長 崎 大 学教 育 学 部 自然 科学 研 究 報 告 第42号23〜26(1990)
CX2(Xニ0,S,Se,Te)の 分 子 構 造
濱 田 圭 之 助
長 崎 大学 教 育 学 部 化 学教 室 (平成 元年10月31日 受 理)
Molecular Structures of CX2 (X =0 , S, Se, Te)
Keinosuke HAMADA
Department of Chemistry, Faculty of Education
Nagasaki University, Nagasaki 852, Japan (Received Oct. 31, 1989)
Abstract
There are two possible structures for CX2 (X=0, S, Se, Te), a linear (D.h) structure or a bent (C2v) one. For a C2v, the three bands, vsX—C—X, vasX—C—X and 6X —C—X should appear in both Raman and infrared. For a Dcoh , hoWever, the /0( — C—X should appear in only Raman and the vasX—C—X and 6X—C—X, in only infrared, that is, a principle of mutual exclusion of Raman and infrared should hold.
The present author observes the evidences of D©h for CX2 in the obtained Raman and infrared spectra.
1.諸 言
二 酸 化 炭 素CO2は 赤 外 に 二 つ の バ ン ド,非 対 称 伸 縮 振 動 μ。,0‑C‑0と 変 角 振 動 δ0‑
C‑Oバ ン ドが 現 わ れ,ラ マ ン に 対 称 伸 縮 振 動u、0‑C‑0が 現 わ れ る と こ ろ か ら,は や く か ら直 線 形 のD。 。hであ る と さ れ て い た 。類 似 化 合 物CS2,CSe2お よ びCTe2の 構 造 を 研 究 す
る た め に,こ れ ら 化 合 物 を 合 成 し マ ラ ン お よ び 赤 外 ス ペ ク トル を 測 定 し た 。
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2.実 験 2・1 合 成
CO2はドライアイスを気化して使用した。CS2は市販品を購入し,これを精製して使用し た。CSe2,CTe2は次のようにして合成した。
2・1・1 CSe2の合成
融解セレンに塩化メチレンの蒸気を窒素ガスと共に送ると,次の反応によりCSe2を得る ことができる。
2Se十CH2Cl2 → CSe2十2HCl
CSe2(沸点125〜126。C)は,黄金色で悪臭を放ち水に不溶で,放置すると褐色を経て黒色 に変化する。上の反応の収率が悪く,IR測定のため十分な試料を得ることができなかった のでCCl、溶液として測定した。
2・1・2 CTe2の合成
CS2の雰囲気で,Teの極と炭素の極の間でアーク放電を起こさせると,テルルとCS2と が次の反応式に従って反応してCTe2を生ずる。
2Te十CS2 → CTe2十S2
CTe2(b.p.175。C)は,赤茶色の悪臭を有する気体でCS2に溶ける。収率が極めて悪く,
IR測定のため十分な量を得ることができなかったのでCS2の溶液として測定した。
2・2 測 定
赤外は島津IR−450型赤外分光計により,ラマンは日本分光R−500型ラマン分光計によ り測定した。明るい色の資料に対してはAr+レーザー(4880A)を使用した。ダークカラー の資料に対してほHe−Neレーザー(6328A)を使用した。
3.結果および考察
測定したラマンおよび赤外スペクトルを図1に示した。またスペクトルの帰属を表1に
まとめた。
表1 CX2(X二〇,S,Se,Te)の振動スペクトルの帰属
CO2 CS2 CSe2 CTe2
Raman IR Raman IR Raman IR Raman IR
μs X−C−X (P)1290
(P)1393]
(P)662
(P)810]
(P)362
(P)630] ?
μas X−C−X 2275 1507 1280 1020
δ』X−C−X 667 394 308 ?
[]内はδX−C−Xの倍音を示す。
いずれの場合もラマンと赤外の交互禁制が成立しており、直線形のD。。、構造であること は確実である。すなわち赤外の高波数バンドが非対称伸縮振動μ、、X−C−Xに帰属され,
i 42 = 23‑26 (1990) 25
2500 2000 1 500 l OOO 500 o
Fig. 1
* 1)
*2)
2500 2000 Iooo 500
i500Raman and Infrared Spectra of CX2 (X=0, S, Se, Te)
CSe, ) CC1+ ?'*^ i ) : 7 h ) > CCl+cD ; 7 h ) ; I v* ft ) CTe, ) CS, "*^' ; ); h )v > CS, ); 7 h /v lv, ft )
O
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低波数バンドは変角振動δX−C−Xに帰属される。ラマンバンドは,対称伸縮振動バンド 1本のはずであるが2本のバンドが現われている。低波数側のバンドが対称伸縮振動に帰 属されるべきもので、高波数側バンドは変角振動の倍音と考えられる。CO2の場合この倍音
(1393cm−1)が非常に強く現われているのは,対称伸縮振動(1290cm−1)との間にFermi共 鳴を起しているためであろう。CS2,CSe2になるにしたがって,両者間の差が大きくFermi 共鳴の度合が小さくなっている。CTe2に関しては十分な量が得られず,満足すべきスペク
トルが得られなかった。