長崎県福江市方言の研究
家
中
︵
城
下
町
︶
序 福江は、長崎から酉へ百キロの所に位置する五島列島の 中 心 地 で あ る 。 ζ れまで、方言研究の本格的対象となって いなかったが、著者が福江出身という乙とを生かして、い かなる方言が存在するのか明らかにしていきたい。 乙の論文では、できるだけ言語生活の実態を映し出すべ く、文表現法を中心にしている。しかしながら、実態を理 解するためには、その特徴的な音韻や動調などの活用を知 る乙とが不可決であるから、文表現法に登場するこれらの 説明を始めに総括しておく乙とにする。 ※調査結果は、老年層︵八十四 l 五十六歳︶、若年層 ︵ 二 十 二t
十五歳︶に分けてまとめている。 第 一 章 音 韻 福江方言にみられる特殊な音韻変化を取りあげる。 ① \E
﹀\ゴ\・\宝、\z s
x
・ムミ\己、\円ロ\ の音が語中語尾で促音A
と な る 。方言
三十三回生池末寿美子
月 \2
ぞ ・ 町 トg m
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\ ・ 着 る \E ρ
\・取りに行く \Z
P
2
5
\ ② \E
X
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\ 何 回 \ ・ \ ど \ −L
F
\・弘三\E
\ ・ \ ざ \ ・ \ が て ・ 益 三 台 ↑ \ が 、 語 中 諮 問 尾 で 援 音 旬 に 変 化 す る 。 右 ・ 水 ・ 耳 詮2
\ ・ 泳 ぐ \o
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Z
\・味\を\ 遊ぶ\訟。事\・読む\﹄ Oげ で
③ \ 金 、 \ 言 \ ・ \ の o\←\ぜ\ 裸 足 \t
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3
仲 \ ・ 息 子 \g
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拝 。 \ あそ乙\J
己g
\ め し ま 尚、島は\z
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\ で あ る が 、 女 島 と 熟 す る と ト ロ 叩 ﹄ 宮 5 \ 四 君 ヘ 悶 仲 W から、乙の法則は語中語尾に限られる乙とがわかる。 ④ ト ヨ \ ←h
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弓 \ 生後れ\U
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0
\ 梅 \z
z
g
\ う ま い \E
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\ J 与の間に%が入る。全島で慣用的に使われていパ
バ
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る / ⑤連母音ががとなる例がみられる。 /. -19 しかし、若年層において聞かれる乙とは稀で、促音・擬音化が全体に強く残っ ているのに比べて、今や消えつつあるようだ。 毎 日 必 己 主
EP
\帰る\ど但H
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\ 灰 ・ 蝿 \ 立 主 \ 具 合 \ 尚 三 P\ 第二章 動詞 動詞・形容詞・形容動詞の活用 表 カ変サ変 下二段 上一段 五 段 来 為 受 出 起 見 死 蹴 漕 置 書 語 ~1 き る る る る る る ぬ る ぐ く く /JU一
。 自 ( 関 ー ω ロ ーロ ω 同d ~ 0 阿国 語 語後 ~ I ~ I M・(1) 0 語、句』,, 曲 例陥午ヰキ
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幹 ~· ~ 否定 。 。 。 (1) 時 同 E白"'白白 E白 ン'
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ロ ~· h・回 意 ヤ ロ.
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ロ ・−− 同 同 。 。 。 。 。 。 。 志 用 活 言司 動 活 用 の 種 類 は 、 五段・上一段・下二段・サ変・ヵ変の五 種 類 で あ る 。活用表から特徴をひろってみると ④ 文 語 の下一段・上二段所変ラ・変ナ・属語が五段に統 合 している。 @ 下 二段活用が存在する。 。定形と命仮完全には形令統合してしまっている。 @一段活用は、五上と統どんにほ用活段合しかかってい る が 、 連 用 形 が 不 完 全 で あ る 。 形 容 詞 ・ 形 容 動 詞 形 容 詞 ・ 形 容 動 調 の 活 用 シ 静 ウ ヌ 良 基 カ カ レ ツ 本 ツ ヒ 形 カ カ カ カ カ 後 ω ω ロ ロ 】 . 語 語 続r
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I ~寸~占のH 心~ 。~ 仮 関" "' i凶 ノf 。 。同 町 円 。 。"'同同 定"
-20ー 福江方言では、形容調・形容動詞ともに終止形が﹁カ語 尾﹂である。ニっとも、ほとんど同じ活用のようだが、た だ一ケ所形容動詞の連用形において異なる。乙乙ではんし で終わるという古い形が自につくが、現在では老年層にの一 み存在するだけである。従って、現在の言語生活では、形 容調と形容動詞はほとんど融合してしまっているといえる。第 三 章 文 表 現 法 乙乙では、﹁九州万言の基礎的研究︵九州万言学会︶﹂ の調査項目および設問と、﹁全国方言辞典②︵平山輝星編︶﹂ の﹁基礎語集調査項目助詞・助動調その他﹂をもとに、調 査を行なった結果から論じていきたい。但し、紙面の関係 から、乙乙では特徴的なものだけを取り上げる乙とにする。 一 節 文 末 部 ①﹁ナ l ﹂ ・ ﹁ ネ | ﹂ o キ ョ l ァ、ァッカナ l 。︵今日は暑いですねえ。︶ o パ ス ア オ ソ カ ネ l 。︵パスは遅いねえ。︶ ﹁ナ|﹂と﹁ネ l ﹂は、どちらも詠嘆の意と同時に呼び かける相手に同意を求めた言い方である。但し、﹁ナ l ﹂ は目上の人や挨拶の時に使用し、﹁ネ l ﹂は向輩以下に極 打ち解けた気分で言う。つまり、﹁ナ l ﹂と﹁ネ l ﹂を比 べると、﹁ナ l ﹂の方が待遇敬意が高い。 ② ﹁ シ タ ﹂ 伝聞の意である。 O ケガンヒドヒテアユパエントシタ。 ︵怪我がひどくて、歩けないんだってよ。︶ 多分に感情が入っており、﹁ーだってよ﹂の後に、﹁大 変だねえ﹂とか﹁すごいねえ﹂などの感嘆した言葉を補っ て考えると、乙の﹁シタ﹂が理解しやすい。 ③﹁ジャン﹂ oコンモン、ダイヤ、マエモシタジャン。 ︵乙の問題は、前もしたじゃない。︶ 断定や主張する時に聞かれ、相手の同意を求めている。 男女を問わず、また若年層でも盛んに使われている。 二 節 述 部 ①進行態﹁ジョッ﹂と既然態﹁チヨツ﹂ 進行態は﹁ジヨツ﹂で表わす。乙れは、九州全般で言わ れる﹁動調連用形+ヨル﹂の転化であろう。上接の動詞を 促音化させない場合、﹁ヨッ﹂形が聞かれる。 O アガアドケイアジヨットカむ︵君はど乙へ行って い る の か 。 ︶
07
不ノミナトハイツテキヨッヨ。︵舟が港に入っ て 来 て い る よ 。 ︶ ﹁ジヨア﹂に対して、﹁チヨア﹂となるのは既然態を表 わすときである。 O キ ョ l ァ 、 ア カ カ フ ク パ キ チ ョ ッ 。 ︵ 今 日 は 、 赤 い 服 を 看 て い る 。 ︶ 乙れは、﹁しておる︵動詞連用十助詞﹁チ﹂一十オル︶﹂ からの転化形と思われる。乙の﹁しておる﹂の形は、老年 層において﹁アラ、モ l カラァオッヨ。︵あら、もう帰 っているよ。︶などのように聞かれるが、現在では﹁チョ 7 ﹂ が圧倒的である。 ②惟量の﹁ジャロ・ヤロ﹂ O ソッカツナラ、ョ 1 E ユアジャロ。︵そ乙からな ら、よく見えるでしょう。︶ O ア ッ モ 、 キ ヨ | ン ノ ヒ ル ン フ ネ デ ナ ガ サ ッ イ ッヤロ。︵あの人も、今日の昼の舟で長崎へ行くだろう。︶21-乙のように、福江方言では﹁ジャロ、ヤロ﹂によって推 量を表現する。﹁ジャロ﹂と﹁ヤロ﹂を比べてみると、﹁ジ ャロ﹂は全層で、﹁ヤロ﹂は専ら若年層で聞かれる。つま り﹁ヤロ﹂の方が、比較的新しい表現という乙とではない だ ろ う か 。 ③可能の﹁ユッ﹂﹁ルツ﹂ 福江方言では、能力可能と状況可能とをきちんと区別す る 。 肘能力可能 。 ア ガ l 百メートルオヨガユッカ。︵君は百メート ル 泳 げ る か 。 ︶ 能力可能は﹁ユッ﹂で表わす。しかし、例文をみてもわ かるように、連用形に接続すべき﹁ユル﹂が、福江方言で は﹁オヨガ﹂と、否定形に接続している。乙れは、﹁エッ﹂ そのものが﹁
t
できる﹂という意なのではなく助調﹁ワ﹂ が﹁ユル﹂の前について﹁動調連用形+助詞﹃ワ﹄十ユル﹂ の形が熟合したものと考えられる。︵\ 0 いo t
d
﹃ 丘 ロZ
\ ← 三o m
と
る
b
福江方言では、助調﹁ヲ﹂は熟合しやす い性質︵※三節主部にて説明︶からも想像できると思う。 従って、そのまま共通語になおすと、本来﹁泳ぐ乙とがで きるか﹂のような言い方をしているわけだが、結果として ﹁動詞語幹+﹃a
﹄+ユッ﹂で﹁泳げるか﹂の如く能力可 ’ 能 の 表 現 と な っ て い る 。 川状況可能 状況可能は﹁ル?﹂を用いる。 0 コ ア ン ニ ク ラ カ ト コ デ ジ ノ ヨ マ ル 7 モ ン ヵ 。 んなに暗い所で字が読めるものか。︶ ④否定の表現 乙乙では、習慣的な言い方のみ取り上げる。 的 ﹁ ノ サ ン ﹂ O キ ョ l アアツシテノサンヨ。︵今日は暑くてたま らないよJ
このように﹁耐えられない﹂というときの慣用的表現で あるが、若年層では聞かれない。 帥 ﹁ イ ナ カ ァ ﹂ ﹁いけない﹂という意味で、全層で盛んに使用主れる。 福江方言では、打消は﹁t
ン﹂と表わすのが普通であるか ら、﹁イカン﹂となるのが自然だ。しかし、それが﹁イナ カ 7 ﹂となったのは、﹁け﹂と﹁な﹂が入れ違って、 \Z
品 巴 \ ← \ 石 長 官 \ と な っ た の だ ろ う か 。 ︵ 前 述の通り、連母音が昨となる傾向がある。︶ 。タブッマエ、テ・ハアラワンパイナカ 7 ゾ。︵食べ る前、手を洗わないといけないぞ。﹀ ⑤敬語表現 福江では、敬語表現は﹁クダハレ﹂以外みあたらない。 ﹁ ク ダ ハ レ ﹂ は 例 え ば 、 O スマンパッテ、コンホンパカヒテクダハレ。︵すま ないけれど、乙の本を貸して下8
い 。 ︶ のように盛んに使われる。丁寧に表現しようとすると、 他に敬語らしいものがないので、文末詞﹁ナ l ﹂ な ど で 、 乙 。 , “ 。 , “やわらかい印象を出している。 三 節 主 部 主語・主題の表示を形成している助詞について述べる。 助主格表現の﹁ガ﹂﹁ノ・ン﹂ O パスノキタョ。︵パスが来たよ。︶ O アタシンイクケン。︵私が行くからね。︶ o ソッガヨカ。︵それが良い。︶ 0 コッガアマカ。︵乙れが甘い。︶ 主格表現には、﹁ノ・ン﹂﹁ガ﹂を使用する。但し、 ﹁ガ﹂の方は、特別に指示する場合や他と比較して言う場 合に聞かれるようである。総じて、代名詞は他と比較する ときに出てくる乙とが多いから、﹁ガ﹂を伴う乙とが普通 である。しかしながら、人称代名詞の場合は別で、 O アッガワッヵ。︵あいつが悪い。︶ O アンニゲンノヲッカヨ。︵あの人が悪いよ。︶ のように、同じ他称でも格の低い﹁アッ﹂には﹁ガッ﹂ が付き、格の高い﹁アンニゲン﹂には﹁ノ﹂が接続してい る。乙れは、﹁ノ﹂と﹁ガ﹂の尊卑の区別の名残りらしい 乙とが、上村孝二氏によっていわれている。
ω
助調﹁ヲ﹂の上接者への熟合 主部を形成する﹁ワ﹂助詞が、上接者に熟合した形も注 目 さ れ る 。 @コラ l ションナカネ l 。 ︵ こ れ は 、 え 。 ︶ \ 口0 2
4
﹃ 恒 ←2
2
H
\ @ ア ガ ア ド コ ン ウ ン マ レ ヵ 。 しょうがないね ︵君は、ど乙の生まれ だ い 。 ︶ \z
g
w
− ← 兵 一g
\ 。ミシェア i 、シメタッカナ。 \ 富 二o
g
− − ψ呂 ﹃
g H
\ @ モ l シケンナ、ォワッタッヵ。 の か 。 ︶ \ ご 甲 内3 4
﹃ 伊 ← ごW
2
2
\ @キヨ|ンシュクダイヤムンカヒカネ。︵今日の宿 題はなずかしいね。︶\p
k
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E
Z
一 胆 ← ﹃ 巳22
ニ酔\ ﹁ヲ﹂助調の含まれたときの変化は﹂様でない。但し、 @と⑥の場合のように、上接するのがーである色きま、必/
ー
パ
〆
t
j
ぃ
:
d ずナ行連声を起乙し、またi
てあるときは旬はん拘となる乙 /A
/ とは確かである c 四 節 修 飾 部 ①格の表現 同ゼロ表現 場所や帰着点を示す格助調﹁に﹂は、?こかゼロ表現 で あ る 。 O ツ ッ ケ ン ウ エ オ γ 。 ︵ 机 の 上 に 置 く 。 ︶ O オッモソンフネノセレ。︵私もその舟に乗せてよ。︶ などのように、助調なしでも修飾部となりえていて、む しろその方が多い。 川 刊 動 作 の 目 的 を 示 す ﹁ ガ ﹂ 動作の目的を示す助詞﹁に﹂は、﹁ガ﹂と表現8
れ る 。 O ホンパカイガイァテクッテ。︵本を買いに行って く る ね 。 ︶ ②接続表現 ︵ 店 は 閉 め た ん で す か 。 ︶ ︵もう試験は終った-23-乙こでは、順接条件の﹁ので・から﹂という意に当たる ﹁テ・テン・テンカ・ケン・ケンガ﹂だけを紹介しておく 乙 と に す る 。 O ヤジラヒカテン、ソッツァンイケ。︵うる会いから、 そ っ ち へ 行 け 。 ︶ 右の例には﹁テン﹂を入れたが、﹁テ・テン・テンカ・ ケン・ケンガ﹂のどれでも不自然ではない。どれを用いる かは偶発的だが、若年層では﹁ケン・ケンガ﹂の方が、老 年層では﹁テ・テン・テンカ﹂の方が優勢である。 結び 以上、文表現法を中心に福江万言を考察してみた。最初 に述べたように五島列島の方言は、研究が進められておら ず、上村孝二氏によって初めて五島列島の中の方言の地域 差が明らかにされたが、まだまだ本格的な対象となってい な い 。 終えてみて、行政区画上では長崎県だが、万言では鹿児 島に近いと感じた。 いずれにしても、日本中で万言が消えつつある乙とが叫 ばれている今、早急に﹁生﹂の会話の記録が望まれる。 参考文献 日本語方言文法の世界 方言研究法 九州方言の基俗的研究 方言学論叢 1 藤原与 野 九 林少