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算数における計算指導の見直しとその改善

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(1)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第38巻 第

2号

(1997) 251

算数における計算指導の見直 しとその改善

数学教育講座 笹 田 昭 三

*

数学教育講座

吉【

An ExaHlination and an lmprovement on the Teaching

of Calculation in Arithmetic

Sh6ZO SASADA, HirOnobu SAIO*, Toshiaki YABE

I

は じめに

現代社会は

,価

値観の多様化

,情

報化の進展 とともに

,様

々な教育の問題 を呈 している。今 日の 教育社会には

,受

験体制の歪み

,不

登校の児童 。生徒 などにみ られ る心の問題

,い

じめ

,校

内暴力, 家庭 内暴力などの多 くの問題があげ られ る。 健全 な青少年の育成を願い

,昭

和58年中教審審議経過報告 などを経て

,昭

和60年教育課程審議会 では

Q),①

心豊かな人間の育成

,②

自己教育力の育成

,③

基礎・ 基本の重視 と個性教育の推進

,④

文化・ 伝統の尊重 と国際理解の推進 とい った改訂の基本方針のもとに

,教

育課程の改善 に向けて検 討が進め られ

,そ

の結果 と して新学習指導要領が平成元年に示された。 変化の激 しい社会を迎えて

,社

会の変化 に対応す る学校の役割は

,知

識・技能そのものより

,そ

ィれ らを獲得す るのに必要 な資質を子 どもに与えてお くことである。子 どもたちの将来 にわた って大 切 な自己教育力についてみてみ ると

,中

教審の報告では

,次

4つ

の柱 をあげている121。

1)主

体的に学ぶ意志

,態

,能

2)学

習への意欲

3)学

習の仕方の習得

4)こ

れか らの激 しい社会の変化 における生 き方 これ らは

,共

通 して, 自ら学ぶ という活動 に密接 に結び付いている。価値観の多様化が進む中, 自己教育力と個性はともに重要 な資質であるといえる。 *鳥取県教育委員会中部教育事務所指導主事 (平3年 科学教育研究室 内地留学生 )

(2)

252

笹田昭三・齋尾宏伸・矢部敏昭 :算数における計算指導の見直 しとその改善 算数・ 数学 に転 じて考えるとき

,技

術革新や高度情報化 とい った科学・ 技術の進歩 に寄与 してき た面は大 きいが

,い

わゆる「落 ちこぼ し」「 落 ちこばれ

Jな

どといわれ るように

,学

習不適応教科 として算数・ 数学が一番 にあげ られ

,問

題 にされ ることが多い。 なぜ

,算

数・ 数学が学習不適応教 科 になるのか。それには

,さ

まざまな理 由があげ られ よう。 しか し

,第

一には

,算

数・ 数学の教師 が

,学

習における数学的活動 とか理解 について正 しい認識 を欠き

,安

易に「 で きること

Jを

主眼と した指導を してきたことによるものと考える。た とえば

,意

味の指導を十分に しないままに

,答

え を求めることを性急 に教え込み

,あ

とは ドリルで詰め込む (定着を図る

)と

い った効率主義・ 結果 主義の授業のあ り方が

,そ

の大 きな原因であるように思われ る。 このような知識・ 技能 に重点をおいた効率主義 。結果主義の授業のあ り方か ら脱却 し

,学

習のプ ロセスを大事に し

,豊

かな学習活動が展開で きる授業のあ り方をめ ざ してい くことが

,こ

れか らの 算数・ 数学教育の重要 な課題である。算数科 における計算指導においても

,計

算技能を中心 と した 「 見える学力

Jと

して

,計

算の正答 という「 できる」 ことが問われ ることが多い。やは り

,計

算の 意味の理解 を重視す る指導 を行 うことによって,「見えない学力」 といわれ る

,数

学的 な考え方や 数学的な態度の育成を一層充実 してい くことが

,子

どもたちの将来 にわた って生 きて働 く力になり 得 る し

,先

に述べた学習不適応の解消にもつ なが ってい くものと考える。 この小論では

,上

記の問題意識に立ち

,算

数科 における計算指導の現状の問題点やその改善の視 点について考察す るとともに

,今

後の計算指導のあ り方について論究す る。そのための一つには, 学習・理解 という観点か ら計算指導のおける「 意味の理解

Jの

重要性について論ず る。二つ には, 計算指導の現代的な意味や 自己教育力の育成の観点か ら

,計

算指導の見直 しについて論ず る。三つ に

,こ

れ らの知見に基づき

,計

算指導の改善のための若千の具体案を提示 したい。

計算指導 における諸問題

§

1

児童の実態

1.算

数嫌いの子 どもの増加 と算数の学力のゆがみ 1986年に実施 した 日本数学教育学会の「 児童の算数に対す る意識の調査

Jの

中間発表 によると, 算数嫌いの子 どもが

,10年

前に比べると

10%以

上を超えて増えていることが明らかになった (表1)。 表

1

算数嫌 いの子 どもの率 。)

2

各領域 の問題 の通過率 “ ) 調査年

1年 2年 3年 4年 5年 6年

領 域

5年

6年

1976年

* 25% 19% 21% 22% 21%

1986年

24% 31% 28% 34% 31% 33%

数 と 計 算 量 と 測 定 図

形 数 量 関 係

71.4%

54.2%

69.2%

67,7%

77.3%

73.3%

74.2ジ `

66.4%

(注)1976年は

, 1年

の資料はない。

(3)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 38巻 第

2号 (1997) 253

1981年に実施 された「 教育課程実施状況調査報告書」は

,算

数の内容を

4つ

の領域 に分けてそ れぞれの通過率を紹介 している (表2)。 また

,1982年

に実施 され た教育課程達成状況 に関す る調査では

,2/7■

3/4という問題では, 93.2%と いう驚 くべ き通過率を得 ている一方で,「水槽 に水 を入れています。2/3分 間に

5/62の

水が入 ります。同 じ割合で水 を入れ ると

1分

間では何

2入

りますか。」 という問題では

,35,2%

という低い通過率に留 まっている。計算はできるけれ ど

,文

章問題は不得手ということがいわれ るが

,本

当は

,計

算 自体 も十分に理解 され ていないということである。 数値が どうであろうと同一場面では適用 され る演算に変わ りが ない。それ なのに

,扱

われ る数 が整数であ った り

,分

数であ った りす ることによって立式 に違 いがみ られ るのは

,演

算の意味の 理解が不十分であることを物語 っている。形式的 な計算ができても

,そ

の計算を問題場面に適用 していき解決できなければ

,そ

の計算力は活用能力 と しての学力 とは言えない。

2.鳥

取県算数診断テス トの考察か らの計算指導の問題点

(1)「

数と計算

J領

域の正答率か ら6) 数 と計算では 目立 って近年大 きな変動は ないが

,そ

の領域の正答率

60%台

であると いうことは

,逆

30%以

上の児童が誤答 な り無答であるということを示す。指導 して いる以上

,基

礎・ 基本 となる計算はなんと かできるように したいという思いがあるに もかかわ らず

,20%∼

30%が

できないとい うことであ り

,計

算の意味や計算の仕方が わか っていない子 どもはもっと多いはずで 表

3

「数 と計算」領域の正答率 数 と計算

2年

3年 4年 5年 6年

ある。

(2)『

算数診断テス ト30年のまとめ』161の実態の考察か ら問題点を探 る 基本的 な演算の正答率をみ ると

,あ

る程度の基本演算はできるが

,新

しい内容 とつ なぎ合わ せ て構想す る力が弱いことがわか る。さ らに

,少

し計算力を使 う問題をみ ると

,分

析す る力・ 構想す る力がついていないことがわかる。 これは

,単

に計算の結果主義

,で

きればいい

,で

き ればわか って くるという教師の指導観が背景にあると考え られ る。できることが主眼となって いて

,実

際に活用できない計算力であることがわか る。 これ らの問題点を要約す ると, ア 演算の意味の理解ができていない。 イ 数の拡張 と概念の形成がともなっていない。 ウ 計算の仕方が 自分で考えだされた体験をもっていないので

,本

当の意味がわか っていない。 工 具体的 な操作活動や線分図などに表す などの子 どもの主体的な豊かな思考活動になってい ない。 オ 算数・ 数学のよさで もある筆算 なども形式的な理解 に終わ っていて

,空

位や末位

,小

数点 の位置の意味などが理解 されていない。 力 深 く考えず に

,直

感 にたよっていることも指摘 されていて

,数

学的な考え方や態度が育 っ ていない。 などがあげ られ る。 平成

4年

89%

平成

5年

88%

平成

6年

86%

平成

7年

89%

81,` 779` 68ラ ` 69,`

80% 77% 67% 65%

79% 77% 72% 64%

80フ ` 75ジ ` 68ラ ` 67ジ`

(4)

笹田昭三・齋尾宏仲・ 矢部敏昭:算数における計算指導の見直 しとその改善

3.計

算の指導 について 算数教育では

,前

述のように

,算

数嫌いの子 どもの増加

,算

数の学力の偏 りが指摘されている。 このような状況を改善 してい くためにも

,計

算指導は

,単

に答えが合えばよいという結果主義・ 点数主義であ ってはいけない。 計算は

,本

,そ

の計算を生み出す問題場面 に出合 い

,何

かよい解決の仕方を求めて

,そ

の間 題を解決す る過程で形成 されたものである。計算の指導が こう した計算の成立の過程に応、れずに, 出来上が った計算技能のみを身 につけさせ ようとす るな らば

,子

どもを指示に従 う単 なる計算機 に仕上げていることになる。四則計算については

,そ

の計算が適用 され る場面 とその計算に対応 す る量の間の関係や操作の理解 を図ることで

,演

算決定の手がか りが得 られ るような指導が必要 である。 加減は同種の量の間に成 り立つ演算であ り

,乗

除は一般 には異種の量の間に存在す る演算であ ることは

,そ

の学年 なりに理解できるように

,他

の演算 と関連づけて指導す る必要がある。 量 と演算に対応す る操作 を明確 にすれば

,演

算決定は容易になる。 また

,計

算の意味の理解が 不十分なので

,主

体的な活動を通 して理解 させ る必要がある。演算決定能力を育成す ること

,計

算の意味の理解をす ること

,計

算の適用の場の理解を深めることが大切である。 今回の学習指導要領の改訂 にあた って

,具

体的な操作 などの活動

,実

験 。実測などの積極的な 導入

,思

考実験のような問題解決の手法の導入 にみ られ るように

,体

験活動の重視

,内

面化を図 ることの重要性

,見

通 しをもち

,筋

道立 った論理的な思考力の大切 さな どが強調 されている。指 導法を含めて算数教育の質にかかわ っていることを問題 に している点に注 目しなければならない。

S2

学習指導 上 の課題

1.算

数・数学教育の指導上の問題点 平成

3年

NHKテ

レビで,「わか らない数学

Jが

とりあげ られ,「何 のためにす る数学か」 と 問われている。そ こでは中学校の数学教育が俎上にあげ られていたが

,そ

の基礎をな している算 数教育もその責任の一端を負わ なければならない。 算数教育の現状 も

,あ

まり喜ぶべき状況でな く,「自ら学ぶ意欲」 を育成す ることにも,「社会 の変化に主体的に対応できる能力

Jの

育成 にも

,ほ

とん ど考慮 されず

,教

科書に従 った教師主導 型の授業が行われていることもある。教師が数学的な知識や技能を解説 し

,児

童はそれ を記憶す ることに努め

,そ

のための練習を行 っているような傾 向が強い。 そ こで

,算

数・ 数学教育の現状の改善を図 るために,「なぜ

,何

,

どのように

Jと

いう視点 か ら問い

,そ

の問題点を明 らかに したい。

(1)な

ぜ算数を学ぶのか ここで

,算

数を学ぶ ことによって培われ る人間形成 の側面を忘れてはならない。それ と同時 に 日常生活を営む上で

,社

会の変化 に主体的に対応できる力を養 うために必要 なことは

,即

, 分数の乗除ができることではな く

,そ

の学校で培われ る見方・ 考え方・ 態度であることを忘れ てはならない。思考の過程そのものが1つの 目標であるにもかかわ らず

,結

果のみを大事 して しまい

,問

題解決を通 して

,基

礎的な技能や基本的 な知識を身につける場 と していないことが ある。子 どもたちが活動 してい く姿そのもの

,す

なわ ち

,豊

かな学習活動を 目標 と しなければ な らない。 つ まり

,算

数を学ぶのは

,普

通の生活を送 るのに必要 な内容があるか らであると同時に

,算

(5)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第38巻 第

2号 (1997) 255

数を通 して

,も

のの見方

,考

え方を育てることをね らっているか らである。さ らに

,算

数のよ さを味わ うことによって

,人

間の素晴 らしさを知 ることも大事 なことである。

(2)算

数で何 を学ぶのか 現代人にとって

,数

学的な知識・ 技能はともか くと して

,数

学的な考え方や態度は必須のも のになっている。 ところが

,IEAの

調査では

,我

が国の計算力は世界一だが

,生

活や事象への 活用能力は乏 しく,「見積 って考える力」や「 検討す る力

Jが

育 っていないといわれている0。 何を学ぶかという視点がなくて

,単

に計算ができた

,問

題が解けたということや

,解

法をパー タン化 して

,反

復練習

,覚

え込み させている傾 向が強い。わけもわか らず

,こ

ういうときはこ うす ると教師か ら示 された レールの上で解法 し

,あ

たかも自分でや ったような気になっている のではないか。 なるほ ど

,解

は得 られ るが

,解

のみを得 るために学習 しているようなものであ る。答え合わせ とい って

,最

後の答えを読んでもらい○つけを しているようなこともある。 算数では

,算

数を生み 出す過程で

,内

容を学び

,そ

の学び方 も学んでい くのである。例えば, 計算指導の筆算の指導においては

,技

能を身につけさせ るだけでなく

,ア

ル ゴリズム化す る過 程 を学ばせ ることが大切である。その過程での数学的な考え方を学んでいき

,と

同時に

,問

題 解決を通 して

,解

法の方略 を使 うこと

,見

通 しを立てて考えることや

,既

習事項 を生かす こと などの学び方の学習も算数教育では極めて大切 なことである。

(3)子

どもにとっての算数か 算数は

,過

程そのものを学習す ることと述べたが

,果

た して算数の学習が本当に子 どものも のになっているだろうか。子 どもの思考のプロセスを大切 にす るより, こういうときはこうす るというように教師の解説であ った り

,一

見子 どもの考えを引き出 しているようだが

,教

師が ね らっている答えがでた ら

,ね

らいと している正答だけを取 り上げた りす る授業が多い。 問題設定は

,児

童の介入す る余地はな く

,設

間がいきなりでてきて

,必

然性 もな く

,内

発的 動機づけも不十分なまま

,

これ を解けとい った場合 もある。 また

,単

元を見通 した導入問題で なく

,子

どもにとって

,現

実の生活 とかけ離れたものになっていた り

,与

え られ るだけの問題 で課題意識がなか った りす る場合が多い。子 どもを巻 き込む

,工

夫 された学習場面であれば, 何か これを解決 したい

,何

か しよう, どういう工夫をすればよいかなどと

,子

どもたちは

,意

欲的に学習 してい くものである。 しか し

,実

際の授業では, このような学習展開は極めて稀で ある。 やは り

,子

どもたちにとって生 き生きと した学習にす るためには

,も

のを考える力

,も

のご とに対す る望 ま しい姿勢や態度を育て, 自ら学ぶ主体性をもった人間を育てるという気持ちで, 教師が授業に臨む ことである。そ して

,子

どもたちの豊かな活動を保障 し

,認

めてい くように 心がける必要がある。つまり

,子

どもが主体的に活動す る

,子

ども自身の算数学習になってい なければならないのである。

2.計

算指導の指導上の問題点 計算指導は

, 1∼ 6年

の算数の学習内容の約

36%に

あたる∝)ので

,そ

の問題点を考えてみ るこ とは

,基

礎・基本の重視 とともに

,他

の領域 との関連でも大切である。具体的に

,計

算指導の間 題点をとり上げてみ ることにす る。

(1)今

までの計算の指導のあ り方 新 しい演算の概念を形成す るとき

,生

み出す過程を軽視 して

,教

師が解説 して しまっている ことが多い。児童は

,十

分に意味がわか らないまま

,計

算練習に時間を注 ぎ

,速

,量 ,正

(6)

256

笹田昭三・齋尾宏仲・矢部敏昭:算数における計算指導の見直 しとその改善 さばか り求め られ

,教

師には

,で

きるようになっているか ら

,わ

か っているのだ という安易 な 思い込みがあり

,計

算指導の実態は

,結

果主義

,点

数主義

,効

率主義に陥 っている。 アル ゴリ ズムを解説 して反復練習と機械的な習熟 に終始 しているため

,子

どもの豊か な活動をす る時間 的余裕がないことである。例えば

,概

念形成では

,試

行錯誤 しなが ら

,発

見 し

,つ

くり出す こ とが大切 なのにもかかわ らず

,そ

のための具体的な操作活動を設定 しなか った り

,思

考や活動 のために必要 な十分な時間も与えず

,効

率的に教科書通 りに進んでい くことになっていること がある。 笹田は

,計

算指導の一般的ステ ップを

,①

計算の意味

,②

計算の仕方

,③

計算技能の習熟の

3つ

に区分 している。①)そして

,従

来の計算指導の問題点として

,③

のステ ップだけに力が注 がれ

,さ

らに評価も③の祝点で行われ,「正確に

,速

く」という見方で子 どもたちを追い込ん でいることを指摘 している。すなわち

,笹

田は

,①

と②の欠落と③の過重視が従来の計算指導 の問題点だと指摘 していて

,①

∼③の適切にバランスのとれた計算指導を志向すべきであると 指摘 している。 つまり

,バ

ランスのとれた計算指導でなく

,子

どもたちは

,う

んざりす るほどた くさんの計 算練習で

,受

動的な学習になり

,意

欲を失 っている。そ して

,計

算の意味や計算の仕方の指導 は

,教

師の解説に終わ っていて

,子

どもたちの十分な理解が得 られていない。

(2)計

算指導の誤解や誤 り 片桐氏は

,計

算指導の誤解や誤 りについて

,ア

)指

導の日標のとりちがえ

,イ

)除

法の意味 の理解の指導者の考えの誤 り

,ウ )キ

ーワー ドにたよる演算決定の指導の誤 りといった

3つ

の 指摘を している。9。 指導者 と しては

,十

分な教材研究をす るとともに

,ね

らいをもった指導 に心がけなければならない。

(3)子

どもが問い続ける学習に 算数では

,問

題そのものが

,教

師の一方的な提示になりがちである。計算指導において

,計

算 のアルゴリズムや仕方を教師が先行解説 し

,子

どもが問いかける学習になっていないことが多い。 計算指導は

,先

人の長い歴史の築いた文化の遺産を

,凝

縮 して追体験することである。計算 指導の一般的なステ ップのうち

,①

計算の意味

,②

計算の仕方を

,子

どもが聞いかける学習に よって

,子

ども自らがつ くることができれば, どんなに感動的で

,よ

さも感得す ることができ ると考える。 時間の関係で, 自力解決の時間や集団解決の時間が得 られ ないのは

,反

復練習 にとられ る時 間が多過 ぎるのである。 ドリルの練習の時間は

,基

本的な問題 をきちんと定着 させ ることに使 い

,内

発的な意欲に支え られた学習で

,効

果のある練習になるように配慮 してい く必要がある。 そのために

,子

ども自身が問い続ける学習に しなければならない。 以上のような算数指導上の課題 と してあげ られ るので

,そ

の改善を考えなければな らない。 §

3

諸 外 国の動 向 と計 算指導

1.ア

メ リカの教育改革 アメ リカにおける教育改革は,「学校教育のためのカ リキ ュラムと評価のスタンダー ド」 を中 心に進め られていて

,21世

紀を 目指 した教育が考え られている。

(1)カ

リキ ュラムスタンダー ドの内容 と改善の特徴 「 カリキュラムスタンダー ド

Jと

「21世紀に必要な12の数学

Jの

内容Qけ

,①

コミュニケー

(7)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 38巻 第

2号

(1997) シ ョンの強調

,②

方法的には具体的操作 を低学年か ら強調 していること

,③

内容的には グラフ を低学年か ら入れた ことが

,強

調点 と して上げ られ る。 伊藤氏は

,そ

の特徴 を次の

3つ

にまとめてい る(121。 特徴 の1つに指導法の改善 を求 めてい ることをい っている。特徴の2つに

,算

教・ 数学の学習を通 して児童・ 生徒が達成すべ き 目標 を新 しい立場か ら設定 し直 していることである。特徴の

3つ

,電

卓を活用 し

,計

算の大改革 を実行す ることをあげ

,現

行の計算指導 における複雑 な計算アル ゴリズムの習熟にかか ってい る時間の浪費を減少させ

,同

時に

,児

童 と教師のそのための労力をも削減 しなければな らない と している。大 きな特徴 と しては

,子

どもたちが創 り上げてい く経験が重視されていて

,主

体 的 な豊かな学習活動 を 目指 していることがあげ られ る。

(2)計

算指導の位置づけと計算指導についての考え さ らに「 スタンダー ド

Jで

,見

積 りと計算を行 うときの位置づけが示されている。 筆算の軽減 とは逆 に

,カ

リキ ュラムで強調 されたのは

,計

算の意味づけ

, 4つ

の計算の方法 (筆算

,見

積 り

,暗

,電

)に

ついての技能

,問

題場面 における適切 な計算方法の選択 の能 力などを関係づけている。働。 計算指導の全体 を左図のように

6つ

の要素 と してとらえ

,す

べての計算は,「意味づけJ「問 題解決」の

2つ

でみ ることができ

,方

法 と して, 「 電卓」「 見積 り」「 暗算J「筆算」 を子 どもた ちが必要 に応 じて選択す ることをい っている。 見積 りの学習を早期か ら導入す ることを提言 す るとともに

,桁

数の多い整数や小数の計算は 概数を用 いること

,暗

算の力を仲ば し

,簡

単 な 暗算は見積 りができるようにす ることを強調 し ている。 また

,電

卓の活用 を全面的 に推進 しよ うとしている。社会の変化に対応できるように, 冒頭の図のように計算における技能 を支え る見 積 りを行 うことを重要視 している。 コバー ンの将来の計算指導についての考察の 論点と して, 図

1

計算指導 の全体 図 ア

)計

算の意味を従来よりも広げること イ

)カ

リキ ュラムでの計算指導の重要性 を明 らかに し

,再

確認す ること。 筆算の技能 については一定の制限を設け ること。 ウ

)計

算の指導をより効果的に行 うようにす ること。 をあげている。O。 暗算や見積 りは

, a)実

用的技能

, b)計

算の意味や数量関係 について考える助 けになる,

c)数

学的な概念や考え方の指導にもプラスになることをおさえる。 また

,電

卓を使 うとき, 子 どもに今何をや っているのか明確 にさせ ることに気をつける。 さ らに

,筆

算についても

,軽

減を主と した提案 を行 っている。 これ らか ら

,計

算指導では

,計

算の意味を正 しい答えばか りでな く

,見

積 りの重要性 を強調 してあ り

,計

算の効果的な指導を 目指 していることがわかる。 以上のように

,ア

メ リカにおけるスタンダー ドや最近の動向を調べ ると

,筆

算の軽減 もある 意味 “ rけ WI題 R7決

(8)

258 笹田昭三・齋尾宏伸・矢部敏昭 :算数における計算指導の見直 しとその改善 が

,カ

リキ ュラムで強調 されたのは

, 4つ

の計算の方法 (筆算

,見

積 り

,暗

,電

)に

つい ての技能

,問

題場面 における適切 な選択の能力を重視 している。そ して

,算

数・ 数学 を創 り上 げ る体験を大切 にす ること

,問

題解決, コミュニケーシ ョン

,推

論を どの学年段階でも大 き く 取 り上げ られていることに注 目しなければな らない。

2.イ

ギ リスの教育改革 学力格差の是正 と教育水準の向上を 目的 と した全国共通のナシ ョナル・ カリキ ュラムを導入 し た。「 コミュニケーシ ョンの本質的要素 と しての数学

Jを

ね らい

,数

学教育において最 も重要 な ことは

,諸

種の情報や概念を分析 し

,そ

の意味を伝達す る能力を育成す ること。単 なる数字や記 号の操作は

2次

的な重要性 をもつにす ぎないと しているこの。 カ リキ ュラムの構成 と して, 構成

:5つ

の領域

<数

,代

,測

,形

と空間

,デ

ータの取扱い

>

3つ

の構成要素 (構成要素

1=数

,代

,測

定の知識・技能・理解) (構成要素

2=形

と空間

,デ

ー タ処理の知識・ 技能 。理解) (構成要素

3=そ

れ らを校 内外の様 々な文脈で適応す る能力) カ リキ ュラムの特徴 と して, 特徴① 構成要素として実際的応用が設けられていること 特徴② 達成 目標に「 見積 りや近似」「 パターン認知

Jを

おいていること 特徴③ 「 データ処理」の領域を設けていること イギ リスにおいては

,す

べての生徒の達成水準を高め

,離

学後に21世紀の情報化社会

,高

度テ クノロジー社会の中の有能な市民

,労

働者として十分対応できることをね らっている。教学を問 題解決の道具として機能することをね らって

,方

法を学習することを含めて実際的応用力の向上 とともに

,数

学的にコミュニケーシ ョンする技能を重視 している。学校教育のおける基礎・基本 の見方を細かに示 し

,電

卓やコンピュータの使用に熟知す るだけでなく

,そ

のデータを解釈す る ことができることを基礎的能力としてとらえている。計算指導については

,カ

リキュラムの特徴 にあげ られるように

,か

なり計算の実際活用まで考え られている。

3.諸

外国の改革からの計算指導に対する示唆 我が国の算数教育において

,こ

のように諸外国の改革の動向に学び

,新

しい計算指導のあり方 を検討 し

,次

のような視点か らの改善・充実を図 っていく必要があると考える。

(1)数

学的にコミュニケーシ ョンしていくという観点か ら

,計

算指導のあり方を検討 していく必 要がある。

(2)教

育の成果というのは

,通

常の算数テス トの成績のみをさすものでなく

,算

数を価値あるも のと認めること

,算

数が好きになること

,と

いった態度面や情意面の 日標をもっと強調 してい く丞要がある。

(3)算

教・数学のね らいは

,実

用面や活用ばか りでな く

,算

数・ 数学のよさや ものの見方・ 考 え 方にまでかかわ ってい くことであ り

,算

数・ 数学をつ くるという体験 を重要視 していかなけ ら ばな らない。

(4)計

算の役割

,位

置づけを再考 し

,暗

,筆

算の役割の変化

,見

積 りの重要性を考えていき, 電卓や コンピュータの教育利用をもっと取 り入れ る必要がある。

(9)

席取大学教育学部研究報告 教育科学 第38巻 第

2号

(1997)

計算指導 の見直 しの視点

Sl

意味理解の重視の視点

1.意

味の理解の重要さ

(1)第

2の言語 と しての数学 数学は, 自然現象

,社

会現象や 日常事象を数理事象 と してとらえ

,数

理の世界で

,先

人が記 号化

,簡

潔化

,抽

象化 しなが ら

,さ

らにより新 しいものより完全 なものを求めて

,人

類が長い 間かか って体糸化 してきた ものである。それゆえ

,数

学は

,母

国語に次いで世界共通の第2の 言語 として

,数

理の世界で, コミュニケーシ ョンできるものである。第

2の

言語 と して位置づ けるには

,数

の意味す るところや記号や用語の意味

,そ

れぞれの演算の意味を正 しく理解 して いなければならない。

(2)生

きてはた らく計算力 「 計算ができる」 と「 計算がわか る」 とはちが うことである。計算力は,「計算問題で答え を求めることができる」 ことだけで ない。計算力を

,ア

)演

算を決定す る力

,イ

)立

式の力, ウ

)計

算をつ くりだす力

,工

)確

かめる力 (検算す る力

),オ

)適

用 して問題 を解 く力

,と

し てとらえることができる。計算力は

,た

だ計算 して答えを出す のでな く

,演

算決定す ることか ら

,適

用 して問題を解 く幅広 い力である。計算力を

, a)生

活場面の中で生 きてはた らく計算 力

, b)新

しく問題 に出 くわ したとき生 きてはた らく力とみ るとき

,計

算の意味や仕方を しっ か りとらえていないと

,そ

の計算力は生 きてはた らくことはで きない。つ まり

,計

算がわかる ということは

,意

味の理解が なされ

,計

算の仕方が理解で きていないといけない。「 計算がで きる」だけの結果主義で な く

,主

体的な活動を通 して,「計算がわか る」 ことが大事である。 つまり「 理解

Jに

ついて考えなければな らない。

2.r理

解」の本質 と数学の学習活動のおける,「理解重視」の視点

(1)「

理解」 と主体が学習す ること ブラオネルは

,『

理解の本性』(1946)において

,理

解 は状位 (学習場面

)に

関連 しているこ とを指摘 している。0。 その関連 について

,平

林氏は

,状

位 と主体 との関係 を

QO,図

2の

よう にとらえ

,状

位の構成は

,算

数・ 数学の革新的な課題であると考 え られ

,さ

らに

,

この活動を価 値 ある理解 と してとらえ

,こ

れ らの活動の意識化

,内

面化を通 して

,理

解 を一層確かなものに しようと している。 数学 における「 理解

Jと

は, 「 数学的構造の理解」であるととらえ

,

ピアジ ェも

,知

的発達 には段階があ り

,

しか も各段階 に密接 な関係があるとい っていることか らも

,教

科の構造 に知能 の構造を対応づけて考えなけ ればならない。「 理解

Jを

「 構造の理解」 というとき,「構造

Jは

じば しば客観的に解釈 されが ちであるが

,純

粋 に客観的なものでなければ

,純

粋 に主観的なもので もなく

,主

客の交互作業 ← 知的に行動 し 感 じ

.思

考す る→ (リアクシ ョン) 図2

(10)

260 笹田昭三・齋尾宏仲・矢部敏昭:算数における計算指導の見直 しとその改善 という形で展開され る “活動の形式

"で

あると解釈され るべ きである。 児童が主体 と して

,状

位 (学習場面

)に

積極的にはた らきかけ

,知

的に行動す ることによっ て

,初

めて状位か ら感 じ

,思

考す る リアクシ ョンにより

,変

化 した状態がでて くるのであ り, それが主体 と してわか っていることであ り

,認

知 していることである。学習は

,あ

くまで主体 である児童 自身の問題 と してとらえ

,

どうはた らきかけたか という学習の中に存在す るので, 知的に行動す ることを重視 してい くことが必要である。 そ して

,教

師は

,状

位 (学習場面

)の

選択が大切 となり

,主

体である児童の実態 と既習内容 を精査 して

,実

践の可能性 と数学性を基準 と しなければならない。

(2)理

解の活動 と して

,内

的理解 と外的理解 を関連 させた指導 ブラウ ンは,「理解」の活動 において

,ア

)「内的理解」 と

,イ

)「外的理解」の

2つ

に区別 している。働。「 内・ 外」の概念は

,あ

る枠 を設定 しては じめて確定す るものである。数学教育 では

,

しば しば内的理解 のみが重視 されているが

,内

的理解 と外的理解の違いをは っきりさせ る丞要がある。それは

,対

象があると, 自分 自身のうちに,「理解の網」 とも言え る一種 の関 係網をもっていて

,ま

,外

的理解により

,多

視点的に総合的にとらえて

,既

存の関係網にひっ かけることを して

,そ

の対象が既有の知識体糸のどこに位置す るものか大 ざっぱに理解す る。 次に

,内

的理解 により

,そ

の対象の枠の中で分析的に考察す ることによって

,そ

の対象の内部 構造 として

,新

しい関係網 を構築す る。 この後で

,対

象を一層理解す るために

,外

的理解の活 動 に入 る。外的理解 により

,新

しい関係網が

,そ

の発展 と して一層意味理解ができ

,他

の関係 網 とのつ なが りが強化 され るとともに

,応

用 と して新 しい関係網の上で

,現

実世界 に広げるこ とができる。学習過程及び単元の指導計画に

,こ

のような内的理解 と外的理解を関連 させた指 導に位置づける必要がある。(図

3参

照)

<既

>

<吟

>

<新

しい関係網

>

処理 し [内部構造に依存] を構築 [多

視点

]

外的理解》

[新しい認知の枠組み]

《内的理解》

外的理解》

3

例えば,3/4× 1/2を既設の関係網でみて, ア

1/2をXO.5へ イ

)X1/2を

×1■

2へ

(外

的理解)

<発

展・ 応用

>

算数での発展 外界での応用

(11)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第38巻 第

2号

(1997) 261

1/2を整数化 して1/2× 2■

2

と してい くといずれ も

,(3×

1)/(4×

2)と

な り

,内

部構造をみてい くと,「分子は分子同士

,分

母は分母同士の積」 となってい ること (新 しい関係網)カ ミゎかる。さ らに

,そ

の新 しい関係網で

,応

用 した外的理解を広げてい く意味理 解を

,内

的理解だけでとらえると

,単

視点的になって

,そ

のことがつまず くと一切がだめになっ て しまうことになる。そこで

,外

的理解 を十分に し

,既

設の関係網を多祝点的にと らえるこ と を重視 したものにす ることによって

,有

効 に機能す るようになる。そのことか ら

,意

味の理解 を上記のような視点で十分に しなければならない。

(3)数

学教育のシ ェマの概念と構造 算数教育における意味の理解は「構造の理解

Jで

あるか ら

,教

材の内的関連の理解 と教材の 外的関連 の理解が大切になって くる。「 同化」 と「 調節

Jの

両側面で

,柔

軟 に有機 的 に交代 し あうことが

,理

解 におけるシェマの役割である。 誰 しも

,誤

っているか正 しいかに限 らず

,

自己のシ ェマをもっていて

,そ

れは

,主

観的構造 となっている。客体である教材 も属性をとりは らうと客観的構造をもっている。学習は主客の 交互作用 といわれ るように, 自己のシェマを用具あるいは戦略 として

,子

どもがその教材の客 観的構造 を内に取 り入れ

,同

化 (今までの概念 と一緒 にさせ る

),調

節 (今までにも っていた 概念を変化 させ る

)す

ることにより

,新

しい認知構造を構築 し, 自己のシェマを変化 させ てい くものである。 学習における意味の理解は

,既

有の意味についてのシェマをもとに主観的構造 を

,客

観的構 造 との交互作用で成長 。発展 させていか なければいけない。同化

,調

節を しなが ら

,理

解 して い くときに

,シ

ェマは大切であ り

,い

かに客体の客観的構造の理解に利用 され るかを考えて意 味の理解を重視 した状位 (学冒場面

)を

選択 しなければならない。

(4)関

係的理解を重視 した指導 スケ ンプは,「理解

Jを

機能の上で,「関係的理解」 と「 用具的理解

Jに

区別 してい る住い。 この分類は

,理

解 をす るときに

,関

係網を どう機能させてい くかということを問題 に している。 用具的理解 は

,規

則を用 いる能力であ り

,理

由な しの規則 ということもある得 る。関係的理解 は,「何をす るのか

J,「

なぜす るのか」 ということの両方の知識 と して機能す るものである。 まず

,指

導のスター トにおいて

,子

どもの既有のシ ェマを探 り

,最

初か ら詳細 な解説や分析 をせずに

,見

通 しや課題づ くりなどの学習活動を通 して

,漠

然 と したことか ら子 ども 自身が 自 分の内にシ ェマを構成 してい くように配慮す る。 子 どもの無意味のような遊びや作業 を子 ども自身が行 うことによって

,組

織的 な指導 に対 し ての示唆や手がか りが見つか り

,試

行錯誤す ることか ら

,関

係的な理解が得 られ るのである。 それに応ゝさわ しい適切 な場面を与え

,具

体的な操作や思考実験 をす ることにより

,子

どもの内 につ くってい くことができるのである。 自分で支配可能 な範囲で理解が始 まるのであ り

,そ

こ に還元させて理解 させ

,発

展 させて理解 の拡大を図ることができるのである。一足飛びに押 し つけた り

,天

下 り式に教え込んだ りす る用具的理解では

,真

の理解 とはいえない。計算指導で は

,計

算ができるときに

,関

係的理解が なければ

, 1つ

の路線が崩れた ら

,も

うお手上げ とい うことになって しまい

,応

用力もな く

,ま

た一か ら覚え込 まな くてはならない。 例えば

,15-8で ,10-8に

5を

加え ることを式の上で教えこんでいるより

,お

は じきなど の操作 によ り

,15か

5を

引いて10から

3を

引 くようなことを した り

, 1つ

ずつ取 ってい くこ とを した ら

,15-8の

減加法を即理解す るよりも理解の度合 いが深 く

,他

の場合 にも

,関

係づ

(12)

笹田昭三・齋尾宏仲・矢部敏昭 :算数における計算指導の見直 しとその改善 けて理解す ることができるようになるのである。 計算が子 どもたちの第2の言語と して機能 してい くためには

,そ

の前提 と して意味の理解が 不可欠なことである。 したが って

,計

算指導では

,上

記のような視点で

,計

算の意味の指導を 丁寧に していかなければならない。

S2

数学 的 な よさ を感得 させ る視 点

1.新

教育課程の精神 と算数科か らみたよさ 新教育課程の

4つ

の柱 を基本的なね らいか らみて

,個

性を生かすためには

,児

童が 自らのもの の見方・考え方をもって判断 し

,行

動できるようにす ることが重要である。また

,思

考力

,判

断 力

,表

現力などの能力の育成が大事で

,特

,新

しい発想 を生み出す もととなる構想力や思考の 駆動力として

,直

観 と論理的な思考力のバランスのとれた育成を図 っていく必要がある。加えて, 体験的な学習や問題解決的な学習の充実を図ることによって

,主

体的な学習の仕方を身 につけ, 学ぶ ことの楽 しさや成就感を体得 させ 自ら学ぶ意欲 を育てるように配慮 してい くことである。 算数教育の 目標 も

,小

学校教育の 目標で 目指 している人間形成 に即 して

,受

け持つべ き祝点が 端的 に示 してある。新学習指導要領 において

,

日標 と内容の特色⑭ をみ ると

,よ

さの感得や活 用能力の育成が強調 されている。 これは

,今

までの認知的な側面の偏 りを反省 して

,算

数学習に おけるよさの理解は

,情

意面の育成 という観点か ら一層強調されているのである。子 どもたちに 算数・数学のよさをわか らせ るように指導す るということは

,実

,そ

れが算数教育の本来の姿 にな らなければな らないということである。 これか らの教育は

,社

会の変化 に自ら対応できる心豊かな人間教育の育成を図ることを根幹 に おいているが, このね らいの達成に算教科 と しては

,数

理的な処理のよさがわか ることが強調 さ れ るようになった。 このことは

,内

発的 な意欲 とのかかわ りも大 き く

,算

数では

,

どのようなこ とを問題 にす るのか

,

どのような価値 を追究す るのかということに関係す る。 算数のよさを追究す る学習過程は

,よ

りよいものを求め る活動が展開され ることであ るか ら, ものごとを発展的に考えた り

,統

合的に考えた りす る場が必要 になる。そのような過程 を通 して, しだいに発展的に考えた り

,統

合的に考えた りす ることができるようになって くる。

2.算

数 ・数学のよさ

(1)算

数・ 数学のよさ 算数・ 数学のよさは同一の対象でもいろいろなよさを含んでいるものであ り

,感

じとり方 も 多様である。算数のよさは

,数

学の特性 とも関わ っていて,

O数

量性

,図

形性

,記

号性

,図

表・ 図式性

O明

瞭性・ 明確性

,的

確性・ 正確性

,精

密性

O簡

潔性・ 単純性

,能

率性・ 効率性

O合

理性 。合 目的性

O一

般性・ 拡張性

,統

合性

,発

展性

O組

織性 。体糸性

,無

矛盾性 。一貫性 な どがあげ られ る¢1)。 上のような数学 の性格 は

,い

つで も好意的に受け入れ られ てい るもの でないので

,低

学年で特に数量や図形に関心や親 しみを持たせ ることを積極的に強調 している。

(2)算

数・ 数学のよさがわかるようにす ることの意義 算数・ 教学のよさがわかるということは

,算

数・数学のもっている種々の長所

,効

用, メ リッ

(13)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第 38巻 第

2号 (1997) 263

卜重要性

,有

用性

,す

ば らしさ

,不

思議 さ

,お

も しろさなどを意識 し, さ らにそれが実感 と し て体得できるようになることである。そのことか ら

,児

童が算数に親 しみや興味・ 関心・ 好奇 心をもち

,意

欲的に算数を楽 しく学習す ることになった り

,算

数の内容がよりよ く理解できて 好きになった り積極的に算数・ 数学のよさを学習場面や生活場面 に活用 してい くことになると 考える。

(3)算

数・ 数学 のよさがわかるようにす る指導 について 算数・ 数学 のよさを児童 にわか るようにす る指導 についての着 眼点 を平岡氏の考え切 と文 部省指導資料① の

2つ

のことをもとに

,視

点 と して,

1)よ

りよいものを求めていこうと し

,練

り上げの場 を設ける。

2)算

数・ 数学がつ くられてきた過程を大切 に し

,造

体験 させ る。

3)具

体 に戻 した り

,発

展 させた り

,よ

くないものと対比させた りして

,よ

さがよりよ く 分か る場 を工夫す る。

4)常

,筒

,明

,的

確 に表 した り説明 した りし

,多

様 な見方

,ア

イデ ィアを生か し て用 いるように心がける。

5)よ

さを積極的に生か して使 うようにす る。

6)や

った ことをふ り返 って場を設定す る。

7)算

教 。数学 の美 しさ 。不思議さ 。お も しろさに気付かせ

,感

動を大切にす る。 ことを挙げ る。 よさの鑑賞は

,感

性 などの情意に関係す るので

,知

識や技能をただた くさんもっているとい うだけでは

,児

童の算数のよさの感得 。理解 につ なが らない。教師の仕事 と して

,的

確 に実態 を把握 し

,

どのような状位 (学習場面

)を

設定す るか, ということに係わ って くる。加えて, 児童が「 第

2の

自分

Jに

おいて, 自己評価す るメタ認知は

,集

団思考での認知 より効果的に内 面化す ることができ

,よ

さの感得につなが るものである。普段の学習で機会あるごとに

,算

教・ 数学のよさに意識を向けさせ る指導をす ることが大事である。

3.計

算指導 におけるよさ

(1)数

の感覚を豊かにす ること 数についての豊かな感覚を育てることは

,お

よその大 きさをとらえ適切 に判断す ることがで き

,見

通 しをもち

,算

数の活用 を図 り

,算

数のよさがわかる上で大切 なことである。 数の感覚を豊かにす る意義の第一は

,数

に親 しみや関心を高めることができることで

,特

に, 低学年の指導の充実 にかかわ って強調されている。例えば

, 1つ

の数をほかの数 と関連 してと らえた り

,数

の相対的な大きさについて理解 した りす ることである。 また

,数

についての理解 で8を

2+6,10-2, 2×

4,16■

2な

どと してとらえ

,四

則を学習す るごとに

,深

まりや 広が りができ

,一

,数

の構成への理解を深めた り

,計

算の仕方を工夫を した り

,結

果を確か めることができるなど

,数

の多面的な見方の指導 につ ながる。 意義の第二に

,算

数を 目的に応 じて柔軟 に用いる力を支えることができることが上げ られ る。 数について豊か な感覚を育てると

,考

察や処理の場面で 目的に応 じ柔軟 に対応できるようにな る。数の相対的 な大 きさに着 目し

,既

習内容 と関連付けた り計算の確かめを した りす ることが できる。例えば

,5000+7000→

5+7,800×

5→

5,900■ 3→

9■ 3と 関連づけてみ る ことや2652■

4で

商の首位を決めた り大きさを見積 った りす ることなどがある。 数 についての豊かな感覚が

,知

識でなく

,数

の活用を促 し適切 に用いることまで高めること

(14)

264

笹 田昭三・齋尾宏伸・矢部敏昭 :算数における計算指導の見直 しとその改善 により計算の指導 におけるよさにつ ながる。そのためには

,数

についての多面的な見方を機会 あるごとに経験 させ

,豊

かに し

,そ

の生かす場面を意図的

,計

画的に設け

,数

を多面的に見る ことのよさがわか るように してい くこと

,具

体的な活動をす ること

,

目的に応 じ適切に処理す ることな どが あ る。例 えば

,数

の相対的 な大 きさと して1.68を 0.1が16と0.01が8または, 0,01が 168とみ ると

,小

数の乗除の計算に有効 にはた らき

,1,2X4で

0.1が12個とみ ることが できた り

,3.16■ 4で

1/10の位で0.1が 31個と して計算す ることができる。 ただ与え られた数を計算すればよいという考えで なく

,算

数指導におけるよさを生かすため にも

,数

の感覚 を豊かにす ることを一層重視 していかなければな らない。

(3)「

式に表す

,式

をよむ」 こととよさ 式は

,数

量の関係 を的確 に

,ま

た簡潔にかつ一般的に表す ことができるす ぐれた表現方法で ある。 ことが らを簡潔に表現できるという式のよさだけでな く

,他

にも 目を向けるように した い。例えば

,形

式的な処理が可能になることもよさの1つである。 数字

,演

算記号

,言

葉の式

,□

や△などを用いて表す ことや

,数

を当てはめる活動を重視 し, 目的に応 じて上記の観点などか ら式の表す意味を十分によみ とることによ り

,式

のよさがわか るようにす ることが大切である。式をよむ ことは

,育

てるべ き究極の能力と して考えるのでは なく

,価

値あるものをみつけ る手段であ り

,お

互いが,「よむ」姿勢 をもち

,子

どもとともに 価値あるものをみつけてい くことを第一 と考えるべ きである。「 数 と計算」領域が単独 にある のでなく

,数

量関係が密接 に関係 していて

,計

算の意味理解 をす る上では,「式をよむ」 こと が重要 なポイ ン トになり

,よ

さを感得す ることにつ なが るものである。 また

,式

の扱いを「 第 2の言語

J教

育 という観点で考えるとき,「式 をよむ」 ことは言語の解釈でもあり,「式に表すJ ことは言語の表現で もある。 よって

,式

の表す具体的な意味の理解を確かに し

,さ

まざまな事 象 との関連の中で活用できるように してい くことが大切である。

4.よ

さの感得 を促す学習指導 算数・ 数学のよさがい くらあ っても

,最

終的 には

,児

童が, 自分 自身で体得 し

,感

じなければ なにもならない。 よさの感得は

,内

面 にかかわ り

,情

意面 にかかわ るものである。 事象を算数の舞合にのせ

,ね

らいを達成できる数学的な問題やモデルと してとらえ

,理

想化・ 抽象化 していることにもかかわ らず

,子

どもは数理化の「 よさ」 になか なか気付いていない。い ろいろな属性を捨象 して丞要 な属性をとりだ し

,一

般化できることを体験す ることを意図 した指 導を行 うことによ って

,初

めてよさを感得す ることができるものである。それ には

,例

えば

, 3

+5を

様 々な事象 に適用 させ, どの場合でも

3+5と

表 してもいいということを

,指

導の場でお さえ

,感

じさせ ることである。算数のよさの学習や場面では

,適

切 な助言によ り

,児

童に感得 さ せ ることである。例えばガウスが

, 1+2+…

……

+100を

求め るとき

,ア

イデ ィアを用いて, 101をつ くって解 いた ことなどにもふれ なが ら指導す るならば

,一

層算数・ 数学 のよさは感得で きる。 学習場面 の中に意図 して

,そ

のようなよさがで る状位 (学習場面

)の

設定 とそれにお、さわ しい 活動が起 こり得 るよい問題を開発す ることも重要である。 よさの感得 には

,そ

のような活動 とそ の活用が図 られ 自分のものと して

,言

語のように使えることも

,指

導上の重要 なポイン トである。 また

,素

晴 らしいアイデ ィアや発見など

,よ

さを発見 したときを逃さず

,肯

定的評価や とりあ げ評価で認めることも大切であ り

,そ

の時の気持ちが大 きな支えとなってよさを実感す るであろ う。そのすば らしさを友だちと共有す ることにより

,一

層効果的に

,子

どもはよさを感得できる。

(15)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第38巻 第

2号

(1997) 265 §

3

計算指導 の現代 的な意 味

1.計

算指導 における見積 りの重要性

(1)見

積 りの力の現代的な意義 見積 りの指導では,「どのように見積 るか」 という技能の観点よ りも, この「 なぜ見積 るの か

Jと

いう観点を明確 にす ることがまず大切 になる。 なぜ な ら

,見

積 りは

,あ

る判断 (意志決 定

)を

求めて行われ る 目的志向的な活動 とみ られ るべきものであるか らである。 このように, 見積 りは

,算

数・ 数学ばか りで なく

,判

断を求め られ

,合

目的的に行われ る活動 においては, 重要 な働 きをす る。 したが って

,こ

れか らの高度情報化社会 に生きる人間の資質 と して

,こ

の 見積 りの力は不可欠なものであると言わ なければな らない。 見積 りは

,お

よその数を求め る計算と

,そ

れを行 う目的とが伴 っているのである。形式的に 概数 を求め ることより

,

目的 をもって見積 ることに,「見積 り

Jの

指導の重要 な意義があるの である。指導の全体にわた って見積 りを配慮す るとともに

,適

切 な見積 りができるように し, 見積 りを生か した指導の工夫を してい くことが大切である。見積 りは

,計

算見積 りだけでなく, 数の性質や場面の把握

,問

題 の構造 などをと らえるのに有効 な手段であることも配慮 しておか なけれ′ぎならない。 見積 りが重視 され るもう一つの理 由と して

,学

習の主体者は子 どもであ り

,主

体的 な学習態度 の育成 をね らって

,児

童 自らの 「 見通 しをもった活動

Jと

しての見積 りが強調 されている。その 背景 と して

, 2つ

の点があげ られている。

O社

会の情報化の進展 に伴 い

,情

報の選択

,判

,処

理 などを してい くこと。つ まり

,見

通す力というものが一層必要 にな ると考えている点。

O社

会の変化に主体的に対応 してい く上で, 自分のものの見方 ・考え方をもって, 自ら判断 し

,主

体的 な学習を展開 してい くという

,子

ども主体の学習を進め る上で

,重

要 な役割を担 うものであると考えている点 新学習指導要領では

,算

教科学習指導の改善の要点 として

,第

1に

,問

題解決 にあた り

,見

通 しの立て られ る子 ども

,第

2に

,今

まで学習 してきた ことが活用できる子 ども

,第

3に

,数

理的の処理のよさがわか る子 どもの育成が期待 されている。そのことがあげ られた背景につい

,主

体的な学習態度の育成というねらいにより

,そ

の具体的な視点として

,矢

部は

,①

子ど

もの思考過程を一層重視 していくこと

,②

学習の目的を明確にした合 目的的な活動の実現を目

指すこと

,③

主体

(子

ども

)の

判断を積極的に算数の学習の中に盛り込んでいこうとする精神

があると述べている

122)。

このように見積りを重視する背景には,21世紀に生きる子ども達に期待される重要な資質に

かかわるものが含まれていることがわかる。つまり

,見

積りの目的は

,子

どもたち一人ひとり

の活動を見通しをもった活動にすることにあり,こ のことは

,主

体的な学習態度の育成を目指

しているととらえることができる。

(2)計 算指導における見積りの活動

計算指導における見積 りのねらいは

,計

算の指導においては

,(%) 主体的な学習態度の育成 見 通 し を も っ た 活 動 見積 りを生 か した 指 導 台 台

(16)

笹田昭三・齋尾宏伸・矢部敏昭 :算数における計算指導の見直 しとその改善 ① 見通 しをもって考えを進めてい くことができる。 ② 既習内容を活用 し

,新

たなものを生み出すきっかけとなる。 ③ 大きな誤 りを防ぎ

,

自分の判断に責任を持つことができる。 のような

3つ

のよさがあげ られ る。 そこで

,見

積 りのよさを体験させ る場を設定 してお くことが必要になる。今までは

,指

導者 も算数学習における見積 りの重要性をあまり意識せずにきているので

,今

後は

,そ

の重要性を 認識 していくとともに

,子

どもたちの見通 しの体験学習の場として

,

どのような場があるのか を指導者が十分把握 し

,そ

れを算数学習に生か していかなければならない。漠然とした予想 と 確かめにとどまることでなく

,大

きな誤 りを防 ぐという意味でも

,予

想する見積 りと結果の確 かめをワンセ ットで考えておかなければならない。 見積 りは

,主

体的な学習活動を行うために

,見

通 しをもって学習す るための 1つ の具体的な 方法である。結果の見積 りや方法の見通 しがなくては

,子

どもにとって

,学

習活動が主体的に なりがた く

,今

までの与えられた問題をや らされていることになって しまう。 したが って

,問

題解決においては

,見

積 りを して

,見

通 しをもつことは

,重

要な役割を果たす。算教科では, その特質か らも課題設定にか らんで

,論

理的な思考力と直観力を今回の改善のね らいとしてい るが

,見

積 りをすることによって

,見

通 しをもった活動が期待できる。結果の見通 しや方法の 見通 しの場を設けて

,主

体的な学習 と して

,ま

,認

めてい くことによって

,見

通 しをもつ こ とが

,だ

んだんできるようになると考える。そのためには

,低

学年か らの指導が望 まれ ること である。 解決の後 に

,そ

の過程 を応、り返 ることも重要である。結果の見通 しや方法の見通 しを 自己評 価す ることによって

,よ

りよいものを生み出す ことになる。見積 りの仕方の指導 も自己評価 と か らめて

,よ

りよい方法や こんな方法 もあることを知 らせてい くことも必要 になって くる。 計算の指導に際 して,「見積 り

Jは ,見

通 しをもちなが ら

,既

習内容を活用 し

,演

算決定や 解決の活動 を行いなが ら

,新

しいものを生み 出す ことができる契機 になるのである。意味の理 解を深めること

,算

数の数理的処理のよさの感得

,数

学的な考え方を仲 ばす こと

,数

の感覚を 豊かにす ることなど

,そ

の意味す るところは大き く

,算

数で

,よ

りよいものを作 り出す ときに, 見積 りの活動を生か した見通 しをもった活動が重要である。

2.計

算のアル ゴ リズムと しての計算指導

(1)演

算の意味 演算の意味の指導のもつ意義 について考えると

,計

算の本質は

,数

学で集合 の構造 にかかわ る特定の操作 といった抽象的な見方 (加法では

,合

併 。増加 など

)ま

で発展す る概念である。 算数では

,四

則計算と して

,加

,減

,乗

,除

法が取 り上げ られているが,「演算の意味J ということは

,15+4と

か,15× 4とかいった計算についての答えが19か60と して出す手続 き ができる計算の技能面 より,

O式

,そ

れぞれ

2つ

の数に対 してどんな操作をす るのかを表 しているのか

Oほ

かの操作 とどんな関係 になっているのか ということを問題 に している。「 演算の意味

Jの

指導は

,算

数のね らいを達成す る上か らも重 要 な意味 をもっていて,「数学的な考え方を仲 ばす

Jと

いう一層創造的な活動がで きるように す ることをね らっている。 「 演算の意味」の指導の意義 と して

,中

島氏は

,ア

)計

算の適用判断のために

,イ

)計

算方

(17)

鳥取大学教育学部研究報告 教育科学 第38巻 第

2号 (1997) 267

法 とその発展的 な見方のために

,ウ

)計

算の意味の拡張 と数の創造のために

,工

)価

値観の育 成 と多様化のために

,の

4点

をあげている(%)。

(2)計

算の意味の理解 とその適用の場 問題解決能力を支えるのが,「計算の意味の理解 とその適用 の場の理解

Jで

ある。そのため には

,意

味の理解を十分に図るとともに

,

日常の生活場面 などか ら演算が用 い られ る場 を豊か に経験させ

,現

実の問題か ら式

,式

か ら現実の問題 の往復的な経験をふまえ

,数

量の関係 を抽 象す る豊かな活動を大切 にす ることである。その際の指導のポイ ン トと して

,笹

田は

,次

の4 つの点をあげている9)。

1)操

作 などによる演算の場の統合的把握

2)演

算の場面の一般化

3)演

算の関係 の構造の図示

4)演

算の意味の拡張

1)に

関 しては

,加

法の場 としては

,合

,増

,順

序教 などがあげ られ るが

,こ

れをおは じきや教え棒 などの操作 に置 き換えると

,す

べてその半具体物 (おは じき

,数

え棒 など

)の

集 合の合併 とみ ることができ

,加

法の場 と しての統合的な把握 になる。他の演算についても

,同

様であるが

,特

,除

法の等分除と包合除の統合が難 しい。それは

,両

者 とも1つの集合を対 等 な部分集合 に分けるという操作は同 じであるが

,等

分除はその部分集合の大 きさを求め るも のであ り

,他

方包含除は

,で

きた部分集合の個数 を求め るというちがいがあるか らである。 し か し

,こ

れ も

,カ

ー ド配 りなどの操作を通 して

,実

は等分除も包含除と同 じとみ ることができ るという統合 に導 くことができる。

2)に

関 しては

,実

際にはいろいろな場面での問題であ り

,量

の単位

,大

きさ

,種

類のちが いはあるが

,そ

の種 たの条件 を捨象 して

,演

算の適用の場面を拡大 し

,一

般化tノてい くことが 大切である。それによって一層意味の理解が強化 され

,そ

の適用す る場の理解が深化す る。

3)に

関 しては

,演

算操作の量的関係 を抽象す ることを

,発

達段階 に応 じて行い

,絵

,帯

図線分図

(1段

, 2段

)な

どに図示す ることである。みかんを絵図できちんとな らべ

,あ

たかも

,数

直線 になっているように表現 し

,そ

の関係 をとらえ

,み

かんの個数を数値化 して数 直線上 に図示 してい くようになり

,関

係を教直線の上で把握できるようになる。乗法では

,具

体物 をア レイ図で表す ことや帯図での関係 を単位量をは っきり位置づけて表す ことをふまえ, 数直線上 に図示す ることに発展させ ることができる。図示す ることによる関係把握 によって, 演算の意味が明確 になる。

4)に

関 しては

,整

数の演算か ら

,小

数・ 分数への乗法の拡張を行 う際に

,累

加の考えか ら, 倍概念

,単

位量の概念への拡張である。(基準量

(基準量を単位 と して測 った数

)と

して 乗法をと らえ

,乗

数 に比例 した大 きさを表す意味を具体的な操作の上で理解 させ

,数

直線を積 極的に用 いて

,関

数的な扱いを してい くことである。 指導のポイ ン トの示唆にもとづいて

,主

体である子 どもに豊かな活動を体験させ

,数

量の関 係を抽象す る活動を設定 し

,計

算の意味 とその適用の場の理解 を一層重視 し

,指

導の改善 に努 めなければならない。

(3)計

算指導の現代的な意味 と してのアル ゴリズム さらに計算指導の改善で 目を向けなけ らばならないことは

,時

代の進展や社会の進歩に伴 う, 計算指導 における新 しい意義 についてである。

参照

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