• 検索結果がありません。

学級単位で行う認知的心理教育と社会的スキル訓練が中学生の友人に対する感情に与える影響の比較

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "学級単位で行う認知的心理教育と社会的スキル訓練が中学生の友人に対する感情に与える影響の比較"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-56 232

-学級単位で行う認知的心理教育と社会的スキル訓練が

中学生の友人に対する感情に与える影響の比較

○江畑 慎吾1)、神村 栄一2) 1 )中京学院大学保育科、 2 )新潟大学 【問題と目的】 思春期において,友人の存在は心理的安定を保つた めに重要な役割を果たすことが指摘されているが,そ の一方で友人関係は生徒の不適応状態を引き起こす原 因にもなりうる。中井(2016)は,友人に対する安心 感や不信感といった,友人への感情が学校適応感に影 響を及ぼしていることを示唆している。このことから も友人に対する感情をターゲットにした介入には大き な意義がある。多様な生徒がいる学級をベースに友人 に対する感情をターゲットにした介入を行う際は,包 括的なプログラムが求められる。ただ,今日の教育現 場の多忙さを鑑みると,学校現場で介入実践を行う 際,その効果を損ねない範囲でプログラムをできるだ けコンパクトにすることが求められる。そのため,プ ログラムの構成要素が,友人に対する感情において, 安心感や不安といったどのような感情に影響を及ぼす かを実践的に検討する必要がある。そこで本研究で は,認知的心理教育による認知介入とSSTによる行動 介入が中学生の友人に対する感情に与える影響を検討 することを目的とする。 【対象生徒と研究デザイン】 A 市にある公立 B 中学校に在籍する第 2 学年の 2 学 級,計47名がプログラムに参加した。プログラムは学 級単位で実施され,学級ごとに認知的心理教育プログ ラムが行われる心理教育群(24名)とSSTが行われる SST群(23名)とに割り付けられた。なお,同じ A 市 内の別の公立 C 中学校に在籍する第 2 学年の 1 学級, 25名が,介入なく測度にのみ協力する統制群として参 加した。本研究の研究デザインをFigure1に示す。 【倫理面への配慮】 介入を行う中学校の校長及び生徒の保護者には、筆 者が授業時間にプログラムを行うことを含めた研究内 容と計画を提示し,同意を得た。また,すべての生徒 に対してプログラムの内容について説明され,「受け たくない場合は担任教師に申し出ることができる」や 「プログラムの最中でも中断を申し出ることができ る」といったことが生徒に説明され,参加合意の確認 がなされた。 【プログラムの効果評価】 心理教育プログラム,及びSSTが中学生の友人に対 する感情に及ぼす影響を測定するために,榎本(1999) が中学生から大学生を対象者として作成した「友人に 対する感情尺度」が採用された。また,戸ケ崎・岡 安・坂野(1997)が作成した中学生用社会的スキル尺 度も実施された。 【プログラム内容】 各プログラムは, 1 セッションを50分とし 2 セッ ションずつ行われた。各セッションは,学級活動の時 間を使用して,隔週で実施された。プログラムのト レーナーは第一著者が務め,グループでの話し合いや ロールプレイ,ワークシートへの記入の際,活動のサ ポート役として,プログラム実施学級の担任教諭 1 名 が加わった。SSTプログラムは,教示,DVD教材を用い たモデリング,ロールプレイとリハーサルで構成さ れ,プログラム 1 では「上手な断り方」がテーマとさ れた。SSTプログラム 2 では,アサーティブな意見の 言い方がテーマとされた。認知的心理教育プログラム は,「自動思考」についての学習と多様な考え方をす る練習がテーマとされた。挨拶場面での受け取り方の 違いを例に挙げ,同じ出来事でも人によって感じ方 (気持ち)が異なることを確認した。心理教育プログ ラム 2 では,「自動思考」についての振り返りと 3 つ の練習場面を設定し,それぞれの場面ごとで,いろい ろな考え方をする練習を行った。 【分析方法】 統計分析は,群 3 (心理教育群,SST群,統制群) と時期 2 (Pre,Post)を要因とし,各因子の尺度得 点を従属変数とした 2 要因の分散分析を実施した。ま た,分散分析に加えて,全ての群でPre-Post間にお ける効果量( d 値)が算出された。 d 値はその絶対値 について,d=0.20は小さい,d=0.50は中程度,d= 0.80を大きい効果として判断した(Cohen,1988)。 【友人に対する感情について】 認知的心理教育とSST,それぞれの実施が友人に対 する感情に及ぼす影響を比較検討するため,各下位尺 度得点を従属変数として 2 要因の分散分析を行った。 「信頼・安定」に関する分析の結果,時期の主効果と 交互作用が有意であった(F(2,52)=3.20, p<.05)。 単純主効果の検定を行ったところ,心理教育群におい てPost期の得点がPre期に比べて有意に高いことが示 された。「不安耐性」に関する分析の結果,時期の主 効 果 に 有 意 差 が 認 め ら れ た(F(1,52)=10.52, p< .05)。交互作用は有意ではなかったが,群の主効果は 有意であり,多重比較の結果,統制群と心理教育群の

(2)

日本認知・行動療法学会 第44回大会 一般演題 P1-56 233 -間にのみ有意差が認められ,心理教育群の得点の方が 有意に高いことが示された。「葛藤耐性」に関する分 析では,時期の主効果に有意差が見られた(F(1,52) =6.69, p<.05)。交互作用は有意ではなかったもの の,群の主効果は有意であり,多重比較の結果,統制 群と心理教育群の間にのみ有意差が認められ,心理教 育群の得点の方が有意に高いことが示された。 【社会的スキルについて】 心理教育群とSST群における社会的スキル得点の変 化について検討するため,社会的スキル得点の総和を 従属変数とした分散分析を行った。分析の結果,時期 の主効果(F(1,52)=6.23, p<.05)と群と時期の交互 作用が有意であった(F(2,52)=4.39, p<.05)。単純 主効果の検定を行ったところ,SST群における時期の 単純主効果が有意であり,Preと比べてPost期で有意 に得点が高いことが示された。併せて,Post期におい て,心理教育群,統制群と比べSST群の得点が有意に 高いことも示された。 【考察】 本研究の目的は,認知的心理教育とSSTが中学生の 友人に対する感情にどのような影響を及ぼすか検討す ることであった。分析の結果から,「信頼・安定」の 尺度において,SST群,統制群と比較し,心理教育介 入の有効性が示された。これにより,生徒の友人に対 する信頼感の向上を目的とする場合,認知的心理教育 を行うことが効果的であると言える。また,認知的心 理教育においては,「不安耐性」と「葛藤耐性」の尺 度においても,ある程度の効果が確認された。 d 値も 共に0.8以上と大きい効果サイズを示していることを 踏まえて考えると,認知的心理教育を行うことは中学 生の友人に対する不安や葛藤感情の改善にも効果が期 待できると推察される。ただ,本研究では,各プログ ラムが中学生の友人に対する感情に及ぼす影響の検討 することを第一目的としたこと,特に統制群として尺 度への協力をお願いした生徒への負担を考え,測定す る尺度を限定した。本来であるならば,認知の偏りを 測定する尺度や学校適応感を測定する尺度等を併せて 測定することで,どのような媒介変数を経て友人への 感情に変化が生じたのかをあらゆる角度から検討する 必要もあった。加えて,各プログラムのセッション数 の検討も今後の課題である。今後はいっそうの,各種 の介入ごとの効果の吟味,実施回数を含めた介入方法 の洗練化が求められる。

参照

関連したドキュメント

3月6日, 認知科学研究グループが主催す るシンポジウム「今こそ基礎心理学:視覚 を中心とした情報処理研究の最前線」を 開催しました。同志社大学の竹島康博助 教,

うのも、それは現物を直接に示すことによってしか説明できないタイプの概念である上に、その現物というのが、

大学は職能人の育成と知の創成を責務とし ている。即ち,教育と研究が大学の両輪であ

 彼の語る所によると,この商会に入社する時,経歴

教育・保育における合理的配慮

( 同様に、行為者には、一つの生命侵害の認識しか認められないため、一つの故意犯しか認められないことになると思われる。

あれば、その逸脱に対しては N400 が惹起され、 ELAN や P600 は惹起しないと 考えられる。もし、シカの認可処理に統語的処理と意味的処理の両方が関わっ

さらに体育・スポーツ政策の研究と実践に寄与 することを目的として、研究者を中心に運営され る日本体育・ スポーツ政策学会は、2007 年 12 月