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ノート 医療薬学 42(12) (2016) バイオアベイラビリティの個体差を考慮した母集団薬物動態解析の有用性評価 (2) * 松葉映美, 宇佐美陽平, 服部龍太郎, 深尾美紀, 橋本征也富山大学大学院医学薬学研究部医薬品安全性学研究室 Evaluation of Usefulne

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42(12) 809―816 (2016)〒930-0194 富山市杉谷2630

バイオアベイラビリティの個体差を考慮した

母集団薬物動態解析の有用性評価(2)

松葉映美,宇佐美陽平,服部龍太郎,深尾美紀,橋本征也* 富山大学大学院医学薬学研究部医薬品安全性学研究室

Evaluation of Usefulness of Population Pharmacokinetic Analysis Considering

Interindividual Variability of Bioavailability (2)

Emi Matsuba, Youhei Usami, Ryutaro Hattori, Miki Fukao and Yukiya Hashimoto*

Graduate School of Medicine and Pharmaceutical Sciences, University of Toyama Received June 30, 2016

Accepted October 3, 2016

 We previously reported that there is a positive correlation between the oral clearance (CL/F) and the apparent volume of distribution (V/F) of drugs with variable bioavailability (F). The aim of the present study using the computer simulation method was to further evaluate the usefulness of the population pharmacokinetic analysis model assuming the covariance of CL/F and V/F (ωCL/F, V/F). The log likelihood difference (LLD) between the covariance and non-covariance model analysis was weakly altered by the change of the inter-individual difference of volume of distribution (V) and systemic clearance (CL), and was slightly altered by the change of intra-individual error of blood concentration measurement. The LLD was also weakly altered by the change of the blood sampling design and by the number of subjects in clinical trials. In contrast, the LLD was significantly affected by the change of the range of F. However, the LLD value for the clinical trial of the drug with 80-100% of F was still statistically significant. Therefore, we should use the covariance model for the population pharmacokinetic analysis for drugs with mean F below 80%.

 Key words ―― covariance model, nonlinear mixed effects model (NONMEM), bioavailability, population pharmacokinetics, bisoprolol

緒  言

我々はミゾリビンやビソプロロールなどの薬物 では,バイオアベイラビリティ(F)が薬物動態 の個体差の要因であることを報告してきた.1, 2) 前の研究において,F の個体差が経口クリアラン ス(CL/F)と見かけの分布容積(V/F)に与え る影響を評価した.3)その結果,F に大きな個体 差を導入すると,CL/F と V/F には正の相関が認 められ,それぞれの分散(ω2 CL/Fと ω2V/F)は大き くなり,両者には共分散(ωCL/F,V/F)が生じるよ うになることが明らかとなった.3)従って,F に 個体差が想定される薬物の母集団解析に際して は,ωCL/F,V/Fを導入し CL/F と V/F の相関性を考慮 することが妥当であると考えられた.2, 4-6) さらに,我々がコンピュータシミュレーション の 手 法 を 用 い て, 厳 密 に ωCL/F,V/Fを 導 入 し た covariance modelの 有 用 性 を 評 価 し た と こ ろ, covariance modelでのデータへの適合性(-2 log likelihood)は,ωCL/F,V/Fを導入しない non-covariance modelへのデータ適合性(-2 log likelihood)に比 べ顕著に良好(log likelihood difference,LLD >> 6.64:P << 0.01)であることがわかった.3)しかし, 以前のシミュレーション研究では特定の薬物動態 特 性 と 臨 床 試 験 デ ザ イ ン を 仮 定 し covariance

(2)

性能評価には至っていない.3)そこで本研究では, 未だ明らかになっていない covariance model の特 性を評価するため,幾つかのシミュレーションを 追加した.より具体的な評価項目は,1)F にど の程度の個体差があれば covariance model は有用 か? 2)薬物血中濃度の個体内変動,およびク リアランス(CL)や分布容積の個体間変動が大 きい場合にも,covariance model の有用性は維持 されるか? 3)臨床試験の経費を節減するため, 薬物を繰り返し投与するプロトコルから単回投与 試験に変更した場合,covariance model の性能が 大きく変化しないか? 4)全被験者数を 50 人か ら 40 人,あるいは 30 人に減らした場合でも, covariance modelによる解析精度は大きく劣化し ないか? 5)1 人当たりの採血が 3 点ある被験 者の半数を,1 点しか採血しない被験者に変更し た場合でも covariance model の性能は維持できる か? などである. 

方  法

1.仮想対象および研究プロトコル 本研究では,前回のシミュレーション研究と同 様に,ビソプロロールの臨床薬物動態試験を参考 にしてシミュレーションを行った.2, 3)すなわち, 対象は Table 1 に示した仮想被験者と仮想薬物で ある.体重(WT)は 40-80 kg の範囲で一様乱 数を発生させることにより仮定した.クレアチニ ンクリアランス(CLcr)は,健常人において 100 mL/min程度であり腎機能低下時においては 3 分 の 1 にまで低下すると仮定し,2 – 6 L/hr の範囲 で一様乱数を用いて算出した.投与量は 5 mg/day とした.F は 40-100%の範囲で変動すると仮定 し,一様乱数を用いて算出した.また,各個人の CLおよび V は,10%の CV 値を想定し正規乱数 を発生させた.血中薬物濃度は以下の式を用いて 算出した. C = F・D/V・exp (-CL/V・t)・{1-exp(-n・CL/V・τ)}/ {1-exp(-CL/V・τ)} (1) D,τ,t,n はそれぞれ投与量,投与間隔,定常 状態における最終投与後の経過時間,薬剤の繰り 返し投与回数を表す.式(1)において n = ∞の時 は,薬剤を繰り返し投与後の定常状態における最 終投与後の血中薬物濃度を表し,n = 1 の時は, 単回投与時の血中薬物濃度を表す.血中濃度測定 値は,7%の CV 値を想定して正規乱数を発生さ せて作成した.7)なお,一様乱数および正規乱数 は Microsoft Excel® 2013を用いて発生させた. 本研究では,薬物の性質の影響の評価に関して は,F の変動範囲や CL および V の CV 値(ωCL と ωV),あるいは血中濃度測定値の CV 値(σ) を変動させた.一方,臨床試験デザインの評価に 関しては,Table 2 に示すように採血点数ごとの 仮想被験者数(n)あるいは投与回数を変動させ た.なお,総被験者数(N)を 50 ではなく,40, 30に変化させる場合には,各 n を 4/5 あるいは 3/5に減らした. 2.母集団薬物動態解析 ビソプロロールの母集団動態解析に準じた方法 を用いた.2)すなわち,繰り返し急速投与の 1-コ ンパートメントモデルは CL/F と V/F に関してパ ラメータ化した.i 番目の被験者における CL/F と V/F は以下の式を用いてモデル化した. CL/Fi = (θ1・WT + θ2・CLcr)・(1 + ηCL/Fi) (2) V/Fi = θ3・WT・(1 + ηV/Fi) (3) ここで,θ1・WT + θ2・CLcr と θ3・WT はそれぞれ, 経口クリアランスと見かけの分布容積の予測した Dose (mg/day) 5 Weight (kg) 40 – 80 CLcr (L/hr) 2 – 6 V (L) 2・WT (CV = 10%) CL (L/hr) 0.04・WT + 0.8・CLcr (CV = 10%) F (%) 40 - 100 σ (%) 7

CLcr: cleatinine clearance, V: volume of distribution, WT: weight, CL: systemic clearance, F: bioavailability, σ: intra-individual variability

(3)

母集団平均値を示す.本研究において,確率変数 である ηCL/Fiと ηV/Fiは平均 0,分散 ω2CL/F,ω2V/Fの

正規分布に従うと仮定し,ωCL/F,V/Fを導入してい

ないモデルを non-covariance model,ωCL/F,V/Fを導 入したモデルを covariance model とした.i 番目

の被験者における j 番目に得た血中濃度(Cij)は i番目の被験者において j 番目に推定した血中濃 度(Cij*)から正規分布に従うと仮定した. Cij = Cij*・(1 + εij) (4) すなわち,εijは,平均 0,分散 σ2の正規分布に 従う確率変数であり,個体内変動および血中濃度 の測定誤差を表す. データ解析は Windows 8.1 コンピュータにおい て NONMEMソフトウェア( double precision NONMEM Version VI Level 2.0, PREDPP Version V Level 2.0, NM-TRAN Version IV Level 2.0, Beal SL and Sheiner LB, San Francisco, CA, USA)を用いて

行った.8)本研究において,著者らは急速投与に お け る 1-コ ン パ ー ト メ ン ト モ デ ル に 対 し て, NONMEM-PREDPPのサブルーチン ADVAN1 と TRANS2を使用した.2, 8) 3.母集団動態解析の性能評価 (1)LLD 解析結果のデータへの適合性の統計的有意性 は,NONMEM が 算 出 し た 目 的 関 数 値(-2 log likelihood)を用いた尤度比検定で評価した.8)

研究においては,covariance model と non-covariance modelの目的関数の差(LLD)を用いて,covariance modelの統計的有意性を評価した.すなわち,パ ラメータ数が 1 つ増減する 2 つのモデル間の目的 関数の差(LLD)が 6.64(P < 0.01)もしくは 3.84 (P < 0.05)より大きい時,そのパラメータの値 は統計的に有意であると判定した. (2)相対的なバイオアベイラビリティ( Frel) 本研究においては,LLD に加えて新たに相対 的なバイオアベイラビリティ(Frel)を評価指標 として用いた.3)仮想薬物は静脈投与試験を想定 していないため,絶対的 F を推定することは不 可能である.しかし,ベイジアン解析で算出した CL/FBayesや V/FBayesから母集団平均値を 1 とした相 対的な F を推定することは可能である.すなわち, Frelは 母 集 団 平 均 CL/F(V/F) を 各 個 人 の CL/ FBayes(V/FBayes)で除することによって得られると 仮定し,次のような式を用いて算出した. Frel = θ1・WT + θ2・CLcr CL ⁄ FBayes (5) Frel = θ3・WT V ⁄ FBayes (6) 本研究においては,式(5)および式(6)から求めた Frelの平均値を用いた. また,Frelの推定精度を評価するために% error を 次のようにして計算した.7) % error = (推定値-真値)÷ 真値 ⊗ 100 (7) この% error の平均値は偏りの度合を表し,0 に 近いほど推定値が正確であることを示す.また,% errorの標準偏差はパラメータの推定精度を表し, 値が小さいほど精度が高いことを示す.

Ideal design Realistic design

Repetitive dose Single dose Repetitive dose Single dose

3 h, 24 h, 24 h (n = 10) 3 h, 8 h, 24 h (n = 10) 3 h, 24 h, 24 h (n = 5) 3 h, 8 h, 24 h (n = 5) 3 h, 3 h, 24 h (n = 10) 3 h, 10 h, 24 h (n = 10) 3 h, 3 h, 24 h (n = 5) 3 h, 10 h, 24 h (n = 5) 3 h, 24 h (n = 30) 3 h, 24 h (n = 30) 3 h, 24 h (n = 30) 3 h, 24 h (n = 30)

3 h (n = 5) 3 h (n = 5)

24 h (n = 5) 24 h (n = 5)

Fig 1(a)- (i) Fig 2(a) Fig 2(b) Fig 2(c)

(4)

結  果

1.薬物の特性による母集団解析への影響 Fの変動範囲や CL および V の CV 値(ωCLと ωV),あるいは血中濃度測定値の CV 値(σ)を 変化させた時の covariance model のモデル適合性 と Frelの推定精度に対する影響を評価した(Fig 1 (a) – (i)).なお,臨床試験のデザインは,N = 50 であり,薬物を連続投与し,1 人当たり 2~3 点の 採血を行う理想的な試験を想定した(Table 2, Ideal design & Repetitive dose).Figure 1(e)は前報 の シ ミ ュ レ ー ションと同 条 件 で あ る F(40- 100%)および ωVと ωCL(10%),σ(7%)を用い ており,3) 

LLDお よ び Frelの% error は そ れ ぞ れ 55.72,1.8 ∓ 9.9 となり,covariance model の有益

性を再確認できた.以降は,この Fig 1(e)を basic drugとして F,ωV,ωCL,σ の変動による影響を 評価した. Figure 1(a) – (c)は,F の変動範囲の違いによ る影響を示したが,F の変動範囲が小さくなると LLDが小さくなる傾向が認められた.すなわち, Fig 1(a), (b)に お い て,F の 変 動 範 囲 を 60 – 100%もしくは 70 – 100%にした時,LLD は 24.02 と 12.41 であり,母集団解析における covariance modelの統計的有意性(P < 0.01)を示した.ま た Fig 1(c)において,F が比較的に良好である場合 (F = 80-100%) で も LLD は 5.10 で あ り,non-covariance modelと比較して covariance model 方が 統計的に有意となった(0.01 < P < 10.05).一方,%

errorを指標として評価した Frelの推定精度(標準

Fig 1 Effect of bioavailability (F), inter-individual variability (ω), and intra-individual variability (σ) on estimation of

relative bioavailability (Frel)

(5)

偏差)は,basic drug と比較して大きな差はなく, Fの変動範囲の違いは Frelの推定精度に顕著な影 響を示さなかった(Fig 1(a) – (c)). 次に,血中濃度測定値の CV 値(σ)すなわち, 個体内変動の違いによる影響を評価した(Fig 1 (d) – (f)).その結果,σ が 4%,7%,12%と大 きくなるにつれて LLD は小さくなる傾向を示し た(Fig 1(d) – (f)).しかし,σ を 12%とした時 でも,LLD は 31.19 であり,母集団解析における covariance modelの統計的有意性(P << 0.001)が 認められた(Fig 1(f)).一方,Frelの推定精度(% errorの標準偏差)は σ の増加に伴い悪化する傾 向を示したが,basic drug と比較して大きな差は なく,比較的良好に推定可能であった(Fig 1(d) – (f)). さらに,CL および V の CV 値(ωCLと ωV)す なわち,個体間変動の違いによる影響を評価した (Fig 1(g) – (i)).ωVおよび ωCLを 5%,15%また は 20%にしてシミュレーションを行ったところ, ωVおよび ωCLが大きくなるのに伴い LLD は小さ くなる傾向を示した.しかし,ωV = ωCL = 20%の 時でも LLD は 19.62 であり,母集団解析におけ る covariance model の統計的な有益性(P < 0.001) が認められた(Fig 1(i)).一方,Frelの% error の標

準偏差は,ωVと ωCLが大きくなるにつれ大きくなる

ことが明らかになった(Fig 1(g),(e),(h),(i)). 2.臨床試験デザインによる母集団解析への影響

Figure 2は,covariance model による LLD と Frel の推定における症例数,投与回数,採血点数の影 響を示した(Fig 2(a) – (i)).まず,Fig 2(a) – (c) は症例数 N = 50 での臨床試験の採血デザインに

Fig 2  Effect of number of patients, number of dose, and blood collection points on estimation of relative bioavailability (Frel)

(6)

よる影響を示した.なお,臨床試験デザインの種 類は,薬物を単回投与し 1 人当たり 2~3 点の採 血を行う理想的な試験(Table 2,Ideal design & Single dose)や薬物を連続投与し 1 人当たり 1~3 点の採血を行う現実的な試験(Table 2,Realistic design & Repetitive dose),あるいは薬物を単回投 与し 1 人当たり 1~3 点の採血を行う現実的な試 験(Table 2,Realistic design & Single dose) の 3 つのデザインを想定した.理想的な採血デザイン での単回投与試験の LLD は 55.50 となり(Fig 2 (a)),連続投与試験の LLD である 55.72(Fig 1 (e))と近似していた.現実的なデザインでの連 続投与試験の LLD は,46.74 となり(Fig 2(b)), 理想的なデザインの LLD である 55.72(Fig 1(e)) より軽度小さくなった.同様に,現実的なデザイ ンでの単回投与試験の LLD は 50.50 となり(Fig 2 (c)),理想的なデザインの LLD である 55.50(Fig 2

(a))より軽度小さくなった.一方,Frelの% error

の標準偏差には,ほとんど試験デザインの影響は 認められなかった(Fig 1(e),Fig 2(a) – (c)).

次に,covariance model による母集団解析に対 する症例数の影響を評価するため,Table 2 に示 す N = 50 での各 n を 4/5 あるいは 3/5 にすること で N = 40 あるいは N = 30 のデータを作成し,母 集団解析を行った(Fig 2(d) – (i)).症例数を 50 人から 40,30 人に減少させると,3 つのデザイ ン全てにおいて LLD が小さくなる傾向が認めら れたが,最も LLD が小さい場合でも 29.82(Fig 2 (h))であった.一方,3 つのデザイン全てにお いて N = 50 と比較して N = 40 と N = 30 で Frelの% errorの標準偏差にほとんど変化は認められな かった.

考  察

理想的な臨床薬物動態試験は,薬物の V と CL, および F を母集団解析で求めるために,各被験者 に静脈内投与試験と経口投与試験を行う.静脈内 投与のデータからは,V と CL に関する情報を, 経口投与のデータからは,F に関する情報を得る ことができるため,同時に全ての母集団パラメー タを得ることができる.しかし,現実的にはこの ような理想的な臨床試験を行うことは,コストの 面などの理由からほとんど実行不可能だと思われ る.そこで,本研究では,F の個体差を考慮した covariance modelを用いて,経口投与のデータの みから V/F と CL/F およびそれらの分散(ω2 CL/Fと ω2 V/F),共分散(ωCL/F,V/F)を推定した.すなわち, 本研究の covariance model は,真値がわかってい る V や CL,あるいは F を推定するのではなく, V/F,CL/F,ω2 CL/F,ω2V/F,および ωCL/F,V/Fを推定す る近似解析モデルと言える.通常の母集団解析モ デルの評価では,30~40 回のシミュレーション を行い,母集団パラメータの真値と推定値を比較 することで,母集団解析の精度評価を行う.9) かし covariance model では,真値のわからないパ ラメータの推定を行うため,従来のシミュレー ションの方法では母集団解析の精度評価ができな い.そこで,本研究では covariance model の精度 評価を行うため,新たな指標となる LLD および% errorを使用した. LLDは,F の個体差を考慮した covariance model のモデル適合性(-2 log likelihood)から F の個体 差を考慮しない non-covariance model のモデル適 合性(-2 log likelihood)を引いて算出されるため, Fの個体差の検出感度を表す指標と言える.本研 究のシミュレーションの結果より,σ = 12%ある いは ωV = ωCL = 20%のような個体内変動や個体間 変動の大きい薬物を想定すると,LLD は小さく なる傾向が認められたが,LLD は最小でも 19.62 (P < 0.001)であった(Fig 1(f),(i)).また,臨 床試験の症例数 N が 50 から 40,30 と小さくな ると,LLD は小さくなる傾向が認められたが, LLDは最小でも 29.82(P << 0.001)であった(Fig 2 (a) – (i)).一方,LLD に最も顕著な影響を示し た要素は F の変動範囲であり,F の変動範囲が大 きい薬物を想定する場合は,F の変動範囲が小さ い薬物と比較すると covariance model がより良好 に機能することがわかった(Fig 1(a) – (c)).し かし,F の変動範囲が 80-100%の場合でも LLD は 5.10 であり,統計的には有意(0.01 < P < 0.05) な値となった.従って,F が 80%を下回ること が想定される薬物の母集団解析を行う際には, covariance modelを積極的に使用するべきである

(7)

と考えられた. 一方,% error は F の真値と推定値(Frel)の一 致性および Frelの推定精度を示す.Frelを正確に推 定するためには,全ての母集団パラメータが良好 に推定されなくてはならない.従って,% error の標準偏差は母集団パラメータの総合的な推定精 度を表す指標と言える.シミュレーションの結果 より,Frelの% error の標準偏差は,一部の例外(Fig

1 (f),(h),(i))を除いて 11%を超えることはな かったことから,薬物の動態特性および臨床試験 デザインにかかわらず,母集団パラメータの総合 的な推定精度は良好であると考えられた(Fig 1, 2).一方,Fig 1(f)のように,σ が大きくなると Frelの推定精度が低下するのは,ベイジアン解析 による個人の CL/FBayesと V/FBayesの推定精度が低 下するため,Frelの推定誤差が大きくなるためで

あると考えられた.また,Fig 1(h)や Fig 1(i)の ように,ωV/Fと ωCL/Fが大きくなると Frelの推定精 度が低下するのは,V と CL の個体間変動が式(5) と式(6)にノイズとして反映されているためであ

ると考えられた.すなわち,ωV/Fと ωCL/Fが大きく

なると V/FBayesと CL/FBayesの変動が主に Frelの変動

に起因するとは言えないため,Frelの推定精度が 低下するものと推定される.従って,σ や ωV = ωCLが大きくなった場合に,必ずしも母集団パラ メータの総合的な推定精度に問題があるとは考え 難い. 本研究では,1 つの論文の中で異なる速度論モ デルが使われる複数の薬物を同時に取り扱うこと は難しいため,7, 10)ビソプロロールを仮想対象とし たシミュレーションに限定した.その結果,動態 特性の異なる薬物あるいは様々な臨床試験デザイ ンにおいても,バイオアベイラビリティに個体差 のある薬物の経口投与後の血中濃度解析に対し て,covariance model を積極的に使用するべきで あることが明らかになった.一方我々は,免疫抑 制薬ミゾリビンの母集団薬物動態解析において も,covariance model の適用が有効に機能するこ とを報告している.4-6)また,臨床的に繁用される ジゴキシンの母集団薬物動態解析に covariance modelを適用したところ,11)有意な適合性の向上 が認められた(未発表結果).なお本研究では, 肝初回通過効果が小さいビソプロロールを想定 し,F の個体差の主要因を消化管吸収率と仮定し てシミュレーションを行った.しかし我々は,肝 初回通過代謝によっても,F に変動性が認められ るカルベジロールやメトプロロールについても, 母集団動態解析における covariance model の有用 性を報告している.12, 13)今後,より多様な薬物に ついて covariance model が臨床応用され,バイオ アベイラビリティの個体差に関する情報が整備さ れることが期待される.

謝  辞

本研究は,JSPS 科研費 JP15K08069 の助成を受 けたものです.

利益相反

開示すべき利益相反はない.

引用文献

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Table 1 Basic pharmacokinetic parameters
Table 2 Trial designs and sampling time (N = 50)
Fig 1  Effect of bioavailability (F), inter-individual variability (ω), and intra-individual variability (σ) on estimation of  relative bioavailability (F rel )
Fig 2  Effect of number of patients, number of dose, and blood collection points on estimation of relative bioavailability (F rel ) The regression line is y = x

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