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新規参入理論の新展開-経営戦略論の視角より-: 沖縄地域学リポジトリ

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Title

新規参入理論の新展開−経営戦略論の視角より−

Author(s)

与那原, 建

Citation

沖大経済論叢 = OKIDAI KEIZAI RONSO, 9(2): 19-52

Issue Date

1985-03-31

URL

http://hdl.handle.net/20.500.12001/6744

(2)

新 規 参 入 理 論 の 新 展 開

一経 営 戦 略 論 の 視 角 よ り

-与 那 原 建

Tatsuru Yonahara

Ⅰ は じめに Ⅱ 参入理論の展開 Ⅲ 参入障壁突 破の方向 と手法 1. 参入障壁突破の手法 一直接参入のケース-2. 買収 による新規参入 Ⅳ yipの新規参入モー ド選択モデ ル 1・ Yipの分析枠組 2・ Yipの実証分析 Ⅴ むすび -要約 と展望

は じ め に 最近の企業環境の変化を一言で特徴づけ るとす れば 、従来の常識が全 く通用 しない状況が相次いで発生 してい ると言い表わす ことが で きる。 と りわけ 、成 熟 した市場 、成熟 した世の中でインフ レが進行す るとい うことは 、戦略的に見 て非常に大 きな問題を提起 していると思われ る 〔大前他 ,1981P.14 〕。 このような低成長経済下にあ っては 、巨大企業 といえど も伝統 的な技術や市 場に固執 していたのでは成長 ところか存続す ることさえ も困難にな って くる。 したが ・,て企業の側か らすれば 、低成長経済 とい うハ ンデを乗 り越 えて存続 ・ 発展 してい くための前提 として、新規市場への参入 とい う成長戦略が きわめて - 1 9

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-魅力的なオプシ ョンとして脚光を浴びることになるわけである。

しか しなが ら、こうした既存市場への新たな競争業者の参入は .参入を試み る新規参入企業 (entrants)のみならず 、それを迎え撃つ既存企業 (incumbents) にと って も重*な戦略的問題 となる.既存企業としては 、産業組織論によ って 展開 された概念である参入障壁 (barriers to entry)の存在によ って 自社市場 は防備 されているか ら安心だと考えるか もしれない。(1) 一方 、新規参入企業の側 では 、こうした乗 り越えな くてはな らない参入障壁 の高 さに不安を感 じるか もしれない。これは今のところ、参入障壁の有効性を 決定す るための休系的なアプローチ も.さらに参入障壁を克服ないし維持 して い く手段を考察す るための手法 も存在 していないことに起因 しているとみなす ことがで きる。 しか し参入障壁は 、どんなに強力な防御用武器であるにせよ、 難攻不落 というわけではないのである。 そこで本稿では .産業組織論 と経営戦略論とを接合 して競争戦略論を展開 し ているPorter〔1979,1980〕の先例に基づいて、各種の参入障壁を規定 し、そ の作用を評価す るための フレームワークを提示 したうえで、それを新規参入の ための手段に転用す るとい う新 しい発想について論 じているYip〔1982a,b , C〕の研究を手がか りとして考察をすすめていきたいと考えている。 (出所 :Porter.1980・p・4・) - 20

(4)

-なおPorterによれば、図 1で示 されるように.産業の競争構造は 5つの競争 要因 (competitive fわrces)か ら形成 されることになるわけであるが、ここで Porterが産業の構造的特性を規定する競争要因の 1つに、本稿が焦点を合わせ ている新規参入企業の脅威 (threatofnew entrants)を挙げていることに注 意 しなくてはな らない。つまり、新規参入は産業の競争状態 、したが ってまた 産業の潜在収益力を決定する 1つの要因となるのである。

参入理槍の展開

産業組殺論と経営戦略論の視点の相違は、参入障壁に関す る理論において特 に顕著である。産業組織論の考え方は、市場構造-市場行動一市場成果パ ラダ イム (the structure-conduct- perfわrmance paradigm)の仮定がその中心 とな っており.このパ ラダイムによれば.参入障壁の大きさは完全に産業構造 によ って決定 されることにな ってしまう。つ まり.規模を除いたすべての経済 的側面において企業は同一であり、こうした同質性 (homogeneity)はマネジ メン ト・スキルにさえも適用されるとみなしているのである。確かに、新規参 入企業がスキルおよび資源に関 して既存企業と同一であり.しか も同一の競争 戦略を展開 しているな らば、産業構造が参入障壁の唯一の源泉であり.参入障 壁のインパ ク トを弱めるその他の要因を除外す ることができよう。 しか し、各 企業が自社と競争企業 との差別化 を図 るために独 自能力 (distinctive corrー petence)の展開に努力を結集 している昨今の状況をみると、こうした考え方は 非現実的であると言わざるを得ない。 それでも最近にな って、産業組織論のパ ラダイムを経営戦略論の仮定 と要件 に適合させている研究が登場 してきている。特に、最近の産業組織論の文献は 競争業者とかわ らの戦略の異質性 (heterogeneity)に着 目してきてお り、こう した視点は参入障壁の問題を含め、多 くの戦略的問題の解明のために利用 され ている。産業組織論のパ ラダイムを競争環境の分析枠組に転換 しているporter の研究などは.その代表格といえよう。(2) 産業組織論のパ ラダイムにの っと ったBain〔1956〕の新規参入理論では、参 -

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21-入障壁に立ち向か う潜在的参入企業として新生企業 (newbornfirm)のみが識 別されたにす ぎなか った。潜在的参入企業に既存企業を含めて考察 していく必 要性はCaves-Porter〔1977〕によ っても強 く主張されており、現実の新規参 入が既存企業によ っても数多 く行われている以上 、そうする方が現実的であるi3) この場合 、既存企業が保有 している資産 (assets)やスキルが参入障壁に影響を 及ぼすことになる。つまり、こうした資産やスキルが参入障壁を小さくするこ とにつながるのである。企業の異質的特性に焦点を合わせるのが経営戦略論の 主要な特徴であり、Yipの研究は既存企業の資産が参入障壁の縮小に対 して演 じる役割を明確にす るために、こうした視点を重視 したものであると解される。 また前述 したように.Bainの参入理論では競争戦略の異質性という視点が完 全に無視 されている。Yipはこの視点を利用して、状況によ っては参入障壁が新 規参入企業に有利に作用す る場合 もあり得るということを主張するのである。 要するに、Yipの狙いは新規参入理論の発展過程に第 3段階を追加することに あると思われる。具休的にいうと、第 1段階は、新生企業による参入が考察の 中心であり、第2段階において潜在的参入企業として既存企業が認識され.そ のことによ って参入障壁のインパク トが弱め られるという予測が立て られた。 そしてYipが授起した第 3段階とは、参入障壁を突破する際に競争戦略が演 じる 役割なのである。つ まり、Yipは経営戦略論の視角か ら参入理論を展開 しようと する意図をも っているのであり、本稿でYipの研究を取り上げた理由もそこにあ る。 こうした意図か ら、Bainの参入理論はYipによ って以 下の 4点を修正されて いる。 〔Yip,1982C,p・23〕 (1) 潜在的参入企業および実際の参入企業として既存企業を含める。

(

2

) 市場の周辺部分 (Fringe)と中核 部分 (core)を再定義 し、周辺部分へ の参入 (fringe entry)と中核部分への参入 (core entry)を区別するため に戦略グループ (strategic group)という概念を利用する。

(3)参入モー ドとして買収 (acquisition)を認識す る。

(4) 競争戦略の異質性に着 目す る。

修正点(1)と(4)については前述 したとおりであり、以下の節でさらに取下げる

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2-ので説明を省略することにす る。ここでは修正点(2)と

(

3)についてみていくこと に した

い。

まず修正点(2)の戦略グループ概念の利用について述べると、Yipはこの概念 を産業組織論の同質性と経営戦略論の異質性とを結合する架け橋的役割を演 じ るものとして非常に重要視 している。戦略グループとは、競争戦略を記述する 諸次元で同- もしくは類似の戦略を採用 している企業群のことをいう.たとえ ば.業界内のすべての企業が本質的に同 じ戦略をと っているとした ら、その業 界には戦略グループはただ 1つだけ しか存在 しないことになり、この逆は、業 界内のすべての企業が全部異な った戦略を採用 している場合である。 しか し、 通常は業界には少数の戦略グループが形成 されてお り.それ らのグ/レープ間で 採用 している戦略に明確なちがいが見 られるのである 〔Porter,1980,p.129〕。 caves=porter〔1977〕は戦略グループの存在によ って.参入障壁は業界内の すべての既存企業を一様に防御することが不可能になると主張 している。これ は.参入障壁の大きさが特定の戦略グループによ って異な ってくるということ か ら導 き出された結論であるといえようOさらに、戦略グループが異なれば、 それに対する参入障壁 も異なることか ら.参入障壁はその戦 略 グ ル - プへ の 業界外か らの参入を防 ぐだけでなく、業界内の企業がある戦略グループか ら別 の戦略グループへ移動するのを阻止する役割 も果たすことになる.Caves=Porter はこれを移動障壁 (mobility barrier)と呼んでお り,換言すれば企業が戦略 上の 1つの位置か ら他の位置へ移動するのを妨げる要因という意味である。 移動障壁 という考え方を使 うと、業界内の収益性という点で.企業間につね に一貫した格差のある理由も説明できる。つまり、強力な移動障壁を もっ戦略 グループに属する企業は.弱い移動障壁 しか もたない戦略グループ内の企業よ りも、高い収益性を達成できるのであるo(4)こうした移動のコス トとそのむずか しさは移動障壁の高さに依存 しているわけで、市場の周辺部分への参入が容易 に実現 したか らとい -'ても.それがす ぐに市場の中核部分への容易な参入につ なが らないことに注意 しなくてはならない。これは、業界の周辺部分への容易 な参入がその業界の中核部分の競争要因に対 してほとんど影響力をもたないこ とを意味 している。 -

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23-Brock〔1974〕は、コンピュータ業界の中核部分であるメイン・フレ.-ム(mai n-frame)セグメン トへの大規模参入企業の新規参入が失敗に終 ったけれども、 一方小規模参入企業は周辺装置のような周辺部分のセグメン トで成功を手中に 収めたということを明 らかにしているO(5)またCaves=Porte,によって、既存企 業が市場の中核部分に参入 していく傾向があるのに対 して、新生企業には競争 的周辺部分 (competitive fringe)に参入する傾向がみ られるという示唆が提 供 されている。これ らの示唆はより現実的な参入理論を展開 していくうえで、 きわめて有用な指針となるはずである。すなわち、上述 してきた戦略グループ ・アプローチは 、競争戦略を厳密に分析するた桝 乙、産業組織論が仮定 してき た産業内での市場行動の同質性という限界を克服しようとする試み 〔金井,1981〕 であり、このアプローチはYipの参入理論にも多大な影響を及ぼ しているとみ ることができるのである。 YipによるBain理論の第 3の修正点は、参入モー ドに買収を加えることであ った。周知のように、Bainの参入理論では新規参入を社内開発(inter nalde-velopment)による直接参入 (directentry)に限定 して議論が展開されてき た。 しか しなが ら.新たな競争業者の市場への参加という意味で、買収という 成長戦略 も参入モー ドに含めて考察 していく必要がある 〔Hines,1957〕。買収 によ って.新規参入企業は参入障壁を飛び越えることが可能となり.移動障壁 を突破す るための土台づ くりができるということをCaves=Porterも強調 して いる。 さらに、序章で述べた低成長経済という現状を考えると、買収以外の企業成 長の途が非常に困難にな ってきたと言わざるを得ない。わが国においては-一株 当りの利益に株価がス ライ ドす る傾向があるので.株価が実際の資産に比べて 非常に安 くな ってお り、こうした株式市場の 1つの矛盾と、インフレという現 象とを絡み合わせてみると、ある事業への 自力参入が非常に困難にな 'たとい う事実が出てくる半面、買収その他による成長戦略に魅力が出てくることにな る 〔大前他 ,1981p.17〕。ところが従来わが国で行われてきた企業買収につい ていうな ら、買収を実施 した企業および業種は非常に限定されていた。 しか し、 この方法によらない企業成長の継続がきわめて困難な状況にな ってきているこ - 2

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4-とを考え合わせると、わが国で も今後、企業による買収という成長戦略の採用 が急速な高まりをみせると考え・られるのである。(6)以上がYipによるBainの参 入理論の修正の内容である。Yipのこうした修正にもとず く参入障壁の現実的な 見直しによ って、われわれは参入障壁恐 るるに足 らずという結論を導 き出すこ とができるのである 〔Yip,1982a,p・86〕。それでは.新規参入企業は如何 にして参入障壁を突破 していけばよいのか。この間題に対 して.次節でアプロ ーチ していくことにしよう。 なお本稿の中心テーマである参入障壁をStigler〔1968〕にならって定義す ると、 参入障壁とは、特定の産業へ参入 しようとする企業は負うが 、その産業の既存 企業は負わない費用であるということになる。この参入障壁の主なものとして、 本稿では規模の経済性 (economi esofscale)、製品差別化 (productdiff er-entiation)、必要資本額 (capitalrequirements).流通チャネルの確保 (access to distribution channels)、規模 とは無関係な費用面 での 不 利 (costdi s-advantages iodependentorscale)、参入に対して予想される報復(expected retaliation)という6種類を考えているが .これ らについては周知のとお りであ り,多言を要 しないであろう。(7)

参入 障壁 突破 の方 向 と手 法 Yip〔1982a〕によれば、参入障壁突破の手法には(1)参入障壁を弱めるか回 避するやり方と

(

2

)

買収による道がある。(1)の手法が採用されるのは、新規参入 企業が 自社で開発 した新製品によ って直接参入を試みる場合であり、他力利用 による新規参入が計画される場合には(2)の 手法がとられることになる。それで はまず(1)の手法、すなわち自力参入のケースを検討 していくことにしよう。 1, 参入障壁突破の手法 一直接参入のケ-ス一 層接参入を計画 している企業にと って.以下に述べる2段階プロセスにもと づき参入障壁の度合と自社の成功の見通 しを評価す ることが きわめて重要とな -2

(9)

5-ってくる。 まず第 1段階として、直接参入企業は参入障壁のタイプを識別し. その中身を検討 しなければな らない。(8)第2段階は.参入障壁を弱めるか、あ るいは回避す ることが 自社にと って可能かどうか、またどうすれば可能なのか について決定を下すことである。 第

2

段階のポイン トとなるのは

、2

つの戦略的アプローチのいずれかを利用 することであり、そのアプローチとは(a)新規参入企業は、既存企業と同一の競 争戦略を使 うことによ って、参入障壁を弱めることができるのかどうか、(b)既 存企業 と異な った独 自の戦略の使用によ って参入障壁の回避が可能かどうかの 2つであるO要す るに、同一戦略の使用による障壁の縮小か、それとも別の戦 略の使用による障壁の回避かということの決定が第2段階の内容とな っている。 Yipは、種々のケースを交えなが ら上述 したアプローチの有効性について、以 下のように説明するのである。(9) (1) 既存企業と同一戦略の使用 十分なスキルと資源の利用を前提とす るな らば、直接参入企業は既存 企業と同 じ戦略を用いて参入障壁の作用を最小限に食い止めることがで きる。たとえば、参入企業がすでに別の市場をも っている場合には、直 面す る参入障壁の影響力を感 じるた桝 こ、保有 している能力のすべてを 新市場に投入す ることも十分可能なのである。これは、新生企業ではな く既存企業による直接参入のケースを説明 した ものであるが、新生企業 の場合でも、それが参入 した市場の既存企業か らスピンオフした管理者 クラスの人間が設立 した会社であるな ら、豊富なスキル、それにおそら く十分な資源を持合せていることは疑いない。その 1つの例がコンピュ ータ業界であり、そこではこうした会社が数多 く誕生 しているのである。 それでは、新規参入企業が保有 している能力と資源を駆使 して参入障 壁を弱めていく手法について、各障壁 ごとにみていこう。たとえば、新 規参入企業が一連の研究所で数多 くの製品開発を行 っている場合には、 研究開発 (R& D)に対 して巨額の投資が可能であり、必要とされる規 模の経済性は達成 されることになる。製品差別化障壁については、参入 企業が現在他の市場で使 っている自社のよく知 られた商標名を利用でき - 2

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6-れば相殺は可能である。参入企業が他の市場で使用 している商標名が . 参入 した市場に存在するいかなるブ ラン ドよりも強いということも十分 ありうるというのがその根拠とな っている。 労働力と原材料は.既存企業に費用の絶対的優位性を もた らして くれ るが、参入企業がもっと安い労働力と原材料を確保 してこうした障壁杏 小さくしているケース も現実には数多 くみ られるのであるO さらに参入 企業は新市場に製品を供給す るための流通ネ ッ トワークをすでに手に入 れているか もしれない。実際、消費財メーカーの企業に選好 される多角 化戦略は.現有のチ ャネルで流通させ られるような新製品の開発による 新市場への参入なのである。 既存の参入企業は参入への資金調達に対 して、社内で生み出された普 金を利用でき.しか も新生参入企業よりも低コス トで十分な資金を調達 できる。このように既存の企業で.直接参入のために必要な資金を調達 できるところは.余剰資金を再投資す るために市場へ参入することが多 いのである。また、十分な資金を保有 し、かつ強力な競争業者として定 評のある企業が着手する新規参入に対 しては、既存企業は∼れほど激 し い報復行動をとろうとしない傾向がみ られるということも考えに入れて おく必要がある。 以上,参入障壁を弱めるための手法を論 じてきたが .これ らの考察か ら参入障壁を壁 (wall)にたとえるとすれば、新規参入企業の保有 して いるスキルや資源は足場 (platform)に相当す るということを理解す る ことができる〔Yip,1982C ,p・26〕。壁よりも高い足場があるか ら こそ.参入企業は障壁を乗 り越えてゆけるばか りか 、実は既存企業に対 して優位性を得ることもできるのであるOたとえば.莫大な広告費支出 によ って生み出され、維持 されている製品差別化が参入障壁にな ってい るとすれば、参入企業は広告方法に熟達するか、相手を上回る広告費香 投入することによ って、この障壁を既存企業の方へ向けて しまうことが できる。このようにすれば、広告は市場参入のための手 っ取 り早い方汰 となり、また製品差別化は新規参入への道 (gateway to entry)となる

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7-はずである〔Yip.1982a,p・89〕。 直接参入企業がこの高足場 手法を利用す るさいに 、別に優れたスキル や資源を もつ必要のない場合がある。これは、市場へ意識的に遅れて参 入す ること、つ まり後発 (lateness)にまわることによ って多 くの利点が 生 じるか らである。後発の利点 としては、以下の三点を挙げることがで きる。第1に、既存企業が 目下の投資対象に拘束 されるのに対 し、参入 企業の製品は最新の技術改良の成果を利用できるということである。こ れは .後発にまわ った参入企業が最新技術を駆使 して、品質のす ぐれた 製品を開発できるということを意味 している。第2に、参入企業の方が 供給業者や従業員 、あるいは顧客 と有利な取引条件を結べ るという利点 が挙げ られる。たいていの市場において、古い会社ほど高い労務費に し は られているという事実か らも、これは明 らかであろう。 そ して第3の利点 として、低価格政策の実施を指摘す ることができる。 つ まり、既存企業では犠牲が大 きす ぎて対抗できないような低価格を参 入企業の側では武器にす ることができるという利点である。市場の一部 で低価格を提示す る参入企業のために、既存企業は低価格に対抗 しない ことによ って.顧客の一部か ら得 られるはずのマージンを まるまる見逃 す万がよいのか 、それとも対抗的に価格引下げをや って、顧客全体か ら 得 られる利益を一部失 うは うが ましなのか 、という 1つの ジレンマに陥 ることになるはずである。後発がこうした優位性を もた らすような市場 では、既存企業の地位は継続的に低下 していくことになろう。 (2) 既存企業と異な った戦略の使用 同一戦略の使用以外の もう 1つの重要な参入への道として、既存企業 とは別の戦略を用いるというや り方がある。この別種の戦略を生み出す 源泉 として、Yipは(a)技術 あるいは環境の変化の利用(2)直接的な競争の 回避それに(3)障壁の解消の三つを考えている〔Ibid.,p.29〕。これ ら の源泉 について、以下で順次みていくことに したい。 技術 あるいは環境の急激な変化は 、通常多 くの新規参入企業に広 く参 入への道を開いて くれるものであるが 、既存企業にと っては大 きな脅威 -2

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8-となることが多い。これは,企業経営に対す るイノベ ーシ ョン (i nno-vation)の影 響を示唆 しているとみることができるOなぜ な ら、イ ノベ ーシ ョンとは新技術を利用 した新製品開発 .新生産方法の導入を意味 し てお り、それは既成の経営環境を破壊 し、新 しい環境 を創造 してい く創 造的破凄 (creative destruction)の プロセス に他 な らないか らで あ る 〔schumpete,,1950〕。的 ごく最近の例は、半導体技術がスイスの腕時 計業界に与えたインパ ク トであろう。ゼ ンマイではなくエ レク トロニ ク スを利用 した時計の実現は、必要とされ る競争能力を技能か らテク ノロ ジーおよび低賃金で済む組立労働者の確保へ と移行 させ ることにな り. これ らの変化は熟練 した労働力の利用それにプラント ロイヤルティ(bran d loyalty)とい ったスイスの時計 メーカーの参入障壁を解消 させ ることに な ったのである。 したが って、技術 あるいは環境の変化に適応す る気が 既存企業にないか 、その能力を欠いている場合には 、技術変化 によ って 生 じた新規参入の機会をい っそう拡大 させ ることにな り、逆に参入企業 の側か らすれば .こうした技術変化を うまく利用 してい くことによ り新 規参入の容易な実施が可能になるといえよう。 しか し、新規参入企業は参入への道を得 るまで技術や環境の変化を待 つわけにはいかない し、一方既存企業の側 も変化がないか らとい って安 全が保証 されるわけではない。参入企業はまた 、既存企業 との直接競争 を回避す ることによ って参入障壁をかわす こともで きる。すなわ ち、異 な ったニーズや顧客層を満足 させ るような製品やサー ビスを提供すれば よいのである。 こうしたまだ狙われたことのない市場セグメン トを標的に した参入 、 換言すれば側面攻撃による参入 (nank-attackentry)は 、既存企業に 2 つの危険を もた らし、参入企業にはその裏返 しとしての機会を もた らす ことになる。たとえば、側面の地位その ものはコア市場に参入す るため に必要な経験や確信を得 るための踏み台 として利用 されるのがふつ うで あるが、このセグメン トその ものが コア市場になる場合だ ってあ りうる のである.81) - 2

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9-また側面か らの参入を実現するためには、多少とも従来とは異な った 需要や顧客層にアピールする製品を開発 しなければならない。新規参入 企業は、こうした製品の提供によ って差別化障壁を小さくすることがで きる。この参入戦略は、新 しいセグメン トに焦点を合わせているという 意味で、同時に規模と費用による障壁を崩す ことも可能であり、このこ とが資本の障壁をも小さくす るという相乗効果を生み出すのである。 しか し、直接競争の回避による新規参入の最大の利点は、報復による 障壁を生 じないところにあるとみることができる。既存企業が現在の製 品 ラインに固執する限 り、間接的参入戦略を展開す る新規参入企業は報 復という困難に直面 しないで済むであろう。というのは、既存企業によ る報復が参入企業の製品への対抗を意味することに他な らないか らであ る。 新規参入への道をつくり出す第 3の方法は、参入障壁を解消する(negate) ことである。つまり、新規参入企業は競合する製品の供給を続けなが ら、 既存企業 と異な った独 自のやり方で既成の業界構造を変革 し、それによ って障壁をうやむやにす ることが可能なのである。 1つの例として、わ が国の耐久消費財メーカーによるアメりカの市場への参入を挙げることが できる。このメーカーは自社製品に対す る信頼性を高めることによ って、 アメ リカ国内のサービス網による障壁を解消 したのである.このアプロ ーチを採用す る参入企業は、報復障壁の克服 という点では最 も有利な立 場にある。なぜな ら、既存企業は現在の業界構造を通 じて障壁を築いた のであるが、その行為が逆にかれ らの反撃を妨げる障壁となるか らであ る。 以上3つの差別化戦略 (技術 ・環境変化の利用 、直接競争の回避、障 壁の解消)は、いずれ も自らの行為によ って制約をうけている既存企業 が思 うように対応できないことにもとづ くものである。も っとも、そう い った制約が全 くないと仮定 しても、新規参入企業は既に当該市場で宿 動 しているということに由来する惰性 (lethargy)がないという点で、既 存企業に比べ有利な立場にあるといえよう。伯 これについては、Biggadike - 3

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0-〔1979,a,b〕の研究 も明らかにしている。彼の実証研究によれば、新 規参入企業は既存企業か らの反撃をほとんど経験す ることなく参入を実 現 してい ったのである04才

2

.

買収による新規参入 もう 1つの参入障壁突破法は、競合会社を取得すること、すなわち買収によ る新規参入である。買収という戦略を用いると、株式 ・資産および技術を直ち に獲得できるので.新規参入企業は参入障選を克服すると同時に.りスクの大 きなニューベンチャー戦略の実鰍 こ伴 う不確実性をも回避できる〔Yip,1982 a,p.91〕。この観点からみれば,買収の方が直接参入よりは有利である。 また買収に代表される他力利用による参入戦略が支持される根拠は、低成長 経済という環境要因にも求め られる。低成長下で企業が成長 していくための必 須条件は、技術 、設備、販売チャネルなどの機能を新 しく獲得することであろ うo Lか し、インフレ、技術進歩の加速化 、市場全体の伸びの鈍化という環境 下では、こうした機能や ノウハ ウの 自力獲得が、提携や買収 ・合併などの他力 利用の場合に比べて著 しく不利にな ってくる 〔大前他,1981,p.227〕。 した が って、こうした他力利用の成長戦略が きわめて有効にな ってくるわけである。 しか しなが ら、上述 したような利点を もつ他力利用による新規参入に も問題 がないわけではない。Yipは警告という形で、以下の 3つの問題点を指摘 して いる〔Yip,1982a,pp・91-92〕。第 1に、買収の実施可能性という問題が 挙げ られる。これは市場に存在す る買収候補会社の数は限定 されていることが 多いために.買収という参入モー ドがいっでも利用できるとは限 らないという 意味である。それに独占禁止法による規制という点 も、買収を 目論む参入企業 にと -'て憂慮すべ き問題であろう。 第2に、直接参入と買収とでは財務および管理に対する含意が異な ってくる ことに注意 しなければな らない。貸借対照表と損益計算書に関する2つのモー ドの財務的相違点については、一 目瞭然であろう。明白でないのは、新規参入 に対 して責任を負う管理者が直面する リスクと機会のちがいである。要求 され る規模と収益性を維持 しなが ら、 1つの事業活動を継続できるという保証は何 - SI T

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もないために .通常は直接参入のほ うがよ り リスキーな参入方式であると解 さ れるO一般に 、新規参入企業が参入 してか ら利益を生み出す までに要す る期間 と して8年が見積 られてい る 〔Biggadike,1979,a,b〕.こうしたスタ- トア ップ期の長期 にわた る損失 は .参入の責任者に重圧をかけ ることにな り、場合 によ っては .これが失脚 につ なが るとい うことさえ も十分に考え られ るのであ る。 一方 、買収 による参入の場合 も、参入責任者 に別の l)ス クと要求を課す こと にな る。買収 に要 した費用 を取 り戻す ために 、新規参入の責任者には 、迅速な 業績向上 と被買収会社の トップとの一致協力が要求 された りす る。 したが って、 この2つの参入方式には 、それぞれ異な ったマネ ジメン ト ・ス タイル(ma na-gementstyle)が必要 とな って くる。直接参入の場合は 、企業家的なアプロー チ (entrepreneurialapproach)が求め られ 、買収 による参入の場合には 、組 織 な らびにコス トに対す る意識 に基づ いたアプ ローチが必要とされるのである。 第

3

に 、買収価格の中 には .参入企業が直接障壁を突破す ればかか ったに違 いない コス トが プ レ ミアムと して含 まれているという問題で ある。それゆえに、 参入障壁 を弱めた り、回避 した りす ることので きる参入企業が買収 という参入 戦略を利用 した場合 には ,直接参入 に要す る場合 よ りも多敬の経費がかか るこ とにな って しまうので ある。 こうい うわけで 、新規参入企業は機械 的に買収 とい う道 を選ぶわけにはいか な くな って くる。では 、どうす ればよいのか。新規参入企業は参入モ- ドの選 択 にあた って 、ただ憤然 と直接参入 ない し買収 と決定 するわけにはいかないで あろう。新規参入企業が よ り現実的に参入モー ドの選択を実施す るためには、 自社 に関す る諸要素のみな らず .参入の標的 と してい る市場の構造およびそこ で活動 を行 っている既存企業の特性について もカバ ー してお く必要が ある。つ まり、参入モー ドの決定 に あた って .新規参入企業は 自社の特性 、参入戦略お よび参入 を 目指 してい る市場の構造 .さ らに既存企業の特性それに新規参入の 結果 とい った全ての要素を網羅 してそれ らを評価 しなければな らないのである。 Yip〔1982,b〕は 、こうした条件を念 頭 に置 きつつ 、新規参入モー ドの選択 モデ ルを提起 してい る。 それにつ いて 、次章で検討す ることに したい0 -

(16)

32-Ⅳ

Yipの新 規 参 入 モ ー ド選 択 モT-ル 上述 してきたように、新規参入企業は参入にあた ってその方式を決定 しなけ ればな らない。つ まり、新規参入を試み る場合 、それを 自社の内部開発によ っ て行 うか 、あるいは他企業の買収 によ ってそれを実現す るか 、という参入モー ドを選択 しなければな らないのである。 それ ら2つの方式は参入企業にと って全 く異な ったオプシ ョンとなるわけで あるが 、その選択に影響を及ぼす ような因子 (factor)を統合 して、参入モー ド 選択の助力となることを目的とした現実的なモデルはこれまで存在 していなか ったのである。だが、もちろん参入モー ドの選択に対 して1つの手がかりを与えて くれ る因子も決 してなか ったわけではない。その1つの例が、多角化企業と新活動の間の シナジー (synergy)または関連性 (relatedness)であろう。たとえば、Ansofr

〔1965〕は作 るか買 うか (make or buy)の論議のなかで、大 きなシナ ジー か大 きな関連性が存在す る場合には買収 よりも内部開発による直接参入の方式 を選択すべ きであると主張 している。叫 そこでYip〔1982,b〕は、関連 性 の 概念 と参入障壁の概念との統合を図 りなが ら

、2

つの新規参入のモー ドを選択 す るためのモデルを提示 しようとしたのである0 1・ Yipの分析枠組 新規参入モー ドの選択に関するこれ までの分析は、主と して財務的問題 、参 入の責任を負担す る管理者の問題および法的な問題 、それに買収候補会社が利 用可能かどうかの問題に焦点を合わせてきた。これは、先述 したとお りである。 ところが参入障壁の役割については考察が限定 されるか 、または暗示的な取 り 扱い しかなされなか ったのである. しか し,実際には参入障壁 こそが新規参入モー ドの選択に大 きな影響を及ぼ すことになる。第 1に、参入の責任者のキヤ りア (career)という点に着 目す る と、かれ らは高障壁市場への直接参入を積極的に推進す ることはないであろう というのがその根拠である。第2に、参入障壁は2つの参入モー ドの下での予 想収益に相違を生み出すという点を指摘す ることができる。とい うのは .参入 障壁を小 さくす るとされる関連性とい う要因が2つのモー ドに対 して、それぞ - 33

(17)

-れ異な ったインパ ク トを与えることになるか らである。たとえば.直接参入の コス トの大 きさは新規参入企業と参入 した市場で形成 された新事業との関連性 によ って全く異な ったものにな ってくる。これと対照的に、関連性という要因 が買収の価格を低下させることはないであろう。それどころか、価格を上昇さ せることさえあるか もしれない。 1つには、その価格が買収の対象となる市場 にもとづいて設定 されるか らであり、さらに買収を希望 している企業が複数に わたるという状況 も考え られるためである。 以上の考察か らも、参入障壁の特質と大 きさが参入モー ドの選択に対 して直 接的な影響力を もっ ことは明 らかである。 したが って、以下のような2つの重 要な仮説を導 き出す ことができる。それは第 1に、高障壁は買収参入に好都合 であるということ、そして第

2

に、大きな関連性は直接参入に有利に働 くとい う仮説である。 しか し、ここで参入障壁および関連性という2つの因子のみで 参入モー ドの選択を考えることはできないという点に注意 しなければならないo それ らはあくまで、他の因子とともに新規参入企業の トップによ って評価され るべ き凶子なのである。 Yipによれば、直接参入か買収参入かの選択は二つの異な った因子、すなわ ち(1)標的市場に存在する参入障壁および新規参入企業の障壁突破能力という因 子と(2)財務 ,参入企業の トップのモーテ ィベーシ ョン、買収に対する合法性と 利用可能性とい った因子の関数である 〔Ibid,p.334〕。それゆえ、参入モー ド選択モデルは説明変数 (explanatory variable)として、(a)参入障壁および(b)

参入企業の障壁突破能力という測定尺度を含む必要がある。Bain〔1956〕 に 従 えば、市場構 造の諸要素が参入障壁の度合を示すことになるわけでI Yip 〔1982

,

C〕

に よ って、こうした市場構造要素に既存業者の保有 している資 源が加え られたことも付記 しておきたい。 説明変数の 1つである参入企業の障壁突破能力は、主として関連性に依存す ると解す ることができるが、同時に本社の規模および多様性とい った親会社の 特性によ って も影響をうけるにちがいない049 さらに、参入企業の頭初の競争 性 (competitiveness)は障壁突破能力を示すその他の因子であり、88 参入企業 の新規参入に対す るモーテ ィベーションも参入モー ドの選択に影響を及ぼすこ

-

3 4

(18)

-とになる。 また市場構造と参入企業についての変数 も、参入企業の トップの決断 、買収 戦略の利用可能性および法的影響を把えることができる.色や キヤりアに関す る りスクの大 きさは、障壁の大 きさと参入事業の障壁突破能力によ って決 ま って くるし、買収候補会社の利用可能性 も市場構造に依存 している。つ まり、競争 業者の数 と健全性は市場の集中度それに市場成長率の二つの関数なのである。 それに法律による制約についての見通 しも、市場構造 と参入企業の特性によ っ て把握 されなくてはな らない。なぜな ら、それ らが独禁法に もとづ く規制を成 立させる基準となるか らである。 便宜上 、従属変数 、つ まり直接参入か買収参入が選択 される確率を

Yd

/aで 表わせば、Yipのモデ/レは以下のように定式化 される。 図2 新規参入モー ド選択モデル Y

d

A - f(市場構造 と既存業者の特性 新規参入企業の親会社の特性 新規参入企業 と参入 した市場 との関連性 新規参入企業の競争性 新規参入企業のモーテ ィベーシ ョン) <出所 :Yip,1982b,p・334

>

2・ Yipの実証分析 上述 した参入モー ド選択モデルの妥 当性を検証す るために、Yipは31市場 に 新規参入を試みた参入企業59社について実証分析を行 っている。参入モー ドに ついていえば、59杜の うち、37社は内部開発 (直接参入)によ って 、そ して 22社は買収 (買収参入)を利用 してそれぞれ参入 したことが判明 した。色ゆ yipが研究 したアメ りカにおける31の市場の構成は、非耐久消費財市場6、 生産財市場25とな っており,これ らはすべてPIMSデータ ・ベ ースか ら抽出さ れたものである089) さらに製品 ライフサ イクルの観点か らみ ると、12市場は成 長段階に、 17市場 は成熟段 階 、そ して 2市場 は衰退段階にそれぞれ位置 して - 35

(19)

-いるとい う評価が下された。なお 、この評価は新規参入が実施 された市場で活 動 している既存企業の管理者によ って行われた ものである。以下で詳細に検討 す るYipの実証分析 は7年間 (1972-78)にわたる大がか りな研究であるが、 その中心 となる新規参入のケースの分析 も彼 らの報告に もとづいていることを ここで指摘 しておきたい。 2- 1 説明変数 と仮説の設定 Yipは参入モー ド選択モデルに もとづいて、説明変数を(1)市場構造、(2)参 入企業の親会社の特性 、(3)参入企業の関連性

、(

4

)

参入企業の競争性.(5)参入 のモ ーテ ィベー シ ヨン、そ して(6)買収への作用因に区分 している。そこで以 下では 、これ らの変数の中身を個別に吟味 し、また参入モー ドとの相関関係 についてのYipの仮 説 もみてい くことにす る〔Yip,1982b,pp・335-339〕。 (1) 市場構造 最初に市場構造であるが 、これについては、参入障壁を大 きくす る構 造変数が買収の選択を促 し、障壁長 小 さくす る構造変数は直接参入に有 利に作用す ると考えるのが妥 当であろう。Yipは市場構造について、(i) 市場成長率、(ii)市場集中度 .OiO投資集約度 、6V)広告集約度 、(V)既存業者 の親会社の規模 という

5

つの構造変数を検証 している。裏返 って考える と、これ らの主要構造変数を集約す ることによ って 、参入障壁の強さと 障壁を弱める市場不均衡 (marketdisequilibrium)の度合を測定するこ

とができるのである。 市場成長率についていえば、急速な市場成長は不均衡状態を作 り出す ことによ って参入障壁のインパク トを弱めると思われる。 したが って、 それは直接参入を促す ことになる。 参入の責任者のモーテ ィベーシ ョンもまた、低成長市場においては買 収を選好す るはずである。その根拠は、低成長市場で急速に業績を向上 させるのは困難である場合が多 く、このため短期の実績で評価 されがち な管理者が時間的制約を うけるということに求め られる。 さらに成熟 した低成長市場には、数多 くの買収候補会社の存在が予想 される。弱小の競争業者の圧迫によ って統合が実現 してし1くというのが - 36

(20)

-成熟市場の特徴であり、こうした農争業者は適切な買収候補会社である ことが多いのである。 それゆえ、障壁 、管理者および利用可能性要因はすべて、高成長市場 では直接参入に、そして低成長市場では買収参入にそれぞれ有利に作用 す るという仮説をたてることができる。 市場集中度によ って,反撃 と規模の 2つの障壁を測ることがで きる。 一般に、市場 リーダーの シェアが大 きくなるほど、参入企業に対す る皮 撃は質 ・量ともに激 しさを増す。同時に、集中は規模障壁にもっながる。 それゆえ、高 レベルの集中はこれ らの障壁を回避す るために買収参入香 促すはずである。ところが、反 トラス ト要因は全 く逆の結果を生み出す ことになる。たとえば、買収が集中を強化す るという問題を考えると、 それが顕著にみ られるのは、集中度の高い市場であることが明 らかと杏 るo Lか も.こうした市場には適切な買収候補会社が存在 していないの がふつ うである。こうした矛盾のために、実証分析において集中度 と参 入モー ドとのつなが りを予側す ることは困難であり、Yipも両者の関係 について仮説を設定 していない。 集中度とともに、投資集約度 も規模障壁につなが る。また投資集約皮 は、巨額の資金要求という側面 もも ってお り、これは直接参入にと って 深刻な問題を形成す ることになる。というのは、直接参入にはふつ う社 内で創出された資金が使用されることになるか らである。対照的に、必 要投資額の大 きさは買収参入の場合 ,障壁 とはな らない。それゆえ、投 資集約度という変数は直接参入の選択とは負の相関を示 し、そ して買収 とは正の相関を示すはずである。 一般に、広告集約度は差別化障壁の最たるものである。高 レベルの広 告集約度が強固な参入障壁を形成するという見方は.定説になりつつあ るといえよう。 しか し、同時に高い広告集約度が直接参入に有利に作用 するとみることもできる。なぜな ら、R&D計画などとは反対に、広告 キャンペーンが規模に関係なく、迅速に実施 され うるか らである。この ように、高レベルの広告集約度は直接参入に対 して魅力的なものになる -3

(21)

7-と同時に、障壁 ともな りうることが認識 されるO こうした理由か ら、仮 説は設定 されなか ったのである。 市場構造変数に既存業者の資源を含めて考察す る必要性については、 すでに言及 したとお りである。豊富な資源を もっ既存業者は、新規参入 企業に対 して強力なとりでをは りめ ぐらせ ることができるはずである。 これは 、潜在的参入企業が特に既存業者の親会社の規模を考慮す る必要 があるということを示唆 している。大規模な親会社を も った既存業者が 存在 してい る市場への参入企業は 、親会社の豊富な資源によ ってバ ック ア ップされた既存業者 との全面競争 (competitivebattle)を回避するた めに買収を選択す るケースが多 くみ られるようである。さらに、既存業 者の親会社 と比べた参入企業の親会社の規模 もまた、参入モー ドの選択 にと って適切な指標 となるはずである。相対的規模が大 きい場合には、 直接参入の選択が選好 されるであろう。 (2) 参入企業の親会社の特性 新規参入企業の親会社の特性を構成せ るものは、規模 (size)と多様 性 (diversity)であるO親会社が大規模である場合には、(i)参入障壁を 直接克服す るだけの大 きな資源を も っている

.(

l

i

)買収に対す る法的規制 という2つの理由か ら直接参入モー ドが合理的な選択になると思われる。 他方、大規模な親会社の存在は買収の実施を も容易にす るであろう。そ れゆえ、親会社の規模の兵の影響は明 らかでない。 また多角化の進んだ親会社は 、かれ らが買収を通 した成長についてこ れまで数多 くの経験を積んでいるた桝 こ、買収参入を利用す るはずであ る。なお 、参入企業の親会社の分類には有名なRumelt〔1974〕のカテゴ I)-が用い られている.6% (3) 参入企業の関連性 新規参入企業と参入 した市場 との関連性については 、関連性の

2

つの タイプ、つ まり(i)多角化の動きのタイプ(typeofdiversification move) と(ii)諸活動 と顧客の共有 (shared activitiesand customers)が参入モ ー ドの選択に影響を及ぼす と思われ る.el)

(22)

8-参入企業は親会社の既存事業との関連性にもとづ き、Yipに よ って① 地理的拡張 .② セグメン ト拡張 、(参関連分野への拡張 、(彰垂直的統合 、 それに⑤非関連分野への多角化にそれぞれ分類 されている。なお 、地理 的拡張が参入 として考察に含め られたのは、現製品の新地域への拡張の 場合で も参入障壁に直面す るという理由に依 ってお り、またセグメン ト 拡張は、 トータルな市場の 1つのセグメン トか ら他のセグメン トへの参 入 と定義 される。その他の カテゴ リーについては 、周知の とお りであり、 説明を要 しないであろう。ここでは、非関連分野への新規参入の動 きが 活発化す るほど、参入モー ドとして買収の選択が多 くなるとい う仮説が 立て られた。 しか し、関連性についての詳細な測度は恐 らく親会社と参入企業の特 定活動と顧客についての共有度であろう。この共有度は潜在的なシナ ジ ーというよりも.む しろ顕在化 したシナ ジーを もた らす ことになる。そ れゆえ、共有度が大 きい場合には直接参入モー ドが選択 される、という 仮説が設定 されたのである。なお 、この仮説の検証を 目的として、 Yip は製造、R&D、流通 .販売 、広告 とプロモーシ ョン、直接の顧客それ にエ ン ド ・ユーザーという諸活動 と顧客の共有についての7つのカテゴ り-すべてを等 しくウェー トづけた平均共有度 とい う合成変数を利用 し てお り、この変数が多重回帰によ って分析 されたのであるO餌

(

4

)

参入企業の競争性 参入障壁と参入企業の障壁を小 さくす る能力は 、明 らかに参入企業の 頭初の競争性に影響を及ぼす ことになる。頭初の競争ポ ジシ ョンが既存 業者に比べて強力である参入企業は、直接参入を選択す ると思われる。 また、相対的競争ポ ジシ ョンが弱いと判断される参入企業については . 買収を選好すべ きである。ただ買収を選択する場合には、自社の保有 し ているスキ/レと資源を取得によ って有効に利用 しうるという確信を もつ ことが前提 となることに注意 しなければな らない。 さらに、買収候補会 社の競争ポ ジシ ョンは強力 というよりも、む しろ弱小である場合が一般 的なようである。 したが って、直接参入モー ドは頭初の強力な競争ポ ジ - 3

(23)

9-シ ョンと、そして買収は弱小の競争ポジ9-ションとそれぞれ結びつ くとい う仮説が成立 しうるのである。 競争性についての測度として、品質、価格 、コス ト、生産の有効性、販 売員の有効性、流通の有効性、広告 ・プロモーション費用、そして自社ブ ラン ドの強 さという8つが利用されたわけであるが、Yipは競争性の分 析にあたり、価格とコス トは個別に検証し、その他の6つの変数について は、それらを統合して平均競争ポジションという合成変数を利用している禦 (5).参入のモーテ ィベーシ ョンと買収への作用因 参入障壁と切 り離 して考えると、参入企業の参入に対する動機 も参入 モー ドの選択に少なか らず影響を与えると思われる.現市場で展開され た競争優位性 (competitive advantage)や独 自能力を利用する目的で、 新規参入が行われる場合に直接モー ドが選択されるようであるo糾 現市 場でのポジシ ョンを守 るための参入についても同 じことがいえよう。こ の場合、両ケースとも参入 した市場 との高度の関連性を前提にしている ということはいうまでもない。 それ以外にも、市場の成長という期待によ って動機づけ られた参入企 業が積極的に直接参入の機会を利用す るはずである。というのは、買収 によ って提供 される即座の成長よりも市場参加による将来の大きな成長 の方が参入企業を動機づけると思われるか らである

.

W

市場構造および既存業者 という要因に加えて、買収への作用因となる 株式市場 (stock market)やその他の条件 も当然参入モー ドの選択に影 響を及ぼすことになろう.これが 6つめの説明変数であり、Yipはこの 影響を検証す るために、買収への作用因という変数を設けて回帰分析に 利用 しているのである。以下で、こうした回帰分析の結果に焦点を合わ せて議論を進めていくことにする。 ー 40

(24)

-2-2 回帰分析の結果 表1 新規参入モー ドの選択 に関す る回帰分析結果 変 数 予測

葦 %

結 # 蓋 ) 相関関係果 (有 意 ) 市場構造

+

+

直接参入貞収参入直接参入直接参入直接参入買収参入 市場成長率 市場集中度

?

投 資集約度

+

広告集約度

?

既存業者の親会社の規模

+

親会社の相対的規模

?

参入企業の親会社の特性 親会社の規模 親会社の多様性 -非関連事業

+

+

参入企業の関連性 多角化の タイプ-非関連分野への多角化 諸活動 と顧客の共有 -平均共有度 参入企業の競争性 平均競争ポ ジシ ョン 参入のモーテ ィベ- シ ヨン 市場成長動機 防 御 動 機

-買収への作用因

+

(株式市場およびその他の条件 ) ※ 十は買収参入と、そして-は直接参入との相関をそれぞれ意味している。 (出所 :Yip,1982b.p・340・)

(25)

-41-新規参入モー ドの選択についての回帰分析結果は、表 1のとお りである。 最終的にYipが分析 した変数は、表に掲げた 14の独立変数であった。 Yipは その理由を、観察 したケースが59のみであり、潜在的には独立変数がかなり の数になるということを考えると、相関関係を最小化 し、自由度(degreeof freedom)を最大にするためには独立変数を限定す ることが必要であ ったと述 べている〔Yip,1982b,p・340〕.W それでは 、説明変数ごとに回帰分析 の結果を検討 してい くことに しよう。 (1) 市場構造 と既存業者の特性 検証 された5つの変数の うち 2つは、有意に予測 どお りの結果を示 し た (表 1参照)。実際に、急速な市場成長は直接参入と、そして既存業者 の大規模な親会社は買収参入 とそれぞれ密接な関連があ ったわけである。 仮説が設定 されなか った2つの変数 、すなわち集中度 と広告集約度は実 際 .有意ではなか った。市場構造変数の1つである投資集約度に目を転 じると、買収 と正の相関を示す という予測 とは全 く逆の結果とな ってい る。つ まり、投資集約度は直接参入 と有意な正の相関関係があ ったので ある。 (2)参入企業の親会社の特性 参入企業の親会社の規模については,その両極端の作用のために明確 な仮説を設定す ることはできなか った。回帰分析による結果 もこれと矛 盾 していない。すなわち、参入企業の親会社の規模 という独立変数は有 意ではなか ったのである。 また、既存業者の親会社に比べた参入企業の親会社の規模は買収の選 択 と負の相関を示す と予測 されたわけであるが 、表 1をみると相対的な 親会社の規模 とい う変数は有意水準 (significancelevel)に達 してお ら ず 、したが ってこの仮説は決定的な ものとはな らないといえよう0 親会社の多様性に関 していえば、多角化の進んだ親会社はど買収を選 好す るとい う仮説を支持 して、非関連事業 という変数は買収 と有意に正 の相関を示 している。 しか し、この変数は相対的な親会社の規模という 変数 ときわめて低い相関 (0.04)しか示 さなか ったために、多様性の作 - 4

(26)

2-用は親会社の規模 と区別 して考察 されていることに注意 しなければな ら ないであろう。 (3) 参入企業の関連性と競争性 表 1の結果によれば、関連性の測度では2つの参入モー ドを識別でき ないことになる。つ まり、非関連分野への多角化 (多角化の動 きの タイ プ) も平均共有度 (諸活動 と顧客の共有) もともに有意な変数ではなか ったのである。関連性は参入モー ドの選択に対 して.影響力を もたない のであろうか。この疑問を解決す る鍵を握 っているのは 、参入企業の競 争性という側面である。それに注 目していただ きたい。 競争性を表わ している平均ポ ジシ ョンをみ ると、それは直接参入 と有 意に正の相関を示 している.強固な農争ポ ジシ ョンが高度の関連性によ ってもたらされるという点に着 目すれば 、関連性の変数が有意でなか った ことも説明できるはずである。 したが って、次の ように要約す ることが できる。厳密にいうな ら、新規参入企業は関連性その ものよりも、関連 性が競争ポジシ ョンに関 して もた らす ものによ って大 きな影響を うける ことになるのである。 平均ポ ジションと直接参入の有意性については、イノベー シ ョンとい う観点か らも説明す ることができるOたとえば、イ ノベーシ ョンに もと づいて開発された新製品は直接参入にと って大 きな武器 となる。競争ポ ジシ ョンの上昇によ って 、ます ますイ ノベーシ ョンが活発化す ることに なり、また参入企業に してみれば、自社のイノベー シ ョンによ って陳腐 化 して しまうような事業をわざわざ取得す る必要 もないわけである。 (4) 参入のモーテ ィベ-シ ヨンと買収への作用因 参入動機 と しての市場成長は、予測どお り高い有意性を も って直接参 入 と正の相関を示 している. しか し,その一方で仮説 どお りの結果にな ると思われた防御動機は、有意性を示 さなか ったのである。Yipによれ ば、これは新規参入のケース分析に協力 して くれた既存業者にと って、 この種の動機の解釈がむずか しか ったためか もしれない〔Ibid,p.343〕。 そ して同様に、買収への作用因とい う変数 も有意な変数ではなか ったと -4

(27)

3-いうことが表 1か ら明 らかにされている。 以上の回帰分析の結果は、Yipの新 規参入モ- ド選択モデルの妥当性 をほぼ裏付けるものであ ったと解 して もよさそうである。モデルの全体 的な説明力が非常に大 きいということは、有意で予測 と反対の結果を示 した変数が投資集約度のみであ ったという事実によ って証明されている といえよう。 結果を要約す ると、直接参入の選択 と正の相関 (買収 と負の相関)を 示 した変数は 、市場成長率 、投資集約度 、市場成長動機 、それに相対的 な平均競争ポ ジシ ョンであり、また買収の選択 と正の相関 (直接参入と 負の相関)を示 した変数は、既存業者の親会社の規模 、多角化の進んだ 親会社を もつ参入企業 (非関連事業カテゴ り-)であ ったO これ らの結果を踏 まえたうえで、次のような結論を導 き出す ことがで きよう。つ まり、参入 した市場の構造やその他の変数に関係なく、新 堤 参入企業の親会社の特性が参入モー ド選択の主要な決定因となるのであ る。

むす ぴ 一要約 と展望 本稿 では、Yipの実証分析を手がか りとして、参入障壁 というテーマに経営 戦略論の視角か らアプローチ し、より現実的な新規参入理論の展開を意図 して 考察をすすめてきた。 Yipの参入理論の中心になるのは、新規参入への道 という新概念 と参入モー ド選択モデルである。前者は産業組織論の分野で展開 されてきた参入理論に修 正を試み ることによ って得 られた概念である。Bainを代表格 とする従来の参入 理論では、市場構造が既存企業よりも新規参入企業に対 して不利に作用す ると いうことがいたず らに強調 され 、しか も潜在的参入企業と しては新生企業のみ が識別 されたにす ぎなか った。これに対 してYipは異論を唱え、次の 3点の修 正を主張 して きたわけである。第 1に、潜在的参入企業と して既存企業を考察 に含め ることであり、これによ って参入企業が保有 している資産やス辛/レの参 1 4

(28)

4-入障壁への影響という新 しい視角が生 まれてくることになる。つ まり、これ ら の資源を駆使すれば、新規参入企業は障壁の作用を緩和す ることができるとい う点が認識 されるようになるのであるO第

2

の修正点は 、戦略グループの認識 である。これは、戦略グループ理論の上にた って 、市場の中核部分への参入 と 周辺部分への参入を識別可能に したという意味で有用な修正 とな っている。第 3は、競争業者 と虎争戦略の異質性 ・独 自性の考慮である。 これこそが 、新規 参入への道 という新概念を生み出す契機 とな った最 も重要な修正であ ったとい うことができる。すなわち、新規参入企業はユニークな競争戦略の活用を通 し て参入障壁の影響をマイナスにす る、つ まり新規参入への道を生み出す ことが できるのである。第 4は、参入モー ドとしての買収の認識である. これによ っ て,新規参入方式の選択範囲が拡が ることにな り、参入企業は2つのモー ドを 適宜に使い分けることで参入障壁の突破を実現 できるという論理展開がなされ るわけである。 つ ぎに、Yipの新規参入モー ド選択モデルは、上述 した新 しい参入理論に も とづ き、市場構造だけでは参入障壁を決定できないとい う立場に立 って展開さ れたものであるQ したが って、Yipのモデルは参入モー ド選択 に対す る作用因 として、市場構造以外に も既存企業の特性 、自社の親会社の特性 、関連性 、競 争ポジシ ョン、参入の動機をカバー した現実的でかつ精密なものにな っている。 それゆえに、このモデルを利用 した実証分析の結果は 、新規参入企業および既 存企業の両方にと ってきわめて有用な示唆になると思われるのである0 最後に参入理論に関 して、残 された若干の研究課題を指摘 してお こう。 Yipの参入理論は、Porterの競争戦略モデルにみ られ るように 、経営戦略論 と産業組織論とを接合す る意図を も って展開 された ものである〔Porter,1981〕。 しか し,戦略研究にあた っては、それ以外に も経営組織論やマーケテ イング論 か らもアプローチ し、それぞれの研究成果をとり入れなが ら、その研究を充実 させていかなければな らない〔Biggadike,1981;Jemison,1981a,1981b,中 橋,1983〕。そうすることによ って、より包括的な参入理論が構築 されること になると思われるか らである。

さらに .本稿で取 り上げたYipの研究は 、新規参入に対するより現実的なアブ

(29)

45-ローチに先鞭をつけた ものであると同時に 、これをさ らに拡充 してい くための 方向について も示唆を与えてい ると思われ る。そこか ら、われわれは以下のよ うな課題を見出す ことがで きるのである。 第1に、新規参入企業 と市場をカバーす る範囲の拡大 ということが挙げ られ る。 Yipは 、頭初に採用 した参入戦略に焦点を合わせなが ら、所与の期間にお いて市場 とそこへ参入 して きた参入企業すべてをクロスセクシ ョンに分析 して い る〔Yip,1982C,p.134 〕。これに対 して.Yipと同様に新規参入をテーマと した実証研究を行 っているBiggadike〔1979a,b〕は市場ごとに1つの参入企 業を経 時的に観察 してい く方法を採用 している。今後 、要請 され るアプローチ は、Yipの幅 (breadth)とBiggadikeの深み (depth)を統合す る研究であろう。 所与の期 間において 、市場 に参入 して きた参入企業すべてを経時的に観察す る とい う方法は 、決 して不可能ではないと思われるか らである。 第2に、統計的手法に依 らない臨床的アプローチ (clinicalapproach)ち. 参入研究の充実のために今後は .不可欠 とな って くるはずである。たとえば 、 会社研究 によ って参入 に関す る決定が どのようになされ るかを分析す ることも 非常に有用であろう。 この場合 .着 目すべ き問題 と して次の2点を指摘するこ とがで きる。 それは 、①潜在的参入企業は予想 され る参入障壁を評価 している のか どうか 、そ して もしそ うであれば .どの ように評価 してい るのか 、C2)新規 参入企業はいかな る根拠で参入モー ドを選択す るのか 、である。 こうした塩床 的アプ ローチは 、新規参入企業が市場構造および競争業者の強み ・弱みについ ての メ ッセー ジを どの程度読み取 ることがで きるのか 、それにとの程度 まで素 直に従 うのか 、を明 らかにす る手がか りとなるはずである。 本稿 で一貫 して強調 して きたのは 、新規参入企業は 、多 くの参入障壁に直面 す るが ,同時にそれを克服す るための多 くの選択手段 もも っているとい うこと であ ったO これを念頭 に置 きなが ら、残 された研究課題 を解明 してい くことを 今後の課題 と したい。 - 46

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参照

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