲状 腺 刺 激 因子は. Ⅰ 群7 / 9, Ⅱ 群8 / 臥 Ⅰ 群 も 7 / 7 例に
陽 性と み ら れ. 刺激 活性の
強度に
も 差 が感じ ら れ ない
(図 4) .全体
の
経過観 察 期 間は, 1.5 ‑ 6.5 年で
あ り, その
治療 経過で
は, 治 療 開 始後T4及 び T3
が 正常 化す る まで の
月 数に
は大き な 差 異 は な く. Ⅰ 群 3.3, Ⅰ 群 4.1. Ⅲ群 3.6カ
月で
あっ た. 他 方コ ン ト
ロ ール に
要 す る抗甲状 腺 剤の
投与 量に
は. Ⅰ, Ⅱ 群とⅢ 群との
間に
大き な 差 が あ り, 2 年 間の
各個 人に
対 する P T ロ投 与量 はⅠ 群;
1 1 2g m
(n
= 5), Ⅰ群;
124g m
(n
=10)・ Ⅲ群
;
7 0g m
(n
= = 8)で
あ りtⅢ 群で
はⅠ, Ⅰ表 1. H i
s
to
lo
gic
alc
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G
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b ito x
ic o s
is
)口 9 1 0(3 3)
小 児 甲状 腺 機 能 冗進 症
の
予 後 〔t〕写 真1
:
濾 胞上皮の
腫大 増 高と濾胞 内への
乳頭 増 殖か ら な る 実質像で
. 上皮に
接し,よ
く小空胞を み, 典型 的なバ セ ド ゥ
病の
組織 像で
.ご
く 一部に
線 維化 が み ら れ る ( Ⅰ群).写真3 : 約1 / 3
の
範 囲で
小円 形細 胞の
浸潤 を み,芽 中心 形 成 を 伴 う. 他の
上皮は
増 高 して
お り hy p e r p
la s t
ic
な所見で
あ る ( Ⅱ 群).写真5
:
小 円 形細胞の
濾 胞問 浸潤.・一一部 線 維化 を み, 全体の
1 / 2 以上を占め. 同 部の
濾胞ほ萎 縮傾 向に
ある
. 他は
コ ロイ ド
を 充満し た大型濾 胞で
. 上皮は とこ ろ
どこ ろ
乳 頭状 増 殖を 示 す (Ⅲ 群).7 63
写 真2 :1 と 同様
で
大部 分は hy p e r p
ia s t
ic
な所見で
あ る.ご
く 一 郎に
リン パ
球, 形質 細 胞の
浸潤 と 同部の
濾 胞の
萎 縮を伴う (Ⅰ群).写 真4: 約1 / 3
の
範囲に
小円 形細 胞の
浸潤 を み. 同 部の
濾 胞 は萎 縮して い
る. 他の
上皮はい
ず れ もh
y p e r p
la s ti c で
あ る(Ⅱ群).写 真6
:
約1 / 2の
範囲で
, 小円 形細 胞の
浸潤 を み,芽 中 心 形成を伴う. 濾胞は 大小不同
で
. 上皮は とこ
ろ どこ ろ
乳 頭 形成を み る(Ⅲ 群 ).7 6
4
高 田群
に
比 し, 抗甲状 腺剤 投 与量は約 半 分で
充 分で
あ る と ( 5 7 % ) , 4 年で
1 4 / 21 ( 6 7 %) と な り,従 来の
報い
え る (Ⅰ 対IlI
群;
P<
0.0 2, Ⅱ 群 対 Ⅲ 群;
P<
告に
は ぼ 一致す る. Ⅰ群の
累 積寛解 率は, 1 年で
0 / 0.0 1) . ま た 全休の
累 積 寛 解率は.治 療1 年で
3 / 3 0 9, 2 年で
1 / 5, 3 年, 4年で
も 1 / 5 と向 上し な ( 1 0 % ), 2 年で
8 / 2 4 ( 3 3 % ), 3 年で
1 2 / 2 1い
. ‡ 群で
は そ れ ぞ れ 1 / 1 1, 1 / 1 0, 4 / 9 , 6 /表 2. C li
n
ic a
l St u
dy
.工 ェ 工 二王I
G r o u p
n
=9 n
=l l n
=1 0
n e a n a 冒 e
(
b y S
霊笥。ブヨ )
≡1 1
.3
(4
‑1 7
)1 1
.9
(9
‑1 1
)1 2
(7
‑1 5
)3
5
1
⊥
s o f t 3
C O n S i s t e n c Y P a r t i a 1 1 Y 6 f i r m
f
ir m O
e x o p h t h a l m o s 6
/9
f 0 1 1 0 W u p y e a r S
p e r s o n a l P でロ d o s a g e d u r i n g f
エr s t 2 y e a r s
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)2
.9
(1
.2
‑5
)1 1 2 土3 3
(n
=5
)3 7
⊥
2 7 0 0 8 2
8
/1 1 5
/1 0
3
.8 3
.3
(
1
.5
‑5
.5
) (1
.4
‑6
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)1 2 4 土4 4
」
p 。
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7 0 土3 2 8
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殖
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川
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t 弓V e S U
PP「 e S S
io n
I tI 口l
∴ ≡ モ ー ≡
(10 0 。ん) ( 8 3 0/。) ( 8 8 0/。)
図 2 . 2
4
hr
. 1 1 3 1u p t a
ke
, T 3s u p p r e s s
io n
・小 児 甲状 腺 機 能 冗進 症
の
予 後 〔T〕9 と徐
々 に
寛解し. 全体の
寛 解 率に
一 致し た. 一方 Ⅲ 群で
は. 1 年日2 / 1 0. 2年 目6 / 9で
あ る が. 3 年 臥 4 年 目で
7 / 7 (1 0 0 %) と全 例 寛 解に
至って
お り. 伴う 甲状 腺炎 が強い は
ど 寛解し や すい こ
と が示 唆 さ れ る(図 5 ). 現 在の
とこ
ろ寛 解後 機 能 低 下に
陥って
い
る例は ない
. 他 方 今 回対 象と し な かっ た 一 過性の
機ヱ
0
ヱ
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● ● ● ● 00 0 0 00 0 0 0 0 00
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. M C HA
共 図3. T hy r o
id(T H A), M ic r o s o m e
(M C H A).)
0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
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む
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○ む
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ロ
」
7 6 5
髄 冗進を示し た 4症 例は, 2 例が機能正常
で
あ り, 2 例は機 能 低 下 状 態に
陥り, T■
代 償中で
あ るl … )
考 察
バ セ ド ゥ
病の
組 織 優に
細胞 浸 潤を伴うこ
と は よ く知 ら れて い
る. 成人に
於い て
矢川 ら はパ セ ド ゥ
病の
2 2 7 / 3 0 1 (7 5 % ) 例に
リン パ
球 浸潤を組め, その
う ち鋼 例 (2 8 %)
に
芽 中心 形 成 を 伴 っ た とい い
.19)
Ha r g r e a v e s 2 0)
ら も 3 6 / 6 0 (6 0 %)
に
リン パ
球浸潤そ して
1 9例 (3 0 %)に
芽中心形 成を 認 め た と(
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