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楽 観 性 と 学 業 パ フ ォ ー マ ン ス

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Academic year: 2021

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(1)

問 題

楽観性が、 学業やビジネス場面での成功に結びつくことを示す研究は多い (Farwell と Wohlwend- Lyoyd,1998; Hasan, 2002; Jaskcon ら, 2000など)。 物事を明るく受け止め、 将来に悲観しない人のほ うが成功するという知見は、 常識的な見解にも一致し、 きわめて理解しやすい結果だといえる。

その一方で、 悲観的な人、 不安傾向の高い人、 心配性の人、 後悔しがちな人のほうが、 学業やビジネ スで成功するという、 まったく正反対の結果を示す研究がないわけではない。

Nasco と Marsh (1999) は、 293名の大学生に1か月の期間を空けて2回の試験を受けさせたとき、

1回目の試験の後で後悔している学生ほど努力をし、 2回目の試験で好成績をとったという結果を報告 しているし、 Sanna ら (2006) は、 悲観的な学生は、 たしかに試験前には、 「私は試験でうまくいかな いだろう」 という回答が多かったが、 実際の試験の成績を比べると、 楽観的な人とほとんど変わらない 得点を挙げたという結果を明らかにしている。 Sanna らの研究では、 統計的な有意差は得られなかっ たが、 むしろ悲観的な学生のほうが、 わずかに試験の成績は高いほどであった。

ビジネスに関する研究でも、 Perkins と Corr (2005) は、 セキュリティ会社のマネジャーを対象に した研究から、 心配性な人のほうがかえって仕事のパフォーマンスが高いことを示している。

楽 観 性 と 学 業 パ フ ォ ー マ ン ス

内 藤 誼 人

*1

*1 立正大学心理学部

旨: Some research exhibit optimistic people as better academic performers while others display pessimistic people as better academic performers. This study investigated whether optimistic people can academically outperform pessimistic people in an exam. Results verify that the optimist group per- formed academically better on a psychologist test measurement by scoring high. This study set up a hypothesis to postulate that both, the highly opti- mistic and highly pessimistic groups studied thoroughly to prepare for the examination. Although the former group provided support for the hypothe- sis, the latter group did not.

キーワード:optimism, pessimism, academic performance

(2)

なぜ、 楽観的な人ほどパフォーマンスが高いという結果を示す研究がある一方で、 まったく正反対に 悲観的な人ほどパフォーマンスが高いという結果が得られているのだろうか。 おそらく研究結果に一貫 性が欠けている理由のひとつは、 「努力」 という媒介変数の存在であろうと思われる。

Peterson (2000) によると、 楽観性は、 人に動機づけを与える要因であり、 努力を継続させる役目 を果たす。 楽観的な人ほど努力をするので、 その結果としてパフォーマンスがよくなると考えられるの である。

しかし、 状況によっては、 楽観的な人は、 「自分なら大丈夫だろう」 と将来に対する見込みを過大に 楽観視してしまって、 努力を払わないことがあるのではないだろうか。 特に、 努力する必要性があまり 感じられない状況のときには、 そうなるのではないかと思われる。 この場合には、 楽観的な人ほど、 パ フォーマンスが悪くなると予想できる。

逆に、 悲観的な人は、 将来に対する不安や心配を払拭するために、 楽観的な人よりも努力することが あるかもしれない。 そのような状況では、 悲観的な人のほうがパフォーマンスはよくなるであろう。 従 来の研究結果が、 やや食い違っているように見えるのは、 「努力」 という媒介変数を考慮していなかっ たからではないかと考えられる。

本研究は、 楽観的な人と、 悲観的な人が試験にあたってどれくらい努力を払うのか、 また、 学業パフォー マンス (試験得点) が高くなるのは、 どちらの性格タイプの人なのかを検証する。

従来の研究に基づき、 本研究では、 楽観性の度合いが高い人ほど、 たくさん努力し、 それゆえ試験の 得点も高くなるという仮説をたてた (仮説1)。 本研究で取り上げる学業パフォーマンスは、 中間試験 の得点であるが、 この中間試験は最終的な成績を決めるうえで非常に重要であるという教示が講師によっ て生徒に伝えられていたため、 勉強する動機づけは高かったと思われる。

悲観性の度合いが高い人もまた、 単位を落としてしまうという不安や心配を払拭するために努力を多 くするであろうから、 同じく試験の得点が高くなるという仮説を設定した (仮説2)。 本研究の目的は、

この2つの仮説を検証することである。

方 法

1. 被験者

一般教養の心理学を履修している私立大学生118名を対象に、 講義時間に楽観性テストを測定する質 問紙を配布した。 記入及び回収も同日に行った。 記入漏れによる無効回答は、 3名であった。 楽観性テ ストと、 約1か月後 (5週間後) の中間試験を同時に受講した109名を最終的な分析対象とした。

2. 質問項目

本研究で使用した楽観主義尺度 (中村ら, 2000) は、 「楽観的自己感情」 と 「悲観的自己感情」 とい う2因子を測定するもので、 12項目の尺度から成り立つ。 楽観的自己感情 (以下、 楽観性) を測定する 項目は、 このうちの3項目、 悲観的自己感情 (以下、 悲観性) を測定する項目は4項目であり、 残りは ダミー項目であった。

楽観性の具体的な質問項目は、 ① 「結果がどうなるかはっきりしない時は、 いつも一番良い面を考え る」 ② 「いつもものごとの明るい面を考える」 ③ 「自分の将来に対しては非常に楽観的である」 の3項

(3)

目である。

悲観性は、 ① 「なにか自分にとってまずいことになりそうだと思うと、 たいていそうなってしまう」

② 「自分に都合よくことが運ぶだろうなどとは期待しない」 ③ 「ものごとが自分の思い通りに運んだた めしがない」 ④ 「自分の身に思いがけない幸運が訪れるのを当てにすることは、 めったにない」 の4項 目で測定された。

測定は、 楽観性、 悲観性ともに 「非常にあてはまる」 を5点とし、 「全くあてはまらない」 を1点と する5件法で行われた。

3. 手続き

楽観性・悲観性を測定してから約1か月後 (5週間後) の講義において、 中間試験を実施した。 この 中間試験は客観式の試験であり、 100点満点である。 なお、 試験当日には、 「この試験にあたって、 あな たはどれくらい勉強をしましたか? 前日に30分だけなら30分、 1週間前から1時間ずつ勉強したので あれば、 7時間と解答用紙の余白に記入してください」 と教示して、 回答を求めた。 この質問に対する 答え、 すなわち、 試験のための勉強時間を 「努力」 の指標とした。

結 果

1. 尺度の検討

楽観性を測定する3項目について、 クロンバックのα係数を求めたところ、 数値は0.5799であり、 線 形結合している変数はなかった。 尺度としての整合性があることが確認されたので、 以下の分析では、

この3項目の合計得点をもって楽観性としている。

同様に、 悲観性に関する4項目についても同様の分析を行ったが、 やはり線形結合している変数はな く、 尺度の整合性が確認できた (クロンバックのα=0.5738)。 よって、 この4項目の合計得点をもっ て悲観性としている。

2. 学業パフォーマンスの予測

試験得点を目的変数とし、 楽観性、 悲観性、 および努力を説明変数とする重回帰分析を行った (Table 1)。 努力の変数のみが有意であり、 試験にあたっての勉強時間が長ければ長いほど、 パフォーマンス もよくなるということが示された。 やはり、 試験で高得点を得るためには、 それなりに準備の努力を払 わなければならないようである。 なお本研究では、 楽観性、 および悲観性から直接的に試験得点を予測 することはできないことも明らかにされた。

Table1. 試験得点を目的変数とする重回帰分析の結果

説明変数名 偏回帰係数 標準誤差 標準偏回帰係数 F 値 t 値 P 値 判 定

楽観性 0.9212 0.8349 0.1045 1.2173 1.1033 0.2724 悲観性 −0.3987 0.6986 −0.0542 0.3258 −0.5708 0.5694

努力 1.7883 0.4381 0.3681 16.6633 4.0821 0.0001 **

定数項 42.8153 13.2730 10.4055 3.2258 0.0017 **

修正済決定係数 R

=0.1259

※ **…1%水準で有意。

(4)

次に、 努力を目的変数として、 楽観性、 および悲観性を説明変数とする重回帰分析を行ってみたが、

どちらの変数も有意ではなく (修正済決定係数は0.004)、 本研究の結果では、 楽観性、 および悲観性か ら直接的に努力を予測することもできないことも明らかにされた。

3. 楽観性と悲観性のパフォーマンス

楽観性についての四分位数を求め、 上位25%に含まれる被検者 (楽観性の得点が15点中11点以上) と、

下位25%に含まれる被検者 (15点中6点以下) を分類し、 前者を高楽観性グループ、 後者を低楽観性グ ループとした。

また、 悲観性に関しても四分位数を求めて、 上位25%の被験者 (悲観性の得点が20点中15点以上) を 高悲観性グループ、 下位25%の被験者 (20点中11点以下) を低悲観性グループとした。

それぞれのグループにおける試験の得点と努力の結果は、 Table2の通りである。

始めに、 試験得点に関して二元配置の分散分析を行った (Table3)。 交互作用が5%水準で有意で あり、 楽観性については楽観的であるほど、 試験で高い得点を挙げることが示された。 この結果は、 従 来の多くの研究結果と一致するものである。 悲観性については、 悲観的でないほど、 試験の得点が高く なる傾向があることが示された。

努力についても同じく二元配置の分散分析を行ってみたが、 主効果および交互作用について、 いずれ も有意ではなかった。 単純に平均値を比較すると (Table2)、 楽観性グループのほうが、 悲観性グルー プよりもたくさん試験前に努力しているような印象を受けるが、 統計的な有意性は確認できなかった。

考 察

本研究の結果は、 「楽観的な人ほど、 学業パフォーマンスが高い」 という、 従来得られてきた知見を 追認するものであった。

学業パフォーマンスを予測するうえでの重要な変数は、 試験前の努力である (β=0.34)。 そして、

Table2. 楽観性と悲観性の試験得点および努力

グループ名 試験の平均点 努 力

高楽観性グループ 58.500 (19.349) 5.317 (3.539) 低楽観性グループ 49.107 (24.572) 4.929 (7.303) 高悲観性グループ 48.065 (22.865) 4.823 (7.011) 低悲観性グループ 56.622 (23.275) 4.343 (2.821)

※括弧内の数値はSD

Table3. 試験得点に対する二元配置の分散分析表

因 子 平方和 自由度 平均平方 F 値 P 値 判 定

性格 (楽観・悲観) 66.4855 1 66.4855 0.1301 0.7190

度合い (高・低) 5.4427 1 5.4427 0.0107 0.9180

性格 * 度合い 2510.6706 1 2510.6706 4.9129 0.0285 *

誤差 62346.7522 122 511.0390

全体 64908.1349 125

(5)

試験前にどれくらい努力をするのかについては、 楽観的な人のほうが、 悲観的な人よりも多く努力する 方向での結果が見られた。

本研究の調査によると、 高楽観性グループでは、 試験前に平均して5.3時間の勉強をしているのに対 して、 低楽観性グループでの勉強時間は、 4.9時間であった。 ただし、 この数値に対して、 統計的な有 意差は確認できなかった。

Peterson (2000) が指摘するように、 楽観性は、 人にモチベーションを与える要因であり、 達成欲 求に影響し、 努力を継続させる要因である。 楽観性の度合いが高い人ほど、 努力を厭わない傾向があり、

それがさまざまな成果となってあらわれるのであろう。

なぜ楽観的な人ほど、 多くの努力を払うのだろうか。 このメカニズムに関しては、 いくつかの説明が 可能である。 Brandstatter & Schwarzenberger (2001) によると、 楽観的な人は、 たとえ困難や障害 にぶつかっても、 それを心理的に小さく評価する。 彼らの目には、 問題が大きく見えるのではなく、 む しろ小さく見えるから、 ほんの少しの努力をすれば簡単に乗り越えられると考える。 そのため、 彼らは、

困難から逃避したり、 撤退するのではなく、 努力によって立ち向かうことを選択するのである。 このメ カニズムを明確に確認するためには、 あらかじめ質問項目の中に、 試験という困難に対して、 どのよう な認知・判断をしているのかを測定しておくべきであった。

楽観的な人ほど、 努力を厭わないという事実に対しては、 彼らが基本的に負けず嫌いである、 という 観点からの説明も可能である。 楽観的な性格の人は、 同時に、 競争意欲が強く、 タイプA傾向を示す人 が多い (Hasan, 2002)。 タイプA傾向の人は、 もともとエネルギッシュな人であり、 かりに失敗した としてもさらに努力をする傾向がある (Kliewer ら, 1990)。 楽観的な人ほど努力をするのは、 そうし た他の性格特性との関係が影響しているのかもしれない。

悲観性に関しては、 悲観的 「でない」 人のほうが、 試験で高い得点を挙げ、 それゆえ学業パフォーマ ンスは高いことが示された。 けれども、 統計的な有意差は得られなかったが、 試験前にたくさん努力し ているのは、 悲観性の高いグループであった。 本来であれば、 たくさん試験勉強している高悲観性グルー プのほうが、 試験の得点も高くなってよさそうな気がするが、 むしろ逆の傾向を示す結果であった。

悲観性に関しての本研究の結果は、 悲観的な人は、 将来を悲観して、 まったく何の努力もしないとい うよりは、 むしろ、 自分の不安や心配を吹き飛ばすために、 かえってたくさん努力するのだが、 その努 力がうまく成果へとつながらない、 という可能性を示唆している。 悲観的な人では、 楽観的な人と違っ て、 何らかの要因が、 努力が成果へと結びつくことを阻害している可能性もある。

たとえば、 楽観的な人は、 精神的にのびのびと努力するので、 努力がそのままパフォーマンスへと直 結しやすいのに対して、 悲観的な人は、 あれこれと不安や心配を抱えながら努力するので、 勉強に集中 できないのかもしれない。 そのため、 楽観的な人と同じ時間の勉強をしても、 学習効率が非常に悪いの かもしれない。 悲観的な人にとって、 努力した時間と、 試験の得点とがやや混乱している結果になって いるのは、 単なる試験準備の時間を調べるのではなく、 どれくらい集中して勉強に取り組んでいるのか、

という点も考慮すべきであった。 この点についても将来の課題として残されているといえよう。

引用文献

Farwell, L., & Wohlwend-Lloyd, R. 1998 Narcissistic processes: Optimistic expectations, favorable

(6)

self-evaluations, and self-enhancing attributions. Journal of Personality, 66, 65-83.

Hasan, H. J. T. M. 2002 Relations of the Arabic type A behavior scale with measures of optimism and pessimism. Psychological Reports, 91, 1043-1051.

Jackson, T., Weiss, K. E., & Lundquist, J. J. 2000 Does procrastination mediate the relationship between optimism and subsequent stress? Journal of Social Behavior and Personality, 15, 203- 212.

Kliewer, W., Lepore, S. J., & Evans, G. W. 1990 The cost of type B behavior: Females at risk in achievement situations. Journal of Applied Social Psychology, 20, 1369-1382.

中村陽吉 (編著) 2000 対人場面における心理的個人差−測定対象についての分類を中心にして レーン出版

Nasco, S. A., & Marsh, K. L. 1999 Gaining control through counterfactual thinking. Personality and Social Psychology Bulletin, 25, 556-568.

Perkins, A. M., & Corr, P. J. 2005 Can worriers be winners? The association between worrying and job performance. Personality and Individual Differences, 38, 25-31.

Peterson, C. 2000 The future of optimism. American Psychologist, 55, 44-55.

Sanna, L. J., Chang, E. C., Carter, S. E., & Small, E. M. 2006 The future is now: Prospective tem- poral self-appraisals among defensive pessimists and optimists. Personality and Social Psychol- ogy Bulletin, 32, 727-739.

Appendix1

本研究で使用した楽観性・悲観性尺度

1. 結果がどうなるかはっきりしない時は、 いつも一番良い面を考える。

2. たやすくリラックス出来る。

3. なにか自分にとってまずいことになりそうだと思うと、 たいていそうなってしまう。

4. いつもものごとの明るい面を考える。

5. 自分の将来に対しては非常に楽観的である。

6. 自分は多くの友人に恵まれている。

7. 忙しくしていることは私にとって重要である。

8. 自分に都合よくことが運ぶだろうなどとは期待しない。

9. ものごとが自分の思い通りに運んだためしがない。

10. 簡単には動揺しない。

11. 「憂いの影には喜びがある」 ということを信じている。

12. 自分の身に思いがけない幸運が訪れるのを当てにすることは、 めったにない。

Appendix2

本研究の中間試験 (心理学) で使用した空欄補充問題 (10点×10問=100点)。 カッコ内の用語が正解。

問1. 通常、 4〜5秒で消失する聴覚的な感覚記憶を (エコー) という。

(7)

問2. 条件づけの種類のうち、 条件刺激を先に呈示し、 完全に呈示し終えてから、 無条件刺激を呈示す るやり方を (痕跡条件づけ) という。

問3. ケーラーによって提唱され、 いきなり解決法が頭に浮かぶような学習を (洞察学習) という。

問4. 酔っぱらった状態で覚えたことは、 やはり酔っぱらった状態のときによく再生される。 これを (状態依存効果) と呼ぶ。

問5. 新生児の顔に息を吹きかけると、 両手を広げて何かにしがみつこうとする。 こうした反応を (モ ロー反射) という。

問6. シェルドンは、 体格からその人の性格を分類できるとして、 内胚葉型、 (中胚葉型)、 外肺葉型の 3分類を行った。

問7. ウェストとヒップの割合が0.6から0.8の場合に女性は最も魅力的に見えるが、 この比率を (WH R) という。

問8. 大脳皮質に存在し、 主に空間情報の処理にかかわる脳の部位は (頭頂葉) である。

問9. シュルツによって創始された心理療法は (自律訓練法) である。

問10. 「人は生まれた時は白紙であり、 後天的な経験が重要」 と論じたのは、 (ロック) である。

参照

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