ボールゲーム学習後の競争 に対する児童の認識 に関する研究 †
長薄 光雄 ♯ 秋 田大学教育文化学部
小学校
5,6年生 に対 して,体育科 の授業 においてボールゲームを学習 した後, スポー ツの競争 に関す る認識 を質問紙調査 した.
調査結果を因子分析 した結果, スポーツの競争 に関す る認識 か ら
8因子 が抽 出 された.
その中で, もっとも大 きな因子 は達成動機 に関連す る因子であった.これは一般的競争 の 特性 と一致 している.
排他性が一般的競争の負の側面 として指摘 されているが,調査対象 とした児童 の体育 の 学習後のスポーツの競争 に対す る認識で は,排他性 を否定 していた.この排他性 の否定 が 第
2因子であ った.
スポーツの競争 に対す る児童の認識か ら抽出されたその他 の因子 は,試合 は楽 しい,読 合ではフェアプ レーを必要 とす る,競争 の結果 には偶然性がある,等であった.
キーワー ド:競争,体育科,因子分析,達成動機
1.
は じめに
一般 に競争 はある個人 の目標達成が,他の個人 の 目標達成 を妨 げる場合 に発生す ると言われる.また, コー ンは競争 の否定的側面を次 のように指摘 してい る.競争 には構造的な競争 と意 図的 な競争 が あ り, 構造的な競争では個人 の勝利 は他者 の敗北 とな り, 他者の失敗が個人の勝利 になる,ゼロサムゲームを
いう.その最大 の欠点 は排他的な行動 を発生 させ る ことである.意図的な競争 は,内在的な もので ナ ン バーワンにな りたいと思 う個人 の願望 に関す るもの である.その最大の欠点 は際限がない ことで, 敗北 に対す る強迫観念 を発生 させ ることである1 ) .
しか し,松田はスポーツの心理的特性 を示 し,読 争性 を第一 に上 げ,その過程や結果 に楽 しさが経験 され ることを指摘 している.さらに, 自己を知 るた めに他人や障害を利用 し, あるいは自己の過去の業
1999
年
1月
21日受理
IA StudyoftheElementarySchoolBoysandGlrls understandingofCompetitionafterLearningBall
Games
*MitsuoNAGASAWA,FacultyofEducationandHu‑
manStudle
S
,AkltaUnlVerSlty,Aklta積や記録 を利用 し,社会比較 がなされ るスポーツの 競争が果たす機能 も指摘 している
5).
米川 は競争 とは,一つの目標 を獲得す るために他 人 と張 り合 う活動であ り, 自己の活動 に しか満足 し 得ない行動傾向であ り,優越,承認 の欲求 に結 びっ いた自己高揚 の動機 づ けの一形態 で あ ると して い る
10).
体育科の学習内容にしめるスポーツの位置が高まっ ている現在,児童 はボールゲームや陸上競技 などを 行 いなが ら競争を楽 しんでいる.大人がスポー ツを す る場合, 自分 自身 に課題を与えそれに挑戦す るこ とを楽 しみ, 自分 自身を開発す ることに喜びを感 じ 相手 に勝っ ことは二次的 目的 となる場合 もある.
これ らのようにスポーツの競争 は,一般 の競争が
持つ否定的側面のほか,楽 しさを含み,社会比較 の
場 とな って 自己を知 り, 自己高揚の動機付 けの要素
も含んでいるもの と考え られ る.また,近年 の体育
科の目標が,健康 の保持増進 や体力の向上な ど機能
的側面 より, スポーツや各種 の運動 の楽 しさを理解
す る文化的側面 に重点 が移 って い る7 ) .スポーツの
楽 しさを経験す るには,競争型学習を抜 きに しては
考え られない.しか し,前述 のように競争 に負 の側
面 もあることか ら,体育科 において効果的なスポー ツの指導 を行 うためには,児童 が競争 を どのよ うに 認識 してい るか知 り適切 な配慮 をす る必 要 が あ る.
そ こで,体育 の授業 で, ボール ゲ ー ムを した後 で, 小学校
5,6年生 のスポーツの競争 に関す る認識 を 質問紙調査票 によって調査す ることと した.
2.
方法
2‑1
予備調査
体育科 の学習 における競争 に対す る児童 の認識 を 把握す る質 問紙調査票 を作成す るため, 自由記述 に よ り予備調査 を行 った.質問紙調査票 による意識調 査 を行 ったのは,競争 の影響 は心理 的側面が大 きい
ことを考慮 したためである.
秋 田大学教育文化学部附属小学校
4年生 と
6年生, 男女各
20名,合計
80名 に
,「 体育 の勉 強 でバ スケ ッ
トボールやサ ッカーを して勝 った とき」 と 「 負 けた とき」 の気持 ちを各
3項 目以内,記述 させた.集 まっ た約
200項 目を整理 した.勝 った ときの気持 ちに は, 喜 び,意欲, 自信,栄誉,達成感,努力,不安,充 実感,征服感 を表 した り, それ らに関連す る記述 が 見 られた.負 けた ときの気持 ち に は, 怒 り, 不満 , 喪失感,未練,納得, 向上心,試合内容 の充実 に関 連す る記述 が見 られた.また勝敗 に関係のない得点, 応援,協力,試合内容,参加状況,試合経過 に関連 す る記述が見 られた.また,体育 でバ スケ ッ トボー ルやサ ッカーを したあ との勝敗 につ いて感想 を求 め たに もかかわ らず, オ リンピックやテ レビゲーム等, 体育科 の学習 と離 れた勝敗 に関す る記述 もわずかに み られた.
2‑2
学習指導の実態
対象 と した授業 は秋 田大学教育文化学部附属小学 校 で,担任教諭 の指導 によ る5 年生 のサ ッカー と, 体育専科教諭 の指導す る
6年生 のバ スケ ッ トボール であ った.小学校高学年 を対象 としたのは, 発達 段 階を考慮 して競争行動が顕著 に現 れ ると考 えたか ら であ る
8).
児童数 は男子
20名,女子
19名 と両学年 とも同数 で あ った.試合 を行 ったチーム編成 は,児童 の話 し合 いか ら両学年 ともに男女別 であ った.サ ッカー は男 女各
3チーム,バ スケ ッ トボールは男女各
4チーム
の総 当た り リ‑ グ戦 を繰 り返 し行 った.
それぞれの単元 は
,1998年
10月中旬か ら11 月中旬 にか けて, サ ッカーは
7時間, バ スケ ッ トボール は
12
時間で行 われた.また,学習 の 目当て はサ ッカ ー で は 「みんなで,せめ方,守 り方 を くふ うしてサ ッ カーを楽 しむ」で,バ スケ ッ トボールで は 「 ① ボー ルあっか いの技術 を よ りうま くしよ う.②攻 め方 , 守 り方 の作戦 を立 て よ う.③ ル ールや決 ま りを守 っ て学習 しよ う
.」であ った.
2‑3
質問紙調査票の作成及 び統計処理
一般 の競争 と区別 し,体育科 の学習 における競争 に対す る認識 を把握す るため, ボールゲーム学習直 後 に,勝敗 に対す る感想 を中心 として質問紙調査票 による意識調査 を行 った,
それ らに,一般 の競争 に内在す る 「 勝つ と,得す ることがあ る
.」 や 「 負 けると, そんをす る
.」 の排 他性 に開通 した項 目を加 えた.さ らに, スポ ー ツの 競争 に内在 す る 「試合 を して い るだ けで楽 しい. 」
「 練習 よ り試合 の方 が楽 しい
.」「試 合 よ り練 習 の方 が気 が楽 だ
.」 と,試合 の楽 しさに関連 した項 目を 加 えた.また
,「 勝 ち負 け は実 力 で きま る と思 う. 」
「 勝つ ことは練習や努力の結果 が出 ることだと思 う. 」
「 負 けることは練習や努力 の不 足 の た めだ と思 う
.」と,社会比較 に関連 した項 目 も加 えた.さ らにまた
「勝 つ とはめ られ る
.」「勝 つ こ と は 自慢 で き る
.」「 勝つ と表彰 され る: 」 と,優秀性 の証明 に関連 した 項 目 も加 えた.さ らに
,「勝 て る力 が あ って も負 け ることがあ る
.」「 勝 てそ うもない相手 に勝つ こと も あ る
.」 と偶然性 も含 めた質 問項 目を加 え た.勝 敗 の未確定要素 を保っ ことが競争 の楽 しさを保っ と言 われ ることか ら3 ) ,「 弱 い相手 の試合 はお もしろ くな い. 」 を加 え,合計40 項 目か ら成 る調 査票 を作成 し た .
調査 はサ ッカー とバ スケ ッ トボールそれぞれの単 元 の最後 に
,1そ う思 う
,2少 しそ う思 う
,3わか らない
,4あま り思 わない
,5そ う思 わない, の
5段階評定 による回答 を求 めた.
授業 に参 加 した両学年 合計7 8名, 全員 の回答 が 得 られ た.そ の結 果 をパ ー ソナル コ ンピュー タで
「EXCEL
多変量解析」 を用 いて園子分析 した
2).3.
結果 と考察
男女 あるいは学年別 の平均点 に,有意 な差が認 め られなか った ことか ら一 括 して因子分 析 を行 った.
( 表
1参照) その結果,固有値
1.
0以上 の
8個 の因子
が抽 出 された.それ らの因子 につ いて, さ らにバ リ
マ ックス法 による回転 を行 った.
表 1 ボ ールゲーム学習後 の児童 の競争 に対す る認識 の得点平均
5
年
6年 計
男
259 3.13 2.86女
2.70 317 2.94計
2.65 315 2.90抽 出 さ れ た
8個 の 園 子 か ら, そ れ ぞ れ 絶 対 値 が
0
. 4以 上 の負 荷 量 を 持 つ 質 問 項 目 を 列 挙 し, そ れ ら の項 目 の得 点 を 考 慮 しな が ら因 子 の 解 釈 を 試 み た . な お
8因 子 の累 積 寄 与 率 は
52.47%と, や や 低 か っ た .( 表
2参照)
衰 2
児童 の競争 に関す る認識構造 ( バ リマ ックス回転後 のE E I 子負荷量)
因 子名
No . 質問項 E ]
因子 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ
37 勝 つ ために練習 しよ うと思 う.
6 負けたあとは次に勝っため練習や作戦を考える.
2
5 もっとがん ば らな きゃ, と思 った.
1
4 勝ったあとまた勝つための練習や作戦を考える
Ⅰ
38 相手 の ことを考 え るとち ょっと悲 しい.
達成
39 もう少 し頭 を使 えば良 か った.
動機 2 6 やればで きる, と思 った.
21 次 もがんばろ うと思 った.
4 負けても,内容のいい試合だったらくやしくない 3 2 勝 てそ うもない相手 に勝 っ こともあ る.
1 勝 ち負 けは実力 で きま ると思 う.
23 負 けると, そん をす る
Ⅱ 24 勝 つ と表彰 され る.
排他性 1 1 負 けると くや しい.
22 勝 っ と,得す ることが ある 33 負 け るとむな しい.
30 練習 よ り試合 の方が楽 しい.
7 勝つ とうれ しい.
Ⅲ 9 負 けると, が っか りして しま う 楽 しさ 1 8 負 けると, イ ライ ラす る.
31 試合 よ り練習 の方 が気 が楽 だ.
5 試合 を してい るだ けで楽 しい.
86
9nU
2 9 3
2752938 3 9 3 2 1 1 2 8 5 7 7 6 6 6 6 6 5 4 4
9nO554 5
046744
780 0 0
15
36 1
01 0 2 2 0
10
10 1
74
1
769
6413719
731 3 8 6 3 7 5 0 0 1 2 0 0 2 2 1 2 0
35
2 1 9
45 5 5 4 3
038 6 nU 9 9 5 2 1 2
101 0 0 0 nU 2 0 0 0
一
一 一 一 3 0
301 1 8 1 7 1 3 0 0 0
01 1 0 1 3 0 0
‑. 1 2
9‑. 00 9 . 1 81
‑. 1 31 . 01
502
5 6
029 2 1 5
01 0 0 0
一一 9
2
0692 2
53 3 0 0
10 0
一一 7
6 9
177 1 6 4 3 0 0 4 1 0
一一
85
4 nU
6nU 0 O 8 3
87 6 5 4
Ⅳ
35 試合 でがんば った と思 う.
達成感 29 試合 で は, よ くや った と思 う 2 8 勝 っ と, きもちが いい.
Ⅵ
Ⅶ
27582
4 5
600 0
11 1
39
00
1 3
51 2 3 1 02 . 01 8 .
215‑. 1 3
9‑,
092. 0 43
2 9 9 3 1 5
73 2 6 2 0 4
10 2 0 りム 1 0 1
‑ 21
7‑. 2 0
0‑. 1 01
‑. 2 2
4 ‑. 07
0‑. 1 22
‑. 1 71 . 05 0 . 1 62
‑. 1 8
6. 1 6
9. 1 7 6
063
0000 ‑.
038‑ 1
14‑. 02 6 . 006 .
086. 0 08 . 27 6 .
159‑.
193‑. 1 9 4 02
9. 1 2
1. 1 5 9 1 2
9. 05
2.
737. 07
6. 11
5. 0 9
5‑. 2 2
9063 . 1 0 4 .
61532 3 . 01
4‑.
142. 255 052 . 39 2 . 56 4 . 1 42 . 1 31 . 11
5‑ 05 4 00 8
.3 274 42 . 0 81 35 4 . 1 40 . 0 30 06 2 . 0 9
2‑. 433 . 0 8
0‑. 01 6 . 1 62 . 0
0721
4‑ 00
2 ̲4
27. 33
9‑. 2 6
0‑
050 一. 0 6
525
3‑. 03
421 5 . 1 2 0 1 6
4. 36
16 9 6 6 9
52 7 cc 5 0
80 0 2 1 2
001
7. 25 8 2 負 けたの は しか たが ない と思 う
v 1 9 勝 つ ことは自慢 で きる
社会 1 7 負けることは練習や努力の不足のためだと思 う 比較 3 4 相手 に 「ざまあみ ろ」 と思 った.
8 勝っことは練習や努力の結果が出ることだと思 う
4
0 弱 い相手 の試合 はお もしろ くな い.
. 02
9‑. 05
220 6 1 71 27 4 2 8
41 9
97
3 3 6
∩ロ8 3 nU 4
63 0 4 1
0Ⅵ 3 勝 って もよろ こべ ない ことがあ る. . 20
5フ ェ ア
12 くや しくて も八 っ当た りして はいけない. . 1 7
1プ レー
20 相手 に もん くをつ けて しま った ことがあ る. ‑. 07
62
7 全体 で, いい成績 だ った
Ⅶ評価
36 もう一 回勝負 したい.
1
3 勝 つ とはめ られ る.
21
1 3 2
189 8 1 1 0 6 4 4 4 3 3
0
0
49 6
651
82
0802 1 O n
U0一一 2
7
90 2
40 4 2 2 1
11 1 1 1 2 1
9627QU 4 5
41 1 1
.1︼
88 2 1 3 3 0 3 1 1 0 4 0
61‑. 0 3
7076
. 09
3‑. 09 0
626
2 3 1 6 5 4
583
2 2 6 0 1 1
406
8 6 5 2 0 0
一一 804∩八
U
29
1nU 2
一一
5513
5 5
00 2
‑. 09
7. 071
‑. 095 . 0 81
‑
. 20
8. 095
. 00
4‑. 0 4
1.
135. 03
7. 0 5
7. 0
24. 3 47 . 1 43 . 0 8
3‑. 0
71. 3 8
1. 26
8‑.
146 .41
4‑. 3
61Ⅶ【
10 勝 て る力 が あ って も負 けることがあ る 偶然性
15 勝つ とラッキー と思 う
1
6 勝 つ と, うま くな ったかな と思 う, 各項 目の因子負荷量 の二乗和 全項 目の分散 に対す る各因子 の寄与率
‑ 67
1.
126‑.
498‑
093‑.
41601 5 . 47
2 ‑.
080‑.
112‑. 1 0
6‑. 1 2
3 062‑. 0 5
9. 49 9
‑. 32 6
.1 21 . 1
04. 02
9‑. 0 6
8‑
348‑. 2 22
.443
. 1 8
722
5̲ 07
32 4
8‑. 07
5 ‑06
1‑. 27
1. 2 98
1. 6
71. 5
71. 41
4. 1 8 3
.923. 5 3
第
1因子 は
,「 勝っための練習や作戦
」「 がんばり」
に関連す る項 目か ら構成 されていることか ら 「 達成 動機」 と名付 けた.
対象 とした授業で行 った種 目が, サ ッカーとバ ス ケ ッ トボールと,児童 に人気があるボールゲームで あった ことも関連す ると考え られ るが
,「項 目番号
37勝つために練習 しようと思 う
.」「項 目番号
6負 けたあ とは次 に勝つため練習や作戦を考える
.」「項 目番号
14勝 ったあとまた勝つ ための練習 や作戦 を 考える
.」「 項 目番号
39もう少 し頭 を使 えば良 か っ た
.」「 項 目番号
32勝てそ うもない相 手 に勝 つ こと もある
.」 と,抽出された項 目の多 くが勝利 を求 め て積極的に試合 に向か う,意欲を示す内容 と̲ な って いた.これは, スポーツ心理学的研究 によって, 戟 争 の導入が達成動機 を高 めることを示唆 しているこ
とと一致 している.また
,「 項 目番号
25もっとがん ば らなきゃ, と思 った
.」「項 目番号
26やればで き る, と思 った
.」「 項 目番号
21次 もがんばろうと思 っ た
.」「 項 目番号
32勝てそ うもない相 手 に勝 つ こと もある
.」 の項 目か ら,達成動機 よ りも自己 に自信 を持っ運動有能感 を示す内容 も含 まれている.運動 有能感 については性差があるとされて い るが9 ) , 各 項 目とも男女で差 はなか った.
この因子の中に 「 項 目番号
38相手 の ことを考 え るとち ょっと悲 しい
.」項 目が含 まれて い るが, 辛 均得点が
3.51と, この因子 の中の他の項 目と異 な り 否定傾向があ り, ゲームに集中 して,対戦相手を考 慮 していなかった ことを示す ものと考 え られる.
この第
1因子 の寄与率 は
14.57で, 第
2因 子 の
8.22や第
3因子 の
7.04の
2倍程度 で あ った.この達 成動機因子が体育 の学習 におけるスポーツの競争を, 典型的 に表 している特性であることが明 らか となっ
た .
第
2因子 は,勝敗 に伴 う損得や表彰 の項 目が含 ま れ
,「 排他性」 と名付 けた.
この因子 にまとめ られた項 目で最 も因子負荷量 の大 きい
,「 項 目番号
23負 けると, そんす る ことが あ る
.」項 目の平均得点 が
4.66で
,40項 目中最 も強 く 否定 され,因子内の各項 目の平均得点が
4.10で あ っ た.( 表
3参照) この ことか らこの因子 を大変強 く 否定 していて,一般社会で は弊害 も見 られる競争 の 排他性 を否定 して,競争を認識 していることが明 ら か とな った.この ことは,対象が小学校高学年 で あ ることによる発達段階の特性 とも考え られ るが,体
表
3因子別の競争 に対する認識の平均得点
因子
Ⅰ ⅡⅢ
Ⅳ Ⅴ Ⅵ Ⅶ Ⅷ平均得点
2.374122.732,373202.803.022.99標準偏差
1.341.211.521.271.591.611.49142青 の学習 におけるスポーツの競争の特性であると考 えたほうが妥当であろう.調査対象の授業 の 「学習 のめあて」 にも,勝利 については上げられておらず, 振 り返 りの内容 も試合成績 より試合内容 に重点 を置 いていた ことか らもそのことが伺え る.さらに, 体 育 の学習 における試合 は,競技 スポーツの場合 と異 な り繰 り返 され る場合が多 く,勝利が独 占され るこ ともないか らであろう
6).
また, この因子 にまとめ られた中に 「 項 目番号
11負 けるとくや しい
.」「 項 目番号
33負 けるとむ な し い
.」項 目が含 まれているが, 平均得点 か ら否定 し てお り,敗北による屈辱感 も薄いことが明 らかとなっ
た .
第
3因子 は,試合が楽 しいとす る項 目が主で 「 楽 しさ」 の因子 と名付 けた.スポーツの競争 には楽 し さ, マ ッキ ン トッシュの示 したプ レイエ レメ ン トが あるが4 ) ,「 項 目番号30練習 より試合の方が楽 しい
.」「 項 目番号
7勝つ とうれ しい.」「 項 目番号
5試 合 をしてい るだけで楽 しい
.」 と, その ことを児童 は認 識 して いることが明 らか とな った.また
,「項 目番 号
9負 けると, が っか りして しま う
.」「項 目番号
18負 けると, イライラす る
.」 と,敗北の落胆 を示 す項 目が含 まれているが,共 に否定 していて楽 しさ のみを認識 していることが明 らか とな った.
この因子の中に 「 項 目番号
31試合 よ り練習 の方 が気が楽だ」が含 まれているが,因子負荷量が負で, 試合 に魅力を感 じていることが分か る.
「 項 目番号
7勝つ とうれ しい
.」 の項 目は, 平均 得点が
40項 目中最 も低 く,児童が勝利 の喜びを強 く 認識 していることも明 らか とな った.
第
4因子 は
,「 項 目番号
35試合でがんば った と思 う
.」「項 目番号
29試合 で は, よ くや った と思 う
.」「 項 目番号
28勝つ と, きもちが いい. 」 の
3項 目か ら成 り
,「 達成感」 と名付 けた.
達成感 は勝利 により, より深 く認識 され ると考え られ るが,試合結果 との関連 は調べ られなか った.
第
5因子 は,試合結果 に伴 う練習や努力を振 り返 る 「 項 目番号
2負 けたの は しか たが ない と思 う.」「 項 目番号
17負 けることは練習や努力の不足のため
だ と思 う
.」「項 目番 号
8勝 っ こ と は練 習 や 努 力 の 因 子 負 荷 量 の最 大 値 も第
8因 子 に 出現 し, 一 般 に大 結 果 が 出 る こ とだ と思 う
.」 の項 目が 中 心 で あ る こ 人 が ス ポ ー ツを行 う場 合 の動 機 と して強 く現 れ る こ
とか ら
,「社 会 比 較 」 と名 付 け た .た だ , 社 会 比 較 と と異 な って い た.これ は発 達 段 階 の特 性 で あ ろ う を表 す項 目 と考 え られ る 「項 目番 号
16勝 つ と, う と考 え られ る.
ま くな った か な と思 う. 」 が 含 ま れ ず , この 項 目 の この因子 の中 に 「項 目番 号
19勝 つ こ と は 自慢 で
表
4質問項 目別の競争 に対する認識の平均得点
No.
設問 平均 全体
(SD) UJI
J年 6 年 学 年 差
1
勝 ち負 けは実力で きまると思 う.
2
負 けたのは しかたがないと思 う。
3
勝 って もよろこべないことがある.
4
負 けて も,内容のいい試合だ った らくや しくない
5試合を しているだけで楽 しい.
6
負 けたあとは次 に勝つため練習や作戦を考える.
7
勝つ とうれ しい.
8
勝つ ことは練習や努力の結果が出ることだと思 う
9負 けると,が っか りして しまう.
0 勝てる力があって も負 けることがある.
1 負 けるとくや しい.
2
くや しくて も八つ当た りしてはいけない
3勝つ とはめ られ る.
4
勝 ったあとまた勝つための練習や作戦を考える.
5
勝っ とラッキーと思 う,
6
勝つ と, うま くなったかなと思 う.
7
負 けることは練習や努力の不足のためだと思 う.
8
負 けると, イライラす る.
9
勝つ ことは自慢で きる,
0
相手 にもん くをっけて しまったことがある.
1
次 もがんばろうと思 った.
2
勝つ と,得す ることがある.
3
負 けると, そんをす る
4勝つ と表彰 される.
5
もっとがんば らなきゃ, と思 った.
6
やればで きる, と思 った.
7
全体で,いい成績だ った.
8
勝つ と, きもちがいい.
9
試合では, よ くや ったと思 う.
0
練習より試合の方が楽 しい.
1
試合より練習の方が気が楽だ.
2
勝てそ うもない相手 に勝っ こともある.
3 負 けるとむな しい.
4
相手 に 「ざまあみろ」 と思 った.
5
試合でがんば ったと思 う.
6
もう一回勝負 したい.
7
勝つために練習 しようと思 う.
8
相手の ことを考えるとち ょっと悲 しい.
9
もう少 し頭を使えば良か った.
0
弱い相手の試合 はお もしろ くない.
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2.90(1.23) 2.65 3.15 0.50注)
1そ う思 う
,2少 しそ う思 う
,3わか らない,4 あまり思わない,5 そ う思わない
*p<0. 0 5
きる
.」「 項 目番号34相手 に 「ざまあみ ろ」 と思 っ た
.」の自己顕示や優秀性 の証 明 を表 す項 目が含 ま れているが,平均得点 が
4.0を越 えて強 く否定 して お り,競争 に伴 う自負心 について児童の認識 は浅い ことが明 らか とな った.
第
6因子 は
,「 項 目番号
3勝 って もよろ こべ ないことがある
.」「 項 目番号
12くや しくて も八 っ当た りしてはいけない
.」「 項 目番号
20相手 に もん くを つけて しまった ことがある
.」 の
3項 目か ら構成 さ れていることか ら
,「フェアプ レー」 と名付 けた.
特 に
,「 項 目番号
12くや しくて も八っ当た りして はいけない
.」項 目の平均得点 は, 第
3因子 の 「項 目番号
7勝つ とうれ しい.」 に次 いで低 く, この段 階の児童が,敗北 に対 し理性的 に対処す ることが必 要であることを,理解 していることが明 らか となっ
た.
第
7因子 は
,「 項 目番号
27全体で, いい成績だ っ た
.」「 項 目番号
36もう一 回勝負 したい
.」「項 目番 号
13勝っ とはめ られ る. 」 の
3項 目か ら構成 されて いて,共通す る内容 に乏 しく,因子の命名が困難で あったが,最 も負荷量の大 きい項 目が 「 項 目番号
27全体で, いい成績だ った
.」 ことか ら 「評価」 と名 付 けた.
この中の 「 項 目番号
36もう一回勝負 したい
.」は, 平均得点か ら強 く肯定 されてはいるが,因子負荷量 が負であった.この ことは,勝敗が決 して も再挑戦 を求める未練を抱 いていることが伺 えるが, この因 子を形成す る内容 としてほその対極 の,競争結果の 受容 となるであろう.したが って評価 の意味 も含 ま れ ると考え られる.
第
8因子 は
,「 偶然性」 と名付 けた.この因子 に は
3項 目がな らべ られているが,「 項 目番号1
6勝っと, うま くな ったかなと思 う
.」 の因子負荷量 の絶 対値 は低 く,意味を持 たない ものと考 え られ,他の
「 項 目番号
10勝て る力があって も負けることがある
.」「 項 目番号
15勝つ とラッキー と思 う
.」 の
2項 目が 表す ように,勝敗の予測がで きに くい, あるいは偶 然の勝利があることを表 している.ただ,同様 の意 味を含む と考え られ る 「 項 目番号3 2勝 て そ うもな い相手 に勝つ こともある
.」 の項 目が ここには含 ま れず,第
1因子 に含 まれた ことと,寄与率が最 も小 さな因子であることか ら, この因子 の認識 は深い も のではないと考え られ る.スポーツの競争 には偶然 性が伴 い,特 に球技 は顕著であると言われ るが,調
査対象 の授業内容がサ ッカー とバ スケ ッ トボールで あ った ことを考慮す ると,因子 として列挙されたが, やは り認識 は深 いもので はないと考え られ る.
全項 目を見直す と,学年 の違 いや性別 による回答 の平均点 には有意 な差 はなか った.ただ し
, 5年生 と
6年生の平均点の差は
0.50とかなり大 きな値 となっ た.そ こで,質問項 目別 に差 の検定 を行 った結果, 合計
4項 目に有意差があ ることが明 らか とな った.
( 表
4参照)それぞれ 「 項 目番号
5試合 を して い るだけで楽 しい
.」「 項 目番号
29試合 で は, よ くや っ たと思 う
.」「 項 目番号
30練 習 よ り試合 の方 が楽 し い
.」「 項 目番号
36もう一回勝負 したい
.」 の各項 目 で
, 5年生が強 く肯定 し
, 6年生があまり肯定 して いなか った ことになる.この ことは
5年生の試合参 加意欲が高か った ことを示す もので,発達 に伴 う活 動欲求 の低下 によるものなのか,サ ッカーとバスケッ
トボールの種 目の違 いによ る ものか は不 明で あ る.
いずれにせ よ
, 5年生 は試合 を よ り強 く求 めて い た .
また,競争 に対す る認識 に性差 が予想 されたが, 全体平均及 び個別 の項 目すべてに有意差はなかった.
また,学年 に分 けで性差を調べた結果 において も有 意差 はなか った.しか し
,5年生男子が 「 項 目番号
20相手 にもん くをっけて しまった ことが あ る」 項 目でやや女子 を上回 り,攻撃 的傾 向が うかがえた.
また
, 6年生男子では 「 項 目番号
31試 合 よ り練習 の方 が気が楽だ」項 目で上回 り,逃避す る傾向が う かがえた.しか しそれ らは有意ではな く,小学校高 学年 の児童の競争 に対す る認識 には性差が現れない 結果 とな った.
4.
まとめ
体育科 の学習 における児童の競争 に対す る認識 を 把握す るため, ボールゲーム学習直後 に,質問紙調 査 した.集 まった回答を因子分析等統計的に処理 し た結果,次の点が明 らかになった.
小学校高学年 の児童 の競争 に対す る認識 の最 も大 きな要因 は,勝つための練習や次 もがんばろうと思 うな ど,試合 に対す る積極性で,達成動機 に関す る 因子であった.これは一般的競争 の特性 と一致 して いる.
また, ある個人の目標達成が,他 の個人の目標達
成を妨 げる,排他性が競争 の負 の側面 として指摘 さ
れているが,体育の学習 におけるスポーツの競争で
は, この排他性 を否定 して認識 していることが明 ら か とな った.これ は,一般 の競争 と体育 の学 習 にお ける競争 には,大 きな相違 があることを示す もの と 考 え られ る.
体育 の学習 における試合が楽 しい ことと,試合 に 伴 う達成感 を児童 は認識 していることが明 らかとなっ た.
大人が スポーツを行 う場合, その動機 として強 く 現 れ る社会比較 や優秀性 の証 明の要因 について,児 童 はあま り認識 していない ことが明 らか とな った.
小 さな要因であ るが, フェア プ レーの必要 性 や, スポーツの競争 には偶然性 が伴 うが, その偶然性 を 認識 していることが明 らか とな った.
小学校高学年 の児童 の場合,理 由 は明 らかで はな いが,競争 に対 す る認識 には性 の違 いによる差が認 め られなか った.
今後 の課題 として,累積寄与率 の高 くな る質問紙 調査票 を作成 し調査 の精度 を向上 させ, 中学生や高 校生, あ るいは大学生 な ど他 の年齢段階 の競争 の認 識が, この小学校 の児童 とどのよ うに異 な るのか明
らかにす ることが上 げ られ る.
謝辞
論 を閉 じるにあた り,貴重 な授業 を提供 くだ さる とともに,調査 を実施 して くださった高橋健一,佐 藤真,両教諭及 び協力 して くださ った鈴木亙教諭 に 心 か ら感謝 いた します.
( 本研究 は文部省科学研究費,基盤研究(
C)No.096 80078に基づ くものの一部 である. )
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1979 p926)島津光雄
小学校 スポーツ教材 の競争性 につい て 体育科教育学研究第1
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1995第2 号
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7)島津光雄
体育 の学習指導 における競争 の工夫 の分類 秋 田大学 教育学 部 研究 紀 要 第49 集
1996 pp27‑358)西 田保
競争場面 における運動パ フォーマ ンス に及 ぼす達成動機づ けの影響 体育学研究2
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10)米川直樹
新版運動心理学入門 大修館書店
1987 p235Summary
AfterlearnlngballgamesinphysicaleducatlOn classes,fifthandsixthgradesoftheelementary schoolboysand girlsunderstanding ofsports competitionwassurveyedbyaquestlOnnaire.
Throughfactoranalys
ュ
s,themostimportant factoroftheunderstandingofsports competi‑ tionwasachievementmotivation.Itisthesame qlユalltyOfgeneralcompetition.Theexclusivequalltiesarepolntedoutasa negativefactorofgeneralcompetition,butschool boysandgirlsunderstandingofsportscompeti‑ tioninphysicaleducationclassesdeniedtheexcl‑ usivequalities.
Theotherfactorsofllnderstanding ofsports competltlOninphysicaleducation classeswere thefollowlng.Ballgamesaregreatfl
l
n,needa splritofhonestfairplay,andtheirresultsof competitionareunexpectedly.KeyWords:Competitl
O
n,PhysicalEducation Classes,FactorAnalysis,Achieve‑ mentMotivation(ReceivedJannary21,1999)