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日本皮膚科学会第121巻第9号

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創傷・熱傷ガイドライン委員会報告―2:

褥瘡診療ガイドライン

立花隆夫 今福信一 入澤亮吉 大塚正樹 門野岳史 藤原 浩 浅野善英 安部正敏 石井貴之 爲政大幾 伊藤孝明 井上雄二 大塚幹夫 小川文秀 小寺雅也 川上民裕 川口雅一 久木野竜一 幸野 健 境 恵祐 高原正和 谷岡未樹 中西健史 中村泰大 橋本 彰 長谷川稔 林 昌浩 藤本 学 前川武雄 松尾光馬 間所直樹 山崎 修 吉野雄一郎 レパヴー・アンドレ 尹 浩信

1)褥瘡診療ガイドライン策定の背景

ガイドラインは,「特定の臨床状況において,適切な 判断を行うために,医療者と患者を支援する目的で系 統的に作成された文書」であり,褥瘡においては,2009 年 2 月に日本褥瘡学会から「褥瘡予防・管理ガイドラ イン」が公表されている.しかしながら,褥瘡学会の ガイドラインは医師のみならず看護師,栄養士,薬剤 師,理学療養士・作業療養士なども対象としており, また,治療よりその予防,ケアを重視した内容である ため,より治療に重点を置いた褥瘡診療ガイドライン を作成した.もちろん,本ガイドラインも褥瘡学会の ガイドラインと同様に,褥瘡の予防・ケア・治療にお ける臨床決断を支援する推奨をエビデンスに基づいて 系統的に示すことにより,個々褥瘡患者に対する診療 の質を向上させるツールとして機能させ,ひいては我 が国における褥瘡診療がレベルアップすることを目標 としている.

2)褥瘡診療ガイドラインの位置付け

創傷・熱傷ガイドライン委員会(表 1)は日本皮膚科 学会理事会より委嘱されたメンバーにより構成され, 2008 年 10 月より数回におよぶ委員会および書面審議 を行い,日本皮膚科学会の学術委員会,理事会の意見 を加味して創傷一般の解説および褥瘡診療ガイドライ ンを含めた 5 つの診療ガイドラインを策定した.また, 本稿に示す褥瘡診療ガイドラインは現時点における本 邦での標準診療を示すものであるが,褥瘡患者におい ては,基礎疾患の違い,症状の程度の違い,あるいは, 合併症などの個々の背景の多様性が存在することか ら,診療に当たる医師が患者とともに予防・ケア・治 療の方針を決定すべきものであり,その内容が本ガイ ドラインに完全に合致することを求めるものではな い.また,裁判等に引用される性質のものでもない.

3)資金提供者,利益相反

褥瘡診療ガイドラインの策定に要した費用はすべて 日本皮膚科学会が負担しており,特定の団体・企業, 製薬会社などから支援を受けてはいない.なお,ガイ ドラインの策定に参画する委員(表 1)が関連特定薬剤 の開発などに関与していた場合は,当該項目の推奨度 判定に関与しないこととした.これ以外に各委員は, 本ガイドライン策定に当たって明らかにすべき利益相 反はない.

4)エビデンスの収集

使用したデータベース:Medline,PubMed,医学中 央雑誌 Web,ALL EBM Reviews のうち Cochrane da-tabase systematic reviews,および,各自ハンドサーチ のものも加えた. 検索期間:1980 年 1 月から 2008 年 12 月までに検 索可能であった文献を検索した.また,重要な最新の 文献は適宜追加した. 採択基準:ランダム化比較試験(Randomized Con-rolled Trial:RCT)のシステマティック・レビュー, 個々の RCT の論文を優先した.それが収集できない 場合は,コホート研究,症例対照研究などの論文を採 用した.さらに,症例集積研究の論文も一部参考とし たが,基礎的実験の文献は除外した. 所属は表 1 を参照

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表 1 創傷・熱傷ガイドライン委員会(下線は各代表委員を示す) 委 員 長:尹 浩信(熊本大学大学院生命科学研究部皮膚病態治療再建学教授) 副委員長:立花隆夫(大阪赤十字病院皮膚科部長) 創傷一般 井上雄二(熊本大学大学院生命科学研究部皮膚病態治療再建学准教授) 長谷川稔(金沢大学大学院医学系研究科血管新生結合組織代謝学講師) 前川武雄(自治医科大学医学部皮膚科学助教) レパヴー・アンドレ(いちげ皮フ科クリニック) 褥 瘡 今福信一(福岡大学医学部皮膚科学教室准教授) 入澤亮吉(東京医科大学皮膚科学講座助教) 大塚正樹(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科皮膚科学分野助教) 門野岳史(東京大学大学院医学系研究科皮膚科准教授) 立花隆夫(大阪赤十字病院皮膚科部長) 藤原 浩(新潟大学大学院医歯学総合研究科皮膚科学分野准教授) 糖尿病性潰瘍 安部正敏(群馬大学大学院医学系研究科皮膚科学講師) 爲政大幾(関西医科大学皮膚科学講座准教授) 中西健史(大阪市立大学大学院医学研究科皮膚病態学講師) 松尾光馬(東京慈恵会医科大学皮膚科学講座講師) 山崎 修(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科皮膚科学分野講師) 膠原病・血管炎 浅野善英(東京大学大学院医学系研究科・医学部皮膚科学講師) 石井貴之(金沢大学大学院医学系研究科血管新生結合組織代謝学助教) 小川文秀(長崎大学病院皮膚科・アレルギー科講師) 川上民裕(聖マリアンナ医科大学皮膚科学教室准教授) 小寺雅也(社会保険中京病院皮膚科医長) 藤本 学(金沢大学大学院医学系研究科血管新生結合組織代謝学准教授) 下腿潰瘍・下肢静脈瘤 伊藤孝明(兵庫医科大学皮膚科学教室講師) 久木野竜一(NTT 東日本関東病院皮膚科医長) 高原正和(九州大学大学院医学研究院臨床医学部門外科学講座皮膚科学分野講師) 谷岡未樹(京都大学大学院医学研究科皮膚生命科学講座講師) 中村泰大(筑波大学大学院人間総合科学研究科疾患制御医学専攻皮膚病態医学分野講師) 熱 傷 大塚幹夫(福島県立医科大学医学部皮膚科学講座准教授) 川口雅一(山形大学医学部情報構造統御学講座皮膚科学分野講師) 境 恵祐(熊本大学医学部附属病院高次救急集中治療部助教) 橋本 彰(東北大学大学院医学系研究科(神経・感覚器病態)皮膚科学分野助教) 林 昌浩(山形大学医学部情報構造統御学講座皮膚科学分野講師) 間所直樹(マツダ株式会社マツダ病院皮膚科部長) 吉野雄一郎(熊本赤十字病院皮膚科部長) EBM 担当 幸野 健(日本医科大学皮膚科学講座准教授)

5)エビデンスレベルと推奨度決定基準

以下に示す,日本皮膚科学会編皮膚悪性腫瘍診療ガ イドラインに採用されている基準を参考にした. ●エビデンスレベルの分類 I システマティックレビュー!メタアナリシス II 1 つ以上のランダム化比較試験 III 非ランダム化比較試験(統計処理のある前後 比較試験を含む) IVa 分析疫学的研究(コホート研究) IVb 分析疫学的研究(症例対照研究・横断研究) V 記述研究(症例報告や症例集積研究) VI 専門委員会や専門家個人の意見 ●推奨度の分類 A:行うよう強く推奨する(少なくとも 1 つ以上の 有効性を示すレベル I もしくは良質のレベル II のエ ビデンスがある) B:行うよう推奨する(少なくとも 1 つ以上の有効 性を示す質の劣るレベル II か良質のレベル III あるい は非常に良質のレベル IV のエビデンスがある) C1:良質な根拠はないが,選択肢の 1 つとして推奨 する(質の劣る III∼IV,良質な複数の V,あるいは委 員会が認める VI のエビデンスがある) C2:十分な根拠がないので(現時点では)推奨でき

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ない(有効のエビデンスがない,あるいは無効である エビデンスがある) D:行わないよう推奨する(無効あるいは有害であ ることを示す良質のエビデンスがある) なお,本文中の推奨度が必ずしも上記に一致しない ものがある.国際的にも本症診療に関するエビデンス が不足している状況,また海外のエビデンスがそのま ま我が国に適用できない実情を考慮し,さらに実用性 を勘案し,(エビデンスレベルを示した上で)委員会の コンセンサスに基づき推奨度のグレードを決定した箇 所があるからである.

6)公表前のレビュー

ガイドラインの公開に先立ち,2008 年から 2011 年 の日本皮膚科学会総会において,毎年成果を発表する と共に学会員からの意見を求め,必要に応じて修正を 行った.また,ガイドラインの一般的な利用者と考え られる代議員に配布して意見聴取と集約を行い,その 結果を反映させた.

7)更新計画

本ガイドラインは 3 ないし 5 年を目途に更新する予 定である.ただし,部分的更新が必要になった場合は, 適宜,日本皮膚科学会ホームページ上に掲載する.

8)用語の定義:日本褥瘡学会用語委員会

(委員長:立花隆夫)の用語集より引用

【褥瘡】身体に加わった外力は骨と皮膚表層の間の 軟部組織の血流を低下,あるいは停止させる.この状 況が一定時間持続されると組織は不可逆的な阻血性障 害に陥り褥瘡となる. 【外用薬】皮膚を通して,あるいは皮膚病巣に直接加 える局所治療に用いる薬剤であり,基剤に各種の主剤 を配合して使用するものをいう. 【ドレッシング材】創における湿潤環境形成を目的 とした近代的な創傷被覆材をいい,従来の滅菌ガーゼ は除く. 【創傷被覆材】創傷被覆材は,ドレッシング材(近代 的な創傷被覆材)とガーゼなどの医療材料(古典的な 創傷被覆材)に大別される.前者は,湿潤環境を維持 して創傷治癒に最適な環境を提供する医療材料であ り,創傷の状態や滲出液の量によって使い分ける必要 がある.後者は滲出液が少ない場合,創が乾燥し湿潤 環境を維持できない.創傷を被覆することにより湿潤 環境を維持して創傷治癒に最適な環境を提供する,従 来のガーゼ以外の医療材料を創傷被覆材あるいはド レッシング材と呼称することもある. 【閉塞性ドレッシング】創を乾燥させないで moist wound healing を期待する被覆法すべてを閉塞性ド レッシングと呼称しており,従来のガーゼドレッシン グ以外の近代的な創傷被覆材を用いたドレッシングの 総称である. 【wet-to-dry dressing】生理食塩水で湿らせたガー ゼを創に当て,乾燥したガーゼに固着する異物や壊死 組織をガーゼ交換とともに非選択的に除去する,デブ リードマンを目的としたドレッシング法をいう. 【外科的治療】手術療法と外科的デブリードマン,お よび皮下ポケットに対する観血的処置をいう. 【物理療法】生体に物理的刺激手段を用いる療法で ある.物理的手段には,熱,水,光線,極超短波,電 気,超音波,振動,圧,牽引などの物理的エネルギー がある.物理療法には温熱療法,寒冷療法,水治療法, 光線療法,極超短波療法,電気刺激療法,超音波療法, 陰圧閉鎖療法,高圧酸素療法,牽引療法などがある. 疼痛の緩和,創傷の治癒促進,筋・靭帯などの組織の 弾性促進などを目的に物理療法が行われる.なお, physical therapy は理学療法一般を示す用語として使 用され,混同を避けるため物理療法には治療手段を示 す physical agents を慣用的に使用している. 【NPUAP 分類】褥瘡の深達度を表す分類の 1 つで あり,米国褥瘡諮問委員会(National Pressure Ulcer Advisory Panel;NPUAP)が 1989 年 に 提 唱 し た ス テージングシステムである.従来はステージ I,II,III, IV に分類されてきた.しかし,近年は皮膚表面の損傷 がなくとも深部ですでに損傷が起っていることがある という考え方から,deep tissue injury(DTI)という病 態 が 追 加 さ れ た.こ れ ら の こ と か ら,2007 年 の

NPUAP 新分類では「深部損傷褥瘡疑い」((suspected)

deep tissue injury),ステージ I,II,III,IV,さらに 褥瘡の深達度 III か IV か判断できない場合の「判定不 能」(Unstageable)の 6 病期とした. 【DESIGN】日本褥瘡学会が 2002 年に公表した褥瘡 状態判定スケールであり,深さ(Depth),滲出液(Exu- date),大きさ(Size),炎症!感染(Inflammation!Infec-tion),肉芽組織(Granulation tissue),壊死組織(Ne-crotic tissue),ポケット(Pocket)の 7 項目からなるア セスメントツールである.重度,軽度を大文字,小文 字で表した重症度分類用と,治癒過程をモニタリング

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できるように数量化した経過評価用の 2 種類がある. 後者には 2002 年版と,褥瘡経過を評価するだけではな くより正確に重症度を判定できる DESIGN-R(2008 年改訂版,R は rating(評価,評点)の頭文字)の 2 つ がある. 【DTI(深部損傷褥瘡)】NPUAP が 2005 年に使用し た用語である.表皮剥離のない褥瘡(stage I)のうち, 皮下組織より深部の組織の損傷が疑われる所見がある 褥瘡をいう.2007 年に改正された NPUAP の褥瘡ス テージ分類では,(suspected)deep tissue injury(深部 損傷褥瘡疑い)という新しい病期(stage)が加えられ ている.また,褥瘡以外の損傷に対しては「深部組織 損傷」と訳されることもある.

【NST(栄養サポートチーム)】日本栄養療法推進協 議会(Japan Council Nutritional Therapy:JCNT)で は,栄養管理を症例個々や各疾患治療に応じて適切に 実施することを栄養サポート(nutrition support)とい い,これを医師,看護師,薬剤師,管理栄養士,臨床 検査技師などの多職種で実践する集団(チーム)を NST(Nutrition Support Team:栄養サポートチーム) とすると定義している. 【びらん】基底膜(表皮・真皮境界部,粘膜)を越え ない皮膚粘膜の組織欠損で,通常瘢痕を残さずに治癒 する. 【潰瘍】基底膜(表皮・真皮境界部,粘膜)を越える 皮膚粘膜の組織欠損で,通常瘢痕を残して治癒する. 【減圧】除圧と同様に接触圧力を下げることをいう. 毛細血管の内圧とされてきた 32 mmHg を基準とし, それ未満にすることを除圧,それ以上を減圧と定義し ていたこともあったが,現在は区別していない. 【体圧分散用具】ベッド,椅子などの支持体と接触し ているときに単位体表面に受ける圧力を,接触面積を 広くすることで減少させる,もしくは,圧力が加わる 場所を時間で移動させることにより,長時間,同一部 位にかかる圧力を減少させるための用具.臥位時に使 用するものには特殊ベッドの他,マットレスや布団に 重ねて使用する上敷きマットレス,マットレスや布団 と入れ替えて使用する交換マットレスなどがあり,座 位時には椅子や車椅子に敷いて使用するクッションお よび,姿勢を整えるパッドなどがある.体圧分散用具 に用いる材質には,エア,ウォーター,ウレタンフォー ム,ゲル,ゴムなどがある.

【wound bed preparation(創面環境調整)】創傷の治 癒を促進するため,創面の環境を整えること.具体的

には壊死組織の除去,細菌負荷の軽減,創部の乾燥防 止,過剰な滲出液の制御,ポケットや創縁の処理を行 う.

【TIME】Wound bed preparation の 実 践 的 指 針 と して,創傷治癒阻害要因を T(組織),I(感染または炎 症),M(湿潤),E(創縁)の側面から検証し,治療・ ケア介入に活用しようとするコンセプトをいう.

【moist wound healing(湿潤環境下療法)】創面を湿 潤した環境に保持する方法.滲出液に含まれる多核白 血球,マクロファージ,酵素,細胞増殖因子などを創 面に保持する.自己融解を促進して壊死組織除去に有 効であり,また細胞遊走を妨げない環境でもある. 【陰圧閉鎖療法】物理療法の一法である.創部を閉鎖 環境に保ち,原則的に 125 mmHg から 150 mmHg の 陰圧になるように吸引する.細菌や細菌から放出され る外毒素を直接排出する作用と,肉芽組織の血管新生 作用や浮腫を除去する作用がある. 【ポケット】皮膚欠損部より広い創腔をポケットと 称する.ポケットを覆う体壁を被壁または被蓋と呼ぶ. 【洗浄】液体の水圧や溶解作用を利用して,皮膚表面 や創傷表面から化学的刺激物,感染源,異物などを取 り除くことをいう.洗浄液の種類によって,生理食塩 水による洗浄,水道水による洗浄,これらに石鹸や洗 浄剤などの界面活性剤を組み合わせて行う石鹸洗浄な どと呼ばれる方法がある.また,水量による効果を期 待する方法と水圧による効果を期待する方法がある. 【デブリードマン】死滅した組織,成長因子などの創 傷治癒促進因子の刺激に応答しなくなった老化した細 胞,異物,およびこれらにしばしば伴う細菌感染巣を 除去して創を清浄化する治療行為.①閉塞性ドレッシ ングを用いて自己融解作用を利用する方法,②機械的 方法(wet-to-dry dressing,高圧洗浄,水治療法,超音 波洗浄など),③蛋白分解酵素による方法,④外科的方 法,⑤ウジによる生物学的方法などがある. 【critical colonization(臨界的定着)】創部の微生物 学的環境を,これまでの無菌あるいは有菌という捉え 方から,両者を連続的に捉えるのが主流となっている (bacterial balance の概念).すなわち,創部の有菌状態 を汚染(contamination),定 着(colonization),感 染 (infection)というように連続的に捉え,その菌の創部 への負担(bacterial burden)と生体側の抵抗力のバラ ンスにより感染が生じるとする考え方である.臨界的 定着(critical colonization)はその中の定着と感染の間 に位置し,両者のバランスにより定着よりも細菌数が

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図 1-a 褥瘡の診療アルゴリズム 図 1-b 深い慢性期褥瘡の診療アルゴリズム(立花隆夫,宮地良樹:褥瘡治癒のメカニズム 臨床栄養 103(4):353-356, 2003 を一部改変して引用) 多くなり感染へと移行しかけた状態を指す. 【バイオフィルム】異物表面や壊死組織などに生着 した細菌は,菌体表面に多糖体を産生することがある. それぞれの菌周囲の多糖体は次第に融合し,膜状の構 造物を形成し,菌はその中に包み込まれるようになる. これをバイオフィルムと呼ぶ.この中に存在する細菌 に対しては,一般の抗生物質や白血球も無力であり, 感染が持続しやすい. 【ポジショニング】運動機能障害を有する者に,クッ ションなどを活用して身体各部の相対的な位置関係を 設定し,目的に適した姿勢(体位)を安全で快適に保 持することをいう. 【シーティング】重力の影響を配慮した身体評価に より,クッションなどを活用して座位姿勢を安全・快 適にする支援技術である.特に端座位がとれない者が 座位をとれるようにすることをいう. 【背抜き】ベッドや車いすなどから一時的に離すこ とによって,ずれを解放する手技である. 【30 度ルール】体圧分散のための基本手技の覚え方 の 1 つである.(1)大転子部,仙骨部,肩の体圧分散の

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ために半側臥位をとる際,クッションなどを用いて身 体を 30°程度傾けることで,肩や殿部の接触面積を大 きくして骨突出部の圧迫を軽減できる.(2)仰臥位で ベッドの頭側を挙上する場合に,身体が下方にずれる ことや仙骨部の圧迫を最小限にするために,頭側挙上 の角度を 30°以下に制限し,同時に頭側を挙上する前 に大腿を 30°程度挙上する. 【90 度ルール】体圧分散のための基本手技の覚え方 の 1 つである.車いすや椅子での座位姿勢で,体圧分 散とずれ予防のために股関節,膝関節,足関節のいず れの角度も 90°程度になるようにクッションなどで整 えることをいう.

9)予防・ケア・治療のコンセプトと診療

アルゴリズム

褥瘡に対する予防・ケアの基本コンセプトとして, 他の創傷の場合と同様に創に不要な圧迫,ずれなどの 外力を加えないこと,すなわち,創面保護の維持を基 本方針とした.また,不幸にして褥瘡が生じた時には, 深い褥瘡の治療前半(黒色期,黄色期)では TIME コンセプトによる wound bed preparation を,一方,浅 い褥瘡と深い褥瘡の治療後半(赤色期,白色期)では moist wound healing を治療コンセプトとした.なお, TIME コ ン セ プ ト と は T(tissue:nonviable or defi-cient の改善,すなわち壊死・不活性組織の管理),I (infection or Inflammation の改善,すなわち感染・炎 症の管理),M(moisture imbalance の改善,すなわち 滲出液の管理),E(edge of wound:nonadvancing or undermined epidermal margin の改善,すなわち創辺 縁の管理)の頭文字をとったものである. 上記コンセプトを元に作成した診療アルゴリズムと Clinical Question(CQ)を図 1 に示す.なお,治療にお いては,皮膚創傷,すなわち,びらん・潰瘍に対して 保険適応のある外用薬,ドレッシング材のすべてと, 通常行われている外科的治療,物理療法を対象とした が,油脂性基剤の抗生物質(抗菌薬)含有軟膏などは びらん・潰瘍の適応を持っているものの長期使用によ る耐性菌の出現を危惧して慢性期の深い褥瘡の治療に は用いない方がよい.しかしながら,急性期や慢性期 の浅い褥瘡に対して油脂性基剤の創面保護作用を期待 して用いるのであればその限りでない.また,開放性 湿潤療法などをはじめとするいわゆるラップ療法は保 険適応となっていないが,医師の使用者責任として在 宅などでは広く普及している現状を鑑み,今回の診療 ガイドラインに含めた.

10)Clinical Question(CQ)のまとめ

表 2 に CQ,および,それぞれの CQ に対する推奨度 と推奨文を付す. 【褥瘡かどうか】 CQ1:I 度の褥瘡と反応性充血とはどのように見分け るのか? 推奨文:ガラス板圧診法,もしくは指押し法を用い て見分けることを,選択肢の 1 つとして推奨する. 推奨度:C1 解説: ・I 度の褥瘡と反応性充血とを見分けるのにガラス 板圧診法と指押し法のどちらが優れているかを比較し た症例対照研究1) があり,エビデンスレベル IVb であ る. ・日常診療においては I 度の褥瘡と反応性充血とを 見分けるのにガラス板圧診法もしくは指押し法が用い られている.この両者のどちらが優れているかに関し て,評価者間信頼度(interrater reliability),一致度 (Cohen’s Kappa),感度,特異度,陽性的中率,陰性的 中率を用いて評価した症例対照研究がある1) .感度で わずかにガラス板圧診法が勝っていたものの,2 つの 方法に明らかに有意な差はみられず,どちらの方法も 有用であると考えられる. ・この他,レーザードプラーを用いて血流を測定す ることにより見分ける試み2)3) ,皮膚温より鑑別する試 み4) ,スペクトロスコピーを用いて皮膚色より鑑別す る試み5) ,皮膚水分量を測定する試み6) などが行われて いるが,I 度の褥瘡と反応性充血とを有意に区別する までには至っていない. 文 献

1)Vanderwee K, Grypdonck MH, De Bacquer D, Defloor T: The reliability of two observation methods of non-blanchable erythema, Grade 1 pressure ulcer, Appl

Nurs Res, 2006; 19: 156―162.(エビデンスレベル IVb) 2)Nixon J, Cranny G, Bond S: Pathology, diagnosis, and

classification of pressure ulcers: comparing clinical and imaging techniques, Wound Repair Regen, 2005; 13: 365― 372.

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表 2 Clinical Question のまとめ Clinical Question 推奨度 推奨文 【褥瘡かどうか】 CQ1:Ⅰ度の褥瘡と反応性充血とはどのよう に見分けるのか? C1 ガラス板圧診法,もしくは指押し法を用いて見分けることを,選択肢の 1 つとして推奨する. CQ 2:褥瘡と鑑別を要する疾患にはどのよう なものがあるのか? C1 反応性充血,そのほか糖尿病などによる末梢動脈疾患,便や尿の刺激による皮膚炎, 皮膚カンジダ症,接触皮膚炎,電気メスによる熱傷,消毒薬による化学熱傷などを, 鑑別疾患に加えることを選択肢の 1 つとして推奨する. 【予防,ケア,危険因子の評価】 CQ3:危険因子に対してはどのようなアセス

メントスケールがあるのか? B 危険因子のアセスメントスケールとしては Braden Scale,K 式スケール,OH スケール,在宅版 K 式スケール,厚生労働省によって示されている褥瘡危険因子評 価表などがあり,これらを適宜利用することを推奨する. CQ4:褥瘡を予防するにはどのようなスキン ケアを行えばよいのか? B 皮膚の保護および褥瘡予防のために保湿クリームなどを用いることを推奨する.ま た,骨突出部に褥瘡予防を目的にポリウレタンフイルムなどを貼ることを推奨する. CQ5: 栄 養 補 給 は 褥 瘡 の 予 防 と ケ ア に 有 用 か? および B,予防 A ケア A および B 褥瘡の予防とケアには栄養(熱量,蛋白質)補給を行うことを強く推奨する.(A) また,アミノ酸,ビタミン,微量元素の補給を行うことを推奨する.(B) CQ6:体位変換,体圧分散機器は褥瘡の予防 とケアに有用か? 予防 A,ケア A 褥瘡の予防には,体圧分散マットレスを使用し,定期的に体位変換することを強く推奨する. ケアにおいても,体圧分散マットレスを使用し,定期的に体位変換することを強く 推奨する. CQ7:褥瘡患者は入浴してもよいのか? B 褥瘡を有する患者に対して入浴することを推奨する. CQ8:褥瘡を持つ脊髄損傷者の車椅子にはど のような注意をはらえばよいのか? C1 褥瘡を有する脊髄損傷者に対して,車椅子のシーティングを検討し,体圧のチェックを行うことを,選択肢の 1 つとして推奨する. CQ9:栄養状態を改善することで褥瘡の治癒 は促進するか? A 創傷治癒を促進するため,栄養状態が悪く褥瘡のリスクが高い患者もしくは褥瘡を 有する患者は早期に NST あるいは栄養指導の専門家にコンサルトすることを強く 推奨する. 【急性期の褥瘡】 CQ10:急性期の褥瘡には減圧以外にどのよ うな局所処置を行えばよいのか? B および C1 急性期にドレッシング材を使用するのであれば,創面が観察できるポリウレタン フィルム,ハイドロコロイドなどの使用を推奨する.外用薬を使用する場合には, 創面保護の目的で白色ワセリン,酸化亜鉛,ジメチルプロピルアズレンなどの油脂 性基剤軟膏を,また,感染予防の目的でスルファジアジン銀の使用を推奨する.(B) 急性期の短期間使用であれば,抗生物質(抗菌薬)含有軟膏などの使用も選択肢の 1 つとして推奨する.(C1) CQ11:急性期褥瘡の痛みに対してはどのよ うに対処すればよいのか? C1 褥瘡の痛み,特に処置時の痛みに対し,消炎鎮痛薬,向精神薬などを選択肢の 1 つとして推奨する.また,体圧分散寝具,ドレッシング材の使用も選択肢の 1 つ として推奨する. CQ12:DTI を疑った時はどのような検査を 行えばよいのか? C1 DTI の診断として画像検査(MRI,超音波検査),血液生化学的検査を選択肢の 1つとして推奨する. CQ13:DTI を疑った時はどのように対処す ればよいのか? C1 局所の免荷を行いながら,全身状態と病変の経過を慎重に観察することを選択肢の 1 つとして推奨する.また,局所処置については,患部が観察できるようポリウレ タンフィルム,半透明のハイドロコロイドドレッシングなどを用いて創面を被覆す ることを選択肢の 1 つとして推奨する. 【浅い褥瘡】 CQ14:浅い褥瘡のケアにポリウレタンフィ ルムは有用か? C1 感染がなく上皮形成過程にある浅い褥瘡に対しては,ポリウレタンフィルムの使用を選択肢の 1 つとして推奨する. CQ15:浅い褥瘡には減圧以外にどのような 局所処置を行えばよいのか? C1 真皮レベルまでの浅い褥瘡(びらん,浅い潰瘍)の治癒には,創の保護と適度な湿 潤環境の維持が必要である.そのため,ドレッシング材が治療の中心となることが 多く,ハイドロコロイド,ハイドロジェル,ポリウレタンフォーム,キチンを選択 肢の 1 つとして推奨する. 外用薬を使用するのであれば,創面保護の目的で白色ワセリン,酸化亜鉛,ジメチ ルプロピルアズレンなどの油脂性基剤軟膏,短期間の使用であれば抗生物質(抗菌 薬)含有軟膏などの使用を選択肢の 1 つとして推奨する.また,ブクラデシンナ トリウム,プロスタグランジン E1 などの肉芽形成促進薬の使用も選択肢の 1 つと して推奨する. 【深い褥瘡】 前 半 の 治 療:TIME コ ン セ プ ト に よ り wound bed preparation を目指す CQ16-27 T:壊死組織の除去 CQ16:壊死組織の除去に外科的デブリード マンは有用か? B 全身状態が許す時に出血傾向を確認した上で壊死組織の外科的デブリードマンを行うよう推奨する. CQ17:外科的デブリードマン以外ではどの ような局所処置を行えばよいのか? B,C1 および C2 深い褥瘡の壊死組織を除去するには,カデキソマー・ヨウ素を使用することを推奨 する.(B) デキストラノマー,ブロメラインを使用することを選択肢の 1 つとして推奨する. 乾燥した壊死組織に対しては,スルファジアジン銀を使用することを選択肢の 1 つとして推奨する.また,ドレッシング材ではハイドロジェルを使用することを選 択肢の 1 つとして推奨する.(C1) フラジオマイシン硫酸塩・結晶トリプシンは十分な根拠がないので(現時点では) 推奨できない.また,wet-to-dry dressing も十分な根拠がないので(現時点では) 推奨できない.(C2)

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Clinical Question 推奨度 推奨文 I:感染の制御 ・ 除去 CQ18:褥瘡では感染をどのように診断する のか? B 潰瘍面およびその周囲の皮膚の局所症状(理学所見),すなわち炎症の 4 徴(発赤, 腫脹,熱感,疼痛)と発熱などの全身症状,創面からの細菌学的検査,あるいは, 血液学的,血液生化学検査などを総合的に判断して,感染の有無を診断することを 推奨する. CQ19:どのような時に抗菌薬の全身投与を 行うのか? B 潰瘍面からの細菌培養のみならず,潰瘍周囲の皮膚の炎症所見や発熱,白血球増多, 炎症反応亢進がみられる時に抗菌薬の全身投与を行うことを推奨する. CQ20:感染を制御するにはどのような局所 処置を行えばよいのか? B,C1 および C2 褥瘡の感染を制御する目的でカデキソマー・ヨウ素,スルファジアジン銀,ポビド ンヨード・シュガーの使用を推奨する.(B) また,ポビドンヨードゲル,ヨードホルム,ヨウ素軟膏の使用を選択肢の 1 つと して推奨する.あるいは,ドレッシング材を使用するのであれば,銀含有ハイドロ ファイバー®の使用を選択肢の 1 つとして推奨する.(C1) しかし,抗生物質(抗菌薬)含有軟膏の使用は十分な根拠がないので(現時点では) 推奨できない.(C2) M:湿潤環境の保持(滲出液の制御 ・ 除去) CQ21:黒色期∼黄色期褥瘡で滲出液が過剰 な時の局所処置にはどのような外用薬を用いれ ばよいのか? B および C1 滲出液が過剰な時期にはカデキソマー・ヨウ素,デキストラノマー,ポビドンヨー ド・シュガーの使用を推奨する.(B) また,ヨウ素軟膏の使用を選択肢の 1 つとして推奨する.(C1) CQ22:黒色期∼黄色期褥瘡で滲出液が過剰 な時の局所処置にはどのようなドレッシング材 を用いればよいのか? B および C1 滲出液が過剰な時には,吸収性の高いアルギン酸塩,ポリウレタンフォームの使用 を推奨する.(B) キチン,ハイドロファイバー®(銀含有製材を含む),ハイドロポリマーの使用を 選択肢の 1 つとして推奨する.(C1) CQ23:黒色期∼黄色期褥瘡で滲出液が少な い時の局所処置にはどのような外用薬を用いれ ばよいのか? B および C1 滲出液が少ない時期にはスルファジアジン銀の使用を推奨する.(B) また,白色ワセリン,酸化亜鉛,ジメチルプロピルアズレンなどの油脂性軟膏の使 用を選択肢の 1 つとして推奨する.(C1) CQ24:黒色期∼黄色期褥瘡で滲出液が少な い時の局所処置にはどのようなドレッシング材 を用いればよいのか? C1 乾燥した壊死組織が付着し滲出液が少ない時期はハイドロジェルの使用を選択肢の 1 つとして推奨する. E:創辺縁の管理(ポケットの解消 ・ 除去) CQ25:ポケットがある時はどのような局所 治療を行えばよいのか? C1 ポケット内に滲出液の多い創面であれば,ポビドンヨード・シュガーの使用を選択 肢の 1 つとして推奨する. また,滲出液が少なければトラフェルミン,トレチノイントコフェリルの使用を選 択肢の 1 つとして推奨する. しかし,改善しなければ外科的治療あるいは物理療法を検討する. CQ26:ポケット切開はどのように行えばよ いのか? C1 出血を適切にコントロールしながらポケット切開することを,選択肢の 1 つとして推奨する.一部を切開するだけでも,ポケット蓋を全摘してもよい. CQ27:ポケットのある褥瘡の陰圧閉鎖療法 はどのように行えばよいのか? C1 陰圧閉鎖療法として VAC®システムを用いる方法,自家製の用具を用いる方法が あり,いずれも選択肢の 1 つとして推奨する. 後半の治療:moist wound healing を目指す 

CQ28-30 CQ28:赤色期∼白色期褥瘡の局所処置には どのような外用薬を用いればよいのか? B およびC1 滲出液が適正∼少ない創面にはトラフェルミン,プロスタグランジン E1 の使用を推奨する.滲出液が少ない創面にはトレチノイントコフェリルの使用を推奨する. 滲出液が過剰または浮腫が強い創面にはブクラデシンナトリウムの使用を推奨す る.(B) 滲出液が適正∼少ない創面には塩化リゾチーム,幼牛血液抽出物,白色ワセリン, 酸化亜鉛,ジメチルプロピルアズレンなどの使用を選択肢の 1 つとして推奨する. 滲出液が過剰または浮腫が強い創面にはアルミニウムクロロヒドロキシアラントイ ネート(アルクロキサ)の使用を選択肢の 1 つとして推奨する.(C1) CQ29:赤色期∼白色期褥瘡の局所処置には どのようなドレッシング材を用いればよいの か? C1 滲出液が適正∼少ない創面にはハイドロコロイド,ハイドロジェル,ハイドロポリ マー,ポリウレタンフォームの使用を選択肢の 1 つとして推奨する.滲出液の過 剰または浮腫が強い創面にはアルギン酸塩,キチンの使用を選択肢の 1 つとして 推奨する. CQ30:赤色期褥瘡に陰圧閉鎖療法は有用か? C1 Ⅲ度以上の赤色期褥瘡に対して陰圧閉鎖療法を行うことを選択肢の 1 つとして推奨 する.なお,感染がある時には注意深い観察を要する. 【改善しているか】 CQ31:どのような方法で褥瘡の評価を行え ばよいのか?

B 褥瘡の評価を行うために DESIGN,あるいは,PUSH(Pressure Ulcer Scale for Healing),PSST(Pressure Sore Status Tool)を用いることを推奨する. 【他の治療法の選択】 CQ32:褥瘡に対する外科的治療はどのよう な時に行えばよいのか? C1 Ⅲ度以上の褥瘡では外科的治療を選択肢の 1 つとして推奨するが,全身状態,適応 を見極めてから行う.また,予め感染の制御や外科的,化学的デブリードマンなど を行っておく. CQ33:褥瘡にラップ療法は行ってもよいの か? C1 ラップ療法を選択肢の 1 つとして推奨する.ただし,食品用ラップなどの医療材 料として承認されていない材料の使用は使用者責任となるため,治療前に患者およ び家族の同意を得ておく. CQ34:外科的治療,ラップ療法以外では, どのような局所治療が行われているのか? C1 電気刺激療法,光線療法(紫外線療法,赤外線∼可視光線療法,低出力レーザー療法),水治療法,高圧酸素療法などを選択肢の 1 つとして推奨する.

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skin blood perfusion in areas with non blanchable erythema: an explorative study, Int Wound J, 2006; 3: 215―223.

4)Sprigle S, Linden M, McKenna D, Davis K, Riordan B: Clinical skin temperature measurement to predict in-cipient pressure ulcers, Adv Skin Wound Care, 2001; 14: 133―137.

5)Sprigle S, Linden M, Riordan B: Analysis of localized erythema using clinical indicators and spectroscopy,

Ostomy Wound Manage, 2003; 49: 42―52.

6)Bates-Jensen BM, McCreath HE, Pongquan V, Apeles NC : Subepidermal moisture differentiates erythema and stage I pressure ulcers in nursing home residents,

Wound Repair Regen, 2008; 16: 189―197.

CQ2:褥瘡と鑑別を要する疾患にはどのようなもの があるのか? 推奨文:反応性充血,そのほか糖尿病などによる末 梢動脈疾患,便や尿の刺激による皮膚炎,皮膚カンジ ダ症,接触皮膚炎,電気メスによる熱傷,消毒薬によ る化学熱傷などを,鑑別疾患に加えることを選択肢の 1 つとして推奨する. 推奨度:C1 解説: ・I 度の褥瘡と反応性充血がどの程度見分けられる かを検討した症例対照研究1)2) はあるが,それ以外の疾 患に関してはすべてエキスパートオピニオンであ る3) .また, エビデンスレベル IVb および VI である. ・褥瘡と鑑別を要する疾患として様々なものが挙げ られている.最も問題になるのは反応性充血であるが, 一定の訓練を受けたものが診断する場合は,評価者間 信頼度,一致度は高かった1)2) .次に鑑別を要する疾患 として挙げられるのが糖尿病などによる末梢動脈疾患 (peripheral arterial diseases;PAD)であり,従来は主 に 閉 塞 性 動 脈 硬 化 症(arteriosclerosis obliterans; ASO)と呼ばれていた.その他には,便や尿の刺激に よる皮膚炎,おむつ皮膚炎,皮膚カンジダ症,接触皮 膚炎,帯状疱疹,水疱症などが考えられる. ・また,術後発生のものとして電気メスによる熱傷, 消毒薬による化学熱傷などが挙げられる3) .電気メス による熱傷は近年ほとんどみられないが,漏電によっ て生じる不規則な形の境界明瞭な紅斑であり,術直後 より認められ臀裂部の側方や上方などに生じる.消毒 薬による化学熱傷はポピドンヨード液による一次刺激 皮膚炎であり,境界明瞭な不整形の紅斑が消毒範囲と 隣接した臀部も含めた接地面に生じるもので,症例に よっては 3 日後に気付かれることもあるが,詳細に観 察すれば術直後より認めうる.一方,褥瘡は術直後あ るいは遅発性に生じる境界不明瞭な紅斑である.皮膚 病変の部位,大きさ,あるいは,形態などを参考にす るが,これらから鑑別することは困難であり術直後の 創部観察が診断の手助けとなる3) . 文 献

1)Stausberg J, Lehmann N, Kröger K, Maier I, Niebel W: Reliability and validity of pressure ulcer diagnosis and grading: an image-based survey, Int J Nurs Stud, 2007; 44: 1316―1323.(エビデンスレベル IVb)

2)Nixon J, Thorpe H, Barrow H, et al: Reliability of pres-sure ulcer classification and diagnosis, J Adv Nurs, 2005; 50: 613―623.(エビデンスレベル IVb) 3)立 花 隆 夫:褥 瘡,Visual Dermatology, 2007; 6: 1158― 1160.(エビデンスレベル VI) 【予防,ケア,危険因子の評価】 CQ3:危険因子に対してはどのようなアセスメント スケールがあるのか? 推奨文:危険因子のアセスメントスケールとしては Braden Scale,K 式スケール,OH スケール,在宅版 K 式スケール,厚生労働省によって示されている褥瘡危 険因子評価表などがあり,これらを適宜利用すること を推奨する. 推奨度:B 解説: ・複数のアセスメントスケールの予測妥当性を比較 検討したシステマティックレビュー1) があり,エビデン スレベル I であるが日本人の褥瘡に対しての検討では ないので,推奨度 B とした.また,やせ,病的骨突出 などを特徴とする日本人の褥瘡に対しての検討とし て,K 式スケールに関しては前向きコホート研究2) が存 在する.同様に,OH スケールに関しては症例対照研 究3) ,在宅版 K 式スケールに関しては前向きコホート 研究4) がみられる.また,厚生労働省によって示されて いる褥瘡危険因子評価表については後ろ向きコホート 研究5) がある. ・危 険 因 子 の ア セ ス メ ン ト ス ケ ー ル と し て は Braden Scale,K 式スケール,OH スケール,在宅版 K

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式スケール,厚生労働省によって示されている褥瘡危 険因子評価表などが知られている.複数のアセスメン トスケールの予測妥当性を比較検討したシステマ ティックレビューでは,Braden Scale は Norton Scale, Waterlow Scale,Nurses’clinical judgement よりも妥 当性,感度,特異度を総合してみると優れていたとし ている1)

.ただし,やせや病的骨突出を特徴とするよう な日本人に対しての検討は行われていない.また,対 象が黄色人種の報告としては modified Braden Scale, Braden Scale,Norton Scale を比較したところ,予測妥 当性に関しては modified Braden Scale が最も優れて

いたとするものがある6) .こうした褥瘡発生予測のた めのアセスメントスケールは褥瘡対策の強化と効率化 に貢献するが,褥瘡の発症率を有意に減少させたとい うランダム化比較試験までは存在しない7) . ・本邦における検討では,寝たきり患者に対しては K 式スケールを用いた前向きコホート研究2) ,OH ス ケールを用いた症例対照研究3) ,および,厚生労働省に よって示されている褥瘡危険因子評価表を利用した後 ろ向きコホート研究5) があり,各々有用性が示されてい る.また,在宅高齢者に対しては在宅版 K 式スケール を用いた前向きコホート研究4) があり,感度,特異度な どにおいて有用としている. 文 献

1)Pancorbo-Hidalgo PL, Garcia-Fernandez FP, Lopez-Medina IM, Alvarez-Nieto C: Risk assessment scales for pressure ulcer prevention: a systematic review, J

Adv Nurs, 2006; 54: 94―110.(エビデンスレベル I) 2)大桑麻由美,真田弘美,須釜淳子ほか:K 式スケール (金沢大学式褥瘡発生予測スケール)の信頼性と妥当性 の検討 高齢者を対象にして,褥瘡会誌,2001; 3: 7―13. (エビデンスレベル IVa) 3)藤岡正樹,浜田裕一:大浦式褥瘡発生危険因子判定法 活用の有効性の検討 寝たきり患者 424 症例の褥瘡発 生状況から,褥瘡会誌,2004; 6: 68―74.(エビデンスレベ ル IVb) 4)村山志津子,北山幸枝,大桑麻由美ほか:在宅版褥瘡 発生リスクアセスメントスケールの開発,褥瘡会誌, 2007; 9: 28―37.(エビデンスレベル IVa) 5)貝川恵子,森口隆彦,岡 博昭,稲川喜一:寝たきり患 者(日常生活自立度ランク C 患者)における褥瘡発生危 険因子の検討,褥瘡会誌,2006; 8: 54―57.(エビデンスレ ベル IVa)

6)Kwong E, Pang S, Wong T, Ho J, Shao-ling X, Li-jun T: Predicting pressure ulcer risk with the modified Braden, Braden, and Norton scales in acute care hospi-tals in Mainland China, Appl Nurs Res, 2005; 18: 122―128. 7)Moore ZE, Cowman S: Risk assessment tools for the prevention of pressure ulcers, Cochrane Database Syst

Rev, 2008; 16: CD006471. CQ4:褥瘡を予防するにはどのようなスキンケアを 行えばよいのか? 推奨文:皮膚の保護および褥瘡予防のために保湿ク リームなどを用いることを推奨する.また,骨突出部 に褥瘡予防を目的にポリウレタンフイルムなどを貼る ことを推奨する. 推奨度:B 解説: ・皮膚の洗浄保護と褥瘡の予防に関してはスクワレ ン含有のクリームや hyperoxygenated fatty acid

com-pound などを用いたランダム化比較試験が 4 編1)∼4) あ り,エビデンスレベル II である.また,ポリウレタン フイルムによる予防に関してもランダム化比較試験が 3 編5)∼7) あり,エビデンスレベル II である. ・褥瘡の予防において,皮膚の洗浄や保湿クリーム などによるスキンケアが有効であるかどうかに関して は ス ク ワ レ ン 含 有 の ク リ ー ム や hyperoxygenated fatty acid compound などを用いたランダム化比較試

験が 4 編あり,そのうち 3 編1)∼3) で有意に予防効果が あったとしている.また,このほかにも皮膚洗浄に加 えて皮膚保護剤を用いることで褥瘡の治癒期間が短縮 し治癒率が改善したことが複数の報告で示されてい る8)∼10) .しかしながら,用いられた方法や,使用された クリームなどは報告によって異なる.また,本邦で使 用されていないものが多く,具体的にどの成分が最も 有効であるかどうかについては不明である. ・ポリウレタンフイルムによる予防に関してはラン ダム化比較試験が 3 編あり,いずれもその有用性が示 されている5)∼7) .高齢者の骨突出部にポリウレタンフ イルムを用いた報告では褥瘡発生の有意な低下がみら れ5) ,持続する発赤の発生率が有意に低下した6) .ま た,術中発生の褥瘡を予防する目的で,ポリウレタン フイルムを仙骨部に用いることにより褥瘡の発生率が 有意に低下した7) .同様に,術中発生を予防する目的で 踵部にハイドロポリマーを貼付した報告でも,褥瘡発

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生率の有意な低下を得ている11) . ・ポリウレタンフィルムは,ポリウレタン製フィル ムに耐水性でアレルギー誘発性の低いアクリル系ある いはビニールエーテル系の粘着剤をつけたものであ り,創の密封・閉鎖が可能となっている.透明あるい は半透明のため,外部から観察が可能である.また, 耐水性のため,水や細菌の侵入を防ぐ一方で,ガスや 水蒸気は透過するという半透過性の性質を有してお り,創の湿潤環境を保つだけでなく,体内からの発汗 や不感蒸泄を妨げない.そのため,創周囲の皮膚は浸 軟せず,皮膚のバリア機能を正常に保つことができる. しかしながら,感染創では湿潤環境下で細菌が急激に 増殖する可能性が指摘されているため,用いない方が よい. 文 献

1)Cooper P, Gray D : Comparison of two skin care re-gimes for incontinence, Br J Nurs, 2001; 10: S6, S8 and S10 passim.(エビデンスレベル II)

2)Torra i Bou JE, Segovia Gómez T, Verdú Soriano J, et al : The effectiveness of a hyperoxygenated fatty acid compound in preventing pressure ulcers, J Wound

Care, 2005; 14: 117―121.(エビデンスレベル II) 3)Green MF, Exton-Smith AN, Helps EP, et al:

Prophy-laxis of pressure sores using a new lotion, Modern

Geri-atr, 1974; 4: 376―382.(エビデンスレベル II)

4)van der Cammen TJ, O’Callaghan U, Whitefield M: Pre-vention of pressure sores. A comparison of new and old pressure sore treatments, Br J Clin Pract, 1987; 41: 1009―1011.(エビデンスレベル II)

5)伊藤由実子,安田 操,米 順子,高次寛治,久保隆徳, 佐藤健二:仙骨部位へのポリウレタンフィルムドレッ シング貼用の褥瘡予防効果,褥瘡会誌,2007; 9: 38―42. (エビデンスレベル II)

6)Nakagami G, Sanada H, Konya C, Kitagawa A, Tadaka E, Matsuyama Y: Evaluation of a new pressure ulcer preventive dressing containing ceramide 2 with low frictional outer layer, J Adv Nurs, 2007; 59: 520―529.(エ ビデンスレベル II)

7)Imanishi K, Morita K, Matsuoka M, et al: Prevention of postoperative pressure ulcers by a polyurethane film patch, J Dermatol, 2006; 33: 236―237.(エビデンスレベル II)

8)Thompson P, Langemo D, Anderson J, Hanson D, Hunter S: Skin care protocols for pressure ulcers and incontinence in long-term care : a quasi-experimental study, Adv Skin Wound Care, 2005; 18: 422―429. 9)Dealey C : Pressure sores and incontinence : a study

evaluating the use of topical agents in skin care, J

Wound Care, 1995; 4: 103―105.

10)Clever K, Smith G, Bowser C, Monroe K: Evaluating the efficacy of a uniquely delivered skin protectant and its effect on the formation of sacral!buttock pressure ulcers, Ostomy Wound Manage, 2002; 48: 60―67. 11)Bots TC, Apotheker BF: The prevention of heel

pres-sure ulcers using a hydropolymer dressing in surgical patients, J Wound Care, 2004; 13: 375―378.

CQ5:栄養補給は褥瘡の予防とケアに有用か? 推奨文:褥瘡の予防とケアには栄養(熱量,蛋白質) 補給を行うことを強く推奨する.(A) また,アミノ酸,ビタミン,微量元素の補給を行う ことを推奨する.(B) 推奨度:予防 A および B,ケア A および B 解説: ・褥瘡のリスクのある患者および褥瘡患者への栄養 補給(熱量,蛋白質)に関するメタアナリシスが 2 編1)2) あり,そのうちの 1 編1) で予防および治療において栄養 補給の有用性が認められており,エビデンスレベル I である. ・アミノ酸,ビタミン,微量元素を含む栄養補給に 関するメタアナリシスが 2 編1)2) あり, 1 編1) では予防, ケアへの有用性を認めているがもう 1 編2) では認めて いない.また,アミノ酸,ビタミン,微量元素の補充 によりケアへの有効性を示したランダム化比較試験が 2 編3)4) あり,エビデンスレベル II である. ・低栄養は褥瘡発症の重要なリスクファクターであ り,必要な栄養(熱量,蛋白質)の供給は,リスク患 者において発症を予防し,発症した患者においては治 癒を促進し褥瘡の改善に有効であることが 1 つのメタ アナリシス1) で示され,日米欧いずれのガイドラインで も推奨されている5)∼7) .特に,創の改善には蛋白質の補 充が重要であることが示されている. ・褥瘡患者の安静時熱量消費量はしばしば亢進して おり,これに見合う熱量と蛋白量を補う必要がある. 必要熱量は,体重×25(kcal)または基礎エネルギー消 費量(Harris-Benedict の式から計算される)×活動係

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数×ストレス係数(kcal)から計算され,褥瘡治療の場 合は活動係数 1.2∼1.3,ストレス係数 1.2∼1.3 が適切と 考えられている.また,蛋白量は 1.1∼1.5 g!kg!day を目標とする.通常食の摂取が不十分,不可能な患者 では経腸栄養剤(L-6PMⓇ ,エレンタールⓇ ,エンシュ アリキッドⓇ ,ヘパンⓇ ED,メイバランスⓇ ,リーナレ ンⓇ ,など)などの処方可能な栄養補給を検討する. Harris-Benedict の式 男 性:66.5+(13.8×体 重)+(5.0×身 長)−(6.8×年 齢) 女 性:665.1+(9.6×体 重)+(1.8×身 長)−(4.7×年 齢) ・栄養の評価は身体計測,臨床所見,血液生化学的 検査値などから総合的に判断する. ・体重は栄養状態を反映する指標で,身体計測から BMI(Body Mass Index)を算出し,肥満や痩せを診断 する. BMI=体重 kg!(身長 m)2 標準体重 BMI=22,痩せ <18.5 肥満>25 さらに患者の通常体重(本人,家族などへの問診に より求める)から 85∼95% の場合は軽度の栄養障害, 75∼84% で中等度障害,74% 以下で高度障害と判断す る.体重変化率では 1 週間で 2% 以上,1 カ月で 5% 以 上,3 カ月で 7.5% 以上,6 カ月で 10% 以上の低下があ る場合は栄養障害の可能性がある.また,身体の筋肉 量,体脂肪量を推測するのに以下の指標を参考にする. 上腕三頭筋皮下脂肪厚(TSF):利き腕でない腕の肩 峰と尺骨頭の中間点でキャリパーを用いて測定する. 体脂肪量を推測できる. 上腕周囲(AC):筋肉量を推測できる. 上 腕 筋 周 囲(AMC:AC(cm)−π×TSF(mm)! 10):全身の筋肉量,徐脂肪体重の指標となる.拘縮が 強く身体計測が難しい患者においても測定可能である が,測定誤差があるので継続的に測定して変化をみる ことが大事である. ・臨 床 所 見 に は 主 観 的 包 括 的 評 価(Subjective Global Assessment:SGA)を用いる.SGA は病歴の問 診(体重変化,食物摂取変化,消化器症状,身体機能 の程度,疾患と栄養必要量)と身体検査(脂肪量,筋 肉量,浮腫の有無)の二本柱で構成される評価法で, 主観的な栄養状態を評価するものではあるが,点数化 されていないなど初心者には扱いづらい.したがって, 高度の栄養不良と判断した場合は NST あるいは栄養 指導の専門家に相談する. ・血液生化学的検査では主に肝臓の合成能で栄養状 態が評価され,半減期の長いものは長期的な,短いも のは急性の栄養状態を反映する.血清アルブミンは半 減期 21 日と長く,3.5 g!dl 以下は栄養不良のリスクと されるが,高齢者ではそれ以下のことも多く 3.0 g!dl を目安とする場合もある.慢性栄養不良では筋肉量や 皮下脂肪が減少しても低下しにくい.血清トランスサ イレチン(プレアルブミン)は半減期 2 日と短く,急 性栄養不良において著明に低下するので現在の栄養状 態の指標となる.17 mg!dl 以下は栄養不良の可能性が ある.その他,血清トランスフェリン 200 mg!dl 以下, 血清コレステロール 150 mg!dl 以下,総リンパ球数 1,200!mm3 以下などが栄養不良の指標となりうる8)9) . ・特定の栄養素の投与では,症例数は少ないがアル ギニン,亜鉛,ビタミン C などの創傷治癒過程に関わ る栄養素の投与で褥瘡の改善に有意差がみられたとす るランダム化比較試験3)4) があり,欠乏状態に陥らない ように注意する10) .アルギニンは条件付き必須アミノ 酸で,ヒドロキシプロリンの合成によるコラーゲンの 合成効果があり,創傷治癒に重要なアミノ酸である. ビタミン C はプロコラーゲンがコラーゲンになる過 程で必須のビタミンで,創傷治癒に重要である.ビタ ミン B1 はコラーゲンの架橋形成に関連する補酵素 で,体内での蓄積量が少なく,欠乏しやすいビタミン である.亜鉛は多くの金属酵素の活性中心に位置する 重要な微量元素で,高齢者ほどその摂取量,体内含有 量とも少なくなり,その欠乏は皮膚粘膜症状とともに 創傷治癒の遷延を来す.また,国内で使われているこ のような栄養補助食品にはアイソカル・アルジネー ドⓇ ,アバンドⓇ ,プロテインマックスⓇ ,ブイ・クレ スⓇ ,テゾンⓇ などがある.嚥下の状態に応じて液状, ゼリー状などを選択する. 文 献

1)Stratton RJ, Ek AC, Engfer M, Moore Z, et al: Enteral nutritional support in prevention and treatment of pressure ulcers : a systematic review and meta-analysis, Ageing Res Rev, 2005; 4: 422―450.(エ ビ デ ン ス レベル I)

2)Langer G, Knerr A, Kuss O, Behrens J, Schlömer GJ: Nutritional interventions for preventing and treating pressure ulcers, Cochrane Database Syst Rev, 2008; 3, CD 003216.(エビデンスレベル I)

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3)Cereda E, Gini A, Pedrolli C, Vanotti A : Disease-specific, versus standard nutritional support for the treatment of pressure ulcers in institutionalized older adults: a randomized controlled trial, J Am Geriatr Soc, 2009; 57: 1395―1402.(エビデンスレベル II)

4)Desneves KJ, Todorovic BE, Cassar A, Crowe TC : Treatment with supplementary arginine, vitamin C and zinc in patients with pressure ulcers: a random-ized controlled trial, Clin Nutr, 2005; 24: 979―987.(エ ビ デンスレベル II)

5)褥瘡予防・管理ガイドライン,日本褥瘡学会編,照林 社,東京,2008.

6)National Pressure Ulcer Advisory Panel: International Pressure Ulcer Guidelines, http :!!www.npuap.org! resources.htm

7)European Pressure Ulcer Advisory Panel: Pressure Ul-cer Treatment Guidelines. http :!!www.epuap.org! gltreatment.html 8)徳永佳子,足立香代子:栄養アセスメントの進め方,褥 瘡治療・ケアトータルガイド,宮地良樹,溝上祐子編, 照林社,東京,2009, 205―220. 9)コメディカルのための静脈経腸栄養ハンドブック,日 本静脈経腸栄養学会編集,南江堂,東京,2008, 106―112. 10)静脈経腸栄養ガイドライン第 2 版,日本静脈経腸栄養 学会編集,南江堂,東京,2006, 54―55. CQ6:体位変換,体圧分散機器は褥瘡の予防とケアに 有用か? 推奨文:褥瘡の予防には,体圧分散マットレスを使 用し,定期的に体位変換することを強く推奨する. ケアにおいても,体圧分散マットレスを使用し,定 期的に体位変換することを強く推奨する. 推奨度:予防 A,ケア A 解説: ・複数のシステマティックレビュー1)∼4) により,体圧 分散マットレスを用いかつ体位変換を行うことは標準 的なマットレスあるいは体位変換を行わない場合と比 較して,褥瘡の発生率を低下させ治癒を促進するとさ れており,共にエビデンスレベル I である. ・体圧分散マットレスはその仕様上,ベッド枠と一 体で用いるもの(特殊ベッド),標準的マットレスと交 換して用いるもの(交換マットレス),標準的マットレ スの上に重ねて用いるもの(上敷マットレス)などに 大別される.また,機能面から大まかに動的な空気圧 切替により同一部分に高い圧力が長時間かからないよ うにしたタイプ,すなわち,低圧保持エアマットレス と静的な圧分散を行うタイプに分けられる.静的体圧 分散マットレスにはウレタンフォーム,ゲル,ゴム, 空気圧式などがある. ・体圧分散マットレスは日本人に適した OH スケー ルなどのアセスメントツールで選択できるようになっ ているので,入院患者の場合は入院時にアセスメント を行っておく.大まかには,自力で寝返りが出来ない (生活自立度 C2)場合は圧分散を優先して低圧保持エ アマットレスなどを選択,また,自力で寝返り出来る (生活自立度 C1)の場合は体位変換を優先して沈み込 みの少ない低圧保持エアマットレスか静的体圧分散 マットレスを選ぶ.製品同士の比較は非常に数多くの 試験が行われているが,どの製品が常に良いという優 劣について結論は得られていない1)∼4) .したがって,患 者の自立度や病態,環境や社会生活も考慮に入れた上 で体圧分散マットレスを選択することが大切である. また,既に褥瘡のある患者に対しては原則として,褥 瘡部を圧迫しない体位が可能な患者には静的体圧分散 マットレスを,褥瘡部を圧迫しない体位が不可能な患 者には圧切替型体圧分散マットレスを選択する4) . ・一般的には,接触圧が 40 mmHg 以下であれば褥 瘡は発生しにくいとされているので,体圧分散マット レスを用いた時の仙骨部の接触圧を簡易体圧測定器で 確認する.あるいは,簡易体圧測定器がなければ,低 圧保持エアマットレスの接触圧を底付き現象で確認す る5) .なお,底付き現象とは,手掌を上にして指を低圧 保持エアマットレスの下に差し込み,第 2 指か 3 指を 曲げてみて適切なエアセル圧を評価する方法である. また,適切圧とは,指を約 2.5 cm 曲げると骨突起部に 軽く触れる程度とされている. ・圧切替型体圧分散マットレスを用いても一定時間 毎の体位変換は行うべきである1)∼5) .圧切替型を用い て体位変換を行わない場合は静的型を用いて体位変換 を行う場合より発生率が高くなるというランダム化比 較試験5) があるが,次に述べるように機種の特性に依存 するように思われる. ・体位変換の時間については,身体状況が許せば 2 時間以内の体位変換が推奨されている6) .しかしなが ら,静的体圧分散マットレスの素材や厚さによる機能 格差,のみならず低圧保持エアマットレスの圧切替機 能にも質的格差があること,さらには,自動体位変換 機能(ローリング機能,マルチゾーン機能など)のつ

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いた低圧保持エアマットレスが新たに登場するなど, 体圧分散マットレスと言っても一概に論じることはで きないため,その体位変換の時間に関する明確な答え は現在のところないと言わざるを得ないのが現状であ る. ・既に褥瘡がある患者においては,その部分が減圧 できる体位を選択する.体位変換時あるいは頭側挙上 時の背抜きや,頭側挙上時の 30 度ルールなどは,摩 擦・ずれを解消するのに有用な手段である.また,ハ ンモック現象(シーツを張りすぎてテント状になるこ とにより体圧分散マットレスの効果がなくなること) などのマットレスカバーやシーツの状況,あるいは, 低圧保持エアマットレスの設定数値(たとえば,患者 と異なる体重設定)やチューブの圧迫,連結部のはず れなどに注意を払うことも大切である8) . 文 献

1)McInnes E, Bell-Syer SE, Dumville JC, Legood R, Cul-lum N: Support surfaces for pressure ulcer prevention (review),Cochrane Database Syst Rev. 2008: CD001735. (エビデンスレベル I)

2)Cullum N, McInnes E, Bell-Syer SE, Legood R: Support surfaces for pressure ulcer prevention( review ),

Co-chrane Database Syst Rev. 2004: CD001735.(エ ビ デ ン ス レベル I)

3)Whitney J, Phillips L, Aslam R, et al: Guidelines for the treatment of pressure ulcers, Wound Repair Regen, 2006; 14: 663―679.(エビデンスレベル I)

4)Reddy M, Gill SS, Rochon PA: Preventing pressure ul-cers: a systematic review, JAMA, 2006; 296: 974―984. (エビデンスレベル I)

5)Defloor T, De Bacquer D, Grypdonck MH: The effect of various combinations of turning and pressure reducing devices on the incidence of pressure ulcers, Int J Nurs

Stud, 2005; 42: 37―46.

6)Vanderwee K, Grypdonck MH, Defloor T : Effective-ness of an alternating pressure air mattress for the prevention of pressure ulcers, Age Ageing, 2005 ; 34 : 261―267.

7)European Pressure Ulcer Advisory Panel: Pressure Ul-cer Treatment Guidelines. http :!!www.epuap.org! gltreatment.html 8)西澤知江,酒井 梢,須釜淳子:ベッドサイドで何を観 る,実践に基づく最新褥瘡看護技術,真田弘美,須釜淳 子編,照林社,東京,2007, 34―49. CQ7:褥瘡患者は入浴してもよいのか? 推奨文:褥瘡を有する患者に対して入浴することを 推奨する. 推奨度:B 解説: ・入浴に関しては,入浴前後の皮膚の血流量,細菌 量,pH を比較した前後研究が 1 編1) あり,エビデンス レベル IVb である.しかしながら,スキンケアには必 須であり,また,医療現場でも広く行われていること から推奨度 B とした. ・褥瘡を有する患者の入浴に関しては,教科書的に はよいという記述が散見され,褥瘡を有する高齢者に おける入浴の有効性を報告したものが 1 編ある1) .こ の報告では褥瘡を有する患者の入浴前後の皮膚の血流 量,細菌量,pH を比較しており,入浴によって皮膚血 流量が有意に増加し,細菌量が有意に減少したことが 示されている.また,褥瘡を有する脊髄損傷の患者が 入浴した場合,浴槽の細菌による汚染は褥瘡由来より も腸管由来のものの方が多く,褥瘡部分を覆っても覆 わなくても差はないとする報告2) があるが,それが褥瘡 にどのような影響を与えるかに関しては不明である. ・入浴の際,石鹸を用いて褥瘡周囲の皮膚を中心に 洗浄することは有用と思われる3) .また,脱脂力の弱い 中性もしくは酸性石鹸がよく用いられているが,タオ ルで擦らず皮膚表面で軽く泡立てる程度であれば,通 常のアルカリ石鹸であっても特に問題はない4) . ・入浴とは少し異なるが,踵部の褥瘡に対して足浴 がよく用いられており,その有用性を報告したもの5) や,渦状の水流を用いた水浴により褥瘡の大きさが有 意に減少したという報告6) がある. 文 献 1)真田弘美,須釜淳子,永川宅和ほか:褥瘡を有する高齢 者における入浴の有効性の検討,日本創傷・オスト ミー・失禁ケア研究会誌,1999; 3: 40―47.(エビデンス レベル IVb)

2)Biering-Sørensen F, Schröder AK, Wilhelmsen M, Lomberg B, Nielsen H, Høiby N: Bacterial contamina-tion of bath-water from spinal cord lesioned patients with pressure ulcers exercising in the water, Spinal

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Cord, 2000; 38: 100―105.

3)Konya C, Sanada H, Sugama J, Okuwa M, Kitagawa A: Does the use of a cleanser on skin surrounding pres-sure ulcers in older people promote healing?, J Wound

Care, 2005; 14: 169―171.

4)立花隆夫,宮地良樹:褥瘡と感染症,日本臨床,2007; 65(増刊号 3):495―499.

5)真田弘美,紺家千津子,北川敦子ほか:褥瘡保有者にお ける足浴の有効性の検討,褥瘡会誌,2002; 4: 358―363. 6)Burke DT, Ho CH, Saucier MA, Stewart G: Effects of

hydrotherapy on pressure ulcer healing, Am J Phys

Med Rehabil, 1998; 77: 394―398. CQ8:褥瘡を持つ脊髄損傷者の車椅子にはどのよう な注意をはらえばよいのか? 推奨文:褥瘡を有する脊髄損傷者に対して,車椅子 のシーティングを検討し,体圧のチェックを行うこと を,選択肢の 1 つとして推奨する. 推奨度:C1 解説: ・車いすのシーティングに関しては,車椅子上で姿 勢移動による除圧で組織酸素量が回復したという前後 研究が 1 編1) あり,エビデンスレベル IVb である.ま た,車椅子上の体圧チェックにより褥瘡が減少したと いう症例報告2) があり,エビデンスレベル V である. ・長時間車椅子上で同じ姿勢をとることは褥瘡の危 険因子と考えられるが,姿勢移動や体の挙上により, 約 2 分間除圧することができれば圧迫されていた組織 の酸素量が戻ることが報告されている1) .体の挙上以 外の体位変換としては 45 度以上の前傾姿勢が良く,こ の体位によって 70% 程度の除圧が可能である3) .この ように脊髄損傷者がリハビリ専門職を受診し体圧の チェックを受けることにより,褥瘡が減少したという 報告がある3) . 文 献

1)Coggrave MJ, Rose LS: A specialist seating assessment clinic : changing pressure relief practice, Spinal Cord, 2003; 41: 692―695.(エビデンスレベル IVb)

2)Dover H, Pickard W, Swain I, Grundy D: The effective-ness of a pressure clinic in preventing pressure sores,

Paraplegia, 1992; 30: 267―272.(エビデンスレベル V) 3)Henderson JL, Price SH, Brandstater ME, Mandac BR:

Efficacy of three measures to relieve pressure in seated persons with spinal cord injury, Arch Phys Med

Rehabil, 1994; 75: 535―539. CQ9:栄養状態を改善することで褥瘡の治癒は促進 するか? 推奨文:創傷治癒を促進するため,栄養状態が悪く 褥瘡のリスクが高い患者もしくは褥瘡を有する患者は 早期に NST あるいは栄養指導の専門家にコンサルト することを強く推奨する. 推奨度:A 解説: ・褥瘡患者に対する栄養投与に関してはシステマ ティックレビューが 2 編1)2) あり,エビデンスレベル I である.また,NST 導入の前後で術後の栄養状態およ び褥瘡の発生率を比較した前後研究が 3 編3)∼5) ある. ・褥瘡患者に対して栄養投与が褥瘡の予防と治療に 有用であるかどうかについては,蛋白質とエネルギー 補給を充分行うことが褥瘡の予防と治療に有効である ことがシステマティックレビューによって示されてい る1)2) . ・栄養状態の把握および栄養投与の計画に関しては NST あるいは栄養指導の専門家にコンサルトするこ とが必要である.実際,NST 導入に伴って消化器外科 手術の術後に生じた褥瘡発生が減少した(p=0.051)と する報告があり,これは術後の絶食期間の短縮や周術 期の血清アルブミンの上昇によるものと考えてい る3) .また,別の報告では NST 導入により褥瘡の発生 率が約 1!3 になったとしている4) .タイミングに関し て記された適切な文献は明らかでないものの,NST あるいは栄養指導の専門家の介入は周術期のみならず 慢性期においても有効と報告されている5) . ・栄養評価の指標として,血清アルブミン値(3.0∼ 3.5 g!dl が低栄養状態の一応の目安),体重減少(過去 2 週間の極度の減少,月 5%,3 カ月で 7.5%,あるいは, 6 カ月で 10% などが,低栄養状態の目安),喫食率(食 事摂取率:2 週間以上にわたり食事量がいつもの半分 以下などが,低栄養状態の目安)などが用いられてい る6) .

・主 観 的 包 括 的 評 価(Subjective Global Assess-ment:SGA)も NST あるいは栄養指導の専門家には 盛んに用いられている.SGA は病歴の問診(体重変化, 食物摂取変化,消化器症状,身体機能の程度,疾患と 栄養必要量)と身体検査(脂肪量,筋肉量,浮腫の有

表 1 創傷・熱傷ガイドライン委員会(下線は各代表委員を示す) 委 員 長:尹 浩信(熊本大学大学院生命科学研究部皮膚病態治療再建学教授) 副委員長:立花隆夫(大阪赤十字病院皮膚科部長) 創傷一般 井上雄二(熊本大学大学院生命科学研究部皮膚病態治療再建学准教授)長谷川稔(金沢大学大学院医学系研究科血管新生結合組織代謝学講師) 前川武雄(自治医科大学医学部皮膚科学助教) レパヴー・アンドレ(いちげ皮フ科クリニック) 褥 瘡 今福信一(福岡大学医学部皮膚科学教室准教授)入澤亮吉(東京医科大学皮膚科学講座助教)
図 1-a 褥瘡の診療アルゴリズム 図 1-b 深い慢性期褥瘡の診療アルゴリズム(立花隆夫,宮地良樹:褥瘡治癒のメカニズム 臨床栄養 103(4):353-356, 2003 を一部改変して引用) 多くなり感染へと移行しかけた状態を指す. 【バイオフィルム】異物表面や壊死組織などに生着 した細菌は,菌体表面に多糖体を産生することがある. それぞれの菌周囲の多糖体は次第に融合し,膜状の構 造物を形成し,菌はその中に包み込まれるようになる. これをバイオフィルムと呼ぶ.この中に存在する細菌 に対しては,一般の抗
表 2 Clinical Question のまとめ Clinical Question 推奨度 推奨文 【褥瘡かどうか】 CQ1:Ⅰ度の褥瘡と反応性充血とはどのよう に見分けるのか? C1 ガラス板圧診法,もしくは指押し法を用いて見分けることを,選択肢の 1 つとして推奨する. CQ  2:褥瘡と鑑別を要する疾患にはどのよう なものがあるのか? C1 反応性充血,そのほか糖尿病などによる末梢動脈疾患,便や尿の刺激による皮膚炎,皮膚カンジダ症,接触皮膚炎,電気メスによる熱傷,消毒薬による化学熱傷などを, 鑑

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