真鶴町の リゾー ト開発規制条例 と自治体の都市計画権限
論 説
真鶴町 の リゾー ト開発規制条例 と 自治体 の都 市計 画権 限
桜 井 良 治
1.真鶴町の リゾー ト開発 と開発規制
(1)真鶴町の概要 とリゾー ト開発
真鶴町 は、気候 の温暖なの どかな半島の まちである。神奈川県西南部 に位置 し、都心 まで約100 kmの位置 にある。北 は小田原市、西 は湯河原町 に面 し、相模湾 に突 き出た半島にある山がちの落 ち着いたたたず まいの美 しい まちである。面積約7.02 km2の神奈川 県で二番 目に小 さい まちであ る。平均勾配10mと急峻 な地形 のため、可住地 も県内で一番小 さい1ヽ
真鶴町の人口 は約9,800人であ り、20年来横 ばい傾 向にある。世帯数 は約3,200で、観光、漁 業、農業t石材業 な どを主 な産業 としている。半島の先端が県立真鶴半島 自然公園に指定 されて いることもあ り、近年、観光の まち として見直 されているの。
小 田原 まで14分、 そ こか ら東京駅 まで新幹線で35分とい う便利 な位置 にある。就業者人 口4 千人余 りの うち、小 田原市 をはじめ とす る町外へ通勤する人が56%を占めている。
真鶴 町 は、昭和60年代 に入 ってか らの リゾー ト開発 ブームの波で、リゾー トマ ンシ ョンの建設 ラッシュによ り、 自然環境が破壊 され始 めた。
さらに、大規模開発 によって、上水道の需要が増加 し、町民への水の供給が、危機 にさらされ た。無秩序な開発か らこれ までの豊かな暮 らしを守 るため、新 しいルールが必要 になって きた。
そ こで、真鶴町 まちづ くり条例が、平成5年
6′
目 15日 の真鶴町議会で可決 され、半年間の経過措 置 を置いて、平成6年1月 1日 か ら施行 され ることになった3、
首都圏 に近 い真鶴町での住宅開発の進展 に対・処 す るため、昭和49年4月 に真鶴町宅地開発指導 要綱が施行 され、真鶴町の開発規制の第一歩 となった。
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昭和62年には、リゾー ト法が施行 された ことによって、首都圏で過剰 になった不動産資本が こ の小 さな半島の町 に押 し寄せ ることになった。水源不足 の真鶴町では、昭和62年4月に、 日量 3,000m3の水 を供給す る湯河原町か らの受水施設が、3か年計画で ようや く完成 した。この結果、
一 日計画給水量8,000m3が確保 され ることになった。
(2)開発規制 の概要
同年6月には、真鶴町土地利用方針が、策定 された。東海興行 ビラ真鶴 (地上7階地下1階、 93戸)の開発計画が起 こり、県の土地利用上、方針策定が求 め られた ものである。 これ以前 は、
伊東、熱海 方面 に開発が集中 し、真鶴町 は水不足がネ ックにな り、具体的なプロジェク トはなかっ たり。
昭和63年3月には、真鶴駅前 に青い外観の7階建 てのマ ンシ ョンであるサニークレス ト(共同 住宅72戸)が完成 し、即 日完売 した。翌 日には1,000万円のプレ ミアがついて転売 され るという 投機的売買が横行 した。 これ を機 に、 リゾー ト・ マ ンシ ョン開発圧力が一気 に高 まり、町役場 の 窓 口には連 日5〜10件の相談が持 ち込 まれ る異常な事態 となった 〔『 日経新聞』94.10.23〕 。
同年 12月 には、真鶴町議会 に宅地開発等適正化対策特別委員会が設置 された。平成元年6月に は、真鶴町宅地開発指導要綱が改正 された。同年6月 30日 には、町議会で リゾー トマ ンシ ョン建 設凍結宣言 を決議す るに至 った。
当時、開発 に対 す る許認可権 は、神奈川県等の特定行政庁が握 っていた。住民 と議会が建設 に 反対 しているのに、真鶴町では行政指導 によって、規模の縮小や計画の見直 しを求 める くらい し か対策がない とい う状態 に置かれた。許認可権 のない町の開発規制権限に限界 を感 じて、平成2 年2月には助役が辞任 し、同年 6月 には町長 も辞任するに至 った。
同年 7月 にその後 を継 いだのが、町議であった リゾー トマ ンション建設反対派の現在の三木町 長である。三木町長 は、選挙公約 として、「水 を止 める条例 をつ くりたい」 としていた。 そ こで、
平成2年9月には、「真鶴町上水道事業給水規制条例」と「地下水採取の規制 に関す る条例」の水 に関す る二条例が、議会で全会一致で制定 された 〔『日経新聞』
94.10。 23〕
。新町長が当選 した平成2年8月 8日に、「土地利用指導基準」とい う要綱が施行 されている。 こ れ は、後の「土地利用規制基準」の前身である。開発地内に「空地比」 を何割設 けなさい とか、
「緑化基準的な数値」 を規制 した りす るものである。 ほ とん どの開発がかな り大 きな土地 を用意 していたので、 これ らの基準 はク リアーされていた。
もう一つの公約 は、従来か ら技術的規制 を中心 として実施 されて きた宅地開発指導要綱 を法的
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真鶴町のリゾート開発規制条例と自治体の都市計画権限
規制の色彩の強い「 まちづ くりの総合条例」 に格上 げす るということであった。条例制定の約一 年前の平成3年4月 か ら、検討が開始 された。素案作成後、県 との調整や住民 に対す る説明会が 11回行われた。
2。
マ ンシ ョン拒否宣言 としての給水規制条例(1)給水規制条例
水源が乏 しい真鶴町の主要河川である岩沢川 は、「水 なし川」と呼 ばれている。真鶴町の水需要 は 1日 8,000ト ンである。その うち 3,000ト ンは、湯河原町か らの給水 に頼 っている62,800ト ン を小田原か ら給水 している。残 りの 2,200ト ンのみを真鶴町で まかなっているとい う実情である。
昭和62年の リゾー ト法の制定以来、真鶴町は慢
1性
的な断水 に悩 む状態が続 いた。休 日に観光客が 増 える と断水 し、町役場 の職員が給水 にかけず り回 るとい う状態が続 いていた。大 きな河川がな く、旧来か ら水不足問題 に苦 しんで きた真鶴町では、 リゾー トマ ンシ ョンの建 設 ラッシュによる水不足問題 に直面 した。バ ブルの絶頂期である平成2年9月に、上水道給水規 制条例 を制定 して、新規の リゾー トマ ンションに対 して、水道の供給 を行わない ことを宣言す る に至 った。現在すでにあるマンシ ョンの多 くは、 この条例の制定以前に、すでに承認 されていた ものであるつ。
「給水規制条例」の内容 は、一 日最大 20ト ン以上 の水 を使 う新規 の大型のプロジェク トに対 し ては水 を供給 しない というものである。給水規制条例 の第 1条で は、この条例 の目的 として、「真 鶴町上水道事業が上水供給 の限界 に達 している現状 に鑑み、新規 の給水需要 を規制す る措置 を講 ず ることによ り、懸念 され る断減水の事態 を回避す ること」 を挙 げている。
第2条では、この条例 の対象建築物 として、
(1)中
高層建物で20戸(20世 帯)以上建築す る場合、(2)1日最大使用量が20立法 メー トル以上の もの、
(3)収
容能力が100人以上の旅館、ホテル、寮、寄宿舎等が挙 げ られている。
この条例 は、交付の 日か ら施行 され るが、経過措置 として、「現 に給水 を実施 している者及 び給 水の承認 を得ている者 はなお従前の例 による」 として、既存の建築物 を保護 している。
水道法15条1項に、「正当な理 由が有 る場合、上水道の需要者の要求 を拒 んではな らない」 と いう規定がある。 これは、あ くまで も原則である。水不足 に対処 した この条例 は、それに矛盾 し た ものではない。
この条例 は、無秩序 な大規模開発 に対 して、決定的な打撃 を与 えるもの となった。 この条例の
一‑67‑―
制定がバ ブルの崩壊 と重 なった こともあ り、 これ以後、大規模 な新たな開発の申請 は激減 してい る。
(2)地下水採取 の規制 に関す る条例
それ と同時 に、「地下水採取の規制 に関する条例」が制定 された、大手ゼネコンの大型開発か ら 町の乏 しい水源 を守 ることを目的 として、制定 された ものである。開発敷地内に自己水源 を確保 す る動向に対 して、規制 をかけた条例 である。町 を4つの地域 に別 けている。一つの地域 は、町 の水源が近 いので、全 く井戸 を掘れない と定 めている。残 りの3つの地域 については、井戸 の設 置 については、町長の許可制 としている。しか も、その中の用水量 を制限す る内容 となっている。
この条例 の施行前3か年間に、地下水の調査 を行 っている。 その結果、渇水期 には、現在利用 し ている地下水量 をその まま採取 して しまうと、地下水脈が下がって、海水が入 って しまうとい う 調査結果が指摘 されている。 この結果 をふ まえて、用水量 を制限す るための条例 を制定すること になった ものである。
3.現行開発規制手法の限界 と新たな手法
(1)宅地開発指導要綱の限界
バ ブル期の リゾー ト開発が押 し寄せた当時、都市計画法上の規制がかかる開発行為 は、3,000平 米以上 とされていた。それに対 して、開発指導要綱では、1,000平米以上 を開発行為 ととらえてい た。当時、一件だけ、町 を経 ないで県に対 して確認 申請が出され、裁判 になつたケースがあった。
現行法で も、3,000m2以上の開発 は、前 もって、都市計画法32条に基いて、町道 の管理者であ り 排水 の接続や上水道の給水 をす る町長の同意が必要 とされている。この都市計画法32条の同意 を 得 るための前段階 としての話 し合 いの機能 を持 っていたのが、昭和49年4月に施行 された宅地開 発指導要綱である。当時、宅地開発指導要綱 には、具体的な規制 はほ とん どな く、「駐車場 は総戸 数の3分の1以上確保す る」等の技術基準があるだけであった。
平成元年 6月 に改正 された「真鶴町宅地開発等指導要綱」では、 リゾー トマ ンション対策 を定 めている
6)。
その第1条では、「 この指導要綱 は、真鶴町の歴史的風土 と自然環境 を守 り、「明 る く、住み よ い町」の実現 を期 し、無秩序な宅地等の開発 を防止 し、中高層建築物 による地域住民への被害 を 排除す るため、開発行為者等の指導 を行 うことを目的 とす る」 と定 めている。
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真鶴町のリゾート開発規制条例と自治体の都市計画権限
第3条では、この要綱で適用 を受 ける開発行為 について、定 めている。開発区域の面積が1,000 ぽ以上の もの及び中高層建築事業で高 さが10 ml以上 の もの と規定 している。
第4条では、 これ らの適用 を受 ける事業主 は、法律で定 め られた申請 を行 う前 に、あ らか じめ
「開発行為等事前協議書」 を町長 に提 出 し、公共公益施設等の基本計画及び費用負担等 について 協議 し、承認 を受 けなければな らない としている。
第23条では、中高層建築事業の事業主 に、 日照や遮薇 (建築物 の窓の目隠 し)のみな らず、管 理人 の常駐又 は管理組合の設置 を義務づ けている。
第24条では、開発 区域の給水計画 について、町長 と事前協議するほか、給水 に必要な水源費相 当額 を負担す ることを定 めている。 リゾー トマ ンシ ョン等 の中高層建築物 を対 象 とした内容 に なっている。
宅地開発指導要綱 の場合、負担金的な もの も取 つていた。条例 にシフ トした段階で、負担金的 な ものは一切 な くしている。「み どり基金」への寄付協力 とい う文言 もあるが、運用上、あ くまで も任意の協力 を求 めるかたちになつている。大本の条例 を傷 つけないために、危険な ものを排除 してい る。最近 は、建設省 な どに規制緩和 の傾向がみ られ、徴収 しに くくなっている面 もある。
負担金 については、6,000m2の 開発で、教育負担金が1,600万円に ものぼっている。学校 の施設 改良な どに とっては、有効 な財源であった。
(2)給水規制条例 の宣言的性格
給水規制条例 は平成2年9月 18日 に施行 している。今 あるマ ンシ ョンは、それ以前 に承認 され た ものである。従 って、今 ある8棟のマ ンシ ョンは、基本的 に給水 されている。ただ し、井戸を 掘 っている「 自己水」利用のマ ンションもある。
真鶴町の水不足 は、深刻である。昭和50年代始 めごろに、水不足で、夏場 にな ると職員が 自宅 待機 して、給水活動 をした ことが ある。その後、「水がないか ら丼戸 を掘 る」とい う傾向が増 えた。
しか し、地下水が不足 ぎみになったので、それ も規制す ることになって しまった。
水道法15条第1項では、「水道事業者 は、事業計画 に定 める給水区域内 (真鶴 町は全域給水区 域内)で、需要者か ら給水契約の申出を受 けた時 は、正当な理由がなければ、 これ を拒 んではな らない」 とい う給水 申込みの受諾義務が規定 されている。真鶴町の給水規制条例 はこれ に抵触す るので はないか と、マスコミに取 り上 げられ、厚生省の批判 もあった。しか し、他の自治体 で も、
まちづ くりという大 きな観点の中での開発規制制度完備の手段 として給水規制 を用いることの是 非 について裁半Jにな り、勝訴 した判例がある。真鶴町の条例 に も同 じような性格がある。ただ し、
一‑69‑一
「真鶴町 にはもう水 はない」 とい う点で、 もっ と深刻 な状況 に置かれている。
水道条例 は、現在 も有効である。水道 については、現在 ほ とん どのマ ンションが無人化 してい るので実害 は少ない。 しか し、「乱開発お断 り」の宣言的な意味合 いがある。 デベ ロッパーの姿勢 を正すための効果 を発揮 している。マ ンシ ョンの購入者 にちゅうち ょを促す点で も、効果的であ る。 まちづ くり条例 を作 った法体系上、その前段 の手段 として、水道条例の役割 は大 きい。
給水規制条例 については、いつ まで存続す るかは微妙な面 もある。とりあえずは、「水量がない か ら給水で きない」 という正当な解釈で運用 しているが、給水事業者である真鶴町 としては、給 水の努力 をす る義務 もある。 ゆ くゆ くは給水量 をふやす方向で、検討することになるであろう。
4。
まちづ くり条例制定の経緯 と特徴(1)まちづ くり条例制定の経緯
90年2月には、現在 も係争中のマ ンシ ョン建設問題が、町の協議 を経ないで県へ確認 申請 され、
大 きな問題 となった。同年4月には、新真鶴町総合計画が策定 された。 5月 には、開発等の問題 処理 について、助役が辞任 した。6月には、同 じく、町長が辞任す るとい う異常な事態 にまで発 展 した。同年 7月 1日 には、現職町議2名による町長選が施行 された。開発抑制 を強 く公約 に掲 げた現町長が当選 した。8月 8日には、真鶴町土地利用指導基準が施行 された。 9月 17日 には、
真鶴町上水道事業給水規制条例及び地下水採取の規制 に関す る条例が、施行 された。 これ以降に 開発 され るマンシ ョンには、水道の供給規制がかか り、開発敷地内に丼戸 を掘 ることが義務づ け られ ることになった。バ ブルの崩壊 の時期 とも重 なって、 これ以後、半島内でのマ ンシ ョンの建 設 ラッシュは収束 に向かった。
バ ブル崩壊後の91年4月 には、真鶴町 まちづ くり条例策定作業が開始 された。同時 に、緑のマ スタープランの改定作業、風致地区指定調査、第3次地下水総合調査が完了 した。同年5月 19日 には、都市計画法・ 建築基準法の一部改正 について、衆議院建設委員会参考人 として真鶴町長が 出席す るに至 った。
93年3月 1日 には、用途地域拡大予定地域住民、真鶴半島地域住民 に対 して、合意形成が得 ら れ、同年6月 15日 の町議会 において、条例が可決 され、6月 16日 に、「真鶴町 まちづ くり条例」
として交付 された。
94年1月 には、リゾー トマ ンシ ョン建設 ラッシュに対応 して、「真鶴町 まちづ くり条例」が施行 された。「全国一律 の都市計画法な どでは地域 の実情 に合わない。がけ地の多い真鶴では、や りよ
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真鶴町のリゾート開発規制条例と自治体の都市計画権限
うによっては どんな大 きな建物 も立 って しまう」とい う理由で、条例が制定 された ものである
(『
日 経新聞』94.10。 23)。
(2)まちづ くり条例 の特徴
この条例では、「土地利用規制基準」として、建築基準法 には定められていない建築物の高 さ制 限 を設 けている。例 えば、自然環境や景観 を保全す る地 区は、10m以上 の建物 は建 て られない と い う内容 になっている。 また、開発 に異議のある住民 は、一定数の署名で公聴会 を開 き、議会 に よる是非の議決 を求め られ る住民参加 も保証 された。「美の基準」を設 けて、望 ましい建物 を誘導 す る試み も盛 り込 まれている 〔『日経新聞』94.10.23〕。
真鶴町 まちづ くり条例 の特徴 は、大 き く別 けて三つある。第一 に、土地利用規制基準 をもって、
町中で独 自の形態規制 を行 うことである。第二 に、美の基準 を定めることによって、真鶴 らしい 建築 の質 を保 つ ことである。第二 に、開発行為 の手続 き規定 を明確化 し、住民参加の手続 きを設 けた ことである。住民が納得で きない開発行為 に対 しては、公聴会の開催 を請求す ることがで き ることになっている。 きちん と議論がで きる公聴会 を開催 した後で、町長の判断を付 して報告す ることになる。 その判断に不服がある場合 は、議会 に対 して議決の請求 をす ることがで きる。一 件 ごとの開発行為 に対 して、議会 も含 めた判断 をす ることになっている。
まちづ くり条例 に違反す る場合の制裁措置 として、「町の必要な協力 を行わない」と規定 してい る。最終的 には、議会の議決 に対 して も不服 な場合 は、裁判 になることもあ りうる。ただ し、法 律で認 め られていない行政の指導要綱 の中の トラブルで裁判 になると,いうことで はな く、「住民全 体の合意 を背景 として判断 を付 した ものに対 して裁判 に望 む」という手続 き規定 を定めた ことが、
重要である。最終的 に裁判で負 けた場合、町全体が負 けた とい うことになる。このシステムを作 っ た ことが、 まちの最 も大 きな財産である。
5。
まちづ くり条例の内容(1)条例 の 目的 (第 1章、1〜 7条
)
真鶴町 まちづ くり条例 (平成5年6月 16日 、条例第6号)は、町民の暮 らしを豊かにすること を目的 として、まちづ くりの計画や方法、開発や建築の際のルール、まちづ くりを進 めるに当たつ ての議会の役割や町民の参加 についつて、定 めているつ。
.
第1条では、「 この条例 は、真鶴町総合計画 に基づ き、真鶴町の豊かで 自然 に恵 まれた美 しいま
‑71‑
ちづ くりを行 うため、建設行為の規制 と誘導 に関 し基本的な事項 を定めることによ り、町民の健 康で文化的な生活の維持及び向上 を図 ることを目的 とす る」 と定 めている。 この条例制定の目的 が、建築行為の制限によって住民の生活 を守 ることにあることが、明確 にされている。
第2条では、「環境 に係わ るあ らゆる行為 は、この環境の保全及び創造 に貢献 し、町民の福祉の 向上 に寄与 しなければな らない」 と規定 している。環境 の保全 は、町民全体 の利益ためになされ
るべ きことが、確認 されている。
(2)まちづ くり計画 (第2章、8〜11条
)
①土地利用規制基準 (町独 自の用途地域指定、9条)
第8条では、町独 自の まちづ くり計画 について、定めている。まちづ くり計画 について、「土地 利用の方針及び地区別整備方針、建築物の整備・ 誘導の方針及び意匠、 自然環境・ 緑地の保全及 び公共空地等の整備方針等 を定 めなければな らない」 と規定 している。詳細 な土地利用 と建築物 の意匠等 を定め、環境 に配慮 している点で、国の都市計画法の詳細規定 を定 め、不備 を補 う内容
となっている
8)。
第9条 3項では、「町は、特 に必要があると認 めるときは、一一―建設行為 を抑制す る『保全区 域』 と建築行為 を誘導す る『誘導区域』 を定 めるとこがで きる」 と規定 している。町全体の開発 と開発の抑制 について、計画的に行 う内容 となっている6保全 と開発の両面 について、明確 に区 域 を区分 していることは、町の計画的な発展 を目指 した現実的な対応 になっている
9ヽ
真鶴町では、 自然 との共生 を図 りなが ら新 しい まちづ くりを進 めるために、土地利用規制基準 を規則 で定 めている。 この基準 は、現在真鶴町で指定 している「用途地域」 に即 して、 それ を真 鶴町の特性や地域 の実情 に合わせて定 めた ものである。
今後、建物 を建築 す る際 には、この基準の範囲内で、「美の原則」に基づいて建築す ることになっ ている。なお、土地利用規制基準 は、93年6月に施行 された新 しい都市計画法 を踏 まえて、定 め
られている
10。
②美の原則 (風景 と眺望の保全、10条
)
第 10条 では、「町は、まちづ くり計画に基づいて、自然環境、生活環境、及び歴史的文化的環 境 を守 り、かつ発展させるために、美の原則に配慮するもの とし、その基準については規則で定
める」 としている
11)。
ここでは、建築物の美観やまちの景観に及ぼす影響が、一個の建物の単体 としての問題 を超 え て、 まち全体の景観 との調和の問題 として、取 り扱われている。眺望は、表面的な美 しさの基準
‑72‑
真鶴町のリゾー ト開発規制条例 と自治体の都市計画権限
を超 えて、風景 と一体 化 した建築 の集合体 の一部 としての役割 を認識 す るた めの手段 とな って い る。
美観 の問題 が、 まちの歴史や文化 と一体 的 に とらえ られ てい る こ とが、特徴 で あ る。 国 の土地 利 用 に関 す る法体 系 の「建 築 自由の原則」 か ら地域 の実情 に則 した私権 の制 限へ 向 けて、実質 的
に、大 きな一歩 を踏 み出 した規 定 とな ってい る。
土地利用規制基準により、高さや規模等について規制しても美しいまちづくりを行うことはで きない。そこで条例では、①場所、②格づけ、③尺度、④調和、⑤材料、⑥装飾と芸術、⑦コミュ ニティ、③眺めの8つ の美の原則を定め、その具体的な内容については、デザインコードとして 定められている。
この8つの基準 は(ひとつひ とつが重要であると同時 に、全体 としての まとま りが、大切 にさ れている。「美の基準」 は、強制 され るものではな く、みんなで創 ってい くもの とされている。
デザインコー ドは、8つの美の原則 に基づ き、それぞれ「手がか り」、「 キーワー ド」 を示 しな が ら、その「解決法」 を豊富なイラス ト等でわか りやす く表示 している。建築 をする際には、で
きる限 り計画 に取 り入れ るように指導 されている
12L
(3)建築行為の手続 きと町民参加 (第4章、15条〜25条
)
第12条では、「建築行為者 は、建設行為 を行お うとするときは、 まちづ くり計画 を実施 す るた めに必要な公共公益施設の整備 について、町 と協議 しなければな らない」 と規定 している。その 項 目 として、公園及び緑地、駐車施設、消防施設、道路、上水道施設、排水施設、環境衛生施設、
その他の公共公益施設が、定 め られている
13ゝ
町が長年 にわたって培 って きた風景や文化 を根 こそぎ破壊す るような建築行為 は認 めない とし た点で、画期的な条例である。国の土地法体系上の所有権絶対主義 に基づ く都市計画法の「建築 自由の原則」の下では実現で きない土地の共同利用 と建築の統一美の実現 を目指す内容 となって いる。
建物 を建築 した り、土地の造成 を行 うときには、条例 に定 め られている手続 きに従 って、町や 町民 と協議 し、合意 を形成す ることが、必要 とされている。 自己の居住用の住宅や小規模 な建築 行為等 を町民が 自分の生活のために行 う場合 には、この手続 きは除外 され る。しか し、「 まちづ く
り計画」、「土地利 用規制基準」、及 び「美の基準」については、すべての建築行為 に適用 され るこ とになっている。
手続 き的 には、建築行為 を行 お うとす る者が、 まずその旨を町に届出なければな らない。 それ
―‑73‑―
以降、次の3段階の手続 きが必要 とされている。第1段階 は、近隣関係者 との協議である。第2 段階 は、町 との事前協議である。 この段階で協議が整 った場合 には、近隣関係者や町長 との間で 協定 を締結 し、建築確認の申請や開発許可の申請が行 なわれ る。 しか し、合意が形成 されない場 合、建築行為 を行 う者及び町民のそれぞれが、町長 に公聴会の開催 を請求で きることになってい
る。
町長が公聴会 を開 く必要があると判断 した時 は、 まちづ くり審議会 の議 を経て、公聴会 を開催 す ることになる。 その後、町長 は、報告書 を作成 し、 この報告書 に対 してさらに町民や建築行為 を行お うとする者が不月艮な ときには、 それぞれ議会で議決す ることを求 めることがで きる。
建設業者が この ような手続 きを経 ない とき、 または指導・ 勧告 に従わない場合 な どには、当該 建設事業者の氏名 を公表 した り、町の必要な協力 を行わない ことがあると定 め られている10。
真鶴町の まちづ くり条例 の特徴 は、 これ らの手続 きの中で、町民の参加が しっか りと位置づ け られていることである。 また、建築 を行お うとす る者 にも、公平 に意見 を発表する機会が設 けら れていることである15、
6.独自の土地利用規制 (土地利用規制基準の詳細
)
(1)用途地域内の詳細 な用途制限
一―条例施行規則一一
真鶴町 まちづ くり条例施行規則 (平成5年10月 6日)第 3条で は、土地利用規制基準 を定 めて いる。 その第1項では、「別表第
2」
として、以下の表が定 め られている。第4条では、条例第9条 3項に規定す る「保全区域」 について、国の法規制 と関連 させて、具 体的 に定 めている。
(1)自
然環境保全条例 (昭和47年神奈川県条例)、 (2)神
奈川県立 自然公園条例に基づいて、第1種特別地域 に指定 された区域 とす ることが、示 されている。
また第5条では、条例第9条第3項に規定す る良好 な開発 を誘導す るための「誘導区域」 につ いて、次の区域 とす ることが規定 されている。
(1)自
然公園法 に基づいて第二種特別地域 に指定 さ れた区域、(2)都
市計画法 (昭和43年)第 12条の4に規定す る地 区計画の策定等が予定 されている区域である。
また第6条では、「美の基準」について、別 に定 めるデザインコー ドによることが、定 め られて いる
16)。
用途地域 (131.8 ha)自 体 は、昭和49年の都市計画法制定時か ら存在 した ものである。第1表 に示 された詳細 な地区区分 は、それ を独 自のネー ミングで行 った ものである。都市計画法 との整
―
‑74‑真鶴町のリゾー ト開発規制条例 と自治体の都市計画権限
第1表 真鶴町独 自の用途制限一覧表 I(用途地区内
)
合性 をとっている。半島の町 として、臨海地 区の観光 と産業の発展が図 られているのが、特徴的 である。
住居地区の良好 な開発 を誘導するために、普通住宅地区や専用住宅地 区に地区計画 を導入 して いる。 また工業地区では、地域 の特色ある地場産業の育成方針が、明確 にされている。
地 区区分 土 地 利 用 の 方 針 建ぺい率
容積率 建築物 の用途 の制限 高 さの 最高限度
敷地面積 の
臨 海 地 区
最小限度│[][[[瞥
菫 [][][]
(準
工業地域 に相 当)60° /0
200° /。
準工業地 区内で禁止 され てい る建 築物及 び150m2を 超 え る 工場 は建築 で きない。
15m
100nぽ
商業地 区
│]0〔景曾』]Oli詈 署:
(近
隣商業地域 に相 当)800/。
200° /。
近隣商業地域 内で禁止 されて い る建築物 は建築で きない。
12m
100nぽ
竜漫 住宅
1穆
層暑[言誉i巣勇雰凍塞[
(二
種住専 と住居地域 に相 当)60° /。
200° /。
第 1種住居地域内で禁止 され ている建築物、500m2を超 える 店舗、事務所、宿泊施設 は建 築できない。
甲地 区12m
120nぱ
集合住宅 は一戸 あ た り30m2を 加算 し た面積
乙地 区10m
150nぽ
集合住宅 は一戸 あ た り30ポ を加算 し た面積
竃 昌 住 宅
│[営
ξ
]う::::::て居
二種住専
(一
部住居地域 に相 当)
60%
200%
立 ヶ窪・ 風越地区地 区計画
(平
成6年)の
地 区整備計画 による(準
工業地域に相当)60° /。
200° /。
準工業地域 内及 び第二種住居 地域 内で禁止 されてい る建築 物 で工事 を除 いた建築物 は建 築 で きない。
12rn
ただ し、工作物 は この限 り でない
120nf
集合住宅 について は、一戸 あた り
30 m2を
加算 した面積工業地区
1督写ξ登望冤笙晉香塚響儀
F
(準
工業地域 に相 当)
509イ
200° /。
注 .ま ちづ くり条例施行規則「別表第
2」
による‑75‑
(2)白地地 区内の用途制 限
①用途制限成立 までの経緯
リゾー ト法の下での乱開発の結果、都市計画法上の用途規制がない白地地区に、 リゾー トマン シ ョン建設の波が押 し寄せた。用途制限上の様々な規制が乏 しかった ことが、開発 を誘発 した。
これ を阻止す る意味で、 自地地 区に町独 自の用途制限をかけた ことは、意義が大 きい。
真鶴 町 は、全域が都市計画区域であるが、市街化 区域 と調整 区域の区別のない未線引 きの状態 である。またほ とん どの地域 は、用途制限のない白地地域である。国の現行法では、自地地域 は、
建ぺい率70%、 容積率400%の一般的規制 しかない。そのため、用途地域周辺の未線引 き地域が リゾー トマ ンシ ョン開発の対象 になって しまった苦 い経験がある。
これに対 して、何 らかの規制 を加 えたい と考 えた町では、当初、都市計画法の開発規制の手法 の一つである「風致地区」の指定 を検討 していた。風致地区の許可権限は県にある。 しか も風致 地区には、普通風致地 区 (建ぺい率40%、 高 さ制限15m)と特別風致地 区 (建ぺい率20%、 高
さ制限8m)の二つのニ ュー しかな く、規制が厳 しす ぎるとい う反対が強 く出された。
後継者 のいないみかん農家 を中心 として、将来 の都市的土地利用 をはか りたい とい う動 きが あった ことが、風致地区指定の妨 げになった。 また、観光業者か ら、将来の事業拡大がはか りに くい として、反対があった。 自地地 区にある農地 については、すでにほ とん どが農業振興地域 の
「農用地」 に指定 されていた。
自地地 区内では、県が許認可権 を持 ち、農地 として しか利用で きない状態 にあった。 そ こへ さ らに風致地 区をかけることには、二重の足かせ になった。 しか も許認可権が県にあ り、町の判断 を離れて しまうとい う問題 もあった。町 としては、「住民の合意 を担保 とす る」という考 え方か ら、
これ らの反対意見 を尊重する結果 となった。
②改正都市計画法 との連動 ― 一市町村マスタープランーー
1990年の都市計画法の改正では、18条の2に、市町村 の主導性 をで きるだけ認 め、地域 に密着 した都市計画 を実現す るため、市町村 マスタープランの策定 について定 めている。 このマスター プランは、市町村 の都市計画基本方針 と都道府県知事の「整備・ 開発・ 保全の方針」 に基づいて 実施 され ることになっている。
真鶴町 まちづ くり条例第8条は、その動 きを見すえた中で、「 まちづ くり計画」について、先 に 条例 で指定 した ものである。 これ は、都市計画法でいうところの市町村マスタープランと同 じも のである。ただ し、市町村マスタープランは大 まかな都市計画の方針・ 枠組 みを定 めるだけであ
り、細かい規制 は計画の中に入 っていない。
―
‑76‑第2表 真鶴町独 自の用途制限一覧表 H(白地地区内)
地 区区分 土 地 利 用 の 方 針 建ぺい率
容積率 建築物 の用途 の制限 高 さの 最高限度
敷地面積 の 最小限度 緑住地 区 自然環境及 び景観 と調和 した
良好 で低層 の住宅地 として漸 次整備・ 誘 導 を図 る。
50° /。
100%
第一種 中高層住居専用地域 内 で禁止 されている建築物 は建 築 で きない。ただ し、ホテル・
旅館等 は この限 りで はない。
12rn
屋根 は傾 斜屋根 と す る。150nf
集合住宅 について は一戸 あた り40ぜ を加算 した面積 景観普通
地 区
優 れた 自然環境 と景観 を保全 す るため開発 は抑制する。た だ し、町の観光、工業及び農 業 の発展 に寄与 し、 自然環境 と景観、特 に海 の眺望 と斜面 緑地 の保全 を図 るものについ て は、許容す る。
50° /。
100%
第一種低層住居専用地域内で 建築できるもののほか、以下 の建築物は建築できる。
①店舗、飲食店 ② ホテル、
旅館 ③石材採取・ 加工に要 する施設
10m
屋根 は傾 斜屋根 と す る。
150nf
集合住宅 について は一戸 あた り40ma を加算 した面積
半島景観 特別地区
真鶴半島の優れた 自然環境 と 景観 の保全 を図 るため開発 は 抑制 す る。 ただ し、半島の自 然環境 と景観 を生か し、眺望 と緑地 と調和 した ものについ ては許容す る。
50° /。
100%
第一種低層住居専用地域 内で 建築 で きる もののほか、以下 の建築物 は建築で きる。
①店舗 、飲食店 ② ホテル、
旅館
10rn
屋根 は傾 斜屋根 と す る。150nf
集合住宅 は一戸 あ た り40m2を 加算
自然環境 地 区
真鶴町の貴重 な自然環境 を将 来 に継承 で きるよう保全 を図 る。
一切 の建築行為の禁止。ただ し、 自然環境 の保全又 は町の振興 を 図 るため特 に町長が許可 した ものについてはこの限 りで はない。
真鶴町の リゾー ト開発規制条例 と自治体の都市計画権限
注.真鶴町 まちづ くり条例「土地利用規制基準」 による。
国の都市計画法・建築基準法の一部改正の中で、従来、指定地域内の建ぺい率70%、容積率400%
しかなかった白地地域 について、建ぺい率・ 容積率が、メニ ューの中か ら選べ ることになった。
都市計画審議会の議 を経て、特定行政庁 (県)が指定すれ ば、メニュニ化 された中か ら建ぺい率、
容積率 を採用す ることもで きるとい う法改正がなされた。建ぺい率が、50%、 60%、 70%、 容積 率が、100%、 200%、 300%、 400%の中か ら選べ る とい う内容である。
真鶴町 としては、風致地区の指定 を断念 した ことをふ まえて、 このメニューの中か ら、建ぺい 率50%、 容積率100%という一番厳 しい基準 を採用することについて住民 に問い、合意 を得 るこ
とがで きたのである。
③真鶴町の用途制限の内容 と特徴
「緑住地区」は、基本的に、都市計画法上の低層住宅系の用途地域に相当している。「景観普通 地区」は、海の眺望を中心 とした景観 を保全するため、開発を抑制する区域 となっている。地場 産業に必要な建築物 も建築できることになっている。「半島景観特別地区」は、観光業などに必要 な施設の建築のみを認め、 とりわけ半島の特色 と景観 を生かした開発以外は抑制する地区となっ ている。「自然環境地区」では、基本的に一切の開発行為が禁止されている。全体 として、半島と
‑77‑
しての町の産業や景観等の特色 を生か した建築以外 は認 めない としている点が、特徴である。半 島の町 としての個性が明確 に打 ち出 されている点で、将来 の町の発展 を見通 した意義深 い規制 内 容 となっている。 自然環境や景観 を尊重 した建物の建築のみを認 めている点 は、町の将来の発展
に とって、最 も意義深い点である。
平成7年の4月 1日 か ら県条例が改正 されて、以上の真鶴町が定 めた自地地 区の建ぺい率 と容 積率 については、特定行政庁(県)による指定がなされた。従 って、現在では、建ぺい率 と容積率 については、法的な担保があるとい うことになる。ただ し、真鶴町の全域 に設 けた高 さ制限 につ いては、真鶴町には一種住専がないので、完全 な「横だ し規制」 とみなされ る。 また、敷地面積 の最小限度 と道路か らの壁面後退 について も、すべて「横だ し規制」である。
そ もそ も、国の法律では用途制限のない自地地区に用途制限 を設 けた こと自体が、完全 に町独 自の横 だ し規制である。ただ し、「第一種 中高層住居専用地域 」や「第一種低層住居専用地域」と いった表現 に見 られ るように、平成4年の都市計画法の改正で細 か くなった新用途制限 を参考 に
して区分 した とい う面 もある。
これ らの国の法律 にはない規制 を設 けた ことについては、様々な議論 の余地 はあるが、条例制 定 当時の町の乱開発 の進行状況 を考慮すれば、 うなず ける ところである。例 えば、仮 に一種住専 の10mとぃ う高 さ制限があった として も、真鶴町の ような平坦地がほ とん どない地域では、効果 を発揮 しに くい。大規模開発の波 を食 い止めることは、容易ではない。斜面の勾配 に沿 って、建 物が階段上 にどん どん伸 びてい くことになる。高 さ制限 と容積率 の両方 を同時 にお さえない と、
大規模 な中高層建築物 を実質的に縮小方向に導 くような規制 は困難である。
また、斜面 に沿 って伸び上がった建物 は半島の どこか らで も見 えて しまうので、景観上の問題 も大 きい。 したが って、以上の ような地域の実情 に対応 した規制が出来上がった ものである。
(3)無指定地域 における都市計画法の規制 との比較
無指定地域 における建築の形態規制 をみると、国の都市計画法では、当初、道路斜線、隣地斜 線 の二項 目について、ゆるやかな規制があった。建ぺ い率・ 容積率 についてのみ、厳 しい規制が み られただけである。平成6年の改正 によって、建ぺい率0容積率がメニ ュー化 され、条件 に応 じて変わ ることになった ものである。
それに対 して町条例 は、用途制限があることが、最 も大 きな違いである。建ぺい率・ 容積率 に ついて も、国の法規制 より倍以上の厳 しさが、示 されている。高 さ制限 も、10m又は20mと厳 し く設定 されている。壁面後退 について も、道路か らlmと決 め られてい る。敷地の最小限度 につ
‑78‑
第3表
現行都市計画法と町条例 との形態規制の比較
都 市 計 画 法
町 条 例 初
当
改正(平
成6年)
限 率 限 制 退 線 線 線 度 制 o容積
制 規 後 斜 斜 斜 椰 途 讐
さ 影 面 路 地 側 畷 用 建 高 日 壁 道 隣 北 敷
適用30m/勾配1.5 立上が り31m/勾配2.5
し し し
/ な な な
し し な
な
し し り し し し
一ヒ
二
ユ
↑
↑ な メ な あ な な な
50//100060//200
105ζ
は12rn な し 道路 か らlmし し し
ぽ な な な 15
真鶴町の リゾー ト開発規制条例 と自治体の都市計画権限
注.真鶴町作成資料による。
いて も、150m2と 厳密に定められている。無指定地域 について も、無秩序に建物が乱立 しないよう な法規制がなされている。国の都市計画法の不備 を補 う規定 として、注 目され る。
全国の無指定地域 の土地利用の多様性 を考慮 すると、 自治体毎 に規制する方が地域 に対応 し易 い。 しか し、 自治体 の権限の及ぶ範囲 に限界があ り、法規制の罰則がゆるやかな ことを考慮する と、罰則 の厳 しい国の法律で厳 しい形態規制 を設定す る方が望 ましい面 もある。国の厳 しい法規 制の下で、 自治体が地域の実情 に応 じて規制 を緩和す る方が望 ましい という自治体側の意見 も根 強 くみ られ る。
フ.用途地域別開発計画の現状
(1)都市計画法上の用途 区分 と開発計画の現状
下記の表では、開発計画 と開発済の計画のみについて示 されている。この他 に、「開発承認済計 画」がある。 これは、開発済の計画 とほぼ同数の12件、面積34,408ぽにのぼっている。バブル 崩壊 の影響 もあって、現状 では とどこおっている計画 も多いので、省略 している1つ。
①用途地域
真鶴町の面積は702 haであるが、町域全体が都市計画区域 となっている。この全体 を 100%と した場合、平成5年12月 13日の時点では、そのうち、用途地域は113 ha(16%)と なっている
(昭和49年決定)。 用途地域の うち、第2種住居専用地域が21 ha(3%)、 住居地域が54 ha (8%)、 近隣商業地域が16 ha(2%)、 準工業地域が22 ha(3%)と なっている。特に良好な
―
‑79‑―都市計画区域面積
師
開 発 計 画 内 訳 開 発 済 計 画
件 数
開発面積 構成比件 数
開発面積 構成比用
途 地 域 113ha16° /。
7件 16,278nf 8.2% 2件 2,943m2 7.6%第2種住居専用地域 21ha 3% 1件 3,593m2 1.8%
住 居 地 域 54ha 8% 4件 9,837m2 5.0% 1件
2,292nぽ 5。
9%近 隣 商 業 地 域 16ha 2%
準 工 業 地 域 22ha 3% 2件 2,848nf 1.4% 1件 651nf 1.7%
用 通
さ無指定地域 589ha84° /。 40イ
牛 182,488m2 91.8%11響
午 35,901m2 92.4%半 島 自然 公 園 地 域 138ha
20° /。 13♯
ト 80,281m2 40.4% 4件 13,447nf 34.6%特 別 地 域 48ha 7%
普 通 地 域 90ha
13° /。 13rト
80,281nf40.4° /。 4′
ト 13,447nf 34.6%自 然 環 境 保 全 地 域 96.7ha 14%
その他用途無指定地域 354.3ha
50° /。 27′
午 102,207nf 51.4% 7件 22,454nf 57.8%計
702ha100° /。 47響
キ 198,766m2100.0° /。 13′
ト 38,844m2100.0° /。
第4表 真鶴町都市計画区域面積に対する開発面積一覧
平成5年
12月
13日付注.真鶴町作成資料による。
地区の形成 を目的 として定 め られた地 区計画区域 は 18.8 haを 占めている。
②用途無指定地域
これに対 して、用途無指定地域 は589 ha(84%)も ある。 その うち神奈川県 自然環境保全条例 に基づ く「真鶴半島 自然公園地域」(昭和29年指定)は 138 ha(20%)あ る。 これは、 ほ とん ど が町有地である。その うち、開発が届出制 になっている第1種、第3種の「特別地域」48 ha(7%) は、ほ とん どが原生林 (保安林)である。開発が許可制 になっている「普通地域」90 ha(13%) は、おおむね私有地 になっている。 この普通地域 は、幹線道路沿 いの用途地域周辺の丘陵地帯 に 多い。マ ンシ ョンを中心 とした大規模 開発が多発 して問題 を引 き起 こしているのは、 この地域 に 多い。
マ ンシ ョンは、ほ とん どが、半島の道路沿いの「普通地域」 に点在 しているか、あるいは何 も 指定 のない北部 の自地地域 に建設 されてい る。特 に、用途地域周辺の自地地域 に多い。
「 自然環境保全地域」96.7 ha(14%)は、町有地が大半 を占めている。「 その他の用途無指定地 域」が354.3 ha(50%)と なってい る。 この地域 は、開発か ら守 られている。
「 その他の用途無指定地域」での開発計画 は、27件、102,207m2(51.4%)と 最 も多 くなって
い る。
‑80‑―