ニッセイ基礎研究所 2010 年 10 月 28 日
依然見通しは慎重
環境や海外への関心高まる
第 7 回不動産市況アンケート結果
金融研究部門 不動産投資分析チーム 副主任研究員 増宮 守 ([email protected]) アンケートの概要 ニッセイ基礎研究所では、2010 年 10 月 4 日から 15 日にかけて、不動産分野の実務家・専門家に 対して、第7 回目となる不動産投資市況に関するアンケートを行った。これは、不動産・建設、金融・ 保険、仲介、不動産管理、不動産ファンド運用、格付、投資顧問・コンサルタントなどの業務に携わ る214 名を対象に、電子メールにて実施したもので、124 名から回答を得た(回収率 57.9%)。 アンケートの結果 ①現在の景況感及び今後の見通し 不動産投資市場の現在の景況感は、「やや悪い」(64.5%)との回答が圧倒的に多く、「やや悪い」 と「悪い」の合計が8割近くを占めた。依然として厳しい景況感が確認されたが、2年連続で「悪 い」が過半を占め、「平常・普通」あるいは「やや良い」とする回答がほとんど見られなかった昨年 までと比べれば、景況感は大きく改善して最悪期は脱したことが明らかになった(図表-1)。 図表-1 不動産投資市場の現在の景況感 69.6% 0.0% 7.3% 29.4% 1.0% 0.0% 0.0% 58.8% 38.2% 2.0% 1.0% 14.5% 0.0% 64.5% 13.7% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 悪い やや悪い 平常・普通 やや良い 良い (出所)ニッセイ基礎研究所「不動産市況アンケート」2008~10年、各10月 08年 09年 10年現在の景況感は大きく改善したものの、6ヵ月後の見通しについては、依然として「(6ヵ月後も 現在と)変わらない」あるいは「やや良くなる」との回答がほとんどで、昨年と比べ若干の改善に 止まった(図表-2)。昨年の調査時点はリーマンショック後の最悪期といえる時期にもかかわらず、 6ヶ月後にはある程度の回復が予想されていた。しかし、その後景気は持ち直したものの、欧州の 経済不安や円高・株安など先行きの不透明感が払拭されておらず、楽観的な見通しの増加はわずかで あった。 47.6% 1.0% 50.0% 3.9% 2.9% 44.7% 1.0% 38.2% 46.1% 9.8% 4.9% 42.7% 3.2% 4.0% 0.0% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 悪くなる やや悪くなる 変わらない やや良くなる 良くなる (注)2008年は6ヶ月後に限定せず「今後の見通し」について質問している。 (出所)ニッセイ基礎研究所「不動産市況アンケート」2008~10年、各10月 08年 09年 10年 図表-2 不動産投資市場の6ヵ月後の見通し ②有望な投資対象 現時点で最も有望とみられる投資対象を聞いたところ、「賃貸マンション」が32.6%と最も多くの 支持を集めた。賃貸マンションは、オフィスビルと比べ景気による賃料や空室率の変動が小さく、 キャッシュフローや価格が安定的に推移していること、また、投資規模が比較的小さく取引事例も 多いことから、現在の市況下で高評価になったものと思われる。 「賃貸マンション」に続き「オフィスビル」が 29.5%と、第3位の「物流施設」14.4%以下に差 をつけて第2位となった。オフィス市場の回復は他のセクターに比べて順調ではないが、コアアセ ットとして投資タイミングを測る市場参加者が少なくないとも読み取れる (図表-3)。 次に、今後5年間でみて最も有望とみられる投資対象を聞いたところ、「オフィスビル」が47.0%と 最も多かった。不動産投資の代表的なセクターだけに、市場が平常状態に戻れば、キャッシュフロー の改善効果も大きいことから、同セクターへの支持が高くなったと考えられる。 また、オフィスビルに次いで「中国などアジアの不動産」18.2%が第2位となり、第3位の「物流 施設」9.1%以下に大きな差をつけた。現状は、デベロッパーや商社、ハウスメーカーなどによる住宅・ 商業施設開発での進出は増加する反面、機関投資家による投資実績はほとんどないが、中長期的にみ
(出所)ニッセイ基礎研究所「不動産市況アンケート」2010年10月 29.5% 32.6% 4.5% 0.8% 3.8% 14.4% 10.6% 3.8% 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 45% 50% オフィスビル 賃貸マンション 都心型商業ビル 郊外型ショッピングセンター ホテル 物流施設 中国などアジアの不動産 その他 図表-3 現在最も有望と見られる投資対象(単一回答) (出所)ニッセイ基礎研究所「不動産市況アンケート」2010年10月 47.0% 9.1% 6.8% 0.0% 3.8% 9.1% 18.2% 6.1% 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 45% 50% オフィスビル 賃貸マンション 都心型商業ビル 郊外型ショッピングセンター ホテル 物流施設 中国などアジアの不動産 その他 図表-4 今後5年でみて、最も有望とみられる投資対象(単一回答)
③省エネなど環境配慮に特に優れた不動産への選好度 今回、省エネなど環境配慮に特に優れた不動産に投資する場合、そうでない不動産と比べ、収益還 元利回りにどの程度のプレミアム(利回りの引下げ)を考慮するかを聞いた。 結果は、「-0.3~-0.1%(のプレミアムを考慮する)」が 50.0%と、次点の「特に考慮しない」お よび「わからない」12.9%を大きく引き離して第1位となった。その他なんらかのプレミアムを考 慮するとした回答と合わせて全体の4分の3を占め、市場参加者の多くが環境配慮型不動産に対し て一定の評価をしていることが確認された(図表-5)。 (出所)ニッセイ基礎研究所「不動産市況アンケート」2010年10月 12.9% 10.5% 50.0% 10.5% 3.2% 0.0% 12.9% 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 45% 50% 55% 特に考慮しない -0.1~0.0% -0.3~-0.1% -0.5~-0.3% -1.0~-0.5% ~-1.0% わからない 図表-5 省エネなど環境配慮に特に優れた不動産に対する利回りプレミアム ④不動産市場が長期・持続的に成長するために必要と思われる政策 最後に、不動産市場が長期・持続的に成長するために必要と思われる政策について聞いたところ、 「海外からの不動産投資資金流入政策(金融規制緩和など)」が58.1%と最も多く、次いで「J-REIT 市場など不動産証券化市場の信任回復政策(税制や規制の見直しなど)」が54.0%となった。昨年行 った同様の問いに対してもこれらが上位を占めたが、昨年より「海外からの不動産投資資金流入政 策」への支持が増加し、最近のアジアなど海外投資資金の流入増加を反映したものとなった。 また、「海外への積極的な情報発信、投資インデックス整備など市場の透明性向上策」32.3%、「海 外からの流入人口増加政策(観光立国政策、留学生、看護士、介護士などの増加策)」29.8%なども 一定の支持を集めており、海外ファクターをいかに不動産市場の活性化に取り込むかという課題意 識の強さがうかがわれた(図表-6、7)。
図表-6 不動産市場が長期・持続的に成長するために必要と思われる政策(2010 年、複数回答) (出所) ニッセイ基礎研究所「不動産市況アンケート」2010年10月 58.1% 54.0% 35.5% 32.3% 30.6% 29.8% 17.7% 12.1% 12.1% 8.9% 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 45% 50% 55% 60% 65% 70% 海外からの不動産投資資金流入政策(金融規制緩和など) J-REITなど不動産証券化市場の信任回復政策(税制や規制の見直しなど) 東京圏など大都市圏への集中投資政策(都市再生事業促進など) 海外への積極的な情報発信、投資インデックス整備など市場の透明度向上策 総人口増加政策(子育て支援策など) 海外からの流入人口増加政策(観光立国政策、留学生・看護士・介護士などの増加策) 地方都市の経済活性化策(地方分権、高速道路網整備・無料化、コンパクトシティなど) 総合的な住宅政策(新築・中古・賃貸市場の活性化、長期優良住宅建設促進など) 地球環境対策(環境技術立国、温暖化ガス削減、省エネ促進、都市緑化など) その他 図表-7 不動産市場が長期・持続的に成長するために必要と思われる政策(2009 年、複数回答) (出所) ニッセイ基礎研究所「不動産市況アンケート」2009年10月 65.7% 47.1% 44.1% 36.3% 21.6% 19.6% 16.7% 14.7% 2.0% 8.8% 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 45% 50% 55% 60% 65% 70% J-REIT等不動産証券化市場の信任回復政策(再生ファンド、税制や規制の見直しなど) 海外からの不動産投資資金流入策(金融規制緩和、低金利政策など) 総人口増加政策(子育て支援策など) 東京圏など大都市圏への集中投資政策(東京などにおける都市再生事業促進) 地方都市の経済活性化策(地方分権、高速道路網整備・無料化、コンパクトシティなど) 総合的な住宅政策(新築・中古・賃貸市場の活性化、長期優良住宅建設促進など) 地球環境対策(環境技術立国、温暖化ガス削減、省エネ促進、都市緑化など) 交流人口増加政策(観光立国、留学生増加策など) 持ち家政策の持続・強化(優遇税制など) その他 以上