(91)
人 間 と魚類 の血清蛋 白質 に関 す る 比 較 生 化 学 的 研 究
斎 藤 要
緒 言
血 液 は 血 管系 を通 じて生 体 内 を 速や か に 循環 し,組 織 とか 器 管 の内 部環 境 の一 部 と して生 命 現 象 の維 持 に あず か る複 雑 な流 動 体 で あ る。 血 液 か ら細 胞 (主 と して血球)を と り除 い た 液 体 は血 漿(plasma)で,血 漿 よ りfibrinを 除 い た液 体 を 血 清(serum)と 称 す る。
血 清 は多 くの無 機 及 び有 機 の化 合物 を 含 む 複雑 な コ ロイ ド溶 液 で,血 液 が 生 体 内 を循環 してい る時 は血 球 を浮 か べ,ま た 生 体に 必 要 な,あ るい は不 必 要 とな った物 質 の運 搬作 用 を な し,そ の一 成分 で あ る血 清蛋 白質 は栄 養,免 疫 及 び体 液 調 整作 用 な どに 関 与 す る血液 の基 本 的 構 成物 質 で あ る とい わ れ て
(1)
い る。 従 っ てそ の理 化学 的 性 質 に つ い て動 物 の分 類 学上 の位 置 に よる種 族特 異 性 の右 無 を検 討 す る こ とは 単 に 比較 生 化 学 的 な立 場 よ り興 味 深 い研 究課 題 で あ る のみ な らず 動 物 の生 理,生 態 的 な諸 現 象 を 理 解す るた め の基礎 資料 と
して も価 値 あ る もの と思 わ れ る。
従 来,血 清 蛋 白質 の理 化 学 的 性 質 に関 す る研 究 は,人 間 を は じめ とす る陸 棲 脊 椎 動 物 を対 象 と した もの が多 く,下 等 脊椎 動 物 で あ る魚 類 を対 象 と した 研 究 は 極 め て 少 な い。 また単 に 魚類 と称 して も,そ れ に は 分 類学 上 の位 置 を 異 にす る硬 骨 魚 類 と軟 骨魚 類 とが あ り,さ らに棲 息 環 境 を異 にす る淡 水 魚 類 と海 水魚 類 とが あ る。
著 者 は,こ れ らの脊椎 動 物 相 互 間 の生理,生 態 的 諸 現 象 に は著 しい相 異 が
(1)F・Wuhrmann,C・Wunderly:"DieBluteiweissk6rperdesMenschen"
BennoSchwabeCoりBasal,(1952),p.141.
あ る こ とか ら,そ れ と の関連 に お い て血 液 の諸 性 質 に お け る種 属 特 異性 に 関
(2)貞r(15)
す る研 究 を続 け,若 干 の結 果 を報 告 して きた が,本 論 文 で は血 清 蛋 白質 の組 成 に つ い て 比較 生化 学 的 立 場 よ り検 討 して得 た 結果 の要 約 を述 べ る こ とにす
る。
1実 験 の 部
実 験 材 料:
実 験材 料 は 人 間及 び魚 類(15種)と もに 成 体 で,同 種 の材 料 に は 出来 得 る 限 り,棲 息 環 境,採 集 の時期,そ の他 生 理,生 態 的諸 条 件 の類 似 した もの を 使 用 し,特 に採 血 時 に苦 悶 の激 しか った 個 体 は 除 外 した。 そ の理 由につ い て
(4)
は 既 に報 告 して あ る。
採 血 法:
人 間 は常 法 に よ り,ま た 魚類 は 鯛孔 の後 部膜 を切 開 して心臓 を幾 分 露 出 さ せ,注 射 針 を動 脈 球 か ら心室 の方 向に 入 れ,心 臓 の縮 期 に 従 って採 血 した 。
血 清 の分 離 法:
血 液 を冷 蔵 庫(4〜6℃)の 中 に約6時 間 放 置 した の ちに 遠 心 分離(3000 rpm,10分 間)し て得 られ る血 清 を使 用 した 。
皿 血 清 蛋 白量 と血 清 非 蛋 白態 窒 素 量 にみ られ る種 属 特 異性
著者 は既に人間 と魚類 の血液及び血漿の蛋 白量 につい て検討 した結果 を報
(4)
告 して い るが,さ らに血 清 蛋 白質 の組 成 を検 討 す るに 先 立 ち 供試 血清 に つ い て蛋 白量 と非 蛋 白態 窒 素量 を求 め た と ころ,そ れ らの量 に 種 属 的差 異 の あ る こ と と血 清蛋 白計 の 使 用 は供 試 動 物 の種 類 に よ って吟 味 す る必要 の あ る こ と
(2)斎 藤 要:日 水 誌,19,1134(1954).
(4)同 誌,20,196(1954).
(6)同 誌,20,881(1955).
(8)同 誌 、22,752(1957).
㈹ 同 誌,22,768(1957).
働 同 誌.24,531(1958).
αの 同 紀 要,7,192(1959).
(3)同 誌,19,1139(1954)。
(5)同 誌,20,202(1954).
(7,同 誌,20,885(1955).
(9)同 誌,22,760(1957).
ω 同 誌,22,773(1957).
⑱ 鹿 児 島 大 学 紀 要,5,160(1957).
㈱ 同 紀 要,9,1(1961).
人間と魚類の血清蛋白質 に関す る比較生化学的研究(斎 藤) (93) を 明 らか に し得 た。
実 験 方 法:
(16)
蛋 白 態 窒 素 及 び 非 蛋 白態 窒 素 の 定 量 は 標 準 法 で あ るMicro‑Kjeldahl法 を 用 い,さ らに 日立 製 蛋 白 計PRP‑B型)に よ る 測 定 も併 用 した 。 ま た 尿 素
(17)
及 びtrimetheylamineoxideは,そ れ ぞ れUrease‑Nessler法 とDyer改
(18),(19)
良 法 に よ り定 量 した 。 実 験 結果 及 び 考 察:
供 試 血清 に つ い て蛋 白態 窒 素量 と非 蛋 白態 窒 素量 を求 め た結 果 の数 例 を 示 す と第1表 の如 くで あ る。
第1表 供試血清の蛋白態窒素量 と非蛋白態窒素量
供 試 動 物(♂) 実 験
例 数
態量の白素海8蛋窒( 態量の響
人 間
1・1 1.18 31コフ
イCyprinuscarpio ナCarassiusauratus
ク ロ カ ジ キ ゴ マ サ バ
チ ダ イ
ヒ メ ダ イ
Makairamazara
Scombertapeinocephalus Evynnisjaponica
Pristipomoidesfilamentosus
シ ロ ザ メMustelusgriseus ア カ エ イDasyatisakaJei
5611 n610621← 3∠01
0.82 0.79 0.95 1.01 0.86 0.82 0.51 0.53
4・2414︒ 4.ノ03ワσ∠0/0戸∂ζソ
1115 1204
この 結果 か らも蛋 白量 に は 人 間が 魚 類 よ りも多 い傾 向 の あ る こ とが理 解 さ れ る。 また15種 の魚 類 に つ い て検 討 した結 果 で は,活 動性 の 洞游 性 魚類 は 非 活 動 性 の魚 類 よ り一 般 に多 く,さ らに顕 著 な差 異 は シ ロザ メの如 き軟 骨 魚 類 で は,人 間 の約%量 を示 す とい うこ とで あ る。 この よ うな 種属 的差 異 は 単 に 血 清 蛋 白量 のみ な らず 血 液総 蛋 白量 と相関 性 の高 い特 数(赤 血 球 平 均 恒
㈹ 京 都 大 学 農 学 部 農 芸 化 学 教 室 編 集:"農 芸 化 学 実 験 書",中 巻,産 業 図 書,東 京(1951)P.505.
(1丁 斎 藤 正 行:"光 電 比 色 計 に よ る 臨 床 化 学 検 査",南 山 堂,東 京(1962)p,94,
⑬ 佐 々 木 林 治 郎,藤 巻 正 生:日 農…化 誌,27,420(1953).
⑲ 斎 藤 要,鮫 島 宗 雄:日 農 化 誌,30,531(1965),
(14)(4)(4)
数,hemoglobin量,血 漿 蛋 白量)に もみ られ るの で あ る。
な お,第1表 の結果 は ほぼ 同時 期 に採 集 した成 体(♂)に つ い ての 測定 値 で あ るが,人 血清 に関 す る報 告 に よる と時 期 とか 成 長過 程 で多 少 の変 動 のあ
(20),(21)
る こ とが 知 られ て い るが,魚 類 で も同様 な傾 向 の認 め られ る こ とに つ い て は
(12)
既 に 報 告 して あ る。
つ ぎ に,動 物 の 血 清 中 に は 蛋 白 質 以 外 の 窒 素 化 合 物 と して 尿 素,ア ミ ノ 酸,尿 酸,ク レ ア チ ニ ン,ク レ ア チ ン,ア ン モ ニ ア な どが 含 ま れ て お り,そ
の 多 くは 蛋 白代 謝 の 中 間 産 物 ま た は 終 末 産 物 で あ る。 供 試 血 清 に つ い て 非 蛋 白 態 窒 素 化 合 物 の総 量 を あ らわ す 窒 素 量 を 求 め た 結 果 の 数 例 を 示 す と 第1表 の 如 くで あ る。
こ の 結 果 か ら も非 蛋 白 態 窒 素 量 に は 蛋 白 量 とは 逆 に 人 間 が 魚 類 よ り も 少 な い 傾 向 の あ る こ とが 理 解 され る 。 ま た15種 の 魚 類 に つ い て 検 討 した 結 果 で は,一 般 に 海 水 魚 が 淡 水 魚 よ り多 く,さ らに 顕 著 な 差 異 は シ ロザ メの 如 き軟 骨 魚 類 で は,人 間 の 約35倍 量 を 示 す とい う こ とで あ る。 こ れ らの 軟 骨 魚 類
の 非 蛋 白態 窒 素 化 合 物 の主 成 分 が 尿 素(且2NCONH2)及 び 七rimethylamine oxide((CH3)vN→0)で あ る こ と は 第2表 の 結 果 か ら明 らか で あ る。
第2表 シ ロザ メ(Mustelusgriseus)と ア カエイ(Dasyatisakajei) の血 清 に含 まれ る非蛋 白態窒 素の組成
供 試 動 物(δ)
シ ロ ザ メ
Mustelusgriseus
ア カ エ イ
Dasyatisakajei
実 験 例 数
くゾ2り
非 蛋 白 態 窒 素 量
(mg/dの
1021 1198
態量の
素素蜘ω尿窒
762 895
Trimethyla‑
mineoxide 態 窒 素 量
(mg/dの
208 256
揮発性塩基 態 窒 素 量
(mg/dの
0陶16∠‑
軟 骨魚類では 血液 のみ な らず 筋肉に も 非蛋 白態窒 素量が 極 めて多い こと
く ラ く ラ
は,既 に1920年 代 にDenisと かSmith氏 な ど に よ っ て 報 告 さ れ て い る 。
⑳ 福 山 忠 昭,村 田 達 雄:山 口 臨 床 医 学,1,25(1953).
⑳ 芳 我 考 一:慈 大 杉 本 生 理 論 文 集.4,498(1961).
勘w・Denis:J・BioLchem・,54,693(1922)・
㈲H・w・smith:J.BioLchem.,8L407(1929)・
人間と魚類め血清蛋白質に関す る比較生化学的研究(斎 藤) (95) 尿 素 は,人 間 で は 前述 の如 く蛋 白代謝 の終 末 産 物 と して排 泄 され るが,こ れ
らの魚 種 で は,両 化 合物 を 体 内に 保持 す る こ とに よって 体液 の滲 透圧 が海 水 よ りもや や 高 くな って い る。 この滲 透圧 勾 配 が 水 の体 内 に入 るのを促 し,体 内か ら尿 素が 逸 失 す るの を ふせ ぐた め に 尿素 に 対 し不 透 過 性 の 鰐 を もって お
り,ま た 尿 中 へ逃 げ 去 るの を ふせ ぐた め に 腎 管 の 中に特 別 な尿 素 吸収 節 を 有 して い る。 即 ち軟 骨 魚 類 は 硬 骨 魚 よ り 分類 学 上 か ら 下 等 とい わ れ て い るが 棲 息環 境 に対 しよ り合理 的 な 滲透 圧 調 整 機 能 を 有 して い る ともい え るので あ る。
人 血清 以外 へ の蛋 白計(屈 折 法)使 用 の吟 味:
血 清 蛋 白濃 度 の定 量 法 と して,標 準 法 のKjeldahl法 は操 作 が 繁 雑 で,し か も時 間 を要 す るた め に最 近 は 簡 易 測 定法 と して蛋 白計 法 が盛 んに 用 い られ
る よ うに な った 。本 法 は,蛋 白濃 度 と屈 折 率 との間 に比 例 的 な関 係 の あ る こ とを利 用 した方 法 で,血 清 の使 用 量 が二,三 滴 です み,複 雑 な操 作 が 全 くな い ため に 測 定 誤 差 の導 入 され る余 地 が 少 く,正 確 な測 定 値 が 得 られ る とい わ
(24)6》(26)
れ て い る。 著 者 も 本 実 験 で 日立 製PRP‑B型 蛋 白 計 の使 用 を 試 み た と こ ろ, 第3表 に 示 した よ うな 結 果 を 得 た 。
第3表 供試 動物 の屈折法 とMicro‑Kjeldahl法 に よ る血清蛋 白測定値
供 試 動 物(6) 実 験
例 数
血清総蛋白質量(3/dの
*Micro一
屈 折 法
Kjeldah】 法
人 間
6 7・71 7.2コ イCyprinuscarpio 6
5.4i
5.1ゴ マ サ パScombertapeinocephalus マ ア ジTrachurusjaponicus
6くゾ
シ ロ ザ メMustelusgriseus ツ ノ ザ メSqUalusmitsukurii.
ア カ エ イDasyatisakajei
5く)∠0
7.1 6.6 5.2 5.6 5.8
6.8 6.1
3.5 3.2 3。O
*日 立 製蛋 白計(PRP‑B型)に よる測定値
e4)吉 川 春 寿:日i新 医 学,34,6(1957).
㈲ 藤 井 暢 三:"生 化 学 実 験 法"南 山 堂,東 京(1955),p.514.
㈲ 入 沢 宏,入 沢 彩:広 島 医 学,7,436(1964),
即 ち,・供 試 血 清 の な か で 人 間 と か 硬 骨 魚 で は,1(jeldah1値 と の 間 に 大 差 は な い の で あ る が 軟 骨 魚 の 血 清 で は,蛋 白 計 値 が1(jeldahl値 の1.5倍 か ら2 倍 を 示 す の で あ る 。 こ の 事 実 か ら して も蛋 白 計 法 は 供 試 動 物 の 種 類 に よ っ て は 正 確 を 期 し難 く,そ の使 用 に は 吟 味 を 要 す る こ とが 明 らか で あ る。 も と も と本 法 は 血 清 中 の 蛋 白 質 以 外 の 成 分 濃 度 が ほ ぼ 一 定 で あ る と い う仮 定 の も と に 考 案 され た も の で あ る が,前 述 の 如 き 異 常 の ず れ は 人 間 と軟 骨 魚 の 非 蛋 白 態 窒 素 量 に み られ る 種 属 特 異 性 と関 連 の あ る 現 象 と考 え られ る。 そ こで つ ぎ の 検 討 を 行 っ た 。
軟 骨 魚 の 供 試 血 清 を 燐 酸 塩 緩 衝 液(Mo1/15KH2PorMol/15Na2HPo4
混 液,PH7.3)に 対 し約4℃ で10時 間 透 析 した 試 料 に つ い て 蛋 白量 を 求 め る と蛋 白 計 値 がKjeldahl値 の1.2倍 か ら1.3倍 を 示 し,原 血 清 に み られ た 大 差 が 消 失 す る の で あ る。 こ の 結 果 よ り蛋 白 計 の 異 常 な ず れ に は,尿 素 量 と か t「imethylamineoxide量 が 関 係 し て い る こ と は 明 らか で あ り,さ らに 試 料 の 血 清 蛋 白組 成 に み られ る 種 属 特 異 性(後 述)も 無 視 し得 な い 一 因 を な して い る と思 わ れ る。 従 っ て,本 実 験 で はKjeldah1法 に よ り蛋 白 量 を 求 め た が,
(26)
と きに は脊椎 動 物 は勿 論,無 脊 椎 動 物 の体 液 蛋 白量 を蛋 白計 で測 定 した報 告 もみ うけ るが,そ の結果 に は疑 問 が あ る。 また 人 間 の場 合 で も腎不 全 に よ り 尿 素量 が増 加 した 血 清 では,そ の影 響 は 当然 考 え て お くべ きで あ ろ う。
皿 血 清 蛋 白 組 成 に み られ る 種 族 特 異 性 1.Tiselius法 に よ る分析
前述 の如 く供試 血 清 の蛋 白量 に はか な りの 種属 的差 異 が 認 め られ るの で あ るが,そ の差 異 の生 化 学的 意 義 を知 るた め に は 同蛋 白 の組 成 に つ い て検 討 す る こ とが必 要 で あ る。
近 年,蛋 白質 の理 化学 的 研 究 法 の進 歩 に伴 い蛋 白質 の分割 に 電気 泳 動 法 が
使 用 され る よ うに な り,そ の混 合 系 を 分析 して量 的 組 成 や蛋 白成 分 の種 類 を
決 定 す る こ とが 比 較 的迅 速 か つ 正 確 に 行 い 得 る よ うに な った 。 特 にTiselius
法 は再 現 性 の あ る分 析 法 と して一 般 に 用 い られ てい る。 本 法 に よ る血 清蛋 白
人間と魚類の血清蛋白質 に関す る比較生化学的研究(斎 藤) (97) 質 の組 成 に 関す る研 究 は 多 数 あ るが,そ れ は 高 等 脊椎 動 物 を 主体 と した も ので 下等 脊 椎 動 物 に つ い ての 研 究 は 極 め て少 な い。 特 に海 産 の 硬 骨 魚 と軟
(27) 骨 魚 を 対 象 と した 系 統 的 研 究 は み あ た らず,僅 にDeu七sch&Gooloe氏,
く ラ
Deut8ch&McShan氏 な どが 各種 の陸 棲 脊 椎動 物 と共 に 淡 水 産 の コイ及び ナ マ ズ な どに つ い て報 告 して い るに 過 ぎな い。 そ こで 著 者 は,こ れ らの淡 水 魚 とは棲 息 環 境 と分類 学 上 の位 置 を 異 にす る13種 の 海 産 硬 骨 魚 と 軟 骨 魚 を 主 体 と し,本 法 に よ り血 清蛋 白質 の分 析 を 行 った と ころ,人 間 とは勿 論,魚 種 問 に も種 属特 異 性 の あ る こ とを 明 らか に し得 た 。
実 験 方 法:
(2)
既 に 報 告 した 如 く,人 間 に 比 べ て 魚 種 の 赤 血 球 は 一 般 に 溶 血 し易 い た め 分 離 した 血 清 がhemoglobinに よ っ て 着 色 す る こ とが あ る 。 ま た,そ の 血 清 に も 人 間 の 血 清1ipamiaに 類 似 した 梱 濁 現 象 が しば しば み られ た 。 こ の よ うな 血 清 よ り得 られ た 泳 動 図 で は α一910bulinあ る い は β一globulin区 分 附 近 の 泳 動 峰 が 増 大 す る傾 向 も認 め られ た の で,分 析 値 に 少 な か らぬ 影 響 を 与 え る と 思 わ れ る程 度 に 溶 血 あ る い は 個 濁 した 血 清 は 除 外 した 。
泳 動 装 置 と泳 動 条 件:供 試 血 清 の 泳 動 に は 日立 製Tiselius装 置(HT‑B
(29)
型)を 用 い,電 気 泳 動 研 究 会 の標 準 法 に 準 拠 した 条 件 で実 験 を 行 った 。 本 法 で は,泳 動試 料 の前 処 理 と して燐 酸 塩 緩 衝 液(Mol/10KH,PO、1容 一Mo1/
10NaユHPO416容 混 液,pH8.0,μ0.28)で 稀釈 して か ら,セ ロフ ァン紙 嚢 に 入 れ,40倍 量 のMol/20同 緩 衛 液 に対 して約4℃ で20時 間透 析 す るので あ るが,軟 骨 魚 の血 清 に は 透析 操 作 の過 程 で す ら析 出す る特 殊 な蛋 白質 が 存 在す る とい う 興 味 深 い現 象 が 観 察 され た。 この蛋 白質 に つ い ては 後 述 す る が,本 泳 動 に は,そ の透 析 上 澄 液 を用 いた 。
実 験 結 果:
本 泳動 条 件 下 に おけ る血 清蛋 白質 の泳 動 過 程 を観 察す る と,各 試 料 ともに
鋤H.F.Deutsch,M.B.Goodloe:J.Bio】.chem.,161,1(1945).
H.F.Deutsch,W.H.McShan:J.Bio】.Chem.,180.219(1949).
鋤 電 気 泳 動 研 究 会:生 物 物 理 化 学,2,392(1964).
第1図 供 試 動 物 の 血 清 蛋 白 泳 動 図
fTこ5eし こus法
⊥」墨盤 出Aカ サパ伽 励 自L
ρ,吻廟D A 如 ア ジ̀・Utnvsn"nvad、8・D
⊥ ▲ ▲̲̲一 一.̲」 ▲
A‑一 一;一 一r‑一一 一一・一'1)
マ ダ'1(ピbUysophrys殉 卯}
⊥ 」̲、̲一ム 一 」▲‑D
マ ア ジr77α ぐ加7〃5メapefiiCUS}
▲ 一̲」N〜 一 」L
A ,イ 吻 殉 、c,rPt・'D
」L幽 一一L▲
A
シ 、i・・fY・N。St・U,・g・iStv・)D
⊥̲̲、 一 ▲△一̲
A‑ ・ ゲ ・一 ・・脚 ・・D鉱tVl・vr/tSqutusm・f輔D
嶋 岬 一 嶋 語葺
泳動条 件:燐 酸塩緩衝UepH7.8,μ0.14,電 流強度0,27mA/mm2,泳 動時 間上 昇 脚3㎜ 秒,下 降脚3300秒,泳 動温 度10℃,蛋 白質濃 度1.6〜1.89/de.
泳 動 開 始 後30分 は 成 分 の 分 離 が 一 般 に 不 充 分 で,約45分 後 よ り 良 好 とな る。 つ ぎ に 泳 動 開 始 後50分(上 昇 脚)及 び55分(下 降 脚)に 撮 影 した 供 試 血 清 の 泳 動 図 の 数 例 を 示 す と第1図 の 如 くで あ る。
こ の 結 果 に よ る と供 試 動 物 の 種 類 に よ り泳 動 図 に は か な りの 差 異 が 認 め ら れ る。 ま た 同 一 血 清 で も上 昇 脚 ㈲ と下 降 脚 ⑪ とで は 濃 度 勾 配 曲 線 の 形 が 異 な り,両 者 間 に 鏡 豫 的 な関 係 は み られ な い 。 一 般 に 上 昇 脚 は 下 降 脚 よ り も泳 動 速 度 は 早 く,且 つ 各 成 分 の 分 離 能 も 良 好 で あ る 。
蛋 白質 の 分 類:Tiselius氏 に よ っ て 人 間 の 血 清 蛋 白 質 は 電 気 泳 動 的 に は 易 動 度 の 順 にalbumin,α 「 β一,及 びr‑‑globulinに 分 け られ る こ とが 明 らか に
(30)
され て い る。 本 泳 動 条 件 下 で も人 間 の血 清 蛋 白質 は 前記4区 分 に分 離 す る こ
⑳A・Tiselius:Biochem・Jり31,313(1937)・
人間 と魚類の血清蛋白質に関す る比較生化学的研究(斎 藤) (99) とは第1図 の結果 か ら明 らか で あ る。 と ころで 泳動 分析 に伴 う一 つ の 制約 と して,あ る成 分 の量 的 な変 化 か ら,そ こに含 まれ る質 的 な変 化 の 内容 を 充 分 に知 る ことが 出来 な いた め泳 動 峰 の数 と蛋 白組 成 との関 係 に つ い ては 現 在 も な お種 々議 論 され てい る。 この 点 がTiselius法 に よって,異 種 動 物 間 の蛋 白
、
組 成 を比 較 検 討 す る場 合 の問 題 点 で あ るが,著 者 は 易 動 度 の近 似値 な成 分 を 一 群 と してf ,1,ll,皿,IV及 びN'の 各 区 分 に分 類 して論ず る こ とに した 。 供試 血 清 に つ い て蛋 白濃 度 比 と相対 易 動 度 を求 め た 結果 の数 例 を 示 す と第 4表 の如 くで あ る。
第4表 供試血 清蛋 白質 の濃度比 と相対 易動度(Tiselius法)
供 試 動 物(♂)
コ イ
Cyprinuscarpio
フ ナ
Carassiusauratus
マ グ ロ
Thunnusthynnus
コ マ サ ハ
Scombertapeinocephalus
シ イ ラ
CoryphaenahipPurus
マ ダ イ
Chrysophrysmajor
シ ロ ザ メ
Mustelusgriseus
ツ ノ ザ メ
Squalusmitsukurii
人 家
間 兎
験数実例
14
4
8
12
5
7
6
10
8
成 分
月1[ ■ 皿1州Iv'
55.7 96.0 53.4 99.5
角∠Q/
67'ーウず 03
りーnO‑り♂
20.5 56.3 25.5 58.1
7.6 36,9
4.1 39.2
* Alb.
Glob.
54.3 122.4 47.4 118.6 41.5 120.3 34.8 120.4
4
16.219.4 101.578.9
1課ll:毒
23.226.6 102.377.3 37.018.4 96,175.5
Alb.
56.8 100.0 58.2 102.4
35.9 83.5 33.3 84.0
Glob.
8.1 79.2
8.7 76.6
Qノー▲33
ワ'Q/84‑ご﹂ご﹂ 7︻﹂弓〜
884﹂5
5.1 54・9134・6
11.1 63.7 7.2 67.3
19.4 48.9 24.6 46.2
1.3
1.1
丙∠!0
2/Ol 01
う白リノー
β一G lob.
14.6 60.5 10.8 62.3
33.6 17.9 34.9 18.4
7‑Glob・
22.5 21.5 20.3 21.8
2.4
2,1
1.8
2.5
1.3
1.4
各 供 試 魚 共 に 上 段 の 数 値 は 濃 度 比,下 段 の 数 値 は 相 対 易 動 度 を 表 わ す.
*区 分f及 び1をalbumin区 分 と し て 求 め た 値 を 示 す .
泳 動 条 件:M/20燐 酸 塩 緩 衝 液pH7。8,μO.14.電 流 強 度0.27mA/mm2,泳 動 時 間3300秒,泳 動 温 度10℃,蛋 白 質 濃 度1.6〜1.S9/d2.
相対 易動 度:人 間 の血 清albuminの 移 動 量 を100と して 求 め た 各 成 分 の 相 対 易 動 度 を供 試 血 清 に つ いて検 討 す る と,海 産硬 骨 魚 に属 す る ゴマサ パ な どの血 清 で は 高易 動 度 区 分 に 人 間 の血 清albUminよ り易 動 度 の 高 い区 分f が 認 め られ るのに 対 し淡 水産 硬 骨 魚 に 属す る コイ な どの血 清 では ∫区 分 の 存 在 を確 認 出来 なか った。 また軟 骨 魚 に 属す るシ ロザ メな どの血 清 で は 区 分 ∫ の み な らず,そ の易 動 度 か らみれ ば 人間 の血 清albuminに 相 当す る区 分1
もみ られ な か った 。 即 ち これ らの血 清 に は,泳 動 的 にglobulin成 分 しか 認 め られ な い とい う顕 著 な種 属特 異 性 の あ る こ とが 了 解 され る。
つ ぎ に 低 易動 度 区 分 の組 成 を み る と人 間 と魚 類 間 に は か な りの差 異 が み ら れ,特 に軟 骨 魚に はIV及 び1V'区 分 が 明 らかに 認 め られ る。
濃 度比:供 試 血 清 の泳動 図 よ りplanimeter法 で求 め た 各 区分 の平 均 濃 度 比 を 第4表 に併 記 した。 な お供試 動 物 に つ い て成 長 度 とか採 集 時 期 のほ ぼ 等 しい 同種 の個 体間 で は 濃 度 比 が比 較 的 一 定 であ る ことを確 認 して い る。 第4 表 の結果 に よ る と淡 水 産 硬 骨 魚 に属 す る コイ の血 清 で は,人 間 の場 合 と同様 に 易動 度 か らみ れ ば 血 清albuminに 相 当す る区分1が 各 区分 中 で最 大 濃 度 比 を 示 してい る。 これ に対 し海 産硬 骨 魚 に属 ず る ゴマサ バ な どの血 清 で は, 区 分 ∫が最 大 濃 度 比 を示 す 傾 向が み られ,さ らに これ らの硬 骨 魚 で は,人 間 に 比 べ γ 一globulinに 相 当す る と思 わ れ る 低 易動 度 区 分 の 濃 度 比 が極 め て低 く,そ の存 在 が泳 動 的 に確 認 出来 な い試 料す らあ った こ と も注 目す べ き事 実 で あ る。 つ ぎに海 産 軟 骨 魚に 属す る シ ロザ メの血 清 で は 区 分IIとN'の 濃 度 比 が他 の 区 分 よ りも高 い結 果 とな って い る。
albuminとglobulinの 比:供 試 血 清 の区 分f及 び1を 易 動 度 よ りalbumin 区分,他 の区 分 をglobulin区 分 と して 求 め た 両 区 分 の比(A/G)を 第4 表 に 併 記 した 。 こ の結果 に よ る と,人 間 に 比 べ 海 産 硬 骨 魚 に 属す る魚種 の
AIG値 は高 くな って い る。
以 上 述 べ た如 くTiselius法 に よ る分 析 結果 で は 人 間 と魚類 とで は血 清蛋 白
質 の高 低 両 易 動 度 区 分 に わ た っ て質 的 に も,ま た量 的 に もか な り種 属 特 異 性
が 認 め られ るの で あ る。
人間 と魚類の血清蛋白質に関する比較生化学的研究(斎 藤) (101) 2・ 濾 紙 電 気泳 動 法 に よる分 析
(31)
本 法 に 関 して はWieland氏 な どに よ る 発 表 以 来 多 くの 検 討 と 改 良 が 加 え られ,特 に1951年Grassmann氏 な どに よ り 泳 動 後 の濾 紙 か ら 比 較 的 簡 単
(32)
に 泳 動 曲線 を 求 め る直 接 比 色 法 が 考 察 され て か らは血 清 蛋 白質 の 分析 法 と し て普 及 し,そ の後,濾 紙 の代 りに セル ロー ズ ア セテ ー ト膜 を使 用す る方 法 が 広 く普 及 して い るが,こ こで は濾 紙 電気 泳 動 法 に よって 得 られ た 結果 を のべ
る こ とにす る。
本 法 の分析 精 度 はTiselius法 よ り劣 るが,一 一方独 自の特 長 を有 す る。 例 え ば 後 法 では,実 施 困難 な微 量 血 清 で も容 易 に検 討 し得 る のみ な らず血 清 中 の 複 合蛋 白質 の分 析 を も同 時 に 行 え る ので あ る。著 者 は,供 試 血 清 に つ い ての 泳動 条 件 を吟 味 し,そ の 結果 に基 づ い て血 清 蛋 白質 の 分析 を行 った と ころ, 本法 に よ って も供試 動 物 間 に か な り種 属 特 異 性 のあ る こ とが再 確 認 出来 た 。
A.泳 動 条 件
く
Tiselius法 の 泳 動 条 件 に 関 して は 電 気 泳 動 研 究 会 の 標 準 法 が 規 定 され て い る が 濾 紙 電 気 泳 動 法 で は 現 在 の と こ ろ 基 準 は な い か ら装 置 或 は 試 料 の 種 類 に 応 じて 泳 動 条 件 を 検 討 す る 必 要 が あ る 。 そ こで 供 試 血 清 に つ い て 予 備 実 験 を 行 っ た が,つ ぎ に そ の結 果 の 大 要 を 述 べ る 。
泳 動 装 置:一 般 に 本 法 の 装 置 は,Grassmann‑Hannig式 あ る い はKunkel‑
Tiselius式 の 改 良 型 で あ るが,本 実 験 に は 東 洋 濾 紙 式 泳 動 装 置C号 を 用 い た 。 著 者 は 本 装 置 を そ の ま ま 使 用 す る と 通 電 中 に 電 極 槽 よ り発 生 す る ガ ス の た め 泳 動 豫 の 乱 れ る こ と を 確 め 得 た の で 開 放 型 の 電 極 槽 を 密 閉 型 に 改 め,内 部 に 発 生 した ガ ス を 装 置 外 へ 排 気 し得 る よ うに 改 造 して 好 結 果 を 得 た 。 ま た 血 清 蛋 白質 の 泳 動 に は 濾 紙 の 長 さ約20cmで 充 分 で あ るか ら 本 装 置 に 附 属 し
て い る濾 紙 保 持 枠 の ベ ー ク ラ イ ト板 間 の 距 離 を 約18㎝ に 短 縮 し,さ らに 泳 動 を ほ ぼ 一 定 の 温 度(8℃)で 行 うた め に 装 置 を 低 温 恒 温 槽 中 に 納 め て 使 用
㈱T,Wieland,E.Fischer:Naturwissenschaften,35,29(1948).
㈱W.Grassmann,K.Hannig,M.Knedel:Deut.Med.Wochschr.,76,333 (1951).
した 。
血 清 使 用 量:こ の 量 は,試 料 の 蛋 白 濃 度 あ る い は 使 用 す る濾 紙 の 巾 な ど に よ り加 減 す る 必 要 が あ る 。 著 者 の 検 討 した 結 果 に よ る と 濾 紙 巾1㎝ 当 り蛋 白 質 と して0.3〜0.4mg量 が 適 当 で あ っ た 。
濾 紙 の 種 類=我 国 で は 東 洋 濾 紙 のNo.50及 びNo.51が 多 く用 い られ て い るが 前 者 は 蛋 白質 に 対 す る 吸 着 作 用 が 強 い た め か 泳 動 速 度 は 後 者 に 比 べ て か な り遅 い 傾 向 が み られ た の で 本 実 験 で はNo.51を 使 用 した 。
緩 衝 液 の 種 類 と イ オ ソ強 度:人 間 の血 清 蛋 白 質 の 泳 動 に は 多 くveronal緩 衝 液 が 用 い られ て い る。 しか しveronal及 び そ の 塩 類 は 高 価 で も あ る た め, 著 者 は 燐 酸 塩,棚 酸 塩 及 び 炭 酸 塩 緩 衝 液 を 試 験 的 に 用 い て み た 。 そ の 結 果 こ れ らの 緩 衝 液 で は 通 電 に よ る 液 自体 のpHの 変 化 が 一 般 にveronal緩 衝 液 よ り も大 き く,ま た 棚 酸 及 び 炭 酸 塩 緩 衝 液 で は 血 清 蛋 白 質 の 各 区 分 が 濾 紙 上 に 広 く拡 散 した か の よ うな 泳 動 図 を 示 し,泳 動 像 相 互 間 の 境 界 がveronal緩 衝 液 を 用 い た 場 合 に 比 べ て 不 明 瞭 と な る こ とが 多 か っ た 。 つ ぎ に 供 試 血 清 に つ い て所 定 イ オ ン強 度 のveronal緩 衝 液(例,イ オ ン強 度Pt・=O・1の 場 合 の 組 成:12中 にveronal‑Na5.889,酢 酸 ソ ー ダ3.889,蔭 酸 カ リ1.389及 び Mol/loHcl20ccを 含 む,pH8.9)と 燐 酸 塩 緩 衝 液(例,Pt・=o.14の 場 合 の 組 成:Mol/20Na2HPoi16容 とMol/20KH2Po41容 の 混 液,pH7.8)を
く
用 い て 泳 動 した 後 にbromophenolblue(BPB)で 常 法 に よ り染 色 した 結 果 に よ る と,供 試 血 清 蛋 白 の 泳 動 速 度 は 燐 酸 塩 緩 衝 液 中 で はverona1緩 衝 液 の 場 合 よ り早 く な る が,一 方 泳 動 縁 の 鮮 明 度 及 び 分 離 能 に お い て 前 者 が 後 者 よ り幾 分 劣 る よ うで あ る。 ま た イ オ ン強 度 が0・05の 場 合 は 両 液 と も高 易 動 度 区 分(albumin区 分)の 泳 動 速 度 が 余 りに も早 い た め 泳 動 豫 は 不 鮮 明 と な り,し か も 低 易 動 度 区 分(γ 一globulin区 分)は 幾 分 陰 極 側 に 泳 動 す る 傾 向 が み られ る。 一 方 イ オ ン 強 度0.2の 場 合 は 泳 動 速 度 が 極 め て 遅 く,各 区 分 の 分 離 が 悪 い 結 果 と な っ て お り,イ オ ソ強 度o.1で は 前 二 者 に 比 べ て 泳 動 像 は 鮮
㈱ 森 五 彦,小 林 茂 三 郎:"濾 紙 電 気 泳 動 法 の 実 際",南 江 堂,東 京(1960), p.108.
人間 と魚類の血清蛋白質に関す る比較生化学的研究(斎 藤) (103) 明で 且 つ各 区分 の分 離 も良好 で あ った 。 な お,泳 動速 度 は一 般 に酸 性側 で は 遅 く,ア ル カ リ性 側 で は 早 くな る傾 向 がみ られ,ま た 各 血 清 とも 緩 衝 液 の pHは6.0及 び7.0の 場 合 よ り8.0及 び8.9の 方 が 分 離 した 成 分 数 が 多 い と
い う結 果 を得 た。
電 流 強度 と緩 衝 液 の使 用 回数:濾 紙 電 気 泳動 法 に は 定 電流 と 定電 圧 の 何 れ が よいか は 種 々議 論 もあ るが 著 者 は 定 電 流 を使 用 し,電 流 強 度 の影 響 を veronal緩 衝液(pH8.9 ,μ0.1)を 用 い,供 試 血 清 につ い て検 討 した結 果 に よる と0.3〜0.41nA/cmの 場 合 が 泳動 像 も鮮 明 で,し か も各 成 分 の 分 離 精 度 は 良 好 で あ った。 一 般 に これ よ り強 電 流 で は速 く泳動 す るが 像 は乱 れ が ち とな り,こ れ よ り弱 電流 で は 泳 動 が遅 く,且 つ 分 離 能 も悪 くな る傾 向 が み ら れ た 。 つ ぎにveronal緩 衝 液 は使 用 回数 に 伴 っ て液 自体 のpHが 変 化 し,各 成 分 の泳 動 速度 は 低 くな る よ うで あ る。 そ こで再 使 用 の緩 衝 液 で も泳 動 速 度 を 調 節す る意味 で 電 流 値 を 変 え る こ とに よ り新 緩 衝 泳 と同様 な泳 動 図が 得 られ るか 否 か に つ い て検討 した が,そ の結果 は 電 流値 を高 め て も高 易動 度 区分 の 泳 動 が新 緩 衝 液 の場 合 よ り遅 くな るの に対 し低 易 動 度 区分 は速 くな る傾 向が み られ た。 す なわ ち,相 対 易 動 度 の基 準 とな る血 液albuminの 移 動 量 を一 定 に して も 他 の 区分 が そ れ に対 して 常 に 比 例 的 な 割 合 に 移 動 す る とは 限 ら ず,電 流 値 とか 緩 衝 液 の新 旧に よ って,移 動 量 が 変 化す る こ とが 明 らか で あ る。 従 って著 者 は 定 量値 を 求 め る泳 動 に は総 て 同一 電流 値 と新 緩 衝 液 を 用 い る こ とに した。
B.供 試 血 清 に 対す る透 析 処 理 必 要 の有 無 に関 す る検 討
供 試 動 物 中 で特 に 軟 骨魚 の血 清 に は極 め て多量 の非蛋 白態 窒 素 化 合 物 が 含 まれ て い る こ とに つ い て は既 に 述 べ た 。Ti8elius法 で は透 析 処 理 後 の血 清 を 使 用す るか ら,原 血 清 に含 まれ て い る低 分 子 化 合物 の影 響 は殆 ん どな い もの と思 わ れ るが,本 法 で は一 般 に 原 血清 をそ の まま 使 用 す るか ら 軟 骨 魚 の如 き特 異 な組 成 を 有す る試 料 に お い て は共 存す る物 質 が泳 動 結 果 に 影響 を お よ ぼ す 可 能 性 も一 応 考 え られ る ので 若 干 の検 討 を行 った 。
ツ ノザ メの血 清 を セ ロフ ァソ紙 嚢 に入 れ 約4℃ の燐 酸 塩 緩衝 液 中 で20時
間 透析 した もの と原 血 清 とに つ い て求 め た泳 動 図 は類 似 し,両 者 の主要 蛋 白 区 分 の濃 度 比 と相 対 易 動 度 を示 す と第5表 の如 くで あ る。
第5表 原血清 と透 析血清 中の蛋 白質主要 区分の濃度比 と相対易 動度 試料 ツノザ メSqualusmitsuku「ii
成 分
使 用 血 清
2 3 4
原 血 清1
透 析 血 清
33.414.8 84・6i54・2
11:馴ll:1
}
38.7 32.9 36.4 31.1
上段 の数値 は濃度比,下 段 の数値 は相 対易動度
泳 動条件:Veronal緩 衝液,Pt{8.9,μ0.1,電 流強度0.32mA/cm,泳 動時 間20 時 間,泳 動温度7〜10℃.
この 結 果 よ り両 血 清 の 分 析 値 間 に 大 差 の な い こ と は 明 らか で,こ の 程 度 の 差 は,本 法 で は 許 容 誤 差 の 範 囲 内 で あ る こ と を 確 か め て い る 。 従 っ て 血 清 中 の 非 蛋 白態 窒 素 化 合 物 の 影 響 は 特 に 考 慮 す る必 要 が な く,原 血 清 を そ の ま ま 使 用 して も差 し支 え な い と考 え られ る 。 さ らに 前 述 の 如 く軟 骨 魚 の血 清 に は 透 析 操 作 中 で す ら析 出 す る特 殊 な 蛋 白 質 が 少 量 な が ら存 在 す る事 実 よ り して も原 血 清 を 使 用 す る こ と が 望 ま しい と思 わ れ る の で 本 実 験 に お い て は 透 析 処 理 を 行 わ な か っ た 。
C.血 清 蛋 白 質 の 分 析
前 述 の 諸 結 果 に 基 き,著 者 は 各 試 料 と も原 血 清 を 用 い,新veronal緩 衝 液 (IiH8.9,μo.1),電 流 強 度o.32mA/cm,泳 動 時 間20時 間,泳 動 温 度7〜
10℃ の 条 件 で 分 析 を 行 った 。
本 法 に よ る と 人 血 清 は 易 動 度 の 順 にalbumin,α 、,α2,β 及 び γ一globulin の5区 分 に 分 離 しTiselius法 の 場 合 と 分 離 能 の 異 な る こ と が 了 解 さ れ る 。 従 っ て 両 法 に よ る 分 離 区 分 相 互 間 の 同 定 に つ い て は 検 討 す べ き問 題 が あ る の で 一 応Tiselius法 の 分 離 成 分 と は 異 る記 号 を 用 い,相 対 易 動 度 の 近 似 値 的 な 成 分 を 一 群 と してF,1,2,3,4,5及 び6の 各 区 分 に 大 別 した 。
(33)
相 対 易 動 度 及 び 濃 度 比:泳 動 後 の 濾 紙 を 常 法 に よ りamidoschwarz10‑B
人間 と魚類の血清蛋白質に関する比較生化学的研究(斎 藤) (105) で 染 色 し,東 洋理 化 工業 式濾 紙光 電比 色 計(filter‑VO2)に よ って両 者 の値 を 求 め た結 果 は第6表 の如 くで あ る。
第6表 供試血清蛋白質の濃度比 と相対易動度(濾 紙電気泳動法) 供 試 動 物(δ)
コ イ
Cyprinuscarpio
・マ グ ロ
Thunnusthynnus
コ マ サ ハ
Scombertapeinocephalus
シ イ ラ
CoryphaenahipPurus
ム ロ ア ジ
Decapterusmuroadsi
マ ダ イ
Chrysophrysmajor
シ ロ ザ メ
MUStelUSgriSeUS
ツ ノ ザ メ
Squalusmitsukurii
ア カ エ イ
Dasyatisakajei
ア カ エ イ
Dasyatisakajei*
人 間
験数実例
成 分
Fl1
2 3・14 5 67
5
9
5
4
3
13
10
6
1
6
48.7 97.6 47.214.4
120.2,93.4
33.810.2 115.7103.0
33.424.6 118.491.4 49.410.6 114.291.4 26.825.7 119,692.2
Alb.
54.3 100.0
11.2 72.1 24.1 70.6 32.5 73.3 22.3 68.7 28.1 72.7 26.2 78.8 35.4 86.0 33.0 86.0 25.9 88.5 23,7 87.3
レ挿0035﹁α8α
21。8 50.3
10.2 37.4
8。1 17.4
0♂3
251 65
64・1
2り0
1052 ‑晶ΩU
222 り0ー
ワ﹂102
4・2
1り﹂14 9210814‑ ゴ﹂ピ﹂
301占﹁∂ 只)りδ
Q/64 00
4︑り0¶占ぼ﹂
18.6 51.9 13.1 51.0 22.2 64.6 9.2 56.6
α2‑
Glob.
4.1 69.2
33.3 30.9 39.4 29.2 32.9 31.4 29.3 29.1
β一 Glob.
13.3 47.7
7σ21くゾ0ノくり
内δ34.4.63 響ムー
1021
060/Ol 4.ウσ
OQ/1 ーウ4
2211← ウ̀4・
10りδ噌1
γ一Glob・
24.7 16.1
各供試 魚共 に上段 の数値は 濃度比,下 段の数値は相対 易動度 を表 わす.
泳動条件:Veronal緩 衝液,IH8.9,μ0.1,電 流強度0.32mA/cm,泳 動時 間20 時 間,泳 動温度7〜10℃.
*供 試 アカエイ 中で は 大型(体 重38309)の 特 例で.一 尾 しか 採 集出来な か った が,本 試料 では区分6が 幾i分陰 極側に泳動 した。
人 間 の 血 清albuminの 移 動 量 を100と し て 求 め た 各 成 分 の 相 対 易 動 度 を 供 試 血 清 に つ い て 検 討 す る と,海 産 硬 骨 魚 に 属 す る ゴ マ サ バ な ど の 血 清 で は Tiselius法 の 結 果 と 同様 に 人 血 清albuminよ り易 動 度 の 高 い 区 分Fが 明 ら
か に 認 め られ,し か も 区 分Fと 区 分2の 濃 度 比 が 一 般 に 高 い の に 対 し淡 水 産 硬 骨 魚 に 属 す る コ イ に は 区 分Fが み られ ず 区 分1の 濃 度 比 が 最 も 高 い,
また これ ら 血 清 で は 人血 清 に 比 べ て γ 一globulinに 対 応す る低 易動 度 区 分 の 濃 度 比 が 極 め て低 い 結果 とな って い る。 一 方 軟 骨 魚 に 属す る シ ロザ メな どの 血 清 で は 区 分Fの み な らず 易 動 度 か らみ れ ばalbuminに 相 当す る区分1の 存 在 も確 認 出来 な か った。 また 濃 度 比 で は,区 分2及 び4の 値 が 他 の区 分 よ
り高 い。 さ らに 軟 骨 魚 の血 清 に は 人血 清 の γ一globulinよ り易 動 度 の低 い 区 分(5及 び6)の 存 在 す る こ とがTiselis法 の結 果 よ りも顕 著 に 認 め られ た 。 特 に 区 分6は 原 点 附 近 よ り殆 ん ど泳 動 しな い区 分 で濃 度比 は4〜6%を 示 し, 供 試 動 物 中で は,軟 骨 魚 の場 合 に のみ み られ る特 殊 な蛋 白質 で あ る。 前 述 の 如 く軟 骨 魚 の血 清 に は 生 理 的pHに 近 い燐 酸 塩緩 衝 液 中 で析 出す る蛋 白質 が存 在 す るが,こ の析 出蛋 白 を 除 いた 血 清 で は 区 分6が 殆 ん ど 認 め られ な くな り,ま た 析 出蛋 白を 単 独 で泳 動 す る と,そ れ が 原 点 附近 よ り殆 ん ど移 動 しな い こ と も確 か め てい る。 さ らに一 般 的 な事 実 と して易 動度 の低 い蛋 白質 ほ ど
(34)
塩 類 溶 液 に対 す る溶 解度 の低 い こ と も知 られ て い る。 これ らの事 実 よ り区 分 6は 前 述 の緩衝 液 中 で析 出す る特 殊 な蛋 白質 に 相 当す る成 分 と推 定 され る。
D.Tiselius法 の結果 との比 較
一 般 にTi8elius法 が濾 紙 電 気 泳 動 法 に比 べ て血 清 蛋 白 質 の 分析 にす ぐれ た 精 度 を有 す る こ とは 周 知 の如 くで あ るが,本 実 験 で 得 られ た 両 法 の泳 動 結果 につ い て 若 干 の比 較 検討 を試 み た。 前 述 の如 くTiselius法 と,濾 紙 電 気泳 動 法 とで は 同種 の血 清 で も分 離 した血 清 蛋 白質 の区 分 数 が必 ず しも等 しくな く,供 試 動 物 の血 清 で は 前法 よ り後法 の方 が 区 分 数 が 多 くな って い る。 従 っ て 両 法 の 区分 番 号 は 正 確 に対 応 す る とは限 らず,種 類 に よ って は 同数 番 号 の 区 分 で も相 対 易 動 度 と濃 度比 とに か な り差 が み られ る場 合 の あ る こ とは 当然 と思 われ る。 相 対 易 動 度 は両 法 と もに泳 動 条 件 に よ り多 少変 化 す るが,特 に 濾 紙 電気 泳 動 法 で は そ の影 響 を 受 け る こ とが 多 い よ うで あ る。 本 実 験 で は BPBを 混 入 した 人 間 の血清 を 各試 料 と同時 に 泳 動 し,相 対 易 動 度 の基 準 と な るalbuminの 移 動量 が一 定 とな る よ うに 条 件 を規 定 したが,こ の場 合 で
㈱H.svenson:J.BioLchem・,139,805(1940)・
人間 と魚類の血清蛋白質に関す る比較生化学的研究(斎 藤) qO7) も他 の区 分 はalbuminに 対 して 常 に比 例 的 な 役 合 に移 動 す る とは 限 らず, 濾 紙上 の位 置 に よっ て各 区分 の泳 動 速 度 に 高 低 のあ る こ と も観 察 され た。 こ
の原 因 と して は,両 極 よ りの 電気 滲 透 の 影響 とか,ジ ュール 熱 に よる濾 紙 上 の温度 分布 が 必 ず しも一 様 で な い こ とな どが考 え られ る。濾 紙 電気 泳 動 法 で はTiselius法 に 比 べ て一 般 にalbumin区 分 の濃 度 比 が 低 くな って い る。 こ の一 因 と して 考 え られ る ことは,前 法 で は血 清 蛋 白質 の一 部 が濾 紙 に 吸着 さ れ るた め 後 法 の場 合 よ りも電 場 で移 動 し難 くな る こ とで あ る。 さ らに 無 視 し 得 な い一 般 的原 因 と して考 え られ る こ とは 蛋 白質 の濃度 と色 素 結 合 量 との関
(35),(36)
係 が 蛋 白 質 の 種 類 に よ っ て 異 な る こ と で あ る 。 そ の た め 人 血 清 で はalbumin 及 び910bulin区 分 の濃 度 比 の 実 測 値 に 補 正 係 数 を 乗 じてTiselius法 の 結 果
くの
に一 致 させ よ うとす る試 み が あ る。 しか し,こ の よ うな係 数 が 蛋 白組 成 の異 な る魚 類 の血 清 に も適 用 し得 る とは考 え られ な い 。 現 に著 者 は 後 述す る如 く 軟 骨 魚 と他 の供 試 動 物 とで は血 清 蛋 白質 と色 素 の 結 合性 に 著 しい 差 のあ る こ
(15)
とを 明 らかに してい る。
以上 要 す るに 濾 紙 電 気泳 動 法 の定 量 的 応 用 に つ い て は方 法論 的 に 多 くの改 良 が 行 われ てい て も,濾 紙 に よる蛋 白吸着 とか電 気 滲 透 あ るい は 蛋 白 質 と色 素 の結 合量 な どの問題 に は,本 質 的 に なお解 決 され て いな い 点 が あ る と考 え られ る。 従 っ て未 知要 素 の多 い 不 等脊 椎 動 物 の 血 清 分析 に はTiselius法 に よ る分 析 値 と比較 検 討 して論ず る こ とが望 ま しい。
3.塩 析滴 定 法 に よ る分 析
最 近,塩 類 の 飽和 度 を連 続 的 に 変 化 させ,そ れ に 伴 って 変化 す る蛋 白質 の 溶 解 量 や 析 出量 か ら混 合蛋 白系 を 分析 す る方 法 が 行 なわ れ る よ うに な った 。
(38)
例 え ばTenow氏 等 は 筋 肉 のmyosin区 を 硫 酸 ア ソ モ ニ ウ ム濃 度 の 変 化 に 従 っ て 変 化 す る278mμ に お け る 減 光 率 に よ っ て 分 析 し,こ の 区 分 に は 幾 つ か
㈲H.D.Cremer,A.Tiselius:Biochem.Z.,320,273(1960).
㈲F.A.Pezold,U.Peiser:Klin.Wochschr.,.31,982(1963).
⑳H.Esser:MUnch.Med.Wochschr・,93,985(1961).
㈱M.Tenow,0.Snellman:Biochem.etBiophys.Acta"15,395(1964).
の成 分 の共存 す る こ とを示 してい る。 また 曾 我 美 氏 等 は,塩 析 に よる溺 濁 度 と蛋 白濃度 との 間 にBeer氏 の法 則 と同一 関 係 が成 立 す る こ とを 確 か め,前 述 の減 光 率 の 代 りに 掴濁 度 を 用 い,こ の変 化 か ら人血 清,卵 白 アル ブ ミン及 び 肝 細 胞 液 の塩析 滴 定 曲線 を求 め てい る。 この方 法 は 従 来 の塩 析 法 の よ うに 窒 素 を 測 定す る必要 が な く,操 作 が 簡単 で あ る のみ な らず 少量 の試 料 で 実 施 し得 る長所 が あ る。 そ こで,著 者 は 本 法 に よ って供 試 動 物血 清 の塩 析 滴 定 曲 線 を 求 め た と ころ,そ の組 成 と値 に か な り種 属 特 異 性 の あ る こ とを認 め た 。
くくの
個 濁 度 滴 定 法:供 試 血 清 を 蛋 白 濃 度 約o.49/覗 に よ る よ うにMol/20燐 酸 塩 緩 衝 液(PH7.3)で 稀 釈 し,そ の5ccを 硫 酸 ア ン モ ニ ウ ム飽 和 溶 液 で 滴 定 す る 。 滴 定 後 に 一 分 間 の振 盈 を 行 い 日立 光 電 光 度 計(EPO‑ll型)で 瀾 濁 度(T)を 求 め,硫 酸 ア ン モ ニ ウ ム 飽 和 度(C)の 変 化(△C)とTの 変 化 (△T)の 値 よ り △7ソ ムCを 算 出 し,こ の 値 を 縦 軸 に,(C)を 横 軸 に と り塩 析 曲 線 を 求 め た 。 な お 実 験 中 の 液 温 は 約20℃ と した 。
実 験 結 果:
、
供試 血清 の塩 析 滴 定 曲線 の数 例 を示 す と第2図 の如 くで あ る。(次 頁) 図 の結果 よ りも人間 に比 べ て硬 骨 魚に 属 す る コイ及 び マ サ バ の血 清 蛋 白質 に は 硫 酸 ア ソモ ニ ウム の低飽 和 度(0.3〜0.4)で 析 出す る区分 の少 な い こ と が 了 解 され る。 一 方 軟 骨 魚 に属 す る シ ロザ メ及 び ツ ノザ メの血 清 で はo.3以 下 の低 飽和 度 で 析 出す る区 分 が か な り 認 め られ る のに対 し 高 飽和 度(0.7〜
0.8)で 析 出す る区 分 が 他 の供 試 動 物 よ り 極 め て少 な い結 果 とな って い る。
また 同 種 の試 料 の塩 析 滴定 曲線 と電気 泳 動 図(第1図)を 比 較 す る と,両 者 間 に あ る程 度 の相 似 性 が 認 め られ る。 一 般 に 易 動度 の大 きい蛋 白質 ほ ど塩 類
(34)
溶 液 に対 す る溶 解 度 の高 い事 実 か ら して前 述 の低 易動 度 析 出 区分 と高 易動 度 析 出 区 分 は各 々電 気 泳 動法 のr‑globulin区 分 とalbumin区 分 に 対 応 す る区 分 と推 定 され るが 本 法 に よ る分 離 峰 の数 は,電 気 泳 動 法 の場 合 よ りか な り多 い結 果 とな っ て い る。 この点 に つ い ては既 に 曾我 美 氏 等 も人血 清 で 同様 な傾
㈲ 曾 我 美 勝:日 本 生 理 学 誌,17,125(1955).
㈹ 曾 我 美 勝,桃 谷 好 英,井 上 康 夫:化 学,10,851(1965).
5
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人間 と魚類の血清蛋 白質に関す る比較生化学的研究(斎 藤)
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第2図 供試血清蛋白質の塩析滴定 曲線
O.40.50β0.マ ◎.80.9
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(109)
O.40.50.60.70.9
O,4a50.60nO.80£00.iO.2030.40,50,6。.・r。.80.9
C(硫 酸 ア ン モaウA飽 和 度)
*凋 濁度 滴定 法 に よって求めた 曲線(蛋 白質濃度0 .4%溶 液)
**△Tは 濁濁度 の変化量,△Cは 飽和度 の変化量,△T/△Cは 正 規確率紙上 に求 めた積分 型の滴定 曲線 よ り算 出 した値。
向のある ことを確認 ε?本 法 は混 合蛋 白系 の簡単 な微細分割法 ともいえ る。
次 に軟 骨 魚 の 血 清 中に は 生 理 的pHに 近 いMol/20燐 … 配 塩 緩 衝 液 中 です ら 析 出す る特殊 な蛋 白 質 の存 在 す る こ とは 既 に述 べ た が,こ の場 合 の澗濁 度 を 本 実 験 の 稀 釈 条 件 で 求 め る と,他 の試 料 がT‑100%で あ るのに 対 しT=
83〜87%(総 蛋 白質 の6〜8%)を 示 す。 これ も顕 著 な種 属特 異 性 の一 つ で あ る。 なお 潤濁 液 に 少量 の硫 酸 ア ン モ ニ ウ ムを添 加(飽 和 度0.05〜0.06)す る と,澗 濁 が 殆 ん ど消失 す る こ とか ら軟 骨 魚 の血 清 にみ られ る特 殊 な蛋 白質 は,ほ ぼ 」 定 の イオ ン強度 で 顕 著 な塩溶 効果 を示 す ので あ るが,こ れ は 同血 清 の氷 点 降 下度 が他 の脊 椎 動 物 の場 合 よ りか な り高 い事実 と関 係 の あ る こ と
と も考 へ られ興 味 深 い 現象 で あ る。
IV血 清複 合 蛋 白質 の組 成 にみ られ る種 属 特 異 性
単 に 血清 蛋 白質 と称 して も人間 等 では,そ のな か に リボ蛋 白質 とか糖 蛋 白
(41)〜(43)
質 の如 き複 合 蛋 白質 の存在 す る こ とが 明 らか に され て い る。 しか るに 魚類 の
(44)
血 清 複 合 蛋 白 質 に 関 す る研 究 と して は 僅 にDr皿10n氏 が コ イ と ウ ナ ギ の リボ 蛋 白 質 に つ い て 検 討 した 報 告 を 知 る 程 度 で,糖 蛋 白 質 に つ い て は 未 だ 研 究 さ れ て い な い よ うで あ る。 著 者 は 濾 紙 電 気 泳 動 法 の 長 所,即 ちTiselius法 で
は 実 施 不 可 能 な 複 合 蛋 白 質 の 分 析 を も同 時 に 行 え る こ と を 利 用 し,供 試 動 物 に つ い て 血 清 中 の リボ 蛋 白 質 の み な らず,新 に 糖 蛋 白 質 を も 各 々sudan black‑B(SBBと 略 す)反 応 とperiodicacid‑Schiff(PASと 略 す)反 応
に て 検 討 した と こ ろ,供 試 動 物 間 の 両 蛋 白 質 の 泳 動 的 性 質 が か な り異 な る と い う結 果 を 得 た 。
泳 動 条 件:泳 動 装 置 及 び 操 作 は,皿 の2と 略 々 同 様 で あ る が,本 実 験 で は 血 清 使 用 量 を 約2倍(o.5〜o.6皿g/㎝)に して 泳 動 した 。 これ は 単 位 蛋 白 量 に 対 す るSBB反 応 とPAS反 応 の 呈 色 度(吸 光 度)がASIO‑B反 応 の 場 合 よ り小 さ い た め で あ る。
(45) リボ 蛋 白 質 と 糖 蛋 白 質 の 検 出 法:こ れ らは 各 々Feldman法(SBB反
(45)
応)とHotchkiss‑McManus法(PAS反 応)に 準 じて 行 った が,両 法 と も に 細 胞 化学 の分 野 で 組 織 を対 象 と した方 式 で あ るか ら本実 験 で は種 々検討 し た結 果 に基 き濾 紙 に 吸 着 した両 蛋 白 の検 出に 適 す る よ うに反 応 時 間 と使 用薬 品 の一 部 を改 変 して実 施 した。 そ の大 要 は次 の如 くで あ る。
SBB反 応:泳 動 後 の 乾 燥 濾 紙 を50%ア ル コール 液 に5分 間 浸 した 後, SBB試 薬 を20分 間反 応 させ,先 づ 同 アル コール液 で,次 に純 水 で洗 浄 し 乾燥 後 パ ラ フ ィンに 封 入 した。
PAS反 応:泳 動 後 の乾燥 濾 紙 を,過 ヨー ド酸 液 に5分 間 浸 した後,純 水
gDH.A.Macheboeuf:Compt.rend.,188,109(1929).
働G.Blix:J.Biol・chem.,137,485(1941)・
⑬LF.Hewitt:Biochem.J.,33,1496(1939)。
㈹A.Drilhon:Compt.rend.,238,940(1964).
㈲ 市 川 収:"細 胞 化 学"本 田 書 店,東 京(1953),PP.124,177.