転倒転落
-終わりなき戦い-
平成28年度 旭川市保健所 医療安全研修会
旭川赤十字病院
医療安全管理者
栗原篤子
平成28年9月2日
0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80%
年齢区分別の人口割合
75歳以上 15.1% 0~14歳 11.3% 15~64歳 57.6% 65歳以上 31.1%旭川市
H28.7.1現在
全国
(厚生労働省データ) 人口総数 343,550 年齢別人口 ×100 (旭川市データ)不慮の事故の種類別死亡数・死亡率(人口10万対) 年次別 2010 2012 2013 2014 2010 2012 2013 2014 総数 40732 41031 39574 39029 32.2 32.6 31.5 31.1 交通事故 7222 6414 6060 5717 5.7 5.1 4.8 4.6 転倒・転落 7517 7761 7766 7946 5.9 6.2 6.2 6.3 スリップ,つまづき及びよろめきによる同一平面上での転倒 4843 5261 5301 5516 3.8 4.2 4.2 4.4 階段及びステップからの転落及びその上での転倒 666 679 680 696 0.5 0.5 0.5 0.6 建物又は建造物からの転落 685 590 584 526 0.5 0.5 0.5 0.4 その他の転落 628 621 651 646 0.5 0.5 0.5 0.5 死亡数 死亡率
不慮の事故種類別死亡数・死亡率
転倒転落死亡数が増加傾向にあるのは、死亡率の高い高齢者が増加しているためである.
(人口10万対) (厚生労働省データ) H22 H24 H25 H26 H22 H24 H25 H26 69.4% 8.7% 6.6% 8.1% 20.4% 14.5%平成26年 人口動態調査 不慮の事故の種類別にみた年齢別死亡数 総数 0歳 1~4歳 5~9歳 10~14歳 15~29歳 30~44歳 45~64歳 65~79歳 80歳~ 総数 39029 78 113 102 85 1082 1559 4825 11392 19748 交通事故 5717 2 29 50 34 617 557 1273 1835 1319 転倒・転落 7946 3 11 5 6 91 188 788 1994 4859 スリップ,つまづき及びよろめきによる 同一平面上での転倒 5516 - 2 1 - 11 36 320 1100 4046 階段及びステップからの転落及び その上での転倒 696 - - - - 3 20 116 292 265 建物又は建造物からの転落 526 - 6 3 3 47 66 118 161 121 その他の転落 646 - 1 1 1 21 42 158 242 180
不慮の事故の種類別に見た年齢別死亡数
(人口10万対) (厚生労働省データ) 25% (86%) 19.9% 73.4% 61% (93.3%) (80%)2% 2% 1% 1% 1% 1% 2% 2% 1% 1% 1% 1% 2% 2% 2% 2% 2% 2% 3% 3% 4% 3% 3% 3% 5% 6% 6% 6% 6% 5% 13% 12% 10% 10% 9% 9% 10% 11% 11% 10% 10% 9% 12% 13% 11% 12% 12% 13% 14% 14% 14% 15% 14% 14% 15% 15% 15% 15% 16% 15% 18% 19% 21% 20% 22% 22% 3% 3% 3% 4% 4% 4% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% H22 H23 H24 H25 H26 H27 90歳以上 80~89歳 75~79歳 70~74歳 65~69歳 60~64歳 50~59歳 40~49歳 30~39歳 20~29歳 10~19歳 0~9歳 n=166,393 n=163,596 n=161,662 n=157,496 n=155,050 n=164,068
入院患者の高齢化
転倒転落率と報告数
352 333 309 252 219 198 185 202 209 211 183 1.81 1.78 1.75 1.56 1.35 1.21 1.11 1.23 1.29 1.34 1.18 0.03 0.03 0.04 0.05 0.04 0.04 0.04 0.02 0.03 0.02 0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1.20 1.40 1.60 1.80 2.00 0 50 100 150 200 250 300 350 400H17
H18
H19
H20
H21
H22
H23
H24
H25
H26
H27
転倒転落数 転倒率(‰) 事故レベル3b以上の発生率(‰) 11 月 新 棟 移 転 入 院 患 者 へ 靴 を 推 奨 3 月 D V D ① 開 始 2 月 D V D ② 開 始8
月別 転倒転落率データ(全国平均との比較)
転倒転落率
転倒転落率
H26年度
H25年度
2.6 2.64 2.58 2.54 2.46 2.54 2.56 2.6 2.58 2.62 2.53 2.59 1.12 1.55 1.31 1.54 1.57 1.52 1.3 1.11 1.03 1.11 0.6 1.65 0 1 2 3 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 全国平均 旭川赤十字 2.79 2.66 2.67 2.75 2.68 2.72 2.8 2.58 2.81 2.83 2.76 2.72 1.46 0.76 1.49 1.12 1.65 1.03 1.32 1.81 0.77 1.76 1.62 1.05 0 1 2 3 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 全国平均 旭川赤十字日本病院会「QIプロジェクト」データ
① 誰でも転ぶ、特に高齢者は良く転ぶ。
② 超高齢化、薬物の影響
(睡眠薬、抗精神薬、抗凝固薬ほか)
③ 外傷・骨折・脳内出血などによる、治療長期化の影響
④ 患者に及ぼす影響が大きく、その後のQOLを低下させる。
転倒転落事故の年齢層 と
問題点
1 2 3 1 9 12 40 62 43 9 1 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 - 9 才 10 -19 才 20 - 29 才 30 - 39 才 40 - 49 才 50 - 59 才 60-69才 70 - 79 才 80 - 89 才 90 才以上 未記入H23
H24
H25
H26
H27
当院は、60~80歳代の入院患者の多い年齢層に転倒転落事故が多い。
転倒転落をゼロにしようと頑張った
転倒転落が起きてはいけない!
患者さんに申し訳ない。
看護の質が問われる。
医療訴訟になったらどうしよう・・・。
転倒転落事故をゼロにしようと頑張ってきた。
しかし、転倒転落ゼロを達成できたことはなかった。
なぜゼロにできないのか、自分達を責めた。
引用 -武蔵野赤十字病院 黒川美知代 氏 –
「いつでも、誰でも、どこでも転ぶ」
転ぶことがいけないのではなく、転んで大怪我をする
のがいけない
転倒転落はゼロにはできない
しかし、
私たちは、やるべき対策はしっかりやって行く。
そして、
リスクの予見義務と回避義務は、しっかり果たす
その上で、
転倒転落をゼロにする事はできないが、
事故レベル3b以上の事例の減少
へと考えをシフトした
対策:
1.転倒転落リスクアセスメントの実施、患者・家族への説明と共有
-
医療者と、患者・家族の「院内で転倒する」ことについて、認識が違いすぎる。
-患者個別の要因・転倒転落リスクを可視化する。患者・家族が気付いていないリスク
を認識させる
-転倒リスクの高い患者に対して重点思考で転倒転落防止対策を行う.
-アセスメント実施率の集計とフィードバック
当院の転倒転落事故防止の目標と対策
目標:3b以上の重症事例を限りなくゼロにすることである。
対策:
2.療養環境の整備
-
①
ピクトグラム
②
離床センサー内蔵電動ベッド
③
ロック式ベッドテーブル
④
患者のADLに応じて選択できる3種類のベッド柵
⑤
ベッドトイレの分散化
⑥
トイレ安全バー設置
3.転倒転落予防 DVD視聴
-転倒しやすい動作や環境の理解には、視覚に訴える
DVDは効果的である. DVD視聴率の集計とフィードバック。
4.入院中の履物
-スリッパ・サンダルは使用せず、かかとのある履きなれた靴を使用する.
5.安全カンファレンスの実施
-チームで取り組む⇒患者の状況を共有、判断、計画、
実施、評価 ⇒PDCAサイクルを回す.
当院の転倒転落事故防止の対策
「院内で転倒する」ことについての認識の違い
患者・家族側
*
病院は病気やケガを治す場所で、安全なところだから、
ケガをするはずがない.
*看護師さん達もたくさん居て、見てくれている.
医療者側
*高齢や疾病による認知機能、筋力低下、薬剤の使用など
様々なリスクがある患者が多い.
*医療者はずっと側に居て観察する事はできない.
*予防対策をしていても転倒転落は発生する.
*誰でも、いつでも、どこでも転ぶので、ゼロにはできない.
① 入院時に患者の個々の背景要因を知り、転倒転落リスクスコアをスタッフ間で共有する.
②
患者・家族へスコアをもとに、
転倒転落に繋がる「患者自身の要因」 や、「自宅とは違う
環境の要因」を
説明し、転びやすい状況がある事を知ってもらい、転倒転落防止に
参加してもらう.
③ 患者自身の要因+自宅とは違う環境の要因+患者の行動や行為に対する看護計画の
立案と説明➜ 転倒リスクの高い患者に対して重点思考で転倒転落防止対策を行う.
転んでも大怪我をしない療養環境 を作る.
③ 日々変わる患者の状況を
タイムリーにアセスメント
し、医療者間や患者・家族と転倒リス
クのメンタルモデルを共通にする.
④ 転倒転落防止対策に患者・家族の参加を促すことが、予防だけでなく 事後の紛争化防
止にも役立つ事がある.
1. 転倒転落リスクゕセスメント
転倒転落に対する患者・家族の認知度向上
転倒転落アセスメントスコアシートと看護記録
・入院時、転倒転落リスクアセスメントを実施・共有
・患者の転倒しやすい状況や危険度を患者・家族へ説明
スコアの説明、ピクトグラムのCaution掲示、看護計画立案と説明 17・安全カンファレンスで評価する
転倒転落アセスメント実施率の集計とフィードバック
①入院日に転倒転落アセスメント行なう
②その後は、入院後1週間毎、転倒転落発生時、病状変化時、転科転棟時「、薬剤開始または
変更時に転倒転落アセスメントを行う。
①
医療看護支援ピクトグラム導入
②
離床センサー内蔵電動ベッド導入
③
患者のADLに応じて選択する 3種類のベッド柵導入
④
ロック式ベッドテーブル導入
⑤
トイレを分散化
⑥
安全バー導入(トイレ)
192. 療養環境の整備
①
医療看護支援ピクトグラム
② 転倒転落危険度
信号機の色に見立てている Ⅰ~青色 Ⅲ.Ⅳ~赤色① 医療看護支援ピクトグラム
③
注
意
文
字
④ 受け持ち看護師名
わしは、 車椅子を使わないと ダメなんじゃよ拡大
20②
離床センサー内蔵 電動ベッド (
離床CATCH)
目的に合わせて 機能を選択 2 離床 3 離床予報 端座位 患者様の体重を設定 21 1 見守り③
ロック式ベッドテーブル
ロック:キャスターが持ち上がり
ゴムのストッパーが出る
解除:キャスターが降りる。
ストッパーは、通常左右共にロック状態で
22④
患者のADLに応じて選択する3種類のベッド柵
スイング介助バー
折りたたみ式
サイドレール
⑤
トイレの分散化
各病室間にトイレを配置
病
室
病
室
ト
イ
レ
25⑥
安全バー
立ち上がりを防止する目的で使用
3. 転倒転落予防DVD
Vol.5 監修:早稲田大学理工学術院 教授 棟近雅彦 株式会社麻生 飯塚病院 リハビリテーション科部長 黒木洋美 株式会社麻生 飯塚病院 看護部管理師長 井上文江 *武田薬品より許可をいただいて使用転倒・転落対策
-NDPが考えるベストプラクティス- 自治医科大学付属病院 医療安全対策部 転倒・転落予防ワーキンググループ作成①H21年3月 オンデマンド開始
②H25年2月よりオンデマンド開始
DVD視聴 除外患者
・意識障害 ・認知症 or 認知に問題がある場合 ・重度の視覚・聴覚障害 ・寝たきりの患者 ・四肢麻痺の患者 ・幼小児 ・重症患者(看取り、状態の悪化含む) ・オーバーナイト、日帰り入院入院患者さま・ご家族の皆さまへ
転倒転落予防のために、是非 ビデオをご覧下さい
入院中はいつものご自宅とは違う環境です。
トイレや洗面所の場所も違います。
自宅でも外でも転ぶ事があるように、病院の中でも転ぶ事があります。
このビデオ(無料)は、どのような動作に転倒の危険が潜んでいるかを知っ
ていただくために ご覧いただいています。
患者さまだけでなく ご家族の方も是非ご覧いただき、転倒しやすい危険
性を知ってください。
特に高齢になると、足腰の筋力が弱くなったり、ふらついたり します。お薬
によっても影響があります。
また、転倒の原因にはスリッパ・サンダルが引っかかった・脱げたなど、履物も
大きく影響します。
ですから、入院中はスリッパ・サンダルではなく、履きなれた靴や介護靴など
のご使用をお願い致します。
* ベッド横のテレビで、いつでも見る事ができます.
「転倒転落予防DVD視聴率」と「アセスメント実施率」
①入院日に転倒転落アセスメント行なう
②入院後3日以内に転倒転落予防DVDを視聴してもらう。➡ 視聴済を確認後、電子カルテに
その旨を入力する。
※ その月に入院した全ての患者のカルテから、①②の入力を確認し、集計データを作成する。
の集計とフィードバック
DVD視聴率
・
ゕセスメント実施率
80% 80% 86% 87% 88% 87% 86% 85% 89% 87% 87% 98.8% 99.8% 99.7% 99.8% 99.7% 99.5% 99.6% 99.8% 99.7% 99.7% 98.6% 80% 85% 90% 95% 100% 88% 92% 89% 91% 95% 97% 95% 94% 94% 97% 96% 94% 99.3% 99.4% 99.8% 99.9% 99.9% 99.9% 99.9% 99.9% 96% 97% 97% 97% 99% 97% 98% 97% 96% 97% 96% 96% 99.8% 99.9% 99.7% 99.9% 97% 96% 97% 98% 96% 97% 97% 97% 98% 98% 97% 97% 99.6% 99.9% 99.8% 99.9% 99.9% 80% 85% 90% 95% 100% 97% 98% 97% 98% 98% 98% 97% 99% 98% 97% 99% 97% 99% 98 % 98 % 99 % 98 % 100 % 100 % 100 % 100 %平成28年7月現在、視聴率98~99%、アセスメント実施率100%で推移している
(H23.5月~ データ収集開始)
4. 入院中の履物
① 入院患者の履物の傾向を調査した。
② 入院患者の履物検討部会を設置し、どんな履物が望ま
しいかを検討した。
③ 入院予定患者の説明時に、入院中はサンダル・スリッパで
はなく、履きなれた靴を使用するように指導した。
④ ローソンから、サンダル・スリッパを撤去し、安価で歩きやす
い靴を常設。
スリッパ・サンダル ➡ 履きなれた靴の使用に向けて
室内スリッパ, 213 サンダル, 87 介護靴, 107 普段靴, 77 バレエ 26 その他、2 全体,513名 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 室内スリッパ, 109 サンダル, 50 介護靴, 56 普段靴, 50 バレエ 6 雪駄、1 男,276名 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 室内スリッパ, 105 サンダル, 37 介護靴, 51 普段靴, 25 バレエ 20 草履、1 女,237名 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
①
入院患者の履物調査
(H26.7.14~18実施)
男性, 276名 53.8% 女性, 237名 46.2% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%58.5%
57.6%
59.9%
35.9%
32.1%
38.4%
②入院患者の履物検討部会
① 入院患者の履物の現状調査では、約6割がスリッパ・サンダルを使用し、
3割が介助靴・普段靴という結果だった。
② 理学療法士による、人間の歩行の特性と望ましい履物についてレクチャー
●人の歩行は、ゆりてこのメカニズム(ロッカー)
踵をつく
➡
地面に足底を付ける
➡
踵を上げる
➡
足の指の付け根に
力を入れる。 これらを交互の足で繰り返している。
③ スリッパ・サンダルは履きやすいが脱げ易い。故に常にスリッパが脱げないよ
うに指先が緊張しズッて歩く人が大半である。ロッカーができないため、膝に
負担がかかり、骨盤には過剰な筋力がかかる。
④ バレーシューズは素足に近い感覚のため、立位の練習には適するが歩行
には適さない。
【
望ましい履物
】
◆
ゆりてこのメカニズムを作るために、
少し踵があり
、
指先が挙がっていて
、
前方靴底が柔らかい素材のもの
、そして足の保護のために
踵とつま先が
覆われるもの
。
ローソン店頭の商品棚
スリッパ・サンダルを撤去して、病院内用シューズ(1,900円税別)を常設
病院内用シューズ
●カラー (ピンク、グレー、ネイビー )
●サイズ (S,M,L,LL,3L)
① 安全用具を使用している患者は、毎日1回は行う.
カンファレンス内容は必ず看護記録に残す.
–
転倒転落危険度のアセスメントスコアの評価・再評価
–
安全用具の必要性
–
安全用具の使用状況と評価
–
安全用具の早期解除に向けたアセスメント
② 安全用具を使用していなくても、高齢患者の状況に応じて
安全カンファレンスを行う。
5. 安全カンフゔレンスの実施
安全カンファレンス
37当初は「安全用具カンファレンス」としてスタートし、
身体抑制基準や安全用具使用基準に照らし合わせ
た運用がなされているかを検証する場だった。
(身体抑制は、患者の人権を侵害する手技であり、
基本的には行なわない。しかし、急性期の患者では
治療上の安全確保や生命の危機から患者を守るた
めに、一時的に使用することはある。この場合は、医
師の指示のもとに実施することを原則にする。)
その後、チームで検討した転倒転落アセスメントの
内容も 記録することにし、「安全カンファレンス」に改
名した。
記録の実際
123 27 10 1 22 123 23 14 8 4 29 100 26 8 5 1 23 134 44 8 3 1 21 112 25 16 7 1 22 0 20 40 60 80 100 120 140 160