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少年犯罪に対する厳罰志向性と犯罪不安および被害リスク知覚の関連―先行要因としての子どもイメージに着目して―

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Academic year: 2021

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早期公開日:2021 年 2 月 7 日 DOI: 10.2130/jjesp.2001

〔原   著〕

少年犯罪に対する厳罰志向性と

犯罪不安および被害リスク知覚の関連

―先行要因としての子どもイメージに着目して―

向 井 智 哉       藤 野 京 子

東京大学法学政治学研究科 早稲田大学文学学術院 要   約 本研究は,少年犯罪者に対する厳罰志向性と少年犯罪に関する犯罪不安および被害リスク知覚,子どもは 理解不能であるという子どもイメージの関連を検討することを目的とした。先行の議論や研究にもとづき, a)少年犯罪に対する厳罰志向性は少年犯罪に関する犯罪不安によって規定される,b)犯罪不安は被害リス ク知覚によって規定される,c)被害リスク知覚は理解不能イメージによって規定されることを想定した仮 説モデルを構成し,異なる想定を置いた別のモデルと適合度および情報量の観点で比較を行った。226 名か ら得られたデータを分析したところ,上記の仮説モデルは支持された。 キーワード: 厳罰志向性,厳罰傾向,子どもイメージ,犯罪不安,被害リスク知覚 問題と目的

厳罰志向性(severe punishment orientation)は,「現 状の裁判は犯罪者に甘いと考え,より厳罰を求める傾向」 と定義される(板山,2014)。厳罰志向性と類似した概 念として,「刑罰目的にかかわらず,より厳しい刑事制 裁や犯罪政策を支持すること」(Maruna & King, 2009) と定義される厳罰傾向(punitiveness)がある。厳罰傾 向の用語は日本でもしばしば用いられている(白井, 2009,2010;白井・黒岩,2009)が,定義上両者はき わめて類似した概念であると考えられるため,本論文で は特に区別せず「厳罰志向性」の語に統一する。 これまでこの厳罰志向性に関する研究は,欧米を中心 に広く行われてきた(レビューとしてUnnever & Cullen, 2009)。そのような研究では,対象を限定せず,一般的 な犯罪者に対する厳罰志向性を検討するものが多い (e.g., Hanslmaier & Baier, 2016; Tyler & Boeckmann, 1997)。

他方で対象を少年犯罪者に限定した上で行われた調査も 多数存在する(Baron & Hartnagel, 1996; Grasmick, Cochran, Bursik, & Kimpel, 1993; Grasmick & McGill, 1994; Piquero, Cullen, Unnever, Piquero, & Gordon, 2010)。

近年の日本では,少年犯罪をめぐる厳罰的な法改正や それをめぐる議論が活発に行われている。直近の法改正 としては,2014 年に少年犯罪に対する有期刑の上限を 引き上げることなどを主な内容とする厳罰的な少年法改 正が行われた。また,現在においても,少年法の適用年 齢を現在の20 歳未満から 18 歳未満へと引き下げること などを内容とする提言が2015 年になされたことを受け, その提案の妥当性について法制審議会の部会(若年者に 対する刑事法制の在り方に関する勉強会,2016)や,日 弁連(日本弁護士連合会,2015)を中心に議論が行われ ている1)。このような社会的動向を考慮に入れれば,少 年犯罪に対する厳罰志向性がどのような要因によって規 定されるかを検討することには社会的・学術的意義があ 第1 著者連絡先 e-mail: [email protected]

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ると考えられる。そこで,本研究では,少年犯罪に対す る厳罰志向性を説明するモデルを構築することを目的と する。 なお,少年犯罪に関する研究では,シナリオ法によっ て特定の罪種を提示し,それに対する回答者の態度を 測定しているものも比較的少数ながら存在する(e.g., Applegate, Davis, & Cullen, 2009)。しかし,上述の少年 法の適用年齢の引き下げをめぐる議論では,必ずしも特 定の罪種が想定されているわけではない。そのため本研 究では,特定の罪種に限定されない全般的な厳罰志向性 を検討する。 少年犯罪に対する厳罰志向性と犯罪不安との関連 それでは少年犯罪に対する厳罰志向性(以下,単に「厳 罰志向性」とする)はどのような要因によって規定され るのだろうか。これまでの議論では,少年犯罪に対する 厳罰化の背後にある要因として,「体感不安」(佐々木, 2004)や少年犯罪への「不安」(牧野,2006)が挙げら れてきた。それらの議論では以下のように論じられる。 まず90 年代後半から 2000 年代前半には,少年による「凶 悪な」犯罪が相次ぎ,少年犯罪は人々の関心を広く集め るトピックとなった(鮎川,2001)。同時に,少年犯罪 に関する不安も強まり(葛野,2004),その結果として, 少年犯罪に対して厳罰が求められるようになった(大庭, 2010)。このように少年犯罪と関連する分野では,少年 犯罪に対する「不安」が少年犯罪に対する厳罰化の一因 として指摘されてきた。 現在では,少年犯罪に対する厳罰化が大きな話題と なった90 年代後半から 2000 年代と比べて,少年犯罪の 認知件数は減少している(法務省,2018)。その一方で, 2017 年に行われた調査(社会安全研究財団,2019)では, 少年の犯罪・非行が多くなっていると答えた回答者の割 合(51.6%)と,悪質化していると答えた回答者の割合 (64.8%)は,いずれも過半数を占めている。これらの ことからは,少年犯罪が減少した近年においても,少年 犯罪に関する治安が悪化しているという意見への支持は 依然として高いことが窺える。したがって,少年犯罪に 対する犯罪不安および被害リスク知覚がどのようなプロ セスを経て,厳罰志向性とどのように関連するのかを検 討することには,現在においても大きな社会的・学術的 意義があると考えられる。そこで本研究では,「不安」 に着目して厳罰志向性を説明するモデルを構築する。し かし,それに際して問題になる点として,「不安」の重 要性を強調する上述の議論では,それらの用語が必ずし も明確に定義されて用いられていないという点が指摘で きる。 これまでの実証研究においては,上述の議論で「不安」 として包括的に捉えられる概念は,以下の2 つの軸に 沿って細分化されて用いられている。第一の軸は,犯罪 不安と被害リスク知覚2)という区別である。前者の犯 罪不安は,「犯罪や,犯罪に関連するシンボルに対する 情緒的反応」を指し,後者の被害リスク知覚は,「ある 状況下で犯罪被害に遭う主観的確率」を指す(島田・鈴 木・原田,2004)。 また,第二の軸として,犯罪不安と被害リスク知覚 は,それらが社会的水準のものか個人的水準のものかと いう点でも区別される(荒井・藤・吉田,2010;Bott & Koch-Arzberger, 2012)。たとえば荒井他(2010)は,犯 罪不安と被害リスク知覚を社会的/個人的という軸で細 分化した上で,社会的水準での犯罪不安と被害リスク知 覚および個人的水準での犯罪不安と被害リスク知覚を別 個に測定する尺度を作成している。 前者の軸については,このような区別はその他の研究 でも広く採用されてきた(Armborst, 2014;橋本,2012; Jackson, 2004, 2006;Mühler & Schmidtke, 2012;小俣, 2012;中谷内・島田,2008)。また,後者の軸については, 荒井他(2010)が指摘するように,社会的な水準での犯 罪についての認識と個人的な水準でのそれには大きな 差があることが報告されている(社会安全研究財団, 2019)。これらのことを考えれば,犯罪不安/被害リス ク知覚,社会的/個人的という軸で区別を行った上で, 厳罰志向性との関連を検討することは有益だと思われる。 1)本論文の査読中に,現在の政権与党である自民党と公明党からなる「与党・少年法検討プロジェクトチーム」 が少年法の適用年齢を現行の20 歳未満とすることで合意した(与党・少年法検討 PT,2020)。しかし,同 合意では今後も少年法適用年齢の見直しを検討することが確認されていることから,今後も議論は継続する ことが予想される。したがって,今国会での適用年齢の引下げが見送られたことによって本研究の意義は失 われないと考えられる。 2)「被害リスク知覚」と類似した用語として,「犯罪リスク認知」(阪口,2013)や「犯罪に対する認知的反応」 (荒井他,2010)なども用いられるが,明確に区別された用語ではないため,本研究では島田他(2004)に 従い,「被害リスク知覚」に統一する。

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このような区別を採用した上で厳罰志向性との関連を 検討する際に問題となるのは,犯罪不安および被害リス ク知覚が相互にどのように関連するかである。この点に ついては,先行研究間で不一致が存在する。第一の流れ としては,犯罪不安と被害リスク知覚は並列に関わると する研究がある(荒井他,2010;Armborst, 2014;Mühler & Schmidtke, 2012)。たとえば荒井他(2010)は,テレ ビなどで犯罪についての報道を見ることで回答者に生じ るインパクトが,犯罪不安および被害リスク知覚を媒介 して,防犯行動につながるとする研究を提示している。 第二の流れとしては,被害リスク知覚が犯罪不安に先行 することを想定する研究がある(Ferraro, 1995;Jackson, 2004;島田他,2004)。これらの研究では,犯罪のリス クを認知的に把握することに引き続いて,それに対する 感情的な反応である犯罪不安が生じることが想定されて いる。 このように先行研究では,犯罪不安と被害リスク知覚 を並列的に捉える流れと,被害リスク知覚を犯罪不安に 先行するものとして捉える流れが併存している。その結 果として,厳罰志向性との関連においても,被害リスク 知覚は厳罰志向性と直接関連するのか,あるいは犯罪不 安を経由して厳罰志向性と関連するのかは現段階では不 明確である。そこで本研究は,社会的/個人的という区 別を導入した上で,犯罪不安と被害リスク知覚が同じ水 準にあるとするモデルと,被害リスク知覚が犯罪不安に 先行するとするモデルを比較する。 子どもイメージと犯罪不安および被害リスク知覚の関連 ここまで述べてきた犯罪不安および被害リスク知覚が 厳罰志向性を強めるという知見は,少年犯罪だけではな く全般的な犯罪を扱った研究でも広く見出されているが (e.g., Costelloe, Chiricos, & Gertz, 2009; Hartnagel &

Templeton, 2012),少年犯罪者に対する厳罰志向性を対 象とした研究では,少年犯罪独自の変数として,子ども イメージもしばしば取り上げられている(Mears, Hay, Gertz, & Mancini, 2007)。そのような子どもイメージと して頻繁に検討されている変数の1 つは,子どもの可塑 性に関するイメージである。たとえばMetcalfe, Pickett, & Mancini(2015)は,暴力的な少年犯罪者であっても 可塑的であると認識するほど,厳罰志向性は低いことを 報告している。また,アメリカで調査を行ったPickett & Chiricos(2012)も白人群で同様の結果を報告してい る。また,他の子どもイメージを取り上げた研究として Metcalfe et al.(2015)がある。この研究では,上の可塑 性と同様に,「少年の起こす犯罪は,大人と同程度に凶 悪である」という認識も,厳罰志向性と正の関連を示す ことが報告されている。 以上のように,子どもイメージについては,可塑的と いう子どもイメージおよび凶悪であるという子どもイ メージが取り上げられてきており,一貫した知見が得ら れている。しかし,欧米諸国においても日本においても, そもそも少年法は,成人と比べて少年には可塑性がある という前提のもと,特別寛大な処遇を少年に予定してい る(石川・曽根・高橋・田口・守山,2001;森田,2008; 沢登,1999)。このことを考えれば,子どもが可塑的で あると考えるほど厳罰を志向しなくなるという知見はい わば当然のものである。また後者の子どもイメージにつ いても,子どもを凶悪なものとして認識するほど厳罰志 向性が高まるという知見に新奇性は乏しいと考えられ る。つまり,可塑的および凶悪という子どもイメージが 厳罰志向性と関連することにはすでに一貫した知見が海 外で得られていることにくわえ,日本においてこの知見 を検証することに意義がないとは言えないにせよ,それ を追証することによって得られる意義は乏しいと思われ る。これらのことから,本研究では可塑的および凶悪と いう子どもイメージではなく,これまで検討されてこな かった子どもイメージの側面を取り上げる。その側面と は,理解不能という子どもイメージ(以下,理解不能イ メージとする)である。 理解不能イメージ 上述のように90 年代から 2000 年 代の日本では,少年犯罪に大きな関心が寄せられた。そ の時期には,神戸児童連続殺傷事件(1996 年)や佐賀 バスジャック事件(2000 年),長崎同級生殺人事件(2004 年)などの事件が社会的な関心を集めたが,同時期の少 年犯罪には,その犯罪の動機が不明確な,いわゆる「い きなり型」という特徴があることが指摘された(葉梨, 1999;前田,2000)。つまり,貧困や怨恨といった「従 来の」動機ではなく,他人から見れば一見些細な理由を 動機とする事件が増えたという指摘がなされるように なった(cf.,岡本,2012;後藤,2009)。そのような動 機の不明確性を背景として,メディア報道の中では少年 犯罪者の「心」が焦点化され(牧野,2006),その「心」 が「理解しきれないもの」「わけのわからないもの」で あることを表わす言葉として「心の闇」という表現が多 用されるようになった(赤羽,2013;土井,2012;鈴木, 2013)。芹沢(2006)や土井(2003)は,このような理 解不能イメージが社会に受け入れられていくなかで,犯 罪不安が高まり,上記の厳罰的な少年法改正につながっ たことを指摘している。また佐藤(1998)は,このよう な子どもイメージの変化は,少年犯罪者に典型的に見ら

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れるにせよ,それだけに限定されるわけではなく,一般 的な子どもイメージについても類似した変化が生じたこ とを論じている。 このように,犯罪不安の高まりや少年法の厳罰的な改 正の背後には,「子どもの意図や行動を把握することは 困難である」という子どもイメージが存在したことが指 摘されてきた。しかし,あるリスクが理解しやすいもの であるかそうでないかはリスク知覚の高低を左右する重 要な要素であることが示されている(Slovic, 1987)。し たがって,少年犯罪者について理解できないというイ メージを持つほど,そのような理解のできない存在であ る少年犯罪者によってなされる犯罪のリスクを高く知覚 し,不安を感じることは容易に予想できる。このことを 鑑みれば,上で可塑性および凶悪イメージについて述べ たのと同様に,少年犯罪者についての理解不能イメージ を取り上げ実証的に検証する意義は大きくないと考えら れる。それに対し,少年犯罪に限定されない一般的な少 年イメージが犯罪に関する意識とどのように関わるかは これまでの研究では十分には検討されてこなかった。そ のため,本研究で一般的な少年イメージが犯罪不安ない し被害リスク知覚と関連することが示されれば,本研究 の主題である少年法の改正に関わる議論に新たな示唆を 与えうることが期待できる。そこで本研究では,一般的 な少年についての理解不能イメージが,犯罪不安ないし 被害リスク知覚とどのように関連するかを検討する。 目 的 以上の議論から,本研究は,一般的な少年についての 理解不能イメージを先行要因として想定した上で,2 つ のモデルを比較することを目的とする。具体的には,理 解不能イメージが犯罪不安と被害リスク知覚を媒介して 厳罰志向性と関連することを想定する3 段階のモデル と,犯罪不安と被害リスク知覚が異なる水準にあること を想定する4 段階のモデルを共分散構造分析によって比 較検討する。 方   法 調査協力者と手続き 質問紙は筆者が協力者に直接実施するか,知人を介し て実施するかという2 つの経路を通したスノーボール式 のサンプリングによって配布された。後者の経路に関し ては,筆者が知人に直接手渡して配布を依頼するか,遠 方に住む場合には郵送して,そののちに返送してもらう という形式をとった。最終的に回答に不備のなかった 226 名(平均年齢 39.6 歳,SD=17.66)を分析対象とした。 そのうち男性は88 名(38.9%),女性は 138 名(61.1%), 子どもがいる回答者は101 名(44.7%),いない回答者 は125 名(55.3%)であった。調査は 2016 年 2 月から 3 月に実施された。 倫理的配慮として,回答は任意のタイミングで中止で き,研究目的のみに用いられること,回答は匿名で行わ れるため個人の回答が問題とされることはないことなど 倫理に係る条項を最初の頁に記載し,調査協力の同意確 認は質問紙への回答をもって行うこととした。 質問紙の内容 質問紙には以下の内容が含まれた。なお,提示の順序 は記述の順序と同一であった。 厳罰志向性 板山(2012)によって作成された厳罰志 向性尺度を用いた。この尺度は「裁判所は犯罪者に甘す ぎると思う」など13 項目から構成されているが,同時 に「殺害したのが1 人だからという理由で,犯罪者が死 刑にならないのはおかしいと思う」や「裁判では,加害 者の社会復帰を優先するべきだと思う」など死刑への支 持,犯罪者の更生への支持を尋ねる4 項目も含まれてい る。先行研究では,死刑への支持(Unnever & Cullen, 2010; Unnever, Cullen, & Fisher, 2007)および更生への支 持(Cullen, Clark, Cullen, & Mathers, 1985; McCorkle, 1993)は,厳罰志向性と異なる要因によって規定される ことが示されているため,これらの4 項目を除外した上 で,残った9 項目を,少年犯罪者を対象とするよう改め た上で用いた。具体的には,「次の1 から 5 の数字の中 で,次の文章にたいするあなた自身の考えに最も当ては まる数字に〇をつけてください(なお,以下の文章に含 まれる「少年」は「18 ~ 19 歳の男女」を指すものとし ます)」と教示し,「全くそう思わない」(1),「そう思わ ない」(2),「どちらとも言えない」(3),「そう思う」(4), 「非常にそう思う」(5)の 5 件法での回答を求めた。 ここで回答の対象を限定した理由は,たとえば5 歳の 子どもと18 歳の子どもを想定した場合ではそれに対す る犯罪不安,厳罰志向性,イメージは異なる可能性が考 えられるため,どの年齢層の子どもを想定するかを統制 する必要があると考えたことによる。そして上述のよう に少年法の適用年齢を18 歳未満に引き下げることが議 論されていることから,それについての知見を提示する ことには社会的重要性があると考えたことによる。また, 上述の通り,当該の議論では特定の罪種が念頭に置かれ ているわけではないため,罪種を統制することはしな かった。 犯罪不安 荒井他(2010)の「犯罪に対する感情的反

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応尺度」には,社会的水準での犯罪不安(以下,社会的 犯罪不安とする)と個人的水準での犯罪不安(以下,個 人的犯罪不安とする)を測定する2 因子 5 項目が含まれ る。これらの項目を,少年犯罪者を対象とするよう変更 した上で用いた。教示文,教示文を設定した理由,選択 肢は上と同様である。 被害リスク知覚 同様に荒井他(2010)によって作成 された「犯罪に対する認知的反応尺度」には,社会的水 準での被害リスク知覚(以下,社会的被害リスク知覚と する)と,個人的水準での被害リスク知覚(以下,個人 的被害リスク知覚とする)の2 因子 5 項目が含まれる3) これらの項目を少年犯罪者が対象となるよう変更して使 用した。教示文,教示文を設定した理由,選択肢は上と 同様である。 理解不能イメージ 大学生の子ども観尺度を作成した 島袋・当山・喜友名(1998),吉田・佐藤(1991),嘉数・ 島袋・当山・喜友名・友利・廣瀬(1997),滝口(2011) を参考に,上述の定義に沿うよう,4 項目を作成した。「全 く当てはまらない」(1),「当てはまらない」(2),「どち らとも言えない」(3),「当てはまる」(4),「非常に当て はまる」(5)の 5 件法での回答を求めた。この尺度では, 「18 歳~ 19 歳の人のイメージに最もよく当てはまる数 字に〇をつけてください」と教示し,上述の理由から一 般的な子どもについて回答を求めた。なお,本調査では 理解不能イメージのみが少年犯罪者に限定されない一般 的な少年に対するイメージであるため,前に提示された 項目によるキャリーオーバー効果を避けるため,項目中 の「18 歳~ 19 歳の人のイメージ」をゴシック体および 下線で強調しその影響が最小化されるよう配慮した。 統制変数 回答者の年齢,性別,子どもの有無を尋 ねた。 データ分析 記述統計および相関係数の算出にはHAD ver. 16.0(清 水,2016)を用いた。共分散構造分析には R ver. 3.4.4 のlavaan package を用いた。 結   果 予備的検討 本研究で用いたすべての尺度は,すでに存在する尺度 を改変したものか新しく作成した尺度であるため,探索 的因子分析によって,因子構造を確認した。 まず厳罰志向性については,固有値の減衰状況(3.96, 1.14, 1.00……)と先行研究の想定から 1 因子構造と判断 し,1 因子解に固定した上で因子分析(最尤法)を行った。 その結果,2 つの項目の負荷量が .40 以下であったため 削除し,再度因子分析を行った。最終的に表1 に示され る項目を使用した。 犯罪不安については,固有値の減衰状況(4.56, 1.84, 1.05, 0.57, 0.54, 0.48……)と先行研究の想定から 4 因子 構造と判断し,4 因子解に固定した上で因子分析(最尤 法,プロマックス回転)を行った。その結果,表2 に示 される項目が得られた。「世の中で起こる少年犯罪に対 して不安を感じる」という項目の因子負荷量は1.00 を 超えていたが,全体としての因子構造は荒井他(2010) と同様であったため,項目の除外は行わなかった。 理 解 不 能 イ メ ー ジ に つ い て は, 固 有 値 の 減 衰 状 況 (2.40, 0.65, 0.52……)と解釈可能性から 1 因子構造と判 断し,1 因子解に固定した上で因子分析を行った。その 結果,表3 の項目が得られた。 分析に用いた尺度と属性変数の記述統計(平均値,標 準偏差,a 係数)および相関係数を算出した(表 4)。性 別と子どもの有無およびその他の変数間の数値は点双列 相関係数であり,その他の変数間の数値はPearson の積 率相関係数である。各尺度の得点には各項目の算術平均 を用いた。個人的被害リスク知覚のa 係数が .62 と低かっ たが,項目数が少なく項目間の相関はr=.80(p<.01) と高かったことから一定の内的整合性を有し使用に耐え るものと判断した。厳罰志向性は,犯罪不安のすべての 下位尺度と有意な相関を示し(rs>.14, ps<.05),理解不 能イメージとも有意な相関を示した(r=.18, p=.01)。ま た,犯罪不安の下位尺度と理解不能イメージの間の相関 もすべて有意であった(rs>.20, ps<.05)。 3)この尺度には,「自分の周囲には犯罪が起きそうな危険な場所が多い」など 3 項目からなる「楽観的認知」も 用いられているが,この因子を含めずに尺度化している研究(荒井・吉田,2010)や,この因子を犯罪に対す る感情的・認知的反応の従属変数として扱う研究(荒井,2013)があるなど扱いが一定していないため,本研 究では分析から除外した。なお,荒井他(2010)では犯罪不安および被害リスク知覚について,「自分の子ど も」が被害に遭う不安およびリスク知覚も測定されている。しかし,向井・松木(2020)では,自分の子ども も含めた「身近な人」が犯罪の被害に遭う不安である「代理的犯罪不安」が厳罰傾向と関連しないことが示 されている。そのため,本研究では,「自分の子ども」が被害に遭う不安およびリスク知覚は検討しなかった。

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共分散構造分析 目的に沿って,理解不能イメージが犯罪不安と被害リ スク知覚を媒介して厳罰志向性と関連することを想定す る3 段階のモデル(モデル A)と,犯罪不安と被害リス ク知覚が異なる水準にあることを想定する4 段階のモデ ル(モデルB)を作成し,最尤法を用いて推定を行った。 また,属性変数(年齢,性別,子どもの有無)の影響を 統制するため,これらの変数からすべての潜在変数に至 るパスを設定した。観測変数および潜在変数の誤差項間 に共分散は設定しなかった。 推定の結果,モデルA の適合度は CFI=.87,GFI=.82, AGFI=.77,RMSEA=.08,SRMR=.10,BIC=10859.80 で あった(図1)。モデル B の適合度は,CFI=.94,GFI=.87, AGFI=.83,RMSEA=.05,SRMR=.06,BIC=10697.19 であった(図2)。どの指標においてもモデル A よりモ デルB の方が良好であった。また,モデル B のパスに 加えて,理解不能イメージから社会的犯罪不安および 個人的犯罪不安へのパスを設定したモデルの情報量基準 はBIC=10719.07 であり,モデル B よりも悪かった。以 上のことから,モデルB を最終的なモデルとして採択 した4)。 モデルB について個別のパスを見ると,厳罰志向性 に対しては社会的犯罪不安からのパスが有意であった一 方(b=.43, p<.01),個人的犯罪不安からのパスは有意 ではなかった(b=.12, p=.10)。また社会的犯罪不安に 表3 理解不能イメージの因子分析(最尤法) F1 共通性 何を考えているのかわからない .77 .60 何をするか予測できない .71 .50 大人には理解できない存在である .69 .47 動機のわからない行動もする .56 .32 表1 厳罰志向性の因子分析(最尤法) F1 共通性 裁判所は少年の犯罪者に甘すぎると思う .79 .63 自分が裁判員に選ばれたら,少年の犯罪者に今までよりももっと重い刑を与えたい .79 .62 メディアの報道を見て,なぜ少年の犯罪者への刑罰があんなに軽いのかと疑問に思 うことがある .77 .59 裁判官だけで裁判がおこなわれていた時の少年の犯罪者への刑罰は軽すぎると思う .73 .54 犯罪者への刑罰を少年だからという理由で軽くするのはおかしいと思う .71 .50 罪の重さ(例:万引きと強盗)に関わらず,少年の犯罪者には厳罰を与えるべきだ と思う .52 .27 犯罪に対しては犯罪をおかしたのが少年であっても,それ相応の罰をもって償うべ きだと思う(目には目を,歯には歯を) .51 .26 表2 犯罪不安および被害リスク知覚の因子分析(最尤法,プロマックス回転) F1 F2 F3 F4 共通性 世の中で起こる少年犯罪に対して不安を感じる 1.01 –.05 –.12 .07 .89 社会の少年犯罪に対する安全性に対して何となく不安を感じる .80 .05 .19 –.20 .76 社会全体の少年犯罪に関する治安に対して不安を感じる .61 .18 –.02 .13 .63 今後,社会一般の人が少年犯罪の被害にあう可能性は高まる –.05 .88 .04 –.00 .73 世の中では,凶悪な少年犯罪が増えた .04 .80 –.03 .01 .68 社会の少年犯罪に関する治安が悪くなった .06 .66 –.02 –.00 .49 自分が少年犯罪の被害にあうのではないかと不安を感じる –.03 .02 .97 –.00 .93 自分が少年犯罪の被害にあいそうで怖いと感じる .09 –.06 .65 .25 .73 自分もいつか少年犯罪にあいそうな気がする –.04 –.02 –.01 .71 .47 自分の周囲には少年犯罪が起きそうな危険な場所が多い –.02 .05 .11 .59 .45 Note.F1:社会的犯罪不安,F2:社会的被害リスク知覚,F3:個人的犯罪不安,F4:個人的犯罪リスク認知

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4 記述統計(平均値,標準偏差,a 係数)および相関係数 MSD) a 1 2 3 4 5 6 7 1 厳罰志向性 3.46 (0.66) .86 2 社会的犯罪不安 3.60 (0.82) .89 .43 ** 3 個人的犯罪不安 2.66 (0.83) .89 .29 ** .45 ** 4 社会的被害リスク知覚 3.57 (0.81) .83 .39 ** .61 ** .24 ** 5 個人的被害リスク知覚 2.59 (0.76) .62 .14 * .26 ** .57 ** .27 ** 6 理解不能イメージ 3.08 (0.73) .78 .18 ** .25 ** .25 ** .29 ** .20 ** 7 年齢 ― ― ― –.09 .04 –.07 .20 ** .06 –.02 8 性別a) ― ― ― –.03 –.19 ** –.01 –.15 * .01 .09 –.03 9 子どもの有無b) –.01 .09 .00 .26 ** .09 .00 .81 ** a)男性=1,女性= 0;b)子ども有=1,子ども無= 0。**p<.01,*p<.05。 図1 モデル A の共分散構造分析の結果。図中の数値は標準化偏回帰係数を表わす(**p<.01, *p<.05)。観測変数, 誤差項,統制変数は煩雑になるため省略した。CFI=.87,GFI=.82,AGFI=.77,RMSEA=.08,SRMR=.10, BIC=10859.80 厳罰志向性 個人的被害 リスク知覚 社会的 犯罪不安 社会的被害 リスク知覚 個人的 犯罪不安 理解不能 イメージ .44** .30** .17** .27** -.10* .47** .42** .50** 図2 モデル B の共分散構造分析の結果。図中の数値は標準化偏回帰係数を表わす(**p<.01, *p<.05)。観測変数, 誤差項,統制変数は煩雑になるため省略した。CFI=.94,GFI=.87,AGFI=.83,RMSEA=.05,SRMR=.06, BIC=10697.19 厳罰志向性 社会的 犯罪不安 個人的 犯罪不安 理解不能 イメージ .43** .12 個人的被害 リスク知覚 社会的被害 リスク知覚 .64** .86** .09 .29** .39** .34** 4)なお,理解不能イメージから厳罰志向性にいたる直接のパスを設定したところ,このパスは有意ではなく (b=.08, p=.30),適合度に変化は見られなかったが,情報量基準は悪化した(BIC=10661.21)。また,統制 変数を含めない分析も行ったが,結果の傾向に相違はなかった。

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対しては社会的被害リスク知覚と個人的被害リスク知覚 からのパスがともに有意であった(bs=.64, .29, ps<.01)。 個人的犯罪不安に対しては,個人的被害リスク知覚から のパスが有意であった一方(b=.86, p<.01),社会的被 害リスク知覚からのパスは有意ではなかった(b=.09, p=.35)。最後に,理解不能イメージから社会的被害リ スク知覚へのパスと理解不能イメージから個人的被害リ スク知覚へのパスはともに有意であった(bs=.39, .34, ps<.01)。 また,統制変数からのパス係数のうち有意であったの は,性別から社会的犯罪不安(b=.24, p=.04)および社 会的被害リスク(b=.36, p=.01)へのパスのみであった。 考   察 本研究で得られた知見 本研究は,少年犯罪に対する厳罰志向性,犯罪不安お よび被害リスク知覚,「子どもの意図や行動を把握する ことは困難である」という理解不能イメージの関連を検 討した。具体的には,理解不能イメージが犯罪不安と被 害リスク知覚を媒介して厳罰志向性と関連することを想 定する3 段階のモデルと,犯罪不安と被害リスク知覚が 異なる水準にあることを想定する4 段階のモデルを比較 した。また比較の際には,社会的水準での犯罪不安と被 害リスク知覚および個人的水準での犯罪不安および被害 リスク知覚を区別し,水準ごとに他の変数との関連が異 なるのかを検討した。その結果示されたことは以下の3 点である。 第一の知見は,厳罰志向性,犯罪不安,被害リスク知 覚の関係性についてである。先行研究では,犯罪不安と 被害リスク知覚を並列的に捉える研究(e.g.,荒井他, 2010)と,被害リスク知覚が犯罪不安に先行すると捉え る研究(e.g., Ferraro, 1995)が併存しており,結果とし て両変数が厳罰志向性とどのように関わるかも不明確で あった。それに対して本研究の結果からは,被害リスク 知覚は厳罰志向性と直接に関連するのではなく,犯罪不 安を媒介して間接的に関連することが示された。 犯罪不安と被害リスク知覚の関連についてFerraro (1995)のリスク解釈アプローチでは,治安の状態が悪 化しているという認知(解釈)があってはじめて感情的 な犯罪不安を抱くことが想定される。リスク解釈アプ ローチで想定されるモデルには,地域の特性や防犯行動 など本研究では扱わなかった変数も含まれているため本 研究の結果からはこのアプローチ全体の妥当性について 論じることはできない。しかし,このアプローチで想定 される犯罪不安と被害リスク知覚の関連に限って言え ば,本研究の知見はリスク解釈アプローチを裏付けるも のと考えられる。 第二に,犯罪不安と被害リスク知覚,厳罰志向性の関 連は,犯罪不安と被害リスク知覚の水準ごとに多少異な ることも示された。本研究では,荒井他(2010)の区別 に従い,社会的水準と個人的水準を区別した上で,犯罪 不安と被害リスク知覚を検討した。その結果,まず厳罰 志向性と犯罪不安の関連について見ると,厳罰志向性と 社会的犯罪不安の関連は有意であったものの,個人的犯 罪不安との関連は有意ではなかった。このような結果が 得られた理由としては,それぞれの項目に回答する際に 異なる犯罪が想起された可能性が考えられる。つまり, 社会的な犯罪不安ないし被害リスク知覚について尋ねら れた場合には,マスメディアなどで報道されやすい殺人 や強盗などの重大事件が想起されたのに対し,個人的な 犯罪不安ないし被害リスク知覚の場合には,自分が被害 に遭う可能性がより高い比較的軽微な犯罪が想起されや すかった可能性がある。そして,比較的軽微な犯罪につ いては,地域社会や家族,学校などによるインフォーマ ルな統制に頼る余地があると考えられたため,必ずしも 厳罰は求められず,結果として個人的犯罪不安と厳罰志 向性の間には関連が見られなかったのではないかと推測 される。 つぎに犯罪不安と被害リスク知覚の関連について見る と,他の3 つの関連は有意であったものの,社会的被害 リスク知覚と個人的犯罪不安の関連は有意ではなかっ た。つまり,社会で犯罪が増えているという認知を持っ ていたとしても,自分が犯罪に遭うのではないかという 感情を必ずしも持つわけではないことが示された。この 結果の説明としては以下の2 つが考えられる。第一に, 社会的水準での被害リスク知覚と個人的水準での犯罪不 安の間に楽観的認知バイアスが介在した可能性である。 楽観的認知バイアスとは,他人よりも自分の状況を楽観 的に評価するバイアスを指す(Rothman, Klein, & Wein-stein, 1996; WeinWein-stein, 1980)。このバイアスによって, 回答者は「社会が危険になっていても自分が被害に遭う ことはない」と考え,高い個人的犯罪不安を示さなかっ た可能性が考えられる。第二に,社会的被害リスク知覚 と個人的犯罪不安の関連は,直接的なものではなく間接 的なものであるため,関連が検出できなかった可能性で ある。荒井他(2010)は,メディアなどで伝えられる社 会的水準での犯罪についての情報との接触は,その情報 に接触した個人内で生じるインパクトを媒介して,犯罪 不安および被害リスク知覚と関連するというモデルを提 示している。このモデルでは,犯罪不安と被害リスク知

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覚は同じ水準のものと想定されているため,本研究の結 果と単純に比較することはできない。しかし,社会で犯 罪が増えているという認知と自分が犯罪に遭うかもしれ ないという感情の間には何らかの媒介変数が存在するこ とは十分に考えられるのではないかと思われる。これら 2 つの説明は矛盾するわけではないため,これらの可能 性を考慮に入れつつ,今後検討することが有益であるか もしれない。 第三に,子どもを理解しにくいものとしてイメージす るほど,社会において犯罪が増えていると考え,自分が 犯罪の被害に遭う可能性を高く認知することがわかっ た。これまでの非実証的な議論では,少年は理解できな い存在であるというイメージが世間に広まることで犯罪 不安ないし被害リスク知覚が高まり,その結果として少 年犯罪に対する厳罰化が促進されたことが示唆されてき た(e.g.,芹沢,2006)。本研究で理解不能イメージと社 会的/個人的被害リスク知覚の間に関連が見られたこと は,これまでの議論を裏付けるものであると考えられる。 なお,統制変数としてモデルに含めた属性変数のうち, 有意な関連が見られたのは性別と社会的犯罪不安/被害 リスク知覚間の関連のみであった。男性と比べ女性の方 が犯罪不安および被害リスク知覚が強いことは繰り返し 報告されている知見である(e.g., Ferraro, 1995)。本研 究の結果は,そのような犯罪不安および被害リスク知覚 の男女差が社会的水準あるいは個人的水準の犯罪不安お よび被害リスク知覚であるかに応じて異なることを示唆 するものと捉えられる。 本研究の意義 以上のように本研究では,被害リスク知覚が犯罪不安 に先行し,この犯罪不安が厳罰志向性を規定することを 示したことにくわえ,被害リスク知覚が理解不能イメー ジによって規定されることを示した。子どもイメージと いう要因は,犯罪不安や被害リスク知覚との関連におい ては非実証的な研究では広く論じられていたとはいえ, 日本での実証的な研究では取り上げられてこなかった要 因である。このように,厳罰志向性,被害リスク知覚, 犯罪不安の関連を精緻化し,理解不能イメージが被害リ スク知覚の先行要因であると特定したことが本研究の学 術的な意義であると考えられる。 くわえて本研究の実践的な示唆として以下の2 点が考 えられる。第一に,少年犯罪に対する過度な厳罰志向性 ひいては厳罰化を防止するためには,被害リスク知覚だ けでなく,犯罪不安に対しても働きかける必要があると いう点である。少年法の厳罰的な改正に反対する際には, 「少年犯罪は増加していない」という被害リスク知覚に 関わる論拠がしばしば挙げられるが,この要因は,少年 犯罪に対する厳罰志向性を強める間接的なものにすぎな い。少年犯罪に対する厳罰化が妥当であるかどうかには 議論がありうるが,かりに日本弁護士連合会(2015)な どが主張するように少年犯罪に対する過度な厳罰化には 問題があるとすれば,そのような厳罰化を防止するため には,被害リスク知覚という認知的な側面だけではなく, 犯罪不安という感情的な側面に対しても働きかける必要 がある。 第二に,少年犯罪に対する厳罰志向性ならびに犯罪不 安や被害リスク知覚をより広い側面から捉える必要性で ある。本研究では,少年犯罪に対する厳罰志向性は,犯 罪不安や被害リスク知覚という犯罪と直接に関わる変数 や従来広く取り上げられてきた少年犯罪者のイメージだ けではなく,一般的な少年に対して抱かれる理解不能イ メージによっても間接的に規定されることが示された。 この結果は,少年犯罪に対する厳罰志向性ならびに犯罪 不安や被害リスク知覚には,社会が子どもという存在を どのようなものとしてイメージするかといった必ずしも 犯罪に限定されない側面が関わることを示唆するもので ある。「子ども」というカテゴリーはそれ自体歴史的・ 社会的に構築されたものであり(赤川,1993;Ariès, 1973 杉山・杉山訳 1980),そのためその「子ども」をど のようなものとイメージするかも時間の経過や社会の変 動に伴って変化しうる。したがって,今後の議論におい ても,犯罪に直接関わる要因に論点を縮減するのではな く,人々は子どもをどのようにイメージしているか,そ のイメージはどのように形成されてきたのか,そしてそ のイメージは犯罪に関する意識とどのように関わるのか といったより広い点からも議論を進める必要があろう。 今後の課題 今後の課題ないし方向性としては,ここまで述べてき たことに加え,以下の4 点が挙げられる。第一の課題は, 対象とした少年犯罪者の性質である。本研究では対象と する少年犯罪者を18 歳から 19 歳に限定していたため, ほかの年齢層でも本研究と同様の知見が得られるかを検 討することが有益だと考えられる。第二に,本調査では スノーボールサンプリングによる調査を行ったため,サ ンプルの代表性には疑問が残る。また,本研究では年齢, 性別,子どもの有無を統制した分析を行ったが,他の属 性変数によってモデルに含まれた変数が影響を受ける可 能性,あるいは変数間の影響が調整される可能性は残さ れている。これらのことを考えれば,今後はより代表性

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が高く規模の大きな調査を行い,知見の頑健性を検証す るとともに属性変数の影響を加味した検討を行う必要が あるだろう。第三に,本研究では理解不能イメージを取 り上げたが,少年法の改正(森田,2008)や児童ポルノ 規制をめぐる論争(赤川,1993)では,子どもを自律し た存在と見なすか庇護の対象と見なすか,あるいは子ど もをどの程度大人と同じような存在と見なすかというイ メージが,改正や規制への賛否に影響を及ぼすというこ とが論じられている。また,本研究では一般的な子ども に対するイメージを測定したが,少年犯罪者に限定され たイメージも犯罪不安や厳罰志向性などの変数と関連す ることが予想される。さらにどのような子どもを想定し て回答したかも子どもイメージに影響を及ぼすことも考 えられる。今後はこのようなイメージも含め,子どもイ メージをより広く検討していくことが求められる。第四 に,本研究では,罪種を限定しない全般的な厳罰志向性 や犯罪不安等を検討した。しかし,罪種や罪状に応じて 本研究で見出されたのとは異なる知見が見出される可能 性は残る。今後は,本研究の知見が個別の罪種・罪状に も当てはまるのかを検討することが有益であろう。 引用文献 赤羽由起夫(2013).なぜ「心の闇」は語られたのか― 少年犯罪報道に見る「心」の理解のアノミー― 社 会学評論,64, 37–54. 赤川 学(1993).差異をめぐる闘争―近代・子ども・ ポルノグラフィー― 仲河伸俊・永井良和(編)子 どもというレトリック―無垢の誘惑―(pp. 163– 200)青弓社

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The relationships among severe punishment orientation, fear of crime, and the perceived risk

of juvenile crime: The role of the child image as incomprehensible as an antecedent factor

Tomoya Mukai (Graduate Schools for Law and Politics, The University of Tokyo)

Kyoko Fujino (Faculty of Letters, Arts and Sciences, Waseda University)

This study aimed to investigate the relationships among severe punishment orientation toward juvenile offenders, fear of/perceived risk of juvenile crime, and the image of the child as incomprehensible. Building on existing arguments and research, we tested a hypothetical model that assumed that 1) severe punishment orientation was determined by fear; 2) fear was determined by the perceived risk; and 3) the perceived risk of juvenile crime was determined by the child image, and compared its goodness-of-fit and information criterion to those of a model built on slightly different assumptions. The analysis of data from 226 individuals supported the hypothetical model. The implications of this study’s findings were discussed.

表 4 記述統計(平均値,標準偏差,a 係数)および相関係数 M (SD) a 1 2 3 4 5 6 7 1 厳罰志向性 3.46 (0.66) .86 2 社会的犯罪不安 3.60 (0.82) .89 .43 ** 3 個人的犯罪不安 2.66 (0.83) .89 .29 ** .45 ** 4 社会的被害リスク知覚 3.57 (0.81) .83 .39 ** .61 ** .24 ** 5 個人的被害リスク知覚 2.59 (0.76) .62 .14 * .26 ** .57 ** .27 **

参照

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In Partnership with the Center on Law and Security at NYU School of Law and the NYU Abu Dhabi Institute: Navigating Deterrence: Law, Strategy, &amp; Security in

87)がある。二〇〇三年判決については、その評釈を行う Schneider, Zur Annahme einer konkludenten Täuschung bei Abgabe einer gegenteiligen ausdrücklichen Erklärung, StV 2004,

Offensive Behaviour: Constitutive and Mediating Principles..

[r]

 My name Is Jennilyn Carnazo Takaya, 26 years of age, a Filipino citizen who lived in Kurashiki-shi Okayama Pref. It happened last summer year

統制の意図がない 確信と十分に練られた計画によっ (逆に十分に統制の取れた犯 て性犯罪に至る 行をする)... 低リスク

 2015

Amount of Remuneration, etc. The Company does not pay to Directors who concurrently serve as Executive Officer the remuneration paid to Directors. Therefore, “Number of Persons”