経営 と経済 第
8 7
巻 第3
号2 0 0 7
年1 2
月金融スキームの類型化と金融リバンドリング
深 浦 厚 之
Abst ract
Thi ss t ud ya ddsne wc o ns i de r a t i o na bo utt hef i na nc i a l unbundl i n ga nd r e bundl i ng,wi t ht aki ngi nt oac countt her es entde vel opme nti n J a pa ne s ef i na nc i a lma r ke t .Es pe c i a l l y,i tf o c us e so nt her e bundl i ng,be ‑ c a us et heo ppo r t uni t ywhe r ei ti se xc e s s i ve l ydi s c us s e ds of a ri sno t ma ny.Wet r yt oc ons t mc ts e ve r a lt ype so ff i na nc i a lt r a ns ac t i o nsby r e bundl i ngt heva r i ousf i na nc i a lf unc t i onsi nc l ude di nt hes t a nda r d s c he mef ort heWhol eBus i ne s sSec ur i t i z a t i on.Conc r e t el y,us ua l de po s i t sa ndl o a nsbus i ne s sbyt heba nk,pr o pe r t ymor t ga gef i na nc l ng a ndt hel i keo fdi r e c tf i na nc i ngbo r r o wc l a i ma r edi s uc us s e d. I ti sge ne r ‑ a lt os t a r tf r o mt hef ac tt ha ti ndi r e c tf i na nc i a ls ys t e m ( ba nks ys t e m)i s di s a s s e mbl e di npl ur a lf i na nc i a lf unc t i o ns , buti ti sa l s ol o gi c a l l ypo s s i bl e t or e pr oduc et hei ndi r e c tf i na nc i a ls ys t e mbya l l ot t i ngt hei ndi vi dua le l e 一 me ntt ot hee c o no mi ca ge nt s( ho us e ho l dsa ndf i r ms ),o t he rt ha nt he ba n k.Vi at he s ec o ns i de r a t i o ns ,i tma ke sc l e a rwha tt hec o nc e pta nd me t ho do l o gyo funbundl i ngdome a ns.
Keywords;Fi na nc i a lunbundl i ng,Fi na nc i a lr e bundl i ng,who l ebus i ‑ ne s ss e c ur i t i z a t i o n
1
本稿 は応用経済学会全国大会 (平成1 9
年6
月)での報告論文 を加筆修正 した ものであ る。報告の際 にコメン トをいただいた鈴木泰氏 (立命館アジア太平洋大学)・柳川範之氏(東京大学) に謝意を表 したい。無論あ りうべ き誤謬は筆者の責 に帰するものである。
1.は じ め に
日本の金融システムにおいて,相互参入や異業種 からの新規参入が 日常的 な光景になってすでに久 しいが,最近ではさ らに一歩進 んで,金融商品やそ れ らの取引市場の細分化 ・多様化が 目立つようになっている。すなわち,金 融 自由化 によって高いモビ リテ ィを得た経営資源が,既存の市場間を水平方 向に移動する という形で資源の再配分を行 うだけでな く,いまでは新たな市 場の創 出あるいは細分化する垂直方向へのモーメン トを持つようにな り, こ の ことが経営資源の流動性をさ らに高めているのである。 こうした動 きを共 通 し,かつその背景を説明する有力な概念の一つ として注 目されるようにな
ったのが,金融機能のアンバン ドリングである。
金融アンバン ドリングについてはすでに定評あ る論考 も数多 く公刊 されて いるが,それ らの先行研究をもとに金融アンバン ドリングを理解する とすれ ば次の ようになるだろう。すなわち,複数の金融取引 ・金融機能の集合体で あ る銀行 による金融仲介機能は個別要素に分解することがで きる。分割 され た個別の要素あるいは組み合わせご とに独立の意思決定主体 ・市場を創出す ることができる。そ して,その ような分割 ・再構成が金融システムの姿を変 貌 してい く力 となる。事実,近年顕著 になって きた異業種か らの金融産業へ の参入は,既存の金融業務q)一部 に特化 した り,業務 と業務の間隙を突 くも のが多い。
この議論に従えば,金融仲介機関である銀行に集約されていた資金循環 に 関わる取引や,一定の規制の下 に置かれたプロ トコルに したがって整然 と行 われていた資本取引は,それ らを構成する個別の要素に分解 (アンバン ドリ ング)で きることになる。そ して個 々の要素は,それぞれが専門化 された金 融サービスを提供する土台を形作 る。た とえば,既存の金融商品からある特 性 を抽出 して新たな取引機会 (裁定機会)を作 り出 して きたデ リバテ ィブ市 場はその一例である。また,分解 した要素を再構成 (リバン ドリング)すれ
金融 スキームの類型化 と金融 リバ ン ドリング
3
ば これまでにはない新たな金融商品や市場を創 出することがで きるが,さま ざまな仕組み金融の隆盛はこうした流れの中で起 こって きた といえよう。情 報通信技術の発展 もあいまって,既存の銀行や証券会社の業務の一部 に特化 した企業が数多 く登場 し, 日本の金融システムの姿を急速に変化 しつつあ る ことを見 ると,アンバン ドリング とい う概念が一定の正当性を持つ とい うこ とは確 かなことの ようである。
また,金融理論の展開 とい う面か ら見て も,要素分解 を通 じて金融取引に どのような機能が含 まれているのかを考察することで,情報生産 という角度 か ら金融機関の機能や取引を分析する方法論
( 1 9 8 0
年代以降,議論 が深化 し た)の正当性 を補強することに もなった。本稿は, この ような展開を背景 として,アンバン ドリング とリバン ドリン グに対 して新たな考察を加えるものである。 とりわけ, これまであま り論 じ られる機会が多 くなかった リバン ドリングに焦点をあてる。以下の議論 にお いては,事業の証券化
( Who l eBus i ne s sSe c ur i t i s a t i o n
,以下WBS)
にお いて用い られる標準的なスキームをベンチマーク とし,そこに含まれる種 々 の金融機能を リバン ドリングす ることによ り,他の金融取引を再現 してみた い。具体的 には,銀行 に よる通常の預貸業務 ・直接金融 ・貸 出債権の流動 化 ・動産担保融資等 を取 り扱 う。 これ らを通 じて,アンバン ドリング とい う 概念 ・方法論が真 に何を意味するものであ るのかを明確 にす る2。
2 事業の証券化のスキーム
2‑ 1 事業の証券化の基本的な構造
まず,
WBS
の基本的な構造 について論 じた深浦( 20 0 5 )
を利用 して,読2
アンバン ドリングに関 しては藤井( 2 002 )
,大垣( 20 04
)な どを参照す る とよい。他方, リバン ドリングについては必ず しも十分な議論が行われているわけではないが,実務界 では本文中に示 した ような意味で用 い られ ることが多い。ただ,機能 よ りも合併や持株 会社 による組織の再編成過程 をさ して用い られる場合 もある。 こうした点についての平 易な解説 として加護野( 2 0 0 5)
がある。論 の出発点 となるスキームを説 明する。
W BS
は, 1 995
年 ごろまでに英国で 基本的なスキームが確立 された3
。通常の証券化では,企業の持つ特定の資 産だけを裏づけ とした証券が発行 されるが,W BS
では,事業全体か ら得 ら れ る期待収益 を裏づけ として資金を調達するスキームであるため,若干混み 入 った構造になっている。BS
lはW BS
の典型的なスキームである4。家計
企業
DH 1 0 S 9 0
DF 9 0
PA 1 0 0
SPVl LS 90
銀行
S 9 0
L 9 0 R 1 0
BSl
事業 の証券化SPV2
PA 9 0 LS 9 0
企業は二つの特定 目的会社
( Speci alPur pos eVehi cl e
,以下SPV)
を1 00%
子会社 として設立す る
( SPVl ,SPV2)
0SPV
lは家計に証券( S)
を発行 し て得た現金を事業SP
V に貸付ける( LS)0 SPV2
は借入金( LS)
によ り企 業 か ら物 的資産( pA)
を購入する。 しか し,SPV2
はPA
を運用する能力を 持たないので,その技術を持つ企業にPA
を用 いた生産活動 を委託す る。 こ うしてスキーム全体 として物的資産 を活性化( act i vat e)
し,事業 として成3
欧米の状況についてはGa s s e r( 2 0 0 0 ),Ambe r y( 2 0 0 3 ) ,Ha r r i s( 2 0 0 4 )
な ど参照のこと。また
,Ad a ms( 2 0 0 5 )
によれば ヨーロ ッパで発行 されるABS(
資産担保証券)の うち約9%
が事業の証券化によるものである。
4
本邦での2 0 0 6
年のWBS
による資金調達総額は一兆七千億 円程度 と見積 もられている.最近急激 に調達 が増 えているため,強気の見方 も一部 には出ているが
,WBS
はそれに適 .した事業が限 られていることに留意す る必要があ る。 この点については深浦( 2 0 0 5
)お よ び深酒( 2 0 0 6 )
を見 よ。 なお,本稿で扱 うスキームをBS
lの ような形で表 すのは, これ ら のスキ ームが企業の資金調達 を 目的 とす る とい う前提 に よる。証券化等の仕組 み金融の 主たる 目的が資金調達 なのか, リス ク分散 なのか とい うことについては見解が一定 して お らず,その こ とは仕組み金融の定義を巡 る議論の錯綜 につなが ってい る。 これについ てはDa v i s( 2 0 0 5 )
を参照の こと。金融 スキーム の類型化 と金融 リバ ン ドリング
5
立 させ るのである。家計の保有する証券
( S)
を直接裏づけているのはS PVl
の
S PV2
に対する貸 出債権( LS)
であるが,貸 出債権 を裏づけているのが PA を用いた生産活動全体であることはい うまで もない。 さらに,銀行は預 金( D)
を家計 と企業か ら受け入れ( D
H,DF)
,貸 出( L)
および準備( R)
として保有する
5 。
経済学においては,企業は 「物理的な投入物 と生産技術な ど企業が保有す る技術を組み合わせて新たな価値を作 り出す仕組み」 と定義 される,このス キームでは資産金融の手法を併用 しつつ,物理的な投入物 (PA)に基づ く 継続的な生産活動の存在が前提 とされている。そ して生産活動 自体の経済価 値が資本市場 に反映されるという意味で 「事業の証券化」 と称されるのであ
る
6 。
ところで,
BS
lの辺 々を整理 して (債権債務関係を消去 して)経済全体のBS
を書 くと,資産側に物的資産9 0
と準備1 0
,負債側に物的資産1 0 0
が残 る。つま り,究極 においてはこの経済は天賦の資源を利用 しているにすぎない。
しかし,資源の分布に偏 りがある以上,資源配分機構が必要であ り,さらに 交換経済を前提 とするな らば,ただ資源を利用するためだけであっても諸 々 の追加的機能が必要 とされる。金融分析 とはこうした機能に着 目した経済分 析の方法論にはかな らない
7 。
ところで,企業が手に入れたニ ューマネーは,何 らかの新たな事業活動 に 振 り向けられなければ,企業は単なるカネの通 り道になって しまう。本稿で
5 SPVl
は "発行SPV"
と呼ばれ るこ ともあ る。 また,S PV2
には "借入SPV
''"
事業S PV"
といった呼称 がある。 なお,BSl
は最終的な状況であ り企業がS PV2
に売却 す る PAを入手す るための資金は銀行借入でまかなわれると仮定 している。6
事業 を継続す るには,生産過程 に投入 される資源 (物的資源や無形資産) とそれを用 いるノウハ ウが必要 である。通常 の証券化は この うち前者のみを用 い るのに対 しWBS
は両者 を用いている。
7 また,アン ドリングは金融産業 に限 った論点ではない。た とえば,情報通信産業や電 力 .ガス業界 において規制緩和 とともに新 たなサービスが登場 して くる過程 がアンバン
ドリング概念で論 じられることもあ る。一例 として伊藤
( 2 0 0 2
))
がある。は,証券化等の取引が終 った後 に実体経済 に生 じる効果 については考慮 して いないため,ニ ューマネーを預金や現金 として退蔵 され る形 (ある種の両建 て取引になっている)で表現 していることに注意 されたい。
2‑2
個々の金融機能事業の証券化 には,スキームそれ 自体にも論ずべ き問題が多 く含まれてい るが
8
,本稿では とりあえずBSl
をベンチマー ク として以下の議論 を進めて い く。すなわち,BSl
をもって資金循環 に必要な種 々の金融機能がアンバン ドリングされた状況 を表現 している と仮定 す るのである。は じめにBS
Iの 各経済主体が資金循環の中で どの ような金融機能を持 っているのかを順次見 て きたい9 。
(1) 企業
企業は資金の最終的な取 り手であ り,したがって流動性の需要主体である。
それはまた,資金調達サービスの需要主体である。また,天賦の物的資産 に働 きかけて新たな価値 を生み出す機能 (生産機能)を持つ。
( 2)
家計家計は資金の最終的な出 し手であ り,したがって流動性の供給主体である。
それはまた,資金運用サービスの需要主体である。また, 自らは生産機能 を持たず,企業 によって生み出された価値 を消費する。
( 3 ) S PVI
S PVl
は流動性の供給 を実体化 させ る機能 を持つ。家計 は資金を運用す る 手段 を持 っていないので,そのままでは流動性 を保蔵す るのみであ る。SPV
lは,それがなければ保蔵 されたであろう流動性 を需要主体 に対 し て顕在化 させ る主体であ り,そのためになん らかの金融上のデバイスを用8
詳 し くは深浦( 2 0 0 6 )
09
家計 と企業は この経済 を構成 す る不可分の最小単位 であ る。金融 スキー ム の類 型化 と金融 リバ ン ドリン グ
7
いなければな らない。
( 4 ) spv2
SPV2
は流動性の需要 を実体化 させ る機能を持つ。企業は資金を調達 する 手段を持 っていないので,そのままでは保有する生産技術 を保蔵するのみ であ る。SPV2
は,企業が必要 とする流動性需要を供給主体 に対 して顕在 化 させる主体であ り,そのためになん らかの金融上のデバ イスを用いなけ ればな らない。( 5)
銀行一部の例外を除いて,実際 に資金が家計 ・企業の間を移動する際の経路を 提供する。また,準備 を保有することを通 じて,交換手段である貨幣を供 給する (ただ し, この機能 については本稿では特 に論 じることは しない)0
上述の ように,
5
つのBS
を統合す る と,負債側 に物的資産1 00
,資産側 に物的資産9 0
および準備1 0
だけが残 る。つま り,実物面か らこの経済を見れ ば,天賦の資源の9
割を消費する一万,1
割 を準備 として保有することにな る。 しかし,物 々交換に よらず して この状況を達成す るには,BS
lの ような 金融システムが必要であ り,準備はそのために用い られる資源であると解釈 で きよう。さて,資源の最終的な保有者である家計は,追加的な機能が付加 されない 限 りは資源を 自ら利用す る機能を持たず,さらに資金不足主体である企業部 門に資源を還流 させる機能 も持たない。同様 に,企業は資源 を利用する技術 を持つが,家計か ら資源を吸収する機能を持つわけではない
1 0 。
1 0
厳密に言 えば,S PVl , SPV2
の ような組織 を考 えるだけでは十分ではない。企業 ・家計 問の資源移動 を可能 にす るには,交換媒体 として機能 すべ き貨幣の存在 を仮定す る必要 があ るが, この仮定 によって,われわれは資源 の需要 ・供給 を貨幣の需要 ・供給 (すな わち金融取 引) に置 き換 えて考 えることがで きる分業 を基礎 とす る現代経済 においては, 物 々交換 が で きな い限 り,金融 機 能 の存 在 は経 済活 動 を維 持 す る前 提 条 件 とな る。Shumpe t a r
が強調 してい るように,有形 ・無形 を問わず資源 の分布 に も偏 りがあ る とき には,資源 を組 み合わせて新 たな価値 を生み出す企業活動 に とって,金融市場 の果 たす 意味は大 きい。SPVl
は,余剰資金 を供給 す るためのデバ イスを家計に提供 し,SPV2
は 資金需要 を顕在化 し,家計か ら余剰資金を調達する機能を企業に提供する。前者が家計 に向けて発行す る証券,後者は
S PV2
が企業か ら購入するPA
に 対応 す る。最後 に,銀行は,S PVl・SPV2
に よって顕在化 された資金需給 のベ ク トルにしたがって,資金を移動 させる経路を提供す ると同時に,準備 を通 じて貨幣を供給 している。ただ し,最後 に述べるように,準備を明示的 に考慮す ると金融政策 との関連にまで考察を広げる必要があるが,本稿では 単純化のためこの点は省略 したい。3 リバ ン ドリングによる金融取引の再現
3‑ 1 個 々の金融機能の組み合わせ
い うまで もな く,金融システムを上記
5
つの機能 (流動性の供給 ・流動性 の需要 ・流動性供給の顕在化 ・流動性需要の顕在化 ・資金循環経路の提供) 以上 に細か く分割することは可能だろう。 しか し, ここではこれ以上踏む込 む ことはせず, これ ら5
つの機能の抽 出をもってアンバン ドリングされた状 況 とし, これ らを出発点 として リバン ドリングに議論 を進めていきたい1 1 。
よって, リバン ドリング とは, これ ら
5
つの機能 を どの ように組 み合わせ る か,また,それ らを どの経済主体 に割 り当ててい くか とい う問題 として考 え ることがで きるのである。とはいえ,本稿の議論が金融取引に限定 される以上,資金の最終的な出し 手 と取 り手は必ず存在するはずだか ら,それ ら (家計 ・企業)がほかの機能 に吸収 されて隠伏的に取 り扱われるとい う場合は考 えない ことにする。むろ
1
1 後 に も言及す るが大垣( 2 0 0 3
)はアンバン ドリングされ るべ き機能 としてオ リジネーシ ョン,サービシソグ,マニファクチ ャリング, リスク管理 ・資金調達の5つを挙げる。本 稿 に即 して言 えば,流動性の需要はオ リジネーシ ョンに,流動性需要の顕在化はサービ シソグに,流動性供給 の顕在化 はマニフ ァクチ ャリングに対応す るだろう。 リスク管理 お よび資金調達は流動性需給の健在化双方に関わるのか もしれない。金融 スキームの類型化 と金融 リバ ン ドリン グ 9
ん,家計が流動性を需要 しないわけではない。た とえば,家計が住宅資金な どを借入れるときは,流動性需要主体 となるが,その場合は家計が住宅 とい う物的資産あるいは居住サービスを生産すると考えれば
,BSl
上では企業に 分類することがで きる。したがって,以下の議論は,潜在的な資金需給顕在化機能をどの経済主体 に割 り当て るか とい う問題 を主 に考 える
( WBS
では,それ らはSPVl
とSPV2
に割 り当て られている)。は じめに,考 え られ うる組 み合わせをすべ て列挙すれば,表 1のように整理できるだろう。た とえば,①は,家計 (企 莱)が流動性供給 (需要)機能を持ち,かつ,顕在化させる機能を併せ持つ と い うケースである。SPVl+SPV2
は,二 つの機能を併せ持つ単独の機関を 意味する。なお,後段の議論のため,それぞれの組み合わせによって実現 さ れるスキームもあわせて記入 しておいた。ケース⑤は事業の証券化である。番 号 流動 性供給機 能 の割 り当て流動性需要 実現 され るスキーム 顕在 化機能 顕在化機能
① 家 計 企 業
デ ィス イン ター メデ ィエーシ ョン
銀 行 の金融仲介① ' 家 計 銀 行 銀行主導
② 企 業 家 計 動産担保融資
② ' 企 業 銀 行 投 資信託
③ 銀 行 企 業 貸 出債権 証券化
③ ' 銀 行 家 計 ‑
④
SPV1+SPV2
通常 の証券化表
l
リバ ン ドリングの葉頁型3‑2
ケース① (家計 ‑流動性供給顕在化機能,企業 ‑流動性需要顕在化機能)BSl
において,家計( H)
とSPVl
のBS
,お よび,企業( F)
とSPV2
のBS
を統合 して,銀行( B)
のBS
とあわせて表示す る と次のBS2
を得 る。H + S P V l D S H 9 1 0 0
L S 9 0
F + S
PV 2
P A1 0 0
DF 90
S9 0
PA 90 L LS
9 09 0 LR 9100BS2
ケース①D
1 0 0
F+SPV2
を見 てみ よう。企業 は総借 入1 80 ( L+LS)
の うちの90
を預金( DF)
として保蔵 し,残 りの9 0
を実際に生産過程 に投入す る( PA)
。 もし,企 業 が預金 と銀行借入( L)
を相殺 す る と,BS2
は次のBS2‑1
に置 き換 え られる。
ここで家計は企業 に直接貸 出 し
( LS)
を行 ってい るか ら,BS2‑1
はいわゆ る直接金融 あるいはデ ィスイン ター メデ ィエーシ ョンに対応 している といえ る。逆 に言 えば,企業が銀行借入れに依存せずに生産活動 を行 い うる とい う ことにな る。また,銀行は家計預金(DH)全額 を準備( R)
とす る1 00%
準備 銀行 にな ってい ることに注意 しよう。つま り,銀行 は銀行券 (現金)を発行するだけの機能 に特化 しているのである。
H十SPVl DH 1 0
S 9 0 LS 9 0
PA 1 0 0 S 9 0
F+SPV2
PA 9 0 LS 9 0 R 1 0 DH 1 0
BS2 ‑1
ケース(∋(ディスインターメディエーション,1 0 0 %
準備銀行)しか し,企業 は預金
( DF)
を使 って家計 か らの借入( LS)
を相殺す る と い うもうひ とつのオプシ ョンを持 つ。 この とき,家計が手元資金 を銀行預金(DH) として保有すれば
BS2‑2
の ような状況が生 じる。 これが銀行 による 典型的な金融仲介を表 してい るこ とに注意 されたい。BS2‑1
とBS2‑ 2
は,機金融 スキームの煩型化 と金融 リバン ドリング
ll
能が同 じように割 り当て られているにもかかわ らず,それによって生 じる帰 結は対象的であることに注意 しよう。つま り, リバン ドリングの形態だけが 実現す る金融システムの種類を決めているわけではないのである。
H +SPVI F+SPV2 H 1 0 0 PA 1 0 0 PA 9 0
BS2 ‑ 2
ケー ス① (銀行 に よる金融仲介)3‑3
ケース① '(家計‑流動性供給顕在化機能,銀行 ‑流動性需要顕在化機能) ケース(∋'(BS3)
は,ケース① において流動性需要顕在化機能が企業 か ら 銀行に移 した ものである。H + S P V l
D H 1 0
S 9 0
L S 9 0 P S 9 A1 0 0 0
DF 90 L9 0
B+SPV2 L 9 0
R 1 0 PA 9 0
D 1 0 0 LS 9 0 BS3
ケース① '(銀行主導)銀行 が家計か らの借入 (LS)を使 って,預貸業務以外の生産活動 (PA) を行 ってお り,企業本体 は,単 に借入
( L)
と預金( DF)
の迂回経路 を提 供 しているに過 ぎない。本稿では物的資産 を用いて生産する主体を企葉 と呼 んでいるか ら,BS3は,銀行が企業の活動 を兼ねていることになる。銀行が 特定の企業 を完全に支配化 に置 くケース,銀行が連結子会社 を使 って本来業 務以外の事業を展開 しているようなケース,あ るいは,何 らかの理 由で形式 的に貸出を積み上げるケースなどが想定で きる。いずれにしろ,資金循環上 の重要な特徴は銀行が資金循環上での主導的な役割を担 っているとい う事実 である。3‑4
ケース② (企業 ‑流動性供給顕在化機能,家計 ‑流動性需要顕在化機能) 家計( H)
とSPV2のBS
を統合 し,企業( F)
とSPVlのBSを統合 し,
銀行
( B)
のBS
とあわせて表示 したのが次のBS 4
である。H + S
PV2 DH10
PA
9
0S
90
F + S P V l
PA
1
00D F9 0
LS 90
L
S9 0
B 0 0
nn九日目
T︼
R
0 0 nuり I J
BS4
ケース(参さて,企業が預金 (DF)を用 いて家計 か らの調達資金 (S)を相殺 す る と,
BS 4 ‑ 1
を得 る。H十SPV2 F+SPVl DH 1 0 0
PA 9 0
PA 1 0 0 LS 9 0 LS 9 0
00
m
軌L
R
0C .,
BS4 ‑1
ケー ス② (動産担保融資 )0 0 1
HD
BS 4 ‑ 1
には興味深い解釈を与 えることがで きる。 まず,企業が保有 してい た物的資産( PA)
が家計 に移動 し,対応する勘定 として,家計が企業 に対す る債務( LS)を負 う形 になっている点に着 目しよう。た とえば,PA
が企業 の商品 (在庫)であれば,LSは家計 に対す る売掛債権 (もし相手が企業で あれば企業間信用)を表す ことになる。銀行の貸出は,企業の持つ対家計債 権 に基づいて行われていることを併せて考 える と,BS 4 ‑ 1
は近年注 目される ようにな って きた売掛債権担保融資 (よ り一般的に言 えば動産担保融資,As s e tBa c ke dLo a n
,以下ABL)
に相当する取引であるということがで きる。また,家計がは じめに企業
+SPVl
か らLS
を借 り入れて,その後PA
を購 入す ると考 えれば, これは消費者金融な どのノンバンクの家計向けの貸出を 表 しているとも読む ことがで きよう1 2 。
ここで重要なのは,企業は銀行 と違 って信用創造 を行 うことがで きないの
1 2 2 0 0 6
年 に実施 された動産担保融資は金融庁 の集計 によれば5 5
件 (調達額約38億 円)であ り,農産物 を担保 とした事例が 目立 っている。動産担保融資についての簡潔な解説 につ いては経済産業省( 2 0 0 6 )
が適当である。金融スキームの頬型化 と金融 リバン ドリング
1 3
で,流動性供給顕在化磯能が割 り当て られても別のデバ イスを用いなければ な らない とい うことである。そのため,家計の流動性需要に対応するには, 既存の物的資産か流動性を用いざるを得ない。 このため企業 自身が信用 リス クを負担することになるのだが,それにはおのずから限界がある。 これが従 来の掛売 りや消費者金融の弱点の一つであった。 この意味で,
ABL
は企業 の流動性供給顕在化機能が,銀行によって金融的に補完 されるという点に意 義があるといえそ うであ る。 また,ABL
は商取引慣行の中で発生する債権 債務関係を基点 として構築されるのであ り,古典的な意味での商業銀行業務と極めて近 しい関係にあるとい うことも可能である
1 3 。
ところで,銀行が家計に向けて貸出を行なっていないにもかかわ らず,餐 計に流動性需要顕在化機能が割 り当て られるという解釈には違和感が残 るか もしれない。 しか し,家計 と企業が現金取引を行 うときには,そもそも銀行 か ら企業への貸出が行われない。つま り,家計が企業か ら掛売 り等の形で信 用を受け取 ることで需要を顕在化 させることによって,派生的に銀行 と企業 の関係が生 じるのである。
3‑5
ケース② '(企業‑流動性供給顕在化機能,銀行‑流動性需要顕在化機能)BSl
において,企業( F)
とSPVl
のBS
を統合 し,銀行( B)
とSPV2
のBS
を統合 し,家計( H)
のBS
とあわせて表示するとBS5
を得る。F + S P V l B + S P V 2
Fs
DL
n
U01A
P L9 0 L 9 0 S9 0 R 1 0 P A 9 0
BS5
ケース② '(投資信託)D 1 0 0
L S 9 0
1 3
ちなみに,企業がDF
を用いて銀行借入 (L)を相殺する ときには,①で述べた ように 銀行の役割が縮小 し,家計 と企業の間で売掛債権 となん らかの証券 (S)を用いた直接的 な取引が行われることになる。実際の生産活動が銀行 によって行われているので,ケース① 'と同様 ,級 行が連結子会社 を使 って本来業務以外の事業 を展開 しているような状況に相 応する。ただ,銀行 はそのための資金 を,家計 か らではな く企業
+S PVl
と い う組織 か ら調達 している点に注意が必要である。家計か ら資金調達 し銀行 に貸 出す という
F+S PVl
の ような組織 は多少 イ メージしに くいかもしれないが, これに類 した機能 を持つ経済主体を想像で きないわけではない。た とえば,S
を投資信託受益証券 ,LS
を銀行の社債 に対 する投資 と考 えれば,F+S PVl
はある種 の投資信託会社 と考 えること がで きる1 4 .
ただ し,F+S P Vl
は生産機能を持たないので,厳密 には企業 と 呼べない ことに注意 しておきたい。3‑6
ケース③ (銀行 ‑流動性供給顕在化機能,企業 ‑流動性需要顕在化機能)BSl
か ら企業( F)
とS PV2
のBS
を統合 し,銀行( B)
とS PVl
のBS
を 統合 し,家計( H)
のBS
とあわせて表示する と次のBS 6
を得 る。F
+SPV 2
PADF
001
AP B+SPVl S TL R TL
0
0
・リ、り
BS6
ケース③ (貸出債権の証券化)D 1 00 S 90
銀行は通常の預貸業務 (D,L,R) に加えて,証券 (S)を用 いて資金を 別途調達 し,それを企業 に貸出している
( LS)
。銀行の企業向けの貸 出債権( L)
は原債権 として証券( S)
を裏づけるこ とが可能だか ら, これは銀行 による貸 出債権( L)
を原債権 とす る証券化 とい うことがで きるだろう。た1 4
む ろん,実際の投資信託会社 も労働 力や什器な どの物的資産 を投入 してい るが,本稿 では金融面 と実物面 の区別 を明確 にす るため にこの点は無視 してい る。 あ るいは,物的 資源 との関わ りに限定 せず,企業 を何 らかの価値 を生み出す組織 と広義 に定義すれば,ここでい う投資信託会社 も企業 と呼べ るが, こうした ことは言葉の問題 に過 ぎない。
金融 スキー ム の類 型 化 と金融 リバ ン ドリン グ
1 5
だ し,会計的 ・法律的な要件 が満たされていないので (‑原債権L と証券
S
が銀行のBS
か らオフバ ランスされていないので)正 し くは証券化 と言 え ないが,資金循環上の機能を分析する限 りにおいては,それに等 しいスキー ム として考察で きよう。 なお,BS6
はBSl
を単純 に統合 しているため,証券 の発行額が他の項 目に比 して極端 に大 きいが,た とえばS‑1 0
として同様 のBS
を描 いてみれば (したが って,貸 出90
が証券1 0
を裏づけ る), よ り実態 に近い取引を表す ことがで きるはずである。注意すべ きことは,LS
が超過 準備を もとに創造 される貸 出ではな く,単純 に手持ち現金を貸出した ものであ り, この部分 に限 って言 えば銀行は資金の単純 な導管 になっている。
企業 が
DF( 90)
を どの ような用途 に振 り向けるかを考 えてみ よう。 もし借 入L( 90)
を返済すれば,銀行の資産 がL‑
0,R‑1 00
となる。部分準備制度 の もとでは超過準備が生 じるので, もし銀行が追加的な貸出を行えば,最終 的 にはBS2 ‑ 2
(既 出)と同 じ結果 が実現 され る。逆 に,銀行 が超過準備 を放 置すれば1 00%
準備銀行 に帰着するが, この ような ことが起 こるとは考 えにく
い 1 5 。
3‑7
ケース③'堪厨子‑流勤肘期台顕在†蛸輪巨,家計‑流動l備 封雌鮪E)および ケース④ (流動肘糊 封雌輪巨と流動層需鞠 封雌輪巨を統合)BSl
から銀行( B)
とS PV
lのBS
を統合 し,家計( H)
とS PV2
のBS
を統合 し, 企業( F)
のBS
とあわせて表示 す る と次のBS7
を得 る。 これをケース(参'としよう。企業 は銀行か らの借入
( L)
をそのまま預金( DF)
として保蔵 してお り,また,生産活動 も行 っていない。つま り,銀行 と企業間の取引は,資金 循環上での実質的な効果を持たない。また,家計は天賦の物的資産の大半 を1 5
最近 では,投資家 に債権 を売却 す るこ とを予 め前提 とした融資 が増 えてい る。正確 な 数字 を得 るこ とはで きないが, 日本経済新聞の報道 に よれば2006
年 で約2 0 00
億 円程度 に 達 して いる。 ただ, これ らの中で証券化 とい う形 を取 る ものが どの程度 にな るのかはは っき りしない。そのまま保有 している。 このような経済は一種の 自給 自足経済であ り,論理 的可能性 を別にすれば,考慮の対象外 として もよいだろう。
H+SPV2 DO 1 0
S 9 0 PA 9 0
PA 1 0 0 LS 9 0
DF 9 0 L 9 0
B+SPVl L 9 0
R 1 0 LS 9 0 BS7
ケース③ '(銀行の金融仲介機能空洞化)H SPVl+SPV2
DH 1 0 S 90
P A
1 0 0
DF 9 0
LS 9 0 PA 9 0
0 0 : J 9
L 9 0 R 10
BS8
ケース④ (通常の証券化)D 1 0 0 S 9 0
ケース(むは
SPV
lとSPV2
を統合 したBS8
で表 される。SPVl+SPV2
は, 企業が保有 していたPA
を資産 として受け入れ,それに裏づけ られた証券 (S)を家計に向けて発行 している。 これは通常の証券化その ものに他な らない。
ここでケース④において,企業 ・銀行が果た している役割に注意 しておこ う。まず,企業は
PA
を保有 していない。先の議論 に従 えば,生産活動主体 としての企業の実態が失われていることになるが,証券化スキームの実態 に 即 して言 えば,若干の注意が必要である。まず
SP
V とオ リジネ一 夕(企業)の役割分担 を考慮 してみ よう。 オ リジ ネ一夕によって設立 されるSP
V は証券化のための法的便宜 ・器 (ve hi c l e)
であ り,PA
を用いて実際に生産活動を行 う機能は当初か ら期待 されていな金融 スキームの類型化 と金融 リバ ン ドリング
1 7
い という事実がある。そのため
,P A
に関わる生産活動は,S P
Vか らオ リジ ネ一夕に委託 されるのが通例である。 したがって,企業 とS PVl 十S PV2
はBS
上では隔離 されているが,経済的機能については一体化 されていると見 なければな らない。すなわち,生産機能は暗黙の うちに企業に帰属 している のである1 6 。
次に,銀行の
BS
を見てみ よう。銀行の貸出( L)が企業の負債 に入 り,
それが預金( DF)
として還流 していることか ら,先のBS7
で説明 したよう に単に資金が往復する以上の意味はない ということになるかが問題である。そうであれば,証券化スキームは直接金融的色合いの強いスキーム というこ とがで きるだろう。
しかし,本稿ではそのような立場は採 らない。つま り,証券化スキームを スキーム として単独 に考えれば,確かに証券化には銀行の関与が薄 く直接金 融的 といえる。 しか し,資金循環システム全体 として考 えれば,そ こには銀 行の金融仲介機能がやは り関与 しているというべ きなのである。
第一 に,企業は
S PVl +S PV2
と機能上一体化 しているが,そ もそ も企業 は銀行借入( L)
を用いなければ証券化の原資産 に充当す るためのPA
を入手 で きない。PA
がS PVl +S PV2
に移動 した後 ,家計 と企業の間で証券を介 した取引が行われるものの当初の銀行借入はそのまま企業のBS
に残 ってい るのである。第二 に,家計の行動に 目を向ければ,家計は
SP Vl +S PV2
が企業か ら譲渡 された
P A
を保有 しているということを拠 り所 として資金を供給する。言 い換 えれば,S PVl +S PV2
の資産であるPA
を通 じて,最終的な資金の取 り手である企業 (証券化においてはオ リジネ一夕)の情報が家計に伝 えられて いるのである。そもそも間接金融 とは,資金の最終的な借 り手についての情1 6
両者 をBS
上で分離 させ る法的措置の ことを倒産隔離措置 とい う。 しかし,企業が実 態的に生産活動 に関わる程度やその方法によっては,別法人であることが否認 される場 合 もある。報が専門機関 (代表的には銀行) によって行われるシステムである。ケース
④ では証券を発行す る
SPVl 十 SPV2
がPA
の保有 を通 じて,銀行が果た し ていた情報生産機能を代行する機関になっていると考え られる。この意味で, 通常 の証 券化 のスキームの中には間接金融 の要素 が含 まれ てい るのである
1 7。
むろん,企業は証券化の過程 で得た預金 (DF)で借 入 (L)を返済す る ことがで きる。その ときには銀行 と企業の関係は切断されて しまう。しかし, それは事後的な推移の一つに過 ぎず,証券化スキーム全体を通 して,銀行の 金融仲介機能が持つ意味合いを弱めるものではない。事実,企業が証券化を 行 う理 由は,借入を減少 させ るため とい うよ りは,新たに入手 した流動性 (DF)を用いて新たな生産活動 を行 うためであることが多 く,む しろ証券 化後 も銀行 との関係が継続 されることが多いのが現実の姿である
1 8 0
証券化であれ債権流動化であれ,原債権 に関する情報 (生産活動に関す る 情報)は経済が完全情報でない限 り,必ず どこかで生産 されなければな らな い。その部分 に銀行が関わ りを持つのな らば,その後の取引が市場を より多 く経 由す るか どうか とは関わ りな く,銀行による金融仲介機能が作用 してい る と考 えるべ きなのである
1 9。
3‑8
金融仲介機能 と市場型間接金融ケース③ 'の ように,銀行 ・企業間の取引が実質的に資金循環機能 を持た
1 7
こうした議論 に基づ き,深浦( 2 005
)は証券化 スキームを単純 に直接金融的スキーム と は呼べないことを指摘 した。ほかに も高橋( 2 0 0 4 )
な ど参照。1 8
企業が証券化を行 う教科書的な理 由はFa b o z z i ( 1 9 9 8 )
な どにい くつか挙げ られているほ か,(財) 日本資産流動化研究所 による企業関係者のインタビューな ども参考 になる。1 9
日本の証券化市場が全体 として どの程度の規模 なのかは,証券化スキームが多種多様 であることも合 ってなかなかぬ握 しに くい。参考 になる数値 として,不動産 ・金銭債権 を対象 とした証券化の発行残高が2 00 6
年9
月松でお よそ5 0
兆円であ ったこ とを指摘 しておく。
金融スキームの類型化と金融リバンドリング
川
ない状況について,銀行の金融仲介機能が空洞化 していると言い表す ことが で きよう。しか し,企業 と銀行が単純 に資金の受け渡 しだけを行 うときには, 必ず金融仲介機能が空洞化する とい うわけではない。
繰 り返 しになるが,金融仲介機能 とは資金の流れだけに着 目して論 じられ る問題ではない。資金が金融仲介機関を経 由する前後で,資金の取 り手 ・出 し手間に生 じる情報格差に変化が生 じるかが重要である。近年 の金融理論の 成果に従えば,貿出は,借手の情報 を預金者 に伝播 させ るビー クルの一つで あ るとされる。銀行の貸出には,第一 に,借 り手のデフ ォル トリスクが銀行 の負担で きる範囲内にあること,第二 に, 自らの リスクを とって貸出を行 う ことによって,借 り手に関する判断の正当性 を預金者 にアピールす ること, とい う情報発信 としての意味がある
2 0
。別言すれば,預金者が知 りえない借 り手の情報が銀行 自身の行動を通 じて発信 されてお り,その意味で銀行は情 報生産機能を持つ。預金者は, 自ら企業に投資す る (株主 になるか社債権者 になる) ときに必 要な情報費用 と,銀行の行動 を観察するための費用を比較 して行動 を決定す る。すなわち,企業 に直接投資 を行 うときにかかる費用は,借 り手の行動 を モニターする費用 と,借 り手 に契約を守 らせ るための費用か ら構成 される。
他方,銀行を経 由す るときには,銀行 にモニターを委託する費用 と,銀行そ れ 自体 をモニターす る費用が必要 になる。 よって, もし銀行が貸出行動 を通 じて これ らの コス トを小 さ くで きれば (預金者 に銀行の行動を信頼 させ るこ とがで きれば),預金者は銀行預金を選択す るのである
21 。
したがって,銀行の金融仲介機能が空洞化 しているか どうかを判断するた めには,一連のシステムの中に,銀行 によって生産 された情報 が資金の出 し 手 にフ ィー ドバ ックされるメカニズムが内包 されているかどうかを確かめな
2 0
銀行 固有の業務の中に,多種 多様 な借 り手 に資金 を分散 させ る,銀行 の発信 す る情報 を預金者に信頼 させ る,ことを可能 にす るメカニズムが存在す る と考 え られている。21
この議論 についてはDi a mo n d( 1 9 8 4 )
を参照の こ と。ければな らない。た とえば,ケース③ 'の ように,貸出が企業の生産活動 と 接点を持たないまま預金 として銀行 に還流 して しまえば,金融仲介機能は空 洞化 している といえるだろう
2 2。
証券化の場合,確 かに企業 と銀行間では単純 に資金が往復 しているだけで あ る。 また,銀行が
SP
V とは直接接触 しない とい う特性のため,銀行 と生 産過程 との関係が間接的になる。加 えて,家計はSP
V とのみ接触す る。 そ れにもかかわ らず,情報生産磯能 としての金融仲介機能が失われているわけ ではない と考 える必要があ るのは,実物面 において生産過程 がSP
V と企業 にまたがるとい う証券化固有の要素があるか らである。本稿が この ような問題にこだわるのは,証券化スキームの性格づけを巡 っ てさまざまな議論が交わされた経緯 を踏まえての ことである。創設当初,証 券化市場は 日本の金融システムの直接金融化 を象徴する事象 として注 目され た。最近では他の関連する市場 ともあわせ 「市場型間接金融システム」を形 づ くる有力市場 として言及 され ることが多い。 こうした言葉の変遷は,金融 システム と不確実性が不即不離である以上,何 らかの形での情報生産機能が 不可欠であることを考 えれば妥当な もの といえるだろう。すなわち,借 り手 ・ 貸 し手以外の第三者 による情報生産機能の存在が金融仲介機能の本質である な らば,それを銀行 に短絡 させ る必然性はな く,また,銀行が隠伏的に関与 する場合を排除する必要 もないのである。
言い換 えれば,本稿では,借 り手 についての情報生産機能が貸 し手 か ら第 三者 に委任 されてお り,そ してその際 に委任 に伴 って発生す るエー ジ ュン シーコス トのほうが,委任 によって得 られる利得 より小 さ くなるような金融 システムを間接金融システム と考 えている。 この解釈を前提 とすると,証券 化は,第一に,銀行借入によって得 られた資源が原債権 になってお り,つま り,その段階で最終的資金の出 し手か ら銀行への委任がなされている と解釈
2 2 S2 ‑1
で示 した1 0 0 %
準備のケース も, これ とは異な る意味合いであ るが,空洞化が起 こ ってい る例にな りうる。金融スキームの類型化 と金融 リバン ドリング
21
で きる。特 に,事業の証券化では
,SPV
lによる貸出債権が存在 し,さらにSP
V1,2
が銀行 によって設立 されることが多い とい う事業の証券化の実情 を見る と,そ こには間接金融 という要素を見出さないわけにはいかない。第二 に,実際に生産活動が物的資産 を企業か ら譲 り受けた
SP
Vで行われ るわけではないことにも注意が必要である。 この ことは実務的な問題に とど まる論点ではな く,証券化スキームの本質に関わる重大な問題であろう。証 券化において,実際の生産活動はオ リジネ一夕によって行われているとい う ことに着 目すれば,それは (生産活動 とい う)実物的要素を残 したままで, ファイナンス部分をだけ切 り離す金融手法 ということがで きる。その過程 に おいて,生産活動 に関する情報 は証券を発行するSP
V によって投資家に伝 達 されるとい う構造 になってお り,ここに情報生産の委任 という側面が垣間 見えるのである。4
金融アンバン ドリングの起因と帰結以上述べて きたように,さまざまな金融取引スキームは,金融取引に含ま れ る個別要素の リバン ドリングすることに よって再現するこ とが可能であ る。 しかし, このこと自体は, リバン ドリング という分析視点の有効性を追 認するものであ り,一つの思考実験 として興味深い としてもそれ以上のもの ではない。本稿が強調 したいことは,この分析を通 じて金融アンバン ドリン グ とい う現象の意味するところを改めて問い直 してみたいか らである0
ただ し,金融アンバン ドリング と金融システム全体の関連を考えるときに 紘,い くつか注意を要する点がある。第一 に,アンバン ドリングによって, 資金循環経路そのものが拡大するかどうか という問題がある。アンバン ドリ ングが 「分解」である以上,資金循環の経路が増加するとい うことはあ りう るだろ う。 しか し,総体 としてみた とき,分解前の経路を凌駕す るだけの
「幅」が生 じるか どうかは一概 に論 じられない。た とえば,一つの取引を
5
つの要素に分解すれば,そこか ら全部で31
通 りの リバン ドリングが可能である。 これ ら
31
の経路 をすべて集計 して得 られ る資金循環経路 と, もとの一つ の経路の どち らが大 きいか,または どち らが効率的かは単純 には決め られな い。経路の複線化 によって新たな資金需要が掘 り起 こされる場合,個 々の市 場間競争 が激化 し不安定性が増す場合,二重投資が行われる場合など,さま ざまなケースを想定 して検討 しなければ金融 アンバン ドリングの社会的な含 意 を得 ることはで きない。言い換 えれば,アンバン ドリング以上に リバン ドリングの際に何が起 こるか考察することが重要なのである。
第二の,そ してよ り重大な問題は, リバン ドリングの過程 ・帰結 とその前 提 とな るアンバン ドリングが区別 しに くくな る場合があ る とい う問題 であ る。た とえば,ケース(丑において,最終的に実現す るのは伝統的な間接金融 スキームや
1 00 %
準備銀行だが, これ らは金融アンバン ドリング以前の状況 その もの にはかな らない。 ところが,SPV
lやSPV2
に体化 され る金融機能 は家計 ・企業 に割 り当て られている。つま り, リバン ドリングにおいて各機 能 を金融仲介機関ではな く,家計 ・企業に割 り当てても,同じように金融仲 介機能を作 り出せるのである。そ うだ とすれば,銀行の金融仲介機能は金融 アンバン ドリングの起因にな りうると同時に,金融アンバン ドリングの帰結 として も解釈す ることがで きるのである。いったい,金融アンバン ドリング とは何を意味するのだろうか。この循環論 を克服す る一 つの方法は,資金の最終的な出 し手 (本稿の場合 は家計)お よび資金の最終的な取 り手 (本稿の場合は企業)を起点 として考 え,金融仲介機能それ 自体 もまた リバン ドリングの結果 として解釈する とい うものである。すなわち,は じめに資金余剰主体 (家計)と資金不足主体 (企 莱)のみか ら構成 され る経済を考 える。 この状態では余剰資金の再配分がで きないため経済は 自給 自足 となる。 ここに新たに資金需給顕在化機能を導入 し,それを企業や家計,あるいは銀行 にどの ように割 り当てるかによって, 種 々の金融システムが形作 られてい くことにな り,その中の一 つに金融仲介 (間接金融)があるのである。要するアンバン ドリングの基点 とされ る銀行
金融スキームの類型化 と金融 リバン ドリング
2 3
による金融仲介機能 もリバン ドリングの帰結 として考 えることがで きる。 こ うした方法論の もとでは,銀行の金融仲介機能 を起点 としてアンバン ドリン グを論 じることは,特定の リバン ドリングの形 を前提 とした限 られた描写 に 過 ぎない ということになる。
この整理が有効だ と思われるのは次の理 由か らである。まず,中世 ・ルネ サンス期以降の東方貿易の発展の中で,銀行業が生まれて きた歴史的経緯 に 合致する。われわれは現代の金融システムを間近 に見なが ら論 じているため, 銀行機能が分解 される過程 にだけ 目を奪われがちであ る。 しかし,歴史的に は,富の偏在や事業家の勃興,地理観の拡大 といった社会変動の中で,生産 活動 と金融活動の分離が進行 し,それが銀行業の発展 を促 して きた。つま り, 銀行業 もまた経済の分業化の中で生 じた リバン ドリングの成果なのである。
この ように考 えれば,前節で述べた ように,金融仲介機能を構成す る要素が 銀行以外の経済主体に割 り当て られた として も,決 して不 自然ではない。
さ らに, この方法論は理論的にも正当である。最初 に金融仲介理論 を展開 し間接金融 とい う理論的枠組みを最初 に提供 したガ‑ レイ ・シ ョウ らが,実 はこれに類 した方法を用いていた ことは意外に知 られていない。彼 らの議論 は もともと経済成長に伴 う金融制度の発展過程 をモデル化 しようとした もの であった。そこでは,家計 と企業の間で物的資源が (物 々)交換 される原始 的な経済を出発点 とし,何 らかの金融デバ イスを用いた直接金融システムを 経 由して,一次証券 ・二次証券を用いた間接金融システムが形作 られてい く 経緯が描かれている。つま り,家計や企業が担 っていた余剰資源の配分機能 が,次第に専業化 されてい くことに主張の重点が置かれてお り,間接金融そ れ 自体が,家計 ・企業 ・金融機関の問での金融機能の割 り当て ・組み合わせ の変化の結果 として認識 されている。 これは本稿の立場 にかな り近 いもの と いえるだろう。
これに対 して,アンバン ドリングの議論 は必ず しも "銀行 による''金融仲 介機能を分割することだけに限定 されるものではな く,本稿の議論 は狭義に