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論文内 容の要 旨

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Academic year: 2021

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(1)

氏 名・(本籍)

学位の種類 学位記番号 学位授与の日付 学位授与の要件

学位論文題「†

論文審査委員

篠  崎  啓  助

(長野県)

工  学  博  士

工博甲第  9  号 昭和57年2月19日 学位規則第5条第1項該当

電子科学研究科 電子応用工学専攻 蒸着初期の貴金属薄膜の光吸収

(委員長)山田祥二

助教授 山口十六夫  教 授 水晶静夫  教 授 高崎 宏 助教授 岡本間道

論文内 容の要 旨

誘電体下地上に成長する金属薄膜は,成長初期に島状構造を取るため,その光学的振舞いは連続 的な膜とは必然的に異ったものとなる。特に光学的性質が主として自由電子の振舞いで決まるアル カリ金属や一価貴金属の場合,島微粒子内に閉じ込められた自由電子が可視又は近紫外領域の光の 一部を吸収して集団的に共鳴振動し,それが異常な着色現象として観測されるので,古くから注目

されてきた。この異常光吸収を説明する為の理論が種々提案され,定性的のみならず定量的にも実 測値の解釈ができるように精密化されてきた。本研究はこれら一連の研究の延長上にあるもので,

成長の極めて初期の過程における銀及び金膜の光吸収スペクトルを測定し,これから島微粒子内部 の物性がそのサイズによって変化する効果を求めることと,蒸着初期の膜の構造についての情報を 得るという二つの観点から進めてある。

島状薄膜の光学的性質を計算するモデルは次のようなものである。(1)島粒子を回転楕円体と見な す。(2)島粒子の二次元的な分散系にもとづく粒子間相互作用や,下地表面による鏡像効果を,点双_

梅子近似で理論計算にとり入れる。(3)微粒子固有の物性を誘電率亡に集約する。

一般に誘電率eほ自由電子による寄与efreeと束縛電子による寄与eboundに分解される。従 ってSからDrudeの式で表わされるefree、を差し引いた残りがeboundになる。efreeのサイ ズ効果の理論は二通りあり,一つは自由電子の平均自由行程が粒子半径程度に短縮されるとする古 典的なもので,他はポテンシャル井戸の考えに基づく量子論的なものである。eboundはバンド間 遷移吸収によるもので,そのスペクトルはバンド構造を反映するが,そのサイズ効果については現 在のところ理論研究がない。そこで本研究では次式のようにバルク値(h仙)が変るものと仮定し た。

− 61−

(2)

Ebound(hw)=kebound(hw−hw。)

ここにkは大きさを,h伽。は光のェネルギ一に対する移動量を与えるパラメータである。

微粒子物性のサイズ依存性を強調して観測するためには粒子は小さい程よいから,平均膜厚にし て単原子層程度の蒸着初期膜の光吸収スペクトルを多重減衰全反射法によって測定した。測定した 範囲は光のエネルギーにして1.6eV〜6.OeV,光の波長にして鮒077∽〜200〃ナ〝である。測定した 吸収スペクトルから前記のモデルに基づく光吸収の理論式を用いたカーブフィット法で付着量,粒 子形状,粒子サイズなどの膜の構造に関する情報と,粒子内部の誘電率に関する情報を抽出した。

光吸収をモデルから計算する手続きには二通りあり,微粒子分散系である島状構造膜を光学的に 等価な誘電率を持った均質媒質で置き換えた等価均質膜法と,微粒子からの散乱波を積分する散乱 波積分法が提案されている。本研究では散乱波積分法が実験結果をよりよく説明できることを確認

した。

得られた膜構造に対する情報のうち,付着量は水晶膜厚計で監視した値とよい対応を示し,また 古典的サイズ効果を適用して決めた粒子サイズは電子顕微鏡観察で得られたものとよい対応を示し た。この他の粒子形状パラメータは電子顕微鏡写真からは評価しがたいが,島粒子の形状が球より 多少偏平で下地基板面にしっかり接した形を仮定すれば解釈できる合理的な値であった。

本研究における最大の成果はeboundのサイズ依存性を検出でき,ノミンド構造の変化に帰する ことができたことである。バルク値からの移動量h叫は,直径30A程度の銀粒子で0.55eVに もなり,粒子が小さい程大きくなる傾向にあった。係数kの値は銀の場合約1で金では0.5〜0.8で あった。b叫の値が大きいということは,光学的ノミソドギャップがノミルクの場合より広がっている ことを意味している。貴金属の吸収端近傍の光学遷移はd−バンドからフェルミ準位への遷移であ り,銀はL点近傍の遷移が3.8eVから始まって,それより少し高いエネルギーでⅩ点近傍の遷移 が始まる。金は逆にⅩ点近傍の遷移が2.OeVから始まり,それより少し高いエネルギーでL点近 傍の遷移が始まることが知られている。一方エネルギーバンド構造の理論計算によるとd−ノミンド の位置と幅が,結晶格子の場に影響され易いことが知られている。観測している島粒子は直径数 10A程度で,表面原子の全原子に占める割合は数割にもなっており,このために結晶格子場がノミル

\ク値からずれて,d−バンドが低エネルギー側に移動したと推定される。銀と金でkの値に違いが 出た点については,測定しているエネルギー範囲内でのバンド端の位置が違うこともあり,またバ ンド構造のサイズ依存性が異方的である可能性もあるので,この点については更に研究する必要が ある。ただd−バンドの低エネルギー側への移動は,微粒子のXPS測定でも確認されており,・本 研究の光学的測定はⅩPSとは相補的な情報を提供するから,本研究の手法が固体物性や表面物理 の分野に貢献できよう。また光学的な吸収測定によって島構造のパラメータが決定できたことは,

電子顕微鏡が使えない条件下での薄膜成長初期過程の研究に有力な手法が得られたことを意味す る。

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