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ウメおよびカキ果実の栽培から一次加工における微生物制御に関する研究

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博 士 学 位 論 文

ウメおよびカキ果実の栽培から一次加工

における微生物制御に関する研究

生物理工学研究科生物工学専攻

村 上 ゆ か り

ウメおよ びカキ 果実の 栽培か ら一 次加工に おける 微生物 制御に 関す る研究 村 上 ゆ か り

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博 士 学 位 論 文

ウメおよびカキ果実の栽培から一次加工

における微生物制御に関する研究

平 成 2 4 年 6 月 3 0 日

生物理工学研究科生物工学専攻

村 上 ゆ か り

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目次 序論 1 第1章 ウメ果実 第1節 ウメ果実の栽培から収穫における微生物制御 1.材料および方法 5 2.結果および考察 13 第2節 ウメ果実の収穫後から一次加工における微生物制御 1.材料および方法 23 2.結果および考察 28 第3節 総合考察 44 第4節 摘要 48 第2章 カキ果実 第1節 カキ果実の栽培から収穫における微生物制御 1.材料および方法 50 2.結果および考察 54 第2節 カキ果実の一次加工における微生物制御 1.材料および方法 65 2.結果および考察 69 第3節 カットカキの貯蔵・流通中における微生物制御 1.材料および方法 81 2.結果および考察 86 第4節 総合考察 103 第5節 摘要 108 総括 111 文献 115 謝辞

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1 序論 果実は、微生物の侵入を防ぐ果皮の存在や可食部の pH の低さから、交差汚染によ る微生物の増殖は少ないと考えられてきた。従来、果実に付着する微生物数は野菜に 比べて少なく、検出される細菌、酵母、糸状菌も植物病原菌や腐敗原因菌が中心であ る1)。植物病原菌や腐敗原因菌は、ヒトには直接疾病を引き起こさないが、果実収穫 後、貯蔵、輸送および市場で発生する病害(ポストハーベスト病害)を引き起こし、 腐敗果が発生して、経済的損失が生じることが知られている2)。さらに、近年では果 実および一次加工果実が原因の食性疾患が増加し、米国では1990 年から 2009 年の間 に果実が原因とされる食性疾患は 167 件起こり、9601 人が発症したと報告されてい る3)。発症例としては、1995 年の非殺菌のオレンジジュースのサルモネラ症4)1996

年の非殺菌のアップルジュースのEscherichia coli O157:H74)1998 年のフルーツサ

ラダのE. coli O157:H73)の食性疾患がある。このような報告を受け、果実を対象と

した微生物汚染の研究が行われるようになった。リンゴ果実では、E. coli O157:H7

を含んだ1%ペプトン水に果実を浸漬したとき、外芯部からの細菌の侵入が最も高か

ったことが報告されている5)。また、サルモネラ、E. coli O157:H7 または Listeria

innocua をカットリンゴに接種して様々な温度で培養すると、サルモネラおよび E. coli O157:H7 は 20 および 25℃、L. innocua は 10℃下での顕著な増殖が確認された

ことが報告され6)、原料果実から加工果実までの微生物的安全性の確立が重要となっ ている。 米国では、青果物の衛生管理法として 1998 年に USDA(米国農務省)、CDC(米 国疾病予防管理センター)および FDA(食品医薬品局)が GAP(適正農業規範)4) を発表し、幾つかの農場で実施されている。その後、日本でも農林水産省が 2005 年 に「『食品安全のための GAP』策定・普及マニュアル(初版)」7)2007 年に「基礎 GAP」8)2008 年に「GAP 手法導入マニュアル」9)2010 年に食品安全に加え、環 境保全や労働安全などの幅広い分野を対象とし、高度な取組内容を含む「農業生産工 程管理(GAP)の共通基盤に関するガイドライン」10)が策定され、果樹についてのガ イドラインも策定されている。しかし、これらのガイドラインは、栽培から出荷、貯 蔵までの全農業工程を対象としているが、果樹の種類別における衛生管理法について

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2 は特記されていない。また、その後の加工までのプロセスを含めた加工果実に対する 衛生管理法にも言及されていない。 果樹栽培の盛んな和歌山県では、ウメの生産量が全国の 61%を占め 11)、栽培から 加工までの一貫した産地を形成している。最も生産量が大きい加工品は梅干で、一次 加工として塩蔵処理が行われる。梅漬けや梅干しなどの梅加工品は、高食塩濃度で塩 蔵を行うため、水分活性や pH の低下により、微生物汚染が生じにくいと考えられて きた12)。しかし、近年、消費者の減塩嗜好に伴い、梅加工品は低塩および低酸の傾向 を示し13)、塩蔵工程および製品において微生物汚染が生じ易くなっている14Ozaki ら15)は、塩漬け梅または調味漬け梅からCandida 属や Pichia 属を分離し、それらの 酵母が製造ラインからも検出されたことを報告した。酵母は多くが腐敗原因菌であり、 耐酸性・耐塩性の特徴をもち、塩蔵中にも生存が可能で、梅加工品の品質を低下させ ることが危惧される。恩田ら16)は、Pichia anomala は培養3日後から皮膜を形成し、 その後、梅酢液中の有機酸が急激に減少し始め、20 日後には有機酸はほとんど消滅し、 それに伴いpH が 5.9 まで上昇して梅酢液の色調が薄い紅色から茶褐色に変化したこ とを報告した。このように、梅酢液中のpH が上昇すると、品質低下だけではなく、

病原性細菌が増殖しやすい環境になる可能性もある。Conner ら17)は、E. coli O157:H7

は酸性条件下で 56 日間以上生存したことを報告している。前述のように、加工前の 果実は、病原性細菌の内在化が認められていることから、これらの細菌が付着したま ま加工されると、加工中も生存し、生の果実からだけではなく、加工後の果実からの 食性疾患が発生する可能性も十分に考えられる。 一方、和歌山県の特産果樹の一つであるカキの生産量は、全国の23%である11)が、 近年の消費者の果物離れの影響から消費が低迷している。欧米に比べて低い果実の消 費量を上げるためには、果実加工品として需要が増加しているカット果実への利用が 期待される。カット果実を製造する上で、剥皮は不可欠な工程である。化学的および 機械的剥皮技術が青果物の剥皮に用いられているが、これらの方法は果肉および果汁 の損失を引き起こす可能性がある。また、Ukuku ら18)は、切断処理に用いた器具を 介して Salmonella で汚染したカンタロープの果皮からカットカンタロープの果肉に Salmonella が移行したことを報告し、刃物を介した果皮から果肉への微生物汚染も懸 念される。このような問題を解決するために、Bruemmer ら19)は、果皮に切れ目を

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3 付けたグレープフルーツを酵素液に浸漬し、減圧することで剥皮を行う酵素剥皮技術 を開発した。この報告を受け、カンキツ果実では、最適な酵素濃度、反応時間、反応 温度などを決定するための実験が多数行われている20)~22。日本においても、尾崎ら 23)がカキ果実におけるペクチン分解酵素液を用いた酵素剥皮技術で特許取得をした が、酵素剥皮工程中の果実の微生物叢については調べられていない。また、カット果 実は、一般に剥皮・切断することで細胞や組織が傷つけられ、それによって生化学的 変化や微生物増殖による品質劣化が起こりやすく24)、品質を維持することが困難であ

る。このため、カット果実の鮮度保持技術として、Modified atmosphere packaging

(MAP)が用いられる。カット果実を最適なガス透過性のフィルムで密封包装すると、

フィルム内のガス組成はカット果実の呼吸により低 O2、高 CO2状態となって平衡と

なり、カット果実の貯蔵に適したControlled atmosphere(CA)条件をつくることが

できる25)Poubol ら26は、2種類のカットマンゴー‘Carabao’と‘Nam Dokmai’

を空気または3、5および10%CO2を通気し、5または13℃下で CA 貯蔵を行った。

その結果、13℃下で貯蔵した‘Carabao’および‘Nam Dokmai’マンゴーの一般生

菌数は、貯蔵最終日に空気通気区ではそれぞれ3.2 および 6.5 log CFU/g であったの

に対して、10%CO2通気区では、それぞれ検出限界値以下または3.7 log CFU/g とな

り、カットマンゴーにおける高CO2による静菌効果を確認している。また、Bai ら27) は、カットカンタロープをフィルム(空気充填区および4%O2+10%CO2充填区)お よび 1.5mm の小孔を 10 個開けたフィルムで5℃で 12 日間または 2.5℃で2日間+ 5℃で 10 日間の貯蔵を行ったところ、空気充填区では5℃で9日間品質を維持し、 4%O2+10%CO2充填区では、空気充填区よりも明度および彩度が増加し、果肉の透 明性、呼吸量および微生物数が低下してさらに高い品質を維持したことを報告した。 このように、種々のカット果実における CA/MAP による微生物制御および品質保持 の結果が報告されているので、酵素剥皮技術を用いて作製したカット果実の鮮度保持 にもMAP 貯蔵が有効であると推定される。 そこで本研究では、和歌山特産果樹であるウメおよびカキ果実を対象として、原料 果実栽培中の微生物汚染とその制御、並びに一次加工果実の製造中と流通中の微生物 汚染とその制御について検討を行った。Izumi ら 28)29は、栽培から収穫にかけての 和歌山県下のカキおよびウンシュウミカン圃場の環境接触物の微生物汚染度を調査し、

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4 果実栽培時に使用した農業用水および農薬からサルモネラまたは腸管出血性大腸菌が 検出されたことを報告している。この報告から、特に果実栽培から一次加工中の食性 病原菌による果実の微生物汚染とその制御技術を中心に取り組んだ。第1章ではウメ 果実を対象に、ウメ果実の栽培から収穫・選果、収穫後から一次加工(塩蔵)におけ る微生物制御の検討を行い、第2章では、カキ果実を対象に、カキ果実の栽培から収 穫、一次加工(カット果実)、貯蔵・流通中における微生物制御の検討を行った。

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5 第1章 ウメ果実 第 1 節 ウ メ 果 実 の 栽 培 か ら 収 穫 に お け る 微 生 物 制 御 1.材料および方法 1)分析用サンプル、サンプル採取および測定部位 (1)栽培時 和歌山県田辺市のウメ果実圃場を研究対象とし、圃場を二分して、慣行的に農薬散 布を行った対照区と、塩素水を用いて希釈した農薬を散布した塩素水区を設けた。塩 素水は、農業用水を有効塩素濃度約 10ppm になるようにケミクロン G(次亜塩素酸 カルシウム製剤)(日本曹達株式会社製)を用いて塩素殺菌した水とした。分析用サン プルとしてウメ果実‘南高’、栽培中の環境接触物の農業用水、塩素水、農業用水また は塩素水を希釈水として作製した農薬(殺菌剤のアミスター10 フロアブル)、農薬散 布後の各処理区の土壌、草および収穫用ネットを平成 21 年6月5日に微生物分析に 供した。 果実は、実験樹(3本)の南側の目線の高さにある果実をサンプルとして採取し、 種子を除いた果皮部および果肉部を分析に用いた。圃場で使用した農業用水(河川水)、 塩素水、農業用水および塩素水でそれぞれ溶解・希釈した農薬は、それぞれ滅菌済み の100ml 容のネジ口瓶にヘッドスペースがない程度まで採取し、サンプリングバッグ に入れた。土壌は、実験樹の南側の樹冠下の地表部から約50g採取し、篩にかけて滅 菌済みのサンプリングバッグに入れた。この際使用した器具類(篩、受け皿およびス コップ)はすべて滅菌して使用した。草も同様に、70%エタノールを噴霧したハサミ を用いて、実験樹の南側の樹冠下の地表面から約30g採取し、滅菌済みのサンプリン グバッグに入れた。各実験樹の下に敷いた収穫用ネットは、表面の微生物サンプリン グのため、それぞれのサンプリング箇所を特定し、圃場にて微生物サンプリングを実 施した。 (2)収穫時 栽培時に研究対象とした対照区圃場および塩素水区圃場から収穫した果実を分析サ

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6 ンプルとした。果実サンプルに加えて、収穫時の環境接触物として、各処理区の土壌、 草および収穫用ネットを平成21 年6月 24 日に微生物分析に供した。 収穫時の果実は、栽培時と同じ各実験樹の下に敷いた収穫用ネット上に落下した果 実をサンプルとして採取し、果皮部および果肉部に分けて分析した。土壌、草および 収穫用ネットは、栽培時と同様にサンプリングを行った。 2)測定項目および方法 (1)pH 農業用水、塩素水および農薬はカスタニーLAB pH メーター(株式会社堀場製作所 製:F-22)を用いて測定した。土壌は、土壌1gに pH7に調整した1N KCl と 0.1N KOH の混合液 2.5ml を加え、混釈した後1時間放置し、サンプルシートにつけて Twin pH メーター(株式会社堀場製作所製:B-211)で測定した。草は、脱塩水を加えて磨 砕してサンプルシートにつけ、果皮については脱塩水に浸したサンプルシートを果皮 部に直接つけて 30 秒間放置した後に、また果肉は、サンプルシートを直接果肉部に つけた後に、それぞれのサンプルシートをTwin pH メーターで測定した。 (2)水分活性 土壌、草および果実の水分活性の測定には、水分活性測定システムAw-パーム(ロ トロニック社製)を使用した。付属のサンプルカップにサンプルが約半分(約5g) になるように入れて測定し、各サンプル中の自由水の純水に対する比(Aw)で表した。 なお、サンプルはいずれも約25℃の条件下で測定した。 (3)微生物 ⅰ)細菌数および真菌数の測定 農業用水、塩素水および農薬1ml をクリーンベンチ内で1枚のシャーレに出現する コロニー数が30 から 300 になるように滅菌滅菌生理食塩水(NaCl 0.85%)9ml を 用いて10 倍ずつ希釈した。各シャーレに菌液を1ml ずつ加え、一般生菌数の測定に は標準寒天培地(日水製薬株式会社製)、大腸菌群数の測定にはデゾキシコレート培地 (日水製薬株式会社製)を約 20ml ずつ分注し、混釈して凝固させた。大腸菌群数の 培養は通性嫌気性条件下にするため、一度凝固したシャーレに約5ml のデゾキシコレ ート培地を重層した。真菌数の測定には、ポテトデキストロース寒天培地(日水製薬 株式会社製)にクロラムフェニコール(ナカライテスク株式会社製)を100mg/l 加え

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7 た培地を用いた。この培地をシャーレに約 20ml 分注して凝固させた後、1枚のシャ ーレに出現するコロニー数が10 から 100 になるように滅菌生理食塩水を用いて 10 倍 希釈した菌液を0.1ml ずつ加え、コンラージ棒を用いて培地表面に塗布した。シャー レをパラフィルムでシーリングした後、標準寒天培地は 37℃で 48±3時間、デゾキ シコレート培地は 37℃で 20±2時間、ポテトデキストロース寒天培地は 26℃で 72 ±3時間インキュベーター内で培養した。培養後に出現したそれぞれのコロニーをコ ロニーカウンター(柴田科学株式会社製)でカウントし、農業用水、塩素水および農 薬1ml 当たりのコロニー数を対数値で表した。 土壌はクリーンベンチ内で 30g 秤量し、滅菌水 270ml を加え、マグネチックスタ ーラー(東京理化器械株式会社製:RCN-3)を用いて 10 分間攪拌し、懸濁液とした。 草についてはクリーンベンチ内で 10g 秤量し、滅菌生理食塩水 90ml と共に 190mm ×300mm のストマフィルター(栄研化学株式会社製)に入れ、ストマッカー(ELMEX 社製:Pro media SH-001)で4分間磨砕して懸濁液とした。果実は、1反復につきウ メ果実5個を使用した。クリーンベンチ内でメスを使用して果皮部と果肉部とに分け、 サンプルとした。それぞれ 10g ずつ秤量し、90ml の滅菌生理食塩水と共にストマフ ィルターに入れ、ストマッカーを用いて4分間磨砕し、懸濁液を作成した。各シャー レに出現するコロニー数が標準寒天培地およびデゾキシコレート培地で30~300、ポ テトデキストロース寒天培地では10~100 になるように滅菌水を用いて 10 倍ずつ希 釈した。上記と同様に一般生菌数の測定には標準寒天培地、大腸菌群数の測定にはデ ゾキシコレート培地、真菌数の測定にはポテトデキストロース寒天培地にクロラムフ ェニコールを加えた培地を使用し、培養後、出現したコロニー数をカウントして土壌、 草、果皮または果肉1g 当たりのコロニー数を対数値で表した。 収穫用ネットの付着菌数はフードスタンプ(日水製薬株式会社製)を用い、3箇所 測定した。一般生菌数は生菌数用・標準寒天、大腸菌群数は大腸菌群用・デゾキシコレ ート寒天、真菌数は食品真菌用・CP 加ポテトデキストロース寒天のフードスタンプを 使用した。測定部位に培地面を30 秒間押し付け、生菌数用・標準寒天は 37℃で2日 間、大腸菌群用・デゾキシコレート寒天は37℃で1日間、食品真菌用・CP 加ポテトデ キストロース寒天は26℃で3日間培養し、収穫用ネット 100 ㎝2当たりのコロニー数 を対数値で表した。

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8 ⅱ)細菌の同定 (ⅰ)細菌の培養 一般生菌用として標準寒天培地をシャーレに約 20ml ずつ分注して凝固させ、細菌 測定時と同様に、凝固した培地上に1枚のシャーレに出現するコロニー数が10~100 になるように 10 倍ずつ希釈した菌懸濁液を 0.1ml ずつ分注し、コンラージ棒を用い て培地表面に塗布した。シャーレをパラフィルムでシーリングし、37℃のインキュベ ーター内で48±3時間培養した。 (ⅱ)細菌の分離 培養後、培地表面に出現したコロニーを目視で観察し、形状の異なるコロニーをイ

ノキュレーティングループ(Thermo Fisher Scientific 社製:INO-LOOP Inoculating

Loops L200-2)を用いて釣菌し、標準寒天培地上に画線塗抹して 37℃のインキュベ ーター内で培養した。培養後に形成したシングルコロニーをイノキュレーティングル ープを用いて再度釣菌し、標準寒天培地上に画線塗抹して、確認培養した。栽培から 収穫におけるすべてのサンプルから合計413 菌株の細菌を単離した。菌株を保存する 際には5℃のインキュベーターを使用した。 (ⅲ)ゲノムDNAの抽出

PrepManTMUltra(Applied Biosystems 社製)を用いて、クリーンベンチ内で分離

したシングルコロニーからイノキュレーティングループ(Thermo Fisher Scientific

社 製 :INO-LOOP Inoculating Loops L200-1)を用いて1菌株取り、Sample

Preparation Reagent 30µl に混釈し、100℃10 分、20℃2分間の熱をかけた後、20℃ 下で 16000×g、3分間、遠心分離(株式会社トミー精工製:MX-205)を行ってゲ ノムDNA を抽出した。 (ⅳ)16S rDNA 領域のPCR増幅 バクテリアの16S rDNA 領域の増幅にはユニバーサルプライマー(0005F,0531R) を用いた。反応は、1µl 鋳型 DNA、0.25µl 0005F プライマー(4pmol/µl)、0.25µl 0531R プライマー(4pmol/µl)、0.625µl dNTPMixture(タカラバイオ株式会社

製:2.5mM each)、0.1µl SpeedSTARTMHS DNA Polymerase(タカラバイオ株式会社

製:5 units/µl)、0.625µl 10×Fast BufferⅠ(タカラバイオ株式会社製:30mM

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9 マ ル サ イ ク ラ ー ( エ ム ジ ェ イ ジ ャ パ ン 株 式 会 社 製 :PTC-100™または Applied Biosystems 社製:2720)を使用して、94℃1分、95℃5秒および 65℃20 秒を 30 サ イクルの反応を行い、16S rDNA の約 1500bp のうちの上流約 500bp を増幅した。PCR 後の増幅サンプルは、泳動装置(TOYOBO 社製:GelMete2000)を用いて、0.8%ア ガロースゲル(株式会社ニッポンジーン製)で100V、20 分間泳動させた。また、マ ーカーとしてサイズマーカーλ・HindⅢdigest マーカー(タカラバイオ株式会社製) を使用した。泳動後は、エチジウムブロマイド(ナカライテスク株式会社製)により 約30 分間染色し、増幅の確認を行った。 (ⅴ)塩基配列の決定 PCR による増幅後、ExoSAP-IT(USB 社製)を用いて 37℃15 分、80℃15 分の反

応をさせてプライマーの除去を行い、DNA を精製した。その後、Big Dye Terminator

Cycle Sequencing Ready Reaction Kits(Applied Biosystems 社製)を使用して、96℃ 10 秒、50℃5秒、60℃4分の 25 サイクルの反応によりシークエンス反応を行った。

反応後、エタノール沈殿によりDNA を精製し、20µl の Hi-DiTMFormamide(Applied

Biosystems 社製)を用いてサンプルを溶解し、サーマルサイクラーを用いて 95℃2

分間の反応を行い、シークエンサー(Applied Biosystems 社製:ABI PRISM 310

Genetic Analyzer)により塩基配列を決定した。 (ⅵ)ホモロジー検索による同定

MicroSeq システム(Applied Biosystems 社製:MicroSeq®ID Analysis v2.0)を 利用して、システムに含まれるデータベースとの相同性検定により、サンプルから分 離された細菌の同定を行った。本実験では相同率が80%以上の結果を同定菌とした。 ⅲ)真菌の同定 (ⅰ)糸状菌および酵母の分離 真菌数を測定した培地を同定にも用いた。ポテトデキストロース寒天培地を培養後、 培地表面に出現したコロニーを目視で観察し、形状の異なるコロニーを白金耳を用い て釣菌し、ポテトデキストロース寒天培地上に接種して26℃のインキュベーター内で 培養した。栽培および収穫およびにおけるすべてのサンプルから糸状菌は合計311 菌 株、酵母は合計 89 菌株を単離した。菌株を保存する際には7℃のインキュベーター を使用した。

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10 (ⅱ)ゲノムDNAの抽出

細菌の場合と同様に、クリーンベンチ内で分離したシングルコロニーから白金耳を

用いて1菌株取り、PrepManTMUltra Sample Preparation Reagent100µl に混釈し、

20℃下で 16000×g、3分間、遠心分離を行い、上澄みを8連チューブ(Quality Scientific Plactics 社製)に移した。その後、100℃10 分、20℃2分間の熱をかけた 後、20℃下で 16000×g、3分間、遠心分離を行いゲノム DNA を抽出した。 (ⅲ)D2 LSU rDNA 領域の PCR 増幅 最初に1µl 鋳型 DNA を 0.5µl RNAse と 49µl 滅菌超純水の混合液で希釈し、37℃ で30 分間反応させた。真菌の LSU rDNA D2 ドメイン領域の増幅には、ユニバーサ ルプライマー(0308F,630R)を用いた。反応は、1µl 鋳型 DNA、0.25µl 0308F プラ

イマー(4pmol/µl)、0.25µl 630R プライマー(4pmol/µl)、0.625µl dNTPMixture、

0.1µl SpeedSTARTMHS DNA Polymerase、0.625µl 10×Fast BufferⅠ、4.15µl 滅菌

超純水を混合し、合計7µl で反応させた。反応条件は、サーマルサイクラーを使用し て、94℃1分、95℃5秒および 65℃20 秒を 30 サイクルの反応させた後、細菌と同 様に泳動装置を用いて1.0%アガロースゲルで 100V、約 20 分間泳動を行った。泳動 後は、エチジウムブロマイドにより染色し、増幅の確認を行った。 (ⅳ)塩基配列の決定 PCR による増幅後、ExoSAP-IT を用いて 37℃15 分、80℃15 分の反応をさせてプ

ライマーの除去を行い、DNA を精製した。その後、D2 LSU rDNA Fungal Sequencing

Kits(Applied Biosystems 社製)を使用して、96℃10 秒、50℃5秒、60℃4 分間の 25 サイクルによりサイクルシークエンス反応させた。反応後、エタノール沈殿により

DNA を精製し、20µl の Hi-DiTMFormamide でサンプルを溶解し、サーマルサイクラ

ーを用いて95℃2分間の反応を行い、シークエンサーにより塩基配列を決定した。 (ⅴ)ホモロジー検索による真菌同定 MicroSeq システムを利用して、システムに含まれるデータベースとの相同性検定 により、サンプルから分離された糸状菌および酵母の同定を行った。本実験では細菌 の場合と同様に相同率が80%以上の結果を同定菌とした。 (4)食性病原菌の検出 ⅰ)サルモネラ

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11 農業用水、塩素水、農薬、土壌、草、果皮および果肉をサンプルとし、LoopampⓇ サルモネラ検出試薬キット(栄研化学株式会社製)を使用してLAMP 法30)により検 査を行った。農業用水、塩素水および農薬はサンプル 10ml とサルモネラ増菌前培養 用緩衝ペプトン水(日水製薬株式会社製)90ml を混釈した。土壌は、微生物測定の 際に作成した 10 倍希釈の菌懸濁液 10ml とサルモネラ増菌前培養用緩衝ペプトン水 90ml を混釈した。草、果皮および果肉は、サンプル 10g とサルモネラ増菌前培養用 緩衝ペプトン水 90ml をストマフィルターに入れてストマッカーで4分間磨砕し、前 培養液とした。それぞれの前培養液を37℃下で 20~24 時間培養し、増菌培養液とし た。

LoopampⓇサルモネラ検出試薬キット中のExtraction Solution for Foods 50µl にサ

ンプルの増菌培養液をそれぞれ 50µl 加え、サーマルサイクラーを用いて、95℃下で

5分間の反応を行い、これをサンプル溶液とした。Bst DNA Polymerase 1µl および

Reaction Mix Sal 20µl がそれぞれ入った Loopamp 反応チューブ(栄研化学株式会社

製)に陽性コントロールとして Control DNA Sal を、陰性コントロールとして

Extraction Solution for Foods を用い、サンプルを5µl それぞれ入れ、Loopamp リア

ルタイム濁度測定装置(テラメックス株式会社製:LA-200F)にセットして、約1時 間一定温度(65℃付近)で保温することによって遺伝子増幅反応を行った。増幅反応 の副産物であるピロリン酸マグネシウム(白色沈殿物質)の濁度の変化により、サル モネラの標的遺伝子(侵入性関連遺伝子invA )の有無を判定した。 ⅱ)腸管出血性大腸菌 上記のサルモネラの有無の検査の場合と同様に、サンプルとパールコアⓇノボビオ シン加 mEC 培地(栄研化学株式会社製)を用いて前培養液を作成し、42℃下で 18 ~24 時間培養して増菌培養液とした。LoopampⓇ腸管出血性大腸菌検出試薬キット (栄研化学株式会社製)を用いて、上記のようにサンプルを調整した。Bst DNA

Polymerase 1µl および Reaction mix VT 20µl がそれぞれ入った Loopamp 反応チ

ューブに陽性コントロールとして Control DNA VT、陰性コントロールとして

Extraction Solution for Foods を使用し、サンプル溶液5µl をそれぞれ入れ、Loopamp

リアルタイム濁度測定装置にセットして、65℃で約1時間反応させた。サルモネラの

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12 ⅲ)L. monocytogenes 上記のサルモネラおよび腸管出血性大腸菌の有無の検査の場合と同様に、サンプル とリステリア選択増菌培地(関東化学株式会社)を用いて前培養液を作成し、30℃下 で 24 時間培養して増菌培養液とした。LoopampⓇL.monocytogenes 検出試薬キット (栄研化学株式会社製)を用いて、上記のようにサンプルを調整した。Bst DNA

Polymerase 1µl および Reaction mix Lis 20µl がそれぞれ入った Loopamp 反応チ

ューブに陽性コントロールとして Control DNA Lis、陰性コントロールとして

Extraction Solution for Foods を使用し、サンプル溶液5µl をそれぞれ入れ、約1時

間 一 定 温 度 (65℃付近)で保温することによって遺伝子増幅反応を行い、L.

(16)

13 2.結果および考察 1)栽培時および収穫時 (1)微生物数 ウメ果実の栽培から収穫までを対象に、栽培環境接触物(農業用水、塩素水、農薬、 土壌、草および収穫用ネット)、収穫環境接触物(土壌、草および収穫用ネット)およ び果実の細菌数、真菌数、pH および水分活性の結果を表1-1に示した。対照区の農 業用水の微生物数は、一般生菌数は1ml 当たりの対数値で 3.1、大腸菌群数は対数値 で1.7、真菌数は対数値で 3.1 であった。農業用水の微生物制御には、Izumi ら31) ウンシュウミカン果実圃場およびカキ果実圃場で用いた農業用水においてケミクロン G の添加効果を確認したように、ウメ果実圃場においても農業用水にケミクロン G を 添加することで、すべての微生物数が未検出となった。ケミクロンG は、有効塩素含 有量70%以上を含む次亜塩素酸カルシウムから成る塩素系消毒剤で、次亜塩素酸の強 力な酸化作用によって細菌および真菌を殺菌、またはウイルスを不活化させる 32)33) 34)Zhao35らは、23℃の水中における大腸菌の塩素殺菌の効果を調査するために、 0.25、0.5、1.0 および 2.0ppm の有効塩素濃度で、0、0.5、1.0 および 2.0 分間の処 理を行った結果、0.25ppm、0.5 分間で 107以上の大腸菌を殺菌したことを報告して いる。Zhao らの研究結果と比較すると、設定した有効塩素濃度が高いが、これは農 業用水に含まれる有機物により有効塩素濃度が低下することを考慮したためであり、 Zhao らが報告した菌数低下に比べると、本研究の菌数低下は低かったが、ケミクロ ンG による殺菌効果は十分であった。一方、農業用水に溶解した農薬の一般生菌数は 対数値で2.9、大腸菌群数は対数値で 2.1、真菌数は対数値で 3.2 となり、農業用水の 微生物数と差は見られなかった。塩素水に溶解した農薬の微生物数は、一般生菌数、 大腸菌群数および真菌数すべて検出限界値以下または未検出となり、対照区および塩 素水区の農薬の微生物数を比較すると、塩素水に溶解した農薬の方で微生物の増殖が 制御された。それぞれのサンプルのpH は、対照区と塩素水区の間に差が見られ、農 業用水が7.2 であったのに対して塩素水では 8.1、農業用水で溶解した農薬は 7.3、塩 素水で溶解した農薬は 7.9 で、塩素水区の方がいずれも高かった。塩素水で pH が増 加したのは、次亜塩素酸カルシウムの添加により、水酸化カルシウムが生成したため

(17)

14 であり、この程度の pH の上昇は、農薬としての機能などには影響はほとんど見られ ない。 栽培時および収穫時の土壌の微生物数は、いずれのサンプリング時期も高い値を示 し、一般生菌数は1g 当たりの対数値で 5.9~6.4、大腸菌群数は対数値で 4.9~5.4、 真菌数は対数値で5.2~6.0 であった。対照区および塩素水区を比較すると、栽培時の 一般生菌数および真菌数で処理区間に差が見られたが、いずれも塩素水区の方が対数 値で0.3~0.5 高い値を示した。草の微生物数も栽培時および収穫時の間に変化は見ら れず、一般生菌数は1g 当たりの対数値で 6.8~7.2、大腸菌群数は対数値で 5.0~6.2、 真菌数は対数値で6.0~6.9 と高い値を示した。対照区および塩素水区の草の微生物数 を比較すると、栽培時の大腸菌群数が対照区の方が塩素水区よりも対数値で 1.2、収 穫時の真菌数が対照区の方が塩素水区よりも対数値で 0.8 高い値を示した以外は処理 区間に差は見られなかった。ウメ果実圃場の結果は、Izumi ら 28)29が調査したカキ 果実圃場およびウンシュウミカン果実圃場と類似し、高い微生物数を示した。土壌お よび草のpH は、栽培時および収穫時の対照区および塩素水区の間に差は見られず、 土壌では4.5~6.1、草では 5.4~6.5 であった。また、土壌および草の水分活性も栽培 から収穫にかけて処理区間に差は見られず、土壌は0.962~0.960、草は 0.967~0.972 と高い値を示し、いずれのサンプルも微生物が増殖しやすい環境であった。 収穫用ネットの微生物数は、栽培時、収穫時ともに一般生菌数は 100cm2当たりの 対数値で2.7~2.9、大腸菌群数は対数値で 2.8~3.4、真菌数は対数値で 2.6~2.8 とな り、土壌および草と接触していたが、土壌および草に比べて低い値を示した。対照区 および塩素水区を比較しても収穫時の大腸菌群数で塩素水区の方が対照区よりも対数 値で0.4 高い値を示した以外は、処理区間に差は見られなかった。 栽培時の果皮および果肉の微生物数は、果皮の真菌数が対照区は1g 当たりの対数 値で 3.3、塩素水区は対数値で 3.5 であった以外はすべて検出限界値以下または未検 出を示した。また、処理区間に差も見られず、農業用水の塩素殺菌による効果は、果 実には直接影響しなかった。 収穫時の果皮は、栽培時に比べて増加傾向にあり、一般生菌数は栽培時の検出限界 値以下から対数値で 0.7 以上増加し、対照区では対数値で 3.1、塩素水区は対数値で 3.8 となり、処理区間に差は見られなかった。真菌数は、栽培時よりも対数値で 1.2

(18)

15 ~2.4 増加し、対照区および塩素水区はそれぞれ対数値で 4.5 および 5.9 を示し、塩素 水区の方が高い値を示した。果肉の微生物数は、対照区では微生物数はいずれも検出 限界値以下または未検出であった。しかし、塩素水区では、大腸菌群数は未検出であ ったが、一般生菌数は対数値で 2.6、真菌数は対数値で 3.4 を示し、いずれも対照区 よりも高かった。収穫時の果実は、土壌および草の上に直接敷いた収穫用ネットの上 に落下し、その果実を収穫する。栽培時の果実よりも収穫時の果実の方が高い微生物 数を示したのは、栽培時に比べ、土壌や草と接触する機会が多いため微生物数が増加 したと考えられる。カキ果実28)およびウンシュウミカン果実29においても、栽培時 に比べて収穫時の方が果皮の微生物数は高くなり、本研究と類似した結果が報告され ている。果実のpH および水分活性は、それらが果実の微生物増殖に及ぼす影響を調 べるために測定したが、サンプリング時期の違いによる差はなく、果皮の pH および 水分活性はそれぞれ4.3~5.5 および 0.950~0.971、果肉の pH および水分活性はそれ ぞれ2.7~3.0、0.952~0.968 であった。 (2)微生物種 ⅰ)環境接触物 栽培時の環境接触物である農業用水、塩素水、農業用水または塩素水を希釈水とし て溶解した農薬から検出された細菌、糸状菌および酵母を表1-2に示した。微生物数 と同様に、塩素殺菌の効果は微生物種でも顕著に見られた。農業用水からは、水由来

のAeromonas veronii や Vogesella indigofera、土壌細菌の Bacillus megaterium、

動物の粘膜に存在するNeisseria canis などを含む 17 属 21 種の細菌、植物病原菌の

Phoma macrostoma や Septoria pistaciae などを含む4属4種の糸状菌が検出された。

また、この農業用水を用いて希釈した農薬からは昆虫の病原菌である Bacillus

thuringiensis、緑膿菌の Psudomonas aeruginosa を含む7属9種の細菌、植物病原

菌 の Pythium pyrilobum を 含 む 4 属 4 種 の 糸 状 菌 、 産 膜 酵 母 の Candida

rugopelliculosa の1属1種の酵母が検出された。一方、農業用水を塩素殺菌した塩素 水からは、細菌、糸状菌および酵母はいずれも未検出であった。また、塩素水を用い て溶解した農薬からも2属2種の糸状菌が検出されただけであった。

栽培時の土壌、草および収穫用ネットから検出された細菌、糸状菌および酵母を表

(19)

16 母を表1-4に示した。栽培時の土壌および草の両サンプルについては、比較的高い微 生物数を示したため、土壌および草から検出された微生物種数は多く、土壌からは3 属 11 種~4属 12 種の細菌、9属 11 種~11 属 15 種の糸状菌および2属2種~4属 4種の酵母、草からは6属12 種~8属 16 種の細菌、5属7種~7属9種の糸状菌お よび1属1種~3属3種の酵母が検出された。微生物数において塩素殺菌の効果が見 られなかったように、微生物種数においても処理区間に差はなかった。収穫用ネット においても、微生物数に差が見られなかったように、微生物種数においても対照区お よび塩素水区からはそれぞれ、細菌では1属3種および2属4種、糸状菌では1属2 種および3属3種、酵母はいずれも未検出となり、処理区間に差は見られなかった。 栽培時の土壌、草および収穫用ネットから検出された微生物種は、Bacillus 属、

Cellulomonas 属、Mucor 属、Cryptococcus 属などの土壌菌、Pantoea 属、Fusarium

属、Penicillium 属などの植物病原菌が主であった。また、対照区の土壌および収穫

用ネットからは Bacillus cereus が検出された。しかし、嘔吐毒を産生する Bacillus

cereus 菌株は、一般に穀類と穀類栽培土壌に生存し36)、青果物等の栽培土壌からはほ どんど検出されないことが報告されている37)。したがって、本研究の場合も食性病原 菌としてよりも土壌からの汚染由来菌として捉え、果実への移行の指標菌と判断した。 一方、収穫時の土壌および草から検出された細菌および糸状菌は、栽培時よりも微 生物種数は増加し、細菌では5属 15 種~12 属 18 種、糸状菌では、9属 11 種~10 属 15 種が検出された。酵母は栽培時と同じで2属2種~3属3種であった。収穫時 においても対照区と塩素水区との間に微生物種数に差はなかった。また、収穫用ネッ トは栽培時と同程度の微生物種数となり、細菌および糸状菌は2属2種~3属3種、 酵母は未検出であった。土壌、草および収穫用ネットからは検出された微生物種は、

栽培時と同様に、Bacillus 属、Paenibacillus 属、Zygorhynchus 属などの土壌菌、

Rhizobium 属、Chaetomium 属などの植物病原菌が検出され、さらに乳酸菌の Lactococcus 属も検出された。土壌、草および収穫用ネットから検出された細菌、糸 状菌および酵母は、Izumi ら 28)29の報告によるカキ果実圃場およびウンシュウミカ ン果実圃場の土壌、草または落葉サンプル、Tuszyński ら38)の報告によるプラム果樹 園の土壌サンプルから検出された微生物種と類似し、土壌、水または植物などに多く 存在する微生物種を示した。

(20)

17 ⅱ)果実 果皮および果肉から検出された微生物(細菌、糸状菌および酵母)とそれらの推定 される汚染源について、栽培時の結果を表1-5に、収穫時の結果を表1-6に示した。 栽培時の対照区および塩素水区の果皮から検出された一般生菌数はいずれも検出限界 値以下、真菌数は対数値で 3.3 および 3.5 を示し、処理区間に有意差は見られなかっ た。微生物種数は、微生物数の結果と類似して差は見られず、対照区の果皮からは3 属4種の細菌、2属2種の糸状菌および2属2種の酵母、塩素水区の果皮からは3属 6種の細菌、3属3種の糸状菌および1属1種の酵母が検出された。果肉においては、 両処理区ともに微生物数は検出限界値以下と低く、検出された細菌、糸状菌および酵 母 も 未 検 出 ~ 2 属 3 種 と 少 な か っ た 。 対 照 区 の 果 皮 か ら 検 出 さ れ た Bacillus

megaterium、Cladosporium cladosporioides / herbarum または Mycosphaerella aronici は農業用水、Bacillus thuringiensis は農薬からも同一菌種が検出されており、 農業用水および農薬から対照区の果皮への移行が推定された。また、対照区の果皮か

ら検出されたBacillus megaterium、Cladosporium cladosporioides / herbarum また

は Mycosphaerella aronici 、 Bacillus thuringiensis 、 Zygorhynchus moelleri 、

Cryptococcus laurentii は土壌、Sporidiobolus johnsonii は土壌および草、塩素水区

の果皮から検出された Bacillus megaterium、Acremonium stromaticum は草、

Bacillus pumilus、Bacillus thuringiensis、Sporidiobolus johnsonii は土壌および草 と同一菌種が検出され、土壌および草から対照区または塩素水区の果皮への微生物の 移行が推定された。 栽培時と比較して、微生物数が増加した収穫時の両処理区の果皮は、検出された微 生物種数も増加した。収穫時の果皮の一般生菌数は、対照区と塩素水区との間に差は なく、検出された細菌種数においても対照区、塩素水区ともに6属 10 種となり、処 理区間に差は見られなかった。真菌数では塩素水区の方が対照区よりも対数値で 1.4 高い値を示したが、検出された糸状菌は対照区では12 属 12 種、塩素水区では5属5 種となり、真菌数の結果とは一致しなかった。これは、検出された真菌は酵母が大半 で、検出された酵母が同一種のみであったためである。また、酵母においても対照区 では2属2種、塩素水区では4属4種で、処理区間に差はなかった。果肉については、 各処理区の微生物種数は微生物数の結果と一致し、微生物数が検出限界値以下の対照

(21)

18

区では腐敗原因菌のAspergillus aculeatus / japonicus の1属1種のみが検出された

のに対して、一般生菌数および真菌数がそれぞれ対数値で2.6 および 3.4 を示した塩 素水区では、3属3種の細菌、1属1種の糸状菌および3属3種の酵母が検出された。 両区の果皮および塩素水区の果肉からは、産膜酵母であるCandida 属や Pichia 属が 検出されており、これらが付着した状態で塩蔵を行うと、正常の製品では帯褐紅色を 示す梅干の外観が灰褐色に変化すること39)、梅酢液の色調が紅色から茶褐色に変化す ること16)が報告されているため、これらの酵母は塩蔵前に除去しなければならない。 対照区または塩素水区の果実から検出された細菌および真菌は、栽培時と同様に土壌 および草からも同一菌種が検出されており、さらに対照区ではBacillus thuringiensis、

塩素水区ではBacillus thuringiensis、Cladosporium cladosporioides / herbarum ま

たはMycosphaerella aronici が収穫用ネットからも同一菌種が検出されており、収穫 時には土壌および草に加えて収穫用ネットも微生物汚染源となることが推定された。 ⅳ)食性病原菌 カキ果実28)圃場およびウンシュウミカン果実29圃場からは、食性病原菌であるサ ルモネラまたは腸管出血性大腸菌が環境接触物から検出されたが、本研究では、 LAMP 法の結果、栽培時および収穫時におけるすべてのサンプル(農業用水、塩素水、 農薬、土壌、草、果皮および果肉)でサルモネラ、腸管出血性大腸菌および L. monocytogenes は陰性を示し、検出されなかった(データ省略)。本研究で調査した ウメ果実圃場、Izumi らが調査したカキ果実圃場およびウンシュウミカン果実圃場と は圃場位置が異なり、さらに異なる水源を使用したために本研究では食性病原菌は陰 性を示したと考えられる。以上から、ウメ果実の微生物的安全性は高いと考えられる が、収穫時の果実からは、ポストハーベストを引き起こす植物病原菌および腐敗原因 菌が検出され、さらにウメ果実の一次加工から二次加工にかけて品質劣化の原因とし て報告されている産膜酵母が検出されているので、塩蔵前の洗浄および選果工程、塩 蔵中において果実の微生物制御を行う必要がある。

(22)

19 表1-1.ウメ果実栽培時および収穫時における環境接触物(農業用水、塩素水、農薬、土壌、草、収穫用ネット)および果実の細菌数、真菌数、pHおよび水分活性 対照区 塩素水区 対照区 塩素水区 対照区 塩素水区 対照区 塩素水区 対照区 塩素水区 栽培時 農業用水/塩素水a 3.1±0.1 ND 1.7±0.0 ND 3.1±0.0 ND 7.2±0.1 8.1±0.1 * (6月5日) 農薬 2.9±0.1 ND 2.1±0.1 ND 3.2±0.2 <2.0 7.3±0.1 7.9±0.3 * - - 土壌 5.9±0.1 6.2±0.1 * 5.4±0.3 5.4±0.2 5.5±0.2 6.0±0.1 * 5.6±1.2 5.8±0.3 0.962±0.002 0.965±0.001 草 7.0±0.2 7.2±0.0 6.2±0.0 5.0±0.2 * 6.9±0.2 6.8±0.1 5.4±1.4 6.0±0.9 0.970±0.005 0.967±0.007 収穫用ネット 2.9±0.1 2.9±0.1 3.0±0.4 3.4±0.2 2.7±0.2 2.6±0.2 - - - - 果皮 <2.4 <2.4 <2.4 <2.4 3.3±0.3 3.5±0.0 4.3±0.5 5.5±1.0 0.950±0.008 0.953±0.004 果肉 <2.4 ND ND ND <3.0 <3.0 3.0±0.3 3.0±0.1 0.958±0.001 0.960±0.007 収穫時 土壌 6.0±0.4 6.4±0.1 4.9±0.4 5.3±0.0 5.2±0.3 5.6±0.3 4.5±1.5 6.1±0.5 0.970±0.001 0.9690±0.001 (6月24日) 草 7.0±0.3 6.8±0.3 5.9±0.5 5.9±0.0 6.8±0.2 6.0±0.3 * 6.2±0.2 6.5±0.7 0.971±0.002 0.972±0.002 収穫用ネット 2.9±0.2 2.7±0.2 2.8±0.1 3.2±0.0 * 2.7±0.1 2.8±0.1 - - - - 果皮 3.1±0.5 3.8±0.6 <2.4 <2.4 4.5±0.3 5.9±0.4 * 5.1±1.6 4.7±0.6 0.955±0.008 0971±0.004 * 果肉 ND 2.6±0.1 <2.4 ND <3.0 3.4±0.0 2.7±0.1 2.8±0.1 0.952±0.009 0.968±0003 * -:未測定 ND:未検出 a対照区では農業用水をサンプルとし、塩素水区では塩素水をサンプルとした。 *:対照区と塩素水区との間で有意差(5%レベル)を示す 水分活性 一般生菌数  大腸菌群数 真菌数 工程 (分析日) サンプル

Log CFU/ml(農業用水、塩素水、農薬)、Log CFU/g(土壌、草、果実)、

Log CFU/100cm2(収穫用ネット) pH

表1 - 2 .ウメ果実栽培時における環境接触物(農業用水、塩素水および農薬) から検出された細菌、糸状菌および酵母

グラム型 属 種 属 種 属 種

農業用水 対照区 陽性 Bacillus megaterium Cladosporium cladosporioides / herbarum 未検出

/塩素水 (農業用水) 陰性 Aeromonas veronii / Mycosphaerella aronici

Enterobacter aerogenes Ganoderma resinaceum

cloacae cloacae Phoma macrostoma

pyrinus Septoria pistaciae

Flavobacterium johnsoniae (4属4種) Herbaspirillum autotrophicum huttiense Massilia timonae Neisseria canis Novosphingobium capsulatum Obesumbacterium proteus Pantoea agglomerans ananatis Pelomonas saccharophila Pseudomonas fulva Sphaerotilus natans Sphingobacterium thalpophilum Stenotrophomonas maltophilia Thiobacillus aquaesulis Vogesella indigofera (17属21種) 塩素水区 未検出 未検出 未検出 (塩素水)

農薬 対照区 陽性 Bacillus thuringiensis Botryotinia narcissicola / porri Candida rugopelliculosa

陰性 Acidovorax delafieldii / hyacinthi / tulipae (1属1種)

Enterobacter cloacae cloacae Mucor hiemalis

kobei / cloacae cloacae Phoma macrostoma

Herbaspirillum rubrisubalbicans Pythium pyrilobum

Pelomonas saccharophila (4属4種) Pseudomonas aeruginosa monteilii Serratia fonticola Stenotrophomonas maltophilia (7属9種) 塩素水区 未検出 Acremonium stromaticum 未検出 Leptosphaerulina chartarum (2属2種) 酵母 サンプル 処理区 細菌 糸状菌

(23)

20

表1 - 3 .ウメ果実栽培時における環境接触物(土壌、草および収穫用ネット) から検出された細菌、糸状菌および酵母

グラム型 属 種 属 種 属 種

土壌 対照区 陽性 Bacillus cereus Acremonium stromaticum Cryptococcus laurentii fusiformis Aspergillus aculeatus / japonicus Hanseniaspora occidentalis licheniformis Cladosporium cladosporioides / herbarum Malassezia restricta megaterium / Mycosphaerella aronici Sporidiobolus johnsonii pumilus Clonostachys compactiuscula (4属4種)

silvestris Fusarium anthophilum / napiforme simplex / nygamai / proliferatum subtilis spizizenii oxysporum

thuringiensis tricinctum Cellulomonas uda Mortierella polycephala

陰性 Raoultella ornithinolytica Mucor hiemalis

(3属11種) racemosus f. racemosus Myrothecium gramineum

Penicillium oxalicum solitum Trichoderma fertile / harzianum Zygorhynchus moelleri

(11属15種)

塩素水区 陽性 Bacillus fusiformis Aspergillus aculeatus / japonicus Candida solani megaterium Chaetomium brasiliense Sporidiobolus johnsonii niacini Clonostachys compactiuscula (2属2種)

oleronius Fusarium anthophilum / napiforme pseudomycoides / nygamai / proliferatum pumilus chlamydosporum simplex oxysporum sphaericus Mortierella polycephala thuringiensis Mucor hiemalis Cellulomonas gelida Penicillium solitum Paenibacillus amylolyticus Phoma exigua / foveata

陰性 Pseudomonas resinovorans Trichoderma aureoviride / harzianum

(4属12種) / inhamatum / virens

(9属11種)

草 対照区 陽性 Enterococcus casseliflavus Acremonium stromaticum Sporidiobolus johnsonii

陰性 Acinetobacter genomospecies 16 Alternaria alternata (1属1種)

Enterobacter aerogenes Cladosporium cladosporioides / herbarum amnigenus / Mycosphaerella aronici

asburiae Colletotrichum dematium / truncatum cancerogenus Fusarium anthophilum / napiforme pyrinus / nygamai / proliferatum Leclercia adecarboxylata tricinctum

Pseudomonas fulva Mucor hiemalis oryzihabitans Stilbella aciculosa straminea albocitrina Raoultella ornithinolytica (7属9種)

(6属12種)

塩素水区 陽性 Bacillus megaterium Acremonium stromaticum Candida railenensis pumilus Alternaria alternata Cryptococcus laurentii simplex / Cochliobolus carbonum Sporidiobolus johnsonii sphaericus / Stemphylium vesicarium (3属3種)

thuringiensis Fusarium anthophilum / napiforme Paenibacillus jamilae / nygamai / proliferatum

陰性 Enterobacter pyrinus chlamydosporum asburiae tricinctum nimipressuralis Phoma macrostoma Escherichia vulneris Zygorhynchus moelleri

Leclercia adecarboxylata (5属7種) Pantoea ananatis Pseudomonas aeruginosa oryzihabitans straminea Raoultella ornithinolytica (8属16種)

収穫用ネット 対照区 陽性 Bacillus cereus Mucor circinelloides lusitanicus 未検出

subtilis hiemalis

thuringiensis (1属2種) (1属3種)

塩素水区 陽性 Bacillus thuringiensis Cladosporium cladosporioides / herbarum 未検出 陰性 Enterobacter amnigenus / Mycosphaerella aronici

asburiae Phoma macrostoma kobei Volutella ciliata

(2属4種) (3属3種)

酵母 サンプル 処理区

(24)

21

表1 - 4 .ウメ果実収穫時における環境接触物(土壌、草および収穫用ネット) から検出された細菌、糸状菌および酵母

グラム型 属 種 属 種 属 種

土壌 対照区 陽性 Bacillus azotoformans Aphanocladium album 未検出

fusiformis Aspergillus aculeatus

megaterium aculeatus / japonicus

pumilus Chaetomium brasiliense

pycnus Clonostachys catenulatum / rosea

simplex / Gliocladium roseum

thuringiensis Fusarium oxysporum

Brevibacillus borstelensis Mortierella polycephala

choshinensis Mucor circinelloides lusitanicus

Cellulosimicrobium cellulans hiemalis

Enterococcus casseliflavus Penicillium citrinum

Lactococcus lactis hordniae / lactis lactis oxalicum

Paenibacillus agarexedens rubrum

Streptomyces durhamensis / Talaromyces flavus

陰性 Cupriavidus necator rubrum

Raoultella ornithinolytica Trichoderma fertile / harzianum

(9属16種) Zygorhynchus moelleri

(10属15種)

塩素水区 陽性 Bacillus azotoformans Acremonium stromaticum Hanseniaspora occidentalis

barbaricus Ascochyta fabae / pisi Rhodotorula mucilaginosa

circulans / Mycosphaerella rabiei Sporidiobolus johnsonii

fusiformis / Phoma macrostoma / sorghina (3属3種)

megaterium Aspergillus aculeatus / japonicus

niacini Clonostachys compactiuscula

oleronius Fusarium oxysporum

pumilus solani

simplex Penicillium oxalicum

thuringiensis Phacidium coniferarum

Paenibacillus alvei Phoma exigua / foveata

borealis macrostoma

Streptomyces mirabilis Trichoderma minutisporum

陰性 Chryseobacterium gleum fertile

Enterobacter aerogenes (9属12種)

(5属15種)

草 対照区 陽性 Cellulosimicrobium cellulans Acremonium stromaticum Rhodotorula graminis

Kurthia gibsonii Alternaria alternata Sporidiobolus johnsonii

Lactococcus lactis lactis / Cochliobolus carbonum (2属2種)

陰性 Acinetobacter genomospecies / Stemphylium vesicarium

Brevundimonas intermedia Ascochyta fabae / pisi

Chryseobacterium gleum / Mycosphaerella rabiei

scophthalmum / Phoma macrostoma / sorghina

Citrobacter murliniae Clonostachys compactiuscula

Enterobacter aerogenes Fusarium anthophilum / napiforme

pyrinus / nygamai/ proliferatum

Herbaspirillum huttiense oxysporum

Pantoea ananatis Mucor circinelloides lusitanicus

Rhizobium radiobacter Phoma andina

Sphingomonas pituitosa macrostoma

trueperi Stilbella aciculosa

Stenotrophomonas maltophilia Volutella ciliata

(13属16種) (9属11種)

塩素水区 陽性 Bacillus thuringiensis Acremonium stromaticum

Exiguobacterium acetylicum Alternaria alternata

Lactococcus lactis lactis / Cochliobolus carbonum

Microbacterium flavescens / Stemphylium vesicarium 未検出

Paenibacillus illinoisensis Aspergillus aculeatus / japonicus

pabuli Cladosporium cladosporioides / herbarum

陰性 Achromobacter insolitus / Mycosphaerella aronici

Acinetobacter calcoaceticus Clonostachys catenulatum / rosea

Chryseobacterium gleum / Gliocladium roseum

scophthalmum Clonostachys compactiuscula

Enterobacter amnigenus Didymella ligulicola

cancerogenus Fusarium anthophilum / napiforme

hormaechei / nygamai / proliferatum

kobei chlamydosporum

pyrinus Merulius tremellosus

Escherichia hermannii Phoma exigua / foveata

Pantoea agglomerans macrostoma

Serratia marcescens Zygorhynchus moelleri

(12属18種) (11属13種)

収穫用ネット 対照区 陽性 Bacillus thuringiensis Fusarium oxysporum 未検出

陰性 Stenotrophomonas maltophilia Mucor circinelloides

(2属2種) Trichoderma fertile / harzianum

(3属3種)

塩素水区 陽性 Bacillus thuringiensis Alternaria alternata 未検出

Microbacterium flavescens / Cochliobolus carbonum

陰性 Sphingobacterium multivorum / Stemphylium vesicarium

(3属3種) Pestalotia rhododendri

(2属2種)

酵母

サンプル 処理区

(25)

22 表1 - 5 .ウメ果実の栽培時における果皮および果肉から検出された細菌、糸状菌および酵母と推定される汚染源

グラム型 属 種 属 種 属 種

果皮 対照区 陽性 Bacillus megaterium 農業用水、土壌 Cladosporium cladosporioides / herbarum 農業用水、土壌、草 Cryptococcus laurentii 土壌

thuringiensis 農薬、土壌 / Mycosphaerella aronici Sporidiobolus johnsonii 土壌、草

Paenibacillus agarexedens Zygorhynchus moelleri 土壌 (2属2種)

Staphylococcus epidermidis (2属2種) (3属4種)

塩素水区 陽性 Bacillus cereus Acremonium stromaticum 草 Sporidiobolus johnsonii 土壌、草

megaterium 草 Aureobasidium pullulans (1属1種)

pumilus 土壌、草 Cladosporium cladosporioides/herbarum thuringiensis 土壌、草 / Mycosphaerella aronici

Brevibacillus parabrevis (3属3種)

Rhodococcus equi

(3属6種)

果肉 対照区 陽性 Paenibacillus daejeonensis 未検出 Cryptococcus laurentii 土壌

jamilae (1属1種) Staphylococcus epidermidis (2属3種) 塩素水区 陽性 未検出 Bipolaris micropus 未検出 (1属1種) 酵母 同一菌株が検出された 環境接触物 サンプル 処理区 細菌 同一菌株が検出された環境接触物 糸状菌 同一菌株が検出された環境接触物 表1 - 6 .ウメ果実の収穫時における果皮および果肉から検出された細菌、糸状菌および酵母と推定される汚染源 グラム型 属 種 属 種 属 種

果皮 対照区 陽性 Bacillus oleronius Acremonium stromaticum 草 Candida pignaliae

pumilus 土壌 Alternaria alternata 草 Sporidiobolus johnsonii 土壌、草

thuringiensis 農薬、土壌、収穫用ネット/Cochliobolus carbonum (2属2種)

Cellulosimicrobium cellulans 土壌、草 /Stemphylium vesicarium

Micrococcus luteus Ascochyta fabae / pisi

Paenibacillus agaridevorans /Mycosphaerella rabiei

amylolyticus /Phoma sorghina

Sporosarcina globispora Cladosporium cladosporioides / herbarum

Streptomyces filamentosus / Mycosphaerella aronici

griseinus Clonostachys compactiuscula 草

(6属10種) Coniothyrium fuckelii

Diaporthe phaseolorum

Phacidium coniferarum

Phaeosphaeria avenaria f. sp. avenaria

/avenaria f. sp. triticea

Phoma macrostoma 農業用水、草

Stilbella aciculosa 草

Volutella ciliata 草

(12属12種)

塩素水区 陽性 Bacillus megaterium 土壌、草 Ascochyta pisi Candida quercitrusa

pumilus 土壌、草 / Mycosphaerella rabiei Hanseniaspora occidentalis 土壌

thuringiensis 土壌、草、収穫用ネット / Phoma sorghina Pichia membranifaciens

Curtobacterium albidum / citreum Cladosporium cladosporioides / herbarum 草、収穫用ネット Sporidiobolus johnsonii 土壌、草

pusillum / Mycosphaerella aronici (4属4種)

Lactobacillus plantarum Leptosphaerulina chartarum

Microbacterium liquefaciens / maritypicum Phacidium coniferarum 土壌

/ oxydans Phomopsis sclerotioides

Paenibacillus illinoisensis 草 (5属5種)

Streptomyces corchorusii / sp

polychromogenes (6属10種)

果肉 対照区 未検出 Aspergillus aculeatus / japonicus 土壌 未検出

(1属1種)

塩素水区 陽性 Bacillus thuringiensis 土壌、草、収穫用ネット Aureobasidium pullulans Candida fructus / musae

Lactobacillus plantarum (1属1種) Pichia membranifaciens

Paenibacillus polymyxa Sporidiobolus johnsonii 土壌、草

(3属3種) (3属3種)

酵母 同一菌株が検出された

環境接触物

(26)

23 第 2 節 ウ メ 果 実 の 収 穫 後 か ら 一 次 加 工 に お け る 微 生 物 制 御 1.材料および方法 1)分析用サンプル ウメ圃場(和歌山県田辺市)において、平成 22 年6月から9月にかけて、収穫、 一次洗浄、選果、塩蔵8週間、二次洗浄、天日干し5日間および出荷工程を行い、そ の後、和歌山県田辺市のウメ果実加工会社(中田食品株式会社)で出荷後の実験サン プルの二次加工(調味漬け21 日間)を実施した(図1-1)。本研究では、一次加工工 程中の環境接触物の一次洗浄水、選果機洗浄水、選果後浸漬水および二次洗浄水に貯 水あるいは井戸水を使用する対照区と塩素水あるいは弱酸性次亜水を使用する塩素水 区を設けた。 最初の収穫工程では、収穫後のウメ果実を分析サンプルとし、収穫果実 160kg を 80kg ずつ対照区および塩素水区に分けた。対照区では、慣行的に一次洗浄、選果、塩 蔵、二次洗浄、天日干し、出荷の順で一次加工を行った。一次洗浄工程では、洗浄用 タンク(容量3t)に入った貯水を一次洗浄水とし、一次洗浄水に果実を 30 分間浸 漬し、一次洗浄後果実、一次洗浄水および洗浄用タンクを分析サンプルとした。選果 工程では、選果機を用いて果実80kg を選果し、L サイズの果実約 20kg をその後の実 験用サンプルとした。選果機では、果実を選果する回転ドラム部の前にシャワー部が 付いており、この水を選果機洗浄水(井戸水)として分析した。続く塩蔵では、果実 20kg に対して食塩4kg をビニールの入ったタル(80L 容)の中に入れ、6月 29 日 に塩蔵を開始した。その後、8月 23 日までの約2か月間塩蔵を行い、塩蔵中も果実 および塩水を約2週間ごとに4回サンプリングした。塩蔵終了後、天日干し前の果実 の洗浄である二次洗浄を行い、洗浄後の果実、二次洗浄水として使用した井戸水を対 象サンプルとした。二次洗浄後、5日間天日干しを行い、天日干し3日目の果実をサ ンプリングした。8月30 日に、天日干しのウメ果実2kg を出荷用容器(11L容)に 詰め、二次加工工程のために、ウメ果実加工会社に出荷した。 これに対して塩素水区では、一次洗浄工程において、貯水にケミクロンG を添加し て作製した有効塩素10ppm の塩素水を一次洗浄水とした。一次洗浄水(塩素水)、洗

(27)

24 浄後の果実および洗浄用タンクをサンプルとした。選果工程では、選果を行う前に選 果機を有効塩素50ppm の弱酸性次亜水(:次亜水)(株式会社タクミナ製:弱酸性次 亜水生成装置サラファインS タイプ)を用いて洗浄し、さらに選果機洗浄水にも次亜 水を用いた。対照区と同様に、洗浄後の選果機で果実 80kg を選果し、L サイズの果 実約 20kg をサンプリングした。洗浄後選果機および選果機洗浄水(次亜水)につい ても分析サンプルとした。選果後、塩蔵を行う前にウメ果実 20kg をタル(80L容) に入れ、ウメ果実が浸るまで次亜水を入れ、5分間浸漬した。この際、選果後浸漬し た果実についても分析を行った。対照区と同様に、塩分濃度20%で塩蔵を2か月間行 い、塩蔵中の果実および塩水について約2週間ごとに4回サンプリングした。塩蔵終 了後、二次洗浄水(次亜水)で果実を洗浄し、二次洗浄水および洗浄後果実を分析し た。その後の天日干しおよび出荷は対照区と同様に行った。 一次洗浄水、選果機洗浄水、塩水および二次洗浄水は、それぞれ100ml 容の滅菌済 みネジ口瓶にヘッドスペースがない程度まで採取し、滅菌済みのサンプリングバッグ に入れた。果実サンプルについては、以下のように採取した。収穫時の果実は、コン テナ内から 10 個採取した。一次洗浄工程では洗浄後の果実、選果工程では選果後の 果実、塩素水区における選果後浸漬工程では、浸漬後の果実を1反復につき 10 個採 取した。塩蔵中は、塩蔵用タルの表面の果実を1反復につき5個採取した。二次洗浄 工程では洗浄後の果実、天日干し工程では天日干し用のネット上にある果実、出荷工 程では出荷用容器から果実をそれぞれ5個採取した。果実は、収穫から塩蔵0日目ま では果皮部および果肉部に分けて分析し、塩蔵2週目以降は種子を除いた果皮部およ び果肉部を分析した。洗浄用タンクおよび選果機は、表面の微生物サンプリングのた め、それぞれのサンプリング箇所を特定した。サンプリング箇所は、洗浄用タンクは、 果実と接触する内側の部分を分析対象とした。選果機は、果実を移動させるコンベア 部、選果する回転ドラム部、果実の出口のスロープ部の微生物をサンプリングした。 出荷後の対照区および塩素水区のウメ果実は、ウメ果実加工場内で慣行通りに二次 加工を行った。ウメ果実は、洗浄後、調味液(原材料:食塩、砂糖、果糖ぶどう糖液 糖、酒精、グルタミン酸Na、醸造酢、りんご酢、赤キャベツ色素およびビタミン B1) で 21 日間調味漬込みを行い、梅干し(対照区:塩度 9.82g/100g、酸度(クエン酸換 算)3.16g/100g、pH 2.57 および Brix 27.0%、塩素水区:塩度 9.78g/100g、酸度(ク

(28)

25 エン酸換算)3.16g/100g、pH 2.59 および Brix 27.2%)に加工した。 2)測定項目および方法 (1)pH 一次洗浄水、選果機洗浄水、塩水および二次洗浄水は、カスタニーLAB pH メー ターを用い、果実はTwin pH メーターを用いて測定した。 (2)水分活性 果実の水分活性の測定にはロトロニック水分活性システム Aw-パームを使用し、各 サンプル中の自由水の純水に対する比(Aw)で表した。 (3)微生物 ⅰ)細菌数および真菌数の測定 一次洗浄水、選果機洗浄水、塩水および二次洗浄水の微生物数の測定は、第1節と 同様に寒天平板法で行い、一般生菌数の測定には標準寒天培地、大腸菌群数の測定に はデゾキシコレート培地、真菌数の測定には、一次洗浄水、選果機洗浄水および二次 洗浄水では100mg/l クロラムフェニコールを加えたポテトデキストロース寒天培地を 用い、塩水ではポテトデキストロース寒天培地に塩化ナトリウム(ナカライテスク株 式会社製)濃度が5%となるように添加した培地を用いた。標準寒天培地は 37℃で 48±3時間、デゾキシコレート培地は 37℃で 20±2時間、ポテトデキストロース寒 天培地は 26℃で 72±3時間インキュベーター内で培養した。培養後に出現したそれ ぞれのコロニーをコロニーカウンターでカウントし、一次洗浄水、選果機洗浄水、塩 水および二次洗浄水1ml 当たりのコロニー数を対数値で表した。 果実については、クリーンベンチ内でメスを使用して収穫期から塩蔵0日目までは 果皮部と果肉部に分け、それぞれ果皮サンプルおよび果肉サンプルとし、塩蔵2週目 以降は種子を除く果皮部および果肉部を果実サンプルとした。果皮および果肉は、そ れぞれ10g ずつ秤量し、滅菌生理食塩水 90ml と共にストマフィルターに入れて磨砕 し、磨砕後、適宜希釈した。上記のように、一般生菌数、大腸菌群数、真菌数の測定 にはそれぞれ標準寒天培地、デゾキシコレート培地、クロラムフェニコール加ポテト デキストロース寒天培地(収穫~選果工程)、5%塩化ナトリウム加ポテトデキストロ ース寒天培地(塩蔵0日目以降)を使用した。洗浄用タンクおよび選果機の果実との 接触面の付着菌数は、フードスタンプを用いて測定した。選果機については、コンベ

(29)

26 ア部、回転ドラム部およびスロープ部をそれぞれ1反復ずつ測定したので、3箇所の 平均値を選果機の菌数とした。 ⅱ)細菌の同定 第1節と同様の MicroSeq 法で、(ⅰ)細菌の培養(ⅱ)細菌の分離(合計 176 菌 株)(ⅲ)ゲノムDNA の抽出(ⅳ)16S rDNA 領域の PCR 増幅(ⅴ)塩基配列の決 定(ⅵ)ホモロジー検索による同定を行なった。 ⅲ)真菌の同定 第1節と同様の MicroSeq 法で、(ⅰ)糸状菌および酵母の分離(それぞれ合計 82

菌株および90 菌株)(ⅱ)ゲノム DNA の抽出(ⅲ)D2 LSU rDNA 領域の PCR 増

幅(ⅳ)塩基配列の決定(ⅴ)ホモロジー検索による同定を行なった。 (4)食性病原菌の検出 ⅰ)サルモネラ 果皮および果肉(収穫から塩蔵0日目)、果実(塩蔵 20 日目以降)、一次洗浄水、 選果機洗浄水、塩水および二次洗浄水をサンプルとし、第1節と同様に、LoopampⓇ サルモネラ検出試薬キットを使用してLAMP 法により存在の確認を行った。 ⅱ)腸管出血性大腸菌 上記のサルモネラの有無の検査の場合と同様に、LAMP 法により LoopampⓇ腸管出 血性大腸菌検出試薬キットを用いて存在の確認を行なった。 ⅲ)L. monocytogenes 上記のサルモネラおよび腸管出血性大腸菌の有無の検査の場合と同様に、Loopamp ⓇL. monocytogenes 検出試薬キットを用いて LAMP 法により存在の確認を行なった。

参照

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