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在マ レーシア 日系企業による中小企業育成

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(1)

在マ レーシア 日系企業による中小企業育成

穴 沢 虞

1985

年以降の急速な円高により我国企業の海外直接投資は増大 し,ー マ レー シアにおいて も電機産業を中心に日系企業の進出が相次いだ。同国に進出 した 日系企業は円高のもと現地調達を拡大 し,現地企業 との取引も増大 した。 これ はマ レーシア政府の希望 と合致するものであったが,同国における日系企業の プレゼ ンスが高まるなか,中小企業育成策の一環 として下請け企業

(Vendor:

ベ ンダー)を育成すべき大企業

(AnchorCompany:

アンカー企業)に日系 企業

6

社が

1993

7

月に指定 された。次いで

1994

年 に入 り,新たに日系企業 を含む21 社がアンカー企業に指定され, これ ら企業 と現地中小企業 とのさらな る連関の強化が企図 されている。本稿では同国の中小企業育成策 とこれに協力 する日系企業の実態を現地調査をもとに考察する。

以下, 第

1

節ではマ レーシアの中小企業の実態 と中小企業育成策を,そ して, 第

2

節では中小企業政策の うちベ ンダー育成プログラム

(VendorDevelop‑

mentProgramme:VDP)

を取 り上げる。第

3

節では日系ア ンカー企業に よるベ ンダー育成の実態を考察 し,最後 に我国企業の国際経営の視点か ら

VDP

の位置づけを探 ることとする。

日系企業の間に企業市民 としてホス ト国の政策に協力す るという姿勢が現れ はじめたことも重要であるが,本稿ではそれに留ま らず,マ レーシア政府が外 資系企業を活用 した

VDP

を進める要因や 日系企業が現地企業の育成にまで

251

(2)

252

第45巻 第 3

踏み込んでゆ く要因まで も捕 らえることに努める。

1

節 マレーシアの中小企業と中小企業政策 1 )

マレーシアにおいて も中小企業の重要性は独立後の早い時点か ら認識 されて お り, これまで種々の政府機関が中小企業の育成に関与 して きた

。 1992

年 に 中小企業関連の諸施策を実施する機関の見直 しと,中心 となる

5

省庁 とその主 要な役割が明確化されるまで実に

13

の省庁 と

30

の機関が何 らかの形で中小企業 育成行政に携わっていた。そ して,各機関が政策の実施 目的に応 じて独 自の中 小企業の定義を設定 していたため,統一された定義す ら存在 しなか ったのであ る。ただ し,一般的には工業調整法の もとライセ ンスの取得を必要 とする最低 限の基準 ( 現在 は資本金 :

250

万 リンギ未満2 ),従業員数 :

75

人未満)がほぼ 中小企業の定義 と同義 とみなされてきた。 しか し, この基準 も時として変更さ れたため依然 として唆昧さは残 ったのである。その結果,中小企業の実態を把 握 し, これ らの育成策をより強化するにあた り,明確な定義の必要性が認識 さ れることとな り,現在では資本金

250

万 リンギ未満であることが中小企業の統 一的定義 とされ,とりわけ資本金

50

万 リンギ未満の企業を小企業 と定義 してい る。マ レーシアの中 ・長期工業化マスタープランでは資本金ではな く従業員数 による中小企業の定義付けが提案 されていたが

3)

, これが採用 され ることは

1

) これまでのマ レーシアの中小企業政策の歴史的展 開について は

CheePengLim

,

STnallIndustryinMal

a

ysi

a

,BeritaPublishing,KualaIJumpur,1986 ch.4

を参照の こと。その他マ レーシアの中小企業政策 について は

IsmailMuhd Sallehand IJatifahRahim eds.,EnhancmgZntra‑IndustryLinkages TheRoleofSmallandMedium ScaleIndustries,InstituteofStrategic andInternationalStudies,KualaLumpur,1992.

及 び

FongCh礼nOnn

,

"IndustrializationinMalaysia:RoleofSmallandMedium ScaleIn‑

dustries,'' inAmbrinBuanged.,TheMal

a

ysiaEconoTny inTransi tion

,

NationalInstitute ofPublic Administration

,

Kuala Lumpur

,

1990.

な どを参考 とした。

2

) リンギはマ レー シアの通貨単位

。1992

年平均 で

1

リンギは約

47.8

,1993

8

時点では41.0円であった。

(3)

在 マ レー シア 日系企業 による中小企業育成

253

な く, さらに, これまで一般に用い られた従業員数が資本金 と併記 されること

も見送 られたのである。

マ レーシアでは1

957

年の独立以降急速 に工業化が進展 したが,中小企業の 重要性の認識 とは裏腹 に製造業部門では相対的に規模の大 きな外資系企業 と公 企業が工業化を牽引す る面が強 く, これ らの製造業 に占める比重 は大 きい

4)。

これは同国が外資に対 して,ある程度の出資比率規制などはお こな うが,比較 的寛容であ った ことや同国の社会,経済政策の要諦 とな るブ ミプ トラ政策

5)

の下マ レ一系住民 ( ブ ミプ トラ)の製造業部門への進 出の受 け皿 として中央政 府や州政府によ り公企業が多数設立 されたことなどによる。 さらに政府の税制 上 の優遇措置 も

1980

年代央 まで は投資額,従業員数 な どが基準 とな るな ど各 種 イ ンセ ンテ ィブも大企業 に有利であ った ことは否 めない

8)。

また,マ レー シア現地企業内では中国系企業の比重が依然 として大 きい ことも同国の製造業 部門の特徴 といえよう

このような状況下での中小企業の実態を記 した限 られ た情報 として は通産省が公表 した1

988

年 の調査があ る 。 これ によれば製造業 部門には

28,335

の企業が存在 し, この うち92

.6%が中小企業であ った。そ し

て, これ ら中小企業 は製造業部門での総雇用の40.2%を 占め,総付加価値 の

19.6%を占めていたO企業数 に比 して雇用 と付加価値 における中小企業の相

対的比重の低 さを読み とることがで きる。また,中小企業における労働生産性 と労働者一人あた りの資本装備額 は大企業のそれを大 きく下回ってお り,中小 企業 において はそれぞれの数値 は11

,900

リンギ と

12,300

リンギであ ったが,

3)UNIDO,MediuTn andLong Term IndzLStrialMasterPlanMalaysia 1986‑1995ExecutiueHighlights,UNIDO,KualaLumpure,1985,p.92. 4

)マ レーシア統計局の

1990

年の工業サーベイによれば外資系企業 は企業数では全サ

ンプルの

14.4%

を占めるにす ぎないが,生産額,雇用者 においてはそれぞれ

44.2

%

,41.7%

を占めていた。同 じく公企業は企業数では

3.4%

,生産額,雇用者では それぞれ

16.6%,7.7%

を占めていた。

5

)マ レー系,中国系,イ ン ド系住民か らなる多民族国家であるマ レーシアにおけるマ レー人優先政策であり,マ レー人の経済的地位の向上を目的 とする種々の政策が含 まれる。ブ ミプ トラとはマ レー語で土地の子を意味する。

6)1986

年 に発布 された現行の投資促進法の もとでは企業規模に関わ りな く法人税の

免除などの優遇措置を申請できる。

(4)

254

45

巻 第

3

大企業の場合はそれぞれ

33,700

リンギと

45,400

リンギであった

7)。

産業別の 分布に関する他の調査では小企業は主に食品,木材,金属加工,建築資材産業 に多 くみ られ,一方,中企業は電機,非鉄,輸送機器,及び食品産業に多 くみ

られた。

マ レーシアにおける中小企業の重要性は現在のマレーシアの経済発展の方向 付けを した第

2

長期展望計画

1991‑2000

や第

6

次マ レーシア計画

(1991‑199 5)

並びに工業化の方向性を規定 した中 ・長期工業化マスタープランにおいて

も指摘されている。さらに,西暦

2020

年までに先進国入 りを目指すという

Vi sion2020

において も中小企業の重要性が説かれている

8)。

これ らにおいては 中小企業の果たすべき役割 として,大企業へ部品などを供給するサポーティン グ ・インダス トリーを形成 し,これによる産業内及び産業間連関の強化に貢献 することがあげられている。さらに中小企業自身の発展により製造業での産業 構造の拡大 と深化が期待されている。換言すればマ レーシアの製造業部門に内 在す る弱点,即ち大企業 と中小企業間の連関の欠如 9 ) ,または裾野産業の不 荏,そして中小企業における前近代的な生産活動の克服が うたわれているので ある。 これ らの うち中小企業側に起因する発展を制約す る要因としては不十分 な資本,経営管理及びマーケテイング能力の欠如,そ して限 られた生産能力 と

7) 数 値 は

Ministry of International Trade and Industry Malaysia

,

MalaysiaInternationalTradeandIndustryReport1993

,

Government Publishing,KualaLumpur,1993,p.188.

によ った。 また,中小企業 に関す

るデータの不足が指摘 されてお り, これが翻 って政策の策定を困難 にす る要因 とも な っている

8)

以下を参照 した。

Malaysia

,

TheSecondOutlinePerspectivePlan1991‑2000,Govern‑

mentPublishing,KualaLumpur,199

1

,p.133.

Malaysla,SixthMalaysiaPlan1991‑1995,GovernmentPublishing

,

KualaLumpur,199

1

,pp.143‑145.

UNIDO,op.cit.,p.83.

Mahathir Mohamad

,

''Malaysla:The Way Forward

,

''in Ahmad SarjiAbdulHamid ed.

,

Malaysia'sVision2020

,

Pelanduk Publica‑

tions,Petaling

J

aya,1993,pp.412‑413. 9)Pong°hanOnn,op.cit.,pp.121‑123.

(5)

在 マ レー シア 日系企業 によ る中小企業育成

255

旧式の技術の使用があげられ,これ らが相侯 って製品の高価格化 と低品質,柄 期の遅れをもた らし,大企業への製品の供給を困難なものにしている。以上か ら引き出される中小企業が直面す る実態面の問題点を通産省の レポー ト

10)

な どか ら抽出す ると以下のものがあげ られる。

・金融機関の融資へのアクセスが容易でない

・劣悪な立地環境 ( 住宅 との混在や不法占拠地での立地など)

・技術支援が受けに くい

・熟練労働力の不足

・ビジネス情報の欠如

・各種支援サービスへのアクセスが容易でない

上記の問題点を解決するためにマ レーシア政府は様々な中小企業支援政策を 実施 してきたが,関係省庁の役割分担の見直 しにより機能的な支援策が遂行 さ れるようになったのは近年の ことであるといえよう。一方,マ レーシアでの民 間活力の利用,民営化の流れに沿 って,長期的には中小企業支援について も民 間企業による支援を充実 させ, これにより政府による直接の支援を徐 々に縮小 し,政府はイ ンフラス トラクチャーの整備など民間企業で代替できない分野に 力を傾注するとしている。また,中小企業育成は工業化政策の柱の一つ となっ ているが, これ も前述のブ ミプ トラ政策の文脈のなかで理解 される必要があ る。特に同政策では商工業部門へのブ ミプ トラの参入促進が企図されているた め,中小企業育成においてもまずその主眼となるのはブミプ トラ企業である点 は留意 されるべきであろう

現行の中小企業政策 は1

992

1

7

日の国家開発委員会のガイ ドライ ンの もとその実施主体はそれまでの1

3

省庁 と

30

機関か ら主要

5

省庁へ と大幅に簡素 化されたが, この統合化,簡素化自体が中小企業政策の‑課題 となるほどこれ まで実施機関が多岐に渡 っていたのである

。1994

年中には中小企業庁の設立 も予定 されているが,現行の中小企業政策において中心 となる

5

省庁 とは通産

10)MinistryofInternationalTradeandIndustryMalaysia,op.cit.,ch.9.

(6)

256

商 学 討 究 第

45

巻 第

3

省,大蔵省,科学技術環境省,人的資源省,総理府であ り, これ ら

5

省庁が中 小企業育成のための以下の

7

つの政策パ ッケージの実施主体 となる

11)0

( a) 市場促進パ ッケージ ( 通産省)

( b) 投資イ ンセ ンティブ ・パ ッケージ ( 通産省)

(C)

技術開発パ ッケージ ( 科学技術環境省) ( d) 人的資源開発パ ッケージ ( 人的資源省) ( e) 金融支援 パ ッケージ ( 大蔵省)

( f ) イ ンフラス トラクチャー整備 ( 総理府)

( g ) ブ ミプ トラ商工業 コ ミュニティー開発パ ッケージ

それぞれの政策パ ッケージはい くつかのより具体的な政策を包含 している が, これ らの政策パ ッケージは独立に機能するのではな く互いに有機的に結合

しあい,全体 として中小企業の発展 に資す るものである。

2

節 ベンダー育成プログラム

(VDP)

本節ではマ レーシアの中小企業育成策の うち,前述の通産省の管轄下にある

(a)

市場開発パ ッケー ジに含 まれ る

VDP

の これまでの経緯,内容 さらに はその特徴 について考察す る

VDP

は国民車の生産を 目的 に

1983

年 にマ レー シア重工業公社,三菱 自動 車, 三菱商事の合弁で設立 された国策企業

PerusahaanOtomobllNasional Berhad

( 略称

Proton:

プロ トン)において

1988

12

月 に開始 されたプロ ト

ン ・コンポーネ ン ト・スキーム

(ProtonComponentScheme:PCS)

にま で遡 ることがで きる。

PCS

の もと同社 はベ ンダーとなる中小企業 ( ただ し,

70%

以上をブ ミプ トラが出資す る企業で従業員の5

5%

以上がブ ミプ トラである

こと)に対する政府融資の窓口となり,さらに育成すべ きベ ンダーの製品を優

ll)実際には制度調整 も政策パ ッケージの一つ に入 ってお り,合計8

個の政策パ ッケー

ジが存在す ることになる。

(7)

在 マ レー シア 日系企業 による中小企業育成

257

先的に購入することとなった

。1993

年の時点でプロ トンのベ ンダーの うち1

9

社が

PCS

の もと政府の融資を受けていた。プロ トンの場合は国策企業である ため,同社によるマ レーシア国民車プロジェク トの目的のなかに自動車関連産 業の育成,発展,裾野拡大 と並んでブミプ トラの自動車産業への参加があげら れていた。そのため意図的にブ ミプ トラ企業,特に中小企業の参加の機会を創 出 してお り,

116

社のベ ンダー中

62

社が中小企業であり,プロ トンの中小ベ ン ダーか らの購入額は

6

5

千万 リンギにのぼっている。また,全ベ ンダーの約 半数がブ ミプ トラ企業であった

12

) 0

プロ トンは

PCS

の対象になるベ ンダーのみな らず他のベ ンダ‑の育成にも 熱心であり,主にベ ンダーへの巡回により個々のベ ンダーの技術力 と品質管理 能力の向上に努め,必要に応 じてベ ンダーが主 として日本企業 と技術提携する 際の橋渡 しもしている

13

)。

この自動車産業 におけるベ ンダー育成に続 き

1992

6

月に電機産業 におい て もVDP ( 電機 ・電子 コンポーネ ン ト・スキームであり,育成の対象 となる 中小企業はプロ トンの場合 と同 じである)が導入 され,地場資本のサプラと日 系の シャープ ・ロキ シーが ア ンカー企業 に指定 された。 ちなみにサプラと シャープは

VDPの もと1994

3

月までにそれぞれ

5

社 と

4

社のベ ンダーを 新たに開拓 している。以上の

3

社のケースでは

VDP

はア ンカ‑企業 と政府 の協力によるベ ンダーの育成,即ち

「2

者協定」(

DualArrangement)で

あり,政府か らのベ ンダーへの融資を伴 った中小企業育成策であった。

これ らに続いてマ レーシア政府 は1

993

年以降の 8年間に新たに80社のアン カー企業により800社の中小ベ ンダーを育成する計画を立て,1

993

4

月に「3 者協定」(

TripartiteArrangement)

というコンセプ トを導入 し,通産省,

アンカー企業,民間金融機関の

3

者の協力による中小企業育成が企図されたの であるOこのコンセプ トに基づき,アンカー企業は選定 したベ ンダーか らの部

12)MinistryofinternationalTradeandIndustryMalaysia,op.cit.,p.

190.及びプロ トンとマ レーシア通産省での ヒア リングによる。

13)

プロ トンでの ヒア リングによる。

(8)

258

第45巻 第 3号

品などの購入を優先す ることにより彼 らに市場を保証 し,必要に応 じて技術や 経営面の支援を行 い,主 にア ンカー企業のメイ ン ・バ ンクである金融機関が必 要な資金の融資を担当,そ して通産省が全体のコーディネー トをお こな うので ある。 この

「3

者協定」の もと,

1993

4

月 にラン ド・ア ン ド・ジェネ ラル が家具のアンカー企業 とな り,続 く

7

月に日系の電機 メーカ

ー6

社がア ンカー 企業 とな った。

これ ら日系ア ンカー企業の選定については,まず通産省か らマ レーシア 日本 人商工会議所 に対 して

VD

p‑の協力要請が あ り, これを受 けて,同商工会 議所の工業部会のメンバーの うち

6

社が参加 の意志を表明す るとい う形で決定 された。通産省 は日系企業のみな らず他の外資系企業 にも同様の要請を してお り,

1994

1

月 に新 たに13 社がア ンカー企業 とな り, さ らに

7

月 に

7

社が加 わ りア ンカー企業の総数 は30 社 となった。 これ ら新規 にア ンカー企業 に指定 さ れた企業 も日系企業を中心 とす る外資系企業であった。

後述す るよ うに1993 年

7

月 にア ンカー企業 とな った 日系企業

6

社 の うち

1

社を除いては典型的な輸 出指向企業であ り,マ レーシアを輸 出基地 とす るため 進 出 した企業である。

VDP

の もと初めて本格的な輸 出指向企業がア ンカー企 業 とな ったのである。 さらに留意すべ き点はこれ らの企業を含めア ンカー企業 は多 くのベ ンダーを持 ちうるものが望 ま しい ことか ら,セ ッ トメーカーがなる ケースが多いことである 。

これ までの経緯 を振 り返 ると第

1

号 のア ンカー企業で あ るプ ロ トンでの

PC

Sの成功が

VDP

の中小企業育成策 と しての有効性 を立証 し,その後 の

VDP

の拡大へ とつなが った といえよ う 。 そ して,通産省 も

VDP

を中小企業 育成策の中心、 に位置づ けてい る

14).

以下で は, まず

VDP

の有す る利点や特 徴を他の中小企業育成策 との相違点に注意 しなが ら明 らかに したい。

1

VDP

の もとでの中小企業育成 は個 々のベ ンダーの育成であ るため その対象が明確であ り,その結果,焦点を絞 りこんだ育成が可能 となる。ア ン

14)

マレーシア通産省でのヒアリングによる。

(9)

在 マ レー シア 日系企業 によ る中小企業育成

259

カー企業側の担当者がベ ンダーに出向き,ベ ンダーに不足す る経営資源がア ン カー企業の目を通 じて把握され,これ らを補 うべ く適切な支援がなされ うるの である。第

2

VDP

ではアンカー企業が総合 コンサルタ ン トの役割を果た しベ ンダーを育成する. これまでの中小企業育成策では,例えばマ レーシア工 業規格研究所が技術面でのコンサルタントとなることはあっても,それはあ く

まで も技術面など企業活動の一側面のみをカバーするものであり,断片的な支 援 しかなされなかったが,

VDP

のもとではア ンカー企業が包括的な支援をお こない,特に

「3

者協定」では資金面は指定 された金融機関が担当することと なる。第

3

にア ンカー企業 によるベ ンダー育成 は政府機関によるそれ と異な り, ビジネスに直結するため,お互いに妥協が許されないという厳 しさと緊張 感が伴 う その うえアンカー企業 とベ ンダーとの取引関係は継続的なものであ るため,指導や支援 も継続的 となり,アフタ‑ ・ケアもおこなわれることとな る。さらに,ベ ンダーはアンカー企業の需要にあわせた計画的な投資が可能 と なるため投資効率が高まると考え られる。

また,

VDP

は視点を変えると前述のマ レーシアの民活化の流れに沿 う外資 系企業の活用 という側面 も持 っ 。即 ち

1980

年代後半以降の外資導入を挺子 と した工業化をより実 り多いものとす るため,プレゼ ンスの高い外資系企業がア ンカー企業 となることによりこれ ら外資系企業 と国内企業の連関の強化を促進 する政策の一環 とも理解され うる。換言すれば,多国籍企業の進出による波及 効果を政府が積極的に創出しようというものである。国連で も多国籍企業の直 接投資による現地企業 との連関の創出を低開発国の工業化の一助 と位置づけて

いるが

15)

,

vDP

もこの流れに合致するものである

さらに

VDP

はル ック ・イース ト政策

16

)を とるマ レ‑シアが我国の系列を 明 らかに意識 してその導入をはかったものである。系列 システムを活用 しての

15)United Nations

,

WorldITWeStTnentReport1992TransnationalCorpo‑

TationsasEnginesofGrowth,UnitedNations,New York,1992,p.120. 16)1981

年 にマハティール首相が唱えた 日本,韓国の経済発展,労働倫理などに学ぼ

うとす る政策。

(10)

260

商 学 討 究 第 45 巻 第 3 号

中小企業育成 または振興策 は既 に韓国,台湾, シンガポールな どのア ジア

Nies

において実施 されてお り

17

),マ レ‑シアが初めてではない。 もちろん我 国の系列 システムをそのまま経済 ・社会環境の異なる同国に単純に移転するこ

とは困難であろう

18)。

マ レーシアという 「 場」に適 した形に変形 したうえで の移転が必要であるが,プロ トンにおけるベ ンダー協会の設立や後述するよう に日系アンカー企業の擁するベ ンダ‑の増大及び協力会の設立が一部でみ られ るなど系列に類 したものの萌芽がみ られる。

3

節 日系アンカー企業によるベンダー育成

本節では

1993

1

1 月の調査を もとに同年

7

月に指定 された 日系ア ンカー企 業

6

社の概要 と現地調達に関連す る事項, これまでのベ ンダー育成を振 り返 り,ついで, これ ら企業の VDPの もとでの現地中小ベ ンダー育成を検討す る。

1

は日系アンカー企業

6

社の概要をみたものである。設立時期をみると,

6

社のうち

B

,

D

2

社を除いては円高以降に進出した比較的歴史の浅い企業 であることがわかる。ただ し,円高以降に進出 した

4

社について もその親会社 は早い時期か ら海外進出を盛んにおこなってお り,特にシンガポールでの子会 社経営に長い実績を持 っている。企業規模を資本金,従業員数か らみると

6

社 ともマ レーシアでは大規模な企業 と言える。 日本側の出資比率はマ レーシア国 内市場を指向 し,操業の歴史 も長 く,株式 も上場 しているD社では低いが,輸 出指向企業である他の

5

社は日欧の合弁であるA 社を除いては日本側の出資比 率が高い。 C社,

E

社においては円高以降に増加 している日本の親会社 とシン

17)

主に高田亮爾 「アジアにおける日系進出企業 と企業間分業関係」 日本中小企業学会 編 『 新 しいアジア経済圏 と中小企業』同友館

1994

年所収を参考 とした。

18)

主に高田亮爾前掲書,小野五郎 「日本 におけ■ る下請生産構造の変遷」北村かよ子編

『 機会産業の国際化 と部品調達』ア ジア経済研究所

1990

年所収,港徹雄 「タイ

における企業間分業 と信頼材の蓄積」北村かよ子編

ASEAN

機械産業の現状 と

部品調達』アジア経済研究所

1992

年所収を参考 とした。

(11)

表 1 日系 アンカー企業の概要

設立年 資本金 (万 リンギ) 従業員 出資比率 (%) (人)

A 88 7,000

日本 50%

他の外資50%

B 72 2,250

日本 80%

現地 20%

C 89 2,000

日本 80%

シンガポール20% D 65 3,250

日本 43.1%

現地 56,9% E 87 3,000

日本 76.7%

シンガポール23.3%

F 88 9,600

日本 100%

(出所)筆者の調査 による。

2,700

1,600

1,600

2,200

5,000

2,100

主要製品 主要市場

AV機器 米国 (70%)

エアコン 米国, 日本, 香港,中東

AV機器 北米 (80%)

アセア ン (15%)

日本 (5%)

国内70%

海外30%

(東南 アジア,日本, 米国,中東)

AV機器 米国 (53%)

欧州 (16%)

AV機器 米国 (45%)

日本 (25%)

中東 (22%)

現地調達率 (金額ベ ース) マ レー シア33%

他のアジア33%

83%

70%

(含むアセア ンか ら の輸入)

50%

60%

その他 シンガポール か ら25%

60%

その他 シンガポール か ら25%

ベ ンダー数 マ レーシア国内50

シンガポール他50

(うち日系33社)

ただ し,金額的には日系かヽb

90%

マ レーシア国内81 マ レーシア企業49

日系企業 29

欧州系 3

海外47

マ レーシア国内 70 マ レー シア企業20

日系企業 50 マ レーシア国内246

マ レーシア企業209

合弁企業 37社 (日系中心)

145

マ レーシア国内企業約90 うちマ レー シア企業は約30 他 は日本, シンガポールなど 海外のベ ンダー。

120

マ レー シア61

(うち 日系39社) シンガポール59 (うち日系51社)

料 ,7

L,I

7

淋 静 継

瑚 熟

(12)

262

商 学 討 究 第

45

巻 第

3

2

日系 セ ッ トメーカーの現地調達率

92年度

0‑10%

ll‑30%

31‑50%

51‑70%

71‑100%

)))))%%%%%131627359(((((

61216445

(出所) マ レー シア 日本人商工会議所貿易投資委員会

『日本 マ レイ シア経済協議会第 16回合 同会議 資料』1993 p.150

3

現地ベ ンダーからの調達阻害要因

回答 セ ッ トメーカー数

品 質

サービス

コ ス ト

84 (47%) 31 (17%)

28

(16%) 21 (12%) 15

社 (8

%)

(注 )複数 回答

(出所 ) マ レー シア 日本人商工会 議所貿易投資委員会前掲書 p.19

0

ガポールの子会社 との合弁の形態を とっている。また,輸 出指向企業の場合, 主要市場は米国, 日本,欧州,アセアンなどとなっている。 日系アンカー企業

6

社の現地調達率 は

33%か ら83%の範囲内にあるがA

社を除いては

50%を超え

ている。表

2

にあるように日系セ ッ トメーカーの

1992

年度 の現地調達率の分 布をみると

51%か ら70%のカテゴ リーが16

社 と最 も多 く,ついで31

%か ら50%

(12

社) となっている。 これ らセ ッ トメーカーは電機 と輸送機器産業に属する

企業が大半を占めると思われ るが, 日系企業の産業別進出状況を勘案すれば,

電機産業のセ ッ トメーカーが中心 となろう

そのなかで 日系ア ンカー企業が特

段現地調達率の高い企業ばか りとい う訳ではない。現地ベ ンダーか らの調達を

阻害 している要因 としては表

3

にあるように品質,納期,サービス,機能, コ

ス トがあげ られ,特に品質に対す る不満が大 きいが, これは日系アンカー企業

において も当てはまるといえる。一方で,

A

,

E

,

F

社のように近隣諸国,特

(13)

在マ レー シア 日系企業 による中小企業育成 表 4 日系企業のベ ンダー数

日他

機 器

1

窯 業

石 油

263

ベンダー数

1‑5 6‑lo 1ト 20 21‑30 31‑50

51‑100 101

社‑

2

4

1

1 4 2

1

= H

Wm九

28

1

一爪「32

3

1

I I

V山叩l一A

T l

1

1

7

1

33

1

3 1

55m

‑ Ⅲ

1

3 7

1

41 5 3 13 82

( 1 ) ( 1

) (3) (

1 ) 助

(5) (

1

) (5) (注)括弧内は日系ベンダー。

(出所)日本貿易振興会クアラルンプール・センターNIES,ASEANにおける日系製造業企業の活動 状況 :マレーシア』日本貿易振興会,クアラルンプール,1992,p.130

にシンガポールか らの調達が多い企業がある。 これ ら企業の場合,既述のよう に同一 グループ内の子会社が シンガポールに早 くか ら進出 していたことも影響

していると考え られる。 日系ア ンカー企業のベ ンダ‑数 は70 社か ら246 社 まで

幅があるが,その数 は表

4

にある日系企業のベ ンダー数 と比較 して も多い。た

だ し,マ レーシア国内のみな らず シンガポールなどの海外のベ ンダー もかなり

の数 にのぼる.また, 日系セ ッ トメーカー全体 としては現地ベ ンダーとの取引

が増大 しているが,取引相手が特定の現地企業に集中 していることも指摘 され

(14)

264

商 学 討 究 第 45巻 第 3号

ている

19

).マ レーシア国内のベ ンダーについて も歴史の古い B 社, D 社を除 いては日系のベ ンダーの比率が高 くなっている事実 も見逃せない。

日系ア ンカー企業の現地調達を考察す るにあたり留意すべ き点はア ンカー企 業の購買 に関す る独立度,自立度である。何故な ら日系アンカー企業の親会社

または, シンガポールの地域統括本部

(OperationalHeadquartor:OHQ)

や国際調達本部

(InternationalProcurementOffice:IPO)

が部品の購入 につ き決定権を有 しているな ら, これ らアンカー企業の自由裁量の範囲は規定 され,現地調達,ひいてはベ ンダーの育成に影響を与えると考え られ, これま で,特に円高以前 には,一般 に輸 出指向企業 は本社の世界戟略に もとづいて

100%

日本側出資の形態で設立 され,部品の調達を含め親会社のコン トロール が強いとされていたか らである。 しか し, ヒア リングの結果,部品の調達は現 地の裁量にゆだね られる面が強 く,

6

社の回答 は概ね これ ら企業の購買に関す る自立度の高 さを示 してお り, シンガポールの

OHQ

IPO

か らの購入 は限 られた ものであ った。 この背景 にはマ レーシア とシンガポールへの 日系部品 メーカーの進出と両国の地理的近接性などにより

OHQ

IPO

の介入を必要 としないほどに両国の経済の一体化が進んでいることがあげ られよう2 0 ).ま た, 電機産業 に属す る大手セ ッ トメーカーの場合, 事業部制をとる企業が多 く, 各事業部 と本社の調整の煩雑 さが

OHQ

IPO

の関与の範囲を狭めているこ

とや,現実に

OHQ

IPO

で周辺国のグループ企業でのアゼ ンブ リーに必要 な多数の部品について,調達元が多様化するなか, これをすべて管理すること は困難であり, これ らが管理す る部品は電子部品,プラスチ ック資材など一部 に限 られるのが実状である。その一方で依然 として現地ベ ンダーか ら供給 され る部品のテス トについては親会社 に依存するケースが多い。

さらに, 部品調達 に関 して特徴的な点 として, 一部のア ンカー企業を除いて,

19)

マ レーシア 日本人商工会議所貿易投資委員会 『日本マ レイ シア経済協議会第

16

回合 同会議資料

』1993

p.190

20)

両国経済の一体化 については青木健 『 輸 出志向工業化戦略 マ レー シアにみ るその

光 と陰』 日本貿易振興会

1993

年 第

6

章を参照の こと。

(15)

在 マ レー シア 日系 企業 によ る中小企 業育 成

5

現地ベ ンダー育成策

巡回指導

自社の技術者派遣 機械機器の貸与 協力会

代表者の日本派遣

繊 維 ・ 同 製 品 ‑

265

機 器

般 機 械

金 属 製 品

空 小

製 品

l

1

1 1

6233

31

1

2

.n

u つ 乱 聖 :

= Ⅳ n 竹 V山

H

‖肌叩

37 20 21 ‑ ‑

1

(出所) 日本貿易振興会 クアラル ンプール ・セ ンター前掲書

シングル ・ソーシンダをあげる事ができる。一定以上の技術力を持つベ ンダー の数が限 られてお り,特定の部品に関 しては特定のベ ンダーがほぼ全量納入す るケースが多 い。

つ ぎに現地ベ ンダ‑の育成についてであるが,表

5

にあるように

JET̲RO

の調査 によれば日系企業 は現地ベ ンダーに対 して企業巡回,技術者の派遣,機 械の貸与などの支援をおこなっている。 日系ア ンカ‑企業

6

社について もアン

カー企業になる以前 におこなっていたベ ンダー育成については日系企業全般で 見 られた育成策 と同 じく基本的にはベ ンダーの巡回や技術者の派遣がその中心 であった。ただ,

B

社 と

D

社 においては特 に充実 したベ ンダー育成をお こなっ ていたので, これ らについて,概要を述べてお く

B 社のケース

同社 は,過去

4

年 にわた り,当初の

2

年間は毎年

10

社の特に問題のあるベ ン

ダーを選び,品質や経営についての監査を毎月お こなって きた。 これにより問

題点が抽出され,それに即 した対策を講 じることができるようになり,成果を

あげている。そのため一昨年 には対象を

15

社に増や し,昨年はさらに

25

社に拡

(16)

266

大 した。

商 学 討 究 第45 巻 第

3

D

社のケース

同社 はこれまで も個別企業の問題点の原因追求や解決 に協力 して きたが,

1989

年か らは親会社の

OBが月 に1

度ベ ンダーを訪れ,実際に不良品をみて 対策を協議 し,それに関連 して組織の改善やベ ンダ‑への動機付 けをお こなっ ている.さらにマ レーシア人の トレーニーが週に 1度 これ らのベ ンダーを訪問 し, フォロー ・ア ップを している

。1989

年 に

5

社,翌1

990

年 にさらに

5

社が 追加 され計

10

社を対象にこのような活動を これまで続けている これによりベ

ンダーの経営者の意欲が 目に見えて向上 した。

これまでの 日系ア ンカー企業の実態を前提 として以下では VDPの もとで

の 日系アンカー企業による中小ベ ンダー育成について考察する。実際にはこれ

ら日系アンカー企業

6

社の間である程度の計画のす り合わせがあ り,大枠では

共通点が多 い。なおかつ,既に各社 ともベ ンダー支援の経験があるため,基本

的にはこれを踏襲す ることになる。具体的には各社 ともベ ンダー育成の担当部

署は購買部を中心 とし, これに経理,技術,品質管理などの部署の人員 も参加

する形式が多い。人数的には購買部の 2名が直接担当す る企業か ら複数の部署

にまたが り

5

名が直接新たな中小ベ ンダー育成に関与す る企業 もある。いずれ

のア ンカー企業 もまずおこな うことは製品の購入を保証す ることであり,その

ために必要な技術支援をお こなうとしている。 これはア ンカー企業か らのエ ン

ジニアや

QC担 当者の派遣 に始 まり,機械 の購入及 び レイアウ トのア ドバイ

スにまで及ぶ。さらには,必要に応 じて本社か らの専門家の派遣や, 日本での

研修を考えている企業 もある。また,ア ンカー企業はセ ッ トメーカーであるた

め特定の部品の生産技術を有 しない場合があるが,その際にはプロ トンのケー

スのように日本の系列企業 による指導やかれ らとマ レーシアのベ ンダーの技術

提携を検討 している企業 もあ った。ア ンカー企業 にとって も現行 の VDPの

もとでの現地中小ベ ンダー育成は初めてのケースであり,担当者 は日本人であ

(17)

在 マ レー シア 日系企業 による中小企業育成

267

るケース多いが, これ らの企業で も今後現地人スタ ッフに担当が移管 されて行 く予定である。なお,アンカー企業は通産省に対 して計画の進展について

3

カ 月に

1

度の報告義務がある。

新規に育成するベ ンダーの分野についてはまだ決定 していないアンカー企業 もあったが,プラスチ ック,ゴム,メタル成型,樹脂,精密部品などが候補 と してあげ られていた。各社 ともまずは

1

社か

2

社のベ ンダーの育成か ら始める 考えであったが, ヒア リング時点での取 り組みの進度 については多少の相違が あり,すでに10 数社の企業を訪問 し, うち

2

社 にサ ンプルの作成を依頼 してい た企業や,具体的に絞 りこんだベ ンダーと今後の中 ・長期計画を共同で作成 し 始 めた企業 もある反面,ベ ンダーの選定 はこれか らとい う返答をす る企業 も あった。概 して 日本人マネージャーが率先 してベ ンダーを開拓 している企業に おいて進展度が高いように思われる。育成の対象 となるベ ンダーは当初 ブ ミプ トラ企業 とされていたが,その後マ レーシア資本が70%以上である中小企業に 変更された。 しか し,同国のブ ミプ トラ政策を考慮 し,各社 ともブ ミプ トラ企 業を選定する予定であった。

日本人マネージャー らとの ヒア リングで彼 らが強調 していたことは,

VDP

の もとでの中小ベ ンダー育成の成否はベ ンダーの経営者の意欲にかか っている という点であった。換言すればそれ以外の経営資源はアンカー企業の支援によ り獲得で きるということである。 これまでのベ ンダーの育成 と異な り

VDP

の もとでの育成は政府の中小企業育成策に協力するものであるか ら,当然の こ となが らベ ンダー育成の義務が生 じることとなる。そのため, これまで以上の エネルギーを傾注せねばな らないとの認識があるの も事実である。 しか も現行 の制度の もとではアンカー企業に対 して何 らかの優遇措置が与え られ る訳では ない。

前述のように

「3

者協定」の もと

VDP

に参加す る民間金融機関はア ンカー企

業 のメイ ン ・バ ンクであ り,彼 らは今回の

VDP

の もと利子率

5%

の特別

ローンをベ ンダーのために用意 している。そ して,通産省はベ ンダー候補企業

の リス トをア ンカー企業に提示することをは じめとして全体のコーディネー ト

(18)

268

45 3 をおこな う

日系アンカー企業

6

社の

「3

者協定」の もとでの中小企業育成は緒についた ばか りであるが,過去のプロ トンなどの

「2

者協定」によるベ ンダー育成が成 功を納めていることなどを勘案すれば,民間金融機関が参加することを除いて 基本的に同様なプログラムであり,前例 もあるため一定の成果 は期待できよ う 。 また,アンカー企業 はいずれ も大企業であるため

VDP

の もとでのベ ン ダー育成に伴 う負担増にもある程度対処 しうるであろう

しか し,実行面でア ンカー企業が直面す ると思われる

VDP

自身が内包す る問題点 も指摘 され う る。第

1

点 として, これまでの

VDP

では私企業 としての協力の範囲が明確 ではないように思われる。今後の問題 となろうが,ア ンカー企業がベ ンダー育 成についてどれだけの期間,そ して,どの段階まで支援を継続するか も検討を 要するであろう

第 2にこれまでのこれ ら日系アンカー企業のベ ンダーは必ず しも中小企業でな く,アンカー企業の要求に答えることができる中堅 クラスの 企業が多かったことと,それ らの中には中国系企業が多かったことが指摘され ており,企業規模や経験,技術力の面での違いか ら,今後のブ ミプ トラ中小ベ ンダー育成が必ず しもこれまで通 りには行かない可能性 もある。第

3

としてベ ンダーとなりうる現地中小企業の数が限 られると予想されるため,アンカー企 業間で

VDP

の もとで育成 しようとす るベ ンダーが重複す る可能性がある。

この点についてはアンカー企業間並びに通産省の間で事前の調整が必要 となろ

う。

第 4 節 国際経営と VDP

日系企業による現地ベ ンダー育成の進展 は円高後の 日本企業の国際経営戦略

の変化によるところが大 き く,

VDP

下の 日系ア ンカー企業による中小ベ ン

ダーの育成 もこの延長線上 に位置す る。 これ らをマ レーシアにおける企業間

ネ ッ トワーク

2

1 )の拡大 と捕 らえ,前節でみたセ ッ トメーカーである日系ア ン

カー企業

6

社を含め,対マ レーシア直接投資の主役である電機産業を中心 とし

表 1 日系 アンカー企業の概要 設立年 資本金 ( 万 リンギ) 従業員 出資比率 ( %) ( 人) A 社 8 8 年 7 , 0 0 0 日本 5 0 % 他の外資 5 0 % B 社 7 2 年 2 , 2 5 0 日本 8 0 % 現地 2 0 % C 社 8 9 年 2 , 0 0 0 日本 8 0 % シンガポール 2 0 % D 社 6 5 年 3 , 2 5 0 日本 4 3

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