過疎山村 における高齢者 の生活行動 と社会関係
‑ 秋 田県上小阿仁村を事例 として‑
佐 藤 桃 子
キー ワー ド:過疎 山村 高齢者 生活行動 社会関係 上小阿仁村
Ⅰ は じめに
秋 田県 における過疎山村 の研究 については、 これ まで阿仁町を対象 として、本学の学生 によ りさまざ まな視点か ら行 われて きた。 日本 のなかで も過疎地 域では、高度経済成長期以降の若年者層を中心 と し た人 口減少がっづ き、高齢者の残留が進行 している。
中傑 (2003)は、高齢者が山村での生活を維持す る ためには、彼 らを取 り巻 く他者 との相互作用が大 き な役割 を果 たす と考え、島根県石見町を対象 と した 研究でそれを証明 した。
本研究 の調査 は、秋 田県上小阿仁村 に居住す る世 帯 を対象 と して、 調査票 に基 づ く聞 き取 り調査 を 2005年2月か ら10月上旬 に行 った。有効回答の得 ら れた高齢者 は、子 どもと同居 しない高齢者 のみの世 帯が253世帯で、子 どもと同居す る世帯 は50世帯だ っ た。高齢者以外 に対 しての聞 き取 りは56世帯行 った。
Ⅱ
対象地域の概観 と高齢人 口上小阿仁村 は、秋 田県のはば中央、北秋 田郡 の西 南部 に位置 し、南北 に細長 い広大 な山間村 とな って いる。村の北部を除いては全般的に平地 に恵 まれず、
総面積 の約94%が山林原野 で 占め られ、 うち73%が 国有林 とな ってお り、全国的に も秋 田杉 の主産地 と な っている。1年 間の3分 の 1は雪 で覆 われ、特 に 南部 と東部 の山間地 は積雪2mに もお よび、 特別 豪雪地、積雪寒冷地 とな っている。
上小阿仁村の主 な産業 は農業であるが、総世帯数 に占め る農家数 は24.6% (277戸) と年 々低下 して いる反面
、1
農家 あた りの経営耕地面積 は1.36haと 県内では第48位 と、農家数 の減少 とは逆 に年 々増加 傾向にある。国道285号 は、大館能代空港開港 に ともな って さ らに交通量が増えてお り、県内観光 ネ ッ トワークの
‑ 13一
大動脈 として、十和 田、八幡平、男鹿、秋 田を結ぶ 重要路線 となっている。
村 の中心、集落の一つである沖 田面地区 は、秋 田久 保 田 と阿仁鉱山を往来す る宿場 として栄 え、一方で は、八郎潟東部 の米作地帯か らの米 の中継基地 とし て栄えて きた。明治22年 に町村制が施行 され、 それ までの小沢田、福舘、五反沢、重用、杉花、仏社、
沖 田面、大林、南沢 の9つが合併 し、上小阿仁村が 誕生 し、以来‑村単独で現在 に至 っている。
上小阿仁村 で は、人 口が1960年 の6,972人 を ピー クに、その後減少をっづ ける、典型的な過疎山村 と いえ る。平成12年 の国勢調査で は1,127世帯、3,369 人、一世帯 あた り平均3.0人、人 口密度13.1人/km2
とな って い る。 高齢者比率 が高 い集落 は、 不動羅
r L) /‑ 了⊥ ●
㌔ , ● 下 五 反 沢 ̲ J
・,ー ︿ノ′( ノ1〜・,〜‑ ///義 ,‑増C
二ち‑
joJf
.ーしっ‑/‑1\
㌔
沢木..ヽiiZ第
1 図
上小阿仁村 の概観 および各集落の 高齢者比率 (2005年)過疎 山村 における高齢者 の生活行動 と社会関係
‑ 秋 田県上小阿仁村を事例 として‑
佐 藤 桃 子
キーワー ド:過疎山村 高齢者 生活行動 社会関係 上小阿仁村
Ⅰ は じめに
秋 田県 における過疎山村の研究 については、 これ まで阿仁町を対象 として、本学の学生 によりさまざ まな視点か ら行われて きた。 日本のなかで も過疎地 域では、高度経済成長期以降の若年者層を中心 とし
た人口減少がっづ き、高齢者の残留が進行 している。
中傑 (2003)は、高齢者が山村での生活を維持す る ためには、彼 らを取 り巻 く他者 との相互作用が大 き な役割を果たす と考え、島根県石見町を対象 とした 研究でそれを証明 した。
本研究の調査 は、秋 田県上小阿仁村 に居住す る世 帯 を対象 と して、 調査票 に基づ く聞 き取 り調査 を 2005年2月か ら10月上旬 に行 った。有効回答の得 ら れた高齢者 は、子 どもと同居 しない高齢者のみの世 帯が253世帯で、子 どもと同居する世帯 は50世帯だっ た。高齢者以外に対 しての聞 き取 りは56世帯行 った。
Ⅱ 対象地域の概観 と高齢人 口
上小阿仁村 は、秋田県のはば中央、北秋田郡の西 南部 に位置 し、南北 に細長 い広大 な山間村 となって いる。村の北部を除いては全般的に平地 に恵 まれず、
総面積 の約94%が山林原野で占め られ、 うち73%が 国有林 となってお り、全国的にも秋田杉の主産地 と な っている。1年間の3分の 1は雪で覆われ、特 に 南部 と東部 の山間地 は積雪
2m
に もおよび、特別 豪雪地、積雪寒冷地 となっている。上小阿仁村の主 な産業 は農業であるが、総世帯数 に占める農家数 は24.6% (277戸) と年 々低下 して いる反面、1農家あた りの経営耕地面積 は1.36haと 県内では第48位 と、農家数の減少 とは逆 に年々増加 傾向にある。
国道285号 は、大館能代空港開港 にともな って さ らに交通量が増えてお り、県内観光 ネッ トワークの
‑ 13一
大動脈 として、十和田、八幡平、男鹿、秋田を結ぶ 重要路線 となっている。
村の中心、集落の一つである沖田面地区は、秋田久 保田と阿仁鉱山を往来す る宿場 として栄え、一方で は、八郎潟東部の米作地帯か らの米の中継基地 とし て栄えて きた。明治22年 に町村制が施行 され、それ までの小沢田、福舘、五反沢、重用、杉花、仏社、
沖田面、大林、南沢の9つが合併 し、上小阿仁村が 誕生 し、以来‑村単独で現在 に至 っている。
上小阿仁村 で は、人 口が1960年 の6,972人 を ピー クに、その後減少をっづ ける、典型的な過疎山村 と いえ る。平成12年 の国勢調査では1,127世帯、3,369 人、一世帯 あた り平均3.0人、人 口密度13.1人/km2
とな ってい る。 高齢者比率が高 い集落 は、不動羅
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沢木..ヽiiZ第
1 図
上小阿仁村の概観および各集落の 高齢者比率 (2005年)Akita University
写真 1 上小阿仁村八木沢の概観
( 2 0 0 5
年12
月1
日、筆者投影)(100%)、 八木沢 (68.18%)、福舘 (51.32%)、杉 花 (51.28%)である (第 1図). なかで も八木沢 は、
場所柄 と領域 の小 ささか ら、秋 田県内で過疎地 と し て、 よ く取 り上 げ られ る集落である (写真 1)0
Ⅲ 高齢者 の生活行動 とその環境
1. 高齢者 の生活行動
1
) 消費行動、受療行動、余暇行動村内の小 さな商店 で買 い物す るよ りは、五城 目で、
安 く大量 に買 い物 したいとい うことか ら、村 に居住 す る人 のほとん どは、食料品や 日用雑貨品を五城 目 町の ジャス コか アマ ノに買 いにい く。
受療行動 は、病院 までの距離ではな くて、抱えて いる病気や病院の評判 によ って病院を選んでいるの で、各集落の違 いは とくにない。
余暇行動 において は単純 に、住んで いる場所か ら の距離が行 き先 を決定 していた。 しか し、山ふ じ温 泉か らは送迎バ スが出ているため、遠 くに住む、交 通手段 のない高齢者 で も利用す ることがで きる。 ま た、道の駅 は生涯学習セ ンターに隣接 してお り、サー クル ・カルチ ャー教室を終えた高齢者の休憩所 となっ ている。
2) 行動 の組み合 わせ と類型
サークル ・カル チ ャー教室 に所属 しているかいな いかで、生活行動 が変 わ って くる。 同 じサークルに 所属す る友人 と、 その前後 の行動 を共 に していると 答 えた人 はとて も多 い。
行動 の内容 は、一緒 に温泉へ行 った り、買 い物 を した り、家で話 をす るとい うものだ った。友人 と前 後の行動 を共 にす ることで、教室でわか らなか った
ことを教 えあ った り、交通手段 のない人 は友人の 自 動車 に乗せて もらえた りす ることがで きる。 また、
サークルで知 り合 った趣味を同 じくす る者 どうLで、
旅行 に出か けた りす ることもあ る。 サークル内だけ での交流 にとどま らず、積極的に他者 との関係 を維 持 しよ うと していることが伺 え る。
2. 生活行動 の地域的 ひろが り
これは、村全体 における高齢者 の生活行動 の地域 的 ひろが りを示 した ものであ る (第2図)。行動 の 主体、交通手段、行動 日的、行動回数 などを考慮 し ている。行動 の 目的や回数 によ って、交通手段 に違 いがみ られ ることがわか る。
集落 内では、徒歩 による移動が最 もよ く行 われて いる。 そ して、村内、村外 と、行動 の範囲がひろが るにつれて、多様 な交通手段が とられ るよ うになる。
中で も、自動車の利用 は圧倒的に多い。 ここではサー クル活動 も余暇行動 に含めたが、遠 くになるに従 っ て、行動 の回数が少 な くな って いることがわか る。
また、行動の単位 も個人ではな く、複数で行われ る。
村外 鞘 内 &井内 居住地
第2図 上小阿仁村 における高齢者 の生活行動 の 地域的ひろが り
( 2 0 0 5
年2 ‑9
月の聞き取り調査により作成)3 .
住民の意識 と生活環境聞 き取 り調査 によると、山村 は住 みやすいか との 質問 に対 し、65歳以上 の高齢者 の半数以上が、住み やす いと答えた。理 由 と して、公共施設 の設置が さ れた ことや、道路の整備 などがあげ られた。 これに 対 し、15‑29歳 の若年者半数近 くが、 山村 は住 みに くいと答 えた。 また、山村 か ら出たいと答 えた人 は
4 0
人中3 3
人 と、若年者 のほとん どが都市へでの生活 を希望 していた。‑ 14‑
Akita University
Ⅳ 高齢者の社会関係形成
1. 施設 ・集団 との社会関係
ここでは、近隣者 と友人、 サークル ・カルチ ャー 教室 を、高齢者 を とりま く他者 と した。聞 き取 りを していて、 と くに回答 の多か ったのが、 サークル ・ カルチ ャー教室 を とお した社会関係 である。
サークル ・カルチ ャー教室 の多 くが、小沢 田にあ る生涯学習 セ ンターで開かれてお り、他 には小学校 や中学校、 スポーツ施設、山ふ じ温泉 にあ るコ ミュ ニテ ィセ ンターなどがある。生涯学習 セ ンターはで きたばか りで まだ新 しく、図書室や郷土資料室、多 目的 ホールがある。上 ノ岳 スポーツエ リアや上大 内 沢山村広場 は、休 日には村外 の利用者 も多 く、晴れ た日にはバ ーベキューを して いる家族連れ も多 く見 かけた。
サークル ・カルチ ャー教室 に所属す ることによ っ て、高齢者 は社会関係 を維持 しよ うと している。女 性の場合、複数 のサークルに所属 して、積極的 に活 動 を行 っていることが多 い。
サークルや カルチ ャー教室 にひとつ も所属 してい ないと答 えたのは
、7 5
歳以上 の、後期高齢者 と呼ば れ る人 たちが ほとん どである。加齢 が進 み、体力的 な問題 でサークルやカルチ ャー教室 か ら遠 ざか り、すすんで関係 を形成す ることがで きな くな ったため だ と考 え られ る。彼 らは、近隣関係 や血縁関係 を生 活 の中心 においている。
サークル ・カルチ ャー教室 は、高 齢者 に新 たな社 会関係 を形成す る場 を提供 し、生 きがいを与 えてい るといえ る。 サークル ・カルチ ャー教室 に所属す る ことによ って、高齢者 は社会関係 を維持 しよ うと し
写真2上小阿仁村 山ふ じ温泉で談話す る高齢者 (2005年12月1E)、筆者撮影)
ている.女性 の場合、複数 のサークルに所属 して、
積極的 に活動 を行 っていることが多 い (写真2)0
2.個 々人 との社会関係
1
) 親子関係 の存在形態 と機能子 ど もと同居 しない高齢者 にとって、別居子 と形 成す る社会関係 は最 も安定 した支援 の源であ り、 こ れを 日常的 に形成で きるか どうか は高齢者 の生活維 持 に影響 をおよぼす。
親が子 どもか ら受 けるのは、対面的なサポー トと、
心 のサポー トに分 け られ る。対面 的サポー トは、月 に1匝Ⅰ以上 の訪問を行 う子 どもか ら受 ける場合が多 くて、最 も多 いのは家事 と農作業 の手伝 いである。
農作業支援 は別居子 が週末農民 と して週末や農繁期 に手伝 うもので、農業 の維持 に役立 っている。週末 農民の農作業 のための帰省 は、農繁期 は中心 に して 年間
4日前後 に大半が集 中す る。
親 と対面接触が困難 な県外 に居住す る子 どもは、
心 のサポー トが中心 となる。彼 らは少 な くとも月 に 1回、電話 や手紙、 メールなどを通 じて、 自分 の家 族 の ことや親 の健康状態などにつ いて相互 に情報 を 交換 している。
また、世帯収入のなかに、子 ど もか らの仕送 りが ある世帯がみ られ る。 これは、別居子が遠距離 に住 む場合 に多 い。親 と対面接触が困難 であ るため、 そ の分 を金銭的 な面で補お うと しているので はないか と考 え られ る。・しか し、仕送 りを受 けるほとん どの 親 の希望 と しては、仕送 りはい らないか ら、 なるべ く近 くに住 んでは しいとい うことであ った。子 ども が県内に居住 しているに もかかわ らず仕送 りを受 け ている場合、高齢者が後期高齢者 で単身 であ ること が多 い。
このよ うに別居子 の親子関係 は、両者 の空間関係 によ って内容 と強度が異 なるもの と考 え られ る。子 どもと同居 しない高齢者 に も別居子 の 日常的な支援 を受 け られ る人 とそ うでない人 との分化がみ られ、
社会関係 の保有状況 に差異 が生 じている。
2 )
近隣 ・友人関係 の存在形態 と機能高齢者 は加齢が進む ほど、主体 的に社会関係 を形 成す るのが難 しくな り、 それにともな って近隣者 の 存在が重要性 を増 して くる。 しか し、高齢者がそれ を主体的 に取 り込 んでいるわけではな く、む しろ近 隣者 が、社会関係形成 の主体性が後退 している高齢 者 と緊密な社会関係 を形成す ることで資源の調達 を
‑ 1 5‑
Akita University
助 け、別居子 を動員す るなど資源調達 を主導 してい る。 そのため、近隣者、 とりわけ隣戸 は、 その空間 的近接性 ゆえに生活 に密着 し緊急 に対応で きる機能 的支援 の源泉であ ると同時 に、資源調達 の支援者 と して位置づ け られ る。 また、 いま近隣者か ら助 けて もらっている高齢者 も、以前 は、 自らが近隣者 と し て、近 くに住む高齢者の面倒 をみていた ことがある
と答えた人が非常 に多か った。
村 内における友人 との社会関係 は、住民 の 日常的 な接触や、地域福祉 サー ビス、地域住民組織 を とお して生み出されている。 とくに女性 は、男性 に比べ て、積極的 に社会関係を形成 しよ うと している。女 性 は、積極的 に外 に出 ることによ り他者 の情報 を不 断 に収集 し、関係 を維持 しよ うとしている。女性高 齢者 たちの 日常接触 は、農協での買 い物や年金の受 け取 り時、温泉 にいる時 に形成 され る。 わざわざ離 れた集落の友人宅 に行かないまで も、農協か温泉 に 行 けば会え る、 と して毎 日通 う人 もいる。 しか し、
こうした日常的な関係 も加齢 にともな う外出困難 の ため途絶 えて しまうことも多 い。 ただ、 その後 も電 話 などで関係 を維持 しよ うとす る人 もいる。
デイサー ビスは高齢後期に至 って も保たれている。 これ は高齢者 自 らが資源 を取 り込む とい うよ り、社 会福祉 によ り社会関係形成のお膳立てがなされ、高 齢者 にかか る資源調達 コス トが低 く抑え られ るため
第1表 上小阿仁村 における高齢者が主体 となる 社会関係の事例
関係先
範囲
主な内容別居子 村
内
家の中の掃除や洗濯、炊事などの世話農
作集の手伝い(農繁期の労力提供、草刈り)家の中で一緒に話をする、食事をする
村 外 電話で鍵康状態について話し合ったリ、悩み事を
研いたりする
農繁期に帰省して、農作業を手伝う
近隣 者 隣 戸 見守り
家事の手伝い 同集落 集落組鼓
近隣者宅との行き来 農作集を手伝う、手伝ってもらう
友人 村 内 一緒に出かける(温泉.貢い物など)
友人宅との行き来 道の駅で話をする 農協凍 美辞で話をする
地域住 民租 経 (婦 人会 ) 地域福祉サ‑ビス 村で開かれるイベントへの参加 村外 同書会、広場のOB会
サークル .カルチャー教 村 内外 老人クラブ(花いっぱい運動 、クリーンアップ活動、
ゲ‑トポ‑ル) 併句教室 書道教室 浄土を語 る会 フラワーアレンジメント教室
スポー‑ソ教室 料理教室
′tツチワーク教皇 日本舞議教室 自然を守る会 お茶の教室 大正琴教室
こ
とぶき大学高齢者生活支援租捜 村内
在
宅福祉サービス( 2 0 0 5
年2 ‑9
月の聞 き取 り調査 によ り作成)である。
村外 に居住す る友人 とは、同窓会や職場 の
OB会
などが中心で、年 に数回程度 の交流がある。このように、高齢者 の交流の内容 と頻度か ら、親 子関係よりも、近隣者や友人、サークル ・カルチャー 教室を とお した関係が、高齢者の 日常生活 に密着 し、
生活 を維持す るのに重要 だ と考 えた。 なかで も、近 隣者 との関係 はな くてほな らない ものだ と考え られ る。高齢者 は、近隣者 とほぼ毎 日顔を合わせ ること で、緊密な社会関係を形成 している。 とくに、隣の 家 は、家事 の手伝 いや高齢者 の見守 りをす るなど、
生活の内部 に踏み込んだ関係を築いている (第1表)。
Ⅴ むすび
高齢 になるにつれて、高齢者 の生活 は近隣 ・血縁 関係 に依存す る。 しか し、高齢者 は子 ども以外 との 社会関係を形成す ることで、直接的に も、情緒的に も、必要 な支援 を受 けることがで きる。 なかで も、
近隣者か らは、高齢者 の 日常生活 に密着 した、緊急 性 を もっサポー トが受 け られ ることがわか った。
加齢 にともな う行動範囲の縮小が進む と、空間的 に近接す る他者 とは最 も安定 した社会関係を形成す ることがで きる。 とくに、高齢後期 において近隣者 は有効 に機能 している。
このよ うな性格 は、村落社会 に根 ざ した生活扶助 機能が山村の高齢者 にとって重要であることを示 し、
高齢後期の生活 は地縁 に基づ く社会関係 によ り維持 されている。
本稿 の作成 にあた り、上小阿仁村の多 くの方 に御 世話 にな り、 また、秋 田大学教育文化学部 の篠原秀 一先生 に終始量重 なご助言 をいただいた。末筆 なが
ら、深 く感謝 申 し上 げます。
文 献
中候暁仁 (2003):過疎 山村 にお ける高齢者 の生活 維持 メカニズムー島根県石見町を事例 として‑.
地理学評論,第76巻,979‑1000.
‑ 161 助 け、別居子 を動員す るなど資源調達 を主導 してい
る。 そのため、近隣者、 とりわけ隣戸 は、 その空間 的近接性 ゆえに生活 に密着 し緊急 に対応で きる機能 的支援 の源泉であ ると同時 に、資源調達 の支援者 と して位置づ け られ る。 また、 いま近隣者か ら助 けて もらっている高齢者 も、以前 は、 自らが近隣者 と し て、近 くに住む高齢者の面倒 をみていた ことがある
と答えた人が非常 に多か った。
村 内における友人 との社会関係 は、住民 の 日常的 な接触や、地域福祉 サー ビス、地域住民組織 を とお して生み出されている。 とくに女性 は、男性 に比べ て、積極的 に社会関係を形成 しよ うと している。女 性 は、積極的 に外 に出 ることによ り他者 の情報 を不 断 に収集 し、関係 を維持 しよ うとしている。女性高 齢者 たちの 日常接触 は、農協での買 い物や年金の受 け取 り時、温泉 にいる時 に形成 され る。 わざわざ離 れた集落の友人宅 に行かないまで も、農協か温泉 に 行 けば会え る、 と して毎 日通 う人 もいる。 しか し、
こうした日常的な関係 も加齢 にともな う外出困難 の ため途絶 えて しまうことも多 い。 ただ、 その後 も電 話 などで関係 を維持 しよ うとす る人 もいる。
デイサー ビスは高齢後期に至 って も保たれている。 これ は高齢者 自 らが資源 を取 り込む とい うよ り、社 会福祉 によ り社会関係形成のお膳立てがなされ、高 齢者 にかか る資源調達 コス トが低 く抑え られ るため
第1表 上小阿仁村 における高齢者が主体 となる 社会関係の事例
関係先
範囲
主な内容別居子
村
内 家の中の掃除や洗濯、炊事などの世話農
作集の手伝い(農繁期の労力提供、草刈り)家の中で一緒に話をする、食事をする
村 外 電 話で鍵康状態について話し合ったリ、悩み事を
研いたりする
農繁期に帰省して、農作業を手伝う
近隣 者 隣 戸 見守り
家事の手伝い 同集落 集落組鼓
近隣者宅との行き来 農作集を手伝う、手伝ってもらう
友 人 村 内 一緒に出かける(温泉.貢い物など)
友人宅との行き来 道の駅で話をする 農協凍 美辞で話をする
地域住 民租 経 (婦 人会 ) 地域福祉サ‑ビス 村で開かれるイベントへの参加 村外 同書会、広場のOB会
サークル .カルチャー教 村 内外 老人クラブ(花いっぱい運動 、クリーンアップ活動、
ゲ‑トポ‑ル) 併句教室 書道教室 浄土を語 る会 フラワーアレンジメント教室
スポー‑ソ教室 料理教室
′tツチワーク教皇 日本舞議教室 自然を守る会 お茶の教室 大正琴教室
こ
とぶき大学高齢者生活支援租捜 村内
在
宅福祉サービス( 2 0 0 5
年2 ‑9
月の聞 き取 り調査 によ り作成)である。
村外 に居住す る友人 とは、同窓会や職場 のOB会 などが中心で、年 に数回程度 の交流がある。
このように、高齢者 の交流の内容 と頻度か ら、親 子関係よりも、近隣者や友人、サークル ・カルチャー 教室を とお した関係が、高齢者の 日常生活 に密着 し、
生活 を維持す るのに重要 だ と考 えた。 なかで も、近 隣者 との関係 はな くてほな らない ものだ と考え られ る。高齢者 は、近隣者 とほぼ毎 日顔を合わせ ること で、緊密な社会関係を形成 している。 とくに、隣の 家 は、家事 の手伝 いや高齢者 の見守 りをす るなど、
生活の内部 に踏み込んだ関係を築いている (第1表)。
Ⅴ むすび
高齢 になるにつれて、高齢者 の生活 は近隣 ・血縁 関係 に依存す る。 しか し、高齢者 は子 ども以外 との 社会関係を形成す ることで、直接的に も、情緒的に も、必要 な支援 を受 けることがで きる。 なかで も、
近隣者か らは、高齢者 の 日常生活 に密着 した、緊急 性 を もっサポー トが受 け られ ることがわか った。
加齢 にともな う行動範囲の縮小が進む と、空間的 に近接す る他者 とは最 も安定 した社会関係を形成す ることがで きる。 とくに、高齢後期 において近隣者 は有効 に機能 している。
このよ うな性格 は、村落社会 に根 ざ した生活扶助 機能が山村の高齢者 にとって重要であることを示 し、
高齢後期の生活 は地縁 に基づ く社会関係 によ り維持 されている。
本稿 の作成 にあた り、上小阿仁村の多 くの方 に御 世話 にな り、 また、秋 田大学教育文化学部 の篠原秀 一先生 に終始量重 なご助言 をいただいた。末筆 なが
ら、深 く感謝 申 し上 げます。
文 献
中候暁仁
( 2 0 0 3 )
:過疎 山村 にお ける高齢者 の生活 維持 メカニズムー島根県石見町を事例 として‑.地理学評論,第