在宅酸素療法と地域医療
―患者様とともに歩むチーム医療―(長野県における試み)
松本協立病院呼吸器科₁),信州大学医学部保健学科検査技術学専攻₂),信州大学学術研究院医学系医学部内科 学第一教室₃),地方独立行政法人長野県立病院機構₄)江田清一郎
1)・ 藤本 圭作
2)・ 花岡 正幸
3)・ 久保 惠嗣
4) 要 旨 【背景】在宅酸素療法(HOT)保険適用から30年が経過し,2014年,全国では16万人以上に普及した. 【方法】長野県で HOT 普及に貢献した医療実践として12年間の推移,施行疾患,医療・訪問看護・介護課題,患者支援 の実態を全県関連施設への郵送アンケート法で調査し,今後の HOT の展望を考察した. 【結果】地域医療の普及により2015年 2 月,県内の HOT 施行者は5,279名(251名/10万人)と全国推定の127.7 名/10万人より多かった.しかし,患者指導者不足,介護施設で施行が困難,災害時対策の不備などの課題があった. 3 )患者支援体制には,医療機関の呼吸ケアチーム・呼吸器看護外来の他, 1 .医療介護施設体系整備, 2 .患者会活 動, 3 .地域ネットワーク形成,の形態があり身体活動性維持への全人的支援がなされていた.地域での患者中心のチー ム医療の発展により,HOT は更に有用な呼吸療法へ発展する可能性がある. Key words:在宅酸素療法,地域医療,患者支援,チーム医療,医療介護施設体系,地域ネットワーク形成,患者会 第₂₅回日本呼吸ケア・リハビリテーション学会学術集会 シンポジウムⅠ 在宅酸素療法₃₀年をめぐって原
著
緒 言 米国の Petty らの慢性呼吸不全患者に対する酸素療法 の有用性の報告₁)の後,₁₉₈₀年に米国 NOTT グループ₂), ₁₉₈₁年に英国の BMRC₃)の長期持続酸素療法の成績が発 表され,HOT の有用性は証明された.これらを契機に, 本邦の HOT は,黎明期・準備期・健康保険適応後の普 及定着期・届け出制廃止後の円熟期を経て₄),安定期・ 定常期を迎えたとされ₅),漸増を続けている₃₃).それは 住民の健康への願いが国民皆保険で実現し₃₃),「地域医 療」が普及してきた証である.現在本邦の HOT の₁₀万 人対比率は,₂₀₀₄年の米国と同等で₈),世界有数の HOT 施行国である.海外では,HOT は患者の QOL 向上に資 するが,医療経済上の問題₇),アドヒアランスの低下₈)を 生じ課題となっている₉).長野県では「医療は住民のも の」という,若月らの「農村医療」₁₁,₁₂),鎌田,吉澤らの 「地域医療」₁₃,₁₄)の理念が,県内₁₀医療圏で浸透し,他県 の医療実践₁₅)と結合し全国に普及した.今回我々は,長 野県の地域医療としての HOT の歩みと実態を明らかに する事により,我が国の HOT の課題と展望を探るべく 調査を行った. 対象と方法 最初に,県内 HOT の発展を医療者の実践を通し振り 返った.次に県内 HOT の₂₀₀₃年から₂₀₁₀年の施行数を まとめ,₂₀₁₅年,全酸素プロバイダー・医療機関・訪問 看護ステーション・介護施設にアンケートを施行し,現 状と課題を調査した.医療機関に対し①基礎疾患,② HOT施行上の問題点と災害対策,③患者支援,に関して 調査した.訪問看護ステーションに対し,①②③に加え, ④施行上の重点に関して調査した.①は在宅呼吸ケア白 書₂₀₁₀₆)に基づく疾患選択(「その他」は自由記載),② ③④は自由記載とした.医療機関は₈₈病院および₂₉₅診療 所,訪問看護・介護は,₁₅₃の訪問看護ステーション, ₁₆₁の介護施設(介護老人福祉施設・介護老人保健施設) を対象施設とし,アンケート郵送後に FAX で回答を回収 した.また,HOT 患者の災害支援につきアンケートと行 政への聞き取り調査を行い,現状を集約した.さらに, HOT患者支援形態をアンケートと聞き取りにより調査 し,重要な要素を分析した. 結 果 1 .1978年以降の長野県の地域医療・酸素療法研究の推移 HOT の全国推移₁₀)(図 ₁ )からみた地域医療・研究の在宅酸素療法と地域医療 実践を分析した.黎明期・準備期には,農村・地域医療 が,若月・鎌田・吉澤らにより普及した₁₁-₁₅).普及定着 期(₁₉₈₇年)には第 ₄ 次厚生省特定疾患呼吸不全調査研 究班が発足し,信州大学第一内科(小林ら)は,「日本に おける HOT の追跡調査研究」の疫学調査を担当し,₁₉₉₀ 年には HOT による生命予後に対する有効性が初めて確 認された₁₆).普及定着期(₁₉₈₉年)には,小林,鎌田ら により,チーム医療・地域医療重視の「在宅酸素研究会」 が発足した.₁₉₉₄年には呼吸管理・リハビリテーショ ン・連携まで包含した「信州呼吸ケア研究会」と改称し 現在も継続している.この間,安静時低酸素血症が軽度 の COPD においても酸素投与が有効である場合があり, 閉塞性障害の程度が強い例ほど運動能力に対する酸素吸 入効果が大きいこと₁₇),HOT 患者の ₃ 元通信システムに よる遠隔診療の有用性が報告された₁₈).このように研究会 と研究が連動し HOT が地域医療として根付いていった. 2 .2003年以降の長野県における HOT の推移 ₂₀₀₃年より₁₀万人対 HOT 数は全国推定より高く,₂₀₁₅ 年 ₂ 月の HOT 数は₅,₂₇₉例で₂₀₁₄年の全国推定より高 かった(図 ₂ ).図 ₃ に₂₀₁₀年迄の₁₀医療圏の HOT 数と ₁₀万人対 HOT 数を示すが,特に諏訪・佐久医療圏に HOT数が多く,全医療圏で₂₀₁₄年度全国推定を上回って いた.酸素供給源の推移は濃縮器が多く,液体酸素は ₂₀₀₉年₈.₇%に増加後は減少し,₂₀₁₅年には₃.₁₂%であっ た(図 ₂ ). ①病院からの回答は₈₈施設中₆₀施設(回収率₆₈%)で あった.基礎疾患(濃縮器)は,COPD が₃₇%と最も多 く,次いで間質性肺疾患₁₅%,心不全 ₁₁%,先天性心疾 患 ₅ %,肺がん ₄ %であった(回収率₆₈%).近年心不全 の増加が顕著であった(図 ₄ ).課題として,通院困難, 災害時,移動手段・電力確保がない,ショートステイ困 難,医師不足,患者・職員の教育不足・外来看護チーム がない,が挙げられた. ② 診 療 所 か ら の 回 答 は ₂₉₅ 施 設 中 ₃₅ 施 設(回 収 率 ₁₁.₈%)であった.基礎疾患(濃縮器)は,COPD が ₅₄%と最も多く,心不全が₁₀%,間質性肺疾患が ₈ %, 肺結核後遺症が ₇ %,肺がんが ₅ %であり,心不全症例 が近年増加した(図 ₄ ).病院との比較では肺線維症が少 なく COPD が多かった.課題は,スタッフ不足で指導困 難,内科以外で管理できる方策希望(災害時),酸素処方
Ⅰ期
Ⅱ期
Ⅲ期
Ⅳ期
介護保険制度
内科-100年のあゆみ(呼吸器) 三嶋理晃 木村健太郎 内科学学会雑誌 第91巻 第6号-(33~36)安定期・定常期
黎明期
準備期
普及定着期
円熟期
大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター 石原英樹 「在宅酸素療法ケアマニュアル」 2012年3月 メディカ出版 (ガスメディキーナ2013 ガスレビュー社を改変) 図 1 全国の在宅酸素療法―発展過程―長野県内
HOTの推移
図 2 長野県内 HOT の推移H22年 広域連合での
HOT数(10万人対)
大北 2003: 112 2004: 113 2005: 126 2006: 112 2007: 116 2008: 136 2009: 110 2010: 129 北信 2003: 88 2004: 102 2005: 109 2006: 97 2007: 109 2008: 135 2009: 114 2010; 126 長野 2003: 620 2004: 687 2005: 667 2006: 720 2007: 745 2008: 807 2009: 844 2010: 864 上小 2003: 239 2004: 271 2005: 303 2006: 325 2007: 341 2008: 390 2009: 404 2010: 401 佐久 2003: 474 2004: 498 2005: 543 2006: 559 2007: 600 2008: 568 2009: 505 2010: 606 諏訪 2003: 434 2004: 438 2005: 426 2006: 473 2007: 494 2008: 513 2009: 555 2010: 487 松本 2003: 630 2004: 648 2005: 683 2006: 711 2007: 801 2008: 862 2009: 869 2010: 971 木曽 2003: 47 2004: 50 2005: 57 2006: 71 2007: 87 2008: 70 2009: 65 2010: 66 飯伊 2003: 224 2004: 258 2005: 268 2006: 287 2007: 282 2008: 271 2009: 282 2010: 308 上伊那 2003: 257 2004: 275 2005: 259 2006: 269 2007: 268 2008: 276 2009: 288 2010: 259189
154
132
198
285
236
136
226
209
181
63971人
429110人
31562人
170314人
558173人
94455人
202046人
212231 人
206431人
190131人
長野地域と松本地域に総人口の約46%が集中 老年人口割合は、木曽地域35.6%最多施行数
最少施行数も、
2014全国推定
よりも多い。
図 3 平成22年 長野県10医療圏における HOT 数在宅酸素療法と地域医療 の技術不足が挙げられ,「診療所で共有できる HOT 管理 マニュアルが必要」との要望が多い. ③訪問看護ステーションからの回答は,₁₅₃施設中₄₃施 設 (回収率₂₈.₁%) であった.疾患 (濃縮器) は,COPD が最も多く₄₂%,間質性肺疾患₁₁%,肺がん ₆ %,陳旧 性肺結核 ₅ %であった(図 ₅ ).ケアの重点として,安 心・不安軽減,QOL の維持,ADL の維持,感染予防,火 気取り扱い,呼吸困難除去,教育・指導,機器管理,身 体への配慮,呼吸器リハ,災害時対応,関係性作りが挙 げられ,安全に配慮し呼吸ケアが行なわれている.課題 は,機器取り扱い困難,災害時の備え,ボンベ取り扱い, 家族・家庭環境,ケア困難患者の存在,呼吸・緩和ケア 研修不足,患者会の必要性,が挙げられ,「患者の安全・ 危機管理,療養・家族環境などのケア環境を改善すべき」 という要望が多い. ④介護施設からの回答は,₁₆₁施設中₄₃施設(回収率 ₂₆.₇%)で,疾患(濃縮器)としては,COPD が₃₆%と 最も多く,次いで心不全 ₆ %,肺がん ₅ %,間質性肺疾 患 ₅ %であった(図 ₅ ).介護の重点は,機器の管理, SpO₂の管理,身体ケアであった.HOT 利用者受入れの
H27年 医療機関での実施疾患
39% 4% 4% 19% 3% 4% 4% 4% 3% 16% 液酸156件 COPD(慢性閉塞性肺疾患) 肺結核後遺症 肺がん 肺線維症・間質性肺炎・じん肺・膠原病・ 農夫肺 神経筋疾患 先天性心疾患 びまん性汎細気管支炎 肺血管原生肺高血圧症 慢性心不全によるチェーンストークス呼吸 肺血栓塞栓症 その他病院
①COPD ②間質性肺疾患 ③CHF ④PH=肺がん ⑤Tb後遺症 60施設/88施設郵送(回収率 68%) 37% 3% 4% 15% 3% 5% 2% 2% 11% 2% 16% 濃縮器1633件 54% 7% 2% 8% 5% 2% 10% 2% 10% 濃縮器93件診療所
82% 18% 液酸 11件 COPD(慢性閉塞性肺疾患) 肺結核後遺症 肺がん 肺線維症・間質性肺炎・じん肺・膠原病・ 農夫肺 神経筋疾患 先天性心疾患 びまん性汎細気管支炎 肺血管原生肺高血圧症 慢性心不全によるチェーンストークス呼吸 肺血栓塞栓症 その他 35施設/295施設郵送(回収率 11.8%) ①COPD ②CHF ③間質性肺疾患 ④Tb後遺症 ⑤神経筋疾患 図 4 平成27年 長野県内医療機関における HOT 実施疾患H27年 訪問看護・介護施設での実施疾患
訪問看護ステーション
75% 6% 6% 13% 液酸16件 COPD(慢性閉塞性肺疾患) 肺結核後遺症 肺がん 肺線維症・間質性肺炎・じん肺・膠原病・農 夫肺 神経筋疾患 先天性心疾患 びまん性汎細気管支炎 肺血管原生肺高血圧症 慢性心不全によるチェーンストークス呼吸 肺血栓塞栓症 その他 41% 5% 6% 11% 2% 3% 1% 1% 6% 2% 22% 濃縮器 239件 43施設/153施設郵送(回収率 28.1%) ①COPD ②間質性肺疾患 ③肺がん ④Tb後遺症 ⑤CHF 2008年のCOPD54%から減少。間質性肺疾患は2倍に。介護施設
36% 5% 5% % 3 3% 6% 3% 39% 濃縮器36件 COPD(慢性閉塞性肺疾患) 肺結核後遺症 肺がん 肺線維症・間質性肺炎・じん肺・膠原 病・農夫肺 神経筋疾患 先天性心疾患 びまん性汎細気管支炎 肺血管原生肺高血圧症 慢性心不全によるチェーンストークス呼 吸 肺血栓塞栓症 その他 液体酸素2件 (COPD1名・ 肺線維症1名) 安定しているCOPDが多い。 多数ではないが、進行性の 肺がんや間質性肺疾患などの、利用者様も受け入れて頂いている。 41施設/161施設郵送(回収率 26.7%) 図 5 平成27年 長野県内訪問看護ステーション・介護施設における HOT 実施疾患知困難,器材取扱い(ボンベ交換),介助の困難性(入浴 や長いカニューラ),呼吸困難の対応苦慮,呼吸リハ困難 が挙げられ,不安と医療不足の中,懸命な介護が施行さ れていた.受入れ不能施設の理由は,体制の問題(夜間 看護師不在,委託医のみ,医療設備がない)が多数を占 め,さらに電源がない,利用者の多くが認知症,医療リ スクあり不安との回答であった. 3 .HOT 患者の災害対策について 「各患者で対策を検討するも移動手段・電源確保が不明 確」という回答が殆どであった.信州呼吸ケア研究会に おいて,患者が被災時に提示する,療養情報記載用 「HOT /ほっと手帳」が作成された₁₉).また,松本市に おいて,災害時要支援者に HOT 患者が登録され,行政・ 医師会支援システムが構築されており,県内で同様の動 きがある₂₀,₂₁). 4 .患者支援について 医療機関の支援は,呼吸ケアチーム₁₂,呼吸器看護外 来 ₄ ,患者会 ₇ であった(表 ₁ ).チーム医療・地域医療 の形態には,①医療介護体系整備,②患者会,③多施設 ネットワーク形成の ₃ つの形態が観られた.①松本市内 某呼吸器科医療機関の地域での活動は,HOT の訪問看 護・入所通所介護(ケアハウス)・後方病院といったネッ トワークを患者中心に形成し患者援助を行うものであっ た₂₃).②県内患者会の取り組みを(表 ₁ )に示す.₁₉₉₀ 年 HOT の会(信州大学病院)が県内初の患者会であり, ていた.当院のあやめ会は患者の「生きる希望の会」と 位置付け,旅行・外出を援助し,職員は慢性呼吸器疾患 患者の援助チームとなっている₂₇)(図 ₆ ).③地域医療 ネットワーク形成として,大平らの北信長生き呼吸体操 研究会の取り組みがあり「訪問看護を導入した多施設間 包括的呼吸リハプログラム」があり,フライングディス クの活動も開始された₂₇-₂₉).このように,長野県では地 域医療の発展の中で様々患者支援が形成されつつあった. 考 察 本邦HOTの発展は₂₀₀₀年三嶋,木村らが分析を行い₄), 石原は現在を「安定期・定常期」とした₅).石原は,①
街中で HOT 患者が観られない,② HOT 患者が Home に 引きこもっていないか,③市民に HOT が認知されてい るかと問題提起した₅).また,Kida らは,₂₀₁₃年現在の 日本の長期酸素療法の歴史と課題をまとめている₃₃). HOTは,包括的呼吸リハビリテーション,チームアプ ローチ,およびプライマリケアと病院間の緊密な連携を 促進したが,東日本大震災で災害後の諸問題も明らかに なったとしている₃₃).今回,我々は,県内 HOT の発展・ 現状・支援形態を調査した. ₁ )若月,鎌田,吉澤らの農村・地域医療の充実が HOTに反映し,実践の地,諏訪・佐久医療圏にて 多数普及した.この事実から,全国でも地域医療 の充実により HOT は更に普及すると推察される.
アンケート調査での患者支援の取り組み
呼吸器看護外来(4) JA厚生連鹿教湯三才山リハビリテーションセンター鹿教湯病院(認定看護師) JA厚生連北信総合病院、 しのざき内科呼吸器科クリニック 信州大学医学部附属病院(慢性呼吸器疾患看護認定看護師の介入) 患者会活動(7) 信州大学病院 1990年~HOTの会 佐久医療センター まきば会(年1回の講演会) 松本協立病院 1995年~あやめ会(年2回の日帰り・1泊旅行) 篠ノ井総合病院 1999年~わかば会(年2回の日帰り旅行) 諏訪赤十字病院 2009年~諏訪HOTの会(恒常的患者会活動・呼吸器クリニックも) 長野赤十字病院 HOT教室 長野市民病院 2010年~北信フライングディスククラブ、それ以前~HOTの会 呼吸ケアチーム(12) 飯田病院、飯田市立病院、伊那中央病院、浅間総合病院、諏訪赤十字病院 JA厚生連鹿教湯三才山リハビリテーションセンター鹿教湯病院 JA厚生連北信総合病院、信州大学医学部附属病院、諏訪中央病院 長野市民病院、長野赤十字病院、松本医療センター中信松本病院 表 1 平成27年 長野県内医療機関での患者支援の取り組み在宅酸素療法と地域医療 ₂ )酸素供給源では液体酸素が全国の ₅ %₆)より高 かったが,減少した.疾患構成は,COPD 患者が 最多だが,間質性肺疾患や肺がんなどが増加して いる.結核後遺症は呼吸ケア白書₆)と比較し少な く,長野県の結核罹患率が低い為と思われる.病 院では心不全が増加しており,調査が必要である. 医療看護での課題は切実で,解決への検討が迫ら れている.介護で要医療者が急増し,介護医療一 体の地域包括ケアが必要である. ₃ )災害対策として,東日本大震災・熊本地震をみて も重大な状況に陥ることが予測され,患者登録 制・支援体制構築を急がねばならない. ₄ )療養支援だが,病院の呼吸ケアチーム,呼吸器看 護外来の形成はさらに望まれる.在宅呼吸ケア白 書にて₆),植木らは患者の望む支援を解析してい るが₂₂),地域ネットワーク形成・疾患の理解援助, 外出援助等が課題である.地域の HOT 支援に ₃ つの形態が観られた. ₁ つ目の施設体系整備は介護医療連携の可能性を示す. 某内科呼吸器科診療所では,介護保険制定後,呼吸リ ハ・訪問看護ステーションを設立し,医療行為に制限が 無く在宅扱いの軽費老人ホーム(ケアハウス)を設立, HOT患者も入居可能とし要医療者のケアを行い,居宅介 護支援事業所,相談支援センター,通所リハビリステー ションも開設し,HOT 患者の QOL 向上を目指した₂₃). ₂ つ目は,全国的には減少傾向が観られる患者会があ る.松本協立病院の取り組みからは,人と人との絆を形 成し,生きる希望となるのが,患者会活動である.必要 な要素としては,家族支援(やすらぎ・癒し),医療者 (安心・安全),同じ疾患と共に生きる仲間(共感と,出 会い)が挙げられる₂₄,₂₅).当院では,慢性呼吸器疾患患 者支援の取り組みをチーム医療の一部として進めてい る₂₆)(図 ₆ ).今後医療機関での多様な形態の患者会の構 築,発展,交流が望まれる₂₄). ₃ つ目の地域ネットワークとして,大平らの北信長生 き呼吸体操研究会の取り組みがある₂₇).基幹病院・診療 所,訪問看護ステーション,薬局の,多施設間包括的呼 吸リハプログラムで₂₈),₁₁年半で約₁₉₀症例中約半数が生
呼吸困難で
FHJ4度の患者様も参加された第3回・・・1997年6月21日 生坂やまなみ荘
「あやめのように、いつまでも瑞々しく、半年ごとに健康で会える会として」
帰りのバスで立ち寄ったあやめ園。車窓からの思い・・・あやめ会と命名された。
毎年、小旅行で総会を開き、確認する会の由来・・・希望の合言葉に。
あやめ会(松本協立病院)
HOTをしていても、すこしだけ旅行に行ってみたい・・から始まった。
1995年10月7・8日. 秋の野麦峠 5人の患者様からのスタート。
徐々に、
患者様・ご家族
の参加も増え、
患者様を亡くされたご家族の
グリーフケア
も。
春(初夏)と秋に、
20年間、開催継続
している。
図 6 松本協立病院 HOT 患者会 「あやめ会」グディスククラブ」も立ち上った₂₉).HOT 患者の生きる 力を援助する要素が当該クラブにはあり,若狭らの,参 加者への「HOT 患者の閉じこもり予防に関する研究」に よると,A)同病者との出会いの場の提供,B)相互理解 できる存在や新たな役割の獲得・実感に繋げ生きがいや 楽しみを見出せるような場作り,C)安心して参加を継 続できる環境整備,という要素であった₃₀). これからの地域包括ケアへの流れの中で,県内の取り 組みを考えると,HOT ケアには, ₁ )「その人らしく生 きる」援助として呼吸器看護・リハの役割の重要性₃₁) と, ₂ )身体活動性向上への支援₃₂)の重要性が挙げられ ている. 県内医療機関の取組み・患者支援 ₃ 形態は,呼吸器看 護・身体活動性維持のコアになる活動であった.石原よ り問題提起された課題₅)は,「呼吸器疾患を負った患者 が,HOT を行いつつ,いかに地域で社会的に主人公・主 体者として生きて行けるか」という課題であり,「地域医 療としてのチーム医療」で患者を支援することにより克 服されていくと思われる.全国・各地域で,「患者ととも に歩むチーム医療」を多様・多数に実践し発展・深化さ せることにより,HOTはさらに有用な呼吸療法になりうる. 謝辞 本稿をまとめるにあたり,ご協力頂きました,長野県 内全医療機関・全訪問看護ステーション・全介護施設・全酸素 供給プロバイダー,ならびに,JA厚生連鹿教湯三才山リハビ リテーションセンター鹿教湯病院名誉センター長 小林俊夫先 生,昭和電工塩尻事業所健康管理センター 松澤幸範先生,し のざき内科呼吸器科クリニック 篠崎史郎先生 に深謝申し上 げます. 著者の COI(conflicts of interest)開示:藤本圭作;講演料 (アストラゼネカ),花岡正幸;講演料(アステラス,アストラ ゼネカ,ノバルティス,杏林,日本ベーリンガーインゲルハイ ム),藤本圭作;研究費・助成金(日本ベーリンガーインゲルハ イム,デンソー,セイコーエプソン)
Practices of patient-centered team and community medical cares through the development of Home Oxygen Therapy at Nagano Prefecture in Japan
Seiichirou Eda₁), Keisaku Fujimoto₂), Masaykuki Hanaoka₃),
Keishi Kubo₄)
₁)Department of Respiratory Medicine, Matsumoto Kyoritsu
Hospital, ₂)Department of Clinical Laboratory Sciences, Shinshu
University of Medicine, ₃)First Department of Medicine, Shinshu
University of Medicine, ₄)Nagano prefactual hospital organization
文 献
₁) Petty TL ed.: Ambitulatory and home care. Intensive and Rehabilitative Respiratory care, and ed. Lea & Febiger,
₂) MRC Working Party: Long-term domiciliary oxygen therapy in chronic hypoxic cor pulmonale complicating chronic bron-chitis. Lancet ₁: ₆₈₁-₆₈₅, ₁₉₈₁.
₃) Nocternal Oxygen Trial Group: Continuous or nocturnal oxygen therapy in hypoxic chronic obstructive lung disease. Ann Int Med ₉₃: ₃₉₁-₃₉₈, ₁₉₉₃.
₄) 三嶋理晃,木村健太郎:内科―₁₀₀年のあゆみ(呼吸器). 内科学学会雑誌 ₉₁: ₃₃-₃₆, ₂₀₀₂. ₅) 石原英樹:在宅酸素療法ケアマニュアル,メディカ出版, 大阪,₂₀₁₂,₁-₂. ₆) 日本呼吸器学会肺生理専門委員会在宅呼吸ケア白書ワーキ ンググループ編:在宅呼吸ケア白書₂₀₁₀,日本呼吸器学会, 東京,₂₀₁₀
₇) O'Donobue WJ, Jr: Magnitude of usage and cost of home oxygen therapy in the united states. Chest ₁₀₇: ₃₀₁-₃₀₂, ₁₉₉₅.
₈) Godoy I, Tanni SE: The importance of knowing the home conditions of patients receiving long-term oxygen therapy. International Journal of COPD ₇: ₄₂₁-₄₂₅, ₂₀₁₂.
₉) Petty TL, Casaburi R: Recommendations of the fifth oxygen consensus conference. Respir Care ₄₅: ₉₅₇-₉₆₁, ₂₀₀₀. ₁₀) 大家 泉:在宅酸素療法患者数推移.ガスメディキーナ ₁₈: ₃₇, ₂₀₁₃. ₁₁) 若月俊一:地域医療と農村医学.日農村医会誌 ₃₁: ₈₀₀-₈₁₁, ₁₉₈₃. ₁₂) 若月俊一:農村医療にかけた₃₀年,家の光協会,東京, ₁₉₇₆. ₁₃) 鎌田 實編著:医療がやさしさをとりもどすとき 地域と生 きる諏訪中央病院の実践,医歯薬出版,東京,₁₉₉₃. ₁₄) 吉澤國雄:『検証地域医療』.国民健康保険と保健予防活動 の成果,社会保険新報社,東京,₁₉₇₈. ₁₅) 増田 進:岩手県沢内村における地域保健.教と医 ₃₅: ₆₁₃-₆₁₇, ₁₉₈₇. ₁₆) 厚生省特定疾患呼吸不全研究班:平成元年度研究報告書, 厚生省,東京,₁₉₉₀. ₁₇) 松澤幸範,久保惠嗣,藤本圭作,他:運動時低酸素血症が 軽度の肺気腫患者における運動時酸素吸入の効果.日呼吸 会誌 ₃₈: ₈₃₁-₈₃₅, ₂₀₀₀. ₁₈) 小泉知展,山口信二,花岡正幸,他:在宅慢性呼吸器疾患 患者への ₃ 元通信システムによる遠隔診療支援の試み.日 呼吸会誌 ₄₁: ₁₇₃-₁₇₆, ₂₀₀₃. ₁₉) 上條真喜子,高見澤明美,久保惠嗣,他:呼吸不全患者に 対する災害対策ネットワーク構築に向けて~災害対策ネッ トワークアンケートの結果.信州呼吸ケア研究会抄録集, ₂₀₀₉. ₂₀) 広域圏救急・災害医療協議会:松本広域圏災害時医療連携 指針(震度 ₆ 弱以上で適用),平成₂₅年 ₈ 月,松本広域圏救 急・災害医療協議会,松本,₂₀₁₃. ₂₁) 高橋宏子,藤本圭作:在宅酸素療法患者における災害時の 適切な対応を目指して.日呼ケアリハ学誌 ₂₅: ₄₃₅-₄₄₀, ₂₀₁₅. ₂₂) 植木 純:四半世紀を経たわが国の在宅酸素療法―課題と
在宅酸素療法と地域医療 提言―.在宅酸素療法 患者は何を望んでいるのか.THE LUNG-perspectives ₁₉: ₃₀₈-₃₁₂, ₂₀₁₁. ₂₃) 小福美貴,抜井佳代,篠崎史郎,他:COPD 患者における アクションプランの運用と課題.日呼ケアリハ学誌 ₂₁ (Suppl): ₂₅₅s, ₂₀₁₁. ₂₄) 特定非営利活動法人 日本呼吸器障害者情報センター(NPO J-BREATH):患者視点による在宅酸素の手引書作成事業 慢性呼吸器疾患の患者に関するアンケート調査報告書,独 立行政法人福祉医療機構平成₂₆年度社会福祉振興助成事業, 東京,₂₀₁₅,₂₀-₂₄. ₂₅) 特定非営利活動法人(NPO)日本呼吸器障害者情報セン ター:呼吸器障害者のためのハンドブック・新改訂版(平 成₂₇年版),特定非営利活動法人障害者団体定期刊行物協会, 東京,₂₀₁₅,₁₄₆-₁₄₈. ₂₆) 外山 剛,柄沢好子,小林聖子,他:HOT 患者が自由に旅 行と宿泊ができる社会を目指して.日呼ケアリハ学誌 ₁₈ (uppl): ₁₅₇s, ₂₀₀₈. ₂₇) 大平峰子,石川 朗,山中悠紀,他:北信ながいき呼吸体 操研究会の活動.日呼ケアリハ学誌 ₂₂: ₂₇₆-₂₇₉, ₂₀₁₂. ₂₈) 大平峰子,石川 朗:北信ながいき呼吸体操研究会在宅生 活での身体活動レベル維持に向けて 訪問看護を導入した多 施設間包括的呼吸リハビリテーションプログラム.日呼吸 会誌 ₂ (増刊): ₅₃, ₂₀₁₃. ₂₉) 原田友義,小谷素子,大平峰子,他:フライングディスク との出会い HOT 患者の立場から.日呼ケアリハ学誌 ₂₀: ₂₆₈-₂₇₁, ₂₀₁₀. ₃₀) 若狭好美,大田桃子,高橋宏子:HOT 患者の閉じこもり予 防に関する研究―フライディングディスク参加者に焦点を当 てて―,₂₆回信州呼吸ケア研究会₂₀₁₄.http://www.shinshuu. ac.jp/faculty/medicine/health/research/₂₀₁₄/kango/other. html. Accessed: ₂₃ April ₂₀₁₆. ₃₁) 竹川幸恵:慢性呼吸不全患者がその人らしく生きていくこ とへの支援 チーム医療における慢性疾患看護専門看護師 の立場から(解説).日呼ケアリハ学誌 ₂₃: ₁-₇, ₂₀₁₃. ₃₂) 植木 純:呼吸リハビリテーションと身体活動性―身体活 動性の向上・維持に関する現況と課題―.日呼吸会誌 ₄: ₃₆-₄₀, ₂₀₁₃.
₃₃) Kida K, Motegi T, Ishii T, et al.: Long-term oxygen therapy in Japan: history, present status, and current problems. Pneu-monol Alergol Pol ₈₁: ₄₆₈-₄₇₈, ₂₀₁₃.