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(1)

弗化亜鉛蒸着薄膜(Ⅰ)

(白金片上の島の高温顕微鏡的観察) 久保為久麿・前原一典

(昭和43年11月30日受理)

Evaporated ZnF2 (Ⅰ)

(High Temperature Microscopic Study of Islands of ZnF2 and ZnO on Pt Piece)

Ikumaro KUBO and Kazunori MAEHARA (Received November 30, 1968)

Abstract

Decreasing rates of the areas of islands both of ZnF2 and ZnO on Pt pieces have been studied by a high‑temperature microscope. It has been shown that the rate is proportional to the size of island. The rate decreases exponentially with the reciprocal of Kelvin temperature of the substrate. The

sums of the adhesive and the cohesive energy of ZnF2 on Pt piece over and

under 872℃ have been estimated to be 2.23 and 3.23 eV, respectively. The

rate of ZnF2 island at its melting point has been observed to be smaller than the rate for other temperature regions.

緒言

前報1)において, Pt片上のZnF,蒸着薄膜の相変化の詳細を知るために,乾燥したArガス ふんいき中で薄膜の温度による変化を高温頗微鏡で連続観察した際ZnF,の鼻の面積が減少

していくのが観察されたことを述べた0本報では, Pt片上のZnF之およびZnO薄膜の面積減 少速度とそれらの温度との関係を解析した結果を報告する。

ここではこれらの物質の昇華および気化エネルギーを求めた。この値はPtるつぼ内での f日本物理学会で昭和45年川月16日講演

*長崎大学教育学部物理教室

* *長崎造船大学工学部(長崎大学教育学部非常勤講師)

(2)

14 久保 為久麿・前原 一典

ZnF2→ZnOの単結晶成長機構を考える場合に重要な役割をもつものである。 本実験で用いた 方法のようなこの種のエネルギー測定法は未だ発表されていないようである。

実  験  要  領

試料は5耀n2のPt片上に気化法で蒸着したZnF。薄膜である。測定に適した試料をうるた N2_→

       Pt Pipe

   o

o

o

o

o

o

一幣■ヤ嘱唱●》・●置,

Pf Crucible

一Furnqce PfPiece

Chσrge

第1図 Pt片上のZnF2蒸着薄膜作製装置。

めには,十分薄くて,単純な形をした 島を作る必要がある。第1図のように,

乾燥したN2ガスをPtパイプを通して送 り込む。ZnF2を〃20麗!させるPt片(5

を6h伽6θ7内に流し始め,その内部の気圧が外気圧と等しくなった後,

昇させる。

 試料の温度を所定の値まで上げて一定に保ち,島状のZnF。が昇華または気化してその島の 面積が減少していくのを連続観察ならびに写真撮影を行う。この写真について時間的に変化し た島の面積を測定する。所定の温度として,ZnF。の融点(872。C),低温領域の8200Cおよ び850。C,高温領域の900。Cおよび950。Cをえらんだ。

 皿.ZnOの島の観察

 ZnOについてもZnF。の場合と同様にして島の面積減少速度を測定する。 高温顕微鏡の 3!4gθ6肋〃2667内の試料台に渡した2本のPt線上にZnF2を蒸着したPt片をのせる。s如望 h4幼07内の気圧を10−3〜10−4解卿Egにして,試料の加熱温度を〜4000Cまで上昇させてか ら,oh伽加〆内に湿ったArガスを流し始める。6加吻667内の気圧が外気圧と等しくなって

吻耀)をPtパイプの先端のバッフル の上におく。ZnF。粉末の加熱温度を 1050。C〜10900Cに保ち,Pt片付近の 温度を950。C〜970。Cにする。このよう にして約5時間保つとPt片上に観察に

適したZnF。薄膜の島がえられる。

 1.ZnF2の島の観察

 上のようにしてえられた試料を高温顕 微鏡で温度を一定にして,島の面積の減 少していく速さを測定する。

 まず,高温顕微鏡のs如gεoh耀加7 丙の試料台の上に2本のPt線を渡し,そ の上に試料をのせ顕微鏡で見て,連続 観察に適した島を決める。次に3如96

6加〃2加7内の気圧を10−3〜10−4〃2,n∬9 にして,試料の加熱温度を上げる。

〜400。Cになったとき乾燥したArガス         再び温度を徐々に上

(3)

Fumoce  Specimen  Sfqgb Chomber

Exhous†S†

Ar

ooooO

Φ

ooooO

Reservoir ooooo

Ar GOS

Wωer

Heq†er

MicrOscope

第2図 高温顕微鏡のs緬8θohα励砂内での試料装着要領。

から,再び温度を徐々に上げていくと〜6000CでZnF2の島が加水分解されてZnOになる。一)

 更に,試料の温度を所定の温度まで上昇させて一定に保つとZnOが昇華して,その面積が減 少していく。これをZnF2の項で述べたと同様にして調べる。所定の温度としては950。C,

1010。Cおよび10500Cをえらんだ。

実  験  結  果

巳oo

y

b

>50

(A)

8500C

820。C

870。C

0 5

一一一一 S

io      I5

(10働5cm2)

 1.ZnF2

 島の外貌の変化過程の一例を第5 図(a),(b),(c)に示す。(a)図 は820。Cのときの島の模様である。

(b)図にはその島の端が50分後に消 えているのがみられる。(c)図では 更に150分後にこの島の疲跡だけがの こっているのがみられる。連続観察し てえられた測定値を元にして所定の温 度丁(。K)についての測定開始当初 の島の面積sとその減少速度11との関 係を表わしたものが第4図(A),(B)

である。 これらの図の測定点をみる と,面積減少速度yは測定開始当初の 島の面積Sが大きいほど大きくなって いる。そこでyはSに比例するものと 仮定して,γとSの関係を直線で表わ した。各所定の温度において島の面積減少速度を求めるには,それぞれの島の初期の面積が等 しいことが望ましい,・しかし面積一定の島を作製することは困難である。観測した島の初期の

(4)

16 久保 為久麿・前原 一典

面積や形状は必ずしも等しくないので第 4図(A),(B)において,所定の温度に ついて島の異った初期面積に対する測定 値から同一面積に対する島の面積の減少 速度をえらぶ必要がある。そこで,それ ぞれの島の同一面積に対応するところに 測定値から内挿値(推定値)をとった。

それらの点を直線で結び想像上の一定な        1

面積をもつ島に対する屠V臓了 グラ フを作ると第5図のような平行な直線群

となる。

 H.ZnO

 第6図は所定の温度についてZnOの 島の面積とその減少速度との関係を表わ したものである。ZnF2の場合と同様に して,第6図から島の面積一定に対応す       1る玩vρ5.一 一グラフを作ると第7図の ような平行な直線群となる。

      第4図

300

態2。・

y

b

↑㏄

x

x o

(B)

9 9500C

goO。C

   0         5         10         鑑5

         →S(io 5cm2》

ZnF2の測定開始当初の島の面積と面積減少速度の関係。

   (A)ZnF2のM.P.以下に対するもの。

   (B)ZnF2のM.P.以上に対するもの。

300

 200

2

溢!OOε

Q

b

10

5

Voporisofion

bq C

・0

・b

・C

財,R

08。l x曇0−5cm2 b6.3〃 

C 4.4 〃  々

Sublimo奮ion

O

b

C

 80       8,5      9,0

      →置/丁 置σ弓/・K)

      1 第5図想像上の一定な面積をもつZnFaの島に対する」ηレの5。一7

(5)

60

8 ζこ,40

第6図

20

笈ム

●      ●

.  lO50●C

1010●C

950●C

      2       ◎       ,6        80 −

     −S(io−5cm2,

ZnOの測定開始当初の島の面積と面積減少速度の関係。

lOO

50 8

§

9

》 10

   ●    ●    ● Sublimo曾ion

5.OX lσ5cm2     〃3。8 〃

2.5 命  々

7:5       8。0

       一一ケレ 『〔量Q 4/。K》

      1 第ワ図 想像上の一定な面積をもつZnOの島に対する伽y鳳一テー

(6)

18 久保 為久麿・前原 一典

 1)一っの島に含まれるZnF2またはZnOの粒子の総数をN, 島の単位体積当りの粒子数 をπ,島の平均の厚さをL,面積をSとすると

   ノV=nSL

とおくことができる。総粒子数の減少速度は両辺を時間1で微分して    4/V  4S    4L

   一=n一一一L十麗s−

    4    4     4!

となる。厚さの減少速度は面積の減少速度に比べて,はるかに小さいと考えられるから,右辺 の第二項は第一項に比べ無視することができる。

 したがって

   41V    4S

   マ万÷κL一万       (1)

となる。

次にψ嘱を薄膜と下地との付着エネルギー,ψを薄膜の昇華または気化エネルギーとすると

   砦aexp(一ψ劉   

(2)

とかける2)。ただし,aは定数,々はボルツマン定数,Tは薄膜の温度(QK)である。

(1),(2)式より,

   y一害鴇・xp(一ψ笥

と表わせる。両辺の対数をとると         a ψ伽十ψ 1

   」%y÷加一一    一         (5)

       πL   々   T

となる。ゆえに」%yと1/Tの関係は直線的であり,この直線の傾きは一(ψ昭+ψ)1んとな る。第5図,第7図では推定値が略々直線上にのっているのがみられる。これらのグラフから ψ嘱+ψを求めると次のようになる。

       第 1表

ZnF2 ZnO

気 化 昇 華 1昇

ψα¢+ψ(07)

2.25 5.25 1.05

 豆)第5図において,二組の直線群の傾きが変化する付近では異常な測定点が現われてい ることは注目すべきことである。 この点に対応する温度はZnF2の融点(872。C)に近い。

ZnF。の融点では加えられた熱エネルギーは相変態に消費され,島の形状や大きさの変化の速 度は鈍ると考えられるが,測定値はこの融点付近で島の減少速度が急に減少し,融点以上では 急激に増加することを示しており,上述の考察の正しいことを裏書きしている。

 匪)第1表のZnF。の昇華に対する甲嘱+ψの値に,他の方法で求められた大まかな値3)

ψ=0.50θyを用いると, ψ磁=1.956γとなる。 またZnF2の結晶化のエネルギーとして,

5.25−2.25・=1.00θyが得られる。

(7)

 IV)ここで用いたZnF2の島は薄膜というよりもむしろ伽躍であり,したがってZnF2ま たはZnOとPt片との付着エネルギーψ嘱は測定にかかってとないのではないかという意見4)も ある。確かにここで用いた試料の島は伽躍ではあるが,測定したのは島の面積の減少速度 で,その島の周囲の形状に重点をおいている。この島の周辺においては非常に薄い膜になって いるものと考えられるので,ψ鰯を無視しなかった。

 Pt片上のZnF。とZnOの島の面積の減少速度を測定した。その面積の減少速度は島の大き さに比例して大きくなり,試料の絶対温度の逆数の指数関数的に減少する。また,ZnF2の凝 集エネルギーとPt片との付着エネルギーの総和は融点以上では2.256y,融点以下では5.256y であり,ZnOのそれは1.05θyであった。 これから求めたZnF2の結晶化エネルギーおよび ZnF2とPt片との付着エネルギーはそれぞれ1.000yおよび1.96yである。また,ZnF2の融 点近くでは,ZnF2の島の面積減少速度は他の温度領域に比べて小さい。

 尚,助言を賜わった東大教授吉田鎖理学博士に感謝の意を表します。また久保研究室の藤井 光広助手ならびに江上慶記君,舛谷達夫君の助力もこの仕事の達成に欠くことができなかっ

た。

参  考  文  献

1)久保 為久麿,藤井 光広。江上 慶記:長崎大学自然科学研究報告,第19号(1968)19−25.

2)」.Frenke1:Z.Physik,26(1924)11ワ.

5)化学工学協会:物性定数,第5集(丸善株式会社)(1965)156.

4)日本物理学会(1968年秋の分科会)の講演時における質疑.

(8)

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参照

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