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第 回 資 金 調 達 図 1 米 国 における 地 方 債 発 行 額 ( 州 別 2010 年 分 ) 州 合 計 一 般 財 源 保 証 債 レベニュー 債 Alabama 4, , ,781.8 Alaska Arizona 6,2

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(1)

ファイナンスの基本概念と

PPP

前回のコラムでは 、PPP の様々な 手法について体系的に整理しなが ら 、その特徴や効果 ,課題などに ついての考察を行った。今回は 、 PPP の資金調達(ファイナンス)面 に着目し 、実際に利用されることの 多いストラクチャーと、その特徴な どについて述べていきたいと思う。 まず、個別のストラクチャーにつ いての考察を行う前に 、ファイナン スの基本概念を整理しておく。一 般的に 、企業や法人が資金調達を する際 、返済原資をどこに求めるか によって、その調達の性質は大きく 変わってくる。より具体的には 、返 済原資を資金調達者の全ての資産 まで含めた信用力に求めるか 、特 定の資産のみに求めるかにより、債 権者から見た信用リスクや 、資金調 達者がデフォルトした際に想定する シナリオなどが 、大きく変わること になる。返済原資を全ての資産ま で含めた信用力に求める資金調達 の形態を「フルリコース・ファイナン ス(または 、コーポレート・ファイナン ス )」、特定の資産のみに求める形 態を「ノンリコース・ファイナンス(ま たは 、アセット・ファイナンス)」と 呼んでいる。 フルリコース・ファイナンスは 、直 訳すると『完全に償還請求される資 金調達 』、すなわち『償還請求に制 限のない資金調達 』となる。つまり、 自身の信用力やバランスシートに基 づいて資金調達を行うということで あり、官の世界では 、国債 ,地方

第 3 回

PPPにおける資金調達ストラクチャー

債や通常の銀行借入などがこれに 当たる。官によるフルリコース・ファ イナンスの最大のメリットは 、やは り、その高い信用力を生かした調達 コスト(借入金利など )の低さと言 えよう。一方 、デメリットは 、責任 範囲に制限がないことから 、デフォ ルトしない限り、その債務を弁済し 続けなければならない点にあるだろ う。つまり、特定の事業だけが失 敗した場合でも 、その債務を弁済 する為には 、その他の収入(歳入 ) や保有資産の活用などを検討しな ければならなくなるのである。また 逆に 、特定の事業だけが順調に推 移している場合でも 、全体が 、例え ば破綻の危機に陥るようなことにな れば 、その順調な事業の債務も 、 全体の悪い信用力にリンクする可能 性が高くなるのである。

中内 康浩

みずほ証券株式会社 ストラテジックソリューション部 ヴァイスプレジデント

福島 隆則

みずほ証券株式会社 ストラテジックソリューション部 副部長

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一方 、ノンリコース・ファイナンス は 、直訳すると『償還請求権のない 資金調達 』となり、すなわち 、返 済原資を限定し 、特定の資産または その資産が生み出すキャッシュフ ローに基づいて行う資金調達と定義 できる。このようなノンリコース・ファ イナンスのメリットとしては 、特定さ れた返済原資の信用力が債務者の それより高い場合に 、調達コストを その返済原資の信用力に見合う水 準にまで引き下げられる点などが挙 げられよう。この点は 、債権者の視 点で見た場合でも 、返済原資が限 定される(=リスクの範囲が限定さ れる)ことで 、不確定要因が少なく なるというメリットにつながるもので ある。しかし 、このことはそのまま、 図 1 米国における地方債発行額(州別、2010 年分) 高い信用力を確保できる返済原資 (特定の事業や資産など )が見出せ なければ 、フルリコース・ファイナン スと比べて、むしろ高い調達コスト を負担しなければならないというデ メリットにもなり得ることを意味して いる。 また 、ノンリコース・ファイナンス は 、投資家との接点をローンや証券 とすることで 、ノンリコース・ローン, アセ ットバック・ロ ーン(ABL: Asset Backed Loan),資産担保証券 (ABS:Asset Backed Securities) など、様々な形をとることができる。 さらに 、返済原資となる資産をプロ ジェクトや事業とすることで 、プロ ジェクト・ファイナンスや事業証券化 (WBS:Whole Business Securitization) などの手法をとることも 、一般的に なってきている。 以上のようなファイナンスの基本 概念を念頭に 、我が国自治体の財 政状況を鑑みた場合 、PPP におけ る資金調達は 、ノンリコース・ファイ ナンスをベースに考えていかざるを 得ないのではないかと思われる。そ こで以下では 、PPP において多く利 用されるノンリコース型の資金調達 手法について具体的に取り上げ、そ の特徴や効果 ,課題などを考察し ていくこととする。

レベニュー債

レベニュー債とは 、米国などで発 行されている地方債の一種であり、 合計 一般財源保証債 レベニュー債 Alabama 4,093.2 1,311.4 2,781.8 Alaska 942.6 562.3 380.3 Arizona 6,266.6 938.1 5,328.5 Arkansas 2,439.4 1,409.5 1,029.9 California 61,012.1 19,552.1 41,460.0 Colorado 7,386.9 2,045.3 5,341.6 Connecticut 6,116.9 3,144.0 2,972.9 D. of Columbia 3,744.4 348.3 3,396.1 Delaware 1,576.4 735.8 840.6 Florida 19,817.3 1,691.9 18,125.4 Georgia 9,607.7 2,189.1 7,418.6 Guam 391.1 391.1 Hawaii 2,930.5 1,323.1 1,607.4 Idaho 764.5 176.3 588.2 Illinois 26,040.6 15,902.9 10,137.7 Indiana 5,056.3 505.5 4,550.8 Iowa 3,132.5 1,266.5 1,866.0 Kansas 3,428.3 1,422.4 2,005.9 Kentucky 5,430.2 468.8 4,961.4 Louisiana 6,540.8 761.8 5,779.0 Maine 958.9 271.1 687.8 Maryland 5,733.8 3,005.4 2,728.4 Massachusetts 13,495.7 4,209.8 9,285.9 Michigan 8,601.2 3,420.3 5,180.9 Minnesota 7,539.5 4,524.9 3,014.6 Mississippi 3,090.3 909.0 2,181.3 Missouri 7,514.2 1,620.9 5,893.3 合計 一般財源保証債 レベニュー債 Montana 699.6 148.2 551.4 Nebraska 2,964.6 1,161.3 1,803.3 Nevada 3,795.9 1,124.4 2,671.5 New Hampshire 1,146.5 819.4 327.1 New Jersey 14,819.1 4,206.1 10,613.0 New Mexico 2,893.3 498.8 2,394.5 New York 40,479.8 11,186.6 29,293.2 North Carolina 7,832.6 3,255.5 4,577.1 North Dakota 567.6 220.6 347.0 Ohio 16,018.5 4,565.4 11,453.1 Oklahoma 3,425.0 922.6 2,502.4 Oregon 3,813.9 1,081.3 2,732.6 Pennsylvania 18,933.2 8,262.7 10,670.5 Puerto Rico 9,512.5 9,512.5 Rhode Island 807.3 306.7 500.6 South Carolina 5,147.0 1,914.2 3,232.8 South Dakota 637.2 242.3 394.9 Tennessee 6,023.0 2,893.4 3,129.6 Texas 37,056.0 17,001.2 20,054.8 Utah 3,618.9 1,562.0 2,056.9 Vermont 636.7 300.9 335.8 Virgin Islands 484.4 484.4 Virginia 8,576.4 2,347.2 6,229.2 Washington 12,403.5 6,213.4 6,190.1 West Virginia 1,005.3 143.4 861.9 Wisconsin 5,778.7 3,598.0 2,180.7 Wyoming 358.6 49.1 309.5 単位:百万 USドル

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その発行体が行う事業やプロジェク トから生じるキャッシュフローのみ が元利金の償還原資となる債券のこ とである。例えば 、下水処理場を 建設する際にレベニュー債を発行す れば 、その償還原資を下水処理料 金とすることができる。こうしたレ ベニュー債の償還原資となるべき事 業収入は 、債券発行時に明確に定 義され 、州法などで管理される各種 基金(Fund)により、一般会計や他 の事業などと会計上も区分される。 このような仕組みにより、レベニュー 債は 、一般会計の債務負担とはなら ず、さらに 、通常の一般財源保証 債に比べて緩和的な制度も手伝っ て、地方政府による積極的な活用が なされてきた。一方で、投資家にとっ てもレベニュー債は 、米国における 地方債免税措置のメリットを享受で きる個人や年金基金を中心に 、幅広 く認知された投資商品となっている ようである。 ちなみに 、 米国におけるレベ ニュー債の最初の事例は 、1897 年 ワシントン州スポケーンの水道施設 建設事業に関するものであったが 、 広く活用されるようになるのは 1960 年代後半以降で 、ベトナム戦争の影 響などで国からの補助金や助成金 が減少する中 、地方政府が独自に 財源を確保する必要が強まった為と 言われている。一方 、地方債制度 が機能する我が国の制度下におい ては 、米国と同様の仕組みが存在 しないこともあり、レベニュー債の 発行実績は未だゼロ件である注 1 官の視点から見たレベニュー債の メリットとしては 、事業リスクを投資 家に移転できることや 、資金調達手 段の多様化が図れることなどが挙げ られる。我が国の現状では 、仮に レベニュー債が発行できたとして も 、その発行コストは地方債のそれ より高くなるケースがほとんどであろ うが 、それでもこうしたメリットを考 えれば 、レベニュー債の発行を検 討する自治体が多く現れても 、何ら 不思議ではないと言えるだろう。 一方 、レベニュー債の投資家は 、 対象となる事業リスクを分析して投 資判断を行うことになるが 、通常の 地方債とは異なるリスク・プロファイ ルを持つ新たな運用手段の出現は 、 少なくとも朗報と言えるのではない だろうか。米国では 、モノラインと 呼ばれる保証会社が 、レベニュー 債に対する保証を積極的に付与し 、 投資家のリスク評価・負担を補完し たことで 、レベニュー債市場が飛躍 的に発展してきたと言われている。 我が国においても 、今後は 、投資 家によるリスク評価を容易にする為 の情報開示の充実や、それをサポー トする制度設計・整備などが 、重要 な課題になってくると言えるだろう。 最後に 、レベニュー債は 、納税 者の視点から見た場合でも 、市場 原理に基づいたモニタリングにより 官の“無駄”が抑制されるといった、 事業効率上のメリットが期待されて いる。

TIF 債

TIF 債は、正確にはTax Increment Financing 債券といい 、『将来増加 することが見込まれる税収を財源と する債券』を意味する。この債券は、 図 2 レベニュー債の仕組み 注 1 我が国でも、以前、青森県の有料道路において、レベニュー債の発行が検討されているという報道(2010年6月9日付け日本経済新聞朝刊)が話題となっ たが、まだ実現はしていないようである。一方で、茨城県の廃棄物処理事業において、レベニュー信託というものが組成されているが、これは厳密には、 後述する「将来債権の証券化」に分類されるものである。 官 (発行体) 投資家 利用料金 レベニュー債発行 事業 (別勘定) 利用者 官 PPP事業など Net Revenue (料金収入ー運営コスト) 契約に定められた条件 に従った現金分配 償還 利益積立 予備 利払い・償還

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米国の自治体が民間デベロッパーな どとともに 、官民連携(PPP)型の 都市開発事業を行う際に用いること が多く、自治体の設定した増加税収 期待区域(Tax Increment District) を原資に開発を進め 、その開発で上 昇した地価が固定資産税も増やすこ とで、償還財源を確保しようとする 資金調達手法である。対象となる 増加税収期待区域の定義は州によっ て異なるが 、最も事例の多い州の1 つであるイリノイ州では 、“荒廃した (またはその恐れのある)区域 ”と定 めている。自治体は実際に区域を 設定すると、再開発計画と予算を策 定し 、当該区域の固定資産税課税 標準を確定する。以降 、地価が上 昇して固定資産税が増加すると、そ の増加分を別会計に振り替え 、その 区域の TIF 債の償還や再開発に活 用していくこととなる。 TIF 債を発行するメリットは 、新た な課税負担を発生させることなく、資 金調達が可能となる点に尽きる注 2 また 、デベロッパーなども 、『TIF 債 は 、見込んだ税収の増加があれば 償還される比較的安全な債券 』とい う見方から 、より低利で長期の調達 が可能な手段として、好んで活用し ているようである。 一方で 、TIF 債の発行自体は通 常の増税と異なり、新たな財源を創 り出しているわけではなく、単に(将 来増加すると見込まれる)税収の先 取りに過ぎないことに留意が必要で あろう。また 、増加税収期待区域 でその期待どおりに増えた税収は 、 当該区域の再開発や TIF 債の償還 等に使われる一方で、区域外の固定 資産税は一般会計に繰り入れられ 、 様々な用途に幅広く使われることか ら 、それぞれの住民の間に不公平 感が生じる可能性があることにも留 意が必要となろう。

その他の資金調達手法

~将来債権の証券化 ,プロジェ

クト・ボンド ,

インフラ・ファンド~

最後に 、レベニュー債 ,TIF 債 以外の PPP における資金調達手法 として、将来債権の証券化 ,プロ ジェクト・ボンド,インフラ・ファン ドを取り上げる。 まず、将来債権の証券化とは 、将 来の一定期間にわたって発生する債 権を裏付けとした証券を発行し 、資 金調達を行うことと定義できる注 3 そもそも 、契約時点において未発生 の権利を取引対象とすることに違和 感を覚えられるかもしれないが 、公 序良俗に反しない限り注 4、将来債権 の譲渡は原則的に有効で注 5、我が 国でも既に有力な資金調達手法の1 つとなっている。 将来債権を活用することのメリッ トは 、直接的には 、将来見込まれ 図 3 TIF の仕組み 注 2 住民への課税負担なしに公共事業を実行できることの政治的効果も、決して少なくないと言えるだろう。 注 3 資金調達の形態を証券発行にこだわらない場合には、“証券化”ではなく、“流動化”と称した方がより一般的かもしれない。 注 4 平成11年1月29日最高裁判所第三小法廷判決 注 5 平成19年2月15日最高裁判所第一小法廷判決 Tax Revenue⇒一般会計へ (従来の税収) 税収 TIF 設定時点に おける対象地域 からの税収 TIF地域設定時 TIF実施期間 対象地域における 開発に伴う税収増加分 TIF 実施期間中 対象地域内で活用 (元利金償還等に充当) 時間

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る収入を契約時点で実現できること にあるが 、同時に 、財務指標の改 善が見込めたり、手にした現金を新 たな投資に振り向けたりすることが できるなど、副次的な効果も相応に 大きいものと言える。また 、対象期 間によっては調達額を大きくすること もでき、資金は必要なものの、アセッ ト・ファイナンスに活用できる資産 が十分にない主体にとっては 、非常 に魅力的な調達手法となる可能性が ある。 しかし一方で 、将来債権の証券 化は(クレジットカード債権の証券 化など、一部の既に一般化している 商品を除いて )個別性が非常に強 く、流動性が限られる点や 、その調 達コストが 、調達者自身の信用によ るものより低くなりにくい点にも留意 が必要と言えよう。ただ 、調達コス トについては 、仮に調達者がデフォ ルトしても事業の継続が可能で 、将 来債権の発生・回収に影響しないこ とが 、法制度 ,ストラクチャー,デ フォルト後の事業継続方針などから 担保されるのであれば 、(調達者の 信用力ではなく)将来債権自体の 信用力として評価することができる かもしれない。 次に 、プロジェクト・ボンドとは 、 プロジェクト・ファイナンスのうち 、 その資金調達を目的として発行され る債券のことと定義できる。また 、 プロジェクト・ファイナンスとは 、一 般的に 、特定のプロジェクト(事業 ) に対するファイナンスのことを指し 、 そのファイナンスの利払い及び返済 原資を、当該プロジェクト(事業 ) から生み出されるキャッシュフロー /収益に限定し 、また 、そのファイ ナンスの担保を、専ら当該プロジェ クトの資産に依拠して行う金融手法 と解されている注 6。こうしたプロジェ クト・ファイナンスのうち 、プロジェ クト・ボンドの占める割合は 10%未 満であるが 、北米や豪州に限れば 3 割以上となっており注 7、一般的な 資金調達手法の1つになっていると 言うことができよう。 プロジェクト・ボンドのメリットは 、 銀行以外の投資家からの長期・固定 (金利 )での調達を可能にする点と 言える。恒常的にプロジェクト・ファ イナンスに取り組める金融機関は限 られることから 、資本市場を通した 調達先の多様化には 、非常に大き なメリットがあると言えるだろう。 一方 、デメリットとしては 、条件 面などでの柔軟性に欠ける点が挙げ られる。不特定多数の投資家と一 度に向き合うことから 、都度 、関係 者の了承が必要となるような条件変 更や 、一部の投資家の選好に合わ せた商品設計を行うことは 、プロ ジェクト・ボンドには不向きと言える。 また 、市場を直接相手にすることか ら 、市場環境の影響を受けやすい 点にも留意が必要と言えよう。 最後に 、これまでのデット性資金 による調達手法とは異なるアプロー チとして、インフラ・ファンドによる 資金調達を取り上げてみたい。イン フラ・ファンドとは 、インフラストラ クチャーとファンドの合成語であり、 インフラストラクチャーに関連する 事業や資産に投資するファンドのこ とである。ただ、一口にインフラ・ファ 図 4 将来債権の証券化 注 6 小原克馬、1997年『プロジェクト・ファイナンス』 注 7

January 13, 2011, “PROJECT FINANCE INTERNATIONAL”

組成費用 債権2 債権3 債権4 債権1 割引額 収入 −支出 債権2 債権3 債権4 債権1 T年 T+1年 T+2年 T+3年 T+4年 B/Sで認識済みの債権 (既に発生している債権) (事業の存続如何によっては消滅する可能性がある)B/Sでは認識されない将来発生する債権 債権0

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ンドと言っても 、投資先の違いなど により、様々なパターンのものがあ ることに留意が必要である。 図 5では 、インフラ・ファンドを、 ①~③の主な 3 つのパターンに分類 している。どのパターンにおいても、 ファンドの投資先は有価証券(株式 など )であり、施設や設備などの実 物資産に投資することは基本的に想 定していない。①のパターンは 、個 別のプロジェクトにフォーカスして投 資し 、場合によっては事業運営にま で入り込んで 、自身の持分価値を上 げ、上場や持分譲渡などを通して収 益を実現していくものである。②の パターンは 、個別のプロジェクトとい うよりむしろ 、インフラに関わる企 業に分散投資していくことで 、間接 的にその事業からの収益を実現して いくものである(投資信託として販 売されているインフラ・ファンドは 、 多くがこの形態となっている)。従っ て、①のような事業運営にまで入り 込むことは基本的に想定していな い。③のパターンは 、①や②のよう なファンドに対して分散投資するファ ンドであり(ファンド・オブ・ファンズ と呼ばれている)、②と同様 、プロ ジェクトや事業に直接関わることは 想定していない。 こうしたインフラ・ファンドによる 資金調達の特徴は 、提供される資 金が 、(多くの場合 )エクィティ性の資 金になることと言えよう(もちろん 、 デット型のインフラ・ファンドも存在 し 、特に我が国の投資家には選好 されているようではあるが)。つまり、 弁済期限や資金使途の制限がなく、 財務指標の改善も期待でき 、支払 う配当も業績連動となるような資金 調達ということである。反面 、対象 となる事業やプロジェクトに対して、 より高い収益性・効率性が求められ る結果 、公益性・社会性が疎かに される懸念があることに留意が必要 であろう。

まとめに代えて

~リスク移転とPPP の課題~

以上 、PPP における様々な資金 調達手法について、その特徴や効 果 ,課題などを見てきたが 、最後に、 まとめに代えて、こうした PPP にお ける資金調達を考える際に重要とな る 、官と民の間のリスク移転という 問題について述べてみたいと思う。 全国の PFI において、官と民の コスト比較を行ったところ 、運営管 理費が直営 100 に対して 52.7 に 、 同様に施設建設費も75.8 に削減で きたという調査報告がある。さらに、 指定管理者制度(50.4)やごみ収集 (35.0)など、より大きい削減率を達成 したケースもあったようである注 8 しかし 、実際の利用者アンケートを 見ると、利用メニューや利用時間の 拡充などを歓迎する意見がある一 方 、官と民でそれほどサービスの違 いを感じないといった意見も少なく ない。 官民連携のあるべき姿を考える 場合 、こうしたコスト削減やサービ スの充実だけでなく、リスク移転と いう視点で見ることも重要であろう。 リスクを官から民に適切に移転する ということは 、ライフサイクルコスト などを含めた 、本来のコスト削減効 果にも直結する問題と言える為であ る。 例えば 、目標耐用年数 50 年の庁 舎を、PFI 方式で建設・運営するこ 図 5 インフラファンドの投資パターン 注 8 坂田期雄、2006年『民間の力で行政のコストはこんなに下がる』 投資家 A 投資家 A [投資家 B] 投資家 B 投資SPV 投資SPV プロジェクトSPV プロジェクトSPV 金融機関 金融機関 メーカー メーカー 鉄道 鉄道 電力 電力 空港 空港 ガス ガス 水道 水道 アセット マネージャー アセット マネージャー インフラ関連企業ポートフォリオ タイプ リスク 投資形態 概要 ① プロジェクト 単一プロジェクト型 個別プロジェクトSPV(主に非上場)へのエクィティ投資* ② コーポレート 企業ポートフォリオ投資型 インフラ関連の上場企業への分散エクィティ投資 ③ プロジェクト/コーポレート ファンド・オブ・ファンズ型 インフラプロジェクトへのファンド型分散投資 デット ①エクィティ 取得 ②エクィティ 取得 出資 ③投資 新規案件 新規案件 既存案件 既存案件 *投資SPVを介さず、プロジェクトSPVへ 直接出資するケースも考えられる プロジェクト/企業 インフラファンド/ 投資信託

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ふくしま たかのり 早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了 (MBA)。国内証券会社や外資系投資銀行等でデ リバティブ・トレーディング業務やリスクマネ ジメント業務を担当し、現職では CRE / PRE マネジメントや PPP / PFI、不動産デリバティ ブなど、不動産関連ビジネスの戦略リサーチ、 研究、商品開発、業務推進に従事。国土交通省 「不動産リスクマネジメント研究会」 座長。国土 交通省 「住宅価格指数検討委員会」 委員。早稲 田大学国際不動産研究所招聘研究員。横浜市・ みずほ証券「公共施設・インフラの改修、維持 保全への PPP 導入に向けた共同研究」委員。日 本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。宅地 建物取引主任者。著書に『投資の科学』(日経 BP 社・共訳)など。 なかうち やすひろ 2001 年みずほフィナンシャルグループ入社。 銀行業務に従事後、2003 年よりみずほ証券ス トラクチャードファイナスグループ(現 IB プ ロダクツグループ)所属。これまで国内外の鉄 道車輌、航空機などの交通関連設備や工場設 備を対象としたストラクチャードリース、シ ンセティック CLO、不動産賃料債権の流動化、 M&A ファイナンス等のアレンジメント業務に従 事。横浜市・みずほ証券「公共施設・インフラ の改修、維持保全への PPP 導入に向けた共同研 究」委員。 参考文献 国土交通省交通政策研究所、2005年『事業目的別歳入債券の有効活用に関する研究』(国土交通政策研究第56号) 坂田期雄、2006年『民間の力で行政のコストはこんなに下がる』 西村総合法律事務所、2003年『ファイナンス法大全(下)』 小原克馬、1997年『プロジェクト・ファイナンス』 エドワード・イェスコム(訳:佐々木仁)、2006年『プロジェクトファイナンスの理論と実務』 ムーディーズ・ジャパン株式会社、2011年4月『茨城県エコフロンティアレベニュー信託』(PRE-SALE REPORT)

Moody's Investor Service, October 24, 2005, “MOODY'S APPROACH TO RATING OBLIGATIONS BACKED BY FUTURE EXPORT RECEIVABLES”

Neighborhood Capital Budget Group, “TIF ALMANAC”, www.ncbg.org

Rose Naccarato, Tennessee Advisory Commission on Intergovernmental Relations, March 2007, “TAX INCREMENT FINANCING OPPOURUNITIES AND CONCERNS”

SB Friedman, “TAX INCREMENT FINANCING”, www.friedman.com

Standard & Poors, September 1, 2004, “Emerging Markets Criteria: Securitization Of Future-Flow Dollar-Denominated Airline Ticket Receivables”

とを想定する。この時 、実際に建 物が 50 年間使用できなかった場合 には 、PFI 契約に基づく支払いを 減額するという方式も考えられる。 これは 、庁舎の建設代金という一時 点での話ではなく、要求性能どおり 50 年間使えなかった場合のリスク を、全て民間に移転すべきという発 想に基づいている。しかし同時に 、 このことに対応すれば 、PPP の枠 組みにおける民への報酬は 、対象 となる事業や資産のパフォーマンス に応じたものでなければならないと 言えるだろう。基本的に 、民間事 業者は 、リスクに見合ったリターン が期待できれば 、ほとんどの事業リ スクを負担することに前向きに対応 できる。ただ 、こうした民における 活発な公共事業への参入を促す意 味でも 、適切にリスクを評価・マネ ジメントできる情報環境の整備や 、 官民のコミュニケーションの一層の 充実などが求められている。 一方で 、こうしたリスクのマネジメ ントについて、常に民間企業がその 最適解を提供できるわけではなく、 官によるマネジメントの方が最適な 場合もあることに理解を示す必要が あるだろう。従って、PPP の導入効 果は 、民が官より効率的にリスク・ マネジメントできる分野において最 大になると言え 、それはまた 、コス ト削減効果が最大になるということ とも概ね同義と言うことができるだ ろう。

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