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バイポーラ膜電気透析装置による副生塩のリサイクルに関する研究

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(1)

【 論

文 】

バイポーラ膜電気透析装置による副生塩のリサイクルに関する研究

佳 星 * ・ 重 松 幹 二 * ・ 為,田 一 雄 * *

佳 江 *** ・ 樋 口 壯太郎 ****

【要 旨】 浸出水処理施設に脱塩処理を組み込む施設が増加している。脱塩処理を行うと,脱塩水とと もに濃縮液や濃縮液を蒸発固化した乾燥塩が生成される (副生塩)。副生塩は近年,一部で凍結防止剤 や電気分解により NaClO を生成させ,下水道終末処理場で消毒剤としてリサイクルされる例も出現し ている。しかし凍結防止剤を必要としない地域や近隣に消毒剤を使用する施設がない地域も多い。今回, リサイクル方法の選択肢の一つとしてバイポーラ膜電気透析装置 (BPED) を用いて,酸とアルカリを 生成し,中和剤等として使用することを想定した開発研究を行なった。BPED は現在,有機酸塩から 有機酸とアルカリを,無機塩から酸とアルカリを製造する装置として,食品,医薬分野等で使用されて いる。本研究では副生塩の発生源別 (一般廃棄物浸出水,産業廃棄物浸出水),排出形態別 (濃縮液, 乾燥塩) に基礎的研究を行い,塩酸(HCl) 2.82〜4.23 mol/L,水酸化ナトリウム(NaOH) 1.43〜3.04 mol/L を生成することができた。 キーワード:副生塩,リサイクル,バイポーラ膜電気透析,エコ酸,エコアルカリ

1.研究の背景と目的

国土が狭く最終処分場の用地確保が困難なわが国にお いては,ごみの減容化に最も効果の高い焼却をごみ処理 の基本としてきた。このため一般廃棄物最終処分場にお いては埋立ごみの 80.1 % が焼却残渣で占められるよう になった1)。しかし焼却残渣には高濃度の塩分を含有し, 浸出水中の Cl−は 1.50 % (0.432 mol/L) 程度にまで達 している2)。このため浸出水処理水の放流先の条件等に よっては脱塩処理工程を組み込むところが増加してくる。 浸出水の脱塩処理を行うと,脱塩水とともに濃縮液が生 成される。濃縮液は現時点で適正処理方法がなく,乾燥 固化させてフレコン等に充填され,処分場に保管するか, 塩類規制のない海面処分場等に委託処分されている (以 降,脱塩処理に伴い発生した濃縮液や乾燥塩を総称して 副生塩と称する)。近年,乾燥塩は一部で道路凍結防止 剤3)として使用されたり,松山市においては濃縮液を無 隔膜電気分解装置により次亜塩素酸ナトリウム(NaClO) を生成させ,同市の下水道終末処理場で消毒剤としてリ サイクルされている4)。しかし副生塩にはナトリウム (Na) に加えカリウム(K) が多く含まれるため電気分 解にかけた場合,NaClO の他,次亜塩素酸カリウム (KClO) が生成され,NaClO と KClO の混合体となる。 このため,純粋の NaClO ではないことから,本稿では 副生塩から生成した NaClO と KClO の混合体をエコ次 亜と称する。 道路凍結防止剤は使用が冬季に限定され,使用地域も 寒冷地に限定されること,またエコ次亜は大量に消費す る下水道終末処理場が近隣に存在する場合には適してい るが,副生塩発生量が少ない場合は需給バランスがとれ ないことから経済的に成立しないケースが多い5)。副生 塩は日本全国で発生するため,発生地域の状況に応じた リサイクル用途の拡大が必要である。そこでリサイクル 用 途 の 選 択 肢 と し て バ イ ポ ー ラ 膜 電 気 透 析 装 置 (Bipolar Electrodialysis, 以下 BPED) を用いて,塩酸 (HCl),水酸化ナトリウム(NaOH) を生成し,中和剤等 として使用することを想定した開発研究を行なった。こ こでエコ次亜と同様に副生塩中には K,硫黄(S) を含 むため,生成した酸は HCl と硫酸(H2SO4) の混合体, アルカリは NaOH と水酸化カリウム(KOH) の混合体 原稿受付 2020. 7. 31 原稿受理 2021. 2. 10 * 福岡大学大学院 工学研究科 エネルギー・環境システム工 学専攻 ** 福岡大学大学院 工学研究科 資源循環・資源工学専攻 *** (株)高田工業所 技術本部 エンジニアリング部 **** 福岡大学 研究推進部 連絡先:〒 808-0135 北九州市若松区ひびきの 2-1 産学連携センター 3 階 福岡大学大学院 工学研究科 エネルギー・環境システム工学専攻 劉 佳星 E-mail : [email protected]

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となる。このことから本稿では,それぞれエコ酸,エコ アルカリと称する。

2.研究方法

2. 1 実験装置 実験に使用した BPED は (株)アストム アシライザー EX3B を用いた6)。表 1 にアシライザー EX3B の仕様を, 図 1 にバイポーラ膜の原理を示した。バイポーラ膜とは アニオン交換膜とカチオン交換膜を張り合わせた構造を もつイオン交換膜である。この膜の両側に電圧を 0.830 V 以 上 加 え る と,膜 内 の 水 が 酸 (H+) と ア ル カ リ (OH−) に電解される7)。BPED の電圧条件は,装置に 2.00 V,アニオン膜とカチオン膜にそれぞれ 0.500 V と した (このときの反応は H2O → H++OH−)。図 2 に BPED 概要を示した。図 2 に示すようにバイポーラ膜, 図 1 バイポーラ膜の原理 表 1 アシライザー BPED 卓上型の仕様6) 型 式 アシライザー EX3B 機 能 バイポーラ膜電気透析 表 示 電流,電圧,塩液・酸液・アルカリ液電気伝導度,時間,積算電流 有効膜面積 550 cm2 通電面積 55.0 cm2/セル 通電条件 定電圧 (4 パターン選択可)・定電流 膜 対 数 10 終了設定範囲 電流:0.000〜6.00 Amp 電気伝導度 脱塩液:0.000〜200 mS/cm 酸液・アルカリ液:0.000〜500 mS/cm 使用可能上限温度 40.0 ℃ 図 2 バイポーラ膜電気透析法装置概要

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アニオン交換膜,カチオン交換膜に塩水等 (NaCl 等) を供給することにより,矢印のようなイオンの移動が起 こり,電解により生じた陽イオンとアニオン交換膜を透 過した陰イオン(Cl−) が結合して酸 (HCl) を生成し, 酸槽に回収される (このときの反応は H++Cl→ HCl)。 一方,電解により生じた陰イオン(OH−) とカチオン交 換膜を透過した陽イオン(Na+) は結合してアルカリ (NaOH) を生成し,アルカリ槽に回収される (このと きの反応は OH−+Na+→ NaOH)。 電解反応後の脱塩水は塩水槽にもどる。実験開始時に イオン濃度が低い場合,イオンの移動に支障を来たすた め,稼働促進のため,実験開始前にアルカリ槽と酸槽に, 各々 1.00 mol/L の NaOH および HCl 500 mL を注入し, 電極槽に 1.00 mol/L の NaOH 500 mL を注入した。エ コ酸およびエコアルカリの濃度は,それぞれ,Cl−およ び Na+の実測値をもとに,HCl および NaOH に換算し て求めた。アルカリ槽と酸槽で回収したエコアルカリと エコ酸には稼働促進用の NaOH と HCl が入っているた め,各槽にあらかじめ注入した HCl と NaOH 量を差し 引き,実験により生成したエコ酸とエコアルカリの生成 量とした。BPED の受入条件は,温度 0.000〜40.0 ℃, pH 0.000〜11.0,多価イオン総和 2.50×10−5mol/L 以下 とした6)。また,油分,イオン性高分子 (高分子凝集剤, 錯塩物質等),界面活性剤等のイオン交換汚染物質等は, 除去する必要がある。図 3 に実験に用いた BPED の写 真と概要図を示した。 2. 2 前処理 BPED を稼動させるには,膜の閉塞要因となる Ca2+, Mg2+等の多価イオンを総和で 2.50×10−5mol/L 以下に する必要がある6)。今回,キレート吸着法 (SV[1/h]= 10 で通液) により,溶液中の Ca2+, Mg2+の除去を行 なった。キレート剤はミヨシ油脂(株)の金属吸着用キ レート樹脂エポラス MX-2 (Na 型)8) (以降,キレート 樹脂と呼称する) を用いた。樹脂 1.00 L あたりの吸着 量は 44.0 g であった。 2. 3 実験供試試料 実験は市販塩と下記 4 種類の副生塩,計 5 種類を用い て実施した。組成を表 2 に示す。 ① 市販塩 (通常販売されている食塩) ② 産業廃棄物最終処分場浸出水の脱塩処理 (電気透析 図 3 実験装置写真および概要図 表 2 各試料の組成分析結果 分析 項目 市販塩 産廃浸出水 乾燥塩 産廃浸出水濃縮液 一廃浸出水濃縮液 重曹飛灰 分析方法 (wt%) (wt%) (wt%) (wt%) (wt%) Na 37.8 36.7 44.3 30.2 36.9 JIS K 0400-48-20 K 0.148 3.12 4.62 1.71 3.56 JIS K 0400-49-20 Ca 3.60×10−2 6.60×10−2 7.00×10−3 微量 9.00×10−2 フレーム原子吸光光度法 Mg 0.225 0.444 0.598 微量 0.980 フレーム原子吸光光度法 Cl 54.2 47.5 62.5 58.1 57.7 水抽出 − イオンクロマトグラフ法 SO4 0.000 10.1 1.90 0.430 2.76 水抽出 − イオンクロマトグラフ法

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膜方式) に伴い排出される乾燥塩:燃え殻,ばいじ ん,廃石膏ボード,無機汚泥等を埋立処分しており, 電気透析膜方式により脱塩処理を行なっている (以 降,産廃浸出水乾燥塩) ③ ②の乾燥前の濃縮液 (以降,産廃浸出水濃縮液) ④ 一般廃棄物最終処分場浸出水の脱塩処理 (電気透析 膜方式) に伴い排出される濃縮液 (以降,一廃浸出 水濃縮液) ⑤ 一般廃棄物焼却施設重曹飛灰:一般廃棄物焼却施設 で 2 段バグフィルター方式を採用し排ガス処理脱塩 剤に炭酸水素ナトリウム NaHCO3(重曹) を用い, 後段のバグフィルターで回収した飛灰 (以降,重曹 飛灰)

3.結果および考察

3. 1 BPED へ供給する最適塩水濃度の確認 市販塩を用いて BPED への最適供給塩水濃度の確認 実験を行なった。塩水濃度は 1.00, 2.00, 3.00, 4.00, 5.00, および 5.50 mol/L の 6 種類としたが,それは適用可能 な Cl−濃度の最高値が 6.00 mol/L であり,それよりも 低い濃度で稼働させるためである。表 3 に実験結果を示 した。塩水濃度(NaCl) が高いほど高濃度のエコ酸とエ コアルカリが得られたが,塩水濃度(NaCl) 4.00 mol/L より高濃度域では生成されるエコ酸,エコアルカリ濃度 の上昇勾配が緩慢になり,BPED でエコ酸(HCl) およ びエコアルカリ(NaOH) に変換されずに残留する Cl− 表 3 市販塩を用いた処理実験結果 塩水 (NaCl) エコ酸 アルカリエコ 脱塩水 濃度 稼働時間 濃度 Cl−濃度 Na+濃度 (mol/L) (min) (mol/L) (mol/L) (mol/L) 1.00 48.0 0.670 0.330 0.000 0.000 2.00 99.0 1.38 0.590 0.000 0.000 3.00 141 1.99 0.800 0.000 0.000 4.00 194 2.43 1.16 9.01×10−4 8.26×10−4 5.00 258 2.52 1.25 7.35×10−3 8.09×10−3 5.50 286 2.55 1.14 1.90×10−2 2.53×10−2 6.00 − − − − − 表 4 乾燥塩,濃縮液および重曹飛灰の処理実験結果 項 目 酸 槽 アルカリ槽 塩水槽 回収率 エコ酸 エコアルカリ 単 位 (mL) (g) (mol) (mL) (g) (mol) 容量 (mL) Cl (mol/L) Na (mol/L) % %

乾燥塩 実験 開始前 500 17.8 0.500 500 11.5 0.500 開始前実験 500 3.16 5.17 89.2 60.7 市販塩 実験 終了時 658 72.2 2.03 690 47.5 2.06 終了時実験 122 9.55×10−3 1.96×10−2 生成量 158 54.4 1.53 190 36.0 1.56 消失量 378 Cl 消失量61.0 g Na 消失量59.3 g 産廃浸出水 乾燥塩 実験 開始前 500 17.8 0.500 500 11.5 0.500 開始前実験 500 3.44 8.21 76.9 52.1 実験 終了時 635 64.6 1.82 675 42.4 1.84 終了時実験 156 1.29×10−2 9.04×10−3 生成量 135 46.9 1.32 175 30.9 1.34 消失量 344 Cl 消失量61.0 g Na 消失量59.4 g 濃縮液 産廃浸出水 濃縮液 実験 開始前 500 17.8 0.500 500 11.5 0.500 開始前実験 500 1.76 1.92 85.1 93.9 実験 終了時 555 44.3 1.25 600 32.2 1.40 終了時実験 204 8.34×10−3 7.13×10−3 生成量 55.0 26.5 0.750 100 20.7 0.900 消失量 296 Cl 消失量31.2 g Na 消失量22.1 g 一廃浸出水 濃縮液 実験 開始前 500 17.8 0.500 500 11.5 0.500 開始前実験 500 1.64 1.31 72.8 72.3 実験 終了時 550 38.7 1.09 580 22.3 0.970 終了時実験 355 2.49×10−2 2.40×10−2 生成量 50.0 20.9 0.590 80.0 10.8 0.470 消失量 145 Cl 消失量28.7 g Na 消失量14.9 g 重曹飛灰 重曹飛灰 実験 開始前 500 17.8 0.500 500 11.5 0.500 開始前実験 500 3.98 3.93 82.2 69.6 実験 終了時 622 75.8 2.13 668 42.9 1.87 終了時実験 169 1.07×10−2 2.50×10−2 生成量 122 58.0 1.63 168 31.4 1.37 消失量 331 Cl 消失量70.6 g Na 消失量45.1 g

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および Na+が脱塩水中に高濃度で検出されるように なった。このため塩水濃度は 4.00 mol/L に設定した。 3. 2 乾燥塩を用いた実験9) 市販塩および産廃浸出水乾燥塩を用いてエコ酸とエコ アルカリ生成実験を行なった。表 2 に市販塩と産廃浸出 水乾燥塩の組成分析結果を示した。組成分析結果より, 市販塩 234 g を水 1.00 L に,産廃浸出水乾燥塩 246 g を 水 1.00 L に溶解させ,4.00 mol/L の塩水を作成した。 市販塩あるいは産廃浸出水乾燥塩の Ca2+と Mg2+濃度 の総和は 2.50×10−5mol/L6)を超えたためキレート樹脂 を用いた前処理を行なった。 3.2.1 市販塩 市販塩の実験結果を表 4 に示す。酸槽において,実験 開始前の 35.5 g Cl/L (1.00 mol/L) の HCl 500 mL から, 実験終了時に 110 g Cl/L (2.03 mol),658 mL のエコ酸 (HCl) が得られた。すなわち,この槽において Cl 量は, 実験開始前の 17.8 g から実験終了時に 72.2 g に増加し たので,BPED で生成した HCl 量は Cl 生成量で 54.4 g で あ る。一 方,塩 水 槽 で は 4.00 mol/L (122 gCl/L), 500 mL の 市 販 塩 に は,61.1 g の Cl が 含 ま れ る が, BPED 処 理 後 の 脱 塩 水 (122 mL, Cl−濃 度 9.55×10−3 mol/L) に,4.00×10−2g の Cl が残留した。すなわち, エコ酸の回収率は (72.2−17.8)/61.0(Cl 消失量)=89.2 % となった。同様に市販塩から生成したエコアルカリ の回収率は (47.5−11.5)/59.3(Na 消失量)=60.7 % で あった。 また電流効率 (処理効率) については,エコ酸 65.6 %,エコアルカリ 43.3 % であった。電流効率は次式に より求めた。

Ee=(A×B)−(C×D)E×F×G ( 1 )

(Ee:電流効率,A:実験開始前サンプル (塩水槽の溶 液) 中のイオン濃度 [eq/L],B:実験開始前サンプル (塩水槽の溶液) 液量 [L],C:実験終了時サンプル (塩水槽の溶液) 中のイオン濃度 [eq/L],D:実験終了 時サンプル (塩水槽の溶液) 液量 [L],E:平均電流 [A],F:通電時間 [sec],G:膜対数/96500 [A・sec/g 当量]10)) 3.2.2 産廃浸出水乾燥塩 産廃浸出水乾燥塩を適用した場合,酸槽において,実 験開始前の 35.5 g Cl/L (1.00 mol/L) の HCl 500 mL か ら,実験終了時に 102 g Cl/L (1.82 mol),635 mL のエ コ酸(HCl) が得られた。Cl 量は,実験開始前の 17.8 g から実験終了時,64.6 g に増加したので,BPED で生成 した HCl 量は Cl 生成量で 46.9 g である。塩水槽におい ては,BPED 処理後の脱塩水 (156 mL, Cl−濃度 1.29× 10−2mol/L) には,7.00×10−2g の Cl が残留した。す なわち,エコ酸の回収率は (64.6−17.8)/61.0(Cl 消失 量)=76.9 % となった。同様にエコアルカリの回収率は (42.4−11.5)/59.4(Na 消失量)=52.1 % であった。電流 効率については,エコ酸 61.9 %,エコアルカリ 40.9 % となった。なお,エコ酸中には,HCl 以外に,硫酸塩イ オン(SO42−) が 1.00×10−3mol/L 程度検出され,BPED

内で SO42−も電気的に移動している様子がうかがわれた。 3. 3 濃縮液を用いた実験 3.3.1 産廃浸出水濃縮液 乾燥塩にするには脱塩濃縮液をドラムドライヤーにか けるが,大量の重油等の消費と CO2排出を伴うため, 経済的にも地球環境にとっても好ましくない。そこで産 廃浸出水濃縮液の状態で BPED によるエコ酸,エコア ルカリ生成実験を行なった。実験に用いた脱塩濃縮液は 浸出水を電気透析膜で脱塩処理したもので,その際,生 成した濃縮液を用いた。産廃浸出水濃縮液の組成分析結 果を表 2 に示した。Ca2+濃度は 7.00×10−3wt% (1.75× 10−2mol/L), Mg2+濃度は 0.598 wt% (2.49×10−2mol/L) であったため,前処理を行い,Ca2+と Mg2+濃度の総和 を 2.50×10−5mol/L 以下6)にしたのち BPED によりエ コ酸,エコアルカリおよび脱塩水を生成した。実験結果 を表 4 に示した。 酸槽中に回収されたエコ酸は 555 mL, 1.25 mol となっ た。この結果から,産廃浸出水濃縮液からエコ酸は, 55.0 mL, 0.750 mol が生成されたことになる。アルカリ 槽中に回収されたエコアルカリは,600 mL, 1.40 mol と なった。産廃浸出水濃縮液を用いた BPED 処理流量は 5.00×10−4L/hr・cm2となった。エコ酸の回収率は 85.1 %,エコアルカリの回収率は 93.9 % となった。このこ とより,廃浸出水濃縮液からエコアルカリは 100 mL, 0.900 mol を生成できたことになる。脱塩水の Cl−濃度 は 8.34×10−3mol/L (脱 塩 率:99.5 %),Na+濃 度 は 7.13×10−3mol/L (脱塩率:99.6 %) で,高い率で脱塩 された。電極液の Na+濃度は 0.894 mol/L である。電流 効率については,エコ酸 106 %,エコアルカリ 82.8 % となった。また,産廃浸出水濃縮液の組成分析結果によ り,回収したエコ酸の中に 0.154 mol/L の SO42−を含む ことが推算された。 3.3.2 一廃浸出水濃縮液 一般廃棄最終処分場の脱塩濃縮液を用いて,実験を行 なった。実験対象一般廃棄物最終処分場の脱塩濃縮液は

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浸出水を電気透析膜で脱塩処理し,その際,生成した濃 縮液を用いた。一廃浸出水濃縮液の組成分析結果を表 2 に示した。産廃浸出水濃縮液と同様にキレート樹脂によ る前処理により,Ca2+と Mg2+濃度の総和を 2.50×10−5 mol/L 以下6)としたのちに BPED にかけた。 酸槽中に回収されたエコ酸は 550 mL, 1.09 mol となっ た。この結果から,濃縮液からのエコ酸は,50.0 mL, 0.590 mol が生成されたことになる。アルカリ槽中に回 収されたエコアルカリは,580 mL, 0.970 mol となった。 この結果から濃縮液からのエコアルカリは 80 mL, 0.470 mol を生成することができた。一廃浸出水濃縮液を用い た BPED 処理流量は 7.00×10−4L/hr・cm2となった。エ コ酸の回収率は 72.8 %,エコアルカリの回収率は 72.3 % となった。塩水槽の中の脱塩水の Cl−濃度は 2.49× 10−2mol/L (脱塩率:98.0 %),Na+濃度は 2.40×10−2 mol/L (脱塩率:98.0 %) で,高い率で脱塩された。電 流効率については,エコ酸 140 %,エコアルカリ 72.1 % となった。 全体の収支としては,電極液を除き,実験前に入れた 塩水とイオン交換水の総和は 500 mL+500 mL+500 mL=1.50×103mL であり,実験後,550 mL+580 mL+ 355 mL=1.49×103mL となり,15.0 mL の液量が蒸発 により消失した。 3. 4 重曹飛灰を用いた実験 表 2 に重曹飛灰の組成分析結果を示した。重曹飛灰を 水に溶解し塩水 (4.00 mol/L) を作成し,前処理として キ レ ー ト 樹 脂 処 理 に よ り Ca2+, Mg2+濃 度 の 総 和 を 2.50×10−5以下6)とし,BPED にかけた。表 4 にその結 果を示した。 酸槽中に回収されたエコ酸は 622 mL, 2.13 mol となっ た。この結果から,4.00 mol 塩水からエコ酸は,122 mL, 1.63 mol が生成されたことになる。アルカリ槽中に 回収されたエコアルカリは,668 mL, 1.87 mol となった。 この結果から 4.00 mol 塩水からエコアルカリは 168 mL, 1.37 mol が生成されたことになる。重曹飛灰を用いた BPED 処理流量は 4.00×10−4L/hr・cm2となった。エコ 酸の回収率は 82.2 %,エコアルカリの回収率は 69.6 % となった。塩水槽における脱塩水の Cl−濃度は 9.49× 10−2mol/L (脱塩率:99.7 %),Na+濃度は 2.50×10−2 mol/L (脱塩率:99.4 %) で,高い率まで脱塩された。 電極液の Na+濃度は 0.937 mol/L である。電流効率につ 図 4 Cl 濃度と生成したエコ酸濃度の関係 図 5 Cl 濃度と生成したアルカリ濃度の関係

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いては,エコ酸 65.3 %,エコアルカリ 35.3 % となった。 また,重曹飛灰の組成分析により,回収したエコ酸の中 に 6.65×10−2mol/L (0.100 %) の SO 42−を含むことが 推算された。 3. 5 塩水の Cl−濃度と BPED により生成するエコ酸, エコアルカリの濃度との関連 今回の実験結果から図 4,図 5 に塩水の Cl−濃度と BPED により生成するエコ酸,エコアルカリの濃度と の関連を示した。これより塩水濃度と生成するエコ酸, エコアルカリの濃度には高い相関が得られた。

4.結

市販塩,産廃浸出水乾燥塩,産廃浸出水濃縮液,一廃 浸出水濃縮液および重曹飛灰を用いて BPED によるエ コ酸,エコアルカリおよび脱塩水生成実験を行なった。 いずれの試料からもエコ酸,エコアルカリが得られ,得 られた濃度はいずれも排水の中和剤として用いる場合に は支障のない濃度であり,利用の目途が得られた。脱塩 水については 8.34×10−3〜2.52×10−2mol/L と一般的な 浸出水処理施設脱塩処理目標水質と同等であり,機械洗 浄水や被覆型処分場における散水用水として再利用可能 なレベルであった11)。特に濃縮液中の Ca2+等を前処理 して BPED にかけることにより,乾燥塩から塩水をつ くり BPED にかける場合と同等のエコ酸,エコアルカ リが得られることから,脱塩処理施設に設置される乾燥 設備を省略することが可能で,乾燥に要するエネルギー コストを削減できる経済的なシステムであることが示唆 された。 今回,実験に用いた副生塩は,いずれも浸出水脱塩処 理に電気透析膜方式が用いられている。電気透析膜方式 は前処理として生物処理,物理化学処理等を行うため, 高い純度の副生塩を得ることができる。 今回の実験は実験用試料の入手の関係もあり,繰り返 し確認実験ができなかった。このため,処理効率,電流 効率について確認検証ができなかったため,実用段階に おいて検討する必要がある。また前処理として Ca2+ の除去が必要であり,これらのコストを含めた経済性評 価が必要である。 参 考 文 献 1 ) 環境省:一般廃棄物の排出及び処理状況等 (平成 30 年 度) について,p. 3 (2020) 2 ) (公社)全国都市清掃会議:廃棄物最終処分場整備の計 画・設計・管理要領 2010 年改訂版,p. 364 (2010) 3 ) 樋口壯太郎:平成 22 年度循環型社会形成推進科学研究 費補助金研究報告書:「廃棄物処理処分に伴い排出され る副生塩のリサイクルシステムの構築に関する研究」 (K22035),pp. 21-26 (2011) 4 ) 伊藤智祥,大西昭寿,若菜正広,樋口壯太郎:浸出水 脱塩処理に伴い発生する副生塩の消毒剤利用に関する 研究,全国都市清掃会議,第 72 巻,第 351 号, pp. 484-493 (2019) 5 ) 樋口壯太郎:平成 24 年度環境研究総合推進補助金研究 事業研究報告書「廃棄物処理処分に伴い排出される副 生 塩 の リ サ イ ク ル シ ス テ ム 構 築 に 関 す る 研 究」 (K2363) pp. 23-32 (2013) 6 ) アストム(株):ホームページ http : //www.astom-corp.jp/(閲覧日 2018 年 11 月 8 日)

7 ) WSI Technologies, Inc. : 5th Int. Forum Electrolysis : Bipolar Membrane Technology and Applications pp. 357-366 (1991) 8 ) ミヨシ油脂(株):ホームページ http : //www.miyoshi-yushi.co.jp/(閲覧日 2019 年 11 月 22 日) 9 ) 韓 佳江,于 斯夫,樋口壮太郎:浸出水脱塩処理に伴 う副生塩のリサイクルに関する研究 (その 2),第 28 回廃棄物資源循環学会研究発表会講演集,pp. 403-404 (2017) 10) アストム(株):卓上型電気透析装置アシライザー EX3B 取扱説明書,p. 43 (2018) 11) 樋口壯太郎:平成 22 年度環境研究総合推進補助金研究 事業研究報告書「廃棄物処理処分に伴い排出される副 生 塩 の リ サ イ ク ル シ ス テ ム 構 築 に 関 す る 研 究」 (K22035) pp. 7-14 (2011)

(8)

Study on Recycling Byproduct Salt using Bipolar Membrane Electrodialysis Equipment

Jia Xing Liu*, Mikiji Shigematsu*, Kazuo Tameda**, Jia Jiang Han*** and Sotaro Higuchi****

* Energy and Environment Systems, Graduate School of Engineering, Fukuoka University ** Recycling and Eco-Technology, Graduate School of Engineering, Fukuoka University

*** Plant Engineering Department, Engineering Division, Takada Corporation **** Research Promotion Division, Fukuoka University

Correspondence should be addressed to Jia Xing Liu :

Energy and Environment Systems, Graduate School of Engineering, Fukuoka University (Collaboration Center 3F, Kitakyushu Science and Research Park,

2-1 Hibikino, Wakamatsu-ku Kitakyushu City, Fukuoka 808-0135 Japan) Abstract

The number of leachate treatment facilities with desalination treatment is increasing. When desalination is performed, concentrated solution and dried salt (byproduct salt), which is obtained by evaporating and solidifying the concentrated solution, are produced together with the desalinated water. In recent years, some byproduct salt has been recycled as antifreeze agents, and some has been used as disinfectants at terminal treatment plants by generating NaClO through electrolysis. However, there are many areas that do not use antifreeze agents and nearby areas that do not use disinfectants. Using bipolar electrodialysis (BPED) as one of the recycling methods, a development study was conducted assuming that acids and alkalis are generated and used as a neutralizing agent. Currently, BPED is used in the food and medical fields as a method for pro-ducing organic acids and alkalis from organic salts and acids and alkalis from inorganic salts. In this study, we conducted a basic study with different generation sources (leachates from general waste and industrial waste) and different discharge types (concentrated solution and dried salt) of byproduct salt. As a result, HCl with a concentration of 2.82 mol/L to 4.23 mol/L and NaOH with a concentration of 1.43 mol/L to 3.04 mol/L were produced.

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