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MTX を使用している患者に発症するリンパ増殖性疾患は WHO 分類では 移植後リンパ増殖性疾患や HIV 感染に伴うリンパ増殖性疾患と類縁の Other iatrogenic immunodeficiency associated LPD に分類されている 関節リウマチの治療は 近年激変し 早期の

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Academic year: 2021

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学位論文の内容の要旨

論 文 提 出 者 氏 名 市川 理子

論 文 審 査 担 当 者 主 査 北川 昌伸

副 査 神奈木 真理、東田 修二

論 文 題 目

Methotrexate/iatrogenic lymphoproliferative disorders in rheumatoid arthritis: histology, Epstein-Barr virus, and clonality are important predictors of disease progression and regression

(論文内容の要旨) <要旨> 関節リウマチの患者はリンパ増殖性疾患を合併することが知られている。免疫抑制剤、特に Methotrexate(MTX)による免疫抑制と Epstein-Barr(EB)ウィルスの再活性化が大きな要因と考え られており、免疫抑制剤の中止のみでリンパ増殖性疾患が自然消退する例も報告されている。し かし、どのような症例が自然消退するのか、その予後、病理組織像など明らかになっていない。 そこで、われわれは、102 例の関節リウマチ患者に発症したリンパ増殖性疾患(RA-LPD)の病理組 織像、臨床像、予後を調査した。また EB ウィルス感染の有無、PCR 法によるimmunoglobulin heavy chain(IGH)の Clonality の有無、免疫抑制剤の使用状況を調べ、予後、自然消退の有無、再発 の有無を比較した。102 例の RA-LPD の組織像は Diffuse large B-cell type 53 例、Hodgkin lymphoma 9 例、Polymorphic B-cell LPD 20 例、Reactive lymphadenitis 11 例、Peripheral T-cell lymphoma 4 例、Composite lymphoma 2 例、Follicular lymphoma 3 例であり、EB ウィルスは 60% で陽性であった。MTX を使用していた 47 例では 28 例(59%)で MTX の中止のみで自然消退がみら れ、自然消退の頻度は EBV 陽性の症例、DLBCL 以外の組織型で有意に高かった。74 症例で PCR 法 により IGH の Clonality を検索し、31 例で Monoclonal band がみられた。化学療法を施行した DLBCL において、IGH の clonality がみられた症例では有意に Disease free survival が短かった。 RA-LPD では、年齢 70 歳以上、組織型が DLBCL である症例で有意に Over all survival が短かっ た。

組織像、EBV 感染の有無、IGH の Clonality の有無が RA-LPD において、予後予測に有用である と考えられた。 <緒言> 関節リウマチの患者では、通常と比較して 2 倍から 5.5 倍リンパ増殖性疾患を発症しやすいこ とが知られている。関節リウマチ自身による免疫賦活状態や、免疫抑制剤、特に MTX による免疫 抑制が原因と考えられている。関節リウマチ自身でもリンパ増殖性疾患発症のリスクがあるため、 MTX 単独でのリンパ増殖性疾患のリスクは有意差が明らかになっていないが、数々の報告で MTX の中止のみで病変の自然消退がみられることから、リンパ増殖性疾患発症への関与が考えられる。

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MTX を使用している患者に発症するリンパ増殖性疾患は WHO 分類では、移植後リンパ増殖性疾患 や HIV 感染に伴うリンパ増殖性疾患と類縁の Other iatrogenic immunodeficiency associated LPD に分類されている。 関節リウマチの治療は、近年激変し、早期の MTX 投与が第一選択となっており、今後 MTX 関連 のリンパ増殖性疾患が増加すると思われる。さらに抗 TNFα抗体などの生物学的製剤の併用も行 われ、それらの影響も予想される。免疫抑制剤中止後に自然消退する症例では EBV が陽性である ことが多いとの報告もあり、HIV 関連や移植後関連などの免疫不全関連リンパ増殖性疾患と類似 の疾患であると考えられる。 今回は、MTX-LPD においてどのような症例が自然消退するのか、また RA-LPD の予後、再発の予 想因子を明らかにするために、組織像、EB ウィルスの有無、IGH の Clonality の有無、治療効果 を調べた。 <方法> 2004 年から 2011 年の間に、関節リウマチの患者で、リンパ節またはその他の腫瘤性病変を切 除し、久留米大学にて病理組織検査を行った患者を対象とした。臨床情報、経過は主治医へのア ンケート調査によって得た。関節リウマチの診断はそれぞれの施設で American College of Rheumatology criteria に従い行われた。病理組織診断は久留米大学にて 3 人の著者により行っ た。病理診断は WHO 分類第 4 版に従い、以下の 7 型に分類した。

(i) diffuse large B-cell lymphoma (DLBCL), (ii) Hodgkin lymphoma (HL), (iii) polymorphic B-cell LPD (P B-LPD), (iv) reactive lymphadenitis (RL), (v) peripheral T-cell lymphoma (PTCL),(vi) composite lymphoma (CL), and (vii) follicular lymphoma(FL).

症例のパラフィン切片を用いて、CD3、CD20、CD15、CD30、PAX5に対する抗体で免疫染色を行った。 EBERを標的とするIn situ hybridization(ISH)を用いてEBウィルスの有無を調べた。

B細胞性のLPDではパラフィン切片を用いてDNAを抽出し、PCR法にてIGH再構成の有無を調べた。 統計解析はJMP9を用いて行い、Over all survivalは診断日から死亡日または最終生存確認日まで、 Disease free survivalは化学療法施行日から再発日または、最終生存確認日までの期間を算出し、 Kaplan-Meier法を用いて生存曲線を描き、Log-rank法にて各要素のSurvivalの差を検定した。

MTX-LPDでは自然消退した群としなかった群との比較はχ2乗検定で行った。

<結果>

102例のRA-LPDの組織像はDiffuse large B-cell type 53例、Hodgkin lymphoma 9例、 Polymorphic B-cell LPD 20例、Reactive lymphadenitis 11例、Peripheral T-cell lymphoma 4例、Composite lymphoma 2例、Follicular lymphoma 3例であり、EBウィルスは93例中56例(60%) で陽性であった。B細胞性のリンパ増殖性疾患では74例中31例でIGH再構成のMonoclonal bandを認 めた。

47 例は MTX 中止のみで経過観察をし、28 症例で自然消退がみられた。17 例は CR、11 例は PR であったが、再発、残存病変が 28 例中 13 例で見られた。自然消退した例ではしなかった例と比 べ EB ウィルスの陽性頻度が有意に高かった。(80% vs. 50%;P=0.007)また組織型が DLBCL

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である頻度は有意に低かった。(39 vs. 78%;P=0.006)

48 例で、最終的に化学療法が施行され、34 例が CR、10 例が PR となった。18 例が再発し、18 例中 15 例は DLBCL であった。化学療法が施行された DLBCL の症例では、IGH の Clonality がみら れる症例で有意に Disease free survival が短かった。全生存率は 70 歳以上の年齢と、DLBCL の 組織型で有意に低かった。

RA-LPD では、年齢 70 歳以上、組織型が DLBCL である症例で有意に Over all survival が短か った。

<考察>

今回の結果から、RA-LPD において年齢と DLBCL の組織型が予後不良因子であると考えられた。 また、化学療法を施行した DLBCL の組織型の RA-LPD では IGH の Clonality があると DFS が短いこ とが分かった。MTX を使用していた MTX-LPD では、MTX 中止のみで経過を見た場合、EBER 陽性、 DLBCL 以外の組織型で自然消退が有意に多かった。 今回の検討では RA-LPD のうち 73%が B 細胞性の LPD であり、以前の報告と同様であった。 またその他の免疫不全関連の LPD も B 細胞性起源が多く、類似の疾患であると考えられる。 MTX を使用している関節リウマチの患者では、3 つの機序で EBV が活性化すると考えられる。 1 つ目は関節リウマチの自身の影響である。最近関節リウマチの患者では細胞障害性 T 細胞の機 能低下がみられ、EBV 量が通常より高いということが明らかになった。 2 つ目の機序は MTX による T 細胞の接着分子と活性化の抑制である。3 つ目としては MTX 自身の 作用により EBV の潜伏細胞からの放出である。このような機序で EBV は活性化し腫瘍化へとつな がると考えられている。しかし EBV 陰性の症例もみられることから、これら以外の機序も考えら れる。MTX による腫瘍免疫の低下や、DNA メチレーションの阻害なども影響しているであろう。 今回の報告では RA-LPD の 60%、MTX-LPD の 62%で EBV 陽性であった。これはその他の免疫不全 関連の LPD と同様で、通常のリンパ腫では約 5%であるのに比べ陽性頻度が高い。また過去の RA-LPD の欧米での報告では EBV の陽性頻度は 12%と低いが、これは過去の報告であり、MTX の使 用がわずか 5%の患者のみであったことが原因と考えられた。また日本人では EBV の陽性頻度が 高く人種間の差も影響していると思われる。 EBV はⅠ~Ⅲ型の感染様式をとり腫瘍の種類により EBV の感染様式が異なり、Ⅰ型、Ⅱ型、Ⅲ 型の順に表面に発現する膜蛋白が増える。この膜蛋白は細胞障害性 T 細胞の標的となるためⅠ型 感染様式の腫瘍は宿主の免疫が保たれていると考えられる。Ⅱ、Ⅲ型となるにつれ、標的蛋白が 発現しているにもかかわらず、腫瘍化していることから宿主の免疫が低下している腫瘍でみられ る。HIV 関連 LPD や移植後 LPD ではⅢ型の感染様式であるが、今回の検討では RA-LPD の多くはⅡ 型であり、これは過去の報告も同様であった。RA-LPD では他の免疫不全関連の LPD とくらべ、免 疫不全が比較的軽度であると思われる。 RA-LPD の治療はまだ確立していない。選択肢としては免疫抑制剤の中止、化学療法、リツキサ ン単独療法、免疫療法(EBV-specific T-lymphocyte)などが考えられる。 MTX の中止は移植後 LPD と同様検討すべき選択肢である。今回の報告でも MTX の中止のみで経 過観察した 47 例のうち 28 例(59%)が自然消退した。自然消退率は過去の報告より高いが、これ

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- 4 - はおそらく、臨床医が最近まで MTX の中止のみで様子をみず、すぐに化学療法を施行する傾向に あったことが原因ではないかと思われる。EBV 陽性頻度と自然消退の関係は過去の報告と同様で あった。MTX を中止後どのくらい経過観察すべきかは明らかではない。しかし今回の検討では自 然消退する症例は大体⒉か月以内には改善がみられている。また過去の報告では CR は 4 週間以内 に、PR は 2-3 か月以内に起こるとされているため、MTX 中止後は全身状態が許せば 2,3 か月の経 過観察が望まれる。 リツキサンは移植後の LPD で行われる治療である。RA-LPD の場合、リツキサンは抗腫瘍効果の みならずリウマチへの治療効果も期待できる。今回の症例でも P-LPD の 2 症例、CD20 陽性の HL の 1 例でリツキサン単独での治療を行いそれぞれ 14,42,33 か月寛解を維持している。また関節リ ウマチのコントロールも良好であることから、今後有効な治療法であることが示唆される。 免疫不全関連の LPD では Polyclonal、Monoclonal、Oligoclonal など様々な増殖がみられ多段階 発癌であると考えられる。移植後 LPD では Monoclonal な増殖は予後不良因子であり、HIV 関連 LPD では治療への CR 率、全生存率は Polyclonal な増殖の患者で有意に高い。今回の RA-LPD の検討で も IGH の Clonality のみられる症例では DFS が有意に短く、他の免疫不全関連 LPD と同様、Clonal な B 細胞の増殖がより活動性の高い段階であることを示している。

本報告での RA-LPD の 5 年生存率は 80%で過去の報告と比較して高い値だった。しかし 102 例 中、死亡したのは 11 例と少数であった。70 歳以上の年齢、DLBCL の組織型で生存率は有意に短か く、EBV や IGH の Clonality の有無と予後との関連は見られなかった。これは多くの死因がおそ らく高齢のための治療関連死や、原病以外での死亡であるためである。正確な生存率を評価する ためにはもう少し長い経過観察が必要である。

以上より今回の報告で組織型、EBV、IGH の Clonality が予後予測に重要であることが分かった。 この情報をもとに今後さらなる前向きの検討が望まれる。

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論文審査の要旨および担当者

報 告 番 号 甲 第 4 6 5 5 号 市川 理子 論文審査担当者 主 査 北川 昌伸 副 査 神奈木 真理、東田 修二 (論文審査の要旨) 関節リウマチ患者ではリンパ増殖性疾患を合併することが知られている。治療薬である Methotrexate(MTX)による免疫抑制と Epstein-Barr(EB)ウイルスの再活性化が大きな 要因と考えられているが、予後を規定する因子については明らかではない。 申請者らは、関節リウマチ患者に発生したリンパ増殖性疾患(RA-LPD)102 例について 病理組織像、臨床像、予後を調査し、EB ウイルス感染の有無、イムノグロブリン重鎖のク ロ-ナリティの有無、免疫抑制剤の使用状況と、予後との関係を解析した。

その結果、病理組織像ではDiffuse large B-cell lymphoma(DLBCL)type が 53 例と最 も多く、EB ウイルス感染は 60%にみられた。MTX 使用例では 50%で MTX の中止のみで自 然消退がみられ、自然消退の頻度は EB ウイルス感染例、DLBCL 型以外の例で有意に高か った。また、イムノグロブリン重鎖のクロ-ナリティは74 例中 31 例に認められ、DLBCL 型でクロ-ナリティがあった症例は有意にDisease free survival が短かった。また、高齢者 やDLBCL 型の例では Overall survival が有意に短かった。

以上、本研究は、病理組織像、EB ウイルス感染の有無、イムノグロブリン重鎖のクロ- ナリティの有無がRA-LPD の予後予測上有用であることを示した意義のある研究と考えられ る。

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