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本学付属学校児童生徒における 身体発育の特性について

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(1)

本学付属学校児童生徒における 身体発育の特性について

松 村

1 緒

 最近における児童生徒の身体発育は,年を経る毎に向上がみられる事は衆知の事であろ う。しかしながら,文部省の統計などの資料をみても,その全国平均と比較し,九州各県 の値は南下するに従い,低い値を示していると云う過去の報告がある。

 そこで今回,筆者は,それらの原因究明を行う上の基礎資料として本学付属小,申学校 の生徒の昭和35年生れ,34年生れの男女9年間にわたり,従断的に身体計測を行った結果

をもとに調査研究を進めた。

亜 調査方法およびその対象

   長崎大学付属小,申学校生

    昭和33年度生 男子111名 女子52名     昭和34年度生 男子109名 女子56名

 被験者としては,途中,転勤などの事情で転出,転入したものを除き,全員付属小学校 に入学し,付属中学校を卒業するまでの9年間の健康診断のデータをもとにした身長,体 重,胸囲,座高の4種目の測定結果である。これらを被験者に選んだ理由は,付属学校児 童生徒の現実を知る事は,学部としての今後の指導,研究の一環として必要なこと,第2 にいわゆる中流家庭の子供が多い事などの理由によるものである。なお,データー集めは 昭和44年度の9月〜12月に行ったものである。

皿 調査結果並びに考察  1)形態的発育

 Fig 1〜Fig 4は,付属学校男女児童生徒における身長,体重,胸囲,座高のそれぞれ の従断的な発育曲線である。 身長(Fig 1)については小学校4年前では,昭和33年生

(以下S.33とする)及び昭和54年生れ(以下S.34生とする)の男女とも,5〜6伽の差 があり類似の発育を示しているが,小学校5,6年では女子の発育が増加し,小学校6年 では逆に男子を1〜2粥上回っている。更に中学1年で男女の差はなくなり,以後男子の 発育が増大し,中学2年では4〜5粥,中学3年では7〜9伽男子の方が女子を上回って いる。又全体的にはわずかではあるが,S.33年生の男女共, S.54年生の男女を上回って いる。

 体重(Fig 2)については,2〜3Kgの差はあるが全体的に増加し,男女共,申学1年 位までは類似の発育を示しているが,女子の身長の発育量が減少した中学1年の頃にやは

り交差現象がみられ,この時期から男子が女子を上回るようである。胸囲(Fig 3)につ いては,小学1年時においては,5醐以上男子が女子を上回っているが,初潮及び,2次

(2)

性徴のみられる時期と思われる。小学5年から中学1年にかけて,一時交差現象がみられ るが中学2年から3年にかけては再び,男子が女子を上回るようになっている。

 座高(Fig 4)についても,身長同様に最初1翻位上回っていた男子が,小学校5年に 一時交差現象を示し,女子が男子を上回り,再びそれが中学2年にかけて交差し,中学3 年の時は,男子が女子を2伽以上,上回っている。以上のことから,身長,体重,胸囲,

座高の付属学校の全体の傾向は,小学1年時においては,男子が女子を上回っているが,

小学5年,6年時に交差現象をおこし,女子が男子を上回るが,中学1,2年時に再び交

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(3)

差をおこし,中学2年時から男子が女子を上回るという発育を示しているといえる。

 次に男女別に他の資料との比較を行った。すなわち,本学付属の資料と文部省スポーツ テスト資料における,S33年生れとS54年生れの生徒のデーター,および都市型の代表と して,昭和43年教育大学体育学部紀要にのせられている大塚,藤沢らの行った「成長期に おける形態的発達の従断的観察」より引用した教育大学付属児童生徒の資料をもとにした 三者の比較である。

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(4)

 Fig 5〜Fig12がそれらをグラフ化したものである。

 身長においては,付属,文部省,教育大ともだいたい類似の発育曲線を示している。し かしながら全国平均と云へる文部省のデーターに比較すると,都会型と云える付属,教育 大学とも2粥以上,上回っている。又都会型の両者を比較すると,最初,教育大付属の方 が上回っていたものが,小学校2年で交差現象を示し,以後,付属の生徒が上回っている が,この現象は教育大付属の被験者が29年生れであるのに対して,本学付属の場合は,S 33年,S34年生を使っているため,当然,教育大付属のそれ以後の発育もある事であろう

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     Fig 6

2 3

(5)

し,差があるとは云えないと思われる。

 女子の場合も三者とも同様の発育曲線を示すが,やはり文部省平均と比較して,教育大 付属,本学付属の方が発育が大きく,男子の場合と比較して特に上回った点は,教育大付 属の方が中学3年にいたるまで,本学付属を上回っていることである。

 男子体重においても,文部省平均に比べて教育大学付属,本学付属の方が全体的に上回 り,付属同士の比較においては,最初は教育大付属の方が上回っているが,中学3年時に は,本学付属の方が上回っている。このことからみても,教育大付属の方の早熟化という

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(6)

現象がみられるようである。このことは女子の体重においても男子のそれとまったく同様 の傾向を示している。

 胸囲の場合も体重と同様に,全体的には,男女共,文部省平均を教育大付属,本学付属 が上回っており,特に教育大付属の早熟化が目立つが,中学5年次においては,女子の34 年生を除き,本学付属生の方が上回っていると云う結果を得た。

 座高においては,男女共,教育大付属が:最初上回っているが,男子においては,中学1 年時に同一化する現象がみられるが女子の場合本学付属生の方が,文学省平均,教育大付

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(7)

属の平均よりも下回っているという結果であり,さきの3つの項目,身長,体重,胸囲と の比較からして,本学付属の女子の発育が下回っているようである。

 次に上記の結果に基づいて,考察を更に進める為に,三者のローレル指数,比体重,比 胸囲,比座高を求めた。Fig15〜20にそのグラフを示す。

 ローレル指数において,男子は全般的には下降型を示してはいるが,三者を比較すると 最初は都会型の教育大付属,本学付属共に,文部省平均を下回るが,小学6年時において

そこに特異な変化がみられる。すなわち,この時点から,都会型が文部省平均を上回ると

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   Fig12

2 3

(8)

いう傾向がみられる事である。本学付属の場合も33年生,34年生により,差位はあるがや はり同様の傾向を示すようである。しかし中学3年時においては,教育大付属の場合と比 べて,その値は文部省の値より低いと云う結果である。反して女子の場合は,男子の下降 型と比して,凹型の傾向を三者共に示す。更に5年時において,S.33年生の本学付属が 文部省平均を上回るが,全般的には本学付属生の方がその値は低いといえる。ここで男子 の場合と女子の場合を比較すると,一般に中学3年時においては,男子の方が,細長型の 傾向を示すのに対して,女子の場合は,小学5,6年時を時期に一般的には太ってくる傾

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2    3

(9)

向にあると云う事である。又全体的にみれば,本学付属生の場合,男女共に文部省平均,

教育大付属の平均を下回っているが,今後これらの差位に対しての原因究明がなされる事 により本学付属の特殊性がはっきりしてくるであろう。

 比体重においては,男女を比較すると,小学1年時〜小学4年時には大差はないが,小 学5年時を契起に交差現象がみられ,中学3年時に又同様の値を示している。又,三者の 比較をすれば,男子においては,文部省平均を教育大付属,本学付属共に上回っている。

途中,中学2年時に教育大付属と本学付属に交差現象がグラフの上ではみられるが,先に

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        Fig16

2 5

(10)

のべた様に生年の違いもある事であるし,大差はないと思われる。女子の場合は,男子の 場合と大差はないが,注目されるのは,本学付属34年生が,年令の経過に従い,他のグル

ープよりもその教育が下回っている事であろう。

 比胸囲の場合,全体的な傾向として,小学1年次においては文部省平均と比して教育大 付属,本学付属共に下回っていて細長型であるが教育大付属の場合,男女共に小学校4,

5年を契機に,文部省平均を上回る傾向を示すのに対して,本学付属の場合それが,男女 の為は多少あるが,中学1年から申学5年にその傾向がみられる事である。すなわち,都

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  Fig18

2 3

(11)

会型が進むにつれて,その様な早熟の傾向があるのに対して,本学付属の場合は,下降学 年の細長型が,中学2,3年時まで続くという事である。男女の比較をすると,最初は三 者共に,男子の方がまさっているが,中学1,2年以降は女子が上回るようになる。

 この事はローレル指数が全般的に女子が上回っている事からも明らかである。

 比体重が小学5,6年時に女子が男子を上回ることと比べて,発育の特性が示されてい る様である。すなわち第2次性徴として最初に現われてくるのは体重面であり,次に胸囲 面が関与してくるという事であろう。

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(12)

 次に比座高の場合,全般的には男女共,文部省平均を教育大付属,本学付属が下回っ ている傾向にある。このことは都会型の現象の一つとして最近にみられる脚長の児童生徒 が,栄養事情,生活習慣の変化とともにみられる一般的傾向であろう。

 又,男女の比較をすると,小学5年までは,男子の方がその値を上回っている様である が,中学1年頃から,女子の方がその値を上回る傾向にある。すなわち,比胸囲の場合と 似て,中学1年次が,2次性徴の契機であるといえよう。

 次に発現の時期を更に深く究明するために次の処理をおこなった。

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(13)

 すなわち年内発育量として速度曲線を求めた。データー処理の方法としては,例えば,

小学2年次の場合,小学3年次より,小学1年次の値をマイナスして,2で割り,2年次 発育量とした。それを図では横軸1−3と表わす。それらのグラフを,Fig21よりFig30

に示す。

 Fig21およびFig22は男女の身長の発育速度曲線である。男子の場合,教育大付属の 小学3年次に山をつくって,小学5年に大きな谷をつくり,他とは違ったカーブを示して はいるが,他の二者は同様の傾向を示し,最大発育の時期は大体において中学1年時に集 中している。すなわちこの時期に男子の身長が一番のびる時期と云えよう。一方女子の場 合,やはり教育大付属の初期発育量の大きさが目立つが,他二者は包まり大差のない発育 カーブを示している。又女子の場合の最大発育の時期は,小学5年から小学6年にかけて ピークであり,以後急カーブで低下しているのはこの時期においてほとんど成長がやんで しまうことを意味し,男子と比べて特異な傾向であるといえよう。

 Fig23およびFig24には体重の発育曲線を示してある。 これからみられることは,男 子の場合教育大付属,本学付属,文部省平均の順で発育量が初期に高く,特にめだつの は早熟と云える教育大付属が中学1年次にそのピークを示すのに対して,本学付属の場合 は,中学1,2年に同様のピークを,又文部省平均の場合は, 中学2年次と,一般に都 市化の進んでいると思われる順にその発育が早く現われるということである。女子の場合 も,大体において男子と同様のカーブを示している。すなわちそのピークの時期が,教育 大付属,本学付属の場合,小学6年次の頃であり,文部省平均の場合は,中学1年次と約

1年間の差がみられるのである。ここでも男子と女子を比較すると一年以上女子の早熟化 現象がみられる様である。

 Fig25および26に胸囲の発育曲線を示す。男子の場合,ここでも教育大学付属の値は初 期に高く,そのピークも小学6年時頃である。しかるに,本学付属,文部省平均は初期の 値は余り大差はみられないが,小学5年頃から本学付属生の増加量が増し,そのピークは 申学1年頃である。反して文部省平均のそれは,中学2年時まで引続き上昇のカーブを示

し,われわれが測定した範囲ではピークがみられない。 しかし身長,体重の側からみて も,大体中学1,2年にそのピークがあると思われる。又女子の場合も,男子と同様に 教育大付属のカーブが高原型の特異のカーブを示し,ここでもやはり早熟化がみとめられ

る。反して,本学付属のそれは53年生と34年置では多少カーブの違いがみられるが,やは り文部省のそれより早くピークに達する様子を示す。又このカーブでみられる特色の一つ は,男女共,33年生より34年生の方が,本学付属,文部省平均共にピークが早く来ている

と云う事であろう。

 Fig27および28には座高の発育曲線を示した。男子の場合,三者とも同様のカーブを示 すが,ここでの特色は,本学付属生のみが,中学1年時にピークを示している事であろ う。すなわち,身長の場合には,三者共,中学1年時にピークを示していたが,座高にお いては教育大付属,文部省平均がピークをその時期に示していない。この事は発育の過程

として,本学付属生に対して前二者がいわゆる胴長の体型になる傾向が強く,本学付属の 場合平均的には少し脚長の体型に移行していっているといえないだろうか。又このカーブ で,教育大付属のカーブが今までの傾向と違い全般的に他の二者を下まわっていることで ある。女子の場合は,男子に比べて教育大付属の早熟化が目立つのに対して,他の二者は

(14)

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F1930

ト3

(18)

同様のカーブを示しているが,ここでも文部省平均に比べて本学付属の値の低さがみとめ られる。そのピークは教育大付属の場合は小学4,5年に対し,本学付属,文部省平均共 に小学6年位の時期という結果であった。

 男女を比較すると,初期の値は男女共余り差はないが,男子が小学4,5年時に下降カ ーブを示し,再び小学6年時に上昇するのに対して,女子のそれは男子ほど,急激な下降 カーブはみとめられず,ピークの時期迄,フラットから上昇に移っている。この表からみ ても女子の発育の時期が男子に比べて,1,2年は早いと云えるであろう。

 Fig29および30にはローレル指i数の発育曲線を示す。男子の場合,ここでも教育大付属 のカーブは特異の形を示すが,他二者は大体同様の傾向を示している。 この表において も,都会型ほど早い時期に太って来ると云う傾向を示している。反して女子の場合,三者 とも同様の傾向を示しているが,男子に比べて太る量が多いと云う事が特徴であろう。

 以上の結果を総合すると,本学付属の児童生徒は,全体的には全国平均を上回っている が,都会型の代表である29年生れ教育大付属生よりはまだ劣っている傾向がある。又,本 学付属生の体型は全体的には細長型に属し,特に女子の方がいわゆる中流家庭の者が多い ために,都市化現象特に早熟化ということがみられることから,今後の問題として更に運 動能力などの機能的な研究を併せて行う必要があると考へられる。特に指導的な立場から 言えば,都市化が進むにつれて,機能面の低下をきたすという,他の例からみても,注意

を要する問題である。

 終りに,この研究を行うにあたり,終始協力いただいた,本学体育科,佐伯重幸氏,吉 本修氏に謝意を表すると共に,データー整理などでも手伝ってくれた,体育科4年生,佐 藤浄,三好純子,千賀敬子三君の労に感謝する。

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