電子気体の相関相互作用とCauchy relation (79) 電子気体の相関相互作用と Cauchy relation 志水 正男 名古屋大学工学部応用物理学教 丹生 久吉 関東学院大学工学部基礎教育教室 §1 序
Cubic symmetryを持つ結晶格子ではCentral force modelにより理論的に 弾性定数間にCauchy relation C12=C44が成り立つことが示される。1)然し金属 の実験値を見るとこの関係が成立しないことがわかる。
この理由については以前から多くの研究がなされている。 Fuchs 2)はCauchy relationは電子の運動及び位置エネルギーのように体積依存性をもつものの存在によっ て破られることを示した。即ちcentral force以外の力が何もないときに限り、 Cauchy relationが成立つとした。其後de Launay 3)は弾性定数の差、 C12-C44が金属内に存在する電子気体のbulk modulusに等しくなることを論 じた。
これに対しShimizu and Niu 4)はde Launayの理論ではいくつかの
点で実験事実を説明できない場合のあることを示し、更に、dentral force-modelを 基に電子気体の効果を考えるばかりでなく、angular force を取入れたnon-central force modelを基に電子気体のbulk modulusを考慮すべきことを論じた。その 結果彼等はion coreの形、core 相互のover-lapに原因すると考えられ るangular forceがalkali metalsについてもかなり大きいことを示し た。
我々はここでalkali metalsとnoble metalsについて電子気体のbulk modulusの部分を更に詳細にしらべた。これら金属内電子の相互作用として、
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correlation相互作用まで取上げ、これがどのようにCauchy relationに関係 するかを計算した。
CorrelationエネルギーにはWigner 5)、Bohm and Pines 5)及び Gell-Mann and Brueckner 6)の理論を用い夫々を比較した。
結論として、de Kaybatの理論はたとえcorrelation相互作用を考慮しても 矢張り実験を良く説明し得ないことが知れた。
最近 Overton JR.7)もcorrelation相互作用を取上げてNa, Cu及び Agについてbulk modulusを同じ様に計算し、同様の結果を得た。 §2 電子気体のbulk modulus
金属の自由電子による電子気体のbulk modulus Keは定義により Ke=-V∂2E∂V2 (1) ここにEは電子の全エネルギー、Vはその気体の体積である。 一般に電子エネルギーは1電子の平均体積を球におき代えたときにBohr半径a0 を単位としては買った球の半径γsの函数としてあらわされるので、1molの金属につい てのKeを V=4/3πr3sa30Nn0 (2) を用いて書き代え、次の様にしておく。 Ke=16πa3o[12rs∂2E∂V2-1rs2∂E∂rs] (3) Eg(2)のNはAvogadro数、Noは1原子あたりの自由電子数である。 電子気体のエネルギーEは4つの部分からなり
電子気体の相関相互作用とCauchy relation (81) E=Eo+EF+Eex+Ecorr, (4)
とあらわせる。右辺は第一項から順に基底状態、Fermi,exchange,及び correlationのエネルギーである。
これらのエネルギー部分については夫々多くの研究があるので、それ等を検討して計算に 用いる。第1項の基底状態エネルギーはFuchs 2)の示すように、central forceとし て働き、volume forceにはならないので電子気体の bulk modulusへの効果とし ては考慮しない。
§3 各エネルギーの効果
電子気体のbulk modulusに効果を及ぼすものはEg(4)のEF,Eex,Ecorr の3つである。そこでこれ等を順に議論する。
1 Fermiエネルギー Ryd berg unitであらわすと EF=2.21γs2・mm*γy (5)
ここにm*は電子の金属結晶内でのeffective mass,mは静止質量である。 更にeffective mass ratio m*/mの逆数はBardeen 8)により α=mm*=Ars+B, (6)
のようにγsの展開形であらわせる。一般にγsの高次の項まで存在するが、ここで はrsの1次名での展開とした。
(82) 志水 正男 丹生 久吉 16πa03[11.05rs5mm-6.63γs4A] (7) 2 exchange エネルギー
1.電子模型であるHartree and Fock近似ではよく知られているように Eex=-0.916γs ry (8)
一方集団電子模型によるBohm and Pinesのplasma理論5)からは Eex=-0.916γs(1-43γsβ+12γsβ2-148γsβ4)γy (9) こゝにβは
β≡kck0=γrs1/2、(10)
であらわされ、電子気体の plasma 振動の cut-off frequency に当る波数 kc の Fermi エネルギーの波数 ko に対する割合であり、γは近似計算の程度により種 々の値が出されいるが、我々は0.4ケ9)とする。
結局 exchange からの寄与は夫々、 Hartree and Fock
16πa03[-1.832γs4]、 (11) Bohm and pines
16πa03[-1.832γs4+0.5023γs7/2-0.0009312γs2] (12) となる。
電子気体の相関相互作用と (83) 3.Correlation エネルギー
correlationエネルギーを最初に計算した Wigner によれば10) Ecorr=-0.88γs+7.8 γy (13)
である。
Bohm and Pines 理論では11)
Ecorr=-0.115+0.0311lnγs-0.00047γs γy (14) なる結果が得られている。
又、1電子模型に立ち振動近似によって高密度の電子気体のエネルギーを計算した Gell-Mann and Brueckner 6)の理論では
Ecorr=-0.096+0.0622lnγs+0(γs) γy (15) となる。
従ってKeへの寄与な夫々について次の様になる。 Wigner
16πa03[-0.88(2γs+7.8)γs2(γ+7.8)3] (16) Bohm and Pines
16πa03[-0.0465γs3+0.00047γs2] (17) Gell-Mann and Brueckner
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こゝで注意すべきことは、これ等correlationエネルギーの相違は基礎になる模 型の相違によるものであり、模型が異なれば単にcorrelationのみならずexch-angeエネルギーも異なって来る。
その結果、Wigner及びGell-Mannの理論に対しては、Hartree and Fockのexchangeが、Bohm and Pinesには彼等自身のexchange が対応する。
§4 計算及び結果
Alkali metals Li, Na, K, Rb, Cs及びnoble metals Cu, Ag, Au についてKeを夫々のmodelにより計算した。
0°Kにおけるγs及びm*/mの値は、電子比熱からcorrelationを考慮してm*/m を得た際の我々の結果12)を用いた。
Fermiエネルギーのαのγsについての展開係数Aは、Alkali metalsについては、 Quantum Deffect Method(Q.D.M)によるBrooks13)14)の理論から、nob-le metalsについてはQDMによるKambe 15)の理論から求めた。
以上の数値を用いEg(3)によって電子気体のbulk modulusを計算した。その結果 を第1表の第1~3行に示す。更に第4~5行に比較のためOvertonの計算値を示した。 彼はBohm and Pines理論とGell-Mann and Brueckner理論による計算
を行っているが、前者についてはFletcher and Larson 16)のcorrelationエネ ルギーの展開式を用いている。表中correlationエネルギーの計算方法を区別するため前 節での説明の順に夫々W,BP,GB及びFletcher and LarsonをFLと略記した。
最後の行にC12-C44の実験値を示す。LiはHautington 17)、K,Cu及びAuはde Launay 3)、NaはAleksandrov等18)、AgはNeighbous等19)の値をとった。又絶
対温度は夫々の測定値を得たときの温度をあらわし、0°Kは測定値からの外挿によって求め られた0°Kでの値であることを示す。
電子気体の相関相互作用と canchy relation (85) 第1表 Ke の理論値 (単位:10 11dyne.cm-2) §5 discussion 第1表で明かなように、我々の計算からはde Launayの理論を支持し得ない結果を生ずる。 それはどのように電子間の相互作用を取入れても改善されない。これは又Overtonの結論とも一 致している。但し彼の計算ではαのrs依存性を考えず又、αの値を1としているので我々の数値と は異なっている。 先づalkali metalsについてしらべると、GBによるNaの場合にはかなり実験値に近い値を 示すが、もともとGBの理論は高密度の極限、即ちrs→0、において成立つものであり実際の金属 では2〓γs〓8であるのでこの結果は偶然の一致によるものと考えられる。このことはKの場合 には実験と一致しないことからも考え得ることであり、又Li,Rb, CsのKeが負になると云う物理 的に無意味な結果の生ずることからも知れる。 次にnoble metalsについてはOvertonのFLの場合にかなりの一致が見られる。然し我々 のAg,Auでは一致は良くなく、特にAuでは非常な相違が実験値との間にある。これらの金属で はion coreの球対称からのずれや、ion core相互の重なりが無視できないのでnoncen-tral forceの影響が重要な部分を占めて来ると考えられる。従ってCuにおける実験値との一 致は、Overtonも論じたように偶然のことゝ思われる。
以上見たようにcauchy relationからのずれが電子気体のbulk modulusに等しいと考 えるのは良くないと云える。最近Dayal等20)は、Fuchs以来多くの研究でCauchy relation が電子気体の体積効果のみによって破れると考えているのは良くなく、いくつかの力が働いている
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うちの1つがcentral forceであるときには既にcentral forceだけを取っても、 cauchy relationは成立たないので、de Launayの理論は正しくないと主張して いる。
気体の相関相互作用と Cauchy relation (87) References
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