平成17年度内閣府経済社会総合研究所委託調査
自殺の経済社会的要因に関する
調査研究報告書
平成 18 年 3 月
京都大学
本報告書は、平成17 年度内閣府経済社会総合研究所委託調査として、国立大学法人 京都大学が内閣府経済社会総合研究所より委託を受けて実施した「社会病理の一つ としての自殺増加の経済的要因等に関する調査」の成果をとりまとめたものである。
1
目次
序 本調査研究の趣旨 2
I 深刻化する自殺問題とその背景 6
I−1 自殺の社会病理としての側面 7 I−2 我が国の自殺率変動、地域間の差等の特徴 9II 先行研究 18
II−1 自殺行動に関する研究 18 II−2 経済社会的な自殺要因 20 II−3 むすび 39 【付録】先行研究のまとめ 40III 98年以降の経済社会的要因による自殺の典型例 46
IV 統計的分析 56
IV−1 日本における年齢階層別自殺率の推移 58 IV−2 多変量分析に用いる変数 63 IV−3 回帰の結果 72 IV−4 考察と結論 83 【付録】日本の個人破産制度の変遷 89V 自殺予防対策 93
V−1 自殺予防対策の基本的な考え方 93 V−2 自殺予防対策のモデル 94 V−3 諸外国の自殺予防対策 95 V−4 自殺予防対策に対する視点 97 V−5 むすび 105資料編 106
参考文献 1062
序 本調査研究の趣旨
1.
調査研究の目的と問題設定
「自殺」は従来心理学、社会学、精神医学他多くの分野で研究対象とされてきた が、90 年代後半以降我が国の年間自殺者数は 3 万人台へと大幅に増加し、自殺を いかに予防し減らしていくかという政策面からも関心が高まっている。 経済学の視点からは、特に景気変動の観点から失業の増大と自殺増加との関係に 関する研究が行われているが、(イ)諸外国においては失業(あるいは経済状況)と 自殺との間に明確な因果関係が指摘されているか、(ロ)失業の増加がなぜ今回の中 高年男性の自殺増加につながったのか、(ハ)倒産、負債等同期間に増加した他の要 因は影響しているか、といった点に検証の余地があると考えられる。 このため、本調査においては、90 年代後半以降の自殺の増加に焦点を当て、 (1) リストラ等の雇用環境の悪化は中高年男性など特定の年齢階層の自殺増加に どう影響したのか、他の経済社会的要因による影響はないのか等について、実証 的側面も含め幾つかの角度から検討し、 (2) 我が国の自殺者急増に関係する経済社会的要因が、我が国に独自にみられる要 因か、また常に自殺行動に普遍的に影響するものかどうか等について考察を加え る、こと等により、90 年代後半以降の自殺増加の経済社会的要因を明らかにし、 自殺をいかに減少させるかという政策対応に資するものとする。3
2.調査研究の方法
(1) 自殺者数に関する公的統計等を基に、我が国自殺率の戦後の動向、他国との比 較の他、属性、原因動機、また精神疾患等罹患との関係などについて整理し、 今次自殺者数急増の特徴を多角的に整理する。また、統計に正しく計上されて いないのではないかといったよく指摘される点についても確認する。 (2) 自殺行動とその経済社会的要因との関わりに関する既存研究について、特に社 会科学の分野を中心に先行文献を網羅的に整理する。 (3) 90 年代後半以降の自殺の特徴について、個々のケースに関する既存調査をサ ーベイし、実証的手法による結果を補完する。 (4) リストラ等の雇用環境の悪化がなぜ中高年男性など特定の層の自殺増加につ ながったかを中心に失業以外の経済社会的リスクを考察するとともに、家族や地 域とのつながりの程度がどう関係するかについても確認する。 (5) 諸外国との比較においては、我が国の状況との比較、またどのような取組が自 殺率低下に効果を持ったか等について、北欧諸国等において調査を行う。4
3.調査研究の実施体制
京都大学経済研究所附属先端政策分析研究センターを中心とする以下のメンバー が本調査研究を行った。 京都大学経済研究所 附属先端政策分析研究センター 助教授 渡部 良一* 同 産学官連携研究員(現一橋大学経済研究所講師) 小倉 義明 同 教務補佐員(大学院経済学研究科後期博士課程) 齋藤 隆志 京都大学大学院経済学研究科後期博士課程 古川 雅一 同 教務補佐員(大学院経済学研究科修士課程) 中村 良太 (注)*は代表者 報告書の各章は概ね以下の分担により執筆した。なお各分担の調整、内容校正を 渡部、齋藤において担当した。 I (渡部) II (中村) III (渡部) IV (小倉) V (古川) 報告書の編集作業には、京都大学経済研究所附属先端政策分析研究センター秘書 木村真里が参加した。5
4.謝辞
本報告書の作成に際して、デンマーク、スウェーデン、韓国において調査を行っ た。また、秋田大学医学部、秋田県庁、国立精神保健研究所他において、自殺防止 に携わっておられる方々よりヒアリングに応じていただいた。記してこれらの方々 に深く感謝申し上げたい。6
I.深刻化する自殺問題とその背景
我が国の自殺者数は、98 年に年間 3 万人台に急増し以来7年間 3 万人を超える水準 で推移している1−1。自殺行動の解明には生物学、臨床、社会要因等を統合的に理解す ることが必要とされる。一方で、自殺の直接の原因となる鬱状態や薬物乱用には、同 時に健康や家族の問題、地域・社会との関係喪失、経済状況や政治変動など環境要因 が影響しているとされ、自殺者に関する属性情報を補完する観点から客観的な集計デ ータと自殺率との関係について実証的蓄積がなされてきた。 98 年以降の自殺の急増については、経済状況の悪化との関係を指摘する見方が多い。 しかし、自殺者数はその後も高水準で推移するなど具体的な要因について確定的な結 論が出されたわけではない。 本報告書は、98 年以降急増した自殺の原因動機として経済・生活問題が大きく増加 している点に注目し、自殺とその経済社会的要因(リスク)との関係について多面的 な検討を行ったものである。 1 日当たり平均 80∼90 人が自殺で生命を絶つ状況下、自殺防止は待ったなしの課題 となっている。これまでも医療関係者、ボランティア、民間団体、地方自治体を中心 に自殺未遂者や希死念慮者のこころのケア、支援が行われ、中央政府においても自殺 1−1平成16 年 30,247 人、平成 17 年 1∼8 月 21,024 人(前年同期比+2.0%)(人口動態統計)。7 者減少の目標が定められ総合的な対策が打ち出されている1−2。効果的な自殺防止の観 点からも、うつ病等精神疾患に対する早期の把握・治療だけでなく、経済社会的要因 等危険因子を明らかにしていくことが重要と考えられる。
I−1 自殺の社会病理としての側面
自殺は旧くは社会において逸脱した行動としてタブー視され、宗教によっては厳し く禁じられる行為であった。一方、近代以降、自殺に向かう心理、病理を解明し防止 に役立てるという動きが広まり、また、社会の特質を映し出す現象として自殺行動、 あるいは自殺率の変動の原因を明らかにする研究が行われてきた1−3。 自殺の増加は、家族や周りの人々に深刻な影響を与えるだけでなく、人々が社会に 対し不安を抱く要因ともなっている1−4。自殺は、若年・中年層については死因の第一 位あるいは第二位を占め(男性では 20∼44 歳の年齢層で死因の第一位、15∼19 歳、 45∼49 歳においては第二位、該当する年齢階層の死因の 30∼40%を自殺が占める)、 90 年代以降増加している児童虐待、不登校、ひきこもり、孤独死等の現象と並び社会 1−2政府は、自殺対策関係省庁連絡会議において、総合対策(実態解明・予防のための正しい理解の普及・ 啓発、相談体制の充実、自殺未遂者・自殺遺族等のケア、各種の自殺予防対策の充実等)を決定し(17 年 12 月)、当面の目標として「今後 10 年間で自殺の水準を 98 年の急増以前の水準にまで戻す」として いる。 1−3 「自殺行動」の定義 「自殺行動」について研究者間で一致した見解はないが、世界保健機関(WHO)は、「自殺行動」は自 殺(既遂)、自殺未遂、及び自殺念慮(自殺を考えること)により構成されるという定義を用いている。 このうち、自殺未遂、自殺念慮については自殺の数倍∼100 倍の規模(年齢により異なる)との推定があ るが、多くの国では把握されていない。 1−4 「安全・安心に関する特別世論調査(16 年 7 月、内閣府政府広報室)」による。
8 病理の一つともなっている。 自殺を取り巻く諸要因の中でうつ病等精神疾患は、自殺行動と直接的な関係がある とされる。例えば、国や時期により異なるが、自殺者の3∼7割が生前うつ病等に罹 患していたとされる1−5。 我が国におけるうつ病患者数は、93 年以降の 10 年間でほぼ倍増し、特に 99 年以降 大きく増加している(図 I-1)。しかし、この急速に増加した主な要因は、精神科に通 院することに対する抵 抗感が減ったことによ るものと解釈されてい る。また、治療を受け ずにうつ病等が悪化し て自殺した場合も指摘 されることから、うつ病による受診者数の増加はうつ病の罹患者数の動向を正確に反 映していない可能性が高い。 うつ病等精神疾患に対しては抗うつ剤など薬物による治療が推奨されているが、自 殺者数がこれだけ急増する状況になっていることを考えると、背景にある危険因子(ス トレスとなる要因)を検討し明らかにしていくことが重要と考えられる。 1−5 「自殺は予防できる−ヘルスプロモーションとしての行動計画と心の健康づくり活動(本橋・ 渡邉)」。既遂の場合、男性で約2 割、女性で約 5 割が精神疾患罹患歴との調査もある。 (図I-1) 精神疾患と失業者の推移 入院 うつ病患者総数 (左目盛) 外来 精神分裂病患者 数(左目盛) (右目盛) 失業者数(10万人) 0 5 10 15 20 25 30 昭和59年 昭和62年 平成2年 平成5年 平成8年 平成11年 平成14年 0 5 10 15 20 25 30 35 40 (千人) (10万人) (出所)厚生労働省「患者調査」「労働力調査」。
9
I−2 我が国の自殺率変動、地域間の差等の特徴
(1) 公式統計の有意性
自殺者数に関する公式統計には、人口動態統計特殊報告(厚生労働省、明治 32 年∼) と自殺の概要資料(警察庁、昭和 53 年∼)の 2 種類がある。統計の対象範囲、計上時 点の違い等により、2003 年時点で警察庁統計の自殺者数が年 2,000 人程度上回るが、 両統計値で増減の動き は 概 ね 一 致 し て い る (図 I-2)。また、死因 不明の場合も自殺に計 上されているのではな いかとの指摘があるが、 人口動態統計では、原因不明の遺体は自殺でなく「その他外因」等に区分するとされ、 自殺者数が過大に計上されている可能性は低いと考えられる1−6。なお、東京都監察医 務院での検案・解剖により「自殺」あるいは「不詳の死」とされたケースの推移をみ ると、98 年には明らかに自殺が増加していたことがうかがわれるが 2001 年からその 翌年にかけては自殺者数が若干減少する一方、不詳の死が増加している(図 I-3)。同 1−6 公式統計での「自殺者」の定義。 「自殺の概要資料(警察庁)」では、遺体の発見された地域を管轄する警察署において計上され、在日 外国人も対象となる。警察庁統計では後日自殺と判明した場合遡って計上される。一方、「人口動態統計 (厚生労働省)」では、該当者が住民登録していた自治体において計上され、国内在住の日本人が対象で ある。また、死因不明の場合、「自殺」ではなく「その他外因」等に区分し計上される。10 (図 I-3) 自殺及び不詳の死の動向(東京都監察医務院業務報告) 1471 2082 自殺(左目盛) 232 320 不詳の死(右目 盛) 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 94 95 96 97 98 99 2000 01 02 03 04 (年) (人) 0 200 400 600 800 1000 (人) (出所)東京都監察医務院17年度業務報告(解剖・検案の分類)。 (第I-4)男女別自殺率(人口10万人当たり) 24.2 26.4 27.8 27.8 26.0(97) 38.0(2003) 36.5(98) 31.5(1955) 28.9(83) 0 5 10 15 20 25 30 35 40 1899 1904 1909 1914 1919 1924 1929 1934 1939 1944 1949 1954 1959 1964 1969 1974 1979 1984 1989 1994 1999 2004 男性 女性 (昭和58-61) (平成10-) (昭和2-12) (大正3-5) (明38-9) (昭和28-34) /100,000 (出所)人口動態統計(厚生労働省)。 医務院の統計は東京都 23 区 内の変死者が対象であるが、 不詳の死が大きく変動してい る場合には、自殺の動向をみ る際に留意が必要と考えられ る。なお、本調査報告の焦点は主に 90 年代後半の増加局面にあることから、上記の観 点については特段の問題はないと考えられる。
(2)我が国の 98 年以降の自殺率急増とその特徴
我が国の自殺率(人口 10 万人比)の推移をみると、第二次大戦後は、戦前に比べ総 じて大きな変動がみら れ、高度成長期やバブ ル期に低下した一方、 戦後では、昭和 28∼34 年、昭和 58∼61 年及び 今回(平成 10 年以降) の三回の急増がみられた(図 I-4)。ただし、女性については、昭和 28∼34 年に男性同 様急激に増加したが、それ以降は傾向的に低下し変動幅も小幅である。昭和 28∼3411 年の急増期には特に復員兵で自殺が多かったと言われ、青年期に受けた戦時体験が最 も強く当時の青年層に現れたとされている。一方、昭和 58∼61 年、平成 10 年以降の 2 回(いずれも急増期の数年前から緩やかな上昇がみられる)については主に中高年 男性を中心に自殺が増加し、男性の自殺率は 2003 年には戦後最高の水準を更新してい る(人口 10 万人比男性 38.0、女性 13.5(2003 年))。 上記の自殺率の変動について、以下では、(1)多くの国に共通するといわれる要因、 (2)年齢・地域等の属性による特徴をみる。 まず、高齢化に伴い自殺率が高くなる傾 向は多くの国に共通し年齢別人口構成の影 響を調整した年齢調整済自殺率が公表されている(表 I-5)。これによると、今回の急 増期の自殺率の水準は若干低くなるが、男性では依然 1960 年代半ば(昭和 30 年)以 来の高水準である。女性では昭和 30 年当時の水準の半分以下となり今回の急増は特に 男性に顕著に現れていることが分かる。なお、今回の急増(年齢調整前の自殺率変化 分)のうち人口の年齢別構成の調整による変化分を高齢化要因とみなすと、男性 +2.7/+14.6 、女性+0.6/+2.2(平成 7∼12 年の増加幅)となり、高齢化要因は男性の 自殺率増加の2割程度を説明すると考えられる1−7。 1−7 高齢化は徐々に進展するものであり、ある年に大きく寄与するとは考えにくい。従って、ここで検出 された高齢化の寄与は、ある高齢の年齢コホ−トでの自殺の急増が多分に影響しているものと考えら れる。ある生まれ年の層(コホート)で自殺が急増期に増加する現象は以前から指摘されている。平 成 14 年の自殺防止に関する有識者会議(厚生労働省)では、我が国の 1930−34 年生まれのコホート の自殺が戦後のピーク時(1954−60 年、1983−86 年)に寄与したとされ、今回も相応に高い増加がみ られた。
12 (図I-6) 年齢階層別自殺者数の推移 60歳以上 50-59歳 40-49歳 30-39歳 20-29歳 19歳以下 年齢不詳 0 2,000 4,000 6,000 8,000 10,000 12,000 14,000 1978 1980 1982 1984 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 (人) (出所) 「自殺の概要資料」(警察庁)。 次に、年齢階層別でみると、 98 年以降全ての層で増加した が、特に 40∼60 歳代で増加が顕 著である(図 I-6、表 I-7)。ま た 98 年に大きく増加した 40∼ 60 歳代ではその後高い水準で推移し 2004 年に若干減少したが、20∼30 歳代では 2003 年にかけ一段と増加している。なお、 1980 年代の急増時(昭和 58∼61 年) も男性 40∼50 歳代で自殺率が上昇 したが、20∼30 歳代ではむしろ低下 がみられた。その観点で若年層の自 殺動向についても注意が必要と考え られる。 次に、「自殺の概要資料(警察庁)」により自殺の原因動機をみると、98 年前後では、 自殺者の原因動機(遺書有のケース)として最も多い「健康問題」の割合は、48.9% (97 年)、42.5%(98 年)、41.2%(99 年)と若干低下した一方、「経済・生活問題」 は 21.5%(97 年)から、27.2%(98 年)、30.2%(99 年、遺書有のケース)と年を追 って急増している(図 I-8)。従って、98 年以降で急増した自殺の多くは経済生活問題 (表I-7) 年齢別にみた自殺率の変動 (該当年齢10万人比) (平成8,9→10,11年) (平成13,14→15年) 男性 女性 男性 女性 15-19歳 20-24歳 + 25-29歳 + + 30-34歳 + + 35-39歳 + + 40-44歳 ++ + 45-49歳 +++ + 50-54歳 +++ 55-59歳 +++++ + 60-64歳 +++ 65-69歳 +++ 70-74歳 + 75-79歳 + (備考)1.厚生労働省「自殺死亡統計」により作成。2年間 の平均値(15年を除く)で比較。 2.+(1個)当たり5人以上の増加を示す。 3. 60-69歳層は特定の生まれ年(コホート)効果 の可能性が考えられる。
13 (図I-9)原因動機(男性年齢別、遺書あり) 家庭 健康 経済・生活 勤務 男女 学校 その他 不詳 0% 20% 40% 60% 80% 100% 不詳 8 43 36 32 56 48 その他 13 81 66 71 104 125 学校 29 18 1 1 0 0 男女 10 64 48 18 27 4 勤務 0 71 129 139 184 46 経済・生活 6 167 401 779 1300 658 健康 16 141 220 276 606 1110 家庭 8 48 95 142 160 196 19歳以下 20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳以上 (図 I-8)原因動機別自殺者数(遺言あり) 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 4,000 4,500 1978 1981 1984 1987 1990 1993 1996 1999 2002 家庭問題 健康問題 経済・生活問題 勤務問題 男女問題 学校問題 その他 不詳 (備考)「自殺の概要資料(警察庁)」により作成。 (注) 98∼2004年において遺言のあるケースの比率をみると、家庭問題(0.32)、健康問 題(0.247)、経済生活問題(0.417)、勤務問題(0.337)、男女問題(0.381)、学校問題 (0.299)、その他(0.344)、原因動機不詳(0.109)を当てはめ、97年以前の遺言のある ケースの自殺者数の推移を推定した。 (人) に起因したものであると考え られる。 また、年齢階層別に原因動 機をみると、19 歳以下では学 校、異性問題が多く、中高年 層では経済・生活問題が多く なり、60 歳以上では健康問題 が多くなっている(図 I-9)1−8。 世界保健機関(WHO)の統計 (2000 年)で我が国の自殺率 を諸外国と比較すると、ロシ アや中東欧諸国を除く先進諸 国の中では最も高く、特に男性中高年層に限るとその水準は世界で最も高いグループ に属している1−9。 次に、就業状態等の属性別の自殺率の動向を「自殺死亡統計(厚生労働省)」(平成 1−8警察庁統計での原因動機基準の変更 警察庁「自殺統計」は、98 年以降、原因動機は遺書ありのケースに基づく分類に変更された。98 年 前後で遺書あり、遺書なしの比率に大きな変化はないと仮定しその比率で 98 年以前の各原因動機別の 自殺者数を割り戻すと、依然として経済・生活問題による自殺増が多い。また、各原因動機間の相関 をみると、男女問題、学校問題は他の原因動機とほとんど相関がないが、経済・生活問題、健康問題、 職場問題は相互に 0.5∼0.7 程度の相関がみられ、経済的行詰りで健康を損ねるケースなど原因動機間 が相互に相関している。 1−9我が国の自殺率は、WHO に報告されているデータ(2000 年時点)では、非定期調査国を含む)約 100 カ国中で 10 番目となる。
14 (注)上記分類における「無職」は完全失業者及び非労働力人口である。 (図I-10) 就業、無職別自殺率(10万人当たり)の推移 20-24歳 45-49歳 55-59歳 60-64歳 0 50 100 150 200 250 300 350 就業(H7) 無職(H7) 就業(H12) 無職(H12) 平均20.9 平均48.9 平均32.9 平均70.8 H7:27.5 H12:42.3 7 年、12 年)でみると、無職者層 での自殺頻度が高いが、5 年間で の自殺者の増加は就業者、無職者 のいずれにおいても生じている (図 I-10)。 また、就業者の内訳を職種別に みると、全ての職種で増加してい る が 、 特 に 管 理 的 職 業 従 事 者 (21.6%増)、専門的・技術的職業 従事者(19.8%増)で増加率が高 い(図 I-11)。 地域別の自殺率の格差について は、第 IV 章において都道府県レベルのデータが掲載されている(p.59、図 IV-3 参照)。 男性では北東北、南九州、山陰で比較的高い傾向があり、この傾向は 1960 年代以降ほ ぼ固定化していると言われる。また、女性については特に高い秋田県を除くと男性の 場合ほど明瞭な都道府県別の格差はみられない。 自殺率の地域間の差は全国平均に比べて男性では 1.6∼1.7 倍の開きがあり、決して 無視し得る差でないことが分かる。また、第 IV 章で取り上げているように、98 年以
15 降の増減は、自殺率の高い地域でより増加する特徴がみられる。従って、自殺率の地 域間の差の要因をみることは、98 年以降の自殺の急増を明らかにすることにもつなが ると考えられる。 以上では、我が国全体の平均自殺率、性別、年齢別自殺率の変動の特徴、地域間の 差の特徴をみてきた。98 年以降の自殺の増加については月別の変動からも要因を探る 上で重要な情報が得られる可能性がある。そこで、98 年半ば以降直近の 2005 年 8 月 までの月別自殺者数(男女別)と社会経済上の出来事を対応させ、その特徴をみる(図 I−12)。 月別の自殺者数は、毎年 3∼5 月にかけ増加しその後年末にかけ減少するという季節 変動があり、これは 98 年以降でみると特に 98 年、2003 年に顕著である。98 年 3∼5 月、及び 2003 年 3∼5 月はどのような出来事があったかをみると、98 年 3 月は、都市 銀行や大手証券の一角が破綻し企業倒産が増加し始めた 97 年末から少し時間が経過 しているが、業況判断など先行きの見通しが製造業を中心に急速に悪化した時期(98 年 3∼4 月)とほぼ重なる。また、文献によると、中小企業経営者の自殺等をメディア が相次いで報道した時期ともされている。 次に、2003 年 3∼5 月については、企業の業況判断等は依然マイナスであったが特 にこの前後で現状、先行きの見通しが大きく悪化した形跡はない。しかし、失業率は 男性では 2002∼03 年前後がピーク(両年とも男性の完全失業率 5.5%)であり、特に
16 年齢別にみると、45 歳以上の層ではピ−クを打った後ほぼ一本調子に改善している一 方、15∼44 歳の層ではピ−ク後の完全失業率が高止まりしている。また、同時期には、 ヤミ金融取立てによるとされる自殺も多発しており、その後のヤミ金規制法の施行 (2003 年 7 月)以降、自殺者数が急速に低下しているように見える。 こうした月別自殺者数の変動からどのような出来事(事象)が関連しているかにつ いて検討すると、経済社会的要因(リスク)が影響していることが推測できるが、個 別の因子については 98 年、2003 年の 2 回のピークでも異なっている可能性があり、 またリスクを強く受けた年齢層も変化しているようである。こうした個々の因子と自 殺者数の関わりについては、後段の章においてデータ面の分析も含めて検討する。
17
(図
I-1
2)
自
殺
者数(
月
別
)の推移
自殺
者(
男
性
)
自殺
者
(女性
)
500
1,000
1,500
2,000
2,500
3,000
平
9.7
89
1 12 平1
101
0.1
23
45
67
89
1 12 平1
101
1.1
23
45
67
89
1 12 平1
101
2.1
23
45
67
89
1 12 平1
101
3.1
23
45
67
89
1 12 平1
101
4.1
23
45
67
89
1 12 平1
101
5.1
23
45
67
89
1 12 平1
101
6.1
23
45
67
89
1 12 平1
101
7.1
23
45
67
8
X-JA
PA
N HI
DE
自
殺
(98
.5)
HP
購入
の青酸カリ
で男女が
自殺
(98.
12)
会社社長3
人のホ
テル
での自殺(
98
.3)
男性失業者過去最高
の2
40
万人(
.03
.3)
。
月間企業倒産1
81
9件
(98
.5)
月間の企業倒産
1,28
6件
(04
.3)
北海道拓
殖銀、
山一
證券破綻(
97
.11
)
民事再生法施行(
20
00
.4)
再生法改正(
個人債務者も
対象に
改正)
(01
.4)
完全失業率5
.5%
(02
.8,
03
.1)
ヤ
ミ金取立て
脅迫に
よる
自
殺(
03
.6)
自己破産前年比
減
少へ(
03
.8)
ヤ
ミ金
対策法施
行
(03.
7)
長銀国有化(
.98
.11
)、緊急経
済対策(
24
兆円
規模)
民法改正(
包括根保
証への対応)
05
.4)
失業率4
.9%
(00
.12
)
男性失業2
00
万
人超(
99
.3)
(出
所)
「
人口動態統計(
厚生労働省)
」。
18
II
.先行研究
第II 章では、第 I 章での導入を受けて、自殺行動に関する研究分野の概要と、先行 研究の整理を行う。特に、本研究の趣旨と照らし合わせて、特に社会経済的な要因に よってもたらされる自殺の分析を中心に議論を進めていくことにする。 自殺行動の研究は複数の学問分野において、それぞれの注目する観点から同時進行 的に行われてきた。具体的には、社会学、経済学、公衆衛生学、心理学といった分野 である。この章では、とくに人々が生活している経済、社会からの影響によってなさ れる自殺行動に注目していくが、同時に心理学などの文献にみられるような非社会的 な要因によって行われる自殺行動についても始めに言及し、整理することにする。そ うすることで、既存の自殺研究についての全体的な鳥瞰ができることになるし、さら には我々が今回どういう点に注目して分析を行うのかが、より明瞭になるであろう。 経済社会的な要因による自殺行動の研究に関しては、実証分析をとくに重視して検 証することにする。ただし、理論的な研究による含意も適宜言及することで、バラン スを失わないようにする。II−1 自殺行動に関する研究
19 Durkheim(1897)による画期的な分析以降、自殺を社会的な現象として考える研究 が積み重ねられてきた。この観点により、自殺研究は社会学の分野から経済学分野で も研究されるようになり、その理論研究は、社会学のみならず経済学の文脈において もいくつもなされるに至っている。Hamermesh&Soss(1974)、Dixit&Pindyck(1994)、 Becker&Posner(2004)などは、最適成長モデルの文脈において、期待効用の割引現在 価値の最適化の中で自殺行動を取り扱っている。自殺行動を合理的な個人を想定した 経済学のモデルによって描写しようという試みは、他にも行われており、例えば自殺 行動自体を自身から他者へのシグナル行為として記述した Rosenthal(1993)の分析が ある。 心理学の分野では従来自殺行動の研究がなされているが、本研究において紹介すべ きと考えられるものに、自殺行動の「伝染」という考え方がある。(例えば Gould et al(1994))ここでの議論は、個人がある自殺の例を目の当たりにした際に、そこから自 殺の結果についてより肯定的に捉えてしまうことにより、模倣的、連鎖的な自殺行動 に発展してしまう、というものである。このような心理的な作用による自殺について は、社会的な現象として捉えた発展的な研究を持っており、その端たるケースは、メ ディアによる自殺報道が自殺を誘発する影響を分析したものである。Stack(1996)は、 戦後の日本のデータを用いて、自殺に関する報道が、全国での自殺率の上昇と因果関 係を持つことを示している。この点を考慮した分析は少ないが、社会で自殺が増加す
20 る背景には、こういった自身に固有の問題だけでなく、他者からの影響によるものが ある可能性があることに注意するべきであろう。 さて、以降では以上を踏まえつつ、本研究の中心的なテ−マである経済社会要因に よってもたらされる自殺行動の研究について見ていくことにする。これらの研究の蓄 積は多く、社会学者や経済学者、疫学者(公衆衛生)らによって盛んに行われている。 以下では節を新たにしてそれらの研究を見ていく。ここで、経済社会的な要因を自殺 リスクとして捉える考え方は、Durkheim から始まったものであるが、本章では比較 的最近の研究を幅広く整理することにする。
II−2 経済社会的な自殺要因
以下では、経済社会的な自殺要因を、1経済的な要因、2社会的な要因、3それら の両方を含んだ複合的要因の三つに分類して考えることにする。この分類は、第 IV 章における分析に継承されることになる。(1)経済的な要因
経済的な要因というのは、つまりは個人の生活水準に密接に関連した要因であると 言える。この分野では経済学の分野における蓄積が多い。ただし、経済学的な研究に おける文脈では、必ずしも経済的な要因を自殺理由として考える必要があるわけでは21 ない。例えば、先述の Hamermesh&Soss(1974)では、一般的な「効用」という概念 を用いて、現在から将来にかけての期待効用の現在価値と、自殺することによる苦難 からの解放の両者を斟酌して合理的に自殺を行うという理論モデルが提示されている。 また、自殺行動を、自身の利益に供与する他者へのメッセージとして捉えるシグナリ ングの考え方を自殺の分析に応用したRosenthal(1993)の研究もある。 また、公衆衛生学において社会的な問題と健康についての分析を行う分野にあって も、経済的な要因による自殺を扱っているケースが多い。 では、具体的に自殺の経済的な要因とはどういったものを指すのか。多くの先行研 究では、以下に挙げる諸変数が多く用いられている。 (イ)所得 (ロ)負債・破産 (ハ)経済の不平等 特に所得は経済変数として最も重要な指標である。以下、この三つの要因に関して、 それぞれ先行する実証研究の結果とその含意を述べていくことにする。第IV 章で展 開される実証研究は、日本のデータを用いたものになるが、本章では日本のデータを 用いた研究にこだわらずに、さまざまな対象を扱ったものを見ていくことにする。こ のことは、この後展開されるその他の要因についても同じである。 (イ)所得
22 所得水準の高低を自殺の要因の一つとして考えている研究は非常に多い。これは、 単純には、所得が高ければ少なくともその分人は幸福であって、自殺を冒す危険が少 ないだろうという考えからきているものであると考えられる。 所得を代表させる具体的な変数としては、一人当たり GDP を採るケースがもっと も多い。本来ならば、各人の所得や資産をそのままデータとして用いることが望まし くはあるが、自殺というテーマでは、個々人が自殺したかどうかというデータが取れ ることが困難なため、こうした集計されたデータを用いることになる。 所得を自殺リスクの一つと考える場合、分析の考え方は大きく二種類ある。一つは、 所得の高い地域と所得の低い地域では自殺率が異なるのではないか、という考えであ る。これはクロスセクションの分析に適合している。もう一つは、所得が平均的に高 い時期と、低い時期では自殺率が異なるのではないか、という考え方である。これは 時系列分析に適合している。 高い所得は自殺に関してどのような意味を持つのであろうか。多くの研究から大雑 把に言えることは、所得が高いほど自殺リスクは小さい、ということである。ただし、 これは全体の傾向を掴むためのかなり大鉈を振るった言い方であって、細かくみれば 必ずしもそうとは言えないことがあるし、全く異なる結果が出ている分析もある。 例えば、Neumayer(2003)では、低所得地域における所得が高くなると自殺率が有 意に低くなるが、ある水準以上の所得をもった人が多い地域では、所得の上昇は逆に
23 自殺率を上昇させるという結果を出している2−1。 男女別で見ると、男性についてより所得は重要な自殺リスクとなっているようであ る。多くの研究(例えばBrainerd(2001)、Chuang&Huang(1997))でこのことが指 摘されている。この事は世界共通の現象であると言えるだろう。 年齢別では、Hamermesh&Soss(1974)において、若年層では所得は自殺リスクとは ならないが、それ以上の年齢層では、所得が高いほど有意に自殺率が低くなる傾向が 見て取れる。 また、Yang(1992)は、人種、性別を考慮に入れた分析において、当期における所得 上昇は白人女性と非白人男性について自殺率を上げる傾向にあり、前期における所得 の上昇は人種、性別に関係なく自殺率を下げる要因となることを示している。 (ロ)負債・破産 負債や破産は所得とならんで経済的な貧困、富裕を表す指標として取り入れられて いる。一人当たり GDP といった指標はフロ−の指標であり、それはその個人の本来 の経済的な背景を必ずしも正確に描写するわけではない。 負債について、正の負債は借金苦を表し、負の負債(貯蓄)は蓄えを表す。日本に おいても消費者金融からの多重債務が引き金となって自殺するというケースが報告さ 2−1 ただし、この論文は説明変数間の多重共線性を考慮していない可能性があり、そのため係数の符号が 一致しなかった恐れがある。
24 れているが、このことはある社会全体についても、負債の大きさは自殺リスクの大き さを表すものなのであろうか。金子(2004)は日本人の世帯負債比率を説明変数の一つ として自殺率に回帰させている。その結果は、男性、女性ともに負債比率の高い地域 では有意に自殺率が高い、というものであった。さらに金子は男性について、負債は より大きな自殺要因となることを確かめている。 次に破産についてであるが、これは負債とよく似た変数であると言える。負債を抱 えすぎて返せなくなった末に行き着く先が破産であるから、これはより深刻な事態で ある。West(2003)は、日本のデータを用いて破産件数が自殺の要因となるかどうかを 調べている。破産件数の増加は、回帰係数の上では自殺率と正の相関関係をもつが、 ただし、係数が統計的に有意ではなかった。この論文では同時に家計の貯蓄率につい て自殺率との関係を調べているが、こちらも統計的に有意な結果が得られていない。 (ハ)経済の不平等 経済的に不平等な社会においては自殺率がたかくなるのであろうか。経済的な不平 等が個人の健康や死亡率に影響を及ぼすという研究は公衆衛生学、医療経済学の各面 で研究されていることである(例えば Kawachi et al(1997))。こと自殺に関しては Lester(1987)が各国の GNP をコントロールした上で、不平等(ジニ係数)が自殺率 と相関するかどうか調べたが、統計的に有意な結果は得られなかった。しかし、自殺
25 未遂率と経済の不平等は有意に相関しており、不平等な経済であるほど、自殺未遂者 が多い。
(2)社会的な要因
人間が社会の中で生きている以上、人間の行動も自分が属している社会、環境の影 響を受けるであろうことは言うまでもない。Durkheim(1897)は社会的な原因がもと で行われる自殺について体系化を行い、各要因についてヨ−ロッパ各国のデータをも とに記述している。その後の社会的要因による自殺行動の分析は、この研究における 体系、分析を基にして行われていると言ってよいだろう。 はじめに、Durkheim は自殺を社会活動の中での現象と位置づけて、自殺を引き起 こすような社会的な要因について三つに分類している。すなわち、自己本位的自殺、 集団本位的自殺、アノミー的自殺の三つである。社会的な連帯感が失われてくると、 伝統的な価値観が薄れるのと同時に、自己本位的な考え方が容認されやすくなり、自 殺という行動をとり易くなる、というのが自己本位的自殺である。それに対して集団 本位的自殺とは、社会もしくは自身が属している集団に対する強い帰属意識、責任感 からの自殺行為を指す。さらにアノミー的自殺とは、自身の際限ない欲望に対して、 通常信頼できる社会がそれを規制することによって成り立っている面がある。ところ が、個人と社会との連帯が希薄になると、個人は満たされない思いから欲求不満や不26 平感などからくる絶望によって自殺に至る、という考え方である2−2。 ここで、自己本位的自殺としての具体的な例は、年齢、性、身分、宗教、結婚状態、 家族構成、政治経済的な変化などが挙げられよう。さらに集団的自殺の典型的な例と しては、軍人に一般人よりも高い自殺率が見受けられたことなどが上げられている。 最後にアノミー的自殺の例として、自己本位的な自殺と似たように、性や身分、離婚 などが挙げられる。ここでアノミー的自殺が自己本位的な自殺と異なるのは、自己本 位的自殺は社会連帯の希薄からの無気力、諦めからくるものであるのに対し、アノミ ー的自殺は焦燥感、嫌悪感などの感情的な自殺である、という点である。この両者を 実証的な観点から識別することは意外に難しいことのようである。 では、本章における既存の社会的な要因による自殺の分析結果として、具体的にど のような変数に着目していくのかというと、よく分析の対象となるものは以下の通り である2−3。 (イ)年齢階層 (ロ)離婚 (ハ)結婚 (ニ)出生 2−2 こうしてデュルケームの議論を整理したが、これは後の実証分析における我々の考え方(変数選択) と密接に関連している。本研究の柱である第4章において、この点を踏まえながら再度議論が展開され る。 2−3 その他、人種、宗教の多様性などについて考慮した分析等あるが、これはわが国においてはそれほど 重要ではないため、省略する。
27 (ホ)女性の社会進出 (ヘ)世帯 (ト)社会関係 この中でもDurkheim 以降もっとも注目を受けてきたのが離婚に関しての研究であ る。離婚は家族を失ってしまうことであり、このショックは自己本位的自殺、アノミ ー的自殺の双方の強い要因として働くだろう。以下で説明していく分析は基本的に世 界各国のデータを用いたものであるが、当然各国において社会の成り立ちや人々の考 え方も異なる。その中で、社会的な変化、ショックの捉えられ方も国、地域、または 年齢や性別によって変化してくるであろうことは想像に難くない。実際、多くの研究 ではそういった点に注目して、異なる国、地域、時間における比較研究を行っている ことが多い。 ここで、経済的な変数についても説明したとおり、ここでも社会的な変数として集 計されたデータが用いられていることに注意するべきである。それは、経済的な変数 についてもそうであったように、ほとんどの場合、自殺についての個票データが得ら れないことによるものである。 (イ)年齢階層2−4 2−4多くの研究ではもともと年齢をコントロールした変数を用いていることが多く、第4章における分析 でも年齢構造をコントロールした変数を用いていることがある。
28 年齢以外の点で各個人がまったく同質であると仮定されたとき、年齢が高いか低い かの違いによって自殺率は変わるのであろうか。結論から言うと、多くの研究では全 体的な傾向としては、年齢が高くなるほど自殺率は高くなると言ってよいであろう。 先ほどの経済学でのモデルを用いて考えれば、現時点からの期待効用の現在価値は、 若者よりも高齢者において小さいであろうことは多くの人が納得するであろうことで ある。 年齢というのは自殺について大きな影響を及ぼす点であるということは確かなよう である。Hamermesh&Soss(1974)では、アメリカ人男性をサンプルにとって、年齢が 高い場合に自殺リスクが高まっていることを確認しているし、金子(2004)による日本 人を対象とした研究においても同様の結果が得られている。 一方、Chuang&Huang(1997)では台湾において、各都市の高齢化の割合を説明変数 にとって、それが自殺率との相関を持つかどうかについて調べている。その結果は、 男性については高齢者の多い地域であるほど自殺率が高くなるという傾向にあること がわかった。しかしながら、女性については統計的に有意な結果が得られていない。 この結果から、女性に対して男性の方が年齢による衰えが自殺に繋がりやすいという ことが推論される。 この他に、第 IV 章における我々の分析も含めて、多くの研究では特定の年齢階層 に特有の自殺要因を調べていることがある。実際、繰り返しになるが、先に紹介した
29 Hamermesh&Soss の研究で若年者が所得の下落に対して高年齢層ほど自殺に対して 敏感ではない、というような結果が得られていることがある。そういった点において も、年齢というのはこれからも必要不可欠な変数であると言ってよい。 (ロ)離婚 先の導入部分でも述べたが、離婚が自殺要因として強い影響をもっているというこ とは、自殺を社会的な現象としてみるDurkheim 以降の研究において重要な地位を占 めてきた。そのため、ある地域や時代における離婚率や離婚件数が自殺率との関連で 分析されることが多い。離婚というのは、最も重要な社会的連帯意識の一つであると ころの家族関係における、重大な危機であるといえよう。Durkheim の議論によれば、 このことは個人における社会的連帯の希薄化であり、それが自殺リスクを高めるであ ろうことは、自然と考えられることである。 世界的な全体の傾向としては、離婚は自殺と正の相関を持つようである。ただし、 これは例外の国もあるし、また同一の国、地域においても性別によって受ける影響の
方向、強さも異なる。Brainerd(2001)や Leenaars et al(1993)、Burr et al(1997)、
West(2003)では、それぞれ旧ソ連の国々、日本、米国、北米諸国において、離婚率が
高いことがはっきりと自殺率を上げるリスク要因になっているということを示してい
30 その一方で、Neumeyer(2003)では、その男女別に分けた分析において、女性に比 べて男性のほうが離婚に対してより敏感に自殺行動に走る傾向が強いということを実 証している。Chuang&Huang(1997)においても同様に男性においては、離婚は自殺と 正の相関をもつことが言われているが、女性については統計的に有意な係数が得られ ていない。また、このChuang&Huang では、離婚率のかわりに、夫婦の死別率と自 殺率との関係も調査し、こちらでは男性については自殺と死別に負の相関を見出して いる。女性についてはこちらも統計的に有意な結果が得られなかった。 ここで、Lester et al(1992)による興味深い分析を紹介したい。彼らは日本とアメリ カにおける比較研究の中で、離婚率が自殺率とどのような相関を持つかについて調べ ているが、自殺率との関係では日本人の男女、アメリカ人の男女ともに統計的に有意 な結果が得られなかった。ただし、自殺未遂率と離婚率との関係に着目した回帰分析 において、彼らは日本人男性について離婚率と自殺未遂の間に有意な負の相関関係を 見出している。一方で、アメリカ人男女では離婚と自殺未遂の間には正の有意な相関 があることも示しており、対照的な結果となった。 (ハ)結婚 結婚は一見離婚の逆のように考えられるが、離婚とは似ている一方また異なる指標 である。多くの研究において、結婚の指標は社会における結婚率として取られている。
31 結婚率が高いことは、その社会において家族の連帯がつよいということを連想させる。 逆に、結婚率が低い場合、これは独身者が多いことを意味し、家族という共同体への 関心が薄い傾向のある社会と考えられるかもしれない。そういった点で結婚率を自殺 率との関連で分析した研究がある。 上の説明から想像されるように、全体的に、結婚率が高い国、地域では実際に自殺 率が低くなる傾向を持っている。Neumayer(2003)はヨ−ロッパ各国について、結婚 率が高い国においては男性の自殺率が有意に低くなることを示している。一方、女性 について自殺率との相関係数は男性と同じく負であるが、その係数が統計的に有意で はなかった。 Leenaars et al(1993)では、カナダ人とアメリカ人について比較研究を行っているが、 カナダにおいては、結婚率と自殺率には統計的に有意な関係は見出されなかった。そ の一方で、アメリカにおいては結婚率と自殺率は有意な負の相関関係を持っているこ とが示されている。 (ニ)出生 Leenaars et al(1993)によれば、出生は離婚や結婚と並んで社会的な連帯をあらわす 指標として用いられている。そのことから、Durkheim の言うような自己本位的な自 殺が少なくなるということが予想される。
32 実際、Neonate(2003)では、欧州の中でも出生率が高い国において男性、女性の双 方において自殺率が低くなっていることを確認した。 また、先述のLeenaars et al は、カナダ、アメリカという二つの先進国においても 出生率の高さが有意に自殺率を下げる要因となっていることを示している。 (ホ)女性の社会進出 社会経済的な要因という文脈において女性の自殺率について考える上で、女性と社 会との繋がりについての分析は欠かすことができない。女性の社会進出は多くの場合、 女性の労働参加率をその代理変数として用いる場合が多く、ここでも女性の労働につ いての研究に焦点を当てる。 女性の労働参加が自殺率と正の相関を持つか、負の相関を持つかについては、社会
学において二つの仮説が存在している。一つ目の仮説は、「Role Conflict Hypothesis」
と言って、女性の社会進出によって、女性が担う社会的な役割(仕事、育児、家事など)
が増え、そのことがストレスとなって自殺が増加するであろうと考える仮設である。
二つ目の仮説は、「Role Enhancement Hypothesis」といって、社会における役割の
増加は、ストレスではなく、逆に生活を活性化させて、むしろ自殺を減らすであろう、
というものである。
33 く分析し、かつ自身の分析も加えて、この二つの仮説について言及している。その中 で、彼らはアメリカ人男女に関して1970 年と 1980 年の二期間について自殺率との関 係についての分析を行い、女性については、1980 年には有意に女性の社会進出によっ て自殺率が下がったこと、また、男性の場合には年によって異なることを示した。こ の違いについて、彼らは、1960 年代はアメリカにとって、経済的な安定を保ちつつも、 社会的な規範や価値観についての激動の時代であり、また 1970 年代は経済が不況期 にありつつも、比較的社会が安定していた時代であり、その差が反映されているとい うように分析している。 その他の研究では、Neumayer(2003)が、男性については女性労働参加と自殺率は 微小ながら正の相関関係を持っており、また、女性自殺率と女性労働参加率とは正の 相関関係にあるということを示している。 一方、Chuang&Huang(1997)では、男性についてのみ女性労働参加率は自殺率に対 して負の影響を与えるとしており、女性自殺率については関係が無い、という結論に 至っている。 ところが Lester et al(1997)では逆に男性について女性労働参加率は男性自殺率に 対して正の相関をもつことが示されている。また、この研究では、日本人女性、アメ リカ人女性ともに労働参加率と自殺率に統計的に有意な関係は見出されていない。 以上のように、はじめに説明した女性の社会進出との関連での自殺についての二つ
34 の仮説については、未だ決着がついていないというのが現状であろう。 (ヘ)世帯 世帯については、家族の構成人数についての変数、または、家族を構成している人 の特性についての変数に分析の対象が分かれる。 はじめに、家族の構成人数(世帯サイズ)について言及しよう。家族の構成人数が多 いと言うことは、家族という一つの社会単位が大きいことを指し、それだけの単位が 続くという以上、社会連帯が薄いわけではないというように考えられる。自身にもっ とも近い存在である家族の構成人数が、その人の社会的な連帯をあらわす一つの指標 と考えることができる、というわけである。 Neumayer(2003)は、欧州各国の世帯サイズのデータを用いて、男性については、 世帯人員数と自殺率が関係ないこと、また女性については、世帯人数が多いほど自殺 率は低くなる傾向にあるが、あまり統計的な頑健性を持っていないことを確認してい る。 一方Burr et al(1997)は、男性についても女性についても、世帯サイズが大きいほ ど自殺率が上がる、という結果を導き出している。また、彼らは全世帯に占める一人 暮らし世帯の割合についても自殺率との相関を調べている。結果は、女性自殺率に関 してのみ、一人暮らし割合と正の相関が存在している、というものであった。
35 家族構成員の人数とは異なるアプローチの研究としては、連帯意識という面での家 族構成員の質に関する分析である。家族の人数が多いだけでは必ずしも連帯意識が強 いと言うことはできない。そこで、Cutler et al(2000)では、若年者の自殺について、 父親が誰であるかわからない、または誰であるかはわかっていても、同居していない 青年について、有意に自殺率が高くなる、ということを示している。 (ト)社会関係 社会関係は、とくに近年経済学において社会資本(Social Capital)、その他の分野で
はSocial Networks、もしくは Social Cohesion と呼ばれている変数について自殺率
との関係を見出そうとする指標である。とくに、自殺に関しては他人に自分の悩みな どを相談できることで未然に自殺を防ぐことができることが知られている。(例えば金 子他(2004))特に、自殺者は自殺する時点でうつ症状などを持っているケースが多い ことを考えると、それを病院に連れて行く人や、いざ自殺を思い立った場合にこれを 思いとどませる人の存在が重要になってくるであろう。 また、同じような観点から、普段多くの人と接点を持っている場合には、接点がな い場合よりも自殺リスクが小さくなることが予想される。 Chuang&Huang(1997)は、台湾におけるライフラインセンター(自殺防止機能を持 つ)の設置状況が、自殺率について男性については統計的に有意な関係が見出されない
36 ものの、女性については有意に自殺率を下げる、という結果を出している。また、同 様に、金子(2004)は、日本人男女について各地域の「いのちの電話」の設置状況を変 数としてとり、いのちの電話が開設されている地域では、男性、女性について、有意 に自殺率が低くなっているということを見出している。 これらの研究とは視点を変えて、Cutler et al(2000)は、アメリカの若年者について、 自身の住んでいる地域に誇りを持っている人が多い場所では、自殺率が低くなること、 またスポ−ツなどの活動を行っている人が多いほど、自殺率が低くなることを示し、 社会との連帯が自殺防止に有効であることを確認している。
(3)複合的な変数
経済的要因と社会的要因の複合的な面を持った自殺の要因について、ここでは失業 について考えることにする。 失業によって個人は通常それまでより大分低い生活水準を甘受しなくてはならない だろう。この意味において失業は経済的な要因であるということができる。しかしそ の一方で、失業によってもたらされるのは、所得水準の低下だけでなく、自身の社会 的立場や人間関係、つまりは社会的な連帯の希薄化である。失業は、本人の社会にお ける環境のドラスティックな変化である。家族内での立場もそれまでとは変わるであ ろうし、職場で作り上げた人間関係についても大きく損なわれてしまうであろう。そ37 うしたところから、自己本位的な自殺、またはアノミー的な自殺が引き起こされる可 能性がある。企業経営者にとっての自社の倒産は、これと同じ文脈で考えることがで きるであろう。ここで、自殺の研究においてはデータの都合上変数は集計された後の ものを使わざるをえないわけであるが、集計された失業者数、もしくは失業率、もし くは企業倒産に関わる指標は、景気循環と密接な関係を持っていることにも注意した い。 さらに、これらの指標は景気循環との関係だけでなく、各国、地域における労働市 場の流動性にも影響を受ける。一度失業してしまっても、すぐに再就職できる見通し が立っているのであれば、それは自殺するほどのストレスとはならないかもしれない。 しかし、労働市場が非常に硬直的で、一度失業してしまうと、なかなか再就職もでき ず、また仮に再就職できたとしても所得が以前より大幅に減ってしまうことが分かっ ているような場合、それは自殺する人が頻出するようなことになってしまうと考えら れる。 では、実際のデータでは、失業の自殺に対する影響はどの程度のものであると言え るのであろうか。自殺を社会的な現象として捉え、この要因を分析しようとしている 論文の大部分で、この失業の自殺への影響が論じられてきた。 全体的な傾向としては、直感的な予想と同じように、多くの場合失業と自殺は時代、 場所を超えて正の相関を持っていることがわかる。それを、性別や地域、年齢などよ
38 り細かく見ていくことにしよう。 Neumayer(2003)では、欧州各国の男女のデータを用いて、男性について失業率と 自殺率が強い正の相関を持つということを示している。ただし、この論文の結果では、 女性については失業率と自殺には関係がないというものであった。 Lewis&Sloggett(1998)や、金子(2004)、West(2003)においても、それぞれイギリス 人、日本人の失業データを用いて分析を進めた結果、同様の結果が得られている。性 別で見ると、やはり男性の方が失業における自殺リスクが大きくなるようである。 Neumayer の結果のように、男性のみ統計的に有意な結果となるケースが見受けられ
る。一方で、Burr et al(1997)や Chuang&Huang(1997)のように、両性ともに失業と
自殺の間に確かな相関関係を見出せなかった論文も存在することを記しておく。 失業のショックは年齢によってもことなってくるであろう。そうした点に着目して 推定をおこなっているのが、Hamermesh&Soss(1974)による研究である。この研究で は、アメリカ人男性のデータを用いた分析で、失業率の上昇は全体での自殺率と有意 に正の相関をもち、さらに、年齢階層別では、青年期の失業は直接の自殺リスクにな っているとは言えないが、年齢を追うごとに失業が自殺リスクとして顕在化してくる ことを実証している。 また、国や人種別で見た場合にどうなるのかを調べた研究として、Yang(1992)があ る。この研究では、失業と自殺との関係について、白人男性について強く正の相関関
39 係があることを示し、非白人男性、白人女性については相関係数は正であるものの、 統計的に有意なものではないということを述べている。また、Lester et al(1992)では、 日本人とアメリカ人との比較において、特に日本人男性について、失業が大きな自殺 リスクになっているが、日本人女性やアメリカ人全体にとっては有意な関係が無いと いうことを示した。ただし、自殺者数に加えて自殺未遂者も含めた分析においては、 日本人男女、アメリカ人女性について自殺率との正の相関があることを明らかにした。
II−3 むすび
以上、各分野における社会経済的要因による自殺行動の実証分析について見てきた。 第 III 章では、本研究の分析についてのより深い理解を助けるために、わが国におけ る経済社会的原因による自殺行動の典型例を挙げることにし、そこからの含意を踏ま えて第IV 章の分析への導入とする。40
【付録】先行研究のまとめ
(1)経済変数 (イ)所得 欧州男女 台湾男女 Yang(1992) アメリカ人 (同前期) and Yang(1992) GNP変分Burr and McCall
家計収入
ている。
and Norberg(2000) 自殺を有意に下げる効果がある、ということが報告され
有意ではなかった。
Cutler and Glaeser アメリカ人若年者 自身が属している家庭の所得が高い場合、そのことは
and Griner(1997) ( 70年及び 80年) 自殺率が高くなっている。一方、1980年調査において、 家計所得中位数 女性のみ正の相関を持っている。男性は統計的に 得られていない。また、符号も一致していない。 自殺未遂も合わせると、一部アメリカにおいて、所得上昇 と自殺率が負の相関関係にあることが示されている。 アメリカ人男性女性 1970年調査では、所得が高い地域で、男女共に 自殺率と有意な負の相関を持っている。
Lester and Motohashi 日本人・アメリカ人 所得の変化について、日米両国ともに、有意な結果が
当期の所得上昇は白人女性、非白人男性について 一人当たりGNP 自殺率と有意に正の相関を持っている。 その一方で、前期の所得増分は、人種、性別を問わず、 一人当たり所得 という結果となっている。 さらに、所得に対しては、女性よりも男性の自殺率の 方がより反応する。 さらに、男性自殺率のほうが、所得に対して敏感 であることが指摘されている。
Chuang and Huang(1997) 男性、女性ともに高所得の都市では自殺率が低くなる
一人当たりGNP が低くなることが示されている。その一方で、女性 に関しては、男性と同様に高所得と自殺率は負の 相関を持つと考えられるが、係数が有意でない。 での結果と似て、所得が高いほど自殺率は低い。 また、割引率の推定から、近い将来の所得水準が 自殺に大きな影響を与えるとしている。 Brainerd(2001) 旧ソ連男女 男性について、高所得である場合、有意に自殺率 一人当たり実質所得 させる効果を持つ。その効果は若者を除いて逓減する。 州別データによるクロスセクションでの年齢階層別の 分析でも、最も若い年齢階層以外では、時系列分析 自殺率が上昇する。女性に関しても同じ効果を持つ。
Hamermesh and Soss(1974) アメリカ人男性 時系列分析においては、所得の上昇は自殺率を減少
Neumayer(2003) 男性自殺率に関して、低所得段階での所得高は
41 (ロ)負債・破産 金子(2004) West(2003) 日本人 破産件数 Lester(1987) ジニ係数 (2)社会変数 (イ)年齢階層 年齢 いる。 台湾男女 男性について、高齢者が多い都市であるほど、自殺率 が高くなる傾向にある。しかしながら、女性については 割合 統計的に有意ではない結果が出る。 男女合わせた場合には、高齢者割合と自殺率は有意に 金子(2004) 高齢化率 (ロ)離婚 欧州男女 離婚率 離婚率 なっているということが報告されている。 両性とも係数が強く有意に出ている。 寄与となるわけではないが、離婚は自殺率を上昇させる リスク要因となっている。 Brainerd(2001) 旧ソ連男女 男性、女性ともに、離婚率が高い場合、自殺率も高く 自殺率が高いということが報告されている。 Neumayer(2003) 男性について、離婚率が高い地域では、強く自殺率 も高くなる。一方、女性に関しても、男性ほど大きな 65歳以上人口の 正の相関を持つ。 日本人男女 高齢化率が高い地域においては、男女とも共通して
Hamermesh and Soss(1974) アメリカ人男性 年齢が高くなるほど、自殺率が上昇することが示されて
Chuang and Huang(1997)
自殺と相関するか調べたが、統計的に有意な結果は もたらされなかった。 一方、自殺未遂率は有意に正の相関を持っているという ことがわかった。 が低くなることが示唆されているが、こちらも同様に 統計的に有意でない結果となっている。 (ハ)経済の不平等 世界23カ国 各国の国内総生産をコントロールして経済の不平等が 回帰分析において、破産件数が多くなると、自殺率も 高くなるということが示唆されているが、係数が統計的 に有意ではない。 さらに、家計の貯蓄率(負債率)が高くなるほど、自殺率 世帯負債比率 自殺率の上昇要因となっていることが示されている。 さらに、女性よりも男性のほうが、より負債比率に関して センシティブに反応することが分かる。 日本人男女 世帯の負債比率が高い場合、それは男女とも有意に