国立大学法人 長崎大学 島嶼 S D G s プ ロ ジ ェ ク ト
Contents
1. はじめに 2
1-1. 島嶼 SDGs プロジェクトの組織体制 4 2. 長崎大学島嶼 SDGs プロジェクトの各分野の活動 6
2-1. 医療 6
2-2. 教育 10
2-3. インフラ 14
2-4. 地域振興 19
2-5. 水産 22
3. 島嶼 SDGs による SDGs 普及展開活動 25 4. 課題解決に向けたパートナーシップ、プロジェクト 27
4-1. 国内 27
4-2. 海外(スコットランド) 28
4-3. 島嶼域と連携した新プロジェクト(採択された事業) 29 5. SDGs 達成の 2030 年に向けて 30
6. 関連資料 33
6-1. スコットランド・ Highlands and Islands 地域の基本情報 33
6-2. へき地の公共交通~日本と海外における新しい取り組み~ 35
6-3. ジオパークについて 41
1. はじめに
2016 年にスタートした国際連合の SDGs (持続可能な開発目標)は「 Leave No One Behind /誰 一人取り残さない」を標榜して各種目標に全世界で取り組むものである。 「誰一人取り残さない」と 謳われたのは、 SDGs が目指す持続可能な開発、ひいては真の世界の平和と安定の実現のために、
社会的にも地域的にも「取り残される」人がいてはならないという事である。
長崎は 1945 年の原爆の投下ですべてを失って以来、平和を強く願う県であるが、現在日本の中、
そして世界の中でも先進する社会問題を抱えている。すなわち高齢化、人口流出である。表 1-1 は 世界の高齢化の進行を示しているが、日本は世界一高齢化が進んでおり、世界のほとんどの地域が 30 年後或いは 60 年後に日本と同じような状況になると予想されている。その高齢化世界一の日本 にあって、長崎は全国平均より 10% 前後高齢化率が高い島を多く抱えており(図 1-2 参照) 、こう した島では人口流出も深刻である。地理上、長崎は島の数が日本一多い県であり、本土にもへき地 を多く抱えていることから、長崎は日本において最も「取り残されやすい」地域があると言えるの である。
表 1-1 OECD (経済協力開発機構 ) による世界の老齢労働年齢比( 65 歳以上の人口が、 20 歳~ 64 歳までの 人口に占める割合)。日本と 2020 年の各国の数値を黄色でハイライトした。赤字は老齢労働年齢比が 50% 以上の国。 2020 年時点では日本のみであるが、その後 2050 年、 2080 年には多くの国が 50% 以 上になると予測されている。
原典: https://www.oecd.org/publications/oecd-pensions-at-a-glance-19991363.htm PDF の 174 頁参照
Table 6.2. Demographic old-age to working-age ratio: Historical and projected values, 1950-2080
1950 1960 1990 2020 2050 2080 1950 1960 1990 2020 2050 2080
OECD members
Australia 14.0 16.0 18.8 27.7 41.6 49.4 New Zealand 16.3 17.0 19.5 28.3 43.8 57.5
Austria 17.3 21.0 24.3 31.3 56.0 60.2 Norway 16.0 19.8 28.5 29.6 43.4 53.4
Belgium 18.1 20.3 24.8 33.1 51.3 56.8 Poland 9.4 10.5 17.3 30.5 60.3 68.6
Canada 14.0 15.1 18.4 29.8 44.9 54.0 Portugal 13.0 14.8 23.9 38.6 71.4 72.3
Chile 7.2 7.9 10.9 19.7 44.6 67.5 Slovak Republic 11.9 12.6 18.2 26.5 54.6 58.1
Czech Republic 13.9 16.3 22.0 33.8 55.9 52.8 Slovenia 12.5 13.7 17.3 34.7 65.0 60.7
Denmark 15.6 19.0 25.9 34.9 44.6 52.4 Spain 12.8 14.6 23.1 32.8 78.4 74.4
Estonia 19.3 17.7 19.7 34.9 54.9 63.2 Sweden 16.8 20.2 30.9 35.9 45.5 53.4
Finland 11.9 13.5 22.0 40.1 51.4 65.0 Switzerland 15.8 17.6 23.6 31.3 54.4 56.7
France 19.5 20.8 24.0 37.3 54.5 62.2 Turkey 6.5 7.0 9.4 15.2 37.0 58.2
Germany 16.2 19.1 23.5 36.5 58.1 59.5 United Kingdom 17.9 20.2 26.9 32.0 47.1 55.1
Greece 12.4 12.2 22.9 37.8 75.0 79.7 United States 14.2 17.3 21.6 28.4 40.4 51.1
Hungary 13.2 15.5 22.9 33.4 52.6 55.4 OECD 13.9 15.5 20.6 31.2 53.4 60.8
Iceland 14.1 16.4 19.0 26.6 46.2 64.5
Ireland 20.9 22.8 21.6 25.0 50.6 60.0
Israel 7.1 9.1 17.8 23.9 31.3 39.9 Argentina 7.5 10.1 17.3 20.2 30.3 45.5
Italy 14.3 16.4 24.3 39.5 74.4 79.6 Brazil 6.5 7.1 8.4 15.5 39.5 63.7
Japan 9.9 10.4 19.3 52.0 80.7 82.9 China 8.5 7.6 10.2 18.5 47.5 60.6
Korea 6.3 7.6 8.9 23.6 78.8 94.6 India 6.4 6.4 7.9 11.3 22.5 40.8
Latvia 18.1 17.7 19.9 35.5 53.0 49.9 Indonesia 8.6 7.6 7.7 10.6 27.3 41.0
Lithuania 17.5 14.0 18.4 34.7 55.7 55.7 Russian Federation 8.7 10.5 17.2 25.3 41.7 41.9
Luxembourg 15.8 17.6 21.1 22.3 43.8 50.1 Saudi Arabia 7.5 8.4 6.1 5.3 28.2 44.8
Mexico 8.0 8.3 9.6 13.2 28.9 50.9 South Africa 8.5 8.4 8.7 9.6 17.4 26.8
Netherlands 13.9 16.8 20.6 34.3 53.3 62.2 EU28 14.7 16.2 21.8 33.5 56.3 61.7
Note: The deomographic old age to w orking age ratio is defined as the number of individuals aged 65 and over per 100 people of w orking age defind as those aged betw een 20 and 64.
Source: United Nations, Department of Economic and Social Affairs (2019), World Population Prospects 2019, Online Edition (for future periods: medium-variant forecast).
この長崎に拠点を置く長崎大学は「地球の平和を支える科学を創造することによって,社会の調 和的発展に貢献する」事を理念に掲げ、医学・教育・工学・水産・環境・経済・多文化等の分野 を擁する総合大学である。 SDGs 以前より、地域の大学として各分野が島やへき地における研 究・教育活動を行ってきたが、 2018 年 11 月に SDGs を意識し、大学全体として自治体や企業、
NPO 、市民団体とのパートナーシップのもと、総合的に島の持続性の課題に取り組む「島嶼 SDGs プロジェクト」をスタートさせた。本プロジェクトでは、島やへき地との対話の元、地域 社会の維持のための知見を集約すると共に、海外の島嶼・へき地とも連携し、課題解決策の共 有・発信を行っていく。本報告書は島嶼 SDGs プロジェクトのこれまでの取組、今後の活動予定 を総括するものである。
図 1-2 2017 年 10 月時点での長崎県・市・町の人口と高齢化率(人口に占める 65 歳以上の人口の割合) 。 長崎県は全国平均と比べても高齢化率が高いが、長崎県内において、島の高齢化率は 10% 前後高いこ とが分かる。なお本図は前田隆浩教授の第 1 回長崎大学島と SDGs シンポジウム発表資料より引用し た(データは長崎県発表の長崎県異動人口調査 年齢別市町別推計人口に基づく)。
長崎市 人口:421,612人 高齢化率:30.4%
佐世保市 人口:251,703人 高齢化率:30.1%
島原市 人口:44,578人 高齢化率:34.0%
諫早市 人口:136,430人 高齢化率:28.8%
大村市 人口:93,834人 高齢化率:24.2%
平戸市 人口:30,787人 高齢化率:39.2%
松浦市 人口:22,601人 高齢化率:35.0%
対馬市 人口:30,345人 高齢化率:35.8%
壱岐市 人口:26,268人 高齢化率:36.9%
五島市 人口:36,020人 高齢化率:38.8%
西海市 人口:27,802人 高齢化率:35.8%
雲仙市 人口:43,011人 高齢化率:33.4%
南島原市 人口:44,793人 高齢化率:38.2%
長与町 人口:42,323人 高齢化率:25.1%
時津町 人口:29,933人 高齢化率:24.5%
東彼杵町 人口:8,078人 高齢化率:35.7%
川棚町 人口:13,759人 高齢化率:31.1%
波佐見町 人口:14,694人 高齢化率:30.3%
小値賀町 人口:2,440人 高齢化率:47.1%
佐々町 人口:13,662人 高齢化率:27.5%
新上五島町 人口:18,877人 高齢化率:39.7%
長崎県
人口:1,353,550人 高齢化率:31.0%
全国
人口:126,706千人
高齢化率:27.7%
1-1. 島嶼 SDGs プロジェクトの組織体制
図 1-3 島嶼 SDGs プロジェクトの組織体制
島嶼 SDGs プロジェクトは長崎大学内に設けられた「島嶼 SDGs 協議会」及び、内閣府の地方創生 SDGs 官民連携プラットフォーム内の「島嶼 SDGs 分科会」によって運営されている(図 1-3 ) 。島 嶼 SDGs 協議会は意志決定に関わる協議会員と、実際に島嶼やへき地域での活動を行っている準会 員から構成されており、海外とも連携しながら( 4-2. 参照)知見の収集・整理を行う。島嶼 SDGs 分科会は、島嶼 SDGs プロジェクトが島やへき地の自治体・企業・ NPO などと連携し、島嶼 SDGs 協議会で収集・整理した知見を共有・発信する場である。島嶼 SDGs 協議会、島嶼 SDGs 分科会に 関わる各種コーディネート、事務運営などは長崎大学内の島嶼 SDGs 事務局が行う。 2020 年 2 月 時点、各組織の構成員は以下の通り(敬称略) 。
長崎大学 SDGs 協議会 / 協議会員(意志決定 6 名)
- 永安 武(研究国際担当理事)
- 松田 浩(インフラ長寿命化センター長・工学部長・工学研究科長)
- 永田 康浩(地域包括ケア教育センター長)
- 中村 典生(地域教育連携担当副学長)
- 征矢野 清(海洋未来イノベーション機構副機構長)
- 赤石 孝次(社会連携・学生担当理事)
長崎大学 SDGs 協議会 / 準会員(参画、島での活動 10 名)
- ニシハラ グレゴリー ナオキ(環東シナ海環境資源研究センター)
- 池田 浩(地域教育総合支援センター)
- 利部 慎(環境科学部)
- 山本 郁夫(産学連携担当副学長)
- 才津 祐美子(多文化社会学部)
- 安武 敦子(工学部)
- 西川 貴文(工学部)
- 前田 隆浩(地域医療協働センター長)
- 下川 功(医学部)
島嶼SDGs事務局
(各種コーディネート/SDGsイベントの情報収集・情報発信/事務運営)
内閣府主催
地方創生SDGs官民連携プラットフォーム
「島嶼SDGs分科会」
島嶼SDGs協議会 長崎大学
学内組織・運営母体 学外組織・公式
(協議会員・準会員) (自治体・企業・NPO)
島嶼SDGsプロジェクト
知見の収集・整理 知見の共有・発信
島嶼 SDGs 分科会会員( 4 自治体)
- 中村 雅(長崎県 企画振興部 地域づくり推進課 離島振興班)
- 中島 安法(五島市 総務企画部 政策企画課 政策企画班)
- 伊賀 剛(新上五島町 総合政策課 政策推進班)
- 篠崎 道裕(壱岐市 総務部 SDGs 未来課 SDGs 未来班)
島嶼 SDGs 事務局(各種コーディネート・情報収集・発信・事務運営 2 名)
- 藤野 忠敬(グローバル連携機構)
- 山浦 公美代(グローバル連携機構)
2. 長崎大学島嶼 SDGs プロジェクトの各分野の活動
長崎大学は島嶼・へき地の医療、教育、インフラ、地域振興、水産に関して、地域社会の維持を意 識してこれまでに次のような活動を行っている。
2-1. 医療
島の人々の健康をいかに守るか?(SDGs 3 に関連)
~社会を巻き込んだ活動~
長崎大学と離島の医療との関係は深く、開学以来、長年にわたって離島医療を支える人材を輩出し てきましたし、 50 年以上前には西海市松島でフィラリア症調査を実施するなど、長いかかわりの歴 史があります。 2004 年度、地域医療に関する研究と教育、そして診療支援の充実を図るため、長崎 県と五島市による自治体初の寄付講座「離島・へき地医療学講座」が長崎大学に開講しました。開 講と当時に長崎県五島中央病院内に「離島医療研究所」が開設され、離島での重要な活動拠点とし て様々な活動を支えています。
これらの活動の一環として、島の人々の健康を守るため、自治体主催の健康診断(住民基本健康調 査)と共に特殊検診を行っています。受診者が希望すれば、歯科疾患、骨粗しょう症、関節リウマ チ、フレイルや動脈硬化などの特殊検診を受けることができます。 3 年間で五島市の全地区を回っ て特殊検診を行っています。
写真 五島市の健康診断・特定健診に参加する教員と学生
~研究活動~
現在だけではなく、将来的に島の人々の健康を守るためには、未来の医療人を育てていくことも大 切です。長崎県の離島では、病院や診療所、社会福祉施設、訪問看護ステーション、行政など、地 域のヘルスケアシステムに関わる多くの施設や団体に協力してもらい、実践的な地域医療教育が行 われています。
長崎大学医学部では、臨床実習の一環として、医学生全員を対象に長崎県内離島をフィールドとし た地域医療教育(離島医療・保健実習)を 2004 年度から行っています。対馬、壱岐、上五島、下 五島に 1 週間滞在し、地域の保健・医療・福祉・介護に関わっている施設や職能団体をめぐって包 括的な地域医療・ケアを学びます。この実習には 2006 年度から他大学の医学生も受け入れ、加え て長崎大学薬学部・歯学部との共修が導入されていますので、今では大学と学部を超えた総合的な 地域医療人教育プログラムへと発展しています。さらに、福祉系人材を養成する長崎純心大学とも 共同の教育プログラムが加わり、離島・へき地医療の現場体験を通じて、専門分野の質を高めると 同時に地域包括ケアシステムの理解を深め、介護や福祉の視点をもった医療人を育てることを目指 しています。
また毎年 8 月には「長崎地域医療セミナー」を五島市で開催しています。 2006 年に始まった前身 の「長崎家庭医療集中セミナー」から継続し、 2019 年には通算 13 回を迎えました。 2016 年から 長崎純心大学の学生も参加し、医療と福祉の異なる視点からフィールドワークやグループディスカ ッションを行いながら、将来の地域包括ケア、プライマリケア、家庭医療、総合診療といった分野 での活躍を目指して切磋琢磨しています。
また研究活動としては、特定健診等で得られたデータをもとに、骨折や心筋梗塞、脳卒中、ぶどう
膜炎など、特定の疾患を追跡するコホート研究も実施されています。研究に協力して頂いた方を長
期間追跡し、主に生活習慣病を発症するかどうか、また発症に関連する要因は何かを疫学的に調査
研究しています。こうした地域疫学研究は自治体と連携して行われ、データは厳重に管理されてい
ます。もし発症する人に共通の特徴やリスク要因が見つかれば、将来の発症予防に生かせる可能性
もあります。
~大学として、社会のために~
五島市では、五島市、五島薬剤師会、長崎大学離島・へき地医療研究所が連携し、市民の調剤情報 を共有する電子システム(お薬ネット)を 2013 年から導入しています。通常のお薬手帳では、薬 剤情報が書かれたシールを患者さんが貼り忘れたり、救急時に携帯していなかったりと、処方され ている調剤情報が医療者に正確に伝わらないという問題点が指摘されていました。
お薬ネットでは、五島市のすべての調剤薬局が参画しており、これによって、全市民がネットワー クを利用できるようになりました。情報は各調剤薬局から自動的に登録されるため、患者さん自ら が管理する必要はありませんし、たとえお薬手帳を携行していなかったとしても、情報共有の同意 をしていれば五島市内のどの薬局でも調剤履歴を確認することができます。医療者に正確な服薬情 報を伝えることができますので、安心・安全な服薬指導を受けることができます。さらに、このネ ットワークには、地域の見守り情報(緊急連絡先、家族構成、通院状況、買い物の状況等)も統合 されており、緊急時には役立てることができるようになっています。また、ネットワークのデータ はクラウド化され、遠隔バックアップも行われているため、災害が起こっても復旧しやすい仕組み になっています。
お薬ネットに蓄積されたデータはインフルエンザの予防対策等にも活用されています。具体的には、
お薬ネットの調剤情報をもとに、抗インフルエンザ薬を処方された患者を抽出することで、インフ ルエンザの発生状況を地域別、年齢層別にリアルタイムで把握することができます。インフルエン ザの流行シーズンには、医師や薬剤師はもちろん、集団発生が起こりやすい学校や施設などに毎日 迅速に調剤速報を伝え、診療支援と予防の啓発を図っています。
お薬ネットのシステム開発はクラウド型電子カルテサービス「医歩 ippo 地域お薬カルテ」を提供 するメディカルアイ株式会社が行いました。
~拠点~
拠 点: 五島市 - 離島医療研究所(常駐教員 2 名) 、予防医科学研究所(常駐教員 2 名)
活動地域: 五島市、新上五島町、小値賀町、壱岐市、対馬市、平戸市
~中心人物・組織~
- 前田 隆浩 教授(医歯薬学総合研究科 離島・へき地医療学講座)
- 永田 康浩 教授(医歯薬学総合研究科 地域包括ケア教育センター)
~参加人数規模・期間~
離島(五島市、新上五島町、壱岐市、対馬市)には常に長崎大学から医療人が行き来しており、教 員・学生を合わせると、毎年約 200 名が離島を訪れている。
~パートナーシップ・ FUNDING~
- 五島市 国保健康政策課 - 新上五島町 健康保険課 - 壱岐市 保健課・健康増進課
- 対馬市 健康づくり推進部 健康増進課 - 平戸市 市民生活部 健康ほけん課 - 長崎県 福祉保健部
- メディカルアイ株式会社
2-2. 教育
地域性にあった質の高い教育の提供(SDGs 4 に関連)
~社会を巻き込んだ活動~
地域教育総合支援センターでは大学の教員が長崎の各地、へき地域で貢献できるように、要請や希 望に応じ、移動式のサイエンスカーを用いた教員の派遣をしています。長崎大学の各学部・研究科 の教員が日頃の授業では体験できない先端科学等の実験や講義を実施するもので、 2011 年に始ま り、これまでに上五島町・小値賀町・平戸市・西海市・南島原市等をはじめとした各地での実施実 績があります。
写真 / 左 長崎大学のサイエンスカー。ほぼフル稼働! 写真 / 右 五島市教育委員会そのサテライトオフィスの 協議。左から地域教育総合支援センター・池田副セン ター長、五島市教育委員会・宮本主事、地域教育総合 支援センター・中村センター長
また、地域の進路選択支援の一環として「リケジョセミナー」も 7 年にわたって JST の支援を受 けて実施しています。
島において理系の学生が、ロールモデルとなる先輩、活躍する社会人の話を聞くことができず、将 来の具体的なプラン作りの障害となっています。地域教育総合支援センターでは、大学のネットワ ークを生かして講師を招き、理系の女子がキャリアを学ぶ機会を五島高校でも開催しました。
写真 長崎県立五島高等学校で行われたリケジョセミナー( 2018 年 8 月 1 日)
2019 年には五島市と松浦市には教育委員会に地域教育総合支援センターと協働する地元コーディ ネータを置いて(サテライトオフィス)、地域課題を意識した教育の支援体制にアンテナを張って います。
~教育活動~
離島やへき地において将来の教育を支える人材を育成するため、長崎大学教育学部では、 2016 年 より離島教育に強い関心を持ち、卒業後は長崎県内の離島地区小学校において教職に就くことを強 く希望する者に対し、離島教育推薦枠を設けました。また、離島教育推薦枠の入学者(小学校教育 コースで下記プログラムを希望する者)を対象に、離島養育の資質を備えた教員の養成を意図した
「離島教育プログラム」を開設しました。本プログラムは、 1 年次に離島教育に関する幅広い知識 を、 2-3 年次に離島・へき地で必要な ICT を活用した効果的な授業展開等の知識について学びます。
3 年次には長崎大学附属小学校での複式学級における 4 週間の教育実習を行い、プログラムの締め くくりとなる 4 年次には複式における授業づくりに関する科目に加え、離島・へき地地域における 教育や地域と学校とのつながりの実際を体験する「離島・へき地実習」を実施します。このように、
大学での学びが基礎となり、附属小学校や離島・へき地地域における実習により、より離島に卓越 した教員の養成を図っています。
離島・へき地実習は、教育学部における蓄積型体験学習の一環として 2007 年から 12 年以上にわ たって実施されているもので、現在五島市・新上五島町・南島原市・平戸市にある各小中学校に協 力いただいています。離島やへき地地域におけるこれらの教育の取り組みが教育委員会や教育現場 との連携につながり、離島教育推薦枠や離島教育プログラムの理解へと結びついています。
写真 / 左 2019 年 10 月に新上五島町、浜ノ浦小学校で 行われた離島・へき地実習。浜ノ浦小学校では 2004 年から継続して長崎大学教育学部のインターンシップ を受け入れている。
写真 / 右 5 年生と 6 年生の複式学級の指導を見学する
様子。
写真 / 左 長崎大学附属小学校で行われている複式学級 の教育実習の様子( 1 ・ 2 年生の授業)
写真 / 右 5 ・ 6 年生の授業での指導風景
~大学として、社会のために~
前述の離島教育プログラムは 2019 年度で 4 年目となり、離島教育推薦枠で入学した 4 年生はすべ て教育現場への就職が決まりました。本プログラムで学んだことを生かし、将来の離島教育を支え るキーパーソンとなることが大いに期待されます。こうした将来に向けた取り組みを作りつつ、教 育学部では離島やへき地域で将来活躍できる教員の育成に力を入れ、地域教育総合支援センターは、
痒いところに手の届いた支援 ** を通して、地域を豊かにする担い手の育成に携わり、上記に紹介し た以外に様々な企画を実施しています。
* 文科省「教員養成の改革に関するグッドプラクティス」にて紹介。
** 2019 年は中村センター長が離島・へき地域の小学校における外国語教育についてのアドバイスを、松浦市( 10 月)、
新上五島町( 11 月)で実施。理科教育に関する支援も教育学部の松元教授が松浦市で行っている( 11 月) 。
~場所・拠点~
五島市・新上五島町 * ・南島原市・平戸市・松浦市 * ( * サテライトオフィス設置)
~実施体制・実施者~
- 離島教育プログラムサポート部会 - 蓄積型体験学習実施部会
- 蓄積型体験学習学生部会
- 中村 典生 教授(地域教育総合支援センター)
- 池田 浩 教授(地域教育総合支援センター)
~参加人数規模・期間~
離島・へき地実習(蓄積体験型学習)
五島・新上五島・南島原・平戸の合計 15-20 の小中学校において現在のところ毎年 50-70 名程度の 学生が実習に参加。
サテライトオフィス
松浦市・五島市の教育委員会に各 1 名。
サイエンスカーラボ
2011 年より毎年 60 前後の企画で継続中(うち 8 つ前後が離島・へき地域で実施) 。毎年長崎大学 の教員 20 人前後が協力。対象は約 4000 人前後(うち 400 名前後が離島・へき地域の対象者) 。 リケジョセミナー
2013 年より毎年 7 前後の企画で実施( 2019 年が最終年) 。毎年、学内外の 30 人前後が協力。
~パートナーシップ・FUNDING~
- 国立研究開発法人科学技術振興機( JST )女子中高生の理系進路選択支援プログラム - 新上五島町 教育委員会
- 五島市 教育委員会
- 平戸市 教育委員会
- 南島原市 教育委員会
- 松浦市 教育委員会
2-3. インフラ
インフラの長寿命化によって、地域の生活の基盤を支える(SDGs 11 に関連)
~社会を巻き込んだ活動~
多くの技術革新や情報通信が謳われる中、人間の生活の基盤であるインフラ構造物の荒廃は、日本 でも着実に進んでいます。長崎県には教会群や多くの観光資源が離島・へき地に点在していますが、
それらを結ぶ橋や港湾等、インフラ施設の老朽化が進行しています。県の建設費や維持管理費の財 源は厳しく、技術者も高齢化が進む等、多くの課題があります。
長崎大学工学部では、 2007 年 1 月、長崎県、県内市町村、地元企業との連携により「インフラ長 寿命化センター」を設立しました。本センターでは、地域再生人材の育成のため、「道守(みちも り) 」養成プロジェクトを実施しています。 「道守」とは、県内の自治体職員、民間企業、 NPO 、地 域住民を対象とし、 「まちおこし」の基盤となるインフラの再生・長寿命化に関わる人材を育成する ものです。インフラに関連する公的資格を持つ方々はレベルに応じた基礎・応用知識を習得し、一 般市民(ボランティア・愛護団体等)は道路や橋等、日常的な観察や点検ができる知識や技術を習 得します。
インフラの維持管理には、調査、診断、特定高度技術等、さまざまな技術が必要になりますが、広 い県内を常に専門家が見て回り、インフラの状態をチェックするには限界があります。そこで、毎 日の生活で目にするインフラについて、割れ目がないか、ひびが入ってないか等、状態を確認して もらい、異常があれば大学や県に連絡を入れることで、速やかに専門家が急行し、チェックするこ とができます。受講者は本講座を通して、こうしたインフラの異常を察知できる目を養います。異 常を早く発見できればできるほど、維持管理コストを軽減することができます。
~「インフラ長寿命化センター」の歩み ~
このような取り組みは、離島やへき地のインフラの維持管理にも生かされています。 「道守」養成プ ロジェクトは離島でも実施され、五島市、新上五島町、対馬市、壱岐市等、多くの地区から道守認 定者が生まれ、地勢条件に応じた維持管理が行われています。
壱岐市や新上五島町では、道守認定者の組織「道守養成ユニットの会」の地域部会で道路見守活動
(道路異常点検と清掃活動)やカーブミラーの清掃活動等のボランティア活動をしています。五島 市では、長崎県の橋梁トンネルの直営点検に参加しています。
また「インフラ長寿命化センター」の取り組みは、地方自治体や日本政府の政策にも反映されてい ます。 2015 年1月、 「道守」は国土交通省「社会資本の維持管理及び更新を確実にするための民間 資格」として登録され、長崎県や国交省九州地方整備局が行う入札では、技術者を評価するための 資格となっています。また 2014 年には、科学技術振興機構( JST )の SIP 「インフラ維持管理・
更新・マネジメント技術」で、インフラの点検や診断、補修、情報・通信、ロボット等の先端技術
の開発・実装が開始されました。 2016 年からは、これらの研究成果を地域で活用するため、地域で
の社会実証実験が進められています。長崎県でも、道守の方々と共に、インフラ点検技術の実証試
験を行っています(本実証実験には、九州・山口地域では 11 大学の研究グループが参画していま
す) 。
図 2-1 2019 年 3 月末時点の地区別道守認定者数の県内分布状況
【壱岐市(29名)】
道守補:9名 補助員:20名
【対馬市(37名)】
特定:2名 道守補:18名 道守補助員:17名
【五島市(42名)】
特定:4名、道守補:13名 補助員:25名
【新上五島町(33名)】
道守補:17名 補助員:16名
【平戸市(31名)】
特定:1名 道守補:4名 補助員:26名
【松浦市(10名)】
道守補:2名 補助員:8名
【長崎県外(50名)】
道守:1名、特定:4名 道守補:31名、補助員:14名
【佐々町(9人)】
道守補:2人 補助員:7人
【佐世保市(129名)】
道守:6名、特定:9名
道守補:33名、補助員:81名 【東彼杵・川棚・波佐見(22名)】
道守補:2名、補助員:20名
【西海市(30名)】
道守:2名、特定:1名 道守補:6名、補助員:20名
【大村市(37名)】
道守:8名
特定:5名、道守補:5名 補助員:19名
【時津町(8名)】
道守補:2名 補助員:6名
【長与町(15人)】
特定:1人 道守補:2人 補助員:12人
【諫早市(69名)】
道守:2名
特定:9名、道守補:21名 補助員:37名
【長崎市(226名)】
道守:12名、特定:31名 道守補:81名 補助員:102名
【雲仙市(26名)】
特定:3名 道守補:7名 補助員:16名
【島原市(32名)】
道守補:18名 補助員:14名
【南島原市(20名)】
道守補:4名 補助員:16名
2019年3月末時点 県内783名 県外50名 計857名 23
写真 対馬市での「道守養成講座」の様子。座学や演習・実習の講座が盛り込まれています。
さらに 2018 年、 SIP の研究成果を活用し、より官民の研究開発を拡大するため、内閣府「官民研 究開発投資拡大プログラム( PRISM ) 」が開始しました。令和元年度のテーマの 1 つとして、 「革新 的建設・インフラ維持管理/防災・減災技術」が設定され、長崎大学、東北大学、秋田大学が、イ ンフラ維持管理におけるデータベースの構築・連携等を検討するため、共同研究を行っています。
これは地方公共団体や国等のデータベースを統合し、インフラの維持管理データを関係者間で共有 するプラットフォーム構築を目指しています。長崎大学は長崎県、東北大学は島根県、秋田大学は 秋田県と連携し、データ提供依頼や調整等を行っています。
長崎県内では、長崎大学と長崎県土木部が、長崎市や五島市、新上五島町のデータを活用し、道路 やトンネル、斜面や港湾、河川等のデータを統合したプラットフォーム構築に取り組んでいます。
インフラの維持管理だけではなく、防災情報等のデータも活用される予定です。
~大学として、社会のために~
「インフラとは『人間が人間らしい生活を送るために必要な大事業』である」 (塩野七生七海、 「ロ
ーマ人の物語Ⅹ」新潮社) 、また「モビリティは個人の自由、社会参加、及び豊かさと経済成長のた
めの重要な前提となるものである。そのために必要な基盤が質の高い交通インフラである」 (大石
久和氏、国交省元技監、 ACe 建設業界、下言上用、 2013 年のドイツの三党合意文書)との言葉が
あります。このようなインフラの認識は世界に共通していますが、インフラの維持管理に関する日
本の知見を、開発途上国に広げる取り組みも行われています。特に橋の維持管理を学ぶ「橋梁維持
管理研修」が JICA を通して長崎大学で行われています。インフラ長寿命化センターは国内外の
人々と共に、共に課題解決に取り組む人材の育成に携わっています。
~場所・拠点~
五島市・新上五島町・対馬市・壱岐市
~中心人物・組織~
- 松田 浩 教授(工学部、インフラ長寿命化センターセンター長)
- 山下 敬彦 教授(同上、副センター長)
- 中村 聖三 教授(同上、副センター長)
~参加人数規模・期間~
道守養成コースの受講者: 2019 年は 158 名、認定者数は 128 名。
~パートナーシップ・FUNDING~
<官>
- 長崎県土木部道路維持課 - 宮崎県県土整備部道路保全課
- 五島市
- 新上五島町
- 対馬市
- 関西大学
<産>
- 有限会社 吉川土木コンサルタント - 株式会社 上滝
- 株式会社 アサヒコンサル - 株式会社 麻生
- 株式会社 三菱日立パワーシステムズ検査 - 株式会社 基礎地盤コンサルタンツ - 一般社団法人 リペア会
- 株式会社 日本工営 - 株式会社 全日本検査技術 - 株式会社 中央コンサルタンツ
- 上野企画
- 株式会社 BMC
- 株式会社 西日本高速道路 - 一般社団法人 PC 建協 - 株式会社 大島造船所
- 一般社団法人 日本橋梁建設協会 - 上田記念財団
福江島に向かう高速フェリー(長崎港)
2-4. 地域振興
地域社会が元気になるプロジェクトの創出(SDGs 8 に関連)
~社会を巻き込んだ活動~
2018 年に長崎大学では離島やへき地をフィールドとする「アントレプレナー育成事業」をスター トさせました。この事業は長崎大学の有志の学生が地域の課題解決に向き合う事業を考え、二年間 で新規事業の起業を目指すもので、参加学生は地域事業者と組み、地方創生に関わるコンサルティ ングの専門家や金融機関の方のアドバイスを受けながら行動します。初年度となる、 2018 年 * は五 島市を舞台に空き家を活用したコミュニティカフェの開設、奈留島ツアーの実施、高齢者見守り、
五島うどんドレッシングの開発による起業に向けた活動を、二年目となった 2019 年 ** は東彼杵町 を舞台に道の駅、鯨肉、宿場を基に起業に向けた活動を行っています。
* 五島アントレプレナー育成事業:学生 15 名(医学部・経済学部・環境科学部・工学部)
** 東彼杵アントレプレナー育成事業:学生 12 名(多文化社会学部・教育学部・経済学部・環境科学部・水産学部)
写真 / 左 2019 年度のチーム。道の駅「そのぎの荘」
で駅長から現状と将来構想をヒアリング
写真 / 右 2018 年度のプロジェクトチームの活動の一コ
マ。五島市の三井楽集落での空き家活用を五島市商工会 と打ち合わせている様子
~教育活動~
地域教育総合支援センターでは、グローカル人材育成プログラムを行っていますが、この受講学生
もまちづくりへのアイデアを輩出しています。本事業は 2019 年には JTB 「大学生観光まちづくり
コンテスト」でポスター発表を行い、新上五島町の観光振興でお見合いをするイベントを提案しま
した。また、まちづくりに寄与するため、長崎県の「チャレンジ 2020 」 ( 5 年ごとに策定している
県政の総合計画)に対し、外部参加者として、長崎大学の学生が意見を出しました。
写真 / 左 2019 年の JTB 「大学生観光まちづくりコン テスト」における長崎大学生の発表
写真 / 右 五島市民電力での一コマ。中央がゼミの指導 を行っている西村教授(経済学部)
~大学として、社会のために~
人が地域で豊かに暮らし続けることができるように、地域の産業の担い手である民間企業と連携し、
リアルな課題解決を試行しています。このような活動を通して、地域の人々とつながり、共に課題 解決に取り組む人材の育成に携わっています。
~場所・拠点~
五島市・新上五島町・奈留島・壱岐市・東彼杵町
~中心人物・組織~
- 赤石 孝次 理事(経済学部)
- 西村 宣彦 教授(経済学部)
- 津留崎 和義 准教授(経済学部)
- 中村 典生 教授(地域教育総合支援センター)
- 池田 浩 教授(地域教育総合支援センター)
~参加人数規模・期間~
アントレプレナー育成事業: 2018 年は 15 名、 2019 年は 12 名。
~パートナーシップ・FUNDING~
<産>
- 株式会社 いきいき五島( 2018 ~)
- 株式会社 メディアウェブ( 2018 ~)
- 奈留島 三兄弟工房( 2018 ~)
- 株式会社 彼杵鯨肉( 2019 ~)
- 株式会社 彼杵の荘( 2019 ~)
- さいとう宿場( 2019 ~)
- 株式会社 BOLBOP - 株式会社 大村湾商事 - 株式会社 瞬
- 株式会社 日本植物燃料
- 株式会社 レキオ・パワー・テクノロジー
<官>
- 五島市役所( 2018 ~)
- 東彼杵役場 中山雄一様( 2019 ~)
- 三井楽わっかもん会( 2018 ~)
- 長崎県企画振興部地域づくり推進課 林田龍二様 - 長崎県企画振興部政策企画課
- 産業労働部若者定着課
<金融>
- 日本政策金融公庫
- 十八銀行
- 親和銀行
- 西日本シティ銀行
2-5. 水産
島の海の豊かさを如何にして守るか?(SDGs 14 に関連)
~社会を巻き込んだ活動~
藻場を再生するには、漁師さんだけでなく地元の方が磯焼けについて知り、市民参加型で藻場造成 することが大事だという考えから、海洋未来イノベーション機構の西原准教授は新上五島町の協力 の元、有川中学校の中学生に藻場生態系の大切さについて紹介、海藻の幼体を培養してもらい、こ れを自身の研究室の活動として海中に植林しています。
写真 / 左 藻場の大切さについて紹介する西原准教授 写真 / 右 海藻(ノコギリモク)の幼体培養セット
~研究活動~
磯焼けがこれ以上広がらないためにはどうしたらいいか?西原准教授の水圏植物生態学研究室で は同じ島の中でも藻場が繁茂している場所と磯焼けが進み、藻場が再生しない場所のなにが違うか を突き止める研究を行っています。また、藻場を再生・保全するための幼体の植林をより効果的に 実施するための方法を小値賀島役場の協力の元、二次離島の六島で検証しています。なお研究を行 うための資材の一部(モアシス)は共和コンクリート工業株式会社から提供されています。
写真 / 左 海中に環境観測機器を設置。藻が繁茂する場 所、しない場所でなにが違うのかを把握するため。
写真 / 右 小値賀町の二次離島・六島におけるデータ収
集の様子
写真 海中で実験を行う際の土台(モアシス)は共和コンクリート工業株式会社が提供
~大学として、社会のために~
海に潜り研究をするだけでなく、海に潜る者としてできる事をする。水圏植物生態学研究室では研 究の傍ら新上五島町の有川湾において海中の清掃活動を行い、沈んでしまったゴミを引き上げてい ます。
写真 / 左 2018 年 8 月の清掃活動で引き揚げられたゴミ の一部
写真 / 右 清掃活動を行う水圏植物生態学研究室の学生
~場所・拠点~
小値賀町 六島 / 新上五島町 有川(拠点あり)
~中心人物・組織~
西原 直希 准教授(海洋未来イノベーション機構)
~参加人数規模・期間~
研究活動は 10 人前後で行い、基本的に新上五島と小値賀 ( 六島 ) には毎月調査に向かう。
海藻の幼体を培養に参加している中学生は 50 人前後。
~パートナーシップ ・ FUNDING~
- Pew Marine Fellow
米国の Pew Charitable Trusts ( Pew 環境保全財団) が賞与するフェロー。このフェロ ーシップは海洋環境や海洋生物の保護、保全のために優れた研究や教育活動を行う個人や 団体に賞与されるもので、これまで海洋生態系の専門家を中心に 38 か国から 164 人が選 ばれている。西原准教授は 2018 年に 3 人目の日本人として選ばれた(支援期間は 2021 年 までの 3 年) 。
- 新上五島町 総合政策課 - 小値賀町役場 産業振興課 - 共和コンクリート工業株式会社
- 長崎県水産部 資源管理課( H30 年藻場回復総合推進事業にて)
3. 島嶼 SDGs による SDGs 普及展開活動
2019 年度は島嶼 SDGs として、以下のような SDGs の普及展開活動をおこなった。
普及 「 SDGs とはなにか~その背景と本質、現在の状況~」
2019 年 6 月 26 日、新上五島町役場において島嶼 SDGs 事務局の藤野助教が上記のタイトルで役 場職員に SDGs を紹介。
展開 JST 主催の地域産学官社会連携の分科会に参画
2019 年 7 月、科学技術振興機構( JST )が SDGs を共通言語に包括的かつ持続可能な地域の発展 に向けて、地域における課題と科学技術を基にした解決策(シーズ)をつなぎ、課題解決に向けて ステークホルダーが共創する機会を構築するために立ち上げた分科会に 2019 年 7 月に参画した。
展開 地方創生 SDGs 官民連携プラットフォームの総会に参加
2019 年 8 月 26 日、島嶼 SDGs 事務局の山浦職員が上記イベントにおいて長崎大学の「島嶼 SDGs 分科会」について紹介。
展開 ALL 九州 SDGs ネットワーク分科会に参画
九州において SDGs 未来都市に選定された北九州市・壱岐市・熊本県小国町が、九州内の SDGs の 取り組みがますます活性化される事を目指して設立した分科会に 2019 年 10 月に参画した。
普及 「 SDGs を原動力とした企業経営・自治体経営」
2019 年 11 月 6 日、九州経済産業局主催する上記をタイトルとした、九州 SDGs 経営推進フォー ラム * にて島嶼 SDGs 事務局の藤野助教がパネリストとして大学における SDGs 、長崎大学の島嶼 SDGs プロジェクトについてディスカッションを参加者と行った。また同日、九州 SDGs 取り組 み事例集が配布され、長崎大学の島嶼 SDGs も掲載された。
( https://www.kyushu.meti.go.jp/seisaku/kyosoryoku/sdgs/2019jirei_24_nagasakiuniv.pdf )
* http://www.kerc.or.jp/seminar/2019/10/116sdgs.html
写真 / 左 2019 年 6 月 26 日の新上五島町役場での SDGs 紹介プレゼンの様子
写真 / 右 2019 年 11 月 26 日の九州 SDGs 経営推進フ ォーラムにおける島嶼 SDGs の紹介の様子
対馬に降り立つ ORC の DHC-8-201(ボンバルディア社)
4. 課題解決に向けたパートナーシップ、プロジェクト
4-1. 国内
島嶼 SDGs を実施している長崎大学は H21 年に長崎県、 H22 年に五島市、壱岐市、新上五島町、
小値賀町、平戸市、対馬市と連携に関する協定書を結んでおり、島嶼自治体とは(1)離島地域の 振興やまちづくりに関すること( 2 )離島地域の活力を生む人材の育成に関すること( 3 )離島地域 における子育てや教育に関すること( 4 )離島地域の医療や生活の向上に関すること( 5 )その他、
本協定の目的を達成するために必要な事項、について連携・協力をすることを掲げている。
2018 年これらの自治体と、 SDGs を意識し島嶼 SDGs プロジェクトにおいてあらためて上記の連 携・協力をすることを確認し、その事について長崎県庁の企画振興部(地域づくり推進課、離島振 興班)とも共有した。現在、内閣府の地方創生 SDGs 官民連携プラットフォームにおいて設置した 島嶼 SDGs 分科会に長崎県、壱岐市、五島市、新上五島町が参加している。
2020 年 2 月 6 日には、壱岐市、五島市の担当者が WEB 参画する形で第一回の島嶼 SDGs 分科会 会合を開き、 2030 年に向けた島嶼 SDGs プロジェクトの大目標として、島嶼・へき地域において 多くの住民が可能な限り住み慣れた地域で長く暮らしたいと望んでいるものの、医療をはじめとし た様々なニーズが満たされないために移住を余儀なくされているケースは少なくないことを鑑み、
「住み続けたいを支える」を大目標として設定することを島嶼 SDGs 協議会、自治体担当者の議論
の末、決定した。
4-2. 海外(スコットランド)
日本における島嶼・へき地域と似たような課題をかかえ、その解決に取り組んでいる国として 2019 年 11 月にスコットランドを訪れ、課題解決の現状を視察した。
2019 年 11 月のスコットランド訪問では、島嶼・ハイランド(高地の多い、スコットランド北部の 地名)の中心的な大学である University of Highlands and Islands 、同大学にある Centre for Health Science (へき地域の医療を扱う Division of Rural Health and Wellbeing を擁する) 、 Centre for Remote & Rural Studies (地方・へき地の文化・社会学的な研究を行う) 、 Royal College of Physicians of Edinburgh (エジンバラ王立医科大学) 、スコットランド政府の Cabinet Secretary for Culture, Tourism and External Affairs を訪問した。各訪問先で長崎の島嶼域の課題と島嶼 SDGs プロジェクトについて紹介、スコットランドとの地理的、社会的条件の類似性を確認し、今 後情報交換を行っていくことで合意した。
写真 / 左 北極圏政策担当者 Francesco Bertold 氏 写真 / 右 移民政策担当者 Rachel Sunderland 氏
この後 2020 年 2 月には、 2019 年 11 月に面談した北極圏政策担当者 Francesco Bertold 氏、そし て、スコットランドの島嶼政策の担当者 Erica Clarkson 氏より連絡があり、 11 月に島自治体から の要請のあった質問事項に関しての追加情報を提供された。
Francesco 氏からは、毎年アイスランドで開催されている Arctic Circle のフォーラムが今年 2020
年 11 月 21 日から 23 日に東京で開催予定であることから、ここでスコットランドと日本における
島の best practice 、島民の empowerment について、スコットランド政府から 1-2 題、長崎大学の
島嶼 SDGs プロジェクトから 1-2 題の発表を行う事を提案されており、島嶼 SDGs プロジェクト
としてテーマと発表者の調整をスコットランド政府と協調して行う予定となっている。
4-3. 島嶼域と連携した新プロジェクト(採択された事業)
■ 住み続けたいを支える離島・ヘき地医療サポ-トモデルの構築
JST (科学技術振興機構)が 2019 年に SDGs を意識した「 SDGs の達成に向けた共創的研究 開発プログラム」の事業開始をアナウンス。これに対して島嶼 SDGs 協議会のメンバーである 前田隆浩教授がドローンを活用し、島やへき地における薬の移送などを中心に医療サービスの 課題を解決する上記テーマのプログラムを応募、採択された。本プログラムは五島医師会、五 島薬剤師会、五島中央病院、五島保健所、長崎県薬務行政室といった公的機関と、日本 IBM 、 ANA ホールディングス、メディカルアイ(株) 、山下医科器械、長崎医学中央検査室などの民 間企業が協力にしてプロジェクト目標の達成に向かうものである。
■ 衛星・ドローンによるごみ漂着状況診断システムの構築
2019 年日本財団・ JASTO ・リバネスが、 「海ごみ削減を実現するビジネス」を社会実装してい
く流れを生み出す「プロジェクト・イッカク」を発足。海ごみの分布や種別情報に関し、沿岸
部のゴミ漂着状況を、衛星、ドローン及び定点観測装置等を用いた、長期・網羅的な観測及び
詳細分析が可能な海ごみ診断システムの開発を行うチームに島嶼 SDGs プロジェクト準会員
の山本郁夫教授が参画。 2020 年より対馬で海ごみ診断システムの開発に着手する予定。
5. SDGs 達成の 2030 年に向けて
4-1. で述べたように島嶼 SDGs プロジェクトとして、 2020 年 2 月 6 日に内閣府地方創生 SDGs 官 民連携プラットフォームの中に設置した島嶼 SDGs 分科会において、島嶼 SDGs プロジェクトの 大目標を「住み続けたいを支える」 」に定める事を決定した。本目標に対して、世界の知見を取り入 れながらベストプラクティスをモデル化した上で世界に発信し、世界の島嶼・へき地域、高齢化や 少子化に直面する地域の課題解決・持続的な開発( SDGs )に貢献したい。
2020 年取組み予定
■ 世界の島嶼・へき地域の課題解決の情報収集と分析
4-2. で触れたように 2019 年は日本の島嶼・へき地域と同様の課題を抱えるスコットランドで、
島嶼・へき地域の課題解決の取組に関する情報収集と分析をおこなった。引き続き、スコット ランドとの連携を継続しつつ、世界の関連情報を集め、日本の島嶼・へき地域にフィードバッ クしていくことを目指す。
島嶼・へき地域にフォーカスを置いた国際的なイベントしては、
RETHINKING REMOTE 2020 CONFERENCE (スコットランド)
2020 年 4 月 30 日から 5 月 1 日開催。 Remote and Rural (へき地域)の医療ケアに関する革 新的・実用的な技術の事例紹介を中心としたシンポジウム。
第 9 回アジア防災閣僚級会議( AMCDRR ,オーストラリア)
2020 年 6 月 29 日から 7 月 2 日開催。例年防災について議論する会議であるが、本年は開催地 がオーストラリアという事もあり太平洋州の SIDS ( Small Island Developing States ,小島嶼 開発途上国)の防災の課題が大きく取り上げられる予定。
Arctic Circle Japan Forum (東京)
2020 年 11 月 21 日から 23 日に開催。離島やへき地が多い北極圏の将来をあらゆる団体(政 府、団体、企業、大学、シンクタンク、市民)が参加して協議する Arctic Circle のフォーラム が東京で開催される。スコットランド政府から共同での発表の申し出があり、内容について検 討中。
Mountains 2020 (カーボベルデ)
2020 年 11 月 23 日から 11 月 27 日開催。交通アクセスの悪い、山岳地帯や島嶼域において持 続的な発展のために脅威や課題にどう向かい合うか、アカデミア、行政、企業、 NGO の参加 者が総合的に議論するもの。取り扱われるテーマは以下の通り。
- Climate risks assessment and responses 気候変動のリスク評価と対策 - Biodiversity 生物多様性
- Geodiversity 地学的自然遺産と多様性
- Demographic changes 人口の変遷 - Farming and forestry 農林業
- Nature-based solutions 自然を基盤とした解決策
- Energy efficiency and sustainability エネルギー効率と持続可能性 - Sustainable processes and products 持続可能な生産過程と生産物
- Inter and transdisciplinary research 複数の学問分野による共同研究・文理連携 - Socio-ecological systems 社会生態系
- Governance systems ガバナンス(統治)システム - Sustainable tourism 持続可能な観光業
- Effective transport systems 効率的な交通システム
- Achieving the Sustainable 持続可能な開発目標の達成について - Development Goals 開発目標
■ 科学技術イノベーションによる地域社会課題解決(DESIGN-i)への応募(文部科学省)
五島列島の新上五島町における新たな暮らしの基盤を構築し、暮らしの安定化と持続的発展を 達成するために、 「島の恵みと暮らす〜オーシャンエコツーリズムによる地域活性化の試み〜」
というテーマで上記事業に応募予定。タイトルにある通り、本プロジェクトは新上五島町の強 みである水産業、自然、世界文化遺産(潜伏キリシタン関連遺産)を背景としたオーシャンエ コツーリズムを長崎大学と新上五島町が地域住民、若者を巻き込みながら目指すもので、 3 年 の間でその体制を確立することを狙いとしている。 2019 年申請を行い不採択であったが、 2020 年の採択を目指す。
新上五島町
将来にわたり、持続可能な島社会を目指す 島の恵みと暮らす
〜オーシャンエコツーリズムによる地域活性化の試み〜
新上五島町(離島)が抱える課題
・人口の減少と高齢化
・若者の地元離れ
・地域経済の低迷
・都市部との格差拡大
必要とされる取り組み
・海洋資源・観光資源の再活用
・環境共生型の町づくり
・人口減少を見据えた町づくり
・IoTやAIの地域産業への導入
・地方の魅力再確認
・地域愛教育と次世代育成
新上五島町の強みは・・・
・豊かな海
・恵まれた環境
・美味しい海産物
・世界文化遺産
(潜伏キリシタン関連遺産)
・独特の歴史風土
未来ビジョンを作り、課題の抽出と 解決策の立案
水産業 観光 自然
(環境)
水産と環境と島特有の文化を背景とした オーシャンエコツーリズム 上五島でしか構築できない観光とは・・・
◉島のキラーコンテンツ発掘
◉新たな島観光の開拓
◉地域と観光客の連携
◉次世代を担う若者の育成 海
島文化
水産 観光
想定される課題と研究ニーズ
長崎大学は藻場再生事 業、再生可能エネル ギー事業、島嶼SDGs事 業で新上五島町と連携
新上五島町 協力関係構築
主役は 地域住民・
高校生など若い世代
行政・大学・研 究機関・民間 企業がこれを 支える アグリコネクト JTBなど民間と