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〈論文〉図地分化と容器のメタファーに見る「自己」の概念研究(その2)--英語、スペイン語の異言語対照を中心に

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(1)文学 ・芸 術 ・文 化/第23巻. 第1号/2011.9. 図地分化と容器のメタファーに見る 「自己」の概念研究(そ の2) 一 英語、スペイン語の異言語対照を中心に 一. 福. 3.3.「. 森. 雅. 史. 肉 体 」 と 「精 神 」 と い う 対 立 概 念 の 認 識. こ こ で 一 つ の 疑 問 が 生 じ る 。 §3.2.2.(2)に. 示 し た よ う に 、 「自 己(Self)」. で. あ る 「容 器 」 は 「肉 体 」 で あ る 。 こ の よ う に 、 「肉 体 」 を 容 器 と し て 考 え た 場 合 、 そ の 中 に 納 め ら れ る 内 容 物 に は 「内 臓 」、 「骨 」、 「筋 肉 」、 「食 べ 物 」、 「飲 み 物 」、 「空 気」…. な ど 、 様 々 な もの が 考 え ら れ る 。 で は 、 こ のselfの. の 容 器 に 納 め ら れ る べ き内 容 物 は 何 か?」. 考 察 に 限 っ た 場 合 、 「こ. とい う もの で あ る 。. そ し て 、 こ の 疑 問 を 解 き明 か す 鍵 と な る もの が 、 隣 接 科 学 で あ る 「哲 学 」 を 利 用 し た 新 しい 視 点 か らの ア プ ロ ー チ で あ る 。. 3.3.1.「. 哲 学 」 的 視 点 か らの ア プ ロ ーチ. 「哲 学 」 的 視 点 か ら の 鍵 と な る も の が 、 下 記(1)に 見 ら れ る 「心 身 二 元 論 」 と い う 考 え方 で あ る。. (1) Dualism is the theory that two and only two kinds of substance minds and physical objects.. exist:. A mind is a purely mental, non-material or. spiritual substance, and a physical object is a purely material, non-mental, spatially. extended. substance.. It logically follows that. no mind is a. physical object and no physical object is a mind. A person, on the dualist account, comprises both a mind and a body, but most dualists maintain that bod has cease. a. erson. is essentially. or, to put or. owns. to. exist. his or her. it another. his it. or her is. way, body.. logically. a. min d but erson. It follows post_ sible. that. onl. contzn. is his or her. entl. mind. that. if a person's. that. person. should. his or her. but body. a person should. continue. to.

(2) 図 地 分 化 と 容 器 の メ タ フ ァー に 見 る 「 自 己 」 の 概 念 研 究(そ の2)祠. but. exist;. if a. necessarily and. person's. ceases. bo dies may. mind. to exist.. exist. without. (心 身 二 元 論(dualism)と. should. cease. In principle,. to. exist,. min ds may. 森. then exist. that. person. without. bodies. minds.. は 、 心(mind)と. 物 体(physicalobject)と. い う二. つ の 、 そ し て 二 種 類 の 実 体 だ け が 存 在 す る と い う見 解 で あ る 。 心 は 純 粋 に 心 的 な も の で あ り、 非 物 質 的 で 精 神 的 な 実 体 で あ る 。 物 体 は 純 粋 に 物 質 的 で あ り、 非 心 的 で 、 空 間 的 な 広 が り を 持 つ 実 体 で あ る 。 そ こ で 論 理 的 に は 、 心 で な い もの は物 体 で あ り、 そ して 物 体 で な い も の は 心 で あ る とい う こ とに な る 。 二 元 論 主 義 者 の 説 明 で は 、 人 は 心(mind)と. 肉 体(bod)の  .  .  . 両方 か ら.  . 成 っ て い る 。 し か し 、 二 元 論 者 の 多 く は 、 人 は 本 質 的 に 心 そ の も の で あ り、  .  .  . 偶 然 に 肉体 を持 っ て い る に 過 ぎな い と主 張 して い る。 別 の 言 い 方 をす れ ば、  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  . 人 は 心 そ の も の で あ り、 肉 体 の 方 は 持 っ て い る 、 つ ま り所 有 し て い る と い う こ とで あ る。 こ こ か ら、 た と え人 の 肉体 が 存 在 しな くな る と して も、論 理 的 に 人 は 存 在 し続 け 得 る が 、 も し人 の 心 が 存 在 し な く な る と し た ら、 そ の 時 は 、 そ の人 は 必 然 的 に存 在 しな くな る とい う こ とに な る 。 原 理 上 は 、心 は 肉 体 無 し に 存 在 し得 る が 、 肉 体 は 心 無 し に は 存 在 し得 な い の で あ る 。) -Priest(1991:1)(下. 線 ・日本 語 訳 筆 者). こ の 考 え 方 に 基 づ け ば 、 我 々 人 間 は 「心 」 と 「肉 体 」 と い う 二 種 類 の 実 体 か ら成 っ て い る と 言 え る 。 そ し て 、 こ れ を §3.2.1.(3)で (Subject)」. 見 た 「自 己(Self)」. と 「主 体. に 対 す る 「容 器 」 と 「内 容 物 」 の 捉 え 方 に 当 て は め れ ば 、 以 下(2)の よ. う に ま とめ る こ とが で き る 。. (2)「. 自 己(Self)」 「主 体(Subject)」. そ して 、 この alma)」. と. →. 容. 器:「. →. 内 容 物:「. 肉体 」 心 」. 「心 」 に 対 応 す る も の と し て は 、 「魂([英. 「精 神([英. 語]spirit/[ス. ペ イ ン 語]espiritu)」. え られ る 。. (44). 語]soul/[ス. 一205一. の2種. ペ イ ン 語] 類 が あ る と考.

(3) 文学 ・芸 術 ・文 化/第23巻. 3.3.2.「. 魂([英. 語]soul/[ス. 第1号/2011.9. ペ イ ン 語]alma)」. と 「精 神([英. 語]spirit/. [ス ペ イ ン 語]espiritu)」 3.3.2.1.「. 魂 」 と 「肉 体 」 と の 関 係. 「肉 体 」 を 「容 器 」、 「魂 」 を 「内 容 物 」 と す る 捉 え 方 は 、 我 々 が 通 常 用 い て い る 語 の 中 に も見 て と る こ とが で き る 。 そ の 実 例 の 一 端 を 以 下(1)に. (1)頭. 示す。. か ら 足 の 先 ま で の 全 体 。 肉 体 の 全 部 。 古 く は 、 魂 に 対 して そ れ を 宿 す 身 体 、 生 命 の こ も ら な い 肉 体 の こ と を い っ た 。 魂 を 宿 し た 肉 体 は ミ(身)と う 。 つ ま り、 カ ラ ダ は ミの 外 形 の 部 分 で あ っ た 。 「カ ラ(殻. い. ・躯)+ダ(接. 尾 語)」 か ら な る 語 と い わ れ る 。 カ ラ は 、 水 分 ・生 命 が す っ か り な く な っ て. 抜 け殻 とな っ た もの の意 。 平 安 時 代 に は、 蝉 な どが 脱 皮 した後 の 抜 け殻 や 死 体 な ど に 用 い ら れ て い る 。 ナ キ ガ ラ(亡 枯 れ 枝 な ど の 意 の カ ラ(幹. ・柄)や. 骸)の. カ ラで あ る。 植 物 の 茎 や 幹 、. 、 「枯 山 」 「か ら梅 雨 」 な どの 、 水 気 の な. い 、 乾 い た 、 実 質 の な い の 意 の カ ラ(枯. ・澗)、 か ら っ ぽ の 意 の カ ラ(空). な ど と同源 とされ る。 カ ラ ダ は 漢 文 訓 読 語 で あ る た め 平 安 時 代 の 和 文 に は 用 い ら れ ず 、 「源 氏 物 語 』 の 「か ら を だ に 、 と どめ て 、 見 奉 る 物 な ら ま しか ば 」 の よ う に 、 代 わ り に カ ラが 用 い られ た 。 一 般 的 な語 と して カ ラ ダ が 使 わ れ る よ う に な っ た の は 、 中 世 以 降 で あ る 。 「日葡 辞 書 』(一 六 〇 三 年)に. は、 時 に は生 きた体 の 意. に も用 い る とい う 説 明 が あ る 。 魂 と体 を 区 別 し て 考 え る こ とが 少 な く な っ て きた ため か 。 一. こ の よ う に 、 日本 語. 『 暮 ら しの こ と ば. からだ. 新 語 源 辞 典 』(s .v.体)(下. 「体 」 と は 、 本 来 は 「カ ラ(殻. ・躯)+ダ(接. 線 筆 者). 尾 語)」 の こ と. で 、 「古 くは 、 魂 に 対 し て そ れ を 宿 す 身 体 、 生 命 の こ も ら な い 肉 体 の こ と 」 を 示 し た 語 で あ っ た と考 え ら れ て い る 。 こ の よ う に 、 「魂 」 と は 「肉 体 」 と い う容 器 の 中 に 納 ま る 内 容 物 で あ る と考 え ら れ て い た こ とか ら、 以 下(2)に 示 さ れ る よ う に 、. 一204一. (45).

(4) 図 地 分 化 と 容 器 の メ タ フ ァー に 見 る 「 自 己 」 の 概 念 研 究(そ の2)祠. (2)驚. 森. く こ と。 び っ く りす る こ と。 語 構 成 は 「タ マ(魂)+ゲ. ル(消. る)」 で 、 ゲ ル(ケ. ル)は. キエ ル が縮. ま っ た も の 。 江 戸 時 代 か ら見 え る 語 で あ る 。 一 方 、 鎌 倉 時 代 か ら見 え る 語 に タ マ ギ ル が あ り、 「び く び くす る ・怯 え る 」 の 意 で 用 い られ た が 、 室 町 時 代 末 ご ろ か ら は 「驚 く」 の 意 に も用 い られ る よ う に な っ た 。 しか し、 こ ち ら の 語 源 は 「魂 切 る 」 ら し く、 語 源 的 に 直 接 は 結 びつ か な い。 一. たま げ. 『 暮 ら しの こ とば. 新 語 源 辞 典 』(s .v.魂 消 る)(下. 線 筆 者). あ ま り に 驚 く と、 内 容 物 で あ る 「魂 」 が 容 器 で あ る 「肉 体 」 か ら抜 け 出 て 、 容 器 内 部 か ら消 え て し ま う と考 え られ て い た 。 さ ら に 、 次 の(3)一(4)に 見 られ る よ う に 、 西 洋 言 語 にお い て も同様 の例 が 存 在 す る。. (3)ラ. テ ン 語 伽 伽 θ の 意 味 は 「微 風;呼 宿 っ た)魂 (soul)を. 吸;(元. 素 と し て の)空. 気(肉. 体 に. 」 で あ り、 そ れ は ま た 、 人 間 を 含 む 動 物 が 共 通 に 持 っ て い る 魂 意 味 す る も の で あ っ た 。 す な わ ち 、 日本 語 で 「一 寸 の 虫 に も 五 分. の 魂 」 と 言 う と き の 魂 に 似 た も の で あ る 。 英 語 のanimal(動. 物)は. 伽 伽 α に 由 来 す る 。伽 伽 α に 対 し て 、 男 性 形 伽 珈 鋸 は 「生 命;(身 た)魂;霊. 魂;精. 神;思. だ け が もつ 心(mind)、. 惟;記. 憶 力;意. 志;気. この. 体 に宿 っ. 分 」 とい う 意 味 が あ り、 人 間. す な わ ちmental、spiritual、psychologicalな. α〃勿z鋸 の 働 き に よ る と考 え ら れ て い た 。DθR6捌. 〃zNz'曜. もの は. α(『 万 物 の 本 性. に つ い て 』)と い う有 名 な 哲 学 詩 を 書 い た 古 代 ロ ー マ の 哲 学 者 ル ク レ テ ィ ウ ス(Lucretius)は. 、 α溺 〃 %sは 胸 に あ り、 απ∫ 〃zαは微 少 な 粒 子 と な っ て 体 中. に 散 在 し て い る と 考 え た 。 α忽 〃zαや α〃競 〃sが ぬ け て し ま っ た 肉 体 が 60η)〃s、 す な わ ちcorpse(死. 体)で. あ る。 一 梅 田(1985:69)(下. (4)ま. た ド イ ッ 語 に はLeiche、 これ も同 じ hamo;古. ま た はLeichnam「. 「身 体 」(Leichnamは. 英 語lic-hama-namは. 死 体 」 と い う形 が 存 在 す る が 、. 古 高 ド イ ツ 語Ilhhamo、Ilchinamo〈*Ilhhin一 「覆 い 」)に 基 づ く も の で あ る.. 一 風 間(1990:195)(下. (46). 線 筆 者). 一203一. 線 筆 者).

(5) 文学 ・芸 術 ・文 化/第23巻. 第1号/2011.9. こ の よ う に 、 我 々 人 間 は 、 洋 の 東 西 を 問 わ ず 、 「肉 体 」 は 「容 器 」(時 に 「(内容 物 を)覆. っ て い る も の=覆. い 」)で あ り、 そ の 中 に は 内 容 物 で あ る 「(霊)魂. 」が入 っ. て い る と 認 識 し て い る と 言 え る の で あ る 。 さ ら に 、 「魂 」 が 抜 け 出 た 後 に 残 っ た 肉 体が. 「死 体 」 だ と見 な さ れ て い る 点 も、 日本 語 と西 洋 言 語 に 共 通 し て 見 る こ とが で. き る1。 こ の こ とか ら、 下 記(5)が 言 え る 。. (5)内. 容 物 で あ る 「魂 」 が 容 器 で あ る 「肉 体 」 か ら外 に 出 る こ と は 「死 」 を 意 味 す る 。 す な わ ち 、 「魂 」 と は 「生 命 」 を 意 味 す る 。. こ の よ う に 、 「魂 」 と は 「生 命 」 を 意 味 す る と言 え る が 、 こ の 「生 命 」 と は 、 次 の(6)の 記 載 に 見 られ る よ う に 、. (6)生. 物 が 生 物 と し て 存 在 し得 る ゆ え ん の 本 源 的 属 性 と して 、 栄 養 摂 取 ・感 覚 ・ 運 動 ・成 長 ・増 殖 の よ う な 生 活 現 象 か ら抽 象 さ れ る 一 般 概 念 。 い の ち 「一 を 尊 重 す る」 一. 『広 辞 苑 』(s .v.せ い 一め い 【生 命 】 ①)(下. 線 筆 者). 様 々 な 「生 活 現 象 か ら 抽 象 さ れ る 一 般 概 念 」 で あ る と 言 え る 。 そ の た め 、 「生 命 」 そ れ 自 体 は 目 に も見 え ず 、 手 に も触 れ る こ と は で き な い 。 しか し な が ら、 こ こ で 、 以 下(7)に 示 す 一 つ の 疑 問 が 生 じ る 。. (7)目. に も見 え ず 、 手 に も触 れ る こ とが で き な い も の が 肉 体 の 外 に 出 る こ と が 、 何故. 「死 」 を 意 味 す る と考 え られ る よ う に な っ た の か?. こ の 疑 問 を 解 き 明 か す に は 、 目 に も見 え ず 、 手 に も触 れ る こ と は で き な い 抽 象 物 で さ え そ れ を 言 語 化 して 捉 え よ う とす る 、 人 間 が 本 質 的 に 持 つ 概 念 化 の プ ロ セ ス に 目 を 向 け る こ とが 必 要 と な る 。 た と え ば 、 下 記(8)の 表 現 に お い て 、. 一202一. (47).

(6) 図 地 分 化 と 容 器 の メ タ フ ァー に 見 る 「 自 己 」 の 概 念 研 究(そ の2)祠. 森. (8)溢 れ 出す 生 命 力. 「溢 れ 出 す 」 とい う表 現 は 本 来 、 物 理 的 流 動 体 が 或 る 空 間 の 中 で い っ ぱ い に な っ て 入 り き れ ず 外 へ こ ぼ れ 出 る 事 象(cf『. 広 辞 苑 』(S.V.あ. ふ れ ・で る 【溢 れ 出 る 】)). を 示 す こ と は 言 う ま で も な い 。 つ ま り、 上 記(8)の 背 景 に は 、 下 記(9)の 比 喩 の フ ィ ル タ ーが 存 在 して い る こ とに な る。. (9)生. 命 は 液 体 で あ る([英. 語]LIFEISAFLUID/[ス. ペ イ ン 語]LAVIDAESUN. LiQUIDO). こ の よ う な メ タ フ ァ ー が 人 間 の 生 命 とい う抽 象 物 を 概 念 化 す る た め に 機 能 し て い る こ と は 次 の α0)の実 例 か ら も明 らか で あ る 。. qO)Lo1someweloved,theloveliestandthebest ThatTimeandFateofalltheirVintageprest, HavedrunktheirCupaRoundortwobefore, AndonebyonecreptsilentlytoRest. (聞 け1愛. し た 者 、 い と し く、 よ き者. 時 と運 命 に 美 酒 を 絞 り 出 さ れ 、 か れ ら は 一 、 二 巡 り と杯 を 飲 み 干 し て 、 ひ と り 、 ま た ひ と り 静 か に 安 息 に つ い た の だ 。) -LakoffandTurner(1989:19)(日. 本 語 訳. つ ま り、 こ の 中 世 ペ ル シ ア の 叙 情 詩 間 の 肉 体 は 「生 命(=美. 酒)を. 大 堀(訳)(1994:25)(下. 『ル バ イ ヤ ッ ト(Rubaiyat)』2に. 線 筆 者)). お い て は、 人. 入 れ る 容 器 」 と して 概 念 化 さ れ 、 「肉 体 」 と 「生 命 」. と の 関 係 は 「容 器 」 と 「内 容 物 」 と の 関 係 で 認 識 さ れ て い る こ とが 見 出 さ れ る 。 さ ら に 、 上 記(8)お よ びqo)の 例 で は 、 「生 命 」 と い う 内 容 物 を 「液 体 」 と して 捉 え て い る が 、 「生 命 」 と い う抽 象 物 が 「液 体 」 と い う 具 象 物 に よ っ て 認 識 さ れ る 必 然 性 を 明 らか に す る 鍵 と な る の が 、 次 の(1Dの 記 載 で あ る 。. (48). 一201一.

(7) 又字 ・芸 術 ・又 化/第23巷. (1D動. 第1号/2011.9. 物 体 内 を 循 環 す る 体 液 の 一 種 。 脊 椎 動 物 で は 血 球(赤 板)お. 血 球 ・白 血 球 ・血 小. よ び 血 漿 か ら成 る 。 組 織 に 酸 素 ・栄 養 ・ホ ル モ ン ・抗 体 を 供 給 し、 二. 酸 化 炭 素 そ の 他 の代 謝 生 成 物 を 運 び去 る 。 白血 球 は食 作 用 や 抗 体 産 生 に よ り、 生 体 防 御 の 役 を す る 。 血(ち)。 一. 『広 辞 苑 』(s .v.け つ 一え き 【血 液 】)(下 線 筆 者). こ の よ う に 、 「血 液 」 と は 「動 物 体 内 を 循 環 す る 体 液 の 一 種 」 で は あ る が 、 我 々 の 生 命 活 動 を 維 持 す る た め に は 、 肉 体 の 「内 部 」 を 流 れ る 必 要 が あ る の は 言 う ま で も な い 。 裏 を 返 せ ば 、 肉 体 の 「外 部 」 に 大 量 に 流 れ 出 て し ま う と、 我 々 の 生 命 活 動 は 保 ち 得 な い の で あ る 。 こ こ に 、 次 の 働 一圓 に 収 束 す る 人 間 と し て の 認 識 が 存 在 す る こ とに な る。. 吻. 生 命 は 人 間 の 「内 容 物(=液. 体)」 で あ る 。. ⑯. 血 液 は 人 間 の 「内 容 物(=液. 体)」 で あ る 。. qの 「生 命 」 と 「液 体 」 を 結 び 付 け る 共 通 項 は 「血 液 」 で あ る. そ し て 、 こ れ ら は 同 時 に 、 上 出(7)の 疑 問 を 解 き 明 か す 決 め 手 と も な る 。 な ぜ な ら、 「魂 」 と は 「生 命 」 を 意 味 す る が 、 人 間 の 生 命 を 維 持 す る 上 で 必 要 不 可 欠 な も の が 「血 液 」 と い う 「液 体 」 で あ り、 体 内 の 血 液 を 失 っ て し ま う と 人 間 は 死 に 至 っ て し ま う か ら で あ る 。 こ う し た 「生 命 」 と 「血 液 」 と の 概 念 的 並 行 性 を 以 下(15a-b) と して ま とめ る。. ㈲a.「. 血 液 」 は 人 体 の 内 容 物 で あ り 、 容 器 で あ る 「肉 体 」 の 外 部 に 流 れ 出 て し ま う と死 に至 る。. b.「 生 命 」 は 人 体 の 内 容 物 で あ り、 容 器 で あ る 「肉 体 」 の 外 部 に 出 て し ま う と死 に至 る 。. 「血 液 」 を媒 介 項 と して 「生 命 」 が 「 液 体 」 と結 びつ く概 念 は、 次 の ⑯ の 実例 に も 観 察 さ れ る。. 一200一. (49).

(8) 図 地 分 化 と 容 器 の メ タ フ ァー に 見 る 「 自 己 」 の 概 念 研 究(そ の2)祠. 森. q6)Theglacierknocksinthecupboard, Thedesertsighsinthebed, Andthecrackinthetea-cupopens Alanetothelandofthedead. (氷 河 は 食 器 棚 に 突 き 当 た る 、 砂 漠 は ベ ッ ドで た め 息 を つ く 、 そ して テ ィ ー カ ップの 亀 裂 は 死 者 の 国 へ の 路 を 開 く 。) -Lako丘andTurner(1989:20)(日. 本 語 訳. 大 堀(訳)(1994:26)(下. 線 筆 者)). 「言 語 形 態 が 変 わ っ て も 同 じ 『人 間 と い う 生 物 』 で あ る 」 と い う 経 験 か ら 、 こ の よ う な 認 知 メ カ ニ ズ ム が 成 り立 っ て い る こ と は 次 の(17a-b)か. ㈲a.あ. ら も立 証 さ れ る 。. の戦 争 で、 多 くの血 が 流 され た。. b.あ の 戦 争 で 、 多 くの 生 命 が 失 わ れ た 。. し た が っ て 、 次 の(捌 に 示 す よ う に 、 「生 命 」 と い う 「流 動 性 内 容 物 」 が 干 か ら び て し ま う と、 必 然 的 に 生 命 活 動 が 絶 た れ る こ とが 意 味 さ れ る の で あ る 。. (捌 生 命 が 枯 れ果 て る。. しか し な が ら、 血 液 の 持 つ 特 性 は な に も 「液 体 」 の よ う な 「流 動 性 」 の もの に 限 ら れ る だ け で は な く、 次 例 働 に 示 さ れ る よ う な 「温 か み 」、 つ ま り流 れ る こ と に よ っ て 生 み 出 さ れ る 「熱;温. 度 」 と い う特 性 も備 え て い る こ とが 観 察 さ れ る 。. (1② 一 が 通 う 事 務 的 で は な く、 暖 か み が あ る さ ま 。 「血 の 通 っ た 処 置 」 一. (50). 一199一. 「広 辞 苑 』(s .v.ち. 【血 】)(下 線 筆 者).

(9) 文学 ・芸 術 ・文 化/第23巻. 第1号/2011.9. そ の 結 果 、 血 液 の 流 れ に よ っ て 生 じ る 「熱;温 度 」 を 媒 介 項 と し て 「生 命 」 と 「炎 」 とが 結 び つ く こ と に な る 。 つ ま り、 次 の(20a-b)の. ②◎a.命. 背後 には、. の灯 火 を燃 やす 。. b.命 が 燃 え 尽 きた 。. 下 記 ⑳ の メ タ フ ァ ー が 機 能 し て い る とい え る 。. ⑳. 「生 命 」 は. 「炎 」 で あ る([英. 語]LIFEISAFLAME/[ス. ペ イ ン 語]LAVIDAES. LALLAMA). 詰 ま る と こ ろ 、 「生 命 」 と い う抽 象 物 が 概 念 化 さ れ る に は 次 の(22a-b)に. ま とめ ら. れ る 認 知 活 動 が 概 念 的 に 関 与 し て い る と考 え られ る 。. ⑳a.人. 間 は 生 命 活 動 を 表 す に し て も 「液 体 の 流 動 性 」 及 び 人 体 の 中 で の 「血 液 の 保 持 性 」 に 焦 点 が 当 た る 場 合 は 「容 器 一 内 容 物 」 の 認 識 を 基 盤 に し た 「生 命 は 液 体 で あ る 」 と い う メ タ フ ァ ー が 機 能 す る3。. b.他 方 、 血 液 の 流 れ に よ っ て 生 じ る 「熱;温. 度 」 に 焦 点 が 当 た る場 合 は. 「生 命 は 炎 で あ る 」 と い う メ タ フ ァ ー が 機 能 す る 。. 以 上 の 理 由 か ら 、 人 間 は 自 ら の 肉 体 を 「生 命 と い う 魂 を 入 れ る 容 器 」 と し て 認 識 し、 内 容 物 で あ る 「魂 」 が 容 器 で あ る 「肉 体 」 か ら外 に 出 る こ と は 「死 」 と し て 捉 え て い る こ とが 導 き 出 さ れ る の で あ る 。. 3.3.2.2.「. 精 神 」 と. 「肉 体 」 と の 関 係. 他 方 、 「心 」 に 対 応 す る も う 一 つ の も の と し て 、 下 記(1)に 「精 神([英. 語]spirit/[ス. ペ イ ン 語]espiritu)」. 一198一. 見 られ る よ う に、. な る ものが 存 在 す る。. (51).

(10) 図 地 分 化 と 容 器 の メ タ フ ァー に 見 る 「 自 己 」 の 概 念 研 究(そ の2)祠. (1)ス. 森. ピ リチ ュ ア ル や ス ピ リチ ュ ア リス トな ど の 言 葉 は 、 ス ピ リ ッ ト(∫ヵ痂)か ら き て い る 。 「精 神 」 と か 「霊 」 を 意 味 す る 言 葉 だ 。 そ して こ の 語 は 、 ラ テ ン 語 の ス ピ リ ト ス(∫ 勿7z'〃∫)が. 語 源 で、 こ れ は. 「微 風 、 呼 吸 、 生 命 、 魂 、. 精 神 」 と い う 意 味 を 持 ち 、 さ ら に さ か の ぼ る と、 ス ピ ラ ー レ(漉77076=息 を 吐 く、 呼 吸 す る)、 さ ら に 遡 れ ば 印 欧 祖 語 ス ペ イ ス(※s卿3=吹 な る 。 元 来 は 、 息 を 吐 く時 の 擬 声 音 だ っ た 。 …. く)に. いず れ にせ よ、 精 神 や 霊 を. 表 す ス ピ リ ッ トは 、 人 間 の 呼 吸 、 「い き 」 と 関 係 が あ る 。 フ ラ ン ス 語 の エ ス プ リ(6∫ 卿 の な ど も そ う だ 。 そ して 、 こ の こ と は 、 「霊 」 や 「霊 魂 」 を 表 す 語 の 共 通 点 で も あ る 。 「霊 魂 」 は そ れ だ け が 独 立 し て い た の で は な く、 「肉 体 」 との 対 比 で 考 え られ て き た とい う こ との 、 一 つ の 証 で も あ る だ ろ う 。 一 渡 部(2009:184. -185)(一. 部 省 略 ・下 線 筆 者). こ の 「精 神 」 は 、 次 の(2)に も示 さ れ て い る よ う に 、. (2)さ. て 、 こ の よ う に し て 精 神 ・神 ・物 体 とい う三 つ の 実 体 の 存 在 が 証 明 さ れ た の ち、 心 身 の実 在 的 区別 が 確 定 され る。 そ の 場 合 、 論 拠 とな るの は、 私 が 明 晰 ・判 明 に 理 解 す る もの は す べ て 、 そ の 通 り に 神 に よ っ て 作 られ て い る の だ か ら、 「あ る 一 つ の もの が 他 の もの と異 な る こ とが 私 に 確 実 で あ る た め に は 、 私 が そ の 一 つ の もの を 他 の も の と離 れ て 、 明 晰 ・判 明 に 理 解 し う る と い う こ とで 十 分 だ 」 と い う こ とで あ る 。 精 神 は 思 考 す る こ と に よ っ て の み 、 す な わ ち 、 身 体 な し に も存 在 し う る 。 こ れ に 対 し、 物 体(身. 体)は. 精 神 とま っ た く. か か わ り な し に 、 延 長 す る こ と に よ っ て 存 在 す る 。 つ ま り、 精 神 は 全 く非 延. 長 的 な思 惟 を本 性 とす る 実 体 で あ り、 物 体 は ま っ た く霊 的 な性 質 を もた な い 、 た だ 延 長 だ け を 本 性 とす る 実 体 とい う こ と に な る 。 こ の よ う な 心 身 分 離. 的 な二 元 論 的 立 場 に たつ と き、 精 神 の 純 粋 性 と独 立 性 が 明 らか に され 、 そ れ に よっ て霊 魂 の 不 滅 を論 証 す る ため の 最 初 の 前 提 条 件 が確 保 され る。 一 伊 藤(1967:105)(下. 「身 体(す. (52). な わ ち 肉 体)な. 線 筆 者). し に も存 在 し う る 」 も の だ と考 え られ て い る。 ま た、. 一197一.

(11) 文学 ・芸 術 ・文 化/第23巻. 第1号/2011.9. 「魂 」 は 単 に 「生 命 」 と も言 え る べ き も の で あ り、 そ こ に 意 思 性 は 存 在 し な い が 、 「精 神 」 は そ れ 自体 が 意 思 を 持 つ も の だ と 言 え る 。 つ ま り 、 以 下(3)の 「創 世 記 」 第2章. 第7節. 『旧 約 聖 書 』. の記 述 で は、. (3)ThentheLORDGodtooksomesoilfromthegroundandformedaman outofit;hebreathedlife-givingbreathintohisnostrilsandthemanbegan tolive. (そ れ か ら、 主 な る 神 は 大 地 か ら 土 を 取 り、 そ れ で 人 を 形 作 っ た 。 そ して 、 神 が そ の 鼻 孔 の 中 に 命 を 与 え る 息 を 吹 き込 む と、 人 は 生 き始 め た 。) 一. 日本 聖 書 協 会(編)(2008:(旧)3)(日. 本 語 訳 筆 者). 神 は 単 に 「生 命 」 を 授 け た の で は な く、 自 らの 考 え や 感 情 を 持 っ て 動 く こ とが で き る 「意 志 」 を 授 け た の だ と考 え られ る 。 故 に 、 我 々 人 間 は 、 各 々 の 意 思 に 従 っ て 行 動 す る こ とが 可 能 な の で あ る 。 以 下(4)に 、 「魂([英 /[ス. 語]soul/[ス. ペ イ ン語]espiritu)」. (4)a,「. 魂([英. ペ イ ン語]alma)」. と 「精 神([英. 語]spirit. と の 違 い を ま と め る4。. 語]soul/[ス. ペ イ ン語]alma)」:. 「生 命 」 の こ と で あ り、 意 思 を 持 た な い 。 内 容 物 で あ る 「魂 」 が 容 器 で あ る 「肉 体 」 か ら外 に 出 る こ と は 「死 」 を 意 味 す る 。 b.「精 神([英. 語]spirit/[ス. ペ イ ン語]espiritu)」:. そ れ 自体 が 意 思 を 持 つ も の 。 内 容 物 で あ る 「精 神 」 が 容 器 で あ る 「肉 体 」 か ら外 に 出 て も存 在 し得 る 。. ち な み に 、1970年. 代 に メ ガ ・ ヒ ッ ト と な っ た イ ー グ ル ス(Eagles)の. カ リ フ ォ ル ニ ア(HotelCalifornia)」. 「ホ テ ル ・. と い う 曲 の 歌 詞 に は 次 の(5)の 一 節 が 登 場 す. る。. (5)"Wehaven'thadthat画7露heresince1969". 一196一. (53).

(12) 図 地 分 化 と 容 器 の メ タ フ ァー に 見 る 「 自 己 」 の 概 念 研 究(そ の2)祠. (私 た ち は1969年. 以 来 、 あ の 蒸 留 酒/精. 森. 神 を 失 く し て い ま す). 一`HotelCalifornia'(イ. タ リ ッ ク ・ 日 本 語 訳 筆 者). こ れ は 、 ワ イ ン を 注 文 し た 「私 」 に ホ テ ル の 給 仕 長 が 「1969年 以 来 と い う も の 、 こ こ で は そ の ス ピ リ ッ トを 切 ら し て お り ま して … 」 と答 え た 場 面 で あ る 。 こ こ で の spiritは ま さ に 「蒸 留 酒 」 と 「精 神 」 と の 掛 け 言 葉 と な っ て お り、 上 記(5)の 一 節 は 当 時 の カ リ フ ォ ル ニ ア の 、 あ る い は ア メ リ カ の 、 ひ い て は ロ ッ ク/ポ. ッ プ ・ミ ュ ー. ジ ック の ど う しよ う もない 閉鎖 状 態 を暗 に示 そ う と した強 烈 な メ ッセ ー ジ だ っ た と 考 え られ る ので あ る。 古 くか ら洋 の 東 西 を 問 わ ず 、 我 々 人 間 が 普 遍 的 に 持 つ で あ ろ う こ の よ う な 考 え 方 に 基 づ け ば 、 「精 神 」 こ そ が 、 「肉 体 」 を 操 っ て い る もの に 他 な ら な い の と言 え る 。 そ の た め 、 精 神 が 肉 体 の 外 に 出 て し ま う と、 意 思 性 を 失 う こ とか ら、 も は や そ の 肉 体 を 制 御 す る こ と は 不 可 能 と な っ て し ま うの で あ る 。 こ の よ う に 、 前 出 §3.2.2.(5a)(以. (6)何. 故 、 「自 己(Self)が. 下 に(6)と し て 再 掲 載)の. 主 体(Subject)の. 疑 問 は、. 外 に 存 在 す る こ と 」 が 「制 御 不. 能 」 を 意 味 す る こ と に な る の か?. 「容 器=肉. 体 」/「 内 容 物=精. 神 」 と し て 捉 え る こ とで 初 め て 解 決 さ れ る と言 え る 。. さ ら に 、 こ の よ う に 考 え れ ば 、 前 出 §3.2.2.(5b)(以. 下 に(7)と し て 再 掲 載). の 疑 問 を も解 決 す る こ とが で き る 。. (7)単. に 「自 己(Self)が. 主 体(Subject)の. を 意 味 す る の で あ れ ば 、 主 体(Subject)が 「真 横(beside)」 besideの. 外 に 存 在 す る こ と 」 が 「制 御 不 能 」 位 置 す る 場 所 は 自 己(Self)の. で な くて も よ い は ず で あ る。 しか しな が ら、 し ば し ば. 類 義 と さ れ るby5を. 用 い てbyoneselfと. 表 現 す る と 、 「我 を 忘 れ て 」. と い う 意 は 生 じ な い 。 こ の よ う に 、 「我 を 忘 れ て 」 を 意 味 す る に は 、 何 故 「漠 然 と し た 近 接 」 を 表 すbyで. は な く 「真 横 」 概 念 を 表 すbesideを. け れ ば な ら な か っ た の か?. (54). 一195一. 用いな.

(13) 文学 ・芸 術 ・文 化/第23巻. 第1号/2011.9. つ ま り、 確 か に 、 内 容 物 で あ る 「精 神 」 が 容 器 で あ る 「肉 体 」 の 外 に 出 て 、 完 全 に 分 離 し て 一 定 の 距 離 を持 っ て し ま っ た 場 合 、spiritが い く らsoulと ど も、 そ れ は`expire'(<ex-=outof、-pire=spirit)(原. 義:死. し ま う 。 日本 語 の 「息 を 引 き取 る 」 が 「仏 陀 が(当 く、 神 が 与 え たspiritも そ のspiritを. は 異 な る とい え. 該 者 の)息. ぬ)と. な って. を引 き取 る」 が 如. 肉 体 か ら完 全 に 離 れ て 一 定 の 距 離 を持 っ て し ま え ば 、 神 に. お 返 しす る 行 為 、 す な わ ち 「死 」 と等 価 に な っ て し ま う の で あ る 。 そ. の た め 、 「我 を 忘 れ て 」 の 意 で あ れ ば 、 精 神 は 肉 体 か ら離 れ て 存 在 す る わ け に は い か ない ので あ る。 こ の 時 、byは. (8)`by'は. 次 の(8)に 見 られ る よ う に 、. 本 来 、 あ る 物 体 が 別 の 物 体 の 側 面 に 対 して 位 置 す る こ と を 示 し た 。. や が て こ の 意 味 を`bythesideof、`byone'sside'等. の 句 表 現 に 譲 り、. 「あ る 物 体 を 中 心 に し て 、 そ れ を と り ま く領 域 内 に あ る 比 較 的 近 距 離 の 位 置 (≒alittleawayfrom)」. を新 た な原 義 とす る に至 った 。. 一 上 野(1995:93)(下. 「比 較 的 近 距 離 の 位 置(≒alittleawayfrom)」. 線 筆 者). を 意 味 す る た め 、 近 く に 存 在 して. い れ ば 、 或 る 程 度 距 離 が 存 在 し て い て も 問 題 は 無 い 。 他 方 、besideは. 、 以 下(9)に. 示 され る よ うに、. (9)こ. の 意 味 変 化 は 類 義 語 の`beside'の. そ れ に類 似 し、両 語 の 中核 的 意 味 の 差. は 単 に 「距 離 」 の 差 に しか す ぎ な い 。 しか し、 こ の 距 離 の 差 が 両 語 の 意 味 変 化 の 相 違 な る 部 分 に 大 き く 関 与 し、 た と え ば 、`beside'の. 原 義 で あ る 「す. ぐ真 横(rightnextto)」. θ3∫46Jef[)。. が 比 較 の 意 を 生 む(Johnisshort∂. 一 上 野(1995:93)(下. 「す ぐ真 横(rightnextto)」. を 原 義 とす る た め 、besideの. 線 筆 者). 場 合 に は二 者 間の 距 離 を. 許 容 し難 い と言 え る 。 こ の よ う な 意 味 の 違 い か ら 、 「肉 体 」 と 「精 神 」 とが 分 離 して い る と捉 え ら れ 兼. 一194一. (55).

(14) 図 地 分 化 と 容 器 の メ タ フ ァー に 見 る 「 自 己 」 の 概 念 研 究(そ の2)祠. ね な いbyよ. り、 「肉 体 」 と 「精 神 」 と が 真 横 に 位 置 す るbesideが. と考 え られ る 。 こ こ で 、besideoneselfの. qO)XbebesideX-selfの. 森. 選 択 され た の だ. 概 念 の 捉 え 方 を 以 下 α0)にま と め る 。. 捉 え 方:. (a)「 容 器 」 で あ る 「肉 体. 〔X-self〕 」 か ら そ の 「内 容 物 」 で あ る 「精 神. 〔X〕」 が 抜 け 出 し 、 そ の 「肉 体 」 の 真 横 に 〔beside〕 並 び 合 っ て 存 在 す る 〔be〕。 (b)本. 来 、 肉 体 を 操 る は ず で あ る 精 神 が 肉 体 と分 離 す る こ とで 、 そ の 制 御 能 力 を 失 っ て い る こ と を 表 す 。 た だ し 、besideは. 「真 横 」 を 意 味 す る こ. とか ら、 肉 体 と精 神 は 完 全 に は 分 離 して い な い6。 (c)「 我 を 忘 れ て 」 の 意 が 生 じ る 。. ま た 、be[feel](like)oneselfやbeoutofonselfに. 関 し て も 、 下 記(1D一 働 に 示 さ. れ る よ う に 、 同 様 に 概 念 化 の プ ロ セ ス を 説 明 す る こ とが 可 能 で あ る 。. ⑳Xbe[feel](like)X-selfの (a)「. 捉 え 方:. 内 容 物 」 で あ る 「精 神 〔X-self〕 」(の 調 子)の. 〔X〕」(の 調 子)が. 「容 器 」 で あ る 「肉 体. よ う に 〔like〕存 在 す る 〔be〕[の よ う に 感 じ る. 〔feel〕]。 (b)本. 来 、 肉 体 と魂 との バ ラ ンス が 保 た れ て お り、 精 神 は 肉 体 を 本 来 の 能 力 通 り制 御 し、 操 る こ とが で き る 。. (c)「 〈人 が 〉 精 神 的[肉. 働XbeoutofX-selfの (a)「 精 神. 体 的]に. 捉 え 方: 〔X〕」 と し て の 自 分 が 、 「容 器 」 で あ る 「肉 体. 外 に 〔out〕存 在 す る (b)本. 本 来 の 調 子 で あ る」 の 意 が 生 じる。. 〔of〕. 〔be〕 。. 来 、 肉 体 を 操 る は ず で あ る 精 神 が 肉 体 と分 離 す る こ とで 、 そ の 制 御 能 力 を失 って い る こ とを表 す 。. (c)「 我 を 忘 れ る 」 の 意 が 生 じ る 。. (56). 〔X-self〕 」の. 一193一.

(15) 文学 ・芸 術 ・文 化/第23巻. さ ら に 、 §2.2.(6)(以. qのaJ磁. 下 に(13)と. 〃zy8θび ∫伽. 第1号/2011.9. し て 再 掲 載)に. 初9砺3〃zo加. つ い て も、. 〃£(NOT轍. …). (私 は 今 朝 、 髭 を 剃 っ て い る 私 自 身 を 傷 つ け た → 私 は 今 朝 、 髭 剃 り 中 に 切 り傷 を 作 っ た) b.凧ggo'o厩. の 加 襯 妙 侃 ゴ4ノ翅oκ78e1"θ8.(NOT...撫.). (私 た ち は 水 の 外 に 出 て 、 私 た ち 自 身 を 乾 か し た → 私 た ち は 水 か ら 出 て 、 体 を 乾 か し た) C.1〃zgO勿9'0伽. ∫加 ρ∫'096'〃2ysθ び ∫0〃Z6競 〃ゴ ∫∫加6∫.. (私 は 私 自 身 の た め に テ ニ ス シ ュ ー ズ を買 う とい う 目 的 で 店 に 行 っ て い る → 私 は テ ニ ス シ ュ ー ズ を 買 う た め に 店 に 行 っ て い る) -Swan(1995:471)(下. 各 々 、 次 の(13'a-c)に. 線 ・日本 語 訳 筆 者). 見 ら れ る よ う に 、 同 様 の 捉 え 方 で 説 明 す る こ とが 可 能 で あ. る。. (13')a.「 精 神 」 と し て の 自 分 が 、 今 朝 、 「容 器 」 で あ る 「肉 体 」 と し て の 自 分 を 操 る こ と で 切 り傷 を作 っ た 。 b.「 精 神 」 と し て の 自 分 が 、 水 の 外 に 出 て 、 「容 器 」 で あ る 「肉 体 」 と して の 自分 を操 る こ と で 乾 か した 。 c.「 精 神 」 と し て の 自 分 が 、 「容 器 」 で あ る 「肉 体 」 と して の 自 分 を 操 る こ と で テ ニ ス シ ュ ー ズ を 買 う た め に 店 に行 っ て い る 。. こ の よ う な 「自 己(Self)」. を 容 器 で あ る 「肉 体 」 と し、 ま た 主 体(Subject)を. 内. 容 物 で あ る 「精 神 」 とす る 捉 え 方 を よ く示 す 例 と し て 、 以 下 側 一㈲ が 挙 げ ら れ る 。. α4)a.Ifeeldeepoo笈. ガゴc'withinmyself. (自 分 の 中 に 深 い 葛 藤 を 覚 え る) 一. 「 英 語 活 用 大 辞 典 』(s. 一192一. .v.1con且ict【. 形 容 詞. ・名 詞+】). (57).

(16) 図 地 分 化 と 容 器 の メ タ フ ァー に 見 る 「 自 己 」 の 概 念 研 究(そ の2)祠. b.「 肉 体 」 と い う 容 器 の 中 に 深 い 葛 藤 が 存 在 す る こ と を. 森. 「精 神 」 が 感 じ て い. る。 ㈲a.Trytogetoutofッo解. ∫6グandtosocializemore.. (自 分 の 殻 か ら 出 て 人 と も っ と つ き あ う よ う に 努 め な さ い) 一. 『英 語 活 用 大 辞 典 』(s .v.oneself【. b.「 肉 体 」 と い う 容 器 の 中 か ら. 前 置 詞+】). 「精 神 」 を 出 す よ う に 努 め る 必 要 が あ る 。. q6)a.drawsboutofhimself (人 を 自 分 の 殻 か ら 引 き だ す) 一. 『 英 語 活 用 大 辞 典 』(s .v.2draw【+前. b.「 肉 体 」 と い う 容 器 の 中 か ら (17)a.Ifelt〃zッ. ∫6グquiteα. 「精 神 」 を 引 き 出 す 。. πo'乃67〃zαπ.. (自 分 が 別 人 に な っ た[ま. る で 生 き 返 っ た よ う な]気 一. b.「 精 神 」 が 容 器 で あ る 自 身 の. E勿oツ. が し た.). 『リ ー ダ ー ス 英 和 辞 典 』(s .v.another、. 〃o〃.). 「肉 体 」 を 全 く 別 人 の も の の よ う に 感 じ た 。. ま た 、 次 の ⑯ に 見 ら れ る 連 語 表 現enjoyoneselfは. (捌enjoyoneself愉{央. 置 詞 】). 、. に 過 す. ツo解 ∫61麗 ∫!. さ あ 大 い に 楽 し く や っ て く だ さ い. He6勿oッ64乃. 珈36グoverhiswhiskey.. 楽 し く ウ イ ス キ ー を 飲 ん だ. 一. 『リ ー ダ ー ス 英 和 辞 典 』(s. .v.enjoy,【. 成 句 】enjoyoneself). 下 記 働 と して捉 え られ や す い と考 え られ る。. (1動. (58). 自分 自 身. 〔oneself〕. を楽 しませ る. 〔enjoy〕 → 愉 快 に 過 す. 一191一.

(17) 文学 ・芸 術 ・文 化/第23巻. しか し な が ら、 動 詞enjoyに. 第1号/2011.9. は 、 以 下 ②◎に示 さ れ る よ う な 「使 役 」 を 表 す 概 念 構 造. は存 在 しな い。. ②◎*XenjoyY:[XCAUSEYTOENJOY]. そ の た め 、 上 記 働 の よ う な 捉 え 方 は で き な い と考 え ら れ る 。 換 言 す れ ば 、enjoyは あ く ま で 単 な る 他 動 詞 と し て 考 え な け れ ば な ら な い と言 え る 。 そ こ で 、 こ こ ま で の 論 を 合 わ せ て 鑑 み れ ば 、XenjoyX-selfと. い う 文 構 造 に お い て 、Xは. 内容物であ る. 「精 神 」、X-selfは 容 器 で あ る 「肉 体 」 で あ る と考 え ら れ る 。 つ ま り、XenjoyX-self は 次 の ⑳ と し て 捉 え られ る 。. ⑳. 「精 神. 〔X〕」 と し て の 自 分 が 、 「容 器 」 で あ る. 「肉 体. 〔X-self〕」 を 楽 し む. 〔enjoy〕 ○. しか し な が ら、 「「肉 体. 〔X-self〕 」 を楽 しむ. 〔enjoy〕」 と い う こ と を 文 字 通 り に 捉 え. る と全 く意 味 を 成 さ な い 文 と な る 。 こ の 問 題 を 解 決 す る 鍵 と な る も の が. 「メ トニ. ミ ー 」 で あ る 。 つ ま り、 「肉 体. 〔X-self〕. 〔X-self〕 」 とい う語 を用 い て 、 そ の 肉体. が 存 在 し て い る 状 況 を 指 示 し て い る の で あ る 。 つ ま り、XenjoyX-selfは. 下記吻 と. して捉 えれ ば よい。. ⑳. 「精 神. 〔X〕」 と し て の 自 分 が 、 「容 器 」 で あ る 「肉 体. 〔X-self〕 」 が 存 在 して. い る 状 況 を 楽 し む 〔enjoy〕。. こ う した捉 え方 の妥 当性 は、 上 記 ⑯ で 観 察 した例 文(以 下 に囲 と して 抜 粋)に 見 る こ とが で きる。. 囲He6勿oッ. θ4乃 珈s6グoverhiswhiskey.. 楽 し く ウ イ ス キ ー を 飲 ん だ. 一. 『リ ー ダ ー ス 英 和 辞 典 』(s. 一190一. .v.enjoy、. 【 成 句 】enjoyoneself). (59).

(18) 図 地 分 化 と 容 器 の メ タ フ ァー に 見 る 「 自 己 」 の 概 念 研 究(そ の2)祠. 森. 以 下 剛 に 見 られ る よ う に 、. 四Thelampiso麗7thetable.  . (その ラ ンプ は食 卓 の真 上 にあ る). &. over2つ. → 真 上 の もの が 真 下 の もの を覆 う よ うな 「円弧 」 の イメ ー ジ. 弄司. XoverYと. の もの が[真 上 一真 下]関 係. 一 上 野.森. 山.磁.李(2。. い う句 構 造 に お い て 、XはYの. 。6、735)(一 部 変 更 鞘). 真 上 に(円. 弧 状 に 覆 う よ う に)存. て い な け れ ば な ら な い 。 そ の た め 、 上 記 ⑯ に お い て も 、himselfはwhiskeyの. 在 し 上を. 覆 う よ う に 存 在 し て い な け れ ば な ら な い こ と に な る 。 しか し な が ら、 ウ イ ス キ ー を 飲 む の に 、 ウ イ ス キ ー の 真 上 を 覆 う よ う に 存 在 す る とい う こ と は 明 らか に 不 自 然 な 行 為/状. 態 で あ る と 言 え る 。 但 し、 こ のhimselfを. 上 記 吻 で 見 た よ う に 「himself. が 存 在 し て い る 状 況 」 と捉 え れ ば 、 次 の ㈲ に 示 さ れ る よ う に 、 全 く問 題 無 く解 釈 さ れ 得 る の で あ る7。. ㈲. 彼 は ウ イ ス キ ー の真 上 を覆 うよ う に存 在 す る、 彼 自 身が 存 在 して い る状 況 を 楽 しん だ。. こ の よ う に 、 連 語 表 現enjoyoneselfは. 、 メ トニ ミ ー 表 現 と解 釈 す る こ と で 説 明 可 能. とな るの で あ る。 さ らに、 以 下 ⑳ が 表 す 事 象 にお い て は、. ⑳SUSANNA. :DidtheyfindLisa?. (リ サ を 見 つ け た の?). VALERIE. :No. .. (い い え 。). SUSANNNA. :1 ...Icouldn'tstanduptoheLAdecentpersonwouldhave donesomething.Shutherup.Goneupstairs.Talkedto. (60). 一189一.

(19) 文学 ・芸 術 ・文 化/第23巻. 第1号/2011.9. Daisy. (わ … わ た し 、 彼 女 に 我 慢 で き な か っ た の 。 ま と も な 人 間 な ら 、 何 か を し て た わ … 。 彼 女 を 黙 ら せ る と か 、2階. に. 行 く と か 、 デ イ ジ ー に 話 し か け る と か …Q) :Melvinsaidyouwentupstairs. VALERIE. .. (メ ル ヴ ィ ン は あ な た が2階 :Toolate. SUSANNNA. へ 行 っ た と 言 っ て い た わ 。). .. (遅 す ぎ た の 。) :Whatwouldyouhavesaidtoher?. VALERIE. (彼 女 に 何 て 言 っ た の?) :Idon'tknow...ThatIwassorry.ThatI'llneverknow. SUSANNNA. whatitwasitwasliketobeher.ButIknowwhatit's liketowannadie.Howithurtstosmile.Howyoutry tofitin,butyoucan'tHowyouhurtyourselfonthe. outside...totrytokillthethingontheinside. (わ か ら な い … 。 ご め ん な さ い か な … 。 彼 女 が ど ん な 気 持 ち で い た か な ん て 、 決 して わ か っ て あ げ られ る もの じゃ な い っ て こ と。 だ け ど 、 死 に た い っ て こ と が ど ん な も の か は わ か る。 笑 顔 で い る こ とが どん な に傷 つ け る か 。 ど ん な に な じ も う と し て も、 で き な い と か 。 ど ん な に 肉 体 の外 側 に面 して い る 自分 自身 を傷 つ け るか …、 肉体 の 内 側 に あ る も の を 殺 そ う とす る た め に … 。) 一. 映 画 α71 (邦 題. ,動'677zψ'64(2003,米,ColumbiaPicturesIndustries) 『17歳 の カ ル テ 』)(用. 例 中 の イ タ リ ッ ク ・ 日 本 語 訳 筆 者).  .  . 皮 膚 の 表 面 を 境 に して 存 在 す る 、 自 身 の 肉 体 の 外 側 に 面 し て い る 自 分 自 身(=自 の 皮 膚)を(リ. ス トカ ッ トを す る な ど して)傷. つ け る こ と(hurtyourselfonthe.    . outside)と. 、 自 身 の 肉 体 の 内 側 に あ る も の(=心. thingontheinside)と. の 傷)を. 消 し 去 る こ と(killthe. が 対 比 され て い る こ とが確 認 され るの で あ る。. 一188一. (61). 身.

(20) 図 地 分 化 と 容 器 の メ タ フ ァー に 見 る 「 自 己 」 の 概 念 研 究(そ の2)祠. ま た 、byoneselfと. い う連 語 表 現 は,次. 森. の 伽 の 記 述 に 示 さ れ る よ う に 、 「同 伴 者 が. い な い 」 と い う 意 味 合 い で の 「ひ と りぼ っ ち で 」 と い うaloneと. 同 様 の 意 と して 用. い ら れ る こ と も あ れ ば 、 「他 者 の 力 に 頼 ら ず 自 分 だ け の 力 で 」 と い う意 味 合 い で の 「独 力 で 」 とい うaloneで. は 通 常 表 さ れ な い 意 と し て も用 い ら れ る8。. ¢7)*byo〃6s61f (1)ひ. と り ぼ っ ち で(alone). (2)独. 力 で(withouthelp),ひ. 一. と り で(c五forONESELF). 『ジ ー ニ ア ス 英 和 大 辞 典 』(s .v.oneself,【. こ の よ う にbyonese任. 成 句 】byo〃6s61f)(下. が 「ひ と りぼ っ ち で 」 と 「 独 力 で 」 とい う2つ. 線 筆 者). の 意 を持 つ に 至 っ. た 点 に 関 して も 「「肉 体 』 と 『精 神 』 と い う対 立 概 念 」 の 観 点 か ら説 明 が 可 能 と な る。 ま ず 、 前 置 詞byの. 圏. 中 核 義 は 、 下 記 ⑳ と考 え ら れ る9。. 或 る 物 体 を 中 心 に して 、 そ れ を と り ま く領 域 内 に 在 る 比 較 的 近 距 離 の 位 置 (≒alittleawayfrom) 一 上 野 ・森 山 ・福 森 ・李(2006:481). た とえ ば、 次 の ㈲ の文 は、. ¢gJohnsat6ツMary. (ジ ョ ン は メ ア リ ー の そ ば に 座 っ た). 「Maryの. 指 示 物 を 中 心 に し て 、 そ れ を と り ま く領 域 内 に 在 る 比 較 的 近 距 離 の 位 置. にJohnの. 指 示 物 が 座 っ た 」 と い う事 象 を 表 し て い る 。 以 下G① に そ の イ メ ー ジ ・ス. キ ー マ を 示 す10。. (62). 一187一.

(21) 文学 ・芸 術 ・文 化/第23巻. :Johnの. つ ま り、 連 語 表 現byoneselfを. 第1号/2011.9. 指示物. Maryの. 指示物. Maryの. 指 示 物 を 中 心 に して 、 そ れ を と りま く領 域. ⑳Theoldwomanlives∂. 用 い た 下 記⑳ の 文 は、. ッ 加7s6が. (そ の 老 婆 は ひ と り ぼ っ ち で 暮 ら し て い る). 「『肉 体 』 と 『精 神 』 とい う対 立 概 念 」 の 観 点 か ら次 の 岡 と して 捉 え られ る 。. 画. その 老 婆 の 「精 神 」 は、 容 器 で あ る 自身 の 「肉体 」 と近 接 関 係 に あ る状 態 で 暮 ら して い る。. こ の 時 、 「精 神 」 と 「肉 体 」 と は 近 接 関 係 に 位 置 し て い る こ と か ら、 本 来 、 両 者 の 問 に は 異 物 が 入 り込 む ス ペ ー ス が 存 在 す る と考 え ら れ る 。 しか し な が ら、 こ の 可 能 性 を 逆 に 働 か せ て 、 異 物 が 入 り込 む ス ペ ー ス が 存 在 す る に も拘 らず 、 そ の 異 物 の 介 入 を 排 除 して 「精 神 」 と 「肉 体 」 とが 近 接 関 係 に あ る こ と を 示 し て い る 。 つ ま り、  . byoneselfに.  .  .  .  .  .  .  . は 「精 神 と 肉 体 と の 問 に 他 者 を 入 れ な い で 近 接 関 係 に あ る 」 と い う 認. 識 が 働 い て い る 。 そ し て 、 こ の 「他 者 を 入 れ な い 」 と い う 認 識 は 、 逆 に 言 え ば 「他 者 で は な く、 自 身 の 肉 体 で 」 と い う 「限 定 」 の 認 識 が 働 く こ と か ら 「ひ と り ぼ っ ち で 」 の 意 と な り、 し ば し ばaloneで. 言 い換 え られ る の で あ る 。. さ ら に 、 「他 者 を 入 れ な い 」 と い う こ と は 、 当 然 の こ と な が ら 「他 者 の 力 に 頼 ら ず 自 分 だ け の 力 で 」 行 わ な け れ ば な ら な い た め 、 そ こ か ら 「独 力 で 」 の 意 が 生 じ る こ とに な る ので あ る。 こ う し た 連 語 表 現byoneselfの. 意 味 拡 張 の メ カニ ズ ム を以 下倒 に ま とめ る。. 一186一. (63).

(22) 図 地 分 化 と 容 器 の メ タ フ ァー に 見 る 「 自 己 」 の 概 念 研 究(そ の2)祠. ⑯. 連 語 表 現byoneselfの a.前 置 詞byは の 「精 神. 森. 意 味 拡 張 の メ カニ ズ ム. 「近 接 」 概 念 表 示 語 で あ る こ と か ら 、XbebyX-selfは 〔X〕」 が 、 容 器 で あ る そ の 「肉 体. 〔X-self〕 」 との近 接 関係. 自身 〔by〕. に 存 在 し て い る 〔be〕 こ と を 表 す 。. b.「精 神. 〔X〕」 と 「肉 体. 〔X-self〕 」 と は 近 接 関 係 に あ る こ と か ら、 本 来 、 両. ↓総 囎 入り  .    .  . c.そ の 可 能 性 を 逆 に 働 か せ て 、 異 物 が 入 り込 む ス ペ ー ス が 存 在 す る に も拘 ら ず 、 そ の 異 物 の 介 入 を 排 除 し て 「精 神 」 と 「肉 体 」 とが 近 接 関 係 に あ る こ と を 示 し て い る 。 つ ま り、XbebyX-selfに  .  .  .  .  .  . は 「「 精神.  . 〔X〕』 と 「肉 体.  . 〔X-self〕 』 との 間 に、 他 者 を入 れ な い で 近 接 関 係. 〔by〕 に 存 在 し て い る. 〔be〕」 と い う 認 識 が 働 い て い る 。. d.「他 者 を 入 れ な い 」 と い う 認 識 は 、 逆 に 言 え ば 「他 者 で は な く、 自 身 の 肉 体 で 」 と い う 「限 定 」 の 認 識 が 働 く こ と か ら 「ひ と りぼ っ ち で 」 の 意 と な り、 し ば し ばaloneで. 言 い換 え られ る。. 例)Theoldwomanlives6ッ. 加7∫6が  .  .  .  .  .  .  .  . (そ の 老 婆 の 「精 神 」 は 、 他 者 を 入 れ な い で 容 器 で あ る 自 身 の 「肉 体 」 と近 接 関 係 に あ る 状 態 で 暮 ら し て い る 。 → そ の 老 婆 は ひ と りぼ っ ち で 暮 ら し て い る). e.「他 者 を 入 れ な い 」 と い う こ と は 、 当 然 の こ と な が ら 「他 者 の 力 に 頼 ら ず 自分 だ け の 力 で 」 行 わ な け れ ば な ら な い た め 、 そ こ か ら 「独 力 で 」 の 意 が 生 じる。 例)Johndidthewholeofthework∂. ツ 砺 〃zε6が  .  .  .  .  .  .  .  . (ジ ョ ンの 「精 神 」 は 、 他 者 を 入 れ な い で 容 器 で あ る 自 身 の 「肉 体 」 と近 接 関 係 にあ る状 態 で その 仕 事 を全 部 や っ た  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  .  . → ジ ョ ン は 他 者 の 力 に頼 らず 自分 だ け の 力 で そ の 仕 事 を全 部 や っ た) → ジ ョ ン は 独 力 で そ の 仕 事 を 全 部 や っ た) (64)-185一.

(23) 文学 ・芸 術 ・文 化/第23巻. な お 、aloneに. 第1号/2011.9. 「独 力 で 」 と い う意 が 派 生 して い な い の は 、 次 の 岡 に 示 さ れ る よ う. に、. G4)aloneadj.,adv. 《勉1200Layamon》 ◆MEα10π(6),α alone(▲. ひ と り で[の],た 〃oπ(6)ム. α10麗. た … だ け(の). ▲OE(e)all(adv.)`ALL(adv.)'+伽. 伽`oNE'):cfDu..41166〃/Gα116初.◇MEθ10麗. を 強 意 の 副 詞 α1(1)で. 強 め た も の.し. α はo%60nly. た が っ て 英 語 の α11α10麗. は語 源. 的 に 冗 語 法 で あ る.… 一. aloneは. 『英 語 語 源 辞 典 』(s. 本 来allalone(全. .v.alone,α. 部 で 一 つ 、 全 く一 つ)に. の,adv.)(下. 線. ・一 部 省 略 筆 者). 遡 及 す る こ とか ら、 「同 伴 者 が 存. 在 す る こ と な く全 く一 人 で → 唯 一 独 りの 状 態 」 の 概 念 を 表 し て い る の で あ り、 そ こ に は 、 連 語 表 現byoneselfが. 「独 力 で 」 と い う 意 に 拡 張 す る き っ か け と な っ た 「他. 者 を入 れ な い 」 とい う認 識 や 「異 物 が 入 り込 む ス ペ ー ス 」 とい っ た もの は 存 在 し な い か ら で あ る 。 以 下 聞 にaloneの. 飼aloneの. 意 味 拡 張 の メ カ ニ ズ ム を ま とめ る 。. 意 味 拡 張 の メ カニ ズ ム. (同 伴 者 が 存 在 す る こ と な く全 く一 人(allalone)で)→. 唯 一 独 りの 状 態 、. 一 人 ぼ っ ちで. しか し な が ら、 こ こ で 気 を つ け な け れ ば な ら な い こ とが あ る 。 例 え ば 下 記(36)に 見 られ る よ う に 、. G⑤IwenttoMadrid. (私 は マ ド リ ッ ド に 行 っ た の で す). 再 帰 代 名 詞oneselfが. 用 い られ て い な い 場 合 、 こ れ ま で の 主 張 通 り に 論 を展 開 す れ. ば 、 主 語 に 位 置 し て い る 名 詞`1'は. 「精 神 」 と して の 自 分(こ. 一184一. こ で は 「私 」)と い. (65).

(24) 図 地 分 化 と 容 器 の メ タ フ ァー に 見 る 「 自 己 」 の 概 念 研 究(そ の2)祠. 森. う こ と に な る 。 しか し な が ら 、(あ た か も 幽 体 離 脱 を し て い る か の よ う に)「 精 神 」 と し て の 自 分 の み が マ ド リ ッ ドに 移 動 す る わ け で は な い 。 既 に 述 べ て き た よ う に 、 「精 神 」 は 通 常 「肉 体 」 と し て の 自分 を 自 由 に 操 る 能 力 を 持 っ て い る わ け だ か ら、  .  . 現 実 世 界 に お い て は 、 「肉 体 」 と して の 自 分 自 体 も移 動 す る こ と に な る 。 こ れ に 対 し、 次 例 勧 の よ う に 、. GのIwenttoMadrid魏. 夕∫雄. (私 は 私 自 身 マ ド リ ッ ド に 行 っ た の で す). 再 帰 代 名 詞oneself(こ. こ で はmyself)が. 用 い ら れ て い る 場 合 、 「精 神 」 に よ っ て. 操 られ る 「肉 体 」 が 明 確 に 言 語 化 さ れ て い る こ とか ら、 そ の 肉 体 の 操 作 性 が 強 調 さ れ る こ と に な る 。 そ の こ と か ら、 「他 で も な い 私 自 身 が … 」 と い っ た 意 味 合 い が 生 じ る と考 え られ る 。 こ の よ う な 考 え 方 は 、 下 記(38)に. 圏. 坂 部 恵[1985]は. 示 さ れ る 哲 学 的 見 解 と も一 致 す る11。. 、 「行 為 す る 」 を 意 味 す る 日 本 語 「ふ る ま う 」 を 、 西 洋 語. と も対 比 さ せ な が ら 、 非 常 に 興 味 深 い こ と を 言 っ て い る 。 「ふ る ま う 」 に 対 応 す る 西 洋 語 は 、"sichverhalten"、"seconduire"、"behaveoneself'な. ど. で あ る 。 こ れ ら は 、 い ず れ も 再 帰 動 詞 だ 。 「行 為 」 を 表 す 動 詞 が 再 帰 動 詞 で あ る とい う こ と は 、 行 為 の 自 己 指 示 性 に つ い て の 覚 識 が 、 言 語 表 現 に 落 と し た 影 の よ う な も の と 考 え ら れ よ う。 だ が 、 も っ と 重 要 な の は 、 再 帰 動 詞 に は 、 特 殊 な 含 み 、 つ ま り 自 己 を 分 裂 さ せ 、 自 己 に 対 して さ な が ら他 者 と して 関 わ ろ う とす る 志 向 が 、 暗 示 さ れ て い る とい う こ とで あ る 。 こ の よ う な 含 み は 、 日本 語 の 「ふ る ま う」 に お い て は 、 よ り 明 白 で あ る 。 そ こ に は 、 「舞 う 」 とい う語 に 示 さ れ る よ う な 「演 劇 性 」 の 契 機 が 含 意 さ れ て い る 。 演 劇 性 の 契 機 と は 、 他 者 に 見 ら れ て い る こ と に 対 す る 感 覚 で あ る 。 つ ま り、 「ふ る ま う」 と は 、 他 者 の 承 認 あ る い は拒 絶 の 眼 差 し の 前 に 演 ず る こ と な の で あ る 。 一 大 澤(1999:ll5)(下. (66). 一183一. 線 筆 者).

(25) 文学 ・芸 術 ・文 化/第23巻. 第1号/2011.9. こ の よ う に 考 え れ ば 、 さ ら な る 問 題 も解 決 す る こ とが 可 能 と な る 。 例 え ば 、 佐 久 間(2009)に. 働. は 、 以 下 働 一働 の よ う な 記 載 が 見 られ る 。. 次 の文 は 大 学 入 試 に 出 題 され た もの だ が 、 は た して英 語 圏 で 通 用 す るの か 、 最 近 は疑 わ しい 。. Mrs.Browntoldherdaughterto(dressherself/dress/getdressed)atonce. 「ブ ラ ウ ン さ ん は 娘 に す. ぐ服 を 着 る よ う に 言 っ た 」. こ の 文 に 対 し て 、dressherself、dress、getdressedの3つ こ と に な っ て い る 。 こ の 中 で 、dressherselfに. 着 せ る=服. が 同意 で 使 え る つ い て は 、 「自 分 自 身 に 服 を. を 着 る 」 と い う 従 来 の 公 式 が 通 用 し な い 。 ネ イ テ ィ ブ ・ス ピ ー. カ ー は こ れ を 「(用事 が 親 の 手 を 借 り ず)自. 力 で 服 を 着 る 」 と解 釈 す る 。 そ. う な る と 日本 語 訳 が 変 わ る の で 、 問 題 自 体 が 成 立 し な い 。 一 佐 久 間(2009:4)(下 圃. そ こ で 、3つ. 線 筆 者). の 英 文 に つ い て 質 問 し た 。 意 味 は い ず れ も も ち ろ ん 「彼 は 川 で. 溺 れ て 死 ん だ 」 の つ も りで あ る 。. ①Hedrownedintheriver. ②Hegotdrownedintheriver. ③Hedrownedhimselfintheriver.. 次 の よ うに返 っ て きた。. Tosaythat"hedrownedhimself'meansthathecommittedsuicide.(ア. メ. リ カ 人 回 答 者) 「③ は. 『彼 は(川. に 身 を 投 げ て)自. 殺 した 』 とい う意 味 だ 」. つ ま り 「自 分 自 身 を 溺 れ さ せ る 」 → 「溺 れ る 」 で は な く、 「自 ら す す ん で. 一182一. (67).

(26) 図 地 分 化 と 容 器 の メ タ フ ァー に 見 る 「 自 己 」 の 概 念 研 究(そ の2)祠. 森. 溺 れ る 」 → 「自 殺 す る 」 と解 釈 さ れ る と言 う。 こ の 傾 向 は と く に ア メ リ カ 英 語 で 顕 著 だ。 一. 佐 久 間(2009:6. -7)(下. 線 筆 者). こ う し た 問 題 に 関 し て も 、 「精 神 」 に よ っ て 操 ら れ る 「肉 体 」 が 明 確 に 言 語 化 さ れ て い る こ と で 、 そ の 肉 体 の 操 作 性 が 強 調 さ れ た こ と に 起 因 す る と考 え られ る 。. 4.ス. ペ イ ン 語 再 帰 代 名 詞si、seの. 捉 え方. ま た言 語(表 現)と い う 「容 器 」 その もの は相 異 な っ てい て も、 そ れ を使 用 す る のは 「 人 間」 とい う 同 じ生 物 で あ り、 自身 の 生 身の 肉体 や 知 覚 器 官 を通 して 繰 り返 し得 た経 験 こそ が 「人 間の 本 質 の産 物 」 に他 な らな い こ とか ら、 そ こ に は 「共 通 の ものの 見 方 」 が 存 在 す る と考 え られ る。 下 記(1)がそ の詳 細 で あ る。. (1) Each such domain [ = a basic domain of experience] whole within our experience that is conceptualized an experiential gestalt. characterize. as what we have called. Such gestalts are experientially basic because they. structured. They represent. is a structured. wholes. coherent. within. organizations. recurrent. human. of our experiences. experiences.. in terms. of. natural dimensions (parts, stages, causes, etc.). Domains of experience that are organized as gestalts in terms of such natural dimensions seem to us to be natural kinds of experience. They are natural in the following sense: These kinds of experiences are a product of Our bodies (perceptual. and motor apparatus,. mental capacities,. emotional makeup, etc.) Our. interactions. with. our. physical. environment. (moving,. manipulating objects, eating, etc.) Our interactions. with other people within our culture (in terms of. social, political, economic, and religious institutions). ( 68 ). — 181 —.

(27) 文学 ・芸 術 ・文 化/第23巻. 第1号/2011.9. Inotherwords,these"natural"kindsofexperienceα76ρ70伽o孟. ∫(ゾ 肋 挽 伽. 〃α伽76.Somemaybeuniversal,whileotherswillvaryfromcultureto culture. (そ の よ う な 各 々 の 領 域[=基. 本 的 領 域 の 経 験]は. 化 さ れ る 全 体 で あ り、 今 ま で 述 べ て き た. 我 々 の 経 験 の 内 部 で構 造. 「経 験 の ゲ シ ュ タ ル ト」 と し て 概. 念 化 さ れ る もの で あ る 。 そ の よ う な ゲ シ ュ タ ル トは 、 繰 り返 さ れ た 人 間 の. 経 験 内部 で 構 造 化 され た全 体 を特 徴 付 け る こ とか ら、 「経 験 的 に基 本 的 な も の 」 で あ る 。 そ れ ら は 、 自 然 な 相(例. え ば 、 部 分 、 段 階 、 因 果 関 係 な ど). の観 点 か ら、 我 々 の経 験 を一 貫 して組 織 化 す る こ と を示 して い る 。 そ の よ う な 自然 な 相 の 観 点 か ら ゲ シ ュ タ ル ト と し て 組 織 化 さ れ る 経 験 の 相 は 我 々 に と っ て 「自 然 な 種 類 の 経 験 」 の よ う に 思 わ れ る 。 そ れ ら は 以 下 の 意 味 に お い て 「自然 」 で あ る:こ. の種 の 経 験 は 以 下 の も. の か ら生 じ る 。 我 々 の 肉 体(知. 覚 的 及 び 運 動 神 経 器 官 、 知 的 能 力 、 感 情 の 気 質 等). 物 理 的 環 境 との相 互 作 用(移 動 、 物 体 の操 作 、 食 行 為 等) (社会 的 、 政 治 的 、 経 済 的 、 そ して宗 教 的 状 況 内 の観 点 か らの)同 一 文 化 内 にお け る他 の人 々 との相 互 作 用 換 言 す れ ば 、 こ れ らの 「自然 な」 種 類 の 経 験 は 「人 間 の 本 質 の産 物 」 なの で あ る。 そ れ らの経 験 の或 る もの は普 遍 的 か も しれ ない 一 方 、 他 の もの は 文 化 に よ っ て 異 な る 場 合 もあ る か も し れ な い 。) 一LakoffandJohnson(1980:117. -118)(下. 線. ・[]内. 表 記. ・ 日 本 語 訳 筆 者). こ う し た 「自 然 な 種 類 の 経 験 」 か ら得 られ る 「共 通 の も の の 見 方 」 が 存 在 す る とい う考 え に 基 づ け ば 、 次 の(2a-f)に. 示 され る よ う に、 ス ペ イ ン語 母 語 話 者 の 無 意 識. 的 意 識 にお い て も同様 の概 念 化 が 成 され 得 る こ とは言 を侯 た ない 。. (2)a.vovleren∫ ◎. ∫ 意 識 を回復 す る. 「「精 神 」 が. 「容 器 」 で あ る. 「肉 体. 〔si〕 」 に. 〔en〕 戻 る. 〔vovler〕 」 イ. メ ー ジ。. 一180一. (69).

(28) 図 地 分 化 と 容 器 の メ タ フ ァー に 見 る 「 自 己 」 の 概 念 研 究(そ の2)祠. b.estaren舘 ◎. 森. 意 識 が は っ き り して い る、 正 気 で あ る. 「「精 神 」 が. 「容 器 」 で あ る. 〔estar〕 →. 「肉 体. 〔si〕 」 に. 〔en〕 存 在. し て い る. 肉 体 と精 神 との バ ラ ンス が 保 た れ て お り、 魂 は 肉 体 を 本 来. の 能 力 通 り制 御 し、 操 る こ とが で き る 」 イ メ ー ジ 。 c.recuperar∫6立 ◎. ち直 る、 回復 す る. 「「精 神 」 が. 「容 器 」 で あ る. 「肉 体. 〔se〕」 を 取 り 戻 す. 〔recuperar〕. 」 イ. メ ー ジ。 d.embeber∫66〃......に ◎. 「「精 神 」 が 〔embeber〕. 「容 器 」 で あ る. 「肉 体. 〔se〕」 を_に. 〔en〕 浸 み 込 ま せ る. 」 イ メー ジ。. e.estarfuerade∫ ◎. 没 頭 す る. ∫ 怒 りに我 を忘 れ る. 「「精 神 」 が して い る. 「容 器 」 で あ る. 〔estar〕 →. 「肉 体. 〔si〕 」 の. 〔de〕 外 に. 〔fuera〕 存 在. 肉 体 を 操 る は ず で あ る 精 神 が 肉 体 と分 離 す る こ と. で、 そ の制 御 能 力 を失 っ てい る」 イ メ ー ジ。 五entrardentrode∫ ◎. ガ. 「「精 神 」 が して い る. 自省 す る. 「容 器 」 で あ る. 〔estar〕 →. 「肉 体. 〔si〕 」 の. 〔de〕 中 に. 〔dentro〕. 存 在. 肉 体 と精 神 と の バ ラ ンス が 保 た れ て お り、 精 神 は. 肉 体 を 本 来 の 能 力 通 り制 御 し、 操 る こ とが で き る 」 イ メ ー ジ 。. 当 然 の こ と な が ら、 以 下(3a-f)に す る 場 合 のse(si)に. (3)a.mirars6自 ◎. ◎. 関 して も 同 様 の 捉 え 方 が 可 能 で あ る 。. 分 を見 る. 「「精 神 」 が. b.acostar∫. 見 られ る よ う に、 主 語 の 指 示 物 と同一 物 を指 示. θ. 「容 器 」 で あ る. 「肉 体. 〔se〕」 を 見 る. 〔mirar〕 」 イ メ ー ジ 。. 身 を横 に す る → 寝 る. 「「精 神 」 が. 「容 器 」 で あ る. 「肉 体. 〔se〕」 を 横 た え る. 〔acostar〕 」 イ. メ ー ジ。 c.sentar∫6自 ◎. (70). 分 を座 らせ る → 座 る. 「「精 神 」 が. 「容 器 」 で あ る. 一179一. 「肉 体. 〔se〕」 を 座 ら せ る. 〔sentar〕 」 イ.

(29) 文学 ・芸 術 ・文 化/第23巻. 第1号/2011.9. メ ー ジ。 d.lavar36(+定 ◎. 体 部 位)体/身. 体 部 位 を洗 う. 「「精 神 」 が 「容 器 」 で あ る 「肉 体. e.poner∫6+定 ◎. 冠 詞+身. 冠 詞+身. に付 け る もの. 〔se〕 」 を洗 う 〔lavar〕 」 イ メ ー ジ。 ∼ を 身 に付 け る. 「「精 神 」 が 「容 器 」 で あ る 「肉 体. 〔se〕 」 に 身 につ け る もの を置 く. 〔poner〕」 イ メ ー ジ 。 fquitar∫6+定 ◎. 冠 詞+身. 「「精 神 」 が. に付 け る もの. ∼ を脱 ぐ/外. 「容 器 」 で あ る 「肉 体. す. 〔se〕 」 か ら 身 に つ け る もの を 取 り去. る 〔quitar〕」 イ メ ー ジ 。. 5.お. わ りに. 現 在 な さ れ て い る 「大 学 改 革 」 や 「FD」 と は 新 自 由 主 義 の 思 想 の 下 に な さ れ て い る 改 革 で あ る 。 そ れ が 故 に 、 「大 学 改 革 」 や 「FD」 は 学 生 、 教 員 、 学 校 職 員 各 々 に と って 達 成 す る こ とが 極 め て 不 可 能 に近 い 目標 を掲 げ て い る と しか 捉 え られ な い 。 教 員 の 能 力 の 向 上 と は 、 如 何 な る 政 治 体 制 、 国 家 体 制 で あ ろ う と も教 壇 に 立 つ 者 に と っ て は 不 可 欠 な 要 因 だ と筆 者 は 考 え る 。 しか し な が ら、 こ の 「改 革 」 は 教 員 が 自 身 の 能 力 向 上 の モ チ ベ ー シ ョ ン さ え 奪 っ て し ま う も の で は な い か と危 惧 さ れ る。 こ こか らはそ の理 由 を述 べ る。 言 語 は 文 化 の 基 底 に 存 在 す る もの で あ る 以 上 、 外 国 語 教 育 と は 文 化 教 育 の 一 環 で あ る と の 認 識 か ら本 論 を 展 開 し て き た 。 つ ま り、 外 国 語 を 習 得 す る に は 単 な る 丸 暗 記 で は な く、 当 該 言 語 が 内 属 し て い る 文 化 そ の も の か ら理 解 し な け れ ば な ら な い 、 と考 え る 。 そ し て 、 こ の よ う な 外 国 文 化 を 深 く知 る こ とか ら な さ れ る 授 業 と は 、 学 生 の モ チ ベ ー シ ョ ン だ け で は な く、 知 力 の 向 上 に も必 ず 貢 献 で き る と信 ず る もの で あ る。 に も拘 らず 、 我 が 国 の 教 育 の 現 状 は ど うか 。 名 ば か り の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 中 心 の 授 業 、 単 な る 運 営 に しか 過 ぎ な い 教 育 方 法 の 重 視 、 そ うい っ た 授 業 で 利 用 す る た め に ア ル フ ァベ ッ ト圏 の 学 生 が 使 う 英 語 テ キ ス トを 「世 界 標 準 」 と し て 日本 の 教 育 現 場 へ そ の ま ま 持 ち 込 む 拝 米 主 義 … 。 こ の よ. 一178一. (71).

(30) 図 地 分 化 と 容 器 の メ タ フ ァー に 見 る 「 自 己 」 の 概 念 研 究(そ の2)祠. 森. うな潮 流 が 主 流 に な っ た今 や 、 まず 指 導 内 容 にお け る レヴ ェル の 地 盤 沈 下 が 生 じて しま っ た。 古 事 記 ・日本 書 紀 とい う古 代 文 化 に根 づ き、 茶 道 ・華 道 ・能 ・狂 言 な ど 現 代 に も通 用 す る古 典 文 化 ・世 界 観 を尊 び な が ら、 近 代 技 術 にお い て も高 度 な レ ヴ ェ ル を も誇 る ア ジ ア の知 と文 化 の 牽 引 国、 日本 は どこ にい っ て しま っ たの か 。 か つ て は ロ ック、 ホ ッブス 、J・S・ ミル な ど思 想 書 の 輪 読 が 主 で あ っ た大 学 の 英 語 の 授 業 風 景 は なぜ ゆ え に 置 き去 られ て し ま った の か 。 「こ こか らい ち ば ん近 い レス ト ラ ンは どこ です か 」 とい っ た皮 相 浅 薄 ・軽 桃 浮 薄 な英 語 だ けが 教 授 され 、 そ れ を具 現 化 す る だ けの(そ れ もそ の 実 行 に一 切 の 苦 痛 を感 じな い)語 学 教 員 が 求 め られ 、 結 果 、 研 究 の意 義 さ え も認 識 で きな い よ うな資 質 しか 持 た ない 日本 人 教 員 の 知 力 崩 壊 を生 じさせ た。 ま さに 日本 の ア カ デ ミズ ム の崩 壊 で あ る。 こ れ に付 随 して 、 「ネ イ テ ィ ブ教 員 」 とい う名 目で 日本 語 もま ま な らない 大 量 の外 国 人 語 学 教 員 を学 位 審 査 ど ころ か 業 績 審 査 さえ も厳 格 に行 な う こ と な く非 常 勤 ・専 任 教 員 と して 雇 用 し、 なぜ か お しなべ て 日本 人 語 学 教 員 よ り も高 い 給 与 を支 払 う、 とい う事 態 も生 じてい る。 さ らに は、 日本 語 もま ま な らな い彼 らの た め に 日本 人 語 学 教 員 の 一 部 は西 洋 コ ンプ レ ックス 交 じ りに学 校 事 務 を ご丁 寧 に手 取 り足 取 り指 導 、 代 行 し、 余 計 に 自身 の 研 究 や 教 育 に携 わ る時 間的 資 源 を浪 費 ・犠 牲 にす る(も し くはそ れ に さ え も気 づ くこ とな く漫 然 と 日々 を過 ごす)、 とい う事 態 も生 じて い る。 この よ うに 雇用 され た外 国人 語 学 教 員 た ち の多 くは高 い 給 料 を も らう一 方 で 、 高 度 な内 容 を有 す る研 究 や 著 書 どこ ろか 論 文 一 本 さ え書 くこ と もな く、 教 育 に関 して も皮 相 浅 薄 ・軽 桃 浮 薄 な もの しか 提 供 す る能 力 を持 たず 、 ま た、 そ れ を向 上 させ る意 欲 もな く、 巨 額 の 給 料 を研 究 の ため に利 用 す る こ と もな く、 そ れ を使 っ て た だ不 必 要 に大 きな邸 宅 を 自 国や 日本 に購 入 した り、 不 必 要 に大 きな車 を購 入 した りす るた め に利 用 して い るの で あ る。 エ ッセ イ ・レヴ ェ ルの もの を 「論 文 」 と称 して生 き残 りを 図 る行 為 も学 問 研 究 を 冒涜 す る所 業 に他 な らな い。 この よ うな外 国人 語 学 教 員 を雇 用 す る一 方 で 、 高 度 な教 育 を受 け、 研 究 業 績 も確 固 と して有 す る若 く優 秀 な 日本 人 の 研 究 者 予 備 軍 一 彼 らの 多 くは博 士 号 保 持 者 一 は大 量 に路 頭 に迷 う、 とい う悲 劇 的 な事 態 も生 じて い る。 機 会 さ え与 えれ ば、 高 度 な研 究 ・高 度 な教 育 が 可 能 な彼 らを排 除 し、 学 士 の 学 位 さ えあ や しい 外 国人 を雇 用 す る こ とに よ り、 結 果 的 に よ りい っ そ う大 学 教 員 の 知 的 水 準 を下 げ る とい う悪 影 響. (72). 一177一.

参照

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