2019
年度 修 士 論 文
石神井川における水質及び臭気特徴と スカム発生確率に関する研究
首都大学東京大学院 都市環境科学研究科
都市基盤環境学域 環境水理学研究室
18851513
奧山 諒平
指導教員 教授 横山勝英
目次
第一章 序論
1-1 研究背景 ・・・・・1
1-2 既往の研究 ・・・・・3
1-3 論文構成 ・・・・・5
第二章 研究方法
2-1 石神井川の特徴 ・・・・・6
2-2 観測地点 ・・・・・10
2-3 長期モニタリング
2-3-1 水質の観測方法 ・・・・・12 2-3-2 スカムの観測方法 ・・・・・16 2-4 データ解析
2-4-1 水質データの変換及び補正方法 ・・・・・17 2-4-2 スカム被覆率の算出方法 ・・・・・24 2-4-3 ロジスティック回帰分析 ・・・・・27 2-5 臭気サンプリング
2-5-1 空気・河川水・底泥・スカムの採取方法 ・・・・・29 2-5-2 含水比・強熱減量試験 ・・・・・32 2-6 臭気分析
2-6-1 におい識別別装置 ・・・・・33 2-6-2 臭気指数相当値の補正 ・・・・・40 2-6-3 におい識別装置の精度 ・・・・・41
第三章 スカム発生環境の特徴 3-1 臭気分析結果
3-1-1 スカムの臭気 ・・・・・46
3-1-2 空気・河川水・底泥の臭気 ・・・・・48
3-1-3 類似度の考察 ・・・・・79
3-2 モニタリングによる水質時系列変化
3-2-1 3年間の水質時系列変動の概況 ・・・・・81 3-2-2 半月周期の水質動態特性 ・・・・・85 3-2-3 合流部における塩水挙動 ・・・・・89
3-3 水質とスカム発生の関係
3-3-1 DOとスカムの関係 ・・・・・92 3-3-2 各水質パラメータとスカムの二変量解析 ・・・・・93
第四章 スカム発生確率に関する解析 4-1 スカム発生確率を高めるリスク因子
4-1-1 ピアソン相関係数 ・・・・・95 4-1-2 オッズ比 ・・・・・96 4-1-3 リスク因子の考察 ・・・・・98 4-2 スカム発生確率モデル
4-2-1 変数選択 ・・・・・100 4-2-2 精度検証 ・・・・・102 4-2-3 移動平均を用いたモデルの改良 ・・・・・104
第五章 結論 ・・・・・107
参考文献 ・・・・・109
謝辞 ・・・・・112
1
第一章 序論
1-1 研究目的
東京の都市河川では,1960年代から高度経済成長期による急激な人口集中と急速な 工業化に伴い,水質汚濁が深刻化していた.そこで,政府により工業廃水の規制が行 われ,下水道が普及するにつれて水質は大幅に改善され,1990年代には多くの河川で 環境基準を満たすまでになった(図1-1).一方で,河川の感潮域では依然として,
悪臭発生やスカム発生などの問題を抱えており,近隣住民の生活環境を悪化させてい る.
スカムとは,河床に堆積した有機汚泥が,嫌気分解を経て,発生ガスにより浮上し たものと考えられている.スカム発生には,高負荷汚濁排水の流入により有機物の酸 素消費がおこり,DOが低下する(菅原,1995)ことが原因と指摘されている.また,
高塩分時に生成されるガスは溶解性が高く,塩分とスカム量に負の相関があることが 推測されている(三浦,2017).生成されたスカム厚は水温20℃から 37℃にかけて,
温度の上昇とともに大きくなる(本多,1962).このようにスカム発生を促進する様々 な要因は報告されているが,発生に対する各要因の相互作用を考慮した研究は少ない.
さらに嫌気性ガスの成分は主にメタンガス,硫化水素,二酸化炭素などである(堀 口,2017)ことが示されているが,においは数多くの物質の複合の結果として人間の 鼻で感じられるものであり,嗅覚の観点から研究した例はない.
本研究対象地である石神井川下流でも,スカムや悪臭といった問題が深刻化してい る.上記のようにスカムに関する研究は室内実験や問題発生個所での観測によって行 われており,広域的な現地観測に基づきスカム・悪臭発生までの一連のメカニズムを 合理的に解明することが重要である.また,都市感潮域という様々な要素や現象が複 雑に絡み合う環境下で,各水質項目のスカム発生に対する寄与度を定量的に解明する ことが必要である.さらに,スカム発生時にかかわらず慢性的に発生する悪臭に関し ても,その実態は不透明のままである.
そこで本研究では,石神井川・隅田川感潮区間において臭気サンプリングと水質・
スカムの連続観測を行い,臭気分布や水質変動などのスカム発生環境の特徴を調べ,
これらの関連解析によって発生リスク因子を定量的に明らかにすることを目的とした.
2
1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 0
10 20 30 40 50
SS (mg/L) 50mg/L以下
1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 5
6 7 8 9
年
pH
6.5以上 8.5以下 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 0
2 4 6 8 10
DO (mg/L)
5mg/L以上
1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015 0
10 20 30 40
BOD (mg/L)
5mg/L以下
図1-1 石神井川(豊石橋)における長期水質変化
3
1-2 既往の研究
これまで,スカムや嫌気性ガスに関する研究は比較的多く行われている.
スカム発生に関して,山崎ら(1991)は神田川等における現地調査に基づき,出水 後の有機汚泥の堆積→嫌気性ガスの発生→スカム浮上→悪臭発生,という過程を現象 論的に考察している(図1-2).
DOの変動に関して,二瓶ら(2009)はDO低下によって魚大量死が発生している河 川感潮域(荒川・隅田川)で長期水質連続観測を行った.その結果,貧酸素化した海 水遡上と合流式下水管からの雨天時越流水流入による有機物分解に伴う酸素消費,と いう2点がDO低下の主要因であることが示唆された.その後奥山ら(2018)は,感 潮域にてスカム動態監視調査と底層の水質モニタリング調査を行い,DOが5 mg/L以 上でスカムの発生が抑制されると報告している.
嫌気分解に関して,汽水域における還元状態下では二大嫌気的生物代謝である硫酸 還元とメタン発酵が起こる.硫酸還元はEhが-100~-150mVのときに活発で,硫酸還 元菌によって硫化水素を生成する.メタン発酵は Eh が-250~-300mV の際に活発で,
メタン生成菌によってメタンを生成する(Cappenberg, 1974).硫化水素はメタンに比 べ溶解性が非常に高い(20℃において80倍).
塩分と嫌気性ガスの関係については以下の研究がおこなわれている.
牛久保(1993)は海水の割合が硫酸還元とメタン発酵の相互作用にどのような影響 を与えるかを室内実験にて実施した.分析の結果,硫酸イオンが豊富に含まれる海水 の割合を増加させると硫酸還元が活発となり硫化水素が多く発生し,一方のメタン生 成が抑制された.これは硫酸還元により,有機酸などが利用されるため,メタン生成 反応の基質となる酢酸や水素などが競合しメタン生成反応が阻害されるためと考察し ている.
三浦(2017)は合流式下水管で採取した有機汚泥からの嫌気性ガス発生とスカムの
浮上を模擬した基礎実験を行った.塩分とガス生成速度の変化を調べた結果,塩分の 増加に伴いガス生成率は急激に減少し,25‰を超えるとほぼゼロになった.また,嫌 気性ガス成分の変化を調べると,塩分の増加に伴いメタンの割合は減少し硫化水素の 割合が増加した.このことから,高塩分時には気泡化しやすいメタンの生成が抑制さ れるため,浮泥層が十分発達せず,スカムが発生しにくい可能性を示唆している.
水温とスカムの関係に関して,三浦(2017)は上記の基礎実験から,ガス生成速度
は20 °Cと30 °Cで4倍以上の開きがあり,10 °C以下でガスはほとんど発生しないこ
とを示している.また,本多(1962)は屎尿を用いたスカム再現実験を行い,20℃か ら37℃でスカムが発生した.また,スカム生成速度及びスカム厚は温度上昇とともに 上昇し,37℃で最大となった.
4
臭気分析に関して,堀口ら(1991)は東京湾付近の運河で発生する悪臭物質の内容 を検討するために,現地の底泥を採取した.発生ガスの 50%はメタン,49%は二酸化 炭素を主体とするガス体で悪臭物質は 1%未満であった.悪臭物質のうち硫化水素の みが人の感知限界0.0005 ppmを超えていた.また,水深の低下によって水圧が減少し,
ガス発生量が増大することを示した.佐々木ら(2012)は伏越し施設にて発生するス カムの実態調査を行った.人孔内の臭気調査を実施したところ,臭気指数は東京都規 制基準値を超過したが,悪臭成分のメチルメルカプタン,硫化水素,硫化メチル,二 酸化メチル,アンモニアに関しては低濃度により不検出となった.
以上のようにスカムや嫌気性ガスの発生メカニズムに関しては実験室を中心に多 く研究が行われ,発生に寄与する要因が解明されている.しかし,要因どうしが相互 に関与し合う実河川にて,これらのメカニズムを合理的に説明した研究は少ない.ま た,臭気の研究に関しても悪臭成分濃度が論じられているが,ヒトの嗅覚では,それ ぞれのにおい成分によって閾値が異なっているため,嗅覚の視点から臭気特徴を明ら かにすることが重要であると考えられる.そこで本研究では,石神井川を対象にスカ ム・水質のモニタリング調査による関連解析と底泥・河川水・空気の臭気構成及び分 布の把握に着手した.
図1-2 スカム発生メカニズムの概略図
5
1-3 本論文の構成
本研究では石神井川・隅田川合流点において,水質とスカムのモニタリング調査を 行い,スカムの発生原因を調べた.また,対象地近辺に発生する悪臭について,嗅覚 の観点から性質を分析し,考察した.本研究の構成は以下の通りである.
第一章「序論」は本研究の目的と既往の研究について述べた.
第二章「研究方法」は水質モニタリングの設置場所や水質データ解析方法を述べた.
また,におい識別装置を用いた臭気分析・解析方法を示している.
第三章「スカム発生環境の特徴」では臭気特徴や臭気分布を水質や底質と比較した.
また,3地点の水質変動特性を考察し,各水質項目とスカムの2変量解析を行った.
第四章「スカム発生確率に関する解析」では,スカムの要因となりうる7つの因子 を用いて統計分析を行い,リスク因子の検討を行った.
第五章「結論」では本研究で得られた結果のまとめと今後の課題を述べた.
6
第二章 研究方法
2-1 石神井川の概要
石神井川は,東京都小金市内にある都市小金井公園付近にその源を発し,その後西 東京・練馬区・板橋区・北区を流れ,北区堀船で隅田川に合流する(図2-1-1).
荒川水系の一級河川である石神井川は総延長25.2km,流域面積61.6km²であり,都内 の中小河川としては比較的大きな規模の河川である.流域は下流部の沖積低地帯を除 き,武蔵野台地と呼ばれる洪積層上に形成されており,流域の高低差は85m,平均地 形勾配は約 1/340 である.下流では洪水対策のために約 7m もの深いコンクリート護 岸で覆われており,川底は平らになっている.
流域内の土地利用は,平成28年時点で,建物用地が 83.6%と最も多く,森林 2.2%,
道路2.2%,鉄道1.8%,農用地1.3%,河川及び湖沼1.2%,ゴルフ場0.8%,その他6.8%
となっている(図2-1-2).建物用地に関しては昭和初期に 19.2%であったのに 対して,市街化が進み,平成28年には 8割を超える範囲にまで拡大した.そして流域 内の人口は昭和30年から40年にかけて人口が2倍に増加しており,その後穏やかに 増加している.平成22年において,石神井川流域全体の人口は約104万人であり,そ のうち下流域の人口は33%になっている.
石神井川流域は太平洋側気候となっており,冬は晴天が多く乾燥し,夏は湿潤で暑 く,梅雨や台風による降水も多い.年間降水量は1976年から 2017年の平均1,500mm 程度で,全国平均の約1,700mmより少ない(図2-1-3).日最大雨量は2013年か らの5年間で平均130mmを連続的に上回っている(図2-1-4).また,近年の東 京都における平均気温は過去 100 年で 3℃上昇しており,都市独特の気候であるヒー トアイランド現象や局地的な集中豪雨も頻発している.
近年の下水道の普及などにより水質が向上してきており,環境省が設定している環 境基準の河川C型(pH:6.5以上8.5以下,BOD:5mg/L以下,SS:50mg/L以下,DO:5mg/L 以上)を満たしている.しかし,降雨による下水の流入や潮の干満などの影響により,
水質が変化しやすい河川である.
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図2-1-1 石神井川平面図
8
図2-1-2 石神井川流域土地利用図
9
1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015
0 500 1000 1500 2000 2500
年
年間降水量 (mm/年)
平均日最大雨量 130mm
1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 2015
0 50 100 150 200 250 300
年
日最大雨量 (mm/日)
平均年間降水量 1535mm
図2-1-3 練馬観測所の年間降水量
図2-1-4 練馬観測所の日最大雨量
10
2-2 観測地点
石神井川・隅田川合流点の水質空間時系列変化を長期的に把握するために,水質モ ニタリングを実施した.調査地点は石神井川河口から0.468 km上流の飛鳥緑地(Sh-M), 隅田川河口から18.1 km上流の新豊橋(Su-U),14.7 km上流の小台橋(Su-D)の3地点 である(図2-2-1).測定項目は水位,水温,塩分,DO,濁度,クロロフィルで ある.観測は3地点で2017年6月25日より開始し,継続的にモニタリングしている.
また,石神井川に発生するスカムの動態を監視するために,石神井川河口から0.928 km 上流の鑓溝橋(Sh-U)に定点カメラを設置している.本研究では,スカム発生時の 水質環境を把握するために,このスカム動態監視データを利用する.
さらに,スカム自体の臭気構成を把握するため,Sh-Uの表層に浮かんでいたスカム を採取した.また,空気・河川水・底泥の臭気構成とその臭気分布を把握するために,
これらのサンプルを採取した.サンプリング地点はモニタリング機器を設置している 3 地点と,スカム発生が顕著であるSh-U,上流の下水吐き出し口近くのSh-K,石神井 川と隅田川の合流点付近のSh-D,隅田川の海水流入地点である Su-Eを加えた 7 地点 である.
地形的特徴として,東京都の2017年横断測量データから最低河床高を抜き出し石神 井川感潮域において,縦断地形図を作成した(図2-2-2).また隅田川も東京都の 2009 年横断測量データを利用して同様に縦断図を作成した. この図から,石神井川
の Sh-D(-4.57m)と隅田川上流の Su-U(-4.56m)は隅田川下流の Su-D(-2.77m)に比べて
2mほど低いことが分かる.
11
図2-2-1 観測地点
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20
-10 -5 0 5 10
河口からの距離(km)
標高(A.Pm)
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4
-10 -5 0 5 10
合流点からの距離(km)
標高(A.P.m)
H.W.L L.W.L 隅田川
石神井川
Su-D Su-U
Sh-D Sh-M Sh-U
Sh-K
Su-E
図2-2-2 石神井川・隅田川の縦断図
12
2-3 長期モニタリング 2-3-1 水質の観測方法
観測は石神井川の飛鳥緑地(Sh-M),隅田川の新豊橋(Su-U),小台橋(Su-D)の三地点 である(図2-2-1,図2-2-2).
各観測地点に圧力式水位計(U-20 water Level Logger,HOBO),ワイパー式メモリー 水温塩分計(INFINITY-CTW,JFE),ワイパー式メモリーDO計(RINKO-W,JFE),ワイ パー式メモリークロロフィル濁度計(INFINITY-CLW,JFE)を設置した.水位計のデー タ処理については2-4-1で示す.
河川はしごの両脇に塩化ビニル管を2本取り付け,上流側のパイプの中に塩分計と DO計,下流側のパイプの中に水位計と濁度計をつり下げた.測定位置は河床から約1 mの高さである(図2-3-1,図2-3-2,図2-3-3,図2-3-4,図2-
3-5,図2-3-6).各水質計の設定は Intervalが 0.5秒,Sampleが 10個,Burst が10分であり,10 分ごとにデータを平均処理した.計測期間は2017年 6月25 日か ら2019年10月31日までの約3年間である.さらに得られた濁度データ (FTU)はSS (mg/l)に変換した.また,計測機器のバッテリー交換とデータの抜き出しのために,2 ヶ月に1度のペースでメンテナンスを行っている.
13
図2-3-1 測定器の設置模式図(Sh-M)
図2-3-2 各水質計の位置関係(Sh-M) LWL
0.26 HWL 2.07
0.5m
0.9m5.87m 1.7m
水位計
濁度計 塩分計
DO計
-2.31 -2.16
-1.56 -2.01
5m
-3.5 -3 -2.5 -2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4
標高 (A.P.m)
14
図2-3-3 測定器の設置模式図(Su-U)
図2-3-4 各水質計の位置関係(Su-U)
0.5m
4.69m 3.49m
HWL 2.07
LWL 0.26
0.7m
水位計
濁度計 塩分計
DO計 -1.51
-1.21 -0.96
-1.36
4.19m
0.9m
-2.5 -2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5
標高 (A.P.m)
15
図2-3-5 測定器の設置模式図(Su-D)
図2-3-6 各水質の位置関係(Su-D)
0.5m
5.06m 3.86m
HWL 2.07
LWL 0.26
0.7m
水位計
濁度計 塩分計
DO-1.81計 -1.51
-1.01 -1.46
4.56m
-3 -2.5 -2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5
標高 (A.P.m) 0.9m
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2-3-2 スカムの観測方法
定点カメラの設置場所は石神井川の鑓溝橋(Sh-U)で,河川の左岸側にカメラが取り 付けてある(図2-2-1,図2-2-2).本研究では,2017年4月から10月,2018 年4月から10 月までを北区の定点カメラデータ,2019年5月から10 月までを首都 大の定点カメラデータを使用している.観測時間は5時から17時までであり,北区 のデータも首都大のデータも同様の方法で取り扱った.
17
2―4 データ解析
2-4-1 水質データの変換及び補正方法
観測で得られたデータには,エラー値を含んだものや観測項目で補正が必要なもの が含まれるため以下に記す.
(1) 水位計
各観測地点で計測した圧力データを,同水位計で計測した大気圧のデータを用いて センサー深度へと補正した.東京都によって測量された護岸標高 (A.P.m)とセンサー ロープの長さからセンサー位置の標高 (A.P.m)を算出し,センサー位置にセンサー深 度 H を加えることによって水位 (A.P.m)に変換できる.表2-1にそれぞれの測量値 をまとめる.
表2-1 水位の算出にあたっての測量値
(2)水質計
Interval0.5秒,Sample10個,Burst10分として設定し,その後データを 10分ごとに 平均処理を行った.測定期間中に各地点で機器不良による異常データや欠測がみられ たため,データ使用期間をまとめたものを表2-2に示す.Sh-M の塩分計はワイパ ー不良により,2017年6月25日から8月28日まで異常データを含んでいたため,Sh-U の塩分データで補間した.詳細は2-4-1(3)で述べる.
護岸の標高 (A.P.m) センサー位置 (A.P.m) 水位 (A.P.m)
Sh-M 2.61 -1.56 センサー位置+H
Su-U 2.29 -0.96 センサー位置+H
Su-D 2.29 -1.01 センサー位置+H
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表2―2 モニタリングデータ使用期間
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 水位計
塩分計 DO計 濁度計 水位計 塩分計 DO計 濁度計 水位計 塩分計 DO計 濁度計
地点 項目 2017年 (月)
Sh-M
Su-U
Su-D
測定 欠測 補間
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 水位計
塩分計 DO計 濁度計 水位計 塩分計 DO計 濁度計 水位計 塩分計 DO計 濁度計
地点 項目 2018年 (月)
Sh-M
Su-U
Su-D
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 水位計
塩分計 DO計 濁度計 水位計 塩分計 DO計 濁度計 水位計 塩分計 DO計 濁度計 Su-D
地点 項目 2019年 (月)
Sh-M
Su-U
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(3)水質の地点間比較
東京都北区では 2017年度,Sh-Mから500m上流のSh-Uで水質モニタリング調査を 行った.Sh-MとSh-Uの水質比較を図2-4-1,図2-4-2で示す.水温や塩分 は Sh-M と Sh-U で変動が非常に似ており,決定係数もそれぞれ 0.96,0.86 と高い.
DOは長期的な変動を見ると類似した傾向を示しているが,決定係数は0.33 と変動に ばらつきがあると考えられる.濁度はSh-MとSh-Uで値に大きく差があり,決定係数 は求まらなかった.しかし, DO のSh-Uに関しては,最低値が2mg/L付近と頭打ち になっており,正しく測定されていない.濁度の Sh-U に関しても降雨による濁度の 反応が正しく測定されていなかったことから,エラー値を多く含んでいることが考え られる.
したがって,Sh-M の測定データはエラー値が少なく解析において信頼度の高いデ ータであること,Sh-MとSh-Uの水質の傾向はおおむね類似していることから,Sh-M の観測データは Sh-U のスカム監視データとの比較検討に用いることができると考え られる.さらに塩分に関しては2地点で非常に高い相関を示していたため,Sh-Uの塩 分をSh-Mの異常値期間の補間として使う.
20
図2-4-1 Sh-M とSh-Uの水質時系列 (2017) 0
2 4 6 8 10
DO (mg/L)
Sh-MSh-U
0 100 200 300
0 200 400 600 800 1000
濁度 (FTU)-Sh-M
Sh-MSh-U 濁度 (NTU)-Sh-U 15
20 25 30
水温 (℃)
Sh-MSh-U
0 5 10 15 20
塩分
Sh-MSh-U 補間値として利用
6/29 7/9 7/19 7/9 8/8 8/18 8/28 9/7 9/17 9/27 10/7 10/17 10/27
21
0 10 20 30
0 10 20 30
Sh-M
Sh-U
0 200 400 600 800 1000
0 200 400 600 800 1000
Sh-M
Sh-U
0 10 20 30
0 10 20 30
Sh-M
Sh-U
0 2 4 6 8 10
0 2 4 6 8 10
Sh-M
Sh-U
水温 塩分
DO 濁度
R² = 0.96
R² = 0.86
R² = 0.33
図2-4-2 Sh-MとSh-Uの水質比較
22
(4)濁度から SSへの変換
本研究で使用された濁度計は,赤外後方散乱方式で測定された浮遊物量の相対値 であるため,現地河川水中の浮遊土砂(SS)濃度に変換する必要がある.そこで本研 究対象地で2016年11月に1回と2017年7月に2回行われた13時間連続観測の懸濁 物質と濁度の値を使用したところ,図2-4-3の相関図が得られた.また,SS濃度 と濁度計の回帰式は以下の一次式になった(式2-1).
(式2-1)
ここで,
y:SS濃度 (mg/L) x:濁度 (FTU)
図2-4-3 SSと濁度の相関 y=0.7571x
0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 0
10 20 30 40 50 60 70 80
SS(mg/L)
濁度(FTU) y=0.7571x R2=0.8458
23
(5)SSデータの処理
得られた SS データには,複数の異常値が含まれていた.これは濁度計がセンサー 付近に存在する漂流物を高濁度水として誤認してしまうことが原因である.そこで,
機械的に異常値を除去するプログラムを作成し,一括で異常値を除去した.またプロ グラムによって除去できなかった箇所は手作業によって除去した.図2-4-4に補 正前と補正後の例を示す.
以下は異常値除去に用いたプログラムの条件である.
(1) i 行のデータにおいて,i-1 行から i 行への増分が 10mg/L 以上であり,かつ i 行から i+1 行への増分が-10 以上である場合,i 行のデータを消去し,i-1 から i+1の間を線形補間する.
(2) i行のデータにおいて,i-1行から i行への増分が10mg/L以上であり,かつi+1 行から i+2行への増分が-10ppm以上である場合,i行と i+1行のデータを消去 し,i-1からi+2の間を線形補間する.
(3) i行のデータにおいて,i-1行から i行への増分が10mg/L以上であり,かつi+2 行からi+3行への増分が-10ppm以上である場合,i行,i+1行,i+2行のデータ を消去し,i-1からi+3 の間を線形補間する.
図2-4-4 補正前と補正後の濁度データ比較
239 239.5 240 240.5 241
0 10 20 30 40 50 60 70
SS(mg/L)
補正前
プログラム補正後 手作業補正後
8/27 0:00 12:00 8/28 0:00 12:00 8/29 0:00
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2-4-2 スカム被覆率の算出方法
スカム被覆率の計算をするため,水面の川幅20 m,奥行25 mの範囲に,横2 m,
縦2.5 m間隔の格子を作成した(図2-4-5).格子内のスカム被覆率を判別して平均
した結果をスカム被覆率とした.判別格子内のスカム被覆率は参考画像を基準にして 4人で求めた(図2-4-6).5種類の同じ画像を解析して個人差の検討を行った結果,
4人の差は平均から±3 %程度であり個人差はないものとして分析を進めた(図2-4
-7,図2-4-8).
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図2-4-5 判別格子
図2-4-6 スカム被覆率判別基準
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図2-4-7 スカム被覆率の個人差
図2-4-8 スカム画像番号
1 2 3 4 5
0 20 40 60 80 100
スカム画像番号
スカム被覆率(%) 測定者A
測定者B 測定者C 測定者D
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2-4―3 ロジスティック回帰分析
(1) 理論
ロジスティック回帰分析とは、複数の変数から分析を行う「多変量解析」の一種で あり、質的確率を予測する手法である.関係式は、現象の要因である「説明変数(x1、
x2、x3…)」と、現象を数値化した「目的変数(y)」で構成されている。目的変数が量 的変数である重回帰分析では,説明変数 x が目的変数 y の値を変化させるため,「値」
の予測が可能である.一方,目的変数が2値変数であるロジスティック回帰分析で考 えるのは,「特定の現象の有無」であり,y が 1 になる確率を判別する.また,重回帰 分析は残差が正規分布となっていること,目的変数と説明変数との間に線形関係が成 り立っていることが仮定されているが,ロジスティック回帰分析には独立変数の尺度,
分布型に対して厳密な仮定をおいていない.
統計分析をする際,変数間に相関があるがために要因とアウトカムの間に見かけ上 の関係があらわれることがある.この現象を交絡バイアスといい,発生させる要因を 交絡因子という.ロジスティック回帰分析では,交絡因子をモデルに取り込むことに よって,その変数の影響を調整したうえで,要因とアウトカムの関連を調べることが できる.
ある事象が発生する確率を P(0<P<1)としたとき,事象が発生しない確率は 1-P で表 せる.発生する確率 P と発生しない確率 1-P の比をオッズといい,確率と同様に事象 が起こる確実性を表している.このオッズの対数をとり,線形の説明変数の結合式で 表せるとしたものがロジスティック回帰モデルである(式 2-2).
ロジスティック回帰モデルは,医学の疫学などの分野で発展し,現在では問診など の定性データと身体測定の定量データを統合して病気のリスクを判定する健康診断な どに応用されている(丹後ら,1996). 本研究では,大規模データを扱う疫学の発想 を応用して,スカムの発生確率を,病気の発生確率に相当するものと考えた.同様に,
水質データを健康診断の問診票に相当するものとして,ロジスティック回帰分析を行 った.
(式 2-2)
ここで,P: 確率 x : 説明変数 β: 偏回帰係数
logଵି(௫)(௫) = ߚ+ ߚଵݔଵ+ ߚଶݔଶ ・・・
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(2) オッズ比
オッズ比とは偏回帰係数を指数変換してオッズの比にした値である.これは他の変 数が一定という条件で各変数が 1 増加したとき,オッズが相対的に何倍になるかを表 す値を意味し,目的変数への影響度を示す指標である.
オッズ比 > 1 変数が増えると,発生リスクが上昇する オッズ比 = 1 変数は発生リスクに影響がない
オッズ比 < 1 変数が減ると,発生リスクが上昇する
(3) 変数の標準化
説明変数のデータ単位が全て同じ場合は,オッズ比は寄与順位に適用できる.しか し,データ単位が異なる場合,オッズ比の単純比較はできない.そこで,本研究では 各水質パラメータの単位が異なるため,全ての変数を基準化したのち解析を行った(式 2-3).
ܻ =ܺ − ߤ ߪ
(式 2-3)
ここで,Y : 標準化した変数 X : 元の変数 μ: X の平均 σ: X の標準偏差
(4)パラメータの推定方法
ロジスティックモデルにデータをあてはめて,パラメータを推定する方法には,重 み付き最小2乗法と最尤法があり,本研究では現在一般的となっている後者の計算方 法を採用した.最尤法とは尤度関数(もっともらしさをあらわす関数)を最大化する 回帰係数を求める方法である.実際に本研究では,対数尤度が最大値となる回帰係数 を Excel のソルバー機能で求めている.
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2-5 臭気サンプリング
2-5-1 空気・河川水・底泥・スカムの採取方法
空気,河川水,底泥の採取日は2019年4月16日,5月23日,7月5日,8月5日,
9月6日である.サンプリング地点は,Sh-K,Sh-U,Sh-M,Sh-D,Su-U,Su-D,Su-E の7地点である.サンプリング方法は以下の通りである.
(1)空気
フレックスポンプ(DC1-NA型)ににおいが付着しづらい素材のPFAチューブとサ ンプルバックを用意する(図2-5-1).橋の上からPFAチューブを水面約10cmの 高さまで,下ろし,水面上の臭気を採取する.なお,スタート時にチューブ内に入っ ている空気を取り除く必要があるため,ポンプで吸引し始めてから30秒間はサンプル バックを装着しない.空気の臭気は変化しやすいため,サンプリング当日に分析を行 った.
(2)河川水
バケツによって,表層水を採取し,100mlのガラス瓶にて保存した(図2-5-2).
その後,5℃の冷蔵庫内で保管した.
(3)底泥
ハンドマッキン採泥器によって,底泥を採取し,密閉可能な袋に入れ保存した(図 2-5―3,図2-5-4).その後,河川水同様,5℃の冷蔵庫内で保存した.
(4)スカム
ハンドマッキン採泥器によって,水面に浮かんでいるスカムを採取した.その際,
スカムは崩れやすく,水と混ざりやすいため,スカムの層構造を保ったまま慎重に採 る必要がある.スカムサンプルは,河川水同様,100ml のガラス瓶にて保存した.そ の後,5℃の冷蔵庫内で保管した.
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図2-5-2 水サンプル
図2-5-1 空気サンプリング手法
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図2-5-3 採泥の様子
図2-5-4 泥サンプル
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2-5-2 含水比・強熱減量試験
泥サンプルの含水比と有機物量を以下のように測定した.
まず,陶器皿を 105 ℃の乾燥炉に入れ 2時間入れて乾燥させた後,デシケーターで 室温になるまで冷やし,陶器皿の質量mcを測定した.次に,陶器皿に湿潤状態の試料 を乗せ,陶器皿+湿潤試料の質量maを測定した.そして,湿潤試料を105 ℃の乾燥炉 に24 時間入れ乾燥させた後,デシケーターで室温になるまで冷やし,陶器皿+乾燥重 量mbを測定した.最後に,上記の測定結果を用いて含水比wを計算した(式2-4).
w = ݉− ݉
݉− ݉ × 100 (%)
有機物含有量は,強熱減量(Ignition Loss)によって求めた.含水比を求めるのに使 用した乾燥試料を600 ℃の電気マッフル炉に2時間入れ焼いた後,デシケーターで室 温になるまで冷やし,陶器皿+強熱試料の質量mdを測定した.強熱減量 ILは以下の 式(2-5) で求めた.
IL = ݉− ݉ௗ
݉− ݉ × 100 (%)
(式2-4)
式(2-5)
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2-6 臭気分析
2-6-1 におい識別装置
(1)におい識別装置の概要
におい識別装置(FF-2020,島津製作所社製)を利用することによって,ヒトの嗅覚 に似た検知機構を利用し,においの強さと質を複合臭として表現することができる.
ヒトの嗅覚は非常に高いが,それは約40万種も存在しているといわれるにおい化学物 質を単一成分に分離してから検知するのではなく,複合成分のまま感知するメカニズ ムになっている.ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)装置などでは,においを分 離し,成分と濃度を調べることができるが,ヒトの嗅覚の閾値は成分ごと異なってお り,マスキングやペアリングと呼ばれる現象を考慮すると,ヒトの嗅覚を再現するこ とは非常に難しい.その点におい識別装置では,カラム等で分離をせずに複合臭のま まにおいの強さと質で表現できるメリットがある.そこでにおい識別装置を使うこと は本研究にとって,悪臭構成を把握し,より嗅覚に近づけた形で定量的かつ正確に再 現できる分析方法といえる.
無臭物質
N₂, O₂, CO₂など 個々ではにおうが全 体の中では隠れる 全体のにおいを支配 している
嗅覚
全体として個々の成分とは異なる においの質になる場合がある
図2-6-1 複合臭の実体
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(2)サンプル作成
河川水サンプル,底泥サンプル,スカムサンプルはそれぞれ 5℃の冷蔵庫で保管し た.液体サンプルに関しては,そこから 5mlをサンプルバックに入れ,窒素を投入 し臭気が充満するよう1時間放置する.その後新しいサンプルバックに気体だけを移 し替え,装置に取り付けた.泥やスカムなどの個体サンプルは,サンプルバックに穴 をあけ,10g入れた後,専用テープで密閉した.窒素を入れ同様の作業をした後,装 置に取り付ける.
図2-6-2 臭気サンプル
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(3)分析フロー
「FF-2020 システム」(島津製作所社製)とは,におい識別装置本体「FF―2020」,
バック用オートサンプラー「FAS-1」,希釈混合装置「FDL-1」,アロライトボン ベスタンドによって構成されている(図2-6-3).「FF-2020システム」はソフト ウェア「Smell_P」によって測定から解析までを統合している.装置の分析フローを図 2-6-4に示した.
分析ではにおい識別装置を用いて絶対値表現解析を行った.絶対値表現解析とは任 意のサンプルを装置に付属した9つの基準ガス(スタンダードモード)やユーザーが 指定した基準ガス(ユーザーモード)と比較解析することで,類似度,臭気寄与,お よび臭気指数相当値を求めることができる解析方法である.スタンダードモードで使 用する9つの基準臭の諸元を表2-1にて示す.また,類似度,臭気寄与,臭気指数 の定義は以下の通りだ.
a) 類似度(%)
基準ガスとサンプルガスのセンサーベクトルのなす角から計算した,類似性を 示す値.
b) 臭気寄与
人の感覚による,各基準ガス(n=1~9)当たりのにおいの強さを表示したもの(式 2-6).なお,0が嗅覚の閾値,-30がにおい識別装置の閾値を示す.
(式2-6)
ここで,Mn:任意の基準臭における臭気寄与 C”n:任意の基準臭における寄与臭気濃度
c) 臭気指数相当値
悪臭防止法で定義されている臭気指数とは,人によるにおいの程度を表しており,
臭気濃度(臭気を感知しなくなるまで希釈した場合の希釈倍数)の対数を10倍した値 である(式2-7).臭気指数と臭気濃度の関係を図2-6-5で示す.
(式2-7) ここで, N:臭気指数
C:臭気濃度
ܯ= 10 log ܥ"
ܰ = 10 log ܥ
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におい識別装置によって出力される臭気指数相当値とは,9 種の基準ガスの寄与臭 気濃度を9種全て加算後,次式で臭気指数に換算したものである(式2-8).
(式2-8)
ここで, N”:臭気指数相当値
C”n:任意の基準臭における寄与臭気濃度
ܰ" = 10 log ൬ଽ ܥ"
ୀଵ ൰
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FF-2020
FAS-1 FDL-1
図2-6-3 FF-2020システム
内臓ポンプによりサンプルガスを吸引 9つの基準臭
サンプルガスや基準ガスを希釈混合
PC
捕集管 40℃ :水分の除去,サンプルガスの濃縮
220℃:におい成分を揮発させセンサに導入
10個の酸化半導体センサ
測定結果出力
FAS (オートサンプラー) アロライトボンベ
FDL-1 (希釈混合装置)
FF-2020 (におい識別装置)
図2-6-4 分析フロー
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表2-1 基準臭ガスの諸元
図2-6-5 臭気指数と臭気濃度の関係 に お い 系 基 準 ガ ス 濃 度 官 能 表 現 例
硫化水素 硫化水素 10 ppm 腐った卵のような臭い
硫黄系 二酸化ジメチル 1 ppm 腐ったキャベツ臭 アンモニア アンモニア 30 ppm し尿のような刺激臭
アミン系 トリメチルアミン 1 ppm 腐った魚のにおい、魚の生臭いにおい 有機酸系 プロピオン酸 2 ppm 刺激的な甘酸っぱいにおい
アルデヒト系 ブチルアルデヒド 1 ppm 刺激的な甘酸っぱい焦げたにおい エステル系 酢酸ブチル 1 ppm 接着剤(セメダイン)のにおい
芳香族系 トルエン 3 ppm ガソリン臭
炭化水素系 へプタン 3 ppm 弱いロウのにおい
100 101 102 103
0 5 10 15 20 25 30
臭気濃度 C
臭気指数 N
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(4) 臭気指数相当値の零点補正
におい識別装置を使用するにあたって,自動クリーニングをかけることにより,測 定時に常に装置の清浄な状態を保っている.しかし,より精度のよいデータにするた め,バックグラウンドやコンタミの影響を考慮しつつ,無臭である窒素のデータを用 いて各データの補正を行った.補正の計算プロセスは以下の通りである.
(式2-9)
(式2-10)
(式2-11)
ここで, C” : 臭気濃度(零点補正前)
C’ : 臭気濃度
N” : 臭気指数相当値(零点補正前)
N’ : 臭気指数相当値
(5)解析設定
当実験では,河川水のにおいの強度が非常に小さく,サンプル間(スカム,泥,河 川水)のにおいの強度に大きな差があった.そこで「その他測定」によって,センサ ー出力一定値を「1.4」と設定し,スタンダードモードの絶対値表現解析を行った.
また,ユーザーモードで強力な悪臭を放つスカムを基準臭とし,底泥,河川水のス カムとの臭気類似性を調べた.なお,測定する際のユーザー角度は「medium」(ベク トルのなす角6.5°をフルスケール)として解析した.
C”= 10ಿ"భబ C’= ܥ"-C"(ܰଶ)
ܰ′ = 10 ݈݃ ܥ′