• 検索結果がありません。

216 図 1. 調査対象とした千葉県の市町村位置図. 矢竹ほか (2011) の図に加筆 作成した. 括弧内表示は合併前の旧市町村名, 合併後の市名と線でつないだ. シュ全てとした ( うち 10 メッシュは矢竹ほか (2011) で調査済み ). なお, メッシュ選定の方法は矢竹ほか (2005

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "216 図 1. 調査対象とした千葉県の市町村位置図. 矢竹ほか (2011) の図に加筆 作成した. 括弧内表示は合併前の旧市町村名, 合併後の市名と線でつないだ. シュ全てとした ( うち 10 メッシュは矢竹ほか (2011) で調査済み ). なお, メッシュ選定の方法は矢竹ほか (2005"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

矢 竹 一 穂

株式会社セレス 摘 要 千葉県内において環境省 3 次メッシュ(約 1×1 km) を最小調査単位として,2001 ~2003 年にニホンリス (Sciurus lis)の分布調査が実施された.その際に生息が 確認されたメッシュについて,2009 ~2011 年にその変 遷を調査した.本報では千葉県南部の生息状況の変遷を 報告する.生息の確認は主にマツ類球果の食痕によった. 2001 ~2003 年の調査で生息が確認された 57 メッシュの うち,36 メッシュ(63%)で引き続き生息が確認された. これまで千葉県では,県北部におけるニホンリスの生息 状況の衰退が強調されてきたが,本調査によって県南部 でも新たに 15 メッシュで生息が確認されたものの,同様 な衰退が起こっていることが明らかになった.千葉県北 部におけるニホンリスの生息衰退については,マツ林面 積の減少がその要因であることが示唆されてきた.千葉 県南部では県北部に比べて森林面積が多いものの,マツ 林の減少は県北部より早い年代から進行している.今後, マツ林が少なく常緑広葉樹林が優占する県南部における ニホンリスの生態,およびより詳細な生息状況の解明が 必要である. は じ め に ニホンリス(Sciurus lis 以下,リスと略記)は種とし ての絶滅が危惧される段階ではないが, これまで分布域 とされてきた本州・四国・九州等のうち中国・九州地方 での地域的な減少傾向や絶滅の可能性が報告されてお り(田村ほか 2007;安田 2007),生息環境である森林の 減少や衰退による生息域の減少も指摘されている(田村 2000;矢竹ほか 2005). 千葉県ではリスはレッドデータブックの中で,ランク C:要保護生物(生息数が少ない,生息環境が限られて いる,生息地の多くで環境改変の可能性がある等)に指 定されている(千葉県レッドデータブック改訂委員会 2011). 千葉県内のリスの生息状況については,2001 ~2003 年 に現地調査が実施されており(矢竹ほか 2005.以下,前 回調査と略記),その後,2009 ~2010 年に県北部および 県南端部の鴨川市,南房総市,館山市などにおいて,こ れらの変遷が現地調査によって明らかにされた(矢竹ほ か 2011).その結果,県北部では 10 年余りの間に全生息 確認メッシュ 25 メッシュのうち 19 メッシュ(76%)で 生息が引き続き確認され,新たに県東部銚子市の 1 メッ シュで生息が確認された.県南端部では 10 メッシュのう ち 4 メッシュ(40%)で引き続き生息が確認されたのみ であった.ただし,県南端部では非生息となったメッシュ 数を超える 12 メッシュで新たな生息も確認された.な お,県南端部の館山の個体群は,松山・梶(2011)によ り県北部の銚子・野田の個体群とともに分布域の縮小や 孤立が指摘されている. 矢竹ほか(2011)は,千葉県北部を中心にリス生息域 の変遷を解析した.しかし,県南部は北部と比較して植 生環境や土地利用などはリスの生息環境としても異なっ た特徴を持っている.また,リス生息の衰退が顕著であ る県北部に対して,南部では健全に生息が維持されてい るのか解明が必要と考えられる.そこで本報は,矢竹ほ か(2011)で網羅されていない県南部のデータを現地調 査によって補完することで,県南部地域におけるリス生 息域の変遷を考察した. 調 査 方 法 1.現地調査 調査対象地域(図 1)は前回調査に準じ,千葉県を市 原市北部と大網白里町付近を結ぶ線を境界として分けた 県南部側とし,調査単位は環境庁(1977)の 3 次メッシュ (約 1×1 km)から前回調査で生息が確認された 57 メッ

(2)

シュ全てとした(うち 10 メッシュは矢竹ほか(2011)で 調査済み).なお,メッシュ選定の方法は矢竹ほか(2005) に従い,森林の消失などでメッシュ内を調査できなかっ た場合は,代替地点として周辺のメッシュを対象とした. 調査時期はリスの主要な食物であるマツ類種子の当年 結実の採食が始まり,新しい食痕が得られる時期として 2011 年 7 ~ 8 月,および千葉県南部におけるリスの重要 な食物と考えられるシイやカシ類の堅果の結実期である 10 ~11 月を中心とした.リスの生息確認は踏査により 主にマツ類(アカマツ Pinus densiflora,クロマツ Pinus thunbergii)な ど の 球 果 の 食 痕,オ ニ グ ル ミ(Juglans ailanthifolia)の食痕,巣材用のスギ(Cryptomeria japonica) の剥皮痕等の生活痕跡,および個体の目視によった. なお,マツ類球果の食痕とスギ剥皮についてはムササビ (Petaurista leucogenys)も同様の痕跡を残し,両者の識別 は困難であるものの,千葉県ではムササビの生息が報告 されていない(落合・繁田 2010)ことから考慮をしな かった.一方で,本県にも生息するアカネズミ(Apodemus speciosus)等のネズミ類とリスのマツ球果食痕の違いは, ネズミでは種鱗片を齧り取った跡が細かいのに対して, リスでは毛羽が残るなど粗いことで識別した. 痕跡の探索時間は,調査対象となる林分の選定や移動 に要する時間を除いた林分に到着してからの時間とし, 田村ほか(2007)に準じて 30 分を目安とした.なお,調 査対象メッシュが並木や単木で散在し,林分となってい ない場合はこの限りではない. 図 1.調査対象とした千葉県の市町村位置図.矢竹ほか(2011)の図に加筆・作成した.括弧内表示は合併前の旧市町村名,合併後の 市名と線でつないだ.

(3)

2.資料調査 リスの生息変遷の要因として,生息環境である森林の 状況について県の林業統計(千葉県農林部林務課 1986, 1991;千葉県農林水産部林務課 2002;千葉県農林水産部 森林課 2010)から,1985・1990・2001・2009 年の森林面 積の変遷を整理した.さらに,植生タイプごとの詳細な 状況を把握するため,矢竹(1987)に従って,現存植生 図(以下,植生図)から 3 次メッシュ単位で植生凡例を 読み取り,メッシュ内で最も多く面積を占める凡例別に メッシュ数を集計し,解析を行った.千葉県南部の植生 図は生物多様性情報システム(URL: http://www.biodic. go.jp/kiso/fnd_f.html;2012 年 10 月 9 日版)を用いて,過去 のデータ(矢竹 1987)と比較した. なお,過去の集計対象は 5 万分の 1 植生図(環境庁 1981,1984)の木更津・姉崎・富津・大多喜・上総大原 の 5 図幅であり,県南部全域ではないが,この地域の森 林の大部分が分布する房総丘陵一帯を網羅している.そ の後,植生図作成の詳細化が行われ,本報の集計対象は 2 万 5 千分の 1 植生図の奈良輪・大堀・木更津(以上,5 万分の 1 木更津に相当),姉崎・海士有木・上総横田・鶴 舞(同,姉崎に相当),富津・鹿野山・上総湊・鬼泪山 (同,富津に相当),久留里・大多喜・坂畑・上総中野 (同,大多喜に相当),国吉・上総長者・御宿・上総大原 (同,上総大原に相当)である. 結果および考察 1.千葉県南部の生息状況 本研究によって得られた千葉県南部のリス生息確認状 況は表 1 のとおりであった.前回調査で生息が確認され た 57 メッシュのうち,36 メッシュで引き続き生息が確 認されたが,20 メッシュでは生息を確認することが出来 なかった(37%の減少).なお,1 メッシュは災害通行止 めのため調査を行うことができなかった.一方で,代替 調査を行った 20 メッシュから新たに 15 メッシュでリス の生息を確認した.生息確認の多くはマツ類(外国種も 含め)の球果の食痕によるもので,このほかモミの球果・ 本調査における生息メッシュの減少率は高かった.周辺 で新たな生息メッシュが確認されているものの,生息地 点の減少は事実であり,県北部と同様に生息域の衰退が 起こっていることが明らかになった. 2.生息域衰退の要因 リスは主要な食物に依存する傾向が強く(Kato 1985; 矢竹ほか 1999),その食物を供給する環境が生息の有無 に影響すると考えられる.千葉県北部では特にアカマツ・ クロマツの種子が主要な食物となっており(矢竹 2010), 県北部での生息衰退の要因の 1 つとしてマツ林の減少が 考えられる.林業統計による県内の森林・マツ林・広葉 樹林面積の変遷を県北部および南部別にまとめると, 1985 年から 2009 年で森林面積は北部で約 10%,南部で 約 4%の減少となるが,マツ林の減少は北部・南部とも 約 80 ~90%となっている(図 2).特に 1990 年から 2001 年のマツ林の減少率は 70 ~ 80%と著しい.南部は北部に 比べて森林面積は多いものの,マツ林の減少は北部より も早くから進行している.松原(1973,1979)によれば, 1970 年初めには千葉県の中部および南部からマツ枯れ 被害が報告され,1971 年当時ではその北限は市原市と一 宮町を結ぶ線(本調査の県南北境界よりやや南寄り)と されており,その後 1978 年までには北部にも拡大した. 矢竹ほか(2011)は北部でのリスの生息衰退について, 1985 年から継続調査していた 5 つの生息地点のうち 4 地 点が 2000 年には非生息になったこと,1990 年は生息す る市町村数が 33 市町村であったものが,2001 年には 15 市町村とおよそ半減したことを報告した.そして,この 年代間のマツ林面積の減少率は平均で 70 ~90%(千葉・ 東葛などの 6 地域)であったことから,マツ林の著しい 減少がその要因となっていると指摘した.一方で広葉樹 林は,千葉県北部では 1990 年以降マツ林の減少と入れ替 わるように増加が見られているが,南部では 1985 年から マツ林面積が少なく,既にこの当時から面積が維持され ている(図 2).林業統計では広葉樹林は常緑樹と落葉樹 が一括して扱われているため,その内訳については不明 であることから,植生図から集計を行った(表 2).なお, 植生図の植生凡例は群集や群落に細分されているので,

(4)

表 1.千葉県南部におけるニホンリスの生息確認状況 通番 3 次メッシュコード1) 調査日 場  所2) 生息確認3) 生息確認方法 備  考4) マツ食痕 その他 変遷調査地点(57 メッシュ)5) 1 534011 01 2011.8.30 市原市土宇 ● ○ 2 534011 02 2011.8.30 市原市牛久 ● ○ 3 534011 70 2011.8.30 市原市山倉 × 4 534011 71 2011.8.30 市原市山倉 × 5 534011 80 2011.8.30 市原市山田橋 × 6 534000 08 2011.9.11 木更津市真理谷・泉谷 ● ○ 7 534000 19 2011.9.11 木更津市真理谷 ● ○ 8 534000 77 2011.9.11 市原市寺谷 ● ○ ○ オニグルミ食痕 9 534001 11 2011.9.4 市原市養老 × 10 534001 18 2011.9.11 長南町山内 ● ○ 11 534001 23 2011.9.4 市原市大和田 × 12 534001 29 2011.9.11 長南町佐坪 × 13 534001 42 2011.9.4 市原市岩 ● ○ 14 534001 92 2011.9.4 市原市奉免 ● ○ 15 534002 10 2011.10.10 長南町市野々 ● ○ 16 523977 09 2011.10.2 君津市西粟倉 ● ○ 17 524070 29 2011.9.18 君津市長者 ― ― ― 災害通行止めのため未調査 18 524070 79 2011.9.18 君津市万田野 ● ○ テーダマツ Pinus taeda 19 524071 00 2011.2.27 市原市梅ヶ瀬 ● ○ ○ スギ剥皮 20 524071 04 2011.9.18 大多喜町板谷 ● ○ 21 524071 10 2011.2.27 市原市石塚 ● ○ 22 524071 20 2011.2.27 市原市石塚 ● ○ 23 524071 21 2011.9.18 市原市大久保 ● ○ 24 524071 54 2011.9.18 市原市月出 ● ○ 25 524071 60 2011.2.27 市原市柿木台 ● ○ 26 524071 84 2011.9.18 市原市古敷谷 ● ○ 27 524072 03 2011.12.9 いすみ市(夷隅町)大野 ● ○ マツ本数→ 0 本,オニグルミ食痕 28 524072 61 2011.10.10 大多喜町下大多喜 ● ○ 29 523967 78 2011.10.2 富津市田倉 ● ○ 30 524060 21 2011.10.2 君津市豊英 ● ○ 31 524060 40 2011.10.2 君津市怒田沢 ● ○ 32 524061 18 2011.9.25 勝浦市大森 ● ○ 33 524061 28 2011.9.25 大多喜町平沢 ● ○ 34 524061 38 2011.9.25 大多喜町平沢 × 35 524061 81 2011.9.25 市原市五郎津 × 36 524061 92 2011.9.25 市原市戸面 ● ○ 37 524062 39 2011.12.10 いすみ市(大原町)久保 × マツ本数→ 0 本 38 524062 66 2011.12.9 いすみ市(大原町)名熊 ● ○ 39 524062 76 2011.12.9 いすみ市(大原町)名熊 ● ○ 40 524062 89 2011.12.10 いすみ市(大原町)釈迦谷 ● ○ 41 524062 98 2011.12.9 いすみ市(大原町)沢部 × 土採取で調査林が消失 42 524062 99 2011.12.9 いすみ市(大原町)新田 × 43 524063 20 2011.12.10 御宿町岩和田 × 44 524063 30 2011.12.10 いすみ市(大原町)小池 ● ○ 45 524063 31 2011.12.10 いすみ市(大原町)岩舟 ● ○ 46 524063 41 2011.12.10 いすみ市(大原町)中ノ谷 × マツ本数→ 0 本 47 524063 50 2011.12.10 いすみ市(大原町)小沢 × マツ本数→ 0 本 48 523956 77 2010.7.3 鋸南町元名 ● ○ *マツ本数 9 本→ 2 本 49 523957 36 2010.7.3 南房総市(富山町)平塚 ● ○ * 50 524050 78 2010.7.4 鴨川市切通 ● ○ * 51 524051 60 2010.7.4 鴨川市袋倉 ● ○ *スギ剥皮,マツ本数→ 0 本

(5)

例えば複数のコナラ群集をコナラ Quercus serrata 林とし てまとめたほか,リスの生息環境とはならない市街地や 草本群落等は一括するなど植生タイプとして統合した. その結果,過去・現在ともにコナラ林,スギ・ヒノキ Chamaecyparis obtusa・サワラ C. pisifera 植林(以下,スギ 植林),およびシイ Castanopsis sp.・カシ Quercus sp. 二次 林の順で,この 3 タイプが南部の主要な森林となってい た.過去から現在への変遷を見ると,コナラ林とスギ植 林はメッシュ数が減少しているのに対して,シイ・カシ 二次林は約 1.6 倍に増加している. 環境庁(1987)によると,シイ・カシ二次林の増加は, かつての農用林,薪炭林としての利用が激減している二 次林が放置されて遷移が進行しており,コナラ林からシ イ・カシ萌芽林(その後の統一凡例ではシイ・カシ二次 林)へ移行し始めていると報告されている.また,マツ 林の枯損跡の林冠に常緑広葉樹が優占する場合もあり, シイ・カシ萌芽林の範疇として扱えることや,これらの シイ・カシ萌芽林の分布は県南東部から南部に分布して いることが報告されている(環境庁 1987).南部は前述 のようなマツ林の乏しい環境の中で,現状では北部に比 べてリスの生息が維持されているが,今後も維持される のかは不明である. マツ林に代わる環境として,南部の主要な 3 つの森林 について検討したい.これまでの北部での報告(矢竹ほ 56 523937 65 2010.7.4 南房総市(千倉町)川戸 × マツ本数 8 本→ 2 本 57 523926 96 2010.7.4 館山市布良 × *マツ本数 50 本→ 10 本 生息確認地点数 36 メッシュ 新規調査地点(20 メッシュ) 1 534010 08 2011.9.11 市原市上高根 ● ○ 2 534000 87 2011.9.11 市原市上高根 ● ○ 3 523977 08 2011.10.2 君津市西粟倉 ● ○ 4 523977 08 2011.10.2 君津市鹿野山 ● ○ 目視,モミ Abies firma 球果食痕 5 524060 35 2010.7.3 君津市笹 ● ○ * 6 524061 91 2011.9.25 市原市五郎津 ● ○ 7 524062 14 2010.7.10 勝浦市平田 ● ○ * 8 524062 79 2011.12.9 いすみ市(大原町)釈迦谷 ● ○ 9 524052 61 2010.7.10 勝浦市守谷 × * 10 524052 72 2010.7.10 勝浦市鵜原 ● ○ * 11 523946 79 2010.7.1 南房総市(富浦町)大津 ● ○ * 12 523947 73 2010.7.1 南房総市(三芳村)増間 ● ○ *マツ 2 本 13 523947 80 2010.7.1 南房総市(富浦町)大津 ● ○ *マツ 20 本 14 523936 7 2010.7.4 館山市大神宮 ● ○ *聞取り(観察会による目視) 15 523936 35 2010.7.4 館山市坂井 ● ○ * 16 523937 20 2010.7.10 館山市神余畑 × * 17 523937 36 2010.7.10 南房総市(千倉町)千倉 × * 18 523937 55 2010.7.10 南房総市(千倉町)北朝夷 × * 19 523937 82 2010.7.10 館山市山本 ● ○ * 20 523927 71 2010.7.10 南房総市(白浜町)原田 × * 生息確認地点数 15 メッシュ 1)環境庁(1977)による. 2)括弧内は旧市町村名. 3)●:生息確認,×:生息確認できず,―:未調査. 4)*:矢竹ほか(2011)より引用.マツ本数:前回調査(矢竹ほか 2005)対象の本数→本調査での本数. 5)矢竹ほか(2005)における生息確認メッシュ.

(6)

か 1999;矢竹 2010)から,コナラ林は営巣や採食環境等 として利用がほとんどないこと,スギ植林は密な林冠を 持ち避難・休息・営巣環境となり,その樹皮は巣材とし て利用されるが,採食環境としてはあまり有効ではない ことが知られている.一方,シイ・カシ二次林の密な林 冠はスギ植林と同様の効果が期待されるほか,食性の視 点からはシイ・カシ類の堅果のリスによる採食例が報告 されている.例えば,君津市の三石山郷土環境保全地域 におけるアカガシ Q. acuta・スダジイ Castanopsis sieboldi 堅果の採食の直接観察(矢竹 1986)ほか,矢竹(2010) や田村(2011)の給餌実験の報告である.南部の主要な 森林のうちリスの生息環境としての有効性が示唆され, 増加傾向にあるシイ・カシ二次林がマツ林と代わり得る のかなど,今後も生息の変遷とともに,南部におけるリ 図 2.千葉県県北・南部における森林面積・マツ林面積・広葉樹林面積の変遷. 表 2.千葉県南部における植生タイプ別メッシュ数1) 植生タイプ2) 1979・’83 年3) 2005・’084) メッシュ数 森林メッシュにおける割合(%) メッシュ数 森林メッシュにおける割合(%) モミ林 10 1.0 5 0.6 スダジイ林 5 0.5 1 0.1 シイ・カシ二次林 158 15.8 252 27.8 マテバシイ Lithocarpus edulis 植林 3 0.3 5 0.6 コナラ林 512 51.3 426 47.1 マツ林 28 2.8 7 0.8 スギ・ヒノキ・サワラ植林 283 28.3 209 23.1 森林小計 999 100.0 905 100.0 水田 201 ― 243 ― 市街地,畑地その他 240 ― 298 ― 合  計 1,440 ― 1,446 ― 1)3 次メッシュ(約 1×1 km)数. 2)現存植生図の凡例を適宜統合した. 3)1/5 万現存植生図(環境庁 1981・1984)木更津,姉崎,富津,大多喜,上総大原から計数し合計した(矢竹 1987 から作成). 4)1/2.5 万現存植生図.環境省ホームページ第 6・7 回自然環境保全基礎調査情報提供ホームページの奈良輪,大堀,木更津,姉崎,海 士有木,上総横田,鶴舞,富津,鹿野山,上総湊,鬼泪山,久留里,大多喜,坂畑,上総中野,国吉,上総長者,御宿,上総大原か ら計数し合計した.なお,メッシュ数の合計は埋立地の増加により異なっている.

(7)

謝     辞 本調査の一部は千葉県のレッドデータブック改訂に係 る基礎調査の一環で実施したものであり,調査の機会と ご指導を頂いた千葉県立中央博物館の落合啓二博士,千 葉県環境生活部生物多様性センターの浅田正彦博士に感 謝申し上げる.また,調査メッシュの選定において研究 成果を提供して頂いた東京農工大学大学院農学府自然環 境保全学専攻野生動物保護学研究室の松山奈央女史(現・ 千葉県立長狭高校),現地調査等に協力頂いた秋田 毅 氏・古川 淳氏(株式会社セレス),矢竹晴子女史に感謝 申し上げる. 引 用 文 献 千葉県農林部林務課.1986.昭和 60 年度千葉県林業統計書. 千葉県,千葉市,181 pp. 千葉県農林部林務課.1991.平成 2 年度千葉県林業統計書. 千葉県,千葉市,177 pp. 千葉県農林水産部林務課.2002.平成13年度千葉県林業統計書. 千葉県,千葉市,197 pp. 千葉県農林水産部森林課.2010.平成21年度千葉県森林林業統 計書.千葉県,千葉市,197 pp. 千葉県レッドデータブック改訂委員会,編.2011.千葉県の保 護上重要な野生生物―千葉県レッドブック―動物編 2011 年改訂版.千葉県環境生活部自然保護課,千葉市,538 pp. 五十嵐和廣.1999.千葉県の哺乳類.千葉県動物誌(千葉県生 物学会,編著),pp. 1108–1118.文一総合出版,東京. 環境庁.1977.都道府県別メッシュマップ12千葉県.環境庁自 然保護局計画課自然環境調査室,東京,87 pp. 環境庁.1981.第2回自然環境保全基礎調査(植生調査)5万分 の1現存植生図(千葉県):富津・大多喜・上総大原.環境 庁,東京,各1 pp. 環境庁.1984.第3回自然環境保全基礎調査(植生調査)5万分 の1 現存植生図(千葉県):木更津・姉崎.環境庁,東京, 松 原 功.1973.千 葉 県 に お け る マ ツ ノ ザ イ セ ン チ ュ ウ (Bursaphelenchus lignicolus Mamiya et Kiyohara)の分布につ

いて.千葉県林業試験場報告 7: 49–52. 松原 功.1979.その後のマツノザイセンチュウの分布につい て(1975~1978).千葉県林業試験場報告 13: 3–5. 松山奈央・梶 光一.2011.千葉県北部におけるゴルフ場の野 生生物保全の役割―ニホンリスを事例として.ランドス ケープ研究 75: 36–39. 落合啓二・繁田真由美.2010.千葉県にムササビは生息してい るか?千葉中央博自然誌研究報告 11: 37–49. 田村典子.2000.都市近郊における森林の断片化とリスの生息 分布.森林防疫 49: 2–6. 田村典子.2011.リスの生態学.東京大学出版会,東京,211 pp. 田村典子・松尾龍平・田中俊夫・片岡友美・広瀬南斗・冨士本 八央・日置佳之.2007.中国地方におけるニホンリスの生 息状況.哺乳類科学 47: 231–237. 安田雅俊.2007.絶滅のおそれのある九州のニホンリス,ニホ ンモモンガ,およびムササビ―過去の生息記録と現状およ び課題―.哺乳類科学 47: 195–206. 矢竹一穂.1986.三石山郷土環境保全地域周辺の哺乳類相.1986 年千葉県自然環境保全地域変遷調査報告書(千葉県環境生 活部自然保護課,編),pp. 89–98.千葉県環境生活部自然保 護課,千葉市. 矢竹一穂.1987.都市近郊におけるニホンリスの生息環境.千 葉大学大学院園芸学研究科昭和61 年度修士論文.千葉大 学,松戸,60 pp. 矢竹一穂.2002.リス科 ニホンリス.千葉県の自然誌本編6 千葉県の動物1 陸と淡水の動物 県史シリーズ45((財) 千葉県史料研究財団,編),pp. 899–900.千葉県史料研究財 団,千葉. 矢竹一穂.2010. 行動調査によるニホンリス(Sciurus lis)の生 態と生息環境.千葉大学学位論文.千葉大学,松戸市,80 pp. 矢竹一穂・秋田 毅・阿部 學.1999.人工放獣されたニホン リスの空間利用.哺乳類科学 39: 9–22. 矢竹一穂・秋田 毅・古川 淳.2011.千葉県におけるニホン リス(Sciurus lis)の生息状況の変遷.千葉中央博自然誌研 究報告 11: 19–30. 矢竹一穂・秋田 毅・古川 淳・浅田正彦.2005.千葉県にお けるニホンリス(Sciurus lis)の分布状況.千葉中央博自然 誌研究報告 8: 41–48.

(8)

ABSTRACT

Distributional change of the Japanese squirrel (Sciurus lis) in the southern part of Chiba Prefecture, Central Japan

Hitoho Yatake

CERES, Inc. (Civil Engineering Research & Environmental Studies), 1646 Abiko, Abiko, Chiba 270-1166, Japan E-mail: [email protected]

This study reports on the distributional changes of the Japanese squirrel, Sciurus lis, in the southern part of Chiba Prefecture, investigated during the years 2009–2011. The investigated areas correspond to those surveyed in 2001–2003 (previous survey) with a minimum survey unit of 1×1 km grid-square. The presence of the squirrel was confirmed mainly based on bite marks on pine cones. The occurrence of the animal has been recorded in 36 of 57 sites (63 percent) which were investigated in the previous sur-vey, but newly recorded from 15 sites. In the previous study, declines of squirrels in the northern part was emphasized, but also, in this report we show a similar status in the south. In the previous study, pine forest area decreased in the north and this could be a factor for the decline of species. On the other hand, although the southern part has much forested area compared with the north and the continuity is also maintained, the decline of pine forest has been advancing longer than in the north. It is necessary to clarify the ecology of the squirrel in the southern part, in which there are few pine forests and evergreen broad-leaved tree forest dominates.

Key words: Japanese squirrel, Sciurus lis, distributional change, southern part of Chiba Prefecture 受付日:2012 年 7 月 25 日,受理日:2012 年 10 月 9 日

参照

関連したドキュメント

※1 13市町村とは、飯舘村,いわき市,大熊町,葛尾村, 川内村,川俣町,田村市,富岡町,浪江町,楢葉町, 広野町, 双葉町, 南相馬市.

となってしまうが故に︑

図表の記載にあたっては、調査票の選択肢の文言を一部省略している場合がある。省略して いない選択肢は、241 ページからの「第 3

大村 その場合に、なぜ成り立たなくなったのか ということ、つまりあの図式でいうと基本的には S1 という 場

自分ではおかしいと思って も、「自分の体は汚れてい るのではないか」「ひどい ことを周りの人にしたので

(79) 不当廉売された調査対象貨物の輸入の事実の有無を調査するための調査対象貨物と比較す

図および図は本学で運用中の LMS「LUNA」に iPad 版からアクセスしたものである。こ こで示した図からわかるように iPad 版から LUNA にアクセスした画面の「見た目」や使い勝手

① 農林水産業:各種の農林水産統計から、新潟県と本市(2000 年は合併前のため 10 市町 村)の 168