弘前大学教育学部紀要 第
92号
147‑158(2004年
10月 )
BU日.Fac.Educ.HlrOSakjUniv92:147‑158(OcL2004)
ビデオによる大学生の歯みがきの分析
147
A
na l y s i sf o rt h eTe e t hBr u s h i ngo f t h eUm iv e r s i t yS t u d e n t sb yVT R
今 清 佳 * ・小 野 郁 ** ・森 菜 穂 子 *** ・太 田 誠 耕 ****
SayakaKON*,Kaoru ONOH,NaokoMORI…,andSeikouOHTA* …
論文要 旨 :養護教諭 を目指す学生が, 日常 どの ようにブラッシングを行 っているか,またブラッシング指導 に関 して どの ような課題が残 されているかを考察す る目的か ら,養護教諭 を目指す学生 と一般学生を対象 と して, ブラッシング習慣 についてアンケー ト,実態調査を行 った。また,実際のブラッシングの様子を ビデ オカ メラで撮影 し,分析 した。その結果,巻数群 は一般学生 よ り良好な歯科保健行動 をとる傾向がやや強い とい うことがわかった。 しか し, ブラッシング指導の全てが習慣 として反映 されているわけではな く,今後 の指導の改善が求め られる。
キーワ‑ ド :養護教諭養成課程の学生,一般大学生,歯みがき, ビデオ分析
Ⅰ.は じめに
平成
7年度
,「 学校保健法施行規則の一部改正 と それ に伴 う健康診断の改正」 において,要観察歯
(co)あるいは歯周疾患要観察歯
(GO)とい う 考 え方が導入 され
Ⅰ), う蝕や歯周疾患の早期対応 が,治療的対応か ら予防的対応 に変わった。学校 にお ける予防的対応 としては保健指導が 中心であ り,その担当者は養護教諭が多い と考 えられ る。
養護教諭の行 うブラッシング指導は,学校歯科保 健指導の基本であ り, う蝕や歯周疾患の予防に重 要な役割 を果たす と考えられ る。 しか し,児童生 徒の生活行動の変容まで到達 させ る力を身につ け させ ることは,大変重要な ことであるが容易では ない。適切かつ効果的なブラッシング指導を行 う ためには, 自己の実践体験 に基づいた説得力のあ る指導をしてい くことが大切である
2)と言われて いる。将来,養護教諭 を目指す学生は適切なブラ ッシング習慣が身に付いていることが望 ましい と 考 えられ る。
そこで本研究は,養護教諭養成課程の学生 と一 般学生を対象 に して, 日常 どの ようにブラッシン
グを行っているかをビデオ分析で明 らかに し,以 前受けたブラッシング指導が行動化できているか 否かを知 ることを第一の目的 とした. また,ブラ ッシングの指導の内容についても調査 し,今後の 指導のあ り方について考 えることを第二の 目的 と
した。
Ⅱ.
方法
1.調査対象 :養護教諭 を目指 し,臨床実習でブ ラッシング指導を受 けた学生
19名 ( 以下養教群), 一般の男子学生
16名 ( 以下男子群),女子学生
15名 ( 以下女子群),計5
0名であった。
2.
調査期間 :平成
15年11 月
5日か ら同年11 月
25日であった。
3.
調査方法及び調査内容
( 1 ) 全対象者‑の調査 :①ね り歯磨き採取量の計 量,② ブラッシングの ビデオ撮影 ・分析,③ 面接調査 ( ブラッシング指導の内容,歯ブラ
シの交換時期,一 目の歯磨 きの回数等)
(2)義教群対象の調査 :臨床実習で受けたブラッ
シング指導の内容を思い出 してもらい,再び
*
弘前市立第二中学校
HirosakicityDainiJuniorHighSchool
** 青森県立青森第二養護学校
AomoriprefectLu‑alAomoriDainischoolforMentallyhandicappedchildren
***弘前市立新和中学校
HirosakicityNiinaJuniorHighSchool
****弘前大学教育学部教育保健講座
Depallmentofschoolhealthscience,FacultyofEducation,HirosakiUniversity
148
今 清佳 ・小野 郁 .森 菜穂 子 ・太 E E l 誠耕
ブラッシングの ビデオ撮影 を行い,上記の映 像 と比較 した。
4.
分析方法 :ビデオ映像の分析は,図
1のよ う に歯を
13部位に分 け時間 ・回数 を計測 した。得 られたデータはクロス集計
, .r
2検定,分散分析,
t
検定を行った。有意水準は p く
0.05とした。
Ⅲ.
結果 と考察
1.ブラッシング指導について
(1
) ブラッシング指導経験の有無 ( 図
2)臨床実習でブラッシング指導 を うけた養教群 を 除いて,指導 を受けた経験 については有意な差は 見 られなかった。
(2)
指導を受 けた場所 ( 図
3)「 指導を受 けた ことがある」 と答 えた者の中で,
その指導を受 けた場所 を質問 した ものである。
男子群,女子群では 「 学校」 と答 えるものが一 番多かったのに対 し,養教群では 「 歯科」 と答 え るものが多かった。養教群は最近指導を受 けたば か りであ り,また一般学生 より指導を受ける機会 が多い と考 えられる。 よって,それ らの指導内容 が強 く残 っていたため
,「 学校」で指導を受 けた記 憶が暖味になった可能性 もあるのではないだろ う か。また,その他では大学,教育実習先の学校等 が挙 げられた。
(3)
学校 にお け るブ ラ ッシング指導 の指導者 ( 図
4)学校 において誰か らブラッシング指導を受けた か質問 したものである。結果は,養護教諭,学校 歯科医 ( 歯科衛生士),学級担任の順 に多かった。
0%
20% 40% 60% 80% 100%∩=1
景 教 男子
9∩=1
女子
6∩=15 】 l l l
l
94.7. 5.3l l l
62.5 1■■■■3̲朝5
l
l
l
80. 0 20. 0
l l l
l
□指斗あり ■指斗な L があるか l
ビデオによる大学生の歯みがきの分析
ブラッシング等 の保健指導 は,専門的知識や技術 を必要 とす るため,学級担任 の率が低か ったので はないか と考 え られ る。
(4)
指導 内容 ( 図
5)指導内容 について,学校では 「 染 め出 しを使 っ ての歯垢 のたま りやすい場所 の確認」 と 「 基本の ブラッシング方法」が高い割合 を示 した。歯科 に おいては,上位 は 「 磨 きに くい部位 のブラ ッシン グ方法」
,「 基本 のブラッシング方法」
,「自分の歯
149
並び にあったブラッシング方法」が
3つであったO
これは,学校で指導をす る際は主 に集団を対象 と してお り,個人 に合 ったブラッシング方法 を教 え ることが難 しいため と考 えられ る。 しか し,歯並 びにはかな りの個 人差 があ り, 歯並びによ り歯垢 のたま りやすい場所 も大 き く変わ って くる。つま り, 自分 の歯並びにあったブラッシング方法 を学 ぶ ことが,歯垢除去 に大 き く関係 している と考 え られ る。 しか し,集 団指導を主 に している学校で 教 えてい くことは容易ではない。そのため,養護 教諭 は指導 を してい くだけではな く,歯科 医に個 人指導 をす る上で協力を求めた り,歯科 に行 くこ とを勧 めた りす る ことも有効な一つの手段だ と考 え られ る。
(5)
普 段 の歯磨 きは指 導 が生 か され て い るか ( 図
6)被験者 に歯 を磨いて もらった後了今磨いて もら った ものは以前受 けたブラッシング指導が生か さ れた ものですか」 と質問 した結果, どの群 も約
70 10 20
30
40(%)①
② ③
④ ⑤
@ ( ∋
@
⑨
03 3 . . 3
3 l133. 3
0 l
l 36. 7
3. , 6 , 7 l ll 3. 3 I
Q
②③
④@
⑥
jヽ
⑧⑨
‑ ■
一 5 510. 0
2.5
2
.5 10.0 {++++++++++112.5l17
27.
10.0 7.5:
8)
@
@
㊨@ ⑥
(》⑧
⑨ lll1l18,8
8 l 2 3 . 5
170 5.g J
l l . 8 1 7
図
5.指導の内容 ( 複数回答)
A
(彰1本
1本T字に磨く ように
□( 塾ねり歯磨き採取量に ついて
r( 参歯ブラシの持ち方に ついて
ロ④染め出 しをして汚れ
のたまりやすい部位の
確 認
四( 9自分の歯並び. =あっ たブラッシング方法
□⑥基本のブラッシング 方法
■⑦磨きにくい部位のブ ラッシング方法
E ]( 参そ の他
□( 勤内容までは覚えてい
ない150
今 清佳 ・小野
割の者が 「 指導が生か されている」 と答 えたO し か し,約
3割の者が 「 指導が生かされていない」
と自覚 してお り, この残 り
3割の者が 「 わかる‑
できる」にす るためにも, よ り実践的な教育をし てい くことが必要だ と考 えられ る。
2.
定期歯科検診の受診について ( 図 7) 安藤4 ) によれば,定期歯科検診受診者 と非受診者
郁 ・森 菜穂子 ・太 田 誠桝
の歯科保健意識 ・行動 について,定期歯科検診を 受診 している者は良好な歯科保健行動 をし,かつ 歯科保健 に対す る意識が高い傾向が示 されている。
フ ロス使用状況や ブラッシング指導経験の比較 に おいて,定期歯科検診受診者,非受診者の
2群間 において有意な差が見 られている。 しか し,本研 究では全体の4.
0% (2人)しか定期歯科検診受診 者がお らず,比較 を行 うことができなかった。 こ れは県外出身者が多かった ことが一因 として考 え られ るが,そもそも定期歯科検診 に行 くことの重 要性 について理解 している者が少な く,歯科保健 に対す る意識が低いのではないか と考え られる。
養護教諭は定期歯科検診の重要性 につ いて も指導 してい く必要があると考えられ る。
3.
ブラッシング習慣について
(1
) 普段の歯磨 きのオプシ ョンについて
ビデオ による大学生の歯みがきの分析
鏡 の使用率 ( 図
8)及びデ ンタルフロス,歯間 ブラシの使用率 ( 図
9)を調査 した。
歯を磨 くときにまず,鏡 を見て 自分の歯の状態 を見なが ら,磨 くようにす ることが望まれ る
5)と 言われている。歯には,歯 ブラシの当た りに くい ところや届かない ところがあ り,鏡 を見なが ら意 識 してそ こを磨 くこと,また歯 と口の健康状態 を チェックす ることが必要であると言われているが, その使用率は高い値 とは言 えなかった。学校等で 歯を磨 く際は集団のため固定の鏡は使用 できない とい う実態や,テ レビ等 を見なが らの歯磨きが多 い とい うことか ら使用率が少なかったのではない か と考 えられ る。手鏡,固定鏡 を合わせた鏡使用 率 につ いて は,養教 群 で は
42.0%,男子群 で は
18.8%,女子群では
46.7%であ り,養教群 ・女子 群 と男子群の間に大き く差があった。また,手鏡 を使用 している者は養教群 にのみ存在 した。 これ は義教群の歯科保健行動が高い ことを示 している だろ うと考 えられ る。
デ ンタル フロス,歯間ブラシについて,使用者 は全体で
14.0%と大変低い値であった。デ ンタル フロスについては, ブラシの部分が小 さいので小 さな凹面を磨 くのに便利である
6)と言われている が,絶対的な使用 を求め られているとい うもので はない。 ブラッシング指導を受 けていた者が多か ったのに対 し,使用者が少なかったのは,ブラッ シング指導 としてデンタルフ ロスや歯間ブラシに ついて取 り入れる者が少なかったためではないか と考 えられる。使用者に関 して も,歯磨 きの一環 として使用するのではな く,爪楊枝感覚で使用 し ている者 もあ り,使用方法 についての指導も場合 によっては必要だろ うと考 える。また,使用方法 を誤 ると歯肉や歯根膜 に傷をつ けて しま うことも あ り, このことか らも指導の必要が感 じられ る。
(2)
歯ブラシの交換頻度 について ( 図
10)歯ブラシの交換の 目安 としては
,「 歯ブラシの後 ろか ら見て,毛が柄か らはみ出 していた ら
」 7)敬 り換 えるのが よい と言われている0本研究では,
「 毛先が広がってきた ら」 とい う答 えがほ とん ど であった。具体的時期 においては,一般 には
1‑2
ケ月使用 した ら取 り換えるのが よい とされてい る。た とえ毛先が広 がっていな くて も歯ブラシを 長期間使用すると毛の弾力性が落ちて きて,清掃 効果が悪 くなる
8)か らである.本研究では,1ケ月 と答 えた者は約
2割の者 であ り
,5ケ月以上交換 していない者 も
3割近 くもいたo群間で も比較 し
151
たが,ほぼ類似 した結果 となった。また,少数意 見 として, 「 柄のデザインに飽 きた ら」 「 柄が折れ るまで使 う」 とい う回答があった。
歯ブラシの交換時期 について指導を受けたこと があると答 えた者は本研究では見 られず, また実 際に学校で指導に取 り入れている者 も少ないだろ うと考えられ る。 しか し,前述 した よ うに不良な 歯ブラシで歯を磨 くことは良好なブラッシング効 果 を得ることができないだけでな く,歯肉を傷つ ける危険性があるため,指導す る必要がある と考 えられ る。また,毛先が広 がって きた ら交換する と答 えた者がほ とん どであった に対 し
,1‑ 2ケ 月で交換する者が少数であったのは,歯磨 きの際 の力加減に関係があると思われ るが本研究ではそ こまで調査することがで きなかった。
( 3 ) 1日の歯磨 き回数 ( 図11)
厚生省 ( 現厚生労働省)の平成11年保健福祉動 向調査
9)において毎 日歯を磨 く者は
95%にのぼる。
なかでも
1日
2回以上歯を磨 く者の割合は
60%を 越 えてお り, 日本人 にとって 日常のブラッシング は生活習慣 として定着 しているものと考 えられる。
本研究では
「1日
1回」 と答 えた者は全体の
6%のみであ り,約 9割の者が 2回以上,その うち 2 割の者が
3回以上歯を磨いていた。群別 に見ると 女子群が
3回以上
33.3%と最 も多い結果が得 られ たが, このよ うな結果 になった理由は不明である。
(4) 1
日の歯磨 き時間帯 ( 図
12)朝食前は
10%前後,朝食後は約
75‑100%,昼食 後は約
0‑30%,夕食後 は約
0‑20%,就寝前は 約
75‑90%であった。また,その他 として 「 家を 出る前」, 「 気が付いた とき」等があげられた。時 間帯 については どの群 も朝食後,就寝前が最 も多 い割合を占めたC坂本
10)の 「 愛知県名古屋市北区 調査市民アンケー ト」では就寝前,起床後 ( 朝食 節) ,朝食後の順 に多 く,次いで夕食後,昼食後 と い う結果 となっている。厚生省 ( 現厚生労働省)
川の調査でも類似 した結果 となっているが,本研究 では朝食前が低い値 となっている。 これは,本研 究の対象が大学生のみで, さらに人数が少なかっ たためであると考 え られ,対象 を広 く多 くしてい れば違 う結果であった可能性 も考えられ る。群間 で も比較 したがほぼ類似 した結果 となった。
4.
ね り歯磨 き採取量 ( 図
13)養教群が女子群 より有意 に少なかった
(P〈O.05)。
ね り歯磨 きのテ レビコマーシャルでは,過剰 に
152
今 清佳 ・小野
ね り歯磨きをつ けている。 しか し,歯ブラシの‑
ッ ド全体 にね り歯磨 きをつけることはよくない と 言われているC これは,全体がきちんと磨ける前 に口の中が泡だ らけになって,磨 きに くくなって しま うためである。 これ に加 え,泡が ロいっぱい に広がることで,短 い時間で も爽快感が得 られ, ブラッシングがまだ不十分で も歯磨 きをやめて し まいがちになって しま う
12)。
そこで,テ レビコマーシャルのよ うに本研究で 使用 した歯ブラシのヘ ッ ド全体 にね り歯磨 きを採 取 し,量 を測定 した ところ約1 000mgであった。 こ の値は どの群の最大値 よ りも大きい値であったo 平均値 と比較す ると500mg以上 も差があ り,巻教群 とでは約7 50 mgも差があった。テ レビコマーシャル では,商品を良 く見せ,多 く販売するためにた く さんつ けているのだろ うと考 えられ るが,本研究 の対象者ではその影響を強 く受けている者は少な かった と考えられ る。 しか し,90 0 mg採取 している 者 も少な くはない。 よって,ね り歯磨 き採取量 に
郁 ・森 菜 穂 子 ・太 田 誠耕
ついて指導する事 も必要であろ うと考 えられ る。
ね り歯磨きの採取量は一般的に歯ブラシの‑ ツ ドの
3分の 1の量で十分 1 3) と言われている。 また, ね り歯磨 きは 「 毒」 とまではいわないまで も強 力 な 「 洗剤」である
14)とも言われてお り,大量 に使 用す ることに対 しても危倶 されている。本研究の 歯ブラシで
3分の 1の量 を実際 に計量 してみた と ころ,3 07.3 n l g ( 300 mg程度)であった。各群の平 均値 と比較 す る と,男子群 ( 4
77. 8 ∬ 】 g),女子 群 ( 51 4,2 ロ I g) とでは,約2 00mgもの差があった。養 教群の平均値は2 86.6mgであ り,使用の最低限度量 をみた していた。 これは良好な歯科保健行動を取 ろ うとする意識が高かったためだ と考 えられる。
5.
ブラッシング方法について
( I ) ブラッシング総時間について ( 図
14)ここで言 う 「 歯磨きにかける総時間」 とは,歯 ブラシをロの中に入れてか ら,ブラッシングを完 全に終 えて歯ブラシをロか ら出すまでの時間 とし
0
20 40 60 80 100(%)養 赦 朝 食 男子
前
糞 牢 女子
7.7l1l.2.85 100朝
食 男子
後 女
子 I 82II0. 4
75.
∫
義教 昼 食 男子
後
女子
8ト 5.9l
30.8l 義 教 0
夕 8.8
食 男子
後 女子
7.7景 教 戟 凍 男子
節
女 子
l ll94.1
T
I Z
175.
J
r l
L192.3
l
そ
養救 の 男子
他 女子
l29
. 4
一 一 『 ■ 「‑ ■
12.5 7.7
図
12. 1日のどの時間帯に歯を磨 くか ( 複数回答)
ビデオによる大学生の歯みが きの分析
た。 うがいの時間は含 まない。
ブラ ッシング動作 を観察す るためにビデオ撮影 をす る と,撮影 されていることを意識す るため, いつ もよ り時間をかけて磨 く等 の行動の差 を生 じ させ る可能件がある 1 5) 。そ こで本研究では, ビデ オ撮影の映像 を 「 で きる限 り集 中 して行えるブラ
ッシング方法」 と定義 した。
歯 磨 きの総 時 間量 につ いて平均 値 は どの群 も
180秒
(3分)前後の結果 とな り,有意な差 は見 ら れなかった。歯磨 き時間は最低で も
3分間行 うこ とが望ま しい とされているが,本研究の結果では 平均値
3分前後で,多 くの人が望 ま しいブラッシ ング時間であった と考 えられ る。全体の最大値は
( 秒 )
4032100000000 ◆441.0
間
◆MaA Mi標準 偏差 平均値
nx◆362.0 ◆ 363.
183.3 183.6 172.
▲82‑0 ▲73.0
▲34.0.
養教 男子 女子
∩=19 ∩=16 ∩=15
153
441
秒 ( 約
7分)であ り,最小値 は
34秒 であった。
最小時間であった者 に対 し質問を したが, 自分の ブラ ッシング時間が平均 よ りも少 ない とい う自覚 がない よ うであった。 これ は歯の部位 をまんべ ん な く磨 くには明 らかに足 りない時間であ り,十分 に歯垢が除去で きていない と思われ る。 ブラッシ ング時間が極端 に少 ない者 に対 して歯磨 きの 目的 は口腔 内の爽快感 を得 る とい うことではな く,歯 垢 を除去 してい くことであ るとい うことを意識づ
けることが大切である と考 え られ る。
(2)
各部位 におけるブラッシングの回数及び時 間 ( 図1
5‑17)「 Ⅱ.方法 4.分析方法」で述べた よ うに
,13154
今
清佳 ・小野の部位にわけてL d数及び時間を剃定 した。
時間 ・回数 について群間で比較 した ところ,男 子群,女子群が部位 ごとにば らつ きがあるのに対 し,養教群は歯の表面を除いて比較的平均的な値 を示 してお り,まんべ んな く磨いているよ うであ った。男子群,女 子群 は歯の表面 >噴合面 >裏面 の順の表 とな り,ムラが多い結果 となった。 この ことか ら,巻数群は男子群,女子群 よりも意識的 にブラッシングを行 う傾向があるとい うことが考 えられ る。
各部位におけるブラッシングにおいて最 も多い ブラッシング方法は,歯の表面 ( 右頬側面 ・ 唇側面 ・ 左頬側面) における歯ブラシの水平運動 ( バス法, スクラビング法, 横運動)であ り,その部位のbJ 数 ・ 時間 ともに高い数値 を示 したC
部位 ごとに比較する と,上 卜では約
40回,約
10秒の差があった。面では,表面 と嘆合面で約
100回,
さらに嘆合面 と裏面 とでは約
40回の差が,時間に おいては表面
,嘆合面間に
20秒以上,校合面,裏 面間には1 0 秒以上の差が見 られた。 ビデオ映像 に おいて,上顎歯は嘆合面,裏面のブラッシングを ほ とんど行わないで,表面のみで終わって しま う 者が多 く見 られた。特 に,男子群 ・女子群 にその 傾向が強かった。 これは多 くが下顎か らブラ ッシ ングを開始 してお り,無意識 に磨いている うちに どこを磨いたか忘れて しまったためではないか と 考 えられ る。また,裏面が回数,時間 ともに極端 に少なかったのも,あちこち磨いている うちに忘 れて しまったためではないか と考えられ る。無意 識 に磨いていると, 自分の磨 きやすい ところか ら 始め,磨 きに くい ところは後回 しにな りがちであ
るOその うち歯磨 きに飽 きて しまい,後回 しにさ れた ところはほ とんど磨かれないままになって し ま う
16)と言われている。 これ らのことか ら,歯磨 きをす る際は磨 きに くい ところか ら磨 くように指 導す ることも必要不可欠だ と考 えられ るOまた, 本研究では右利 きの者のみが対象であ り,左右の ブラッシング方法 に何 らかの影響が出るであろ う と予想 していたが,左右では
10回以下
,1 0秒以下 の差のみであ り,予想 とは異なる結果 となった。
(3
) 歯磨 き後の うがいについて
うがいの回数 ( 図1
8)と時間 (
図19)について調査 した。
うがいの回数 において,男子群が
2回以下の者 が半数 を超 える結果であったのに対 し,養教群, 女子群では
1割程度であった。平均時問において
郁 ・森 菜穂子 ・太 田 誠桝
も男子群 と養教群,女子群の間には
2‑ 5秒の差 がみ られた。 ブラッシングの指導内容で うがいに ついて学んだ者は少数であった。 よって この結果 は誰かか ら教わって意識的に行っているものでは な く, ほ とんど無意識の ものであろ うと考えられ る。総 うがい時間について,養教群は全体 と比べ ると低い値であ り,歯科保健行動の高 さとうがい には関係がない と考えられ る。
前述 した ようにね り歯磨 きは強力な洗剤のよう なものである。ね り歯磨 きの成分中のラウ リル酸 が水道水の塩素 と反応 し,その副産物が舌下腺か ら体内に吸収 され,眼球組織 に蓄積 され る。 よっ て,洗濯の後は十分 にすす ぐように,ね り歯磨 き の使用後には最低1 0回はすすがない とある意味危 険なのかもしれない 1 7 ) といわれている。 この こと か ら, うがい後のすすぎについて,ね り歯磨 きの 採取量 とともに指導をしてい く必要があるのはな いか と考 えられる。
( 秒 )
20.0 15.0
10.5.0.000 ◆ 22.9 ◆Max
頼準 偏差
◆17.6
◆ 14,1 ll.9
▲ Mi
平均値
n 8.7 6.4
▲ 2.9 2.3 ▲ 3.7
兼 教
男子 女子∩=19 ∩=16 ∩=15
ビデオによる大学生の歯みがきの分析
6.
養教群における指導を踏 まえた上での ブラッ シング方法の相違 について
(1)
ブラッシング総時間について ( 図
20) 1回 目のブラッシング総時間 と意識後 の
2回 目 のブラッシング総時間の平均値 を比較 した.
総時間において
1回 目と2 回 目では
20秒程度 の 差があ り,有意 に時間が長 くなっていた
(P〈O.05)0
(2)
各部位 におけるブラ ッシングの回数 ・時間 ( 図
21・22)155 1
回 目の各部位 にお けるブラッシング回数 と意 識後 の
2回 目のブラッシング回数及び時間の平均 値 を比較 した ところ大 き く差が見 られた。
部位別 にみ ると歯の表面のブラッシング回数, 時間 ともに大幅 に増加 している。嘆合面がやや減 少 を示 した ものの,裏面 についてはいずれ も増加 傾 向を示 したo裏面は磨 きに くく,忘れやすい場 所 であった にもかかわ らず増加傾 向を示 した こと は,意識 した ことで少なか らず ブラ ッシング方法 に影響 がでた もの と考 え られ る。1 回 目 と2 回 目 で差 が出た ことか ら,養教群が臨床実習で受 けた ブラッシング指導が普段の歯磨 きに完全 には生か されていない ことが推察 された。生活習慣 にも影 響 を与 える指導 を行 うことは大変難 しい とい うこ
とが考 え られた。
(3)
歯磨 き後 の うがいにつ いて ( 図
23)156 今 宿佳 ・小野 郁 ・森 菜種子 ・太 田 誠桝
1
回 目の うがい総時間 と意識後の
2回 目の うが い総時間の平均値 を比較 した。
うがいの時間 については,2 回 目のほ うが約
1秒間少ないだけで,ほぼ同様の結果が得 られた。
うがいは無意識 に行われているため と考 えられる。
7.
ブラッシングの指導方法について
以上のことを踏まえて指導方法 について考 える。
指導方法 として望ま しいのは個人指導を行 うこ とだ と考 えられ る。また,専門家の協力を受ける
ことも必要不可欠であろ うと考えられ る。 ときに は,歯科医院でブラッシング指導を受 けるよ うに 勧めることも必要であろ うOまた,定期歯科検診 の重要性 についても指導 してい くことが望 ましい
と考 えられる。
ブラッシングの利点 としては
,「 歯の表面におけ
る歯垢形成の阻止 と歯垢の除去」, 「 歯肉のマ ッサ
ージと歯周疾患の治療」
,「口腔 内の爽快感」の
3点が挙げられ るが,逆 に欠点もあるoそれは 「 歯
肉の損傷や歯肉の退縮」及び 「 歯質の磨耗 と知覚
過敏」である。 これ らの害を引き起 こす原因 とし
ては
,「 不適切なブラッシング法」
,「 過度のブラッ
シング圧」
,「 ね り歯磨 きのつ けす ぎ」
,「 痛んだ歯
ブラシの使用」 , 「 歯間清掃用具の誤用」等が挙げ
られている
20)。 口腔 内を清潔 に保ち,歯科疾患 を
予防す るために, ブラッシングはかかせないもの
である。 よって,適切なブラ ッシング方法 ・ね り
歯磨 き ・歯ブラシ ・歯間ブラシ等の指導 をしてい
ビデオによる大学生の歯みがきの分析 くことが必要 と考 えられ る。
時間について
,「3分間きっち り磨 くこと」とい うことが求め られているのではない と思われ る。
長い時間磨 くことが求め られているのではな く, まんべんな く磨 くことが求め られているのだ と考 え られ る。ブラ ッシングの 目的 について しっか り 教 えることが重要であろ うと考 えられ る。
うがいについて指導 を受 けた ものは,本研究で は存在 しなかった。ね り歯磨きの指導をす る際, うがいについて も指導 したほ うが よい と考 えられ る。
8.
養教群 との比較
鏡 の使用 において
50%以上の使用率を示 したの は義教群のみであ り,手鏡 を使用 していたのも養 教群のみであった。その他のブラッシング習慣 に ついての結果は どの群 もほぼ同様の結果 となった。
ね り歯磨 きの採取量 において養教群 は男子群,女 子群 よ り明 らか に少ない値であった。各部位 にお けるブラッシング回数 ・時間において養教群はま んべんな く磨いている とい う結果であった。
このことか ら,養教群 は良好な歯科保健行動 を とる傾向があるのではないか と考 えられ る。 これ は健康意識が他の群 よ りも強かった ことと, よ り 詳 しいブラッシング指導 を受 けているため と考 え られ る。 ブラッシング指導 を受 けることによ り少 なか らず影響 を うけている とい うことがわかった。
意識後の養教群 と比較す る と,総時間, ブラッ シング回数 ・時間で有意な差が見 られた。普段の 歯磨 きにおいては男子群,女子群 よ りも良好な結 果であったが,意識 をす ることで更 に良好な結果 にな りうるとい うことがわかった。普段の歯磨 き に全ては反映 されていない とい うことか ら,生活 習慣 にまで影響す るブラ ッシング指導の難 しさを 痛感 した。今後は より実践的な指導が求め られ る だろ うと考 え られ る。
Ⅳ.
ま とめ
将来 ブラッシング指導 にあたるであろ う養護教 諭 を目指す学生が, 日常 どの程度の能力を持 って 自らのブラッシングを行 っているか, またブラッ シング指導 に関 して どの ような課題が残 されてい るかを考察す る目的か ら,養護教諭 を目指す学生
19名,男子学生
16名,女子学生
15名を対象 として, アンケー ト,実態調査を行った。
アンケ‑ トではブラッシング習慣 について調査
157
し, ブラッシングの実態 については歯磨 きの様子 をビデオカ メラに撮影 し,群別,部位別 に比較 し た。その結果次の ことが明 らか となった。
1.定期歯科検診受診率は どの群 も
10%に満たな い値であった。
2.
鏡 の使用率では養教群,女子群 において高い 値 となった。手鏡 を使用 している者は養教群 に
しか存在 しなかった。
3.
ね り歯磨 きの採取量 において養教群は男子群 よ りも有意 に少なかった。
4.
各部位 における平均 ブラッシング回数 ・時間 を群間で比較す る と,男子群 ・女子群ではば ら つ きがあるのに対 し,養教群 は平均的な値であ
った。
5.1
回 目の養教群 と
2回 目 ( 意識後)の養教群 と の比較では,総時間,各部位の回数 ・時間で有 意差が見 られた。
以上の ことか ら,養教群 は男子群,女子群 より も良好な歯科保健行動 を とる傾向がやや強い とい うことがわかった。 しか し,ブラッシング指導の 全てが習慣 として反映 されているわけではな く, 今後の指導の改善 ( ね り歯磨きの採取量, うがい について,歯 ブラシの交換時期等)が求め られ る。
指導 に関 しては, ブラッシングの利点 と欠点 を 踏 まえ, ブラッシングの 目的を明確 にし, より実 践的で正 しい指導 ( 個人に合 ったブラッシング方 法等) をしてい くことが望まれ る。
Ⅴ.参考 文献
1
)丸山進一郎 :学校歯科保健について,保健の科 学
,45(7):495‑498,20032
)本間和代他
3名 :ブラッシングによるプラーク 除去の限界について一歯科衛生士学校学生自 身についての実験結果‑,明倫歯科保健技工学 雑誌
,1 (1):23‑29,19983
)坂本貴史 :歯と口の悩みを解決する本
,20,法
研,20034)
安藤 歩 :アンケー ト調査による定期歯科検診 受診者と非受診者の歯科保健行動の比較,口腔 衛生誌
,53:3‑7,20035)
前掲書
3),576
)前掲書
3),59 7)前掲書
3),618)
松田裕子,近藤いさを,波多江道子編 :歯ブラ シ事典一使い方から介護用品まで何でもわか る‑
,200,学建書院
,20029)
厚生省ホームページ : 平成
11 年保健福祉動向調
158 今 清佳 ・小野 郁 ・森 菜穂子 ・太 田 誠耕
査概要,歯科保健
http://wwwl.mhlw.go.jp/toukei/hllhftyosa̲8/
10)前掲書3),37 12)前掲書9) 13)前掲書3),57
14)坂 本 洋 介 :口腔 内汚 染,21‑23, た ま 出 版, 2001
15)森下真行他5名 :歯学部生のブラッシング習慣 とプラークコン トロールの状況,口腔衛生学会 雑誌,48:277‑284,1998
16)前掲書3),56 17)前掲書14),21‑23 18)前掲書8),66‑68
(2004.7.28