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出土材の走査電顕
著者 西田 史朗
雑誌名 古文化財教育研究報告
巻 4
ページ 19‑23
発行年 1975‑03‑31
URL http://hdl.handle.net/10105/356
出 土 材 の 走査電顕
西 田 史 朗
(奈良教育大学 地学教室)
は じ め に
古代遺跡から出土した木簡の断片上の墨跡を、走査電子顕微鏡下で観察するた捌こ、試料を調製 した。その際、当然のことながら試料の前処理によって、鏡下での低倍像にかなりの差異が現われ た。すなわち、前処理のちがいによる試料の収縮程度の差異のほかに、仮道管などでは処理によっ てはかなり不鮮明になる。本報は木簡の如き有機材の電顕観察のための基礎資料として報告する。
本研究の機会を与えられた本学・市川米大数授、試料を御提供下さった奈良国立文化財研究所平 城宮跡発掘調査部・狩野 久史料調査室長、同考古第一調査室・沢田正昭技官に深謝いたします。
試料は奈良国立文化財研究所平城宮跡発掘調査部によって、平城宮跡から発掘された次の4点の
木簡断片である(第1図) 0
第1図 木簡試料
黒点部分は墨跡を示す。数字の単位は孤恥
6AAC−VS15
6AAC−VS15−LN 6AAC−VS15−LC
6AAC−VS15−SC
6AAC−VS15−SN
6AAC−VS15、大(L)・小(S)。
出土地 平城京造酒司跡。
時 代 725年(神亀)頃。
6AAI−CJ60、大(L)・小(S)。
出土地 平城京式部省跡。
時 代 765年(宝字)頃。
いずれも平城宮内で使用された公用文書を書いたものである。
6AAC−VS15試料は放射組織が生長方向に直交し、かつ長く連続しないことから接線縦断 面を、6AAI−CJ60試料は同じく放射組織が生長方向に直交し、長く連なることから放射 縦断面を表わすものと考える。
両試料とも、光学顕微鏡下では仮道管・放射組織は明らかに認められるが、樹脂細胞がはっきり しない。そのためヒノキに近いものと考えられるが、あるいはコウヤマキかもしれない。有縁膜孔 は円形ないし隋円形で、1列ないし2列に並び、1列の場合は単列、2列の場合は対生する。
観 葉 方 法
試料の初期状態一試料とした木簡の断片は水に浸した状態で入手した。
乾燥の方法一自然乾燥法:ガラスシャーレの中に漏机を敷き、その上に試料の断片を置き%時 間放置した。途中別時間毎に漏紙を乾燥したものと取換え、自然乾煉とした。
臨界点乾燥法:試料をアルコールシリーズ(加悌、409ら、60界、即悌、98珍アルコール中で各
12時間)で脱水後、酢酸イソアルミで置換し、C(ちの臨界条件下で乾燥させた。この乾燥には日立
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臨界点乾燥装置HCP−1を用いた。
試料の調整一乾燥させた試料は、第1図の如き位置を切り出し、試料台に固定し、10 ̄与orr
の下でカーボンと金の蒸着を行なった。この真空蒸着には、日立真空蒸着装置HUS−4GBを使 用した。
試料記号中のNは自然乾燥を、Cは臨界点乾煉処理によることを意味する。
観察の方法一走査電子級数鏡を使用し、加速電圧20kV、フィラメント電流125mAで観察し た。使用機桂は目立走査電子顕微鏡HSM−2B である。
果
自然乾燥による木簡試料では、かなりの収縮を示す。とくに生長方向での収縮が顕著にみられ、
多くの場合生長方向に直交した割目を生じる。放射組織は判別できるが、内部構造はほとんど破壊 されており、詳細な観察は不可能である。また、仮道管もかなり破壊されているが認められる。
臨界点乾燥による試料では、ほとんど収縮は認められず、乾燥にともなうと思われる組織の破壊 も観察できない。放射組織の内部構造は判然としないが、有縁陵孔はかなりよく保存されている。
む す び
木簡の如き水分を多量に含んだ有機質試料の走査電子顕敵鏡観察では、前処理のちがいにより、
得られる情報に大きな差異があらわれる。また、材の樹種鑑定などにはあまり役に立たないと言っ てよく、光学顕微鏡による透過像が有効である。しかし、光学顕徴鋲の限界を越えた高倍域では、
走査電子顕微鏡による情報が中心となろう。また、紙・金属などの観察では有力な観察手段となろ
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